(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033261
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】パネル体
(51)【国際特許分類】
E06B 9/02 20060101AFI20240306BHJP
F25D 23/08 20060101ALI20240306BHJP
F25D 23/06 20060101ALI20240306BHJP
E04C 2/292 20060101ALI20240306BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
E06B9/02 K
F25D23/08 L
F25D23/06 303A
E04C2/292
E06B9/02 A
E06B5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136756
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直也
【テーマコード(参考)】
2E162
2E239
3L102
【Fターム(参考)】
2E162CB02
2E162CB07
2E162CD02
2E239AB03
3L102JA01
3L102JA02
3L102LC21
3L102MB06
(57)【要約】
【課題】内部に断熱材が充填されるパネル体において、パネル体の底面(若しくは上面)から断熱材を注入することが可能なパネル体の提供。
【解決手段】内部に断熱材が充填されるパネル体であって、前面側パネル11と、後面側パネル12と、前面側パネル11と後面側パネル12の上部側を接合する上部樹脂枠13と、前面側パネル11と後面側パネル12の下部側を接合する下部樹脂枠14と、を備え、下部樹脂枠14に断熱材を注入するための注入口が形成され、上部樹脂枠13の前記注入口に対向する位置に、幅方向に沿って延び、前面側パネル11及び後面側パネル12に接触しないように形成された、第1の圧力分散部材16を備える、パネル体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に断熱材が充填されるパネル体であって、
前面側パネルと、
後面側パネルと、
前記前面側パネルと前記後面側パネルの上部側を接合する上部樹脂枠と、
前記前面側パネルと前記後面側パネルの下部側を接合する下部樹脂枠と、
を備え、
前記下部樹脂枠若しくは前記上部樹脂枠に、前記断熱材を注入するための注入口が形成され、
前記上部樹脂枠若しくは前記下部樹脂枠の前記注入口に対向する位置に、幅方向に沿って延び、前記前面側パネル又は前記後面側パネルの少なくとも一方に接触しないように形成された、第1の圧力分散部材を備える、パネル体。
【請求項2】
前記第1の圧力分散部材が、前記前面側パネル及び前記後面側パネルの何れにも接触しないように形成されている、請求項1に記載のパネル体。
【請求項3】
前記第1の圧力分散部材の幅方向に垂直な断面の断面視において、その少なくとも一部が、前記上部樹脂枠又は前記下部樹脂枠の、前記断面視の断面形状に沿った形状を有する、請求項1に記載のパネル体。
【請求項4】
内部に断熱材が充填されるパネル体であって、
前面側パネルと、
後面側パネルと、
前記前面側パネルと前記後面側パネルの上部側を接合する上部樹脂枠と、
前記前面側パネルと前記後面側パネルの下部側を接合する下部樹脂枠と、
を備え、
前記下部樹脂枠若しくは前記上部樹脂枠に、前記断熱材を注入するための注入口が形成され、
前記注入口が形成される前記下部樹脂枠若しくは前記上部樹脂枠の、前記注入口の両側に延在する、前記前面側パネル又は前記後面側パネルの少なくとも一方に接触しないように形成された、第2の圧力分散部材を備える、パネル体。
【請求項5】
前記第2の圧力分散部材が、前記前面側パネル及び前記後面側パネルの何れにも接触しないように形成されている、請求項4に記載のパネル体。
【請求項6】
前記第2の圧力分散部材の幅方向に垂直な断面の断面視において、その少なくとも一部が、前記上部樹脂枠又は前記下部樹脂枠の、前記断面視の断面形状に沿った形状を有する、請求項5に記載のパネル体。
【請求項7】
内部に断熱材が充填されるパネル体であって、
前面側パネルと、
後面側パネルと、
前記前面側パネルと前記後面側パネルの上部側を接合する上部樹脂枠と、
前記前面側パネルと前記後面側パネルの下部側を接合する下部樹脂枠と、
を備え、
前記下部樹脂枠若しくは前記上部樹脂枠に、前記断熱材を注入するための注入口が形成され、
前記上部樹脂枠若しくは前記下部樹脂枠の前記注入口に対向する位置に、幅方向に沿って延び、前記前面側パネル又は前記後面側パネルの少なくとも一方に接触しないように形成された、第1の圧力分散部材と、
前記注入口が形成される前記下部樹脂枠若しくは前記上部樹脂枠の、前記注入口の両側に延在する、前記前面側パネル又は前記後面側パネルの少なくとも一方に接触しないように形成された、第2の圧力分散部材と、を備える、パネル体。
【請求項8】
前記第1の圧力分散部材と前記第2の圧力分散部材が接続されている、請求項7に記載のパネル体。
【請求項9】
前記前面側パネル若しくは前記後面側パネルの上部において、前記上部樹脂枠に対する取り付け部である折り返し構造部分を備え、又は、前記前面側パネル若しくは前記後面側パネルの下部において、前記下部樹脂枠に対する取り付け部である折り返し構造部分を備え、
前記第1の圧力分散部材の前記パネル体の厚さ方向の形成範囲が、前記折り返し構造部分に至るように構成されている、請求項1又は7に記載のパネル体。
【請求項10】
前記前面側パネル若しくは前記後面側パネルの上部において、前記上部樹脂枠に対する取り付け部である折り返し構造部分を備え、又は、前記前面側パネル若しくは前記後面側パネルの下部において、前記下部樹脂枠に対する取り付け部である折り返し構造部分を備え、
前記第2の圧力分散部材の前記パネル体の厚さ方向の形成範囲が、前記折り返し構造部分に至るように構成されている、請求項4又は7に記載のパネル体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に断熱材が充填されるパネル体に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉装置において、開口部を開閉する開閉体が、相互に接続された複数のパネル体によって構成されているものが使用されており、パネル体の内部に断熱材が充填されていることにより、断熱機能を有する開閉体も使用されている。
特許文献1には、このような、内部に断熱材が充填されたパネル体に関する記載がある(段落0011、0014)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、パネル体の内部への断熱材(発泡ウレタン等)の充填は、
図11(a)(パネル体の正面視における断熱材注入の概念図)に示されるように、パネル体の幅方向(長手方向)の一方の側面(108)に注入口を設け、当該注入口から断熱材(発泡ウレタン等)を注入することによって行われている。
ここで、生産設備の都合などにより、パネル体の底面若しくは上面(短手方向の一方の側面)から断熱材を注入させることの要望がある。
しかしながら、パネル体の底面(若しくは上面)から断熱材を注入すると、
図11(b)に示されるように、当該注入部に対向するパネル体の上面(若しくは底面)に高い圧力がかかることになる。パネル体の上面(若しくは底面)は、断熱性能の要請や生産性の向上等の観点から、樹脂製の枠材(樹脂枠)によって形成されており、従って強度があまり高くなく、高い圧力がかかると変形してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、内部に断熱材が充填されるパネル体において、パネル体の底面(若しくは上面)から断熱材を注入することが可能なパネル体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
内部に断熱材が充填されるパネル体であって、前面側パネルと、後面側パネルと、前記前面側パネルと前記後面側パネルの上部側を接合する上部樹脂枠と、前記前面側パネルと前記後面側パネルの下部側を接合する下部樹脂枠と、を備え、前記下部樹脂枠若しくは前記上部樹脂枠に、前記断熱材を注入するための注入口が形成され、前記上部樹脂枠若しくは前記下部樹脂枠の前記注入口に対向する位置に、幅方向に沿って延び、前記前面側パネル又は前記後面側パネルの少なくとも一方に接触しないように形成された、第1の圧力分散部材を備える、パネル体。
【0007】
(構成2)
前記第1の圧力分散部材が、前記前面側パネル及び前記後面側パネルの何れにも接触しないように形成されている、構成1に記載のパネル体。
【0008】
(構成3)
前記第1の圧力分散部材の幅方向に垂直な断面の断面視において、その少なくとも一部が、前記上部樹脂枠又は前記下部樹脂枠の前記断面視の断面形状に沿った形状を有する、構成1又は2に記載のパネル体。
【0009】
(構成4)
内部に断熱材が充填されるパネル体であって、前面側パネルと、後面側パネルと、前記前面側パネルと前記後面側パネルの上部側を接合する上部樹脂枠と、前記前面側パネルと前記後面側パネルの下部側を接合する下部樹脂枠と、を備え、前記下部樹脂枠若しくは前記上部樹脂枠に、前記断熱材を注入するための注入口が形成され、前記注入口が形成される前記下部樹脂枠若しくは前記上部樹脂枠の、前記注入口の両側に延在する、前記前面側パネル又は前記後面側パネルの少なくとも一方に接触しないように形成された、第2の圧力分散部材を備える、パネル体。
【0010】
(構成5)
前記第2の圧力分散部材が、前記前面側パネル及び前記後面側パネルの何れにも接触しないように形成されている、構成4に記載のパネル体。
【0011】
(構成6)
前記第2の圧力分散部材の幅方向に垂直な断面の断面視において、その少なくとも一部が、前記上部樹脂枠又は前記下部樹脂枠の、前記断面視の断面形状に沿った形状を有する、構成5に記載のパネル体。
【0012】
(構成7)
内部に断熱材が充填されるパネル体であって、前面側パネルと、後面側パネルと、前記前面側パネルと前記後面側パネルの上部側を接合する上部樹脂枠と、前記前面側パネルと前記後面側パネルの下部側を接合する下部樹脂枠と、を備え、前記下部樹脂枠若しくは前記上部樹脂枠に、前記断熱材を注入するための注入口が形成され、前記上部樹脂枠若しくは前記下部樹脂枠の前記注入口に対向する位置に、幅方向に沿って延び、前記前面側パネル又は前記後面側パネルの少なくとも一方に接触しないように形成された、第1の圧力分散部材と、前記注入口が形成される前記下部樹脂枠若しくは前記上部樹脂枠の、前記注入口の両側に延在する、前記前面側パネル又は前記後面側パネルの少なくとも一方に接触しないように形成された、第2の圧力分散部材と、を備える、パネル体。
【0013】
(構成8)
前記第1の圧力分散部材と前記第2の圧力分散部材が接続されている、構成7に記載のパネル体。
【0014】
(構成9)
前記前面側パネル若しくは前記後面側パネルの上部において、前記上部樹脂枠に対する取り付け部である折り返し構造部分を備え、又は、前記前面側パネル若しくは前記後面側パネルの下部において、前記下部樹脂枠に対する取り付け部である折り返し構造部分を備え、前記第1の圧力分散部材の前記パネル体の厚さ方向の形成範囲が、前記折り返し構造部分に至るように構成されている、構成1から3の何れか、又は、構成7、8の何れかに記載のパネル体。
【0015】
(構成10)
前記前面側パネル若しくは前記後面側パネルの上部において、前記上部樹脂枠に対する取り付け部である折り返し構造部分を備え、又は、前記前面側パネル若しくは前記後面側パネルの下部において、前記下部樹脂枠に対する取り付け部である折り返し構造部分を備え、前記第2の圧力分散部材の前記パネル体の厚さ方向の形成範囲が、前記折り返し構造部分に至るように構成されている、構成4から8の何れかに記載のパネル体。
【発明の効果】
【0016】
本発明のパネル体によれば、内部に断熱材が充填されるパネル体において、パネル体の底面(若しくは上面)から断熱材を注入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】開閉装置として組み上げられた状態の実施形態1のパネル体の一部を示す図
【
図3】実施形態1のパネル体に対する断熱材の充填の説明図
【
図5】実施形態2のパネル体に対する断熱材の充填の説明図
【
図7】実施形態3のパネル体に対する断熱材の充填の説明図
【
図11】従来のパネル体に対する断熱材の充填の説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0019】
<実施形態1>
図1は、本発明に係る実施形態1のパネル体を示す図であり、パネル体の幅方向に垂直な面による断面図(縦断面図)である。
本実施形態のパネル体1は、開閉装置の開閉体を構成するために用いられるものである。上下方向に配置された複数のパネル体1がヒンジによって相互に接続されることで、開口部を開閉する開閉体が構成される。
図2(a)は、開閉装置として組み上げられた状態のパネル体1の、幅方向の一端側を示す図(水平面による断面の断面図的に示した図)であり、
図2(b)は、上下のパネル体の接合部を示す図(縦断面図)である。
本実施形態のパネル体1が使用される開閉装置は、例えば屋内と屋外を隔てる壁面に形成されている開口部を開閉する開閉装置であって、より具体的には、オーバーヘッドドアやオーバースライディングドア等と呼称される開閉装置である。
開閉体の幅方向の両端部には複数のローラ22が備えられており、当該ローラ22の移動を案内するガイドレール23が、開口部の両サイドに設置されている。ガイドレール23は、開口部の両サイドで鉛直方向に延びる垂直レール部分と、その上部に接続されて天井部付近で水平方向に延びる水平レール部分と、及びこれらを接続する湾曲レール部分とを有し、これにより開閉体を上下に移動(開閉)させるものである。
パネル体1は、内部に断熱材15が充填されており、これにより、開閉装置は断熱機能を有する開閉体を備えたものである。
なお、開閉装置には、その他に、開閉体の開閉を駆動させるための駆動装置及びその機構、開閉動作を制御するための制御装置等(特に図示せず)が備えられるが、それらの構成は本発明に直接関係するものではないため、開閉装置に関するここでのこれ以上の説明を省略する。
【0020】
本実施形態のパネル体1は、
内部に断熱材15が充填されるパネル体であって、
前面側パネル11と、
後面側パネル12と、
前面側パネル11と後面側パネル12の上部側を接合する上部樹脂枠13と、
前面側パネル11と後面側パネル12の下部側を接合する下部樹脂枠14と、
パネル体の幅方向に沿って延び、前面側パネル11及び後面側パネル12の何れにも接触しないように形成されている、第1の圧力分散部材16と、を備えている。
【0021】
前面側パネル11及び後面側パネル12は、スチールやステンレス等の金属によって形成された板状の部材であり、
図1に示されるように、その上端及び下端で折り返し部分が形成され、当該折り返し部分において、上部樹脂枠13及び下部樹脂枠14と嵌合、接着されている。
また、
図2に示されるように、パネル体1の両側面には側面パネル19が設けられている(
図2は右側(室内側から見た際の右側)のみを示しているが、左側も左右対称の同様の構成である)。側面パネル19も、スチールやステンレス等の金属によって形成されており、前面側パネル11から側面を介して後面側パネル12に至るように、上面視(断面視)でコ字状に屈曲されている。側面パネル19の、前面側パネル11側に接する面は、ローラ22を保持する部材(
図2(a)では上ヒンジ21)を取り付ける面の補強部としての機能も有している。側面パネル19の後面側パネル12側の面は、断熱部材191を介して取り付けられている。
【0022】
上部樹脂枠13と下部樹脂枠14は、パネル体の断熱性能を維持するために、断熱部材(樹脂)によって形成されている。また、同様の理由(断熱性能の維持)により、上部樹脂枠13と下部樹脂枠14は、
図2(b)に示されるように、厚さ方向の中央部に相互にはまり合う凹凸形状を有し、その両側において、パッキンゴム20が設けられ、上下のパネル体間において、密着、密封構造が得られるような構成となっている。
【0023】
第1の圧力分散部材16は、スチールやステンレス等の金属によって形成され、
図1に示されるように、上部樹脂枠13の断面形状に沿った断面形状を有して、上部樹脂枠13の内面側に、上部樹脂枠13に沿うようにして配置されている。
【0024】
図3は、パネル体1に対する断熱材(発泡ウレタン等)15の充填について説明するための概略図である。
本実施形態のパネル体1では、断熱材を注入するための注入口が、パネル体の底面、即ち、下部樹脂枠14に形成され、
図3に示されるように、パネル体の短手方向に沿った方向で断熱材が注入される。なお注入口は予め下部樹脂枠14に形成されているものであってもよいし、断熱材の注入作業時に穿孔するものであってもよい。
従来、パネル体の内部への断熱材の充填は、
図11(a)に示されるように、パネル体の幅方向の一方の側面(108)に注入口を設け、当該注入口から断熱材(発泡ウレタン等)を注入することによって行われており、この場合には、注入方向がパネル体の長手方向に沿った方向となるため、上部樹脂枠や下部樹脂枠にかかる負荷もそれほど大きくはならない。
一方、パネル体の底面から断熱材を注入すると、
図11(b)で示されるように、注入された断熱材が上部樹脂枠103にぶつかってその流れを左右方向(パネル体の長手方向)に替えるような動きとなるため、上部樹脂枠103には高い負荷がかかることになる。断熱材は、所定の粘度を有するものであるため、これをパネル体1の内部の隅々まで行き渡らせるためには、ある程度の高い注入圧力が必要となる。従って、上部樹脂枠103にも高い負荷がかかることになるが、そのままでは、樹脂によって形成されている上部樹脂枠103に変形や歪みが生じる恐れがある。
図2(b)からも理解されるように、上部樹脂枠に変形や歪みが生じると、上下のパネル体間の接合部分(上部樹脂枠と下部樹脂枠の凹凸の嵌合)に不具合(隙間等)が生じることによる断熱性能の低下や、そもそもパネル体の接合ができなくなってしまうといったおそれがある。
【0025】
第1の圧力分散部材16は、このような問題を防止するために、注入口から注入された断熱材の高い圧力が局所的に上部樹脂枠13に印加されないように、圧力を分散させる部材であり、補強部材である。
図3に示されるように、第1の圧力分散部材16は、パネル体1の内部で、パネル体1の幅方向(長手方向)に延在して設けられている。
第1の圧力分散部材16は、単に上部樹脂枠13にはめ込むようにして設けられているものであってもよいが、上部樹脂枠13に接着した方がより好ましい。
金属で形成され、且つ、折り曲げ加工されることによって曲げ強度が向上されている第1の圧力分散部材16が設けられていることにより、上部樹脂枠13に対して局所的に高い負荷がかかることが低減され、上部樹脂枠13の長手方向にわたって全体的に負荷を吸収することができるため、上部樹脂枠13に変形や歪みが生じることが効果的に低減される。
なお、断熱材の注入時には、パネル体の厚さ方向の両側からパネル体を型で挟んで保持するような構成で注入を行うため、前面側パネル11と後面側パネル12が注入時の圧力によって変形する(膨らんでしまう)ことはない。一方、上面側(上部樹脂枠)や底面側(下部樹脂枠)については、型で挟んで保持するような構成とすることが難しく(不可能ということではないが、それぞれのパネル体の構造やサイズに対応させた設備を要することとなるためコスト高になる)、高い圧力がかかると変形をする恐れがあるものであったが、上述のごとく、本実施形態の第1の圧力分散部材16を用いることによって、変形や歪みが防止されるものである。
【0026】
以上のごとく、本実施形態のパネル体1によれば、パネル体の底面(若しくは上面)から断熱材を注入することが可能であり、その際に上部樹脂枠(若しくは下部樹脂枠)に変形や歪みが生じることが防止される。
なお、本実施形態では、断熱材の注入口が下部樹脂枠14に形成されものを例としたが、注入口を上部樹脂枠13に形成するものであってもよく、これに応じて、第1の圧力分散部材16を、下部樹脂枠14の断面形状に沿った形状を有して、下部樹脂枠14の内面側に、下部樹脂枠14に沿うようにして配置するものであってもよい。
【0027】
また、本実施形態のパネル体1によれば、第1の圧力分散部材16が、前面側パネル11及び後面側パネル12の何れにも接触しないように形成されているため、パネル体の断熱性能を維持することができる。前面側パネル11及び後面側パネル12を、金属の第1の圧力分散部材16によって接続してしまうと、金属の第1の圧力分散部材16を介して熱が前面側と後面側の間で伝達されてしまうことになるが、本実施形態によればこれが防止されるものである。なお、第1の圧力分散部材16は、前面側パネル11及び後面側パネル12の少なくとも一方に直接接触しないように構成されるものであればよい。
【0028】
なお、本発明における「圧力分散部材が、前面側パネル若しくは後面側パネルに接触しない」とは、“直接”接触しないというものであって、他の部材を介して間接的に接触している構成を排除するものではない。即ち、熱伝導率が高い部材(金属)で前面側パネルと後面側パネルを接続しないという意味であり、例えば、断熱材を介して圧力分散部材が前面側パネル若しくは後面側パネルに接続されるというような構成を排除しているものではない。
【0029】
<実施形態2>
図4は、実施形態2のパネル体を示す図であり、パネル体の幅方向に垂直な面による断面図(縦断面図)である。
本実施形態のパネル体1-2は、開閉装置の開閉体を構成するために用いられるものであり、開閉装置や開閉体の概念は実施形態1と同様であるため、ここでの説明を省略する。また、本実施形態のパネル体1-2は、第1の圧力分散部材16に替えて第2の圧力分散部材17を有している点で、実施形態1と相違しているのみであり、パネル体1-2の構成のうち、実施形態1と同様の構成については同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0030】
本実施形態のパネル体1-2は、実施形態1と同様に、断熱材を注入するための注入口が、パネル体の底面、即ち、下部樹脂枠14に形成される。
本実施形態のパネル体1-2では、下部樹脂枠14の注入口の両側に延在するように、また、前面側パネル11及び後面側パネル12の何れにも接触しないように形成されている第2の圧力分散部材17が設けられている。
第2の圧力分散部材17は、スチールやステンレス等の金属によって形成され、
図4に示されるように、下部樹脂枠14の断面形状に沿った断面形状を有して、下部樹脂枠14の内面側に、下部樹脂枠14に沿うようにして配置されている。
【0031】
図5は、パネル体1-2に対する断熱材(発泡ウレタン等)15の充填について説明するための概略図である。
実施形態1で説明したように、パネル体の底面から断熱材を注入すると、注入された断熱材が上部樹脂枠13にぶつかってその流れを左右方向(パネル体の長手方向)に替えるような動きとなる。この際、パネル体の中央付近(注入口の近傍)には高い圧力が生じることとなり、従って、下部樹脂枠14にも負荷がかかることになる。これに伴い、下部樹脂枠14に変形や歪みが生じる恐れがあり、
図2(b)からも理解されるように、下部樹脂枠14に変形や歪みが生じると、上下のパネル体間の接合部分に不具合(隙間等)が生じることによる断熱性能の低下や、そもそもパネル体の接合ができなくなってしまうといったおそれがある。
【0032】
第2の圧力分散部材17は、このような問題を防止するために、注入口から注入された断熱材の高い圧力が局所的に下部樹脂枠14に印加されないように、圧力を分散させる部材であり、補強部材である。
第2の圧力分散部材17は、単に下部樹脂枠14にはめ込むようにして設けられているものであってもよいが、下部樹脂枠14に接着した方がより好ましい。
金属で形成され、且つ、折り曲げ加工されることによって曲げ強度が向上されている第2の圧力分散部材17が設けられていることにより、下部樹脂枠14に対して局所的に高い負荷がかかることが低減され、下部樹脂枠14に変形や歪みが生じることが効果的に低減される。
【0033】
以上のごとく、本実施形態のパネル体1-2によれば、パネル体の底面(若しくは上面)から断熱材を注入することが可能であり、その際に下部樹脂枠(若しくは上部樹脂枠)に変形や歪みが生じることが防止される。
なお、本実施形態では、断熱材の注入口が下部樹脂枠14に形成されものを例としたが、注入口を上部樹脂枠13に形成するものであってもよく、これに応じて、第2の圧力分散部材17を、上部樹脂枠13の断面形状に沿った形状を有して、上部樹脂枠13の内面側に、上部樹脂枠13に沿うようにして配置するものであってもよい。
【0034】
また、本実施形態のパネル体1-2では、第2の圧力分散部材17が、前面側パネル11及び後面側パネル12の何れにも接触しないように形成されているが、第2の圧力分散部材17は、前面側パネル11及び後面側パネル12の少なくとも一方に直接接触しないように構成されるものであればよい。
【0035】
<実施形態3>
図6は、実施形態3のパネル体を示す図であり、パネル体の幅方向に垂直な面による断面図(縦断面図)である。
本実施形態のパネル体1-3は、開閉装置の開閉体を構成するために用いられるものであり、開閉装置や開閉体の概念は実施形態1と同様であるため、ここでの説明を省略する。また、本実施形態のパネル体1-3は、第1の圧力分散部材16及び第2の圧力分散部材17を有し、これらが接続されている点で、実施形態1、2と相違しているのみであり、パネル体1-3の構成のうち、実施形態1(若しくは実施形態2)と同様の構成については同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0036】
本実施形態のパネル体1-3は、実施形態1と同様に、断熱材を注入するための注入口が、パネル体の底面、即ち、下部樹脂枠14に形成される。
本実施形態のパネル体1-3では、実施形態1で説明したものと同様の第1の圧力分散部材16と、実施形態2で説明したものと同様の第2の圧力分散部材17を備えており、これらが、上下方向に延びる棒状の接続部材18によって接続されている。
【0037】
図7は、パネル体1-3に対する断熱材(発泡ウレタン等)15の充填について説明するための概略図である。
本実施形態のパネル体1-3によれば、第1の圧力分散部材16と第2の圧力分散部材17を備えることにより、実施形態1及び2と同様の作用効果を得ることができる。さらに、第1の圧力分散部材16と第2の圧力分散部材17が接続部材18によって接続されているため、より効果的に、注入口から注入された断熱材の圧力に基づいて、上部樹脂枠13が上部側へ歪むことや、下部樹脂枠14が下部側へ歪むことが防止される。
【0038】
本実施形態では、接続部材18が棒状の部材であるものを例としているが、接続部材は、第1の圧力分散部材と第2の圧力分散部材を接続することが可能な任意の部材(例えば板状の部材等)であってよい。ただし、断熱材15の注入の際に、接続部材18が、断熱材15をパネル体の内部に隈なく行き渡らせることの障害にならないように、接続部材18は、断熱材15が行き渡るための流れ方向に対して大きな射影面積を有しない部材とすることが好ましい。
【0039】
なお、断熱材の注入口を上部樹脂枠に形成するものであってもよい点は、実施形態1や2で説明した点と同様である。
また、第1の圧力分散部材と第2の圧力分散部材に関し、前面側パネル及び後面側パネルの少なくとも一方に直接接触しないように構成されるものであればよい点も同様である。
【0040】
図8には、第1の圧力分散部材と第2の圧力分散部材がパネルの一方(ここでは前面側パネル)に接触しているものの例(パネル体1-4)を示した。
第1の圧力分散部材16-1は、実施形態の圧力分散部材16の一端が延長される形で、前面側パネル11と接する面を有し、前面側パネル11に対して接着等によって固定されている。これにより、樹脂枠に歪みが生じることをより効果的に防止することができる。
また、第2の圧力分散部材17-1は、構造を単純化したものの例であり、断面視でL字状の形状を有し(アングル材)、前面側パネル11と接する面において接着等によって固定されている。アングル材の利用により、低コストにて圧力分散部材を設けることができる。
なお、第1の圧力分散部材16-1の概念を第2の圧力分散部材に用いるものであってもよいし、第2の圧力分散部材17-1の概念を第1の圧力分散部材に用いるものであってもよい。
また、ここではそれぞれ前面側パネルに固定されるものを例としたが、後面側パネルに固定されるものであってもよい。
【0041】
図9には、さらに別の一例として、第1の圧力分散部材と第2の圧力分散部材の、パネル体の厚さ方向の形成範囲が、前面側パネル11の折り返し構造部分111,112、及び、後面側パネル12の折り返し構造部分121,122の範囲に至るように(上面若しくは底面から見た際に、各部材が重畳された位置となるように)構成されているもの(パネル体1-5)を示した。
即ち、第1の圧力分散部材16-2と第2の圧力分散部材17-2の右端(前面側)が、それぞれ、前面側パネル11の折り返し構造部分111と折り返し構造部分112がある位置まで延長されており、また、第1の圧力分散部材16-2と第2の圧力分散部材17-2の左端(後面側)が、それぞれ、後面側パネル12の折り返し構造部分121と折り返し構造部分122がある位置まで延長されている。
これにより、強度が向上され、樹脂枠に歪みが生じることをより効果的に防止することができる。
なお、ここでは、圧力分散部材の両端で、パネルの折り返し構造部分にまで至るものを例としたが、何れか一方側のみパネルの折り返し構造部分にまで至るものとしてもよい。
【0042】
各実施形態においては、上部樹脂枠と下部樹脂枠について各実施形態で共通の形態のものを例として説明したが、本発明をこれに限るものではなく、任意の形状の上部樹脂枠又は下部樹脂枠に対して、上記説明した第1の圧力分散部材と第2の圧力分散部材の概念を適用することができる。
図10(概略図)には、そのようなものの一例を示した。
図10のパネル体1-6は、上部樹脂枠と下部樹脂枠が断面視でZ字状の形状をしており、隣り合う上下のパネル体でこれが組み合う構成となっている(相互にあいじゃくり構造となるように形成されている)。
第1の圧力分散部材16-3は、幅方向の中央付近に上部樹脂枠の内側に沿うような形状をしており、前面側パネル及び後面側パネルの何れにも接触していないものであり、概念として実施形態1の第1の圧力分散部材16と同様である。
第2の圧力分散部材17-3は、下部樹脂枠の内側に沿うような形状をしており、前面側パネルに対して固定される面を有し、後面側パネルには接触していないものであり、概念として
図8の第1の圧力分散部材16-1と同様である。
このように、任意の形状の上部樹脂枠又は下部樹脂枠に対して、上記それぞれ説明した、各第1の圧力分散部材若しくは第2の圧力分散部材の概念を適用することができる。
【0043】
なお、各実施形態では、第1の圧力分散部材16が、パネル体の幅方向の全域にわたって形成されるものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、下部樹脂枠に形成される断熱材の注入口に対向する位置(高圧がかかり、変形が危惧される箇所)に、設けるものであればよい。“高圧がかかり、変形が危惧される箇所”は、各パネル体の構成や、断熱材を注入するための機械設備等に応じて変化するものであり、これらに応じて適宜“高圧がかかり、変形が危惧される箇所”が定められるものである。
また、各実施形態では、第2の圧力分散部材17が、注入口の両側(高圧がかかり、変形が危惧される箇所)に形成されているものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、パネル体の幅方向の全域にわたって形成されるものとしてもよい。
【0044】
各実施形態では、第1の圧力分散部材及び第2の圧力分散部材が、パネル体の内部(上部樹脂枠の内側及び下部樹脂枠の内側)に設けられるものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、第1の圧力分散部材若しくは第2の圧力分散部材が、パネル体の外周部分(上部樹脂枠の外側若しくは下部樹脂枠の外側)に設けられるものであってもよい。ただし、その場合には、パネル体間の接合を阻害しないように、第1の圧力分散部材若しくは第2の圧力分散部材を設けるためのクリアランスが必要となるため、上部樹脂枠若しくは下部樹脂枠の設計変更が必要となる場合がある。これに対し、実施形態のようにパネル体の内部に設ける方式によれば、従来のパネル体の各構成の変更を要することなく、第1の圧力分散部材若しくは第2の圧力分散部材を設けることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1...パネル体
11...前面側パネル
12...後面側パネル
13...上部樹脂枠
14...下部樹脂枠
15...断熱材
16...第1の圧力分散部材
17...第2の圧力分散部材