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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033272
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 16/02 20060101AFI20240306BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240306BHJP
   B23Q 1/52 20060101ALI20240306BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B23Q16/02 Z
B23Q17/00 A
B23Q1/52
B23Q11/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136770
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石崎 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 光
【テーマコード(参考)】
3C029
3C048
【Fターム(参考)】
3C029EE01
3C048DD11
3C048EE00
(57)【要約】
【課題】回転割出し装置を含む工作機械において、その回転割出し装置に供給される作動流体がフレーム内の空間に漏洩したことを検知できる構成を提供すること。
【解決手段】回転軸の端部に取り付けられた回転対象部材の角度位置を割り出すための回転割出し装置を含む工作機械であって、回転割出し装置が、割り出された角度位置で回転軸を保持するクランプ装置、及び、フレーム内の空間の内圧を高めるように空間に圧縮空気を供給するエアパージ装置であって圧縮空気の供給源とフレームとを接続する供給管路中に設けられた圧力調整器を含むエアパージ装置を備えた工作機械において、供給管路における圧力調整器よりもフレーム側に設けられると共に供給管路内の圧力に応じて圧力信号を出力する圧力センサと、圧力センサからの圧力信号に基づいて異常の有無を判別する判別器とを含む異常判別装置を備える。

【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の端部に取り付けられた回転対象部材の角度位置を割り出すための回転割出し装置を含む工作機械であって、前記回転割出し装置が、割り出された角度位置で前記回転軸を保持するクランプ装置、及び、フレーム内の空間の内圧を高めるように前記空間に圧縮空気を供給するエアパージ装置であって圧縮空気の供給源と前記フレームとを接続する供給管路中に設けられた圧力調整器を含むエアパージ装置を備えた工作機械において、
前記供給管路における前記圧力調整器よりも前記フレーム側に設けられると共に前記供給管路内の圧力に応じて圧力信号を出力する圧力センサと、前記圧力センサからの圧力信号に基づいて異常の有無を判別する判別器とを含む異常判別装置を備えた
ことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記圧力センサは、圧力スイッチである
ことを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の端部に取り付けられた回転対象部材の角度位置を割り出すための回転割出し装置を含む工作機械であって、その回転割出し装置が、割り出された角度位置で回転軸を保持するクランプ装置、及び、フレーム内の空間の内圧を高めるように前記空間に圧縮空気を供給するエアパージ装置であって圧縮空気の供給源とフレームとを接続する供給管路中に設けられた圧力調整器を含むエアパージ装置を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような工作機械に備えられる回転割出し装置は、割り出された回転軸の角度位置を保持するためのクランプ装置を備えている。また、そのような回転割出し装置には、そのフレーム内の空間にクーラント液等が侵入しないようにするために、その空間に圧縮空気を供給するためのエアパージ装置を備えているものがある。そして、そのような回転割出し装置の一例として、特許文献1に開示された装置が挙げられる。
【0003】
その特許文献1に開示された回転割出し装置について、より詳しくは、その回転割出し装置は、作動流体が供給されるクランプ用の空間(以下、「圧力室」と言う)と、回転部材(回転軸)の軸線方向に作動するピストンと、回転軸に対して相対回転不能に設けられたブレーキディスクと、ケース(フレーム)に固定された被制動部材とを含むクランプ機構(クランプ装置)を備えている。そして、その回転割出し装置では、作動流体が圧力室に供給されることで、ピストンを回転部材(回転軸)の軸線方向に作動させ、そのピストンがブレーキディスクを被制動部材に押し付けることで、割り出された角度位置で回転軸が保持されるようになっている。
【0004】
また、その回転割出し装置は、供給管路等を介して圧縮空気の供給源に接続されるエアパージ機構(エアパージ装置)を備えている。そして、その回転割出し装置では、そのエアパージ装置によりケース内(フレーム内)の空間に圧縮空気が供給され、その空間の圧力が大気圧よりも高く保持されることで、その空間への切削油剤等の侵入が防止されるようになっている。
【0005】
なお、そのような工作機械に備えられる回転割出し装置には、回転軸(回転対象部材)に取り付けられた治具ユニットに作動流体を供給するために、フレームの内部にロータリージョイントを備えたものがある。そして、そのような回転割出し装置の一例として、特許文献2に開示された装置が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-160262号公報
【特許文献2】特開2021-088004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述した特許文献1に開示されているようなクランプ装置を備えた回転割出し装置においては、作動流体が供給されるクランプ用の空間は、Oリング等のシール材により密封されている。しかし、そのシール材は、経年変化や回転割出し装置の使用中の摺動に伴い、そのシール性能が低下する場合がある。そして、そのようにシール性能が低下すると、圧力室に供給される作動流体がフレーム内の空間に漏洩する状態となる場合がある。そして、そのような状態となると、作動流体によって作動されるクランプ装置の動作が正常に行われなくなって、回転軸における角度位置の精度が低下するといった問題が生じる場合がある。
【0008】
また、クランプ装置に限らず、特許文献2に開示された回転割出し装置におけるロータリージョイントでも、フレーム内の空間への作動流体の漏洩が発生する場合がある。すなわち、そのロータリージョイントにおいても、その内部において作動流体が供給される流路を密閉するために設けられたシール材が劣化し、シール性能が低下した場合において、その流路に供給される作動流体がフレーム内の空間に漏洩する状態となる場合がある。そして、そのような状態となると、そのロータリージョイントを介して作動流体が供給される治具ユニット等の装置の動作が正常に行われなくなり、回転割出し装置の作動が正常に行われないといった問題が生じる場合がある。
【0009】
しかし、従来の工作機械では、前記のような問題を生じる回転割出し装置のフレーム内部での作動流体の漏洩を検出する手段は備えられていない。そのため、前記のような問題が発生しても、その原因が作動流体の漏洩によるものであるということが直ぐには判別できず、その原因(作動流体が漏洩した状態)が解消されない状態が続く虞がある。
【0010】
以上のような従来の工作機械における問題を鑑み、本発明は、前記のような回転割出し装置を含む工作機械において、その回転割出し装置に供給される作動流体がフレーム内の空間に漏洩したことを検知できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、回転軸の端部に取り付けられた回転対象部材の角度位置を割り出すための回転割出し装置を含む工作機械であって、特に、回転割出し装置が、割り出された角度位置で回転軸を保持するクランプ装置、及びフレーム内の空間の内圧を高めるようにその空間に圧縮空気を供給するエアパージ装置であって圧縮空気の供給源とフレームとを接続する供給管路中に設けられた圧力調整器を含むエアパージ装置を備えた工作機械を前提とする。
【0012】
その上で、本発明は、工作機械は、供給管路における圧力調整器よりもフレーム側に設けられると共に供給管路内の圧力に応じて圧力信号を出力する圧力センサと、圧力センサからの圧力信号に基づいて異常の有無を判別する判別器とを含む異常判別装置を備えていることを特徴とする。
【0013】
また、そのような本発明による工作機械において、圧力センサは、圧力スイッチであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前述のような前提とする回転割出し装置を含む工作機械において、エアパージ装置における供給管路に対し設けられると共にその管路内の圧力に応じた圧力信号を出力する圧力センサが設けられている。また、その圧力センサは、その供給管路における圧力調整器よりも回転割出し装置のフレーム側に設けられている。それにより、その圧力センサによって検出される圧力は、回転割出し装置におけるフレーム内の内圧と実質的に同じ圧力となる。
【0015】
その上で、本発明による工作機械は、その圧力センサからの圧力信号に基づいて異常の有無を判別する判別器を備えている。それにより、回転割出し装置のフレーム内の空間に前述のように作動流体が漏洩し、その空間の内圧が高まって異常な圧力となると、それが圧力センサによって検出され、その異常な圧力に応じた圧力信号に基づいて、その状態が異常として判別器で判別されることとなる。
【0016】
したがって、そのような圧力センサ及び判別器を含む異常判別装置を備えた本発明の工作機械によれば、回転割出し装置におけるフレーム内の空間に作動流体が漏洩した場合に、その状態が異常判別装置によって異常として判別(検知)されることとなる。そこで、その工作機械において、例えば、その異常と判別されたことが表示器等に表示されるようにすることで、作業者に対しそのような状態となっていることを把握させることができるようになる。
【0017】
このように、本発明の工作機械によれば、その回転割出し装置におけるフレーム内の空間に作動流体が漏洩した状態になったことを検知する異常判別装置が備えられているため、その検知結果を適当な手段によって作業者が把握できるようにすることで、その回転割出し装置において作動流体によって作動される装置の動作が正常に行われなくなった場合であって、その原因がフレーム内の空間への作動流体の漏洩である場合に、そのことを作業者が把握できるようになる。したがって、その工作機械によれば、前記のような場合において、その原因が解消されない状態が続くことを防止することが可能になる。
【0018】
また、本発明の工作機械において、圧力スイッチが圧力センサとして設けられる構成により、より簡単な構成で本発明の工作機械を実現することが可能となる。それにより、その工作機械の製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明が適用された工作機械の一実施形態を示す正面図である。
図2図1の工作機械における回転割出し装置を示す正面断面図である。
図3図2の要部を示す部分拡大断面図である。
図4図1の工作機械における異常判別装置を示す回路図である。
図5】本発明が適用された工作機械の別の実施形態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面に基づき、本発明が適用された工作機械の一実施形態(実施例)について説明する。
【0021】
図1は、本発明が適用された工作機械1を示している。図示のように、工作機械1は、主軸1aの回転軸線の方向が水平方向と平行な方向の工作機械1(所謂、横型マシニングセンタ)である。また、工作機械1は、基台となるベッド1bと、ベッド1bに対し水平方向におけるX軸方向へ移動可能に支持されたコラム1cと、コラム1cに対し上下方向であるY軸方向へ移動可能に支持された主軸ヘッド1dと、X軸方向及びY軸方向と直交する水平方向におけるZ軸方向へ移動可能にベッド1b上に設けられたテーブル1eとを備えている。なお、その工作機械1には、筐形の外装カバー1fが備えられている。その外装カバー1fは、工作機械1におけるワークの加工が行われる加工領域を含むベッド1bの上方の領域を覆うかたちで、ベッド1bに対し取り付けられている。
【0022】
また、工作機械1は、ワークの角度位置を割り出すための回転割出し装置としての回転テーブル装置2を備えている。そして、その回転テーブル装置2は、工作機械1のテーブル1e上に載置されるかたちで設けられている。
【0023】
その回転テーブル装置2は、図2及び図3に示すように、工作機械1に対し取り付けられるフレーム5と、フレーム5に対し回転可能に支持される主軸3と、主軸3の一方の端部において主軸3に対し相対回転不能に取り付けられる円テーブル22とを備えている。なお、その回転テーブル装置2は、主軸3の軸線を鉛直方向に向けて設置される、所謂横置き型の回転テーブル装置である。
【0024】
また、その回転テーブル装置2について、フレーム5は、工作機械1(テーブル1e)に対する設置面21とは反対側の面に開口する収容孔7が形成された構成となっている。但し、その収容孔7は、設置面21側において閉塞された有底の孔となっている。その上で、フレーム5は、収容孔7の底面から鉛直方向に伸びると共に収容孔7と同心状に形成された円柱状の軸部18を有している。
【0025】
主軸3は、フレーム5における軸部18の外径よりも若干大きい内径の貫通孔3dがその軸線方向に貫通するように形成された軸となっている。また、主軸3は、その軸線方向における中間よりも一端側の部分が他端側の部分よりも外径が大きくなるように形成されている。さらに、主軸3は、その外径が大きい部分の前記他端側に、それ以外の部分よりも外径が大きい鍔部3cを有している。因みに、鍔部3cの外径は、収容孔7の内周面との間に所定の間隙が形成されるような大きさとなっている。
【0026】
そして、主軸3は、前記他端側がフレーム5における収容孔7の底面側となる向きで、貫通孔内にフレーム5の軸部18が位置するような配置で、フレーム5の収容孔7内に設けられている。その上で、フレーム5の軸部18と主軸3(貫通孔3dの内周面)との間には軸受17が介装され、それにより、主軸3は、フレーム5に対し回転可能に支持された状態となっている。
【0027】
円テーブル22は、外径寸法がフレーム5における収容孔7の内径寸法よりも大きい円盤状の部材であり、中心にその厚さ方向に貫通する中心孔22aを有している。なお、円テーブル22においては、その厚さ方向における両端面のうちの一方が、加工対象のワーク等を取り付けるための載置面となる。その上で、円テーブル22は、その両端面のうちの他方が主軸3の一端側に取り付けられるかたちで、複数の取り付けボルトによって主軸3に対して相対回転不能に固定されている。
【0028】
また、回転テーブル装置2は、主軸3に対し相対回転不能に取り付けられたウォームホイール15と、フレーム5に対し回転可能に支持されると共にウォームホイール15と噛合するウォームスピンドル16とを備えている。そして、回転テーブル装置2は、そのウォームスピンドル16が駆動モータ(図示略)によって回転駆動されることにより、ウォームホイール15を介して主軸3(円テーブル22)が回転駆動されると共に、その駆動モータの回転量が制御されることにより、円テーブル22の角度位置が割り出されるものとなっている。
【0029】
その上で、回転テーブル装置2は、前記のように割り出された角度位置で円テーブル22をクランプ状態とするためのクランプ装置4を備えている。そのクランプ装置4は、フレーム5の収容孔7内において前記軸線方向に移動可能に設けられるクランプピストン9と、そのクランプピストン9と共に作動流体が供給される圧力室を形成するためにフレーム5に対し取り付けられる環状のシリンダ部材8とを有している。より詳しくは、以下の通り。
【0030】
なお、フレーム5は、その収容孔7内の円テーブル22側の端部に内径が拡大された拡径部7bを形成されており、それにより、その収容孔7内に段部7cを有する構成となっている。また、前記軸線方向における段部7cの位置は、主軸3における鍔部3cの円テーブル22側を向く面の位置と略同じとなっている。
【0031】
その上で、シリンダ部材8は、その拡径部7bに嵌め合わされると共に段部7cに当接した状態で、複数の取り付けボルトによってフレーム5に対し取り付けられている。また、そのシリンダ部材8は、主軸3を配置可能な内径の貫通孔8cを有している。但し、そのシリンダ部材8における貫通孔8cの内径は、収容孔7の拡径部7bを除く部分の内径よりも小さく、主軸3の鍔部3cの外径と略同じとなっている。それにより、シリンダ部材8は、フレーム5に取り付けられた状態(取付状態)において、その半径方向に関し、収容孔7の内周面から内側へ突出した状態となっている。
【0032】
因みに、そのシリンダ部材8において、その突出する部分(突出部)8aの厚さ寸法(前記軸線方向における寸法)は、拡径部7bに嵌め合わされる部分(取付部)8dの厚さ寸法よりも小さくなっている。また、シリンダ部材8は、前記取付状態において取付部8dが当接するフレーム5における段部7cよりも突出部8aが前記軸線方向において円テーブル22側に位置するように構成されている。したがって、シリンダ部材8において、その取付部8dは、前記軸線方向における突出部8aを除く範囲で収容孔7内に露出される内周面が存在するものとなっており、その内周面のうちの突出部8aよりも収容孔7の底面側の部分(下側内周壁)8bが、収容孔7における拡径部7bを除く部分の内周面に面一で連続するようになっている。
【0033】
クランプピストン9は、全体として貫通孔を有する環状に形成された部材であり、円盤状を成す円盤部9aと、その円盤部9aにおける内周端側で厚さ方向に突出するように形成された円筒状の円筒部9bとから成っている。なお、そのクランプピストン9において、貫通孔の内径は、主軸3における鍔部3cよりも円テーブル22側の部分の外径よりも若干大きく、且つ鍔部3cの外径よりも小さい径となっている。
【0034】
また、円盤部9aの外径は、シリンダ部材8における下側内周壁8bの内径(収容孔7における拡径部7bを除く部分の内径)と略同じ径となっている。さらに、その円盤部9aの厚さ寸法は、前記軸線方向におけるシリンダ部材8の突出部8aと主軸3の鍔部3cとの間の間隔よりも小さい寸法となっている。また、円筒部9bの外径は、シリンダ部材8における貫通孔8cの内径と略同じ径となっている。
【0035】
その上で、クランプピストン9は、主軸3が貫通孔内を貫通すると共に円筒部9bが円テーブル22側に位置する向きで、円盤部9aが主軸3の鍔部3cとシリンダ部材8の突出部8aとの間に位置するように設けられている。なお、そのクランプピストン9において、円筒部9bは、前記軸線方向に関し、円盤部9aが鍔部3cに当接した状態で突出部8aと重複するような寸法を有している。したがって、クランプピストン9は、前記のように設けられた状態で、その円盤部9aの外周面でシリンダ部材8における下側内周壁8bに対し摺動可能に当接すると共に、円筒部9bの外周面で突出部8aの内周面に対し摺動可能に当接した状態となっている。
【0036】
そして、そのようにクランプピストン9が設けられた結果として、回転テーブル装置2は、シリンダ部材8とクランプピストン9との間に、シリンダ部材8における突出部8aの円盤部9aと対向する面及び下側内周壁8b、並びにクランプピストン9における円盤部9aの突出部8aと対向する面及び円筒部9bの外周面で画定される空間11が形成され得るかたちとなっている。そして、その空間11が、クランプ装置4における圧力室となる。そこで、前記のように当接するクランプピストン9の円盤部9aの外周面とシリンダ部材8の下側内周壁8bとの間、及びクランプピストン9の円筒部9bとシリンダ部材8の突出部8aの内周面との間に、それぞれOリング12、14が介装されている。
【0037】
また、回転割出し装置2は、円テーブル22の流路bを介して円テーブル22上の治具2J等に作動流体を供給するためのロータリージョイント23を備えている。そのロータリージョイント23は、それ自体は公知のものであって、フレーム5(軸部18)に対し固定されたディストリビュータ25と、そのディストリビュータ25に対し相対回転可能に嵌装される円筒状のシャフト24であって円テーブル22に取り付けられるシャフト24とで構成されている。
【0038】
また、ディストリビュータ25及びシャフト24のそれぞれには、作動流体を供給する治具2J等の数に応じた流路が形成されており、そのディストリビュータ25側の流路とシャフト24側の流路とが、ディストリビュータ25の外周に亘って形成された溝25cを介して連通されるように構成されている。その上で、シャフト24の内周面とディストリビュータ25の外周面との間には、前記軸線方向における各溝25cの両側に、作動流体の漏出を防止するためのOリング26が介装されている。
【0039】
また、以上で説明した回転テーブル装置2を備える工作機械1は、その回転テーブル装置2におけるフレーム5内の空間の内圧を高めるように前記空間に圧縮空気を供給するエアパージ装置30を備えている。そのエアパージ装置30は、圧縮空気の供給源31とフレーム5とを接続する供給管路32と、その供給管路32中に設けられたレギュレータ33とで構成されている。
【0040】
そして、回転テーブル装置2においては、そのフレーム5に、そのエアパージ装置30における供給管路32が接続される接続ポートAが形成されている。その接続ポートAは、詳細は図示は省略するが、フレーム5における拡径部7bの内周面とフレーム5の外側面とに開口するように穿設された貫通孔における外側端において、供給管路32を接続可能に設けられている。さらに、シリンダ部材8には、その接続ポートA(前記貫通孔)に連通すると共に、半径方向に貫通する貫通孔8eが形成されている。但し、その貫通孔8eは、前記軸線方向に関し、Oリング14よりも円テーブル22側で突出部8aの内周面(貫通孔8cの内周面)に開口するように形成されている。
【0041】
それにより、供給源31から供給される圧縮空気が、エアパージ装置30における供給管路32から回転テーブル装置2における接続ポートA及び貫通孔8eを介してフレーム5内の空間に供給されることとなる。そして、そのように圧縮空気が供給される結果として、前記空間内の圧力が大気圧よりも高く保持され、その空間への切削油剤等の侵入が防止される。
【0042】
そのようなエアパージ装置30において、レギュレータ33が、工作機械1の外装カバー1fの外側において、前記のように供給管路中に設けられている。そのレギュレータ33は、それ自体は公知のものであり、供給源31から供給される圧縮空気の圧力を所望の圧力に調整するための圧力調整器34と、その圧力調整器34に対する下流側の圧力が異常な圧力になった場合に排気(減圧)するための排気弁35とで構成されている。したがって、前記のように前記空間に供給される圧縮空気は、その圧力が圧力調整器34によって所望の圧力に調整された状態となる。また、その圧力調整器34に対する下流側において前記空間内の内圧が異常な圧力になると、前記空間内の圧縮空気が排気弁35から排気されて前記内圧が減圧される。
【0043】
そして、以上で説明した工作機械1において、本発明では、供給管路32内の圧力に応じて圧力信号を出力する圧力センサと、その圧力センサからの圧力信号に基づいて異常の有無を判別する判別器とを含む異常判別装置が備えられている。その上で、以下で説明する本実施例は、その圧力センサとして圧力スイッチが採用された例である。そのような本実施例の工作機械1について、詳しくは、以下の通りである。
【0044】
前記のように工作機械1は、異常判別装置の構成要素として、供給管路32内の圧力に応じて圧力信号S1を出力する圧力スイッチ37と、その圧力スイッチ37からの圧力信号S1に基づいて異常の有無を判別する判別器41を備えている。また、その異常判別装置43は、判別器41の判別結果を表示する表示器42を含んでいる。
【0045】
それらのうち、圧力スイッチ37は、エアパージ装置30におけるレギュレータ33と回転テーブル装置2におけるフレーム5との間の位置で、供給管路32中に介装されるかたちで設けられている。すなわち、その圧力スイッチ37は、供給管路32における圧力調整器34よりもフレーム5側に設けられている。それにより、その圧力スイッチ37に作用する圧縮空気の圧力は、回転割出し装置2におけるフレーム5内の圧力と実質的に同じ圧力となる。
【0046】
なお、その圧力スイッチ37は、自身に作用する圧縮空気の圧力が設定された圧力(設定圧力)を超えた場合に電気接点が閉じる(通電する)構成のものである。因みに、その設定圧力は、エアパージ装置30における圧力調整器34によって調整された圧力よりも高い圧力とされ、例えば、大気圧+0.1MPaに設定される。
【0047】
また、判別器41は、工作機械1に備えられた制御装置(図示略)内に設けられている。さらに、判別器41は、その入力端において圧力スイッチ37に接続されている。そして、その判別器41は、圧力スイッチ37からの圧力信号S1に従い、供給管路32内における圧力の異常を判別するように構成されている。具体的には、判別器41は、その入力端に圧力信号S1が入力されると、供給管路32内の圧力に異常が発生したことを示す異常信号S2を出力するように構成されている。
【0048】
なお、前記のように、圧力スイッチ37が設けられる位置における供給管路32内の圧力は、回転割出し装置2におけるフレーム5内の圧力と実質的に同じである。したがって、その供給管路32内の圧力の異常は、フレーム5内の圧力の異常とみなされる。また、判別器41において、圧力信号S1の入力に従って異常信号S2が出力されることから、それは、圧力信号S1に基づいて異常が発生したことを判別しているとみなすことができる。
【0049】
また、表示器42は、前記のようにその判別器41による判別結果を表示するものである。したがって、表示器42は、その判別結果を表示するための表示画面(図示略)を備えている。さらに、表示器42は、その入力端において判別器41に接続されている。そして、その表示器42は、その入力端に異常信号S2が入力されると、「フレーム圧力異常」等のエラーメッセージがその表示画面に表示されるように構成されている。なお、表示器42は、工作機械1の外装カバー1fの外側において、作業者がその表示画面を目視できるような位置に設けられている。
【0050】
以上で説明した回転割出し装置2を含む工作機械1においては、例えば、回転割出し装置2におけるクランプ装置4のOリング12、14が劣化あるいは破損してそのシール性能が低下した場合、作動流体が空間11(圧力室)からフレーム5内の空間に漏洩するため、その空間内の圧力が前記設定圧力を超える異常な圧力となる場合がある。そして、フレーム5内の空間の圧力がそのような異常な圧力となると、そのフレーム5に接続されている供給管路32における圧力調整器34よりもフレーム5側の圧力も、その異常な圧力と同じ圧力となる。
【0051】
そして、その圧力設定器34よりもフレ-ム5側の供給管路32中に設けられた圧力スイッチ37にその異常な圧力が作用する結果として、圧力スイッチ37の電気接点が閉じ、圧力スイッチ37から異常判別装置43における判別器41へ向けて圧力信号S1が出力される。さらに、その圧力信号S1が判別器41に入力されたことに伴い、その判別器41は、圧力に異常が発生したことを示す異常信号S2を表示器42へ向けて出力する。そして、表示器42にその圧力の異常を示す前記したエラーメッセージが表示され、それにより、作業者は、フレーム5内の空間の圧力に異常が生じたことを確認できるようになる。
【0052】
それにより、回転テーブル装置2においてクランプ装置4が正常に動作しない異常な状態が発生した場合において、その原因が前記のようなフレーム5内への作動流体の漏洩である場合には、作業者がその原因を容易に把握できるようになる。したがって、その場合においては、その原因が解消されない状態が続くことを防止することが可能となる。なお、以上では、クランプ装置4のシール性能が低下した場合について述べたが、ロータリージョイント23のシール性能が低下した場合においても、同様の作用、効果が得られる。
【0053】
以上では、本発明の工作機械の一実施例について説明したが、本発明による工作機械は、前記実施例に限定されるものではなく、以下のような変形した例でも実施が可能である。
【0054】
(1)異常判別装置について、前記実施例では、その異常判別装置は、作用する圧力が設定圧力を超えた場合に電気接点が閉じる圧力スイッチを圧力センサとして採用したものとなっている。しかし、本発明における異常判別装置は、例えば、作用する圧力の大きさに応じた圧力信号を出力するような圧力検出器を圧力センサとして採用したものであっても良い。
【0055】
なお、そのように圧力検出器を圧力センサとして採用する場合には、異常判別装置における判別器は、図5に示すような、閾値が設定される記憶器と、その閾値と圧力検出器からの圧力信号とを比較して圧力信号が閾値を超えたか否かを判別する比較器とを有するものとされる。そして、圧力信号が閾値を超えた場合に比較器が異常信号を出力するようにすれば良い。さらに、そのような圧力検出器を採用した場合に、圧力信号に応じた数値を表示器の表示画面に表示させるようにしても良い。
【0056】
また、前記実施例では、異常判別装置は、判別器での判別結果に基づいて表示画面にエラーメッセージを表示する表示器を備えたものとなっている。すなわち、その異常判別装置は、作業者に異常を知らせるための手段(異常警報手段)として前記した表示器を備えたものとなっている。しかし、本発明における異常判別装置がそのような異常警報手段を備える場合であっても、その異常警報手段は、前記した表示器に限らず、点灯で異常を知らせる警告灯や警報音で異常を知らせる警報装置であっても良い。
【0057】
さらに、異常判別装置は、そのような異常警報手段を備えるものには限らず、工作機械に対し異常信号を出力するように構成されたものであっても良い。そして、その場合には、工作機械の制御装置でその異常信号が利用される。なお、その制御装置による異常信号の利用としては、例えば、異常信号が入力された場合に工作機械の運転が行われないようにする等が考えられる。
【0058】
(2)回転割出し装置におけるクランプ装置について、前記実施例では、そのクランプ装置として回転軸の軸線方向に移動可能なクランプピストンによって回転軸を保持する、所謂ディスク式のクランプ装置が採用されている。しかし、クランプ装置は、そのようなディスク式のものに限らず、クランプスリーブによって回転軸を保持する、所謂スリーブ式のクランプ装置であっても良い。また、クランプ装置は、前記したディスク式やスリーブ式のような、摩擦力によって回転軸を保持するものに限らず、回転軸側の噛合歯とフレーム側のカップリングとの機械的な噛み合いによって回転軸を保持する、所謂カップリング式のクランプ装置であっても良い。
【0059】
なお、クランプ装置は、作動油が作動流体として供給される、所謂油圧式のクランプ装置であっても良いし、圧縮空気が作動流体として供給される、所謂空圧式のクランプ装置であっても良い。さらに、クランプ装置は、前記した油圧式や空圧式のような、供給源と同じ圧力の作動流体が供給されるものに限らず、供給源から供給される圧縮空気の圧力が空油圧変換器で作動油の圧力に変換されると共にその変換された圧力の作動油が作動流体として供給される、所謂空油圧式のクランプ装置であっても良い。
【0060】
(3)本発明が前提とする工作機械に含まれる回転割出し装置について、前記実施例では、その回転割出し装置として主軸の軸線を鉛直方向に向けて設置される、所謂横置き型の回転テーブル装置が採用されている。しかし、回転割出し装置として回転テーブル装置が採用される場合に、その回転テーブル装置は、前記のような横置き型の回転テーブル装置に限らず、主軸の軸線を水平方向に向けて設置される、所謂縦置き型の回転テーブル装置であっても良い。
【0061】
また、本発明が適用される回転割出し装置は、前記のような回転テーブル装置に限らない。例えば、傾斜割出し部分と回転割出し部分との2種類の回転割出し装置を有する、所謂傾斜円テーブル装置の傾斜割出し部分(または回転割出し部分)に本発明が適用されても良い。さらに、前記した回転テーブル装置や傾斜円テーブル装置のような加工対象の角度位置を割り出す回転割出し装置に本発明が適用されるのに限らず、支持軸(回転軸に相当)によって支持された主軸スピンドル(回転対象部材に相当)の角度位置を支持軸の軸線周りに割り出すように構成された、所謂ミーリングヘッドの角度割出し装置に本発明が適用されても良い。
【0062】
また、前記実施例では、回転割出し装置は、回転対象部材上に設けられた治具等に作動流体を供給するためのロータリージョイントを備えたものとなっている。しかし、回転割出し装置は、そのようなロータリージョイントを備えるものに限らない。
【0063】
なお、本発明は、以上で説明したいずれの実施形態にも限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 工作機械
1a 主軸
1b ベッド
1c コラム
1d 主軸ヘッド
1e テーブル
1f 外装カバー
2 回転テーブル装置
2J 治具
3 主軸
3c 鍔部
3d 貫通孔
4 クランプ装置
5 フレーム
7 収容孔
7b 拡径部
7c 段部
8 シリンダ部材
8a 突出部
8b 下側内周壁
8c 貫通孔
8d 取付部
8e 貫通孔
9 クランプピストン
9a 円盤部
9b 円筒部
11 空間(圧力室)
12 Oリング
14 Oリング
15 ウォームホイール
16 ウォームスピンドル
17 軸受
18 軸部
21 設置面
22 円テーブル
22a 中心孔
23 ロータリージョイント
24 シャフト
25 ディストリビュータ
25c 溝
26 Oリング
30 エアパージ装置
31 供給源
32 供給管路
33 レギュレータ
34 圧力調整器
35 排気弁
37 圧力スイッチ
41 判別器
42 表示器
43 異常判別装置
51 判別器
52 表示器
53 異常判別装置
54 記憶器
55 比較器
57 圧力検出器
A 接続ポート
b 流路
S1 圧力信号
S2 異常信号
図1
図2
図3
図4
図5