(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033278
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】個数計
(51)【国際特許分類】
G01G 19/42 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01G19/42 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136776
(22)【出願日】2022-08-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】大澤 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】須賀 一貴
(57)【要約】
【課題】個数計における登録データの呼び出しを効率化する。
【解決手段】上記課題を解決するために、個数計(10)は、計数したい対象物品を載せる計量皿(11)と、前記計量皿に接続された計量センサ(21)と、一つの物品に対して、少なくとも、固有の識別ナンバー、品名、単重を、登録データとして記憶した登録データテーブル(25)を有する記憶部(24)と、前記計量皿に前記対象物品を1つ載せるよう促し、前記計量センサから前記対象物品1つの単計量値を算出して、前記登録データテーブルから、前記単計量値に対し所定範囲内となる単重を持つ登録データを候補データとして絞り込み、前記候補データを前記単計量値との偏差の絶対値が近い順に選択ソートしたソート済候補データを得る演算処理部(23)と、前記ソート済候補データを、検索上位から順に呼び出して表示する表示部(51)と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計数したい対象物品を載せる計量皿と、
前記計量皿に接続された計量センサと、
一つの物品に対して、少なくとも、固有の識別ナンバー、品名、単重を、登録データとして記憶した登録データテーブルを有する記憶部と、
前記計量皿に前記対象物品を1つ載せるよう促し、前記計量センサから前記対象物品1つの単計量値を算出して、前記登録データテーブルから、前記単計量値に対し所定範囲内となる単重を持つ登録データを候補データとして絞り込み、前記候補データを前記単計量値との偏差の絶対値が近い順に選択ソートしたソート済候補データを得る演算処理部と、
前記ソート済候補データを、検索上位から順に呼び出して表示する表示部と、
を備えることを特徴とする個数計。
【請求項2】
前記演算処理部は、一つの物品に対して、少なくとも、固有の識別情報と単重を、登録データとして記憶した外部登録データテーブルを備える外部記憶部と接続し、前記外部登録データテーブルから、前記単計量値に対し所定範囲内となる単重を持つ登録データを候補データとして絞り込み、該候補データを、リストアップ順に、前記表示部に呼び出して表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の個数計。
【請求項3】
前記演算処理部は、前記単計量値が予め設定された呼出下限値未満のとき、前記計量皿に載せる前記対象物品を要求個数まで追加するよう要求し、前記要求個数の対象物品の総計量値を前記要求個数で割った平均単計量値を前記単計量値として、前記登録データテーブルから前記候補データを絞り込むことを特徴とする請求項1に記載の個数計。
【請求項4】
前記演算処理部は、前記単計量値が予め設定された呼出下限値未満のとき、前記計量皿に載せる前記対象物品を要求個数まで追加するよう要求し、前記要求個数の対象物品の総計量値を前記要求個数で割った平均単計量値を前記単計量値として、前記外部登録データテーブルから前記候補データを絞り込むことを特徴とする請求項2に記載の個数計。
【請求項5】
前記演算処理部は、前記ソート済候補データを、さらに、最終計数日が新しい順、使用頻度が高い順、ルーティン設定の順、のいずれか一つまたは組み合わせてソートすることを特徴とする請求項1に記載の個数計。
【請求項6】
前記演算処理部は、前記候補データを、さらに、最終計数日が新しい順、使用頻度が高い順、ルーティン設定の順、のいずれか一つまたは組み合わせてソートすることを特徴とする請求項2に記載の個数計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物品の個数を計数するはかりである、個数計に関する。
【背景技術】
【0002】
個数計は、物品の個数を計数するはかりであり、物品の識別情報と単重(物品一つの重さ)を記憶部に予め登録しておき、登録済の同一種類の物品が複数個、計量皿に載せられたときに得られた計量値を単重で割って、該物品の個数を計数するものである。このため、個数計では、予め物品の単重の登録作業を行い、計数したい物品の登録データを呼び出して、計数作業を行う。以降、計数したい物品を“対象物品”と言う。
【0003】
登録データを呼び出す手法としては、例えば以下のものがある。
(i)対象物品の識別ナンバーをキー入力する。
(ii)対象物品の品名をキー入力する。
(iii)対象物品の識別ナンバーのバーコードをスキャンする。
特許文献1には、上記(iii)の手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の手法で登録データを呼び出すのは、上記(i)の場合:物品の個々のIDを管理するのが面倒、上記(ii)の場合:品名のキー入力に時間がかかる、上記(iii)の場合:対象物品にバーコードが無い場合は利用できない、という不便があり、特に、登録データが50品目以上に及ぶ場合は、都度の登録データの呼び出しが、計数作業の作業効率を低下させていた。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題を解決するためのものであり、個数計における登録データの呼び出しを効率化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の個数計は、計数したい対象物品を載せる計量皿と、前記計量皿に接続された計量センサと、一つの物品に対して、少なくとも、固有の識別ナンバー、品名、単重を、登録データとして記憶した登録データテーブルを有する記憶部と、前記計量皿に前記対象物品を1つ載せるよう促し、前記計量センサから前記対象物品1つの単計量値を算出して、前記登録データテーブルから、前記単計量値に対し所定範囲内となる単重を持つ登録データを候補データとして絞り込み、前記候補データを前記単計量値との偏差の絶対値が近い順に選択ソートしたソート済候補データを得る演算処理部と、前記ソート済候補データを、検索上位から順に呼び出して表示する表示部と、を備える。
【0008】
第2の態様の個数計では、第1の態様において、前記演算処理部は、一つの物品に対して、少なくとも、固有の識別情報と単重を、登録データとして記憶した外部登録データテーブルを備える外部記憶部と接続し、前記外部登録データテーブルから、前記単計量値に対し所定範囲内となる単重を持つ登録データを候補データとして絞り込み、該候補データを、リストアップ順に、前記表示部に呼び出して表示するのも好ましい。
【0009】
第3の態様の個数計では、第1の態様において、前記演算処理部は、前記単計量値が予め設定された呼出下限値未満のとき、前記計量皿に載せる前記対象物品を要求個数まで追加するよう要求し、前記要求個数の対象物品の総計量値を前記要求個数で割った平均単計量値を前記単計量値として、前記登録データテーブルから前記候補データを絞り込むのも好ましい。
【0010】
第4の態様の個数計では、第2の態様において、前記演算処理部は、前記単計量値が予め設定された呼出下限値未満のとき、前記計量皿に載せる前記対象物品を要求個数まで追加するよう要求し、前記要求個数の対象物品の総計量値を前記要求個数で割った平均単計量値を前記単計量値として、前記外部登録データテーブルから前記候補データを絞り込むのも好ましい。
【0011】
第5の態様の個数計では、第1の態様において、前記演算処理部は、前記ソート済候補データを、さらに、最終計数日が新しい順、使用頻度が高い順、ルーティン設定の順、のいずれか一つまたは組み合わせてソートするのも好ましい。
【0012】
第6の態様の個数計では、第2の態様において、前記演算処理部は、前記候補データを、さらに、最終計数日が新しい順、使用頻度が高い順、ルーティン設定の順、のいずれか一つまたは組み合わせてソートするのも好ましい。
【0013】
第7の態様の個数計として、第1、3、5のいずれかの態様において、前記記憶部は、前記単重の数値をハッシュ化したハッシュ値を、前記識別ナンバーで前記登録データテーブルと紐づけて記憶したハッシュテーブルを備え、前記演算処理部は、前記単計量値を前記ハッシュテーブルと同一のハッシュ関数でハッシュ化したハッシュ値を用いて、前記候補データを絞り込むのも好ましい。
【0014】
第8の態様の個数計として、第2、4、6のいずれかの態様において、前記外部記憶部は、前記単重の数値をハッシュ化したハッシュ値を、前記識別情報で前記外部登録データテーブルと紐づけて記憶したハッシュテーブルを備え、前記単計量値を前記ハッシュテーブルと同一のハッシュ関数でハッシュ化したハッシュ値を用いて、前記候補データを絞り込むのも好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、個数計における登録データの呼び出しを効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る個数計の正面斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る個数計のフロントパネルの正面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る個数計の機能構成ブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係る個数計の登録データテーブルの構成例である。
【
図5】第1の実施形態に係る個数計の計量識別呼び出しの動作フローチャートである。
【
図6】第1の実施形態に係る個数計の計量識別呼び出しの動作イメージ図である。
【
図7】第1の実施形態に係る個数計の計量識別呼び出しの結果表示例である。
【
図8】第2の実施形態に係る個数計の計量識別呼び出しの動作フローチャートである。
【
図9】第2の実施形態に係る個数計の総量確認の動作フローチャートである。
【
図10】第3の実施形態に係る個数計の計量識別呼び出しの動作フローチャートである。
【
図11】第3の実施形態に係る個数計に対応する外部登録データテーブルの構成例である。
【
図12】第4の実施形態に係る個数計の機能構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の好適な実施の形態について図面に基づき説明する。
【0018】
〔第1の実施形態〕
(構成の説明)
図1は本発明の第1の実施形態に係る個数計10の正面斜視図である。個数計10は、計量皿11、はかり本体12、フロントパネル13を備える。計量皿11の上には、対象物品を入れるための風袋容器16が載せられてもよい。フロントパネル13において、中央(破線で示す)より左側は、主に計数作業時に使用される要素が多いため、以降、計数作業用パネル14とする。中央より右側は、主に単重の登録作業時に使用される要素が多いため、以降、登録作業用パネル15とする。フロントパネル13は、少なくとも、RS‐232Cコネクタ、USBコネクタ、SDスロットを備えるコネクタ群26を側面に備えており、コネクタ群26には、外部記憶部34(後述する
図3で示す)が接続されている。フロントパネル13は、RS‐232CまたはUSBケーブルによりはかり本体12とセパレート配置することも可能であり、RS‐232CまたはUSBケーブルにより、キーボード、バーコードリーダー、およびプリンタ(いずれも図示略)を接続することが可能である。
【0019】
図2は個数計10のフロントパネル13の正面図である。計数作業用パネル14は、個数表示部41、重量表示部42、単重表示部43、計数作業用キー群44を備える。各表示部41,42,43は液晶または有機ELディスプレイであり、計量皿11に対象物品を載せたときに、重量表示部42には計量皿11に載せられた対象物品全数の重量が表示され、単重表示部43には対象物品の登録された単重が表示され、個数表示部41には対象物品の個数が表示される。計数作業用キー群44は、電源キー441、ゼロキー442、風袋設定キー443、および風袋引キー444を備える。電源キー441は、電源のON/OFFをする。ゼロキー442は、はかりのゼロ点を設定する。風袋引キー444は、風袋容器16などの風袋重量を差し引く。風袋設定キー443は、風袋重量をテンキー531(後述)で設定したいときに使用される。
【0020】
登録作業用パネル15は、内容表示部51と、基本キー群52と、登録作業キー群53と、機能キー群54を備える。内容表示部51は表示部41,42,43と同様のディスプレイであり、作業内容に関する情報が表示される。基本キー群52は、メモリー呼出キー521と、キー入力キー522と、サンプル入力キー523を備える。
【0021】
基本キー群52は、電源キー441が押された時、計数作業に必要な単重を設定するために、最初に押されるキー群である。この誘導のため、これらのキー521,522,523には、LEDランプ55の点滅が生じるようになっている。キー入力キー522は、テンキー531(後述)から単重の設定(登録)を行うものである。サンプル入力キー523は、計量皿11上に載せた物品(単数または複数)を“サンプル”として、サンプルの計量値を単重として設定(登録)するものである。メモリー呼出キー521は、後述する記憶部24,34に記憶(登録)されたデータのなかから、対象物品の登録データを“呼び出し”して、単重を設定するものである。メモリー呼出キー521は、以下の従来的な呼び出し(i)~(iii)に加えて、呼び出し(iv)を行う。これらの詳細は後述する。
(i)識別ナンバーのキー入力呼び出し
(ii)品名呼び出し
(iii)識別ナンバーのバーコード呼び出し
(iv)計量識別呼び出し
【0022】
登録作業キー群53は、テンキー531、上下限キー532、メモリーキー533、登録キー534を備え、キー531,532,533,534は、単重設定に使用される。テンキー531は、数値,ローマ字,カナ,記号の入力とクリアが可能である。上下限キー532は、コンパレータ機能(計数作業時に、設定された上限値、下限値に対し個数あるいは重量を比較し、比較結果を、“HI”、“OK”、“LO” などの段階で表示する機能)のための上下限値を設定する。メモリーキー533は、記憶部24に記憶させる内容の確認のために内容表示部51に入力内容(識別ナンバー、単重、品名、上下限値)を表示する。登録キー534は、メモリーキー533で確認した内容を記憶部24,34に記憶(登録)する。押し忘れが無いように、登録キー534にも、LEDランプ55の点滅による誘導が生じるようになっている。
【0023】
機能キー群54は、プリンタへの出力を可能にする印字キー541と、合計機能(計数作業時に、計数した個数の累計を行う機能)のための加算キー542および減算キー543と、合計機能での合計値と加算回数を確認する合計キー544と、登録作業時の入力内容の初期化と計数作業時の計量状態の初期化を行うためのリセットキー545を備える。印字キー541と合計キー544は、メモリー呼出キー521が押された時は、表示の送りキーおよび戻しキーとしても機能する(このため、以降、送りキー541,戻しキー544とも記載する)。加算キー542は、登録作業時に、テンキー531を英/カナ/記号の入力キーに変更するようにも機能する。減算キー543は、内容表示部51の表示(
図2参照)を、識別ナンバー(ID)と単重(UW)の組み合わせか、品名(IC)と単重(UW)の組み合わせかを切り替える、切替キーとしても機能する。
【0024】
図3は、個数計10の機能構成ブロック図である。個数計10は、計量センサ21と、A/D変換部22と、演算処理部23と、記憶部24と、コネクタ群26と、外部記憶部34と、表示部41,42,43,51とキー群44,52,53,54を備える。
【0025】
計量センサ21は計量皿11と接続されており、計量皿11が受けた荷重が伝達され、検出される。計量センサ21には、電磁平衡式、歪ゲージ式、または静電容量式などのセンサが用いられてよい。計量センサ21が検出したアナログ信号は、A/D変換部22においてデジタルの荷重信号に変換されて、演算処理部23に出力される。
【0026】
記憶部24は、RAM(Random・Access・Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリーであり、フロントパネル13の中に収容され演算処理部23と接続されている。記憶部24は、演算処理部23の各機能部(後述する)の演算のための各種プログラムを格納するとともに、登録データテーブル25を備える。
図4は登録データテーブル25の構成例である。登録データテーブル25は、1000品目を登録可能であり、一つの物品に対して、固有の識別ナンバー(000001~999999までの数字)、品名、単重を記憶している。具体的に、
図4に示すように、識別ナンバー“000001”に対して、品名“Spoon”,単重“100.000g”、識別ナンバー“000002”に対して、“Plate”,単重“101.000g”と言うように記憶(登録)されている。上下限値、風袋重量が設定されている場合は、例えば、
図4の識別ナンバー“000050”にあるように、品名“Plate 1000”,単重“101.000g”,上限値“101.0500g”,下限値“100.950g”,風袋重量“5.000g”が記憶(登録)されている。登録データテーブル25は、後述する単重登録部233で作成される。
【0027】
外部記憶部34は、例えばSDカード、USBメモリ、ポータブルSSD(Solid・State・Drive)、または、HDD(Hard・Disc・Drive)や光ディスク等の記憶媒体であり、コネクタ群26から外付けで演算処理部23に接続されている。外部記憶部34は、一つの物品に対して、少なくとも、固有の識別情報(数字、アルファベット、カナのいずれかまたは組み合わせにより構成される識別情報。識別ナンバー、品名もこれに含まれる)と単重を記憶した、外部登録データテーブル35を備えている。外部登録データテーブル35は、主に、図示しないパーソナルコンピュータ等で作成されるものである。登録データテーブル25と同様に上下限値、風袋重量を記憶していれば、外部登録データテーブル35からも、これらが読み込まれる。
【0028】
演算処理部23は、例えばCPU(Central・Processing・Unit),ROM(Read・Only・Memory),RAM等を集積回路に実装したマイクロコントローラである。演算処理部23は、計量部231と、計数部232と、単重登録部233と、ナンバー/バーコード呼出部234と、品名呼出部235と、計量識別呼出部236を備える。これらの機能部231、232、233、234、235、236は、CPU、ASIC(Application・Specific・Integrated・Circuit)、FPGA(Field・Programmable・Gate・Array)などのPLD(Programmable・Logic・Device)などの電子回路により構成される。
【0029】
計量部231は、計量センサ21からの荷重信号に基づいて計量皿11に載せられた対象物品全数の計量値(重量)を、重量表示部42に表示する。計数部232は、対象物品全数の計量値を対象物品の単重で割り、計量皿11に載せられた対象物品の個数を計数して、個数表示部41に表示する。
【0030】
単重登録部233は、登録作業時、キー入力キー522により、テンキー531から物品の単重の値が入力された時と、サンプル入力キー523により、物品のサンプルの計量値が単重として入力された時に、物品の品名と単重を、例えば、品名“Spoon”と単重“100.000g”を関連付けて、空きのある識別ナンバーを付して、記憶部24の登録データテーブル25に登録する。上下限キー532により物品の上下限値が、風袋設定キー443から風袋容器16の重量が入力された時は、単重登録部233は、これらの値も関連付けて登録する。
【0031】
ナンバー/バーコード呼出部234,品名呼出部235,および計量識別呼出部236は、メモリー呼出キー521が押された時に機能し、計数を行う対象物品の登録データを呼び出す。ナンバー/バーコード呼出部234は、計数作業時、テンキー531から識別ナンバーの入力があった時、またはバーコードリーダーから識別ナンバーのバーコードがスキャンされた時に機能し、登録データテーブル25(または外部登録データテーブル35)から該当する物品の登録データを呼び出す。すなわち、前述のメモリー呼出キー521による(i):識別ナンバーのキー入力呼び出し、と、(iii):識別ナンバーのバーコード呼び出し、を行う。品名呼出部235は、計数作業時、テンキー531から品名の入力があった時に機能し、登録データテーブル25(または外部登録データテーブル35)から該当する物品の登録データを呼び出す。すなわち、前述のメモリー呼出キー521による(ii):品名呼び出し、を行う。
【0032】
しかしながら、呼び出し(i)の場合:物品の個々のIDが、記憶部24では1000件、外部記憶部34では品目数に制限が無いため、ID管理が面倒、呼び出し(ii)の場合:品名のキー入力に時間がかかる、呼び出し(iii)の場合:対象物品にバーコードが無い場合は利用できない、ということがある。このため、計量識別呼出部236は、新規な呼び出し(iv):計量識別呼び出し、も行う。計量識別呼び出しについては、後述する
図5に基づいて説明する。
【0033】
(動作の説明)
次に、個数計10の計数作業の動作について説明する。電源キー441が押されると、基本キー群52のメモリー呼出キー521、キー入力キー522、サンプル入力キー523の3つのLEDランプ55が点滅し、対象物品の単重を設定するよう促す。
【0034】
キー入力キー522、サンプル入力キー523が押された場合は、前述の単重登録部233が機能して、キー入力またはサンプルの値から単重が設定され、登録されてから、計数作業に移る。メモリー呼出キー521が押された場合は、計数作業に移る前に、登録データの呼び出しを行う。バーコードリーダーから識別ナンバーのスキャンがあった場合は、ナンバー/バーコード呼出部234が機能し、テンキー531からの入力があった場合は、品名呼出部235またはナンバー/バーコード呼出部234が機能する。ここで、計量部231が荷重信号を受けた場合は、計量識別呼出部236が機能して、登録データテーブル25(または外部登録データテーブル35)から、対象物品を、
図5に示す計量識別呼び出しで呼び出す。
【0035】
図5は第1の実施形態に係る個数計10の計量識別呼び出しの動作フローチャートである。まず、ステップS11で、作業者は、電源キー441に続きメモリー呼出キー521を押す。すると、ナンバー/バーコード呼出部234および品名呼出部235の起動が無い場合、計量識別呼出部236が機能する。または、予め個数計10に“自動モード”を設定していた場合は、電源ON後、メモリー呼出キー521を押さずとも、計量識別呼出部236が自動で機能し、すぐにステップS12に移行する。
【0036】
次に、ステップS12で、計量識別呼出部236は、内容表示部51を介して、作業者に、計量皿11に対象物品を“1つ”載せるよう指示を出す(風袋容器16がある場合は、風袋引キー444の後に載せるよう指示を出す)。作業者が対象物品を1つ計量皿11に載せると、ステップS13に移り、計量部231が機能して、対象物品1つの計量値(以降、“単計量値”と言う。)を算出する。次に、ステップS14に移り、計量識別呼出部236は、外部記憶部34の接続の有無を検出する。外部記憶部34が無い場合(No)はステップS15に移行し、外部記憶部34が有る場合(Yes)は、ステップS21に移行する。
【0037】
ステップS15に移行すると、計量識別呼出部236は、記憶部24の登録データテーブル25を読み出す。ステップS16に移り、計量識別呼出部236は、対象物品の単計量値に対し所定範囲内(対象物品の単計量値プラスマイナス5%以内など)となる単重を持つ登録データを絞り込む。全ての登録データについて絞り込みを終えたら、本ステップで絞り込んだデータを“候補データ”として、ステップS17に移る。
【0038】
ステップS17で、計量識別呼出部236は、候補データを、対象物品の単計量値との偏差の絶対値が近い順に、選択ソートする。選択ソートについて、
図6の具体例とともに説明する。計量識別呼出部236は、検索数をn個(n:自然数)、交換数をα個(α:α≦nの自然数)とする。
図6はn=5、α=5として、識別ナンバーでソートする様子を図示している。ステップS17で、計量識別呼出部236は、n+αのソートデータを用意し、候補データからn+αの要素をソートデータにコピーし(
図6の(A))、ソートデータ(n+α個)のソートを行う(
図6の(B))。次に、ソートデータの先頭の要素n個を残し、候補データから次の要素α個をコピーして(
図6の(C))、ソートデータ(n+α個)のソートを行う(
図6の(D))。次に、計量識別呼出部236は、ステップS18に移り、候補データの全ての要素がソート済となったか確認する。全ての要素がソート済でない場合(Nо)はステップS17を繰り返す。全ての要素がソート済となった場合(Yes)はステップS19に移って、先頭から検索上位n個を“ソート済候補データ”として得る(
図6の(E))。
【0039】
ステップS20に移り、計量識別呼出部236は、n個のソート済候補データを、
図7に示すように、個数表示部41に個数を、重量表示部42に単計量値を、および内容表示部51に呼び出した登録データの品名と単重を、検索上位から順に呼び出して、1品目ずつ表示する。表示は、送りキー541および戻しキー544で送ることができる。以降、ステップS24に移行し、計量識別呼出部236は、表示の送り(移動)が停止した品目で対象物品の単重の呼び出しを確定(設定)し、計数作業に移ることができる。
【0040】
一方、ステップ14からステップS21に移行すると、計量識別呼出部236は、外部記憶部34の外部登録データテーブル35を読み出す。ステップS22に移り、計量識別呼出部236は、対象物品の単計量値に対し所定範囲内(対象物品の単計量値プラスマイナス5%以内など)となる単重を持つ登録データを絞り込む。外部記憶部34の場合、登録データの品目数が不明であるため、計量識別呼出部236は、選択ソートを行わず、全ての登録データについて絞り込みを終えると、本ステップで絞り込んだデータを“候補データ”として、ステップS23に移る。ステップS23で、計量識別呼出部236は、候補データを、
図7に示すように、個数表示部41、重量表示部42、および内容表示部51に、候補に該当した順(リストアップ順)に送り表示する。以降、ステップS24に移行し、計量識別呼出部236は、表示の送り(移動)が停止した品目で対象物品の単重の呼び出しを確定(設定)し、計数作業に移ることができる。
【0041】
以上、本形態の個数計10によれば、“計量識別呼び出し”の機能を備えているので、これから計数しようとする対象物品を1つ、はかり(個数計10)に載せるだけで、対象物品の登録データの候補が自動で呼び出される。このため、登録データの品目が多くても、該当するデータをすぐに見つけることができ、計数作業の作業効率が向上する。また、“計量識別呼び出し”では、対象物品が1つあれば登録データの呼び出しができるため、識別ID表やキーボードの用意などの必要も無い。
【0042】
また、本形態の個数計10によれば、内部の記憶部24に限らず、外部記憶部34に有る登録データも使用することができ、内部の記憶部24と外部記憶部34のそれぞれに対応して、効率の良い呼び出し処理を行うことができる。
【0043】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態では、“計量識別呼び出し”において、次の問題が生じた場合に対処する。例えばワッシャーなどの小さな部品では、1つ(単重)が0.05g程度しか無いものがあり、例えば個数計10の最小表示(表示部に表示される最小単位)が0.01gのとき、周囲環境の変化や内部ドリフトにより計量誤差が10%出ると、単重0.05gに対して計量値が0.06gとして算出される場合がある。このような場合、計量誤差の影響により、対象物品の登録データの候補が正しく絞られない可能性がある。この問題に備えて、第2の実施形態では、第1の実施形態における動作フローに、“総量確認”が追加されている。
【0044】
第2の実施形態に係る個数計10の構成は、第1の実施形態の
図1および
図2と同様である。
図8は第2の実施形態に係る個数計10の計量識別呼び出しの動作フローチャートであり、第1の実施形態の
図5と同様の動作については同一のステップ番号を使用している。第2の実施形態では、ステップS12で、対象物品が“1つ” 計量皿11に載せられ、ステップS13で単計量値が算出されると、“総量確認”が行われる。
図9は第2の実施形態に係る個数計10の総量確認の動作フローチャートである。
【0045】
総量確認が開始されると、計量識別呼出部236は、ステップS101に移行して、対象物品(1つ)の単計量値が重量表示部42の最小表示に応じて予め設定された呼出下限値以上か確認する。単計量値が呼出下限値以上であれば(Yes)、総量確認を終了し、取得した単計量値が対象物品(1つ)の単重であるとして、ステップS14(
図8)に戻り、この単重で、登録データの読み出しが行われる。
【0046】
一方、単計量値が呼出下限値未満であれば(No)、計量識別呼出部236は、ステップS102に移行し、作業者に、内容表示部51を介して、対象物品の個数の追加を要求する。ステップS103に移行し、作業者は、追加する数(以降、“要求個数”と言う。)を入力する。要求個数は、作業者が内容表示部51に表示される選択肢、5個/10個/25個/50個/100個などを送りキー541および戻しキー544により選択するか、テンキー531から任意の値を入力する。ステップS104に移行し、作業者は、計量皿11に、要求個数まで対象物品を追加して、登録キー534を押す。ステップS105に移行し、計量識別呼出部236は、対象物品(要求個数)の計量値が呼出下限値以上か確認する。計量値が呼出下限値未満であれば(No)、ステップS102に戻り、要求個数の追加を要求する。計量値が呼出下限値以上であれば(Yes)、ステップS106に移行し、対象物品(要求個数)の総計量値を要求個数で割って、対象物品(1つ)の平均単計量値を求めて、総量確認を終了する。そして、ステップS14(
図8)に戻り、平均単計量値で、登録データの読み出しが行われる。
【0047】
以上、本形態の個数計10によれば、“計量識別呼び出し”の機能に“総量確認”を追加したから、対象物品1つでは重量が軽すぎる場合の計量誤差の影響に対処し、“計量識別呼び出し”が適切に機能する(対象物品が正しく絞られる)ようにすることができる。
【0048】
〔第3の実施形態〕
第3の実施形態では、“計量識別呼び出し”において、次の問題が生じた場合に対処する。内部記憶部24の登録データは上限が1000品目となっており、前述した選択ソートにより、近しい候補を迅速に表示できる。しかしながら、外部記憶部34の登録データは、品目数の上限が不明であるため、対象物品の単計量値に対し所定範囲内となったものが、リストアップ順に表示されるだけである。例えば小ねじなどは、ネジ山の並目と細目、ネジ頭の形状(なべ,皿,丸,平,バインドなど),材料(三価クロメート、ニッケル、亜鉛、ステンレスなど)、表面処理の有無などで膨大な種類があるため、単計量値に対し所定範囲内という絞り込みだけでは、リストアップされる品目が多く、対象物品の登録データがなかなか表示に出てこない可能性がある。さらに、このような部品は型番で管理されていることが多く、よく似た品名と単重で、例えば“品名:コネジ A-1534、 単重:1.20000g”,“品名:コネジ A-1543、 単重:1.21000g”の候補データが挙がった場合、作業者が、データを取り違えて選択する可能性がある。この問題に備えて、第3の実施形態では、第1または第2の実施形態における動作フローに、“追加ソート”が追加されている。
【0049】
第3の実施形態に係る個数計10の構成は、第1および第2の実施形態の
図1および
図2と同様である。
図10は第3の実施形態に係る個数計10の計量識別呼び出しの動作フローチャートであり、第1の実施形態の
図5、第2の実施形態の
図8と同様の動作については同一のステップ番号を使用している。第3の実施形態では、ステップS22で、外部記憶部34の登録データから対象物品の単計量値に対し所定範囲内となる候補データが絞り込まれると、“追加ソート” が行われる。“追加ソート”は、少なくとも次の3つのうちのいずれか一つ、または組み合わせで行われる。
(1)最終計数日
(2)使用頻度
(3)ルーティン設定
【0050】
図11は、第3の実施形態に係る個数計10に対応する外部登録データテーブル35の構成例である。本形態に対応する外部登録データテーブル35には、識別ナンバー,品名,単重,(上下限値),(風袋重量)に加えて、最終計数日,使用頻度,ルーティン設定が記憶(登録)されている。最終計数日は、計数作業で対象物品の単重が設定された時(ステップS24)に、このときの日時が最終計数日として登録または更新される。使用頻度も、同様に、計数作業で対象物品の単重が設定された時(ステップS24)に、使用頻度が1カウント追加されて更新される。ルーティン設定は、作業者が予め登録するものであり、図示しないパーソナルコンピュータ等から作成されるか、登録作業キー群53から設定される。ルーティン設定は、計数作業に一連の流れが有る場合に有用であり、例えば品名で“ネジA→ワッシャーB→ナットC”や、識別ナンバーで“1→50→70”の入力によって設定される。
【0051】
図10のステップS22で、外部記憶部34の登録データから候補データが絞り込まれると、計量識別呼出部236は、候補データに対し、さらに、最終計数日、使用頻度、またはルーティン設定のソートをかける。どのソートを行うかは、内容表示部51にチェックボックスが表示され、送りキー541と戻しキー544、および登録キー534を用いて、作業者が選択できる(複数選択可)。最終計数日のソートが選択されると、候補データが、最終計数日が新しい順にソートされる。使用頻度のソートが選択されると、候補データが、使用頻度が高い順にソートされる。ルーティン設定のソートが選択されると、候補データが、ルーティン順にソートされる。
【0052】
以上、本形態の個数計10によれば、“計量識別呼び出し”の機能に、最終計数日、使用頻度、ルーティン設定による“追加ソート” を追加したから、よく使うものが先に表示されるようになるため、外部記憶部34の登録データの呼び出しが効率化する。
【0053】
本形態は、外部記憶部34を備える場合に特に有効であるが、内部の記憶部24に対する選択ソートの検索数nを多く採る時にも有用である。この場合、登録データテーブル25も、
図11と同様に最終計数日,使用頻度,ルーティン設定が記憶(登録)されており、
図10に示すように、ステップS19の後に、ソート済候補データに対して追加ソートを行うのが有用である。
【0054】
〔第4の実施形態〕
第4の実施形態では、“計量識別呼び出し”において、絞り込みに要する時間をさらに短縮する。
図12は、第4の実施形態に係る個数計10の機能構成ブロック図である。本形態の記憶部24(および/または外部記憶部34)は、さらに、ハッシュテーブル27を備える。ハッシュテーブル27は、物品の、識別情報と、規定のハッシュ関数で単重の数値をハッシュ化したハッシュ値と、を記憶しており、識別情報によって登録データテーブル25(外部登録データテーブル35)と紐づいている。ハッシュテーブル27は、単重登録部233が登録データテーブル25(外部登録データテーブル35)に単重を記憶(登録)するときに自動で作成される。
【0055】
ハッシュテーブル27は、“計量識別呼び出し”の、計量識別呼出部236が単計量値に対し所定範囲内となる候補データを絞り込む際に使用される。すなわち、計量識別呼出部236は、
図5(
図8,
図10でも同様)のステップ16またはステップ22で、単計量値に対し所定範囲内となる単重の値を、ハッシュ検索する。例えば、単計量値101.00gに対しプラスマイナス1%以内を所定範囲とする場合は、102.01g、102.00g、101.99g、101.98g、…99.99gの各値をハッシュテーブル27と同一のハッシュ関数でハッシュ化し、これらのハッシュ値を持つ単重を検索する。本形態の個数計10によれば、“計量識別呼び出し”において、より素早い絞り込みが可能となる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施の形態および変形を述べたが、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることは可能であり、そのような形態は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
10 個数計
11 計量皿
12 はかり本体
13 フロントパネル
14 計数作業用パネル
15 登録作業用パネル
16 風袋容器
21 計量センサ
23 演算処理部
231 計量部
232 計数部
233 単重登録部
234 ナンバー/バーコード呼出部
235 品名呼出部
236 計量識別呼出部
24 記憶部
25 登録データテーブル
27 ハッシュテーブル
34 外部記憶部
35 外部登録データテーブル
51 内容表示部