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特開2024-33283搬送システム、及び搬送装置のメンテナンス方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033283
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】搬送システム、及び搬送装置のメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20240306BHJP
   B65G 1/10 20060101ALI20240306BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B65G1/00 511J
B65G1/00 501C
B65G1/10 Z
B65G1/137 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136784
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 久
(72)【発明者】
【氏名】松本 一宏
(72)【発明者】
【氏名】宮本 省吾
【テーマコード(参考)】
3F022
3F522
【Fターム(参考)】
3F022AA15
3F022FF21
3F022JJ11
3F022MM27
3F022MM28
3F022MM36
3F022MM57
3F022NN55
3F022QQ20
3F522AA02
3F522BB25
3F522BB35
3F522CC01
3F522FF05
3F522FF11
3F522FF12
3F522FF16
3F522FF27
3F522FF37
3F522GG09
3F522GG26
3F522GG34
3F522GG44
3F522GG46
3F522LL62
(57)【要約】
【課題】搬送装置の積載部の劣化を適切に保守する。
【解決手段】搬送対象物を積載して搬送する搬送装置と、前記搬送装置を制御する制御装置と、を備え、前記搬送装置は、走行のための駆動部を含む車体本体と、前記車体本体に積載した前記搬送対象物の向きを変更するための回転機構を有する積載部と、前記積載部の劣化を検知する検知部と、を備え、前記制御装置は、前記検知部が検知した劣化に基づいて前記積載部の保守に関する情報を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送システムであって、
搬送対象物を積載して搬送する搬送装置と、
前記搬送装置を制御する制御装置と、を備え、
前記搬送装置は、
走行のための駆動部を含む車体本体と、
前記車体本体に積載した前記搬送対象物の向きを変更するための回転機構を有する積載部と、
前記積載部の劣化を検知する検知部と、を備え、
前記制御装置は、前記検知部が検知した劣化に基づいて前記積載部の保守に関する情報を出力することを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送システムであって、
前記積載部は、
下支持部と、
前記下支持部の上部にて前記搬送対象物を積載する上支持部と、
前記下支持部に接するように、前記上支持部に取り付けられるローラ部と、を少なくとも有することを特徴とする搬送システム。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送システムであって、
前記検知部は、前記下支持部の摩耗による前記積載部の劣化を検知することを特徴とする搬送システム。
【請求項4】
請求項3に記載の搬送システムであって、
前記検知部は、前記上支持部の回転トルクによって、前記積載部の劣化を検知することを特徴とする搬送システム。
【請求項5】
請求項3に記載の搬送システムであって、
前記検知部は、前記上支持部の回転時に発生する音によって、前記積載部の劣化を検知することを特徴とする搬送システム。
【請求項6】
請求項3に記載の搬送システムであって、
前記検知部は、前記下支持部のひずみによって、前記積載部の劣化を検知することを特徴とする搬送システム。
【請求項7】
請求項3に記載の搬送システムであって、
前記検知部は、前記下支持部から発生した摩耗粉によって、前記積載部の劣化を検知することを特徴とする搬送システム。
【請求項8】
請求項7に記載の搬送システムであって、
前記搬送装置は、前記下支持部から発生する摩耗粉の回収機構を有し、
前記回収機構は、重量センサを有し、
前記検知部は、前記重量センサから取得した情報に基づいて、前記下支持部から発生した摩耗粉を検知することを特徴とする搬送システム。
【請求項9】
請求項3に記載の搬送システムであって、
前記検知部は、前記上支持部の回転速度変動によって、前記積載部の劣化を検知することを特徴とする搬送システム。
【請求項10】
請求項2に記載の搬送システムであって、
前記搬送装置は、
前記上支持部を基準位置から上方向に持ち上げる昇降機構と、
前記下支持部の下方に位置し前記基準位置を調節するための高さ調節機構と、を有することを特徴とする搬送システム。
【請求項11】
請求項2に記載の搬送システムであって、
前記搬送装置は、
前記上支持部を基準位置から上方向に持ち上げる昇降機構と、
前記下支持部の厚さに関する情報を格納する記憶装置と、を有し、
前記昇降機構は、前記下支持部の厚さに関する情報に基づいて、前記基準位置の調整量に制御する高さ調節機構を構成することを特徴とする搬送システム。
【請求項12】
請求項2に記載の搬送システムであって、
前記制御装置は、前記下支持部の交換のスケジュール及び当該交換のコストに関する情報を出力することを特徴とする搬送システム。
【請求項13】
請求項2に記載の搬送システムであって、
前記下支持部は、リング鍛造法によって製造される輪状の部材であることを特徴とする搬送システム。
【請求項14】
制御装置が実行する搬送装置のメンテナンス方法であって、
前記搬送装置は、搬送対象物を積載して搬送するものであって、走行のための駆動部を含む車体本体と、前記車体本体に積載した前記搬送対象物の向きを変更するための回転機構を有する積載部と、前記積載部の劣化を検知する検知部と、を有し、
前記制御装置は、プログラムを実行する演算部と、前記演算部がアクセス可能な記憶装置を有し、
前記メンテナンス方法は、
前記演算部が、前記検知部によって検知された前記積載部の劣化の情報を取得するステップと、
前記演算部が、前記検知された劣化に基づいて前記積載部の保守に関する情報を出力するステップと、を含むことを特徴とするメンテナンス方法。
【請求項15】
請求項14に記載のメンテナンス方法であって、
前記積載部は、下支持部と、前記下支持部の上部にて前記搬送対象物を積載する上支持部と、前記上支持部に取り付けられて前記下支持部に接するように配置されたローラ部と、を少なくとも有し、
前記メンテナンス方法は、
前記演算部が、前記保守に関する情報に基づいて、前記下支持部の表面を研磨するための情報を出力するステップを含むことを特徴とするメンテナンス方法。
【請求項16】
請求項15に記載のメンテナンス方法であって、
前記搬送装置は、
前記積載部を基準位置から上方向に持ち上げる昇降機構と、
前記下支持部の下方に位置し前記基準位置を調節するための高さ調節部材と、を有し、
前記メンテナンス方法は、
前記演算部が、前記高さ調節部材の前記基準位置を調節するするための情報を出力するステップを含むことを特徴とするメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置を用いた搬送システム、及び搬送装置のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イーコマース等の物流センタでは、商品オーダーに応じて、商品の取り出しのイベントが発生する。ここで商品の取り出しに用いられる物流機器の一つに搬送装置(AGV:Automatic Guided Vehicle)がある。移動可能な棚に商品を収容し、商品の取り出しのイベントに基づいて、搬送装置が棚を搬送する。搬送装置は、ピッキングステーションと呼ばれる商品を取り出す作業員が待機する作業場まで棚を移動し、作業者がオーダーされた商品を棚から取り出す。
【0003】
棚は、様々な商品が収容される複数の区画が区切られている。棚は、複数の面から商品が取出可能に構成され、棚に収容される商品の種類を増やしている。作業員が棚の異なる面から商品を取り出せるように、搬送装置の積載部が回転して、積載される棚の向きを変更する。
【0004】
搬送装置を利用したピッキングシステムの背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(国際公開2015/97736号)には、移動可能な移動棚と、前記移動棚を搬送する無人搬送車(AGV)と、前記AGVが前記移動棚を搬送するAGVエリアと、前記AGVエリアに接し作業員がピッキング作業するピッキングエリアと、前記AGVエリア内の前記ピッキングエリアと接する位置に前記移動棚を一時的に設置する2つ以上のピッキングロケーションから構成され、前記ピッキングロケーションにピッキング対象の前記移動棚が設置されたことを検知し、前記移動棚からピッキングを行うピッキング端末に対してピッキングが可能になったことを通知する機能を有するピッキングシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2015/97736号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
搬送装置の積載部は機械部品で構成されており、搬送装置の動作に従って摩耗し、劣化し、回転の性能が低下したり、棚の積載バランスが劣化することがある。そのため、搬送装置の積載部の回転機構の劣化を検知して、適切な保守が望まれる。前述した先行技術文献では、搬送装置の積載部の劣化の検知や保守は考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、搬送システムであって、搬送対象物を積載して搬送する搬送装置と、前記搬送装置を制御する制御装置と、を備え、前記搬送装置は、走行のための駆動部を含む車体本体と、前記車体本体に積載した前記搬送対象物の向きを変更するための回転機構を有する積載部と、前記積載部の劣化を検知する検知部と、を備え、前記制御装置は、前記検知部が検知した劣化に基づいて前記積載部の保守に関する情報を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、搬送装置の積載部の劣化を適切に保守できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例の搬送システムの構成を示す図である。
図2A】本実施例のエリアの構成を示す図である。
図2B】本実施例の区画内の構成を示す図である。
図3A】本実施例の搬送装置を上方から見た斜視図である。
図3B】本実施例の搬送装置の底面図である。
図3C】本実施例のテーブルの側面図である。
図3D】本実施例のテーブルの分解斜視図である。
図4】本実施例の搬送装置による棚の搬送を示す図である。
図5】本実施例の搬送システムの全体の構成例を示す図である。
図6】本実施例の搬送装置及びピッキング端末の構成を示す図である。
図7】本実施例の制御装置及び管理装置の構成を示す図である。
図8】本実施例のオーダテーブルの構成例を示す図である
図9】本実施例の在庫テーブルの構成例を示す図である。
図10】本実施例の棚テーブルの構成例を示す図である。
図11】本実施例の装置管理テーブルの構成例を示す図である。
図12】本実施例のピッキングテーブルの構成例を示す図である。
図13】本実施例の床テーブルを示す図である。
図14】本実施例の物流センターにおける搬送業務の手順を示すフローチャートである。
図15】本実施例の搬送制御処理のフローチャートである。
図16】本実施例の音検知処理のフローチャートである。
図17A】本実施例のマイクロフォンによる音圧レベル差を検知する回路図である。
図17B】本実施例のマイクロフォンによる音圧レベル差の検知を示す図である。
図18】本実施例の車体ログ分析処理のフローチャートである。
図19】本実施例の搬送中異常情報表示画面の例を示す図である。
図20】本実施例の下リング点検手順のフローチャートである。
図21A】本実施例の摩耗粉回収機構を示す図である。
図21B】本実施例の摩耗粉回収機構を示す図である。
図22】本実施例の点検状況表示画面の例を示す図である。
図23A】本実施例の効果を説明する図である。
図23B】本実施例の効果を説明する図である。
図24】比較例の下リングの構成を示す図である。
図25】比較例の下リングの構成を示す図である。
図26】本実施例の下リングの構成を示す図である。
図27】本実施例の下リングの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、「インターフェース装置」は、一つ以上のインターフェースデバイスでよい。当該一つ以上のインターフェースデバイスは、下記のうちの少なくとも一つでよい。
・一つ以上のI/O(Input/Output)インターフェースデバイス。I/O(Input/Output)インターフェースデバイスは、I/Oデバイスと遠隔の表示用計算機とのうちの少なくとも一つに対するインターフェースデバイスである。表示用計算機に対するI/Oインターフェースデバイスは、通信インターフェースデバイスでよい。少なくとも一つのI/Oデバイスは、ユーザインターフェースデバイス、例えば、キーボード及びポインティングデバイスのような入力デバイスと、表示デバイスのような出力デバイスとのうちのいずれでもよい。
・一つ以上の通信インターフェースデバイス。一つ以上の通信インターフェースデバイスは、一つ以上の同種の通信インターフェースデバイス(例えば一つ以上のNIC(Network Interface Card))でもよいし二つ以上の異種の通信インターフェースデバイス(例えばNICとHBA(Host Bus Adapter))でもよい。
【0011】
また、「メモリ」は、一つ以上の「記憶装置」の一例である一つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリにおける少なくとも一つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスでもよいし不揮発性メモリデバイスでもよい。
【0012】
また、「永続記憶装置」は、一つ以上の「記憶装置」の一例である一つ以上の永続記憶デバイスでよい。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば補助記憶デバイス)でよく、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、NVMe(Non-Volatile Memory Express)ドライブ、又は、SCM(Storage Class Memory)でよい。
【0013】
また、以下の説明では、「プロセッサ」は、一つ以上のプロセッサデバイスでよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスでよいが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、処理の一部又は全部を行うハードウェア記述言語によりゲートアレイの集合体である回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでもよい。
【0014】
また、以下の説明では、「xxxテーブル」といった表現にて、入力に対して出力が得られる情報を説明することがあるが、当該情報は、どのような構造のデータでもよいし(例えば、構造化データでもよいし非構造化データでもよいし)、入力に対する出力を発生するニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズムやランダムフォレストに代表されるような学習モデルでもよい。従って、「xxxテーブル」を「xxx情報」と言うことができる。また、以下の説明において、各テーブルの構成は一例であり、一つのテーブルは、二つ以上のテーブルに分割されてもよいし、二つ以上のテーブルの全部又は一部が一つのテーブルでもよい。
【0015】
また、以下の説明では、「プログラム」を主語として処理を説明する場合があるが、プログラムは、プロセッサによって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶装置及び/又はインターフェース装置を用いながら行うため、処理の主語が、プロセッサ(或いは、そのプロセッサを有する装置又はシステム)とされてもよい。プログラムは、プログラムソースから計算機のような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバ又は計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)でもよい。また、以下の説明において、二つ以上のプログラムが一つのプログラムとして実現されてもよいし、一つのプログラムが二つ以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0016】
また、要素を識別するための情報(識別情報、識別子)として、任意の情報(例えば、「ID」、「名前」、及び「番号」のうちの少なくとも一つ)が採用されてよい。
【0017】
また、以下の説明では、同種の要素を区別しないで説明する場合には、参照符号のうちの共通符号を使用し、同種の要素を区別して説明する場合には、参照符号を使用することがある。
【0018】
また、「日時」の単位は、年月日時分よりも粗い単位でも細かい単位でもよい。
【0019】
図1は、本実施例の搬送システムの構成を示す図である。なお、便宜上、水平方向の一方向をx方向とし、x方向と直交する方向をy方向とする。
【0020】
搬送システムは、倉庫2内(保管スペースの一例)を走行する複数の搬送装置3と、各搬送装置3の移動をリモート制御する制御装置4とを有する。なお、本実施例において、搬送装置3の「移動」とは、棚5の積載の有無にかかわらず搬送装置3の移動全般である。搬送装置3の「移動」は、搬送装置3の「走行」と言い換えられてもよい。搬送装置3が棚5を積載している状態での「移動」を特に「搬送」と称する。
【0021】
倉庫2は、例えば、通販会社や機器製造業の企業が物品を保管するために利用する保管庫である。倉庫2に保管されている物品は、商品でもよいし、部品でもよい。本実施例において、倉庫2に保管されている物品の一例として、商品の例を説明する。
【0022】
エリア200には、複数の棚5が、移動可能な状態で設置されている。棚5の各々には、1又は複数の物品(例えば、販売すべき商品)が所定位置に収納される。棚5を移動棚と称することがある。
【0023】
エリア200は、倉庫2の床のエリアの一部であり、搬送装置3が走行するエリアである。搬送装置3は、エリア200を走行して、棚5をピッキングステーション6へ搬送できる。ピッキングステーション6は、ピッキング等の作業が行われる場所である。なお、ピッキングは、搬送物に関する所定の作業の一例である。例えば、ピッキングステーション6で、棚5への商品補充などの入庫作業や棚卸などの作業が行われてもよく、単にステーション(又は作業ステーション)と呼ばれてもよい。
【0024】
なお、搬送装置3が棚5をピッキングステーション6へ搬送する場合、その搬送先(目的位置)は、ピッキングステーション6で作業者又はピッキング装置がピッキングが可能な所定の位置(例えばピッキングステーション6前の区画)でよい。
【0025】
同様に、搬送装置3がピッキングステーション6から棚5を搬送する場合、その搬送元(出発位置)は、ピッキングステーション6で作業者又はピッキング装置がピッキングが可能な所定の位置(例えばピッキングステーション6前の区画)でよい。
【0026】
各搬送装置3は、当該搬送装置3に割り当てられた搬送タスクが関連付けられている移動指示を受けた場合、当該移動指示に従い、エリア200に存在する棚5を搬送する。図1に示す例によれば、下記の通りである。
・棚5Aをピッキングステーション6まで搬送し終えた搬送装置3Aは、棚5Aにおける商品のピッキングの終了待ちである。ピッキングステーション6で作業者又はピッキング装置によるピッキングが終了した後、搬送装置3Aは、棚5Aをピッキングステーション6から、棚5Aの保管位置まで搬送する。
・棚5Bをピッキングステーション6まで搬送する搬送装置3Bは、搬送装置3Aの移動待ちである。搬送装置3Aがピッキングステーション6から移動した場合、搬送装置3Bが棚5Bをピッキングステーション6に搬送することが可能となる。
・棚5Cを搬送するために、搬送装置3Cが移動中である。
・搬送物(棚5を含む)は、脚がある搬送物(脚付きの搬送物)でもよいし、脚がない搬送物(脚無しの搬送物)でもよい。脚無しの搬送物は、例えば架台上で保管される。搬送物が脚付きの搬送物である場合も、搬送物が架台上で保管される脚無しの搬送物である場合も、搬送装置3は搬送物の下に入り、搬送物を持ち上げて搬送可能である。
【0027】
図2Aは、エリア200の構成を示す図である。図2Aは、エリア200を模式的に例示しており、図2Aに例示されるエリア200は、図1に例示のエリア200と完全には一致しているものではない。
【0028】
エリア200は、所定大きさの方形状の複数の区画201に区分されて管理される。区画201は、例えば区画(α、β、γ)といった座標形式でもよい。αは、x座標(x方向に沿った区画位置)、βは、y座標(y方向に沿った区画位置)は、γは、z座標(高さ方向におけるエリア位置)である。例えば、エリア200が、複数のフロアのエリアを含む場合や、メザニンの上下のエリアを含む場合は、z座標を用いることで、各エリアの高さ方向におけるエリア位置を表現可能である。なお、エリア200が複数のフロアに及ぶ場合におけるフロア間の搬送や、メザニンを設けた場合におけるメザニン上下間の搬送は、例えば垂直搬送機により行われてもよい。このとき、垂直搬送機で棚5のみを搬送してもよいし、垂直搬送機で棚5と搬送装置3を搬送してもよい。
【0029】
本実施例において、エリア200は同じ高さである例を説明し、各区画の位置を区画(α、β)の表現で説明することがある。
【0030】
各区画201内には、図2Bに示すように、当該区画201の位置を表すマーカ300が設けられてよい。マーカ300は、その区画の位置を特定するための情報を含んでいればよく、例えば、その区画の位置情報でもよいし、その区画の位置情報と対応づけられている情報(例えば区画201の位置情報を導出可能な識別情報など)でもよい。マーカ300は、搬送装置3のセンサ14により読み取り可能な情報であり、例えば一次元コード、QRコード(登録商標)等の二次元コード、RFID(Radio Frequency IDentifier)タグ等の情報でもよい。
【0031】
マーカ300は、例えば、複数の二次元コードで構成されており、所定数以上の二次元コードが読み取れると区画が特定できるようになっている。例えば、9個の二次元コードのうち任意の5個が読み取れれば、読み取れた二次元コードによって区画を特定できる。
【0032】
例えば、搬送装置3は、通過する区画201に設けられたマーカ300を読み取る。搬送装置3は、走行中に、搬送装置3の識別情報(装置ID)とともに、読み取ったマーカ300の情報を、制御装置4に送信する。制御装置4は、搬送装置3から受信したマーカ300の情報に基づいて、搬送装置3の位置を特定する。区画201の全域に板状部材が設けられており、当該区画201から隣接する別の区画201へ搬送装置3が移動可能であり、また、当該区画201において搬送装置3が旋回可能であるとしてもよい。
【0033】
エリア200は、平面視において棚5が保管(配置)される区画である棚保管区画(3,3)、(3,4)等(図2Aにおいて同一模様の区画)、充電装置が存在する区画(1,1)、及び、ピッキングステーション6が存在する区画(6,15)、(13,15)を含む。棚5は、例えば一つの区画201とほぼ同じ大きさでもよいし、一つの区画201より小さいサイズでもよい。区画の設定方法は様々な変形例があってもよく、搬送装置3の進入が禁止される区画(例えば区画(3,1))が設けられてもよい。
【0034】
エリア200の各区画201について、図2Aに例示する矢印の通り、搬送装置3が各区画201において移動可能な方向が設定されてもよい。例えば、+x方向、-x方向、+y方向及び-y方向の全ての方向、又は一部の方向を、搬送装置3が移動可能な方向として設定してもよい。棚保管区画間では、棚5を積載していない搬送装置3は、移動可能にしてもよい。一方、棚5を積載した搬送装置3は、棚保管区画に保管されている棚5との衝突を防ぐため、棚保管区画間の移動を不可と設定してもよい。
【0035】
また、各区画201間は、双方向に移動可能に設定されてもよいし、一方向のみに移動可能に設定されてもよい。例えば、一部の区画201間を一方向のみに移動可能な設定とすることで、搬送装置3の渋滞の発生を抑制又は低減し、全体の搬送効率の向上が期待できる。また、一方向のみにしか移動できない区画201間が多い場合には、搬送装置3の移動経路が長くなる可能性があるので、エリア200における搬送装置3の数、又は、各区画201の位置や種類等により、搬送装置3の移動可能な方向が予め設定されてもよいし、そのような方向が動的に制御装置4により設定又は変更されてもよい。なお、搬送装置3が移動可能な方向は、床テーブル60に設定されるとよい。制御装置4は、床テーブル60に従って、搬送装置3の移動方向を含む、搬送装置3の移動を制御する。
【0036】
再び図1を参照する。搬送装置3は、制御装置4からの移動指示に従い移動する装置であり、典型的には、AGV(Automatic Guided Vehicle)でよい。棚5は、搬送装置3によって搬送され得る搬送対象の一例である。棚5に代えて又は加えて、トレー、パレット又はコンテナといった物が、搬送対象の一例でもよい。搬送対象が1又は複数の物品を搭載可能なもの(例えば棚5やパレット)である場合、搬送対象を収納部(収納装置)や荷役台と呼んでもよい。本実施例においては、搬送装置3の搬送対象の一例として、棚5の場合を説明する。搬送対象を搬送物と呼ぶことがある。
【0037】
例えば、搬送装置3は、制御装置4からの移動指示に従い、当該移動指示において指定されている棚5を持ち上げ、当該移動指示において指定されているピッキングステーション6までその棚5を搬送する。ピッキングステーション6に搬送された棚5は、当該ピッキングステーション6において作業者により必要な商品が取り出された後に(つまりピッキングの後に)、搬送装置3により元の棚保管区画(又は別の棚保管区画)に戻される。
【0038】
ピッキングステーション6への搬送経路と、ピッキングステーション6から棚5の元の棚保管区画(又は別の棚保管区画)への移動経路は、一つの移動指示において指定されてもよいし、別々の移動指示において指定されてもよい。この別の棚保管区画の例として、ピッキング回数(例えば頻度)が高い商品を収納しており、ピッキングステーション6へ搬送される回数(例えば頻度)が高い棚5は、ピッキングステーション6に近い位置にある棚保管区画に設置してもよい。ピッキングステーション6へ搬送される回数が低い棚5は、ピッキングステーション6から遠い位置にある棚保管区画に設置してもよい。このように、ピッキングステーション6へ搬送される回数に応じて、棚5の設置場所を変えることにより、搬送効率を向上できる。
【0039】
図3A図3Bは、搬送装置3の外観を示す図であり、図3Aは、搬送装置3を上方から見た斜視図であり、図3Bは、搬送装置3の底面図である。
【0040】
搬送装置3は、図3Aに示すように、その車体本体が全体として直方体状に形成されている。そして搬送装置3の下面(底面)には、図3Bに示すように、搬送装置3が旋回及び前進するための駆動輪20Dが配設されると共に、搬送装置3の下面の四隅には補助輪20Aが配設されている。また、搬送装置3の上面中央部には昇降及び回転自在に円板状のテーブル22が設けられている。駆動輪20D及び補助輪20Aの少なくとも一方が搬送装置3の「車輪」である。
【0041】
そして、搬送装置3は、図4に示すように、駆動輪20Dを回転駆動して搬送対象の棚5の下側にまで移動した後にテーブル22を上昇して棚5を持ち上げ、棚5を持ち上げた状態で倉庫2内のエリア200を走行して棚5を搬送する。搬送装置3は、棚5を持ち上げた状態でテーブル22を回転させて棚5の向きを変えることができる。搬送装置3は、本体の旋回に応じて、反対方向にテーブル22を回転して、持上げた棚5を回転せずに搬送装置3を旋回できる。このようにテーブル22は、搬送対象物である棚5を積載する積載部として機能する。
【0042】
図3Cは、テーブル22の側面図であり、図3Dは、テーブル22の分解斜視図である。
【0043】
テーブル22は、搬送装置3の上面に回転可能に取り付けられる天板22Dと、天板22Dの下部に係合する上リング22Aと上リング22Aの下に設けられる下リング22Cと、上リング22Aと下リング22Cの間に設けられる転がりベアリング22Bで構成される。
【0044】
天板22Dは上リング22Aと係合しており、上リング22Aの回転に従って天板22Dが回転する。例えば、天板22Dの凸部と上リング22Aの凹部によって、天板22Dと上リング22Aが係合する。上リング22A及び天板22Dによって、搬送対象物(棚5)を積載する上支持部が構成される。
【0045】
上リング22Aは、テーブル回転サーボモータ21Rと係合している。例えば、上リング22Aの内側にスプロケットを設け、テーブル回転サーボモータ21Rの軸に歯車を取り付け、スプロケットと歯車を係合させる。このように、テーブル回転サーボモータ21Rの回転によって上リング22Aが回転し、上リング22A上に配置される天板22Dが回転する回転機構が構成される。
【0046】
上リング22Aの下には、下リング22Cが設けられる。上リング22Aの底面には転がりベアリング22Bが取り付けられており、転がりベアリング22Bが上リング22Aの荷重を支持し、転がりベアリング22Bによって上リング22Aが下リング22Cの上でスムーズに回転できるように構成されている。転がりベアリング22Bによって、ローラ部が構成され、下リング22Cによって、下支持部が構成される。
【0047】
下リング22Cは、支柱22Eによって支えられている。支柱22Eはテーブル昇降モータ21Mによって上下に移動し、下リング22Cを上下に移動する。例えば、支柱22Eとテーブル昇降モータ21Mがボールネジを構成している。支柱22Eに形成されたネジ軸と係合したナットをテーブル昇降モータ21Mで回転することによって、ナットに対してネジ軸(支柱22E)が上下に移動する。各支柱22Eのネジ軸に係合するナットはチェーンで連結されており、テーブル昇降モータ21Mの回転と同期して全ての支柱22Eのネジ軸が回転する。このように、テーブル昇降モータ21Mによって、下リング22Cと上リング22Aと天板22Dを上下に移動する昇降機構が構成される。
【0048】
下リング22Cの近傍には、テーブル22の動作音を検知するマイクロフォン14Mが設けられる。マイクロフォン14Mは、下リング22Cの内側に取り付けられるとよい。また、下リング22Cから離れた位置(例えば、搬送装置3の筐体)にはマイクロフォン14Nが設けられる。マイクロフォン14Nは、マイクロフォン14Mが検知した音の大きさを判定する際の参照用に使用される。また、マイクロフォン14M、14Nは、テーブル22の回転時の振動を検知する圧電センサでもよい。
【0049】
搬送装置3は、充電機能を有しており、搭載されたバッテリの電圧によって残量を計算する。搬送装置3は、バッテリの残量が少なくなると、制御装置4に充電を要求する。制御装置4は、充電要求を受信すると、搬送装置3を充電装置に移動させ、充電装置と接続させて、バッテリを充電する。搬送装置3は、充電中に、充電装置を介して制御装置4と通信して、制御装置4に管理情報を送信するとよい。
【0050】
搬送装置3は、倉庫2内に設けられた無線通信ネットワークを介して、制御装置4と接続される。制御装置4から、移動(搬送を含む)を行う搬送装置3に移動指示が送信され、その移動指示を受信した設備が移動指示に従って移動する。搬送装置3は、管理情報を無線通信ネットワークを経由して制御装置4に送信する。
【0051】
また、制御装置4は、搬送システム全体として複数の搬送タスクを並列で処理可能である。ピッキングステーション6では、ピッキングステーション6に棚5が搬送された順(到着順)にピッキング作業を行ってもよい。
【0052】
なお、搬送装置3に送信される「移動指示」には、当該搬送装置3に割り当てられた搬送タスクを表す情報が関連付けられる。搬送タスクは、いずれの棚5をいずれの区画へ搬送するかを示すタスクであり、搬送タスクを表す情報は、例えば、搬送すべき棚5の棚IDと、搬送装置3が移動する経路である移動経路と、搬送装置3の移動方向とを含んでよい。移動経路は、搬送装置3の現在区画(現在位置が属する区画)から棚区画(搬送対象の棚5が存在する区画)までの経路と、棚区画から目的区画(例えばピッキングステーション6)までの経路とを含んでもよいし、その経路の一部(例えば直近で移動予定の経路)でもよい。また、ピッキングステーション6において作業者により棚5から商品がピッキングされた後には、棚5を指定位置に戻すために、制御装置4は、搬送装置3に指定位置への「移動指示」を与える。この移動経路は、更に、ピッキングステーション6から指定位置までの経路を含んでよい。ピッキングステーション6に隣接する区画及びバッテリステーションのうちの少なくともピッキングステーション6に隣接する区画が、目的区画(目的位置が属する区画)の一例でよい。
【0053】
図5は、本実施例の搬送システムの全体の構成例を示す図であり、図6は、搬送装置3及びピッキング端末710の構成を示す図であり、図7は、制御装置4及び管理装置9の構成を示す図である。
【0054】
搬送システムは、制御装置4と、搬送装置3と、ピッキング端末710と、管理装置9と、ネットワーク551とを有する。また、搬送システムは、切削機80を有してもよい。また、搬送システムは、その他の搬送設備(例えば、垂直搬送機やコンベア)や、多段エリア(例えばメザニン)や、架台や、棚5や、ピッキングステーション6の全部又は一部をさらに有してもよい。搬送システムの各構成要素は、一つ又は複数でもよい。例えば、倉庫2に、搬送システムを導入することで、図1に例示する構成が実現されてもよい。なお、管理装置9の一部または全部の構成要素について、倉庫2と同じサイトであってもよいが、倉庫2とは異なるサイトにあって、リモート保守可能に構成されてもよい。また、管理装置9の一部または全部の構成要素について、制御装置4として実現されてもよい。制御装置4と管理装置9の一部または全部の構成について、制御システム、制御装置と呼ばれてもよい。
【0055】
制御装置4は、搬送装置3、管理装置9及びピッキング端末710と、ネットワーク551を介して通信可能である。ネットワーク551は、倉庫2内に設けられる無線通信ネットワーク、及び固定的に設置された装置間を接続する有線通信ネットワーク(有線LAN)を含む。搬送装置3は、エリア200内を移動中に倉庫2内に設けられる無線通信ネットワークを介して他の装置と接続される。
【0056】
図6に示すように、搬送装置3は、駆動装置11、記憶装置12、インターフェース装置13、複数種類のセンサ14、及び、それらに接続されたコントローラ10を有する。
【0057】
コントローラ10は、制御装置4からの移動指示やバッテリの充電状態などに応じて搬送装置3の動作を制御する。駆動装置11は、駆動機構20及び昇降機構21を有する。駆動機構20は、左右の駆動輪20Dの各々を独立して回転駆動するための左右のモータ20M等のアクチュエータと、各モータ20Mの動作を検出するエンコーダ20Eを有する。テーブル駆動機構21は、テーブル22の天板22Dを昇降するためのテーブル昇降モータ21M等のアクチュエータと、テーブル22を回転するためのテーブル回転サーボモータ21R等のアクチュエータと、テーブル昇降モータ21Mの動作を検出するエンコーダ21Eと、テーブル回転サーボモータ21Rの動作を検出するエンコーダ21Fを有する。
【0058】
インターフェース装置13は、所定の無線通信方式を用いて制御装置4と通信するための装置であり、例えば無線LAN(Local Area Network)カードなどから構成されてよい。
【0059】
センサ14は、搬送装置3が走行する床面の情報や搬送装置3に関する各種情報を収集等するためのデバイスである。例えば、複数種類のセンサ14は、床面の区画201上のマーカ300の情報を読み取るカメラでよい。また、センサ14は、棚5の底面を撮像するカメラや、搬送装置3の周囲の状態を撮像するカメラ、LiDARや、搬送装置3の前面に設けられた前方カメラ、距離画像カメラ、LiDARや、搬送装置3の前方の障害物を検出する超音波センサ、赤外線センサや、棚5までの距離や棚5の構造物を検出する磁気センサや、移動中の搬送装置3の振動を検出するための振動センサや、搬送装置3の加速度を計測する加速度センサ、積載物の重量を計測する重量センサや、搬送装置3の向きを計測するジャイロセンサや、搬送装置3の動作音を検知するマイクロフォン14M、14Nなどでよい。
【0060】
コントローラ10は、演算処理を実行する演算装置とデータ及びプログラムを格納するメモリを有する。コントローラ10のメモリは、通信プログラム29、移動制御プログラム30、計測プログラム31及び位置推定プログラム32を格納する。演算装置が、通信プログラム29、移動制御プログラム30、計測プログラム31及び位置推定プログラム32を実行することによって、通信部、走行制御部、計測部及び位置推定部がそれぞれ実現される。
【0061】
記憶装置12は、例えば、経路テーブル23、装置テーブル24、地図テーブル25、計測テーブル27及び実績テーブル28を格納する。経路テーブル23は、制御装置4から受信した移動指示で指定された移動経路を表す情報が格納されるテーブルである(移動経路を表す情報は、区画の保管位置の並びと、移動経路が属する各区画について当該区画に位置する日時とを含んでよい)。装置テーブル24は、搬送装置3のID、現在の位置(区画)、及び、状態(例えば、「待機」、「移動中」又は「搬送中」)が格納されるテーブルである。地図テーブル25は、区画毎の位置及び属性(例えば、いずれの領域に属するか)を表す情報が格納されるテーブルである。なお、地図テーブル25の一例として、図2Aに例示する情報が格納されてもよい。計測テーブル27は、複数種類のセンサ14が計測した値(例えば、加速度、旋回、重量、位置(マーカ300から読み取られた値)、区画の撮影画像等)が格納されるテーブルである。実績テーブル28は、搬送装置3が移動する経路及び日時を含む移動実績が格納されるテーブルである。
【0062】
通信プログラム29は、インターフェース装置13を介して制御装置4との間でコマンドや情報を送受信するプログラムである。例えば、通信プログラム29は、制御装置4からの要求に応じて(又は要求無しに)、テーブル23~25、27及び28の一部又は全部の情報を制御装置4に送信する。なお、通信プログラム29は、これらの情報を定期的又は不定期のタイミングで制御装置4に送信してもよい。
【0063】
移動制御プログラム30は、制御装置4から通信プログラム29を通じて受信した移動指示に応じて、搬送装置3の移動を制御するプログラムである。例えば、移動制御プログラム30は、制御装置4からの移動指示に従い、指定された棚5を持ち上げて指定された移動経路を通ってピッキングステーション6まで移動するよう駆動装置11を制御したり、指定された移動経路を通ってその棚5を元の位置(又は別の位置)に移動するよう駆動装置11を制御したりする。
【0064】
計測プログラム31は、各センサ14の出力(計測結果)を計測テーブル27に登録する。位置推定プログラム32は、センサ14によるマーカ300の検出結果に基づいて搬送装置3の位置を推定する。
【0065】
図6に示すように、ピッキング端末710は、ピッキングステーション6におけるピッキング作業を管理するための情報処理端末である。ピッキング端末710は、インターフェース装置731、記憶装置732及びプロセッサ733を有する。インターフェース装置731、記憶装置732及びプロセッサ733は通信可能に接続されている。
【0066】
インターフェース装置731は、所定の通信方式により制御装置4と通信を行うための装置であり、例えば無線LANカードやネットワーク・インターフェース・カードなどから構成されてよい。記憶装置732は、ピッキングテーブル770を格納する。ピッキングテーブル770は、制御装置4が有するピッキングテーブル58の一部又は全部と同じ情報を含むテーブル(例えば、処理対象のオーダを特定するための情報や、作業予定時間や、実際の進捗状況を表すテーブル)でよい。プロセッサ733は、記憶装置732内のプログラムを実行することで、例えばピッキングテーブル770に基づいて、ピッキング端末710全体の動作を制御する。
【0067】
ピッキング端末710は、入力装置及び出力装置を有してもよい。入力装置は、ピッキング作業の完了等、作業者によるピッキング作業に関する情報の入力を受け付ける。出力装置は、作業者へのピッキング作業に関する指示等を出力する。
【0068】
図7に示すように、制御装置4は、プロセッサ40、メモリ41、記憶装置42、入力装置43、出力装置44、及びインターフェース装置45などのハードウェアを有する計算機である。制御装置4は、一つ以上の物理計算機で構成してもよいし、一つ以上の物理計算機(例えば、クラウド基盤)に実現された仮想計算機システム(例えば、クラウドコンピューティングシステム)でもよい。また、制御装置4を構成するデバイスは、一つの物理計算機に配置されてもよいし、複数の物理計算機に分散して配置されてもよい。記憶装置42が格納するプログラムやデータは、一つの記憶装置に格納されてもよいし、複数の記憶装置に分散して格納されてもよい。入力装置43及び出力装置44に代えて、インターフェース装置45を通じて通信可能なクライアントシステムを介してデータ入出力が可能でもよい。
【0069】
プロセッサ40は、プログラムを実行して、制御装置4全体の動作を制御するデバイスである。メモリ41は、プロセッサ40のワークメモリとして利用される。記憶装置42は、プログラムやデータを格納する。入力装置43は、例えばマウスやキーボードなどから構成され、オペレータが必要な情報や指示を制御装置4に入力するために利用される。出力装置44は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの表示装置でよい。インターフェース装置45は、所定の通信方式により搬送装置3、及びピッキング端末710と通信する装置であり、例えばネットワーク・インターフェース・カードから構成されてよい。
【0070】
記憶装置42は、例えば、装置管理テーブル53、在庫テーブル54、棚テーブル57、地図テーブル56、オーダテーブル55、ピッキングテーブル58、ログ59及び床テーブル60を格納する。地図テーブル56は、エリア200の地図情報(例えば、エリア200について、区画毎の位置(座標)及び属性(例えば、棚保管区画、ピッキングステーション6、バッテリステーションのいずれに該当するか)を表す情報)が格納されるテーブルである(地図テーブル56は搬送装置3に配信され、搬送装置3において地図テーブル25として保存されてよい)。
【0071】
床テーブル60は、エリア情報の一例でよい。装置管理テーブル53は、搬送管理情報(例えば、搬送タスクと搬送装置3との割り当て関係を表す情報)の一例でよい。
【0072】
記憶装置42は、格納プログラム50及び処理プログラム51を格納する。プロセッサ40が格納プログラム50及び処理プログラム51を実行することで、格納部及び処理部が実現される。格納プログラム50は、これらのテーブル53~60を、記憶装置42に格納する。
【0073】
管理装置9は、プロセッサ90、メモリ91、記憶装置92、入力装置93、出力装置94、及びインターフェース装置95などのハードウェアを有する計算機である。管理装置9は、一つ以上の物理計算機で構成してもよいし、一つ以上の物理計算機(例えば、クラウド基盤)に実現された仮想計算機システム(例えば、クラウドコンピューティングシステム)でもよい。また、管理装置9を構成するデバイスは、一つの物理計算機に配置されてもよいし、複数の物理計算機に分散して配置されてもよい。記憶装置92が格納するプログラムやデータは、一つの記憶装置に格納されてもよいし、複数の記憶装置に分散して格納されてもよい。入力装置93及び出力装置94に代えて、インターフェース装置95を通じて通信可能なクライアントシステムを介してデータ入出力が可能でもよい。
【0074】
プロセッサ90は、プログラムを実行して、制御装置4全体の動作を制御するデバイスである。メモリ91は、プロセッサ90のワークメモリとして利用される。記憶装置42は、プログラムやデータを格納する。入力装置93は、例えばマウスやキーボードなどから構成され、オペレータが必要な情報や指示を管理装置9に入力するために利用される。出力装置94は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの表示装置でよい。インターフェース装置95は、所定の通信方式により他の装置と通信する装置であり、例えばネットワーク・インターフェース・カードから構成されてよい。
【0075】
記憶装置92は、例えば、搬送装置3から収集した管理データを動作ログ99として格納する。ここで、動作ログ99には、搬送装置3のテーブル22の回転速度に関する情報や、テーブルが回転動作を行った回数の情報、どれだけ回転したかを示す回転量の情報が含まれる。テーブルの回転速度や回転量の情報は、例えば、駆動装置11を構成するエンコーダ21Fを用いて取得することができる。また、搬送装置3は、動作ログ99を所定のタイミングで制御装置4または管理装置9へ送信できる。所定のタイミングは、回転動作を行った直後、所定のインターバル毎、搬送作業の終了後または搬送装置3の充電中のいずれかであってもよい。また、記憶装置92は、分析プログラム96を格納する。プロセッサ40が分析プログラム96を実行することで分析部が実現される。
【0076】
切削機80は、テーブル22の下リング22Cの上面を平坦に研削する工作装置であり、制御装置4と通信可能に構成される。切削機80は、制御装置4からの制御指示に基づいて動作可能である。切削機80は、下リング22Cの上面を切削した深さをデータとして取得することができる。また、切削機80は、回転テーブルに関するメンテナンス処理の実績に関する情報である切削補修データを、制御装置4へ送信することができる。
【0077】
切削機80が実行するメンテナンス処理は、図20を参照して後述する。
【0078】
図8は、オーダテーブル55の構成例を示す図である。
【0079】
オーダテーブル55は、顧客からのオーダに関する各種情報が格納されるテーブルである。オーダテーブル55は、オーダ毎にレコードを有する。各レコードが、処理ID601、伝票番号602、店名603、店コード604、商品名605、商品ID606、個数607、納期608、受信日時609及び作業日時610といった情報を保持する。一つのオーダを例に取る(図9の説明において「注目オーダ」)。図9が示す例によれば、伝票番号602が同じでも、商品の種類(例えば、商品名605及び商品ID606)が違う場合は、別のオーダとして扱われる。一つのオーダが二つ以上のオーダに分けて管理されてもよいし、二つ以上のオーダが一つのオーダとして管理されてもよい。
【0080】
処理ID601は、注目オーダのIDを表す。伝票番号602は、いわゆる伝票の番号を表す。
【0081】
店名603は、注目オーダで指定された商品の出荷先の店の名前を表し、店コード604は、当該店のコードを表す。
【0082】
商品名605は、注目オーダで指定されている商品の名前を表し、商品ID606は、当該商品のIDを表し、個数607は、当該商品の数を表す。
【0083】
納期608は、注目オーダで指定されている商品が注文先(典型的には顧客)へ届けられる期限を表す。なお、処理プログラム51が、納期608から逆算して実際にピッキングステーション6でピッキングがされる期限を算出してよい。処理プログラム51は、当該算出された期限に基づいて、搬送装置3に移動指示を送信するタイミングを決定してもよいし、ピッキングステーション6に搬送装置3が到達すべき日時を移動指示に指定してもよい。
【0084】
受信日時609は、注目オーダを受信した日時を表す。作業日時610は、注目オーダで指定されている商品が置かれている棚5をピッキングステーション6へ搬送する作業が行われる日時を表す。
【0085】
図9は、在庫テーブル54の構成例を示す図である。
【0086】
在庫テーブル54は、商品に関する情報が格納されるテーブルである。在庫テーブル54は、商品毎にレコードを有する。各レコードが、商品名701、商品ID702、在庫数703、棚ID704、商品位置705及びピッキング回数706といった情報を保持する。一つの商品を例に取る(図10の説明において「注目商品」)。なお、同一の商品が異なる棚5に格納されている場合、同一の商品について複数のレコードが存在する。同様に、同一の商品が同一の棚5における異なる商品位置に格納されている場合も、同一の商品について複数のレコードが存在する。
【0087】
商品名701は、注目商品の名前を表す。商品ID702は、注目商品のIDを表す。在庫数703は、注目商品の在庫数を表す。棚ID704は、注目商品が配置されている棚5のIDを表す。商品位置705は、当該棚5における注目商品の位置を表す。例えば「U3R2」は、上(U)から3番目、右(R)から2番目を意味する。
【0088】
ピッキング回数706は、注目商品がピッキングされた回数を表す。ピッキング回数706は、棚単位でカウントされてもよいし、ピッキングされた商品数でもよい。ピッキング回数706は、棚5の配置入れ替えや、棚5内の商品入れ替え等に利用されてよい。また、ピッキング回数706は、一定時間毎にリセット又は更新されてもよく、例えば所定期間におけるピッキング回数としてもよく、故に、「ピッキング頻度」と呼ばれてもよい。
【0089】
図10は、棚テーブル57の構成例を示す図である。
【0090】
棚テーブル57は、棚5に関する情報が格納されるテーブルである。棚テーブル57は、棚5毎にレコードを有する。各レコードが、棚ID801、保管位置802、棚重量803(単位は例えば[kg])、商品重量804(単位は例えば[kg])及び搬送回数805を保持する。一つの棚5を例に取る(図11の説明において「注目棚5」)。
【0091】
棚ID801は、注目棚5のIDを表す。保管位置802は、注目棚5が配置されている区画を表す。注目棚5が、バッファ区画に存在する場合、保管位置802は、当該バッファ区画の位置を表す。注目棚5が搬送されている最中であれば、保管位置802は、注目棚5の状態"搬送中"を表してよい。注目棚5がピッキングされている最中であれば、保管位置802は、注目棚5の状態"ピッキング中"を表してよい。
【0092】
棚重量803は、注目棚5の重量を表す。商品重量804は、注目棚5に配置されている全商品の総重量を表す。商品重量804は、例えば、注目棚5の棚ID704に対応した商品の在庫数703と商品単体の重量とに基づいて処理プログラム51により算出されてよい。
【0093】
搬送回数805は、注目棚5の搬送タスクの実行回数を表す情報である。注目棚5の搬送タスクが実行される都度に、例えば格納プログラム50により、注目棚5に対応した搬送回数805が更新される。例えば、棚ID"S634"の棚5は、搬送回数805が少ないため、搬送コストが高い区画に保管される。目的区画にかかわらず注目棚5が搬送される都度に搬送回数805をインクリメントしてもよいし、目的区画によっては注目棚5の搬送がされても搬送回数805をインクリメントしなくてもよい。例えば、目的区画としてピッキングステーション6への搬送タスクが実行される都度に、注目棚5に対応した搬送回数805が更新されてもよい。なお、「搬送回数」は、一定時間毎にリセット又は更新されてもよく、例えば所定期間における搬送回数としてもよく、故に、「搬送頻度」と呼ばれてもよい。
【0094】
図11は、装置管理テーブル53の構成例を示す図である。
【0095】
装置管理テーブル53は、各搬送装置3から取得した情報が格納されたテーブルである。装置管理テーブル53は、搬送装置3毎にレコードを有する。各レコードが、装置ID1101、棚フラグ1102、位置1103、バッテリ残量1104、装置状態1105、棚ID1106、目的位置1107及び到着予定日時1108といった情報を保持する。一つの搬送装置3を例に取る(図12の説明において「注目搬送装置3」)。
【0096】
装置ID1101は、注目搬送装置3のIDを表す。棚フラグ1102は、注目搬送装置3が棚5を積載しているか否かを表す。位置1103は、注目搬送装置3が位置する区画(つまり現在区画)の座標を表す。バッテリ残量1104は、注目搬送装置3のバッテリの残量を表す。
【0097】
装置状態1105は、注目搬送装置3の状態を表す。"移動中"は、注目搬送装置3が移動していることを意味する。"空き"は、注目搬送装置3に棚ID(具体的には、棚IDを含んだ搬送タスク)が割り当てられていないことを意味する。棚ID1106は、注目搬送装置3に割り当てられている搬送タスクに含まれる棚ID(つまり、搬送タスクで指定された搬送対象の棚5のID)を表す。目的位置1107は、注目搬送装置3が搬送する棚5の搬送先の位置を表し、搬送先の番地(座標)等の位置情報、又は搬送先の位置を特定可能な搬送先のID等、搬送先の区画を識別する情報(ID)でもよい。例えば、搬送装置3の搬送先として、ピッキングステーション6のID(ピッキングステーション6に対応した位置(座標)でもよい)、棚5の保管位置のID(又は座標)でもよい。
【0098】
到着予定日時1108は、注目搬送装置3が搬送先(例えばピッキングステーション6)に到着する予定日時である。到着予定日時1108は、例えば、注目搬送装置3の搬送先への移動経路に基づいて処理プログラム51により算出された日時でよい。
【0099】
制御装置4の処理プログラム51は、装置管理テーブル53を参照して、装置状態1105が「空き」の搬送装置3に、搬送タスクを割り当てる。ただし、例えば現時点で装置状態1105が「移動中」の搬送装置3でも、到着予定日時1108が近く、その目的位置1107が次の搬送タスクの移動先となる位置に近い場合、当該次の搬送タスクの搬送を他の搬送装置3より早く実行できるときがある。その場合、処理プログラム51は、装置管理テーブル53を参照して、当該「移動中」の搬送装置3に、次の搬送タスクとして割り当ててもよい(予約又は管理してもよい)。
【0100】
図12は、ピッキングテーブル58の構成例を示す図である。
【0101】
ピッキングテーブル58は、ピッキング作業に関するテーブルである。ピッキングテーブル58は、ピッキング作業毎にレコードを有する。各レコードが、ピッキングステーションID1401、処理ID1402、装置ID1403、棚ID1404、商品ID1405、数量1406、開始予定日時1407、終了予定日時1408及びピッキング状態1409といった情報を保持する。一回のピッキング作業を例に取る(図13の説明において「注目ピッキング作業」)。
【0102】
ピッキングステーションID1401は、注目ピッキング作業が行われるピッキングステーション6のIDを表す。ピッキングステーションID1401は無くてもよく、ピッキングステーション6毎にピッキングテーブル58が設けられてもよい。
【0103】
処理ID1402は、注目ピッキング作業に対応したオーダの処理IDである。装置ID1403は、注目ピッキング作業においてピッキングされる商品を有する棚5を、ピッキングステーション6に搬送する搬送装置3のIDである。
【0104】
棚ID1404は、注目ピッキング作業においてピッキングされる商品を有する棚5のIDを表し、商品ID1405は、当該商品のIDを表し、数量1406は、ピッキングされる商品の数を表す。なお、開始予定日時1407の昇順でレコードが並んでいるテーブル58によれば、同じ棚ID1404が連続している場合、1個の棚5から異なる処理IDに対応した異なる商品を、連続してピッキング可能である。
【0105】
開始予定日時1407は、注目ピッキング作業の開始予定日時を表す。終了予定日時1408は、注目ピッキング作業の終了予定日時を表す。開始予定日時1407は、移動経路に沿って搬送装置3がピッキングステーション6に到着する予定日時や、注目ピッキング作業より前に行われるピッキング作業に要する予測時間長に基づいて、処理プログラム51により算出されてよい。終了予定日時1408は、開始予定日時1407と、ピッキング作業に要する予測時間長とに基づいて処理プログラム51により算出されてよい。ピッキング作業に要する予測時間長は、ピッキング作業対象の商品の数量、ピッキング作業の平均的な所用時間、及び、ピッキング作業の作業者の過去のピッキング作業履歴、のうちの少なくとも一つに基づいて、処理プログラム51により算出されてよい。なお、ピッキング作業は、作業者に代えて又は加えてロボットによって行われてもよい。
【0106】
ピッキング状態1409は、注目ピッキング作業の状態を表す。"作業前"は、棚5をもった搬送装置3がピッキングステーション6に到着しピッキング作業が開始される前であることを意味する。"作業中"は、ピッキング作業が開始されたがピッキング作業が完了していないことを意味する。"完了"は、ピッキング作業が完了したことを意味する。なお、ピッキング状態1409の変更は、ピッキング作業の作業者からの入力に基づいて行われてもよいし、ピッキング作業に関して自動検出された値に基づいて自動で行われてもよい。例えば、注目ピッキング作業の完了後の棚5を、待機していた搬送装置3が搬送した場合、注目ピッキング作業の次のピッキング作業に対応したピッキング状態1409が、"作業前"から"作業中"に変更されてもよい。
【0107】
図13は、床テーブル60を示す図である。
【0108】
床テーブル60は、エリア200における区画毎の情報を保持する。床テーブル60は、区画毎にレコードを有する。各レコードが、番地1501、区画設定1502、使用不可フラグ1503、旋回可否フラグ1506、方向(棚なし)1508及び方向(棚あり)1509といった情報を保持する。一つの区画を例に取る(図14の説明において「注目区画」)。
【0109】
番地1501は、注目区画の番地(位置情報)を表す。区画設定1502は、注目区画がどのような区画として設定されているかを表す。例えば、"棚保管区画"は、棚5が保管(配置)される区画である。"移動用区画"とは、棚の搬送のために搬送装置3が走行する区画である。搬送経路を構成する区画は、主に移動用区画でよい。
【0110】
使用不可フラグ1503は、注目区画が使用不可(搬送経路の構成要素になり得ない)か否かを表すフラグである。
【0111】
旋回可否フラグ1506は、注目区画が搬送装置3の旋回が可能であるか否かを表す。注目区画が旋回不可である場合、旋回可否フラグ1506は"不可"と設定される。注目区画が旋回可能である場合、旋回可否フラグ1506は"可能"と設定できる。例えば、注目区画が使用不可の区画として、バッテリステーション、棚保管区画など、特定の区画において、旋回を禁止すべき区画又は旋回をさせたくない区画である場合には、旋回可否フラグ1506が"不可"と設定されてもよい。
【0112】
搬送コスト1507は、注目区画が棚保管区画の場合に設定される値であり、注目区画からピッキングステーション6までの移動距離(又は、搬送装置3の移動速度を標準速度とした場合の移動時間)に従う値としての搬送コストを表す。
【0113】
注目区画の搬送コストは、例えば、ピッキングステーション6までの移動距離(例えば、ピッキングステーション6に到達するまでに通過する区画の数)X1と、旋回回数X2と、垂直搬送機の使用回数X3等に基づいて算出されてもよい。このように、注目区画によって搬送コストに関わる要素をXiとし、各要素の係数をAiとすると、要素i=1~nに関して、制御装置4の処理プログラム51が、注目区画の搬送コストCを、下記式で算出してよい。
C=A1*X1+A2*X2+A3*X3+・・・+An*Xn
A1,A2,・・・,Anは、区画によって変わらない係数でもよい。なお、前述にない他の要素が更に搬送コストの要素とされてよい(例えば、注目区画からの移動経路に含まれる通路が渋滞が起きやすい通路である場合には搬送コストが高くなってよい)。また、垂直搬送機での移動距離又は移動した階数を、搬送コストに関わる要素として採用し、当該要素が大きいほど、搬送コストが高くなってもよい。なお、搬送コストCの計算式は例示であって、例えば一部の要素を除いて計算されてもよい。搬送コストの計算方法は他の方法(別の計算式やシミュレーション)が採用されてもよい。
【0114】
方向(棚なし)1508は、注目区画から棚なしの状態(棚5を積載していない状態)の搬送装置3が移動可能な方向であり、搬送装置3の移動可能な方向を論理的に制限するように設定可能である。同様に、方向(棚あり)1509は、注目区画から棚ありの状態(棚5を積載した状態)の搬送装置3が移動可能な方向であり、搬送装置3の移動可能な方向を論理的に制限するように設定可能である。方向(棚なし)1508や方向(棚あり)1509の設定により、例えば、物理的に搬送装置3の移動可能な方向のうち、一部の方向への移動を禁止して、残りの方向のみ移動可能と制限することもでき、例えば一方通行等を設定可能である。
【0115】
なお、図13の例では、方向(棚なし)1508や方向(棚あり)1509について、移動可能な方向を「+x」「-x」「+y」「-y」「±x」「±y」のいずれか、又はそれらの組み合わせで表現しているが、他の方法で表現されてもよい。例えば、各区画について、「+x方向」「-x方向」「+y方向」「-y方向」のそれぞれについて、搬送装置3が棚5を積載した状態での移動可否と、搬送装置3が棚5を積載していない状態での移動可否とが設定されてもよい。
【0116】
以下、本実施例で実行される処理の例を説明する。なお、本実施例では、格納プログラム50が、テーブル53~60を記憶装置42に格納する。制御装置4の格納プログラム50は、搬送装置3及び各ピッキング端末710から定期的又は不定期的に受信する情報(例えば、センサ14の計測値)に基づいて、テーブル53~60の該当部分を適宜に更新する。
【0117】
図14は、物流センターにおける搬送業務の手順を示すフローチャートである。
【0118】
まず、作業員が、始業前の搬送装置3の車体を点検する(S2001)。この始業前車体点検において、テーブル回転部摩耗粉を点検する。
【0119】
搬送装置3が業務開始すると(S2002)、制御装置4からの移動指示に従って、棚5の搬送を開始する(S2003)。この搬送制御処理の詳細は、図15を参照して後述する。
【0120】
搬送装置3は、搬送処理の実行中、センサ(マイクロフォン)14を用いて音を検知する(S2004)。特に、搬送装置3は、テーブル22の回転時に発生する音を検知するとよい。音検知処理の詳細は、図16を参照して後述する。
【0121】
その後、テーブルの回転動作に関連する搬送異常があるかを判定する(S2005)。ここで、搬送異常とは、一例として、テーブルの回転動作にエラーが生じていることであってもよい。また、搬送装置3の動作ログ99に基づいて、搬送装置3の搬送中に、搬送装置3の回転動作が所定の条件を満たしているかを判定し、所定の条件を満たしていないと判定された場合に、搬送異常があると判定してもよい。ここで、所定の条件を満たしていない場合とは、一例として、テーブルの回転速度の平均が所定の閾値を下回る場合や、テーブルの回転速度の分散が所定の閾値を上回る場合であってもよい。搬送異常は搬送中に判定しても、搬送後に判定してもよい。搬送異常がある場合、搬送装置3は、搬送を停止し、搬送異常を点検し(S2011)、下リング点検手順を行う(S2012)。下リング点検手順の詳細は、図20を参照して後述する。
【0122】
搬送異常がない場合、搬送を終了し(S2006)、ステップS2004で騒音が検知されたかを判定する(S2007)。騒音が検知された場合、下リング点検手順を行う(S2011)。例えば、検知された音が所定の音圧レベルより大きいか、検知された音が所定の周波数成分であるか等によって騒音であるかを判定するとよい。具体的には、テーブル22の天板22Dが載置される上リング22Aは転がりベアリング22Bによって下リング22Cの上を回転移動するが、下リング22Cの上面が平坦であれば上リング22Aの回転時に発生する音は小さく、下リング22Cの上面の平坦度が低下すると上リング22Aの回転時に発生する音は大きくなる。ステップS2007では、このような騒音が検知されているかを判定する。ここでS2007において、騒音が検知されたかのみを判定する例を示したが、さらに図22に示されるような回転テーブルのテーブル回転実績が所定の条件を満たす場合に、下リング点検手順を行うように構成されてもよい。一例として、所定の条件を満たす場合とは、回転テーブルの累積回転数が所定の閾値を上回る場合であってもよい。
【0123】
そして、搬送異常も騒音もなければ、搬送装置3が行うべき搬送業務があるかを判定する(S2008)。未実施の搬送業務があれば、ステップS2003に戻り、未実施の搬送業務を実施する。一方、全ての搬送業務が実施済みであれば、搬送装置3は所定の待機場所に戻り、搬送業務を終了する(S2009)。
【0124】
その後、管理装置9は、搬送装置3が搬送業務中に取得したログ59を分析する(S2010)。ログ分析処理の詳細は、図18を参照して後述する。例えば、過去の経過と比較して点検の要否を判定するとよい。なお、搬送装置3が搬送業務を実行中にログ59を分析してもよい。
【0125】
図15は、制御装置4が実行する搬送制御処理のフローチャートである。搬送制御処理は、繰り返し(例えば定期的に)実行される。
【0126】
ステップS2101で、処理プログラム51が、オーダ(オーダテーブル55のレコード)を、作業日時610の昇順に並べる。作業日時610の昇順以外に、作業の緊急度や必要度の順序にオーダがソートされてもよい。ソートされた各オーダについて、ステップS2102~S2104の処理が実行される。また、処理プログラム51が、複数のオーダを一つのオーダに纏め、纏められたオーダについてステップS2102~S2104の処理が実行されてもよい。一つのオーダに纏められる複数のオーダは、同じ棚5に含まれる商品のオーダであるといった所定種類の要素が共通するオーダでよい。ここでは、一つのオーダを例にして説明する。
【0127】
ステップS2102で、処理プログラム51が、処理すべきオーダ(注目オーダ)に基づいて、ピッキング対象となる商品を搭載する棚5と、当該棚5の位置とを特定する。例えば、処理プログラム51が、オーダテーブル55、在庫テーブル54及び棚テーブル57に基づいて、注目オーダで指定されている商品名605及び商品ID606に一致する商品名701及び商品ID702に対応した棚ID704を在庫テーブル54から特定し、特定した棚ID704に一致する棚ID801に対応した保管位置802を棚テーブル57から特定する。
【0128】
ステップS2103で、処理プログラム51が、注目オーダについて、地図テーブル56、装置管理テーブル53、棚テーブル57及び床テーブル60に基づいて、ステップS2102で特定された棚位置(棚5の保管位置802)にある棚5を搬送する搬送装置3を選択し、且つ、当該搬送装置3による搬送の移動経路を作成する。つまり、ステップS2103では、注目オーダに従った搬送タスクの割り当て先の搬送装置3が決定される。搬送タスクは、搬送対象の棚5を、作成された移動経路に従って搬送するタスクでよい。ステップS2103では、具体的には、例えば、処理プログラム51は、下記のうちの少なくとも一つを行ってよい。
・処理プログラム51は、所定の条件に該当する一つ以上の搬送装置3から一つの搬送装置3を選択する。「所定の条件」は、例えば装置状態1105が「空き」であることでよい。搬送装置3は、各搬送装置3の装置状態1105、棚フラグ1102、位置1103、及び搬送対象の棚5の保管位置802(保管位置802と目的区画の位置との距離)に基づいて選択されるとよい。例えば、処理プログラム51は、装置管理テーブル53を参照して、装置状態1105が「空き」である搬送装置3のうち、搬送すべき棚5の保管位置802に最も近い位置1103にある搬送装置3を選択してもよい。
・処理プログラム51は、選択された搬送装置3の位置1103、搬送対象の棚5の保管位置802、目的区画の位置(例えばピッキングステーション6の位置)、及び選択された搬送装置3の位置と目的区画の位置とを結ぶ複数通りの経路の各々について、床テーブル60を参照して、当該経路における区画毎のレコード(例えば、使用不可フラグ1503、旋回可否フラグ1506、方向(棚なし)1508及び方向(棚あり)1509)に基づいて、移動経路(移動方向を含む)を作成する。移動経路は、例えば、選択された搬送装置3の位置1103から搬送対象の棚5の保管位置802への経路、搬送対象の棚5の保管位置802から目的区画の位置への経路でよい。
・処理プログラム51は、ピッキングテーブル58を参照してよい。例えば、処理プログラム51は、相対的に空いているピッキングステーション6を特定し(例えば、ピッキングテーブル58に対応するレコードの数が少ないピッキングステーション6を選択し)、当該空いているピッキングステーション6を目的区画として、当該目的区画への搬送タスクを優先してもよい。
【0129】
ステップS2104で、処理プログラム51は、ステップS2103で選択された搬送装置3に、当該搬送装置3に割り当てられた搬送タスク(注目オーダに従う搬送タスク)が関連付けられた移動指示を送信する。
【0130】
図15に示す搬送制御処理では、各オーダの納期608を守るように、当該オーダに関する搬送タスクの処理タイミングが決定されて、処理が実行される。
【0131】
図16は、音検知処理(S2004)のフローチャートである。
【0132】
ステップS2003からS2005の搬送作業中において、テーブル22の回転を開始すると(S2201)、二つのマイクロフォン14M、14Nを動作して(S2202)、テーブル回転中の騒音の音圧レベルを計測し(S2203)、計測した音圧レベルを記憶装置12に記録する(S2204)。ここで音圧レベルとは、音の大きさを示す指標としてマイクロフォン14M、14Nの出力値から得られる値である。一例として、マイクロフォン14M、14Nの出力の値を利用してもよく、その場合、騒音の大きさに比例する出力が得られる指標である。また、マイクロフォン14M、14Nの出力値を変換することで、音圧レベルの指標を算出する。
【0133】
例えば、図17Aに示すように、下リング22Cの近傍に設けられたマイクロフォン14Mが検知した音の音圧レベルと、下リング22Cから離れた位置(例えば、搬送装置3の筐体)に設けられたマイクロフォン14Nが検知した音の音圧レベルとを比較する。二つのマイクロフォン14M、14Nが検知した音の信号を検波して実効値に変換した後、差動アンプ15に入力すると、二つのマイクロフォン14M、14Nが検知した音の音圧レベルの差が得られる。なお、特定の周波数範囲の音を検知して音圧レベルの差を出力してもよい。
【0134】
そして、テーブル22の回転が終了すると、二つのマイクロフォン14M、14Nが計測した音圧レベルの差が所定の閾値より大きいかを判定する(S2206)。例えば、図17Bに示すように、二つのマイクロフォン14M、14Nが検知した音の音圧レベルの差が誤差範囲内であれば、マイクロフォン14M、14Nが検知した音は外来ノイズであると推定され、マイクロフォン14Mが検知した音の音圧レベルが大きければ、下リング22Cの近傍から音が発生していると推定される。所定の閾値には、予め定められた値を使用しても、過去の所定期間(例えば、直近の10回のテーブル回転時)に計測した音圧レベルを使用してもよい。計測した音圧レベルの差が所定の閾値より大きければ、下リング点検を推奨する情報を出力する(S2208)。当該情報に基づいて、図14におけるS2007の騒音が検知されたかを判定してもよい。また、二つのマイクロフォン14M、14Nが検知した音の音圧レベル差が所定の閾値を超えた場合に補修を提案し、音圧レベル差が更に高い閾値を超えた場合に、補修を警告してもよい。計測された音圧レベルの差が所定の閾値より小さければ、搬送装置3は搬送業務を継続する(S2207)。なお、ステップS2206以後の処理は、搬送装置3ではなく、制御装置4で実行してもよい。
【0135】
また、マイクロフォン14が一つでも、テーブル22の停止時にマイクロフォン14Mが検知した音の音圧レベル(暗騒音)と、テーブル22の回転時にマイクロフォン14Mが検知した音の音圧レベルとを比較してもよい。この場合、テーブル停止時の音圧レベルとテーブル回転時の音圧レベルの差が誤差範囲内であれば、マイクロフォン14Mが検知した音は外来ノイズであると推定され、テーブル回転時の音圧レベルが大きければ、テーブル22の回転時に音が発生していると推定される。例えば、図17Bに示すように、テーブル停止時とテーブル回転時の音圧レベルの差を所定の閾値と比較して、音圧レベル差が所定の閾値を超えた場合に補修を提案し、音圧レベル差が更に高い閾値を超えた場合に、補修を警告するとよい。
【0136】
このように、異なる場所又は異なる時刻に検知された音を用いて、テーブル回転時の下リング22Cの劣化を判定すると、環境からのノイズや下部リングの劣化以外の原因による騒音の誤検知を低減できる。
【0137】
図18は、車体ログ分析処理(S2010)のフローチャートである。
【0138】
搬送装置3は、テーブル22の天板22Dを回転し(S2301)、その回転速度を計測する(S2302)。テーブル回転サーボモータ21Rの回転速度は、その軸に取り付けられたエンコーダ21Fから出力されるパルスによって計測でき、天板22Dを回転速度は、テーブル回転サーボモータ21Rの回転速度に比例するので、テーブル回転サーボモータ21Rの回転速度に所定の係数を乗じて計算できる。そして、搬送装置3は、計測した回転速度を制御装置4へ送信する(S2303)。制御装置4は、搬送装置3から送信されたテーブル22の天板22Dの回転速度をログ59として記憶装置42に格納する。
【0139】
制御装置4は、ログ59として記憶装置42に格納された回転速度を統計処理して、平均と分散を算出し(S2304)、統計処理結果を分析する(S2305)。例えば、現在の回転速度の平均値が所定閾値より小さい、現在の回転速度の平均値から過去の回転速度の平均値を減じた値が所定閾値より小さい、現在の回転速度の分散値が所定閾値より大きい、現在の回転速度の分散値から過去の回転速度の分散値を減じた値が所定閾値より大きいなどの条件を満たす場合、テーブル22の回転に異常があり、テーブル22が劣化していると判定できる。
【0140】
そして、分析結果を画面に表示する(S2306)。表示画面には前述した閾値との比較結果によって、異常と判定されるかを表示するとよく、異常内容によって警告を発報して、搬送装置3のテーブル22の保守を促すとよい(例えば、図22に示す点検状況表示画面2200の推奨欄)。
【0141】
図19に例示するように、異常表示画面1900は、異常発生時刻、搬送装置3の識別情報、エラーコード、及び異常内容を表形式で表示し、各エラーに関するログ59の分析結果を表示するためのボタンが設けられている。異常表示画面1900で分析結果の判定(エラーコード、異常内容)を表示し、その詳細は分析結果表示画面で表示可能となっている。
【0142】
以上の説明では、テーブル22の回転速度から搬送装置3の異常を分析する例を説明したが、テーブル22の回転時に検知される音から搬送装置3の異常を分析してもよい。
【0143】
図20は、下リング点検手順(S2011)のフローチャートである。
【0144】
点検を開始すると、まず、作業者は摩耗粉を確認する(S2401)。摩耗粉は、図21Aに示すように、摩耗粉回収バケツ22Fに溜まるので、摩耗粉バケツ22Fに溜まった摩耗粉を目視で確認したり、溜まった摩耗粉の有無をセンサ14で検知したり、溜まった摩耗粉の重量をセンサ14で測定するとよい。
【0145】
摩耗粉が検知できなければ、管理装置9は、作業者が入力した摩耗粉点検データ(摩耗粉なし)を制御装置4に送信する(S2402)。制御装置4は、管理装置9から送信された摩耗粉点検データをログ59として記憶装置42に格納する。
【0146】
摩耗粉が検知できれば、作業者は、下リング22Cの上面を目視観察する(S2403)。搬送装置3は、センサ14が検出した摩耗粉の量を制御装置4に送信する。そして、作業者は、下リング22Cの補修が必要かを判定する(S2404)。
【0147】
下リング22Cの補修が必要ないと判定されると、管理装置9は、作業者による補修要否の判定結果と、補修が不要と判定した画像をログ95の観察記録として制御装置4に送信する(S2405)。
【0148】
一方、下リング22Cの補修が必要であると判定されると、制御装置3は切削機80に補修指令を送信し、切削機80が補修を開始する(S2406)。以下の補修手順は、切削機80が実施するが、作業者が以下の手順で補修してもよい。
【0149】
補修手順では、まず、搬送装置3を解体し、テーブル22を構成する下リング22Cを取り外す(S2407)。そして、下リング22Cの上面の切削を開始する(S2408)。切削中、切削厚さを監視し、所定量の切削が終わったら切削を終了する(S2409)。なお、切削厚さの監視に代えて、下リング22Cの残板厚を計測して、所定厚に達したら切削を終了してもよく、下リング22Cの上面の平坦度を計測して、所定の平坦度を達成したら切削を終了してもよい。そして、高さ調整機構によってテーブル22の天板22Dの高さを調整した後(S2410)、テーブルを組み立て、搬送装置3に取り付ける(S2411)。高さ調整機構は、機を記憶装置12に記録されるテーブル昇降モータ21Mの制御パラメータであるテーブル22の天板22Dの基準位置を変更してもよく、テーブル昇降モータ21Mの高さを物理的に調整する機構をテーブル昇降モータ21Mの下に設けてもよい。
【0150】
以上の手順によって下リング22Cの補修を終了し、搬送装置3の動作を確認する(S2412)。そして、動作確認で異常がなければ、切削機80は、切削補修データを制御装置4に送信する(S2413)。切削補修データは、下リング22Cの切削量とテーブル22の天板22Dの高さ調整量を含む。制御装置4は、切削機80から送信された切削量をログ59として記憶装置42に格納する。
【0151】
図21A図21Bは、摩耗粉回収機構を示す図である。
【0152】
摩耗粉回収機構は、下リング22Cの上面を掃く刷毛22Gと、摩耗粉を収容する摩耗粉回収バケツ22Fによって構成される。刷毛22Gは、上リング22Aの下面に設けられ、上リング22Aの回転によって下リング22Cの上面を掃く。図には、下リング22Cの内側に摩耗粉を集める場合と下リング22Cの外側に摩耗粉を集める場合の二つの刷毛22Gを図示するが、一つの刷毛22Gを設ければよい。刷毛22Gは、下リング22Cの径方向から異なる角度を持った二つをペアで配置し、上リング22Aが右又は左のいずれの方向に回転しても、下リング22Cの上面に溜まった摩耗粉を下リング22Cの上面から除去し、矢印で示すように下リング22Cの内側又は外側に集めるようにしている。また、摩耗粉回収バケツ22Fは、下リング22Cの内側又は外側に位置するように、上リング22Aに取り付けられる。上リング22Aの回転によって刷毛22Gが下リング22Cの上面を掃くので、下リング22Cの上面に溜まった摩耗粉が摩耗粉回収バケツ22Fに集められる。
【0153】
摩耗粉回収機構は、摩耗粉回収バケツ22Fに溜まった摩耗粉の重量を検知する重量センサを有してもよい。
【0154】
図22は、点検状況表示画面2200の例を示す図である。
【0155】
点検状況表示画面2200は、例えば、搬送装置3の識別情報、騒音の状態、摩耗粉の状態、摩耗粉の量、補修履歴、テーブル回転実績、及びシステム側からの推奨を表形式で表示する。騒音の状態は、正常、騒音小、騒音中、騒音大などのレベル分けして表示するとよい。摩耗粉の状態は、直近に摩耗粉を点検した日付が表示される。テーブル回転実績はログ59から取得して表示する。摩耗粉の量は、グラム単位で表示される。補修履歴は、下リング22Cの補修履歴であり、ステップS2408~S2409における下リング22C上面の累積切削量が表示される。テーブル回転実績は、転がりベアリング22Bが下リング22C上を移動する周方向の距離で規定されるが、累積回転数で表示してもよい。ここで、テーブル回転実績は、動作ログ99に含まれるテーブルが回転動作を行った回数の情報、どれだけ回転したかを示す回転量の情報から算出可能である。システム側からの推奨は、点検や修理や交換のスケジュールや費用を表示する。
【0156】
図23A及び図23Bは、本実施例の効果を説明する図である。
【0157】
図23Aに示すように、下リング22Cの上面が平坦な正常状態では、転がりベアリング22Bは下リング22C上をスムーズに回転移動し、上リング22Aもスムーズに回転する。一方、図23Bに示すように、下リング22Cの上面に凹凸が生じている異常状態では、転がりベアリング22Bは下リング22C上を上下に振動しながら回転移動し、上リング22Aも揺れながら回転する。
【0158】
ここまで、下リング22Cの摩耗粉や発生する音又は振動によってテーブル22の劣化を検知する例を説明したが、上リング22Aの回転トルクによって、テーブル22の劣化を検知してもよい。上リング22Aの回転トルクは、テーブル回転サーボモータ21Rの電流値によって推定できる。転がりベアリング22Bが下リング22C上を移動する転がり抵抗が大きくなると、低下するテーブル回転速度を補うため、テーブル回転サーボモータ21Rの動作時の電流値が大きくなり、回転トルクが増大するので、計測された電流値から計算される統計値によってテーブル22の劣化を判定するとよい。例えば、測定された電流値が所定閾値より大きい、測定された電流値が過去の平均値より大きい、測定された電流値の変動量が所定閾値より大きい、電流値の変動量が過去の変動量よりなどの条件を満たす場合、テーブル22の回転に異常があり、テーブル22が劣化していると判定できる。
【0159】
また、他の例として、下リング22Cの歪みを検知して、テーブル22の劣化を検知してもよい。例えば、下リング22Cの側面に歪みゲージを取り付け、棚積載時の下リング22Cの歪みを測定する。下リング22Cの歪みは積載される棚5の重量に比例する。本発明の発明者は積載物の重量にテーブル22の回転角(回転数)を乗じた値の累積値によってテーブル22の劣化を判定できることを見いだしており、この累積値が所定閾値を超えた場合にテーブル22が劣化していると推定できる。例えば、搬送される棚5の重量が一定であればテーブル22の累積回転数によってテーブル22の劣化を判定できる。
【0160】
さらに、他の例として、下リング22Cを回転するテーブル回転サーボモータ21Rの回転速度を検知して、テーブル22の劣化を検知してもよい。テーブル回転サーボモータ21Rの回転速度はエンコーダ21Fによって検知できる。例えば、転がりベアリング22Bが下リング22C上を移動する転がり抵抗が大きくなると、テーブル回転サーボモータ21Rの回転速度が低下するので、測定された回転速度から計算される統計値によってテーブル22の劣化を判定するとよい。例えば、測定された回転速度が所定閾値より大きい、測定された回転速度が過去の平均値より大きい、測定された回転速度の変動量が所定閾値より大きい、回転速度の変動量が過去の変動量よりなどの条件を満たす場合、テーブル22の回転に異常があり、テーブル22が劣化していると判定できる。
【0161】
次に、下リング22Cの構成を説明する。図24図25は、比較例の下リングの構成を示す図であり、図26は、本実施例の下リング22Cの構成を示す図であり、図27は、本実施例の下リング22Cの製造方法を示す図である。
【0162】
図24に示すように、比較例の下リングは鋼板から切り抜かれる。比較例の下リングの素材となる鋼板は圧延によって加工されるので、矢印で図示するように圧延方向に応力が残留する。このため、時間の経過に従って、図25に示すように、比較例の下リングは鉄板の残留応力によって歪む。
【0163】
本実施例の下リング22Cは、鍛造によって作成される。鍛造によって作成された下リング22Cは、図26に示すように、径方向に応力が残留する。このため、本実施例の下リング22Cは周方向の歪みが小さく、転がりベアリング22Bが下リング22Cの上を移動する経路に歪みが生じにくい。
【0164】
図27は、本実施例の下リング22Cの製造方法を示す図である。
【0165】
まず、鋼柱から適切な厚さの円盤状の円形バルク材を切り出し(S2501)、加工し易い温度まで加熱した後、中央にプレス加工で穴を穿孔する(S2502)。その後、内面及び外面からローラで加圧しながら下リング22Cを回転し、鍛造する(S2503)。所望の大きさまで鍛造した後、熱処理によって金属組織を均一化し、表面仕上げを行う。例えば、ミーリング加工によって、上下面を平坦に切削加工する(S2504)。
【0166】
以上、幾つかの実施例を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施例にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。
【0167】
また、例えば、区画の形状は、方形に限られず、他の形状でもよい。また、異なる大きさ又は形状の区画が混在してもよい。また、区画の位置は、当該区画上の二次元バーコードから特定されることに代えて、他種の方法により特定されてもよい。
【0168】
また、例えば、格納プログラム50及び処理プログラム51は、制御装置4に代えて又は加えて搬送装置3で実行されてもよい。また、搬送装置3が制御装置4を兼ねてもよい。
【0169】
また、本発明は、ネット通販会社等の企業が商品を保管するために利用する保管庫以外の工場や作業場などにおいて物品を搬送するための搬送システムにも適用することができる。具体的には、搬送装置3の搬送物が、トレーやボックス、パレット又は物品などの棚5以外の物でもよい。この場合、トレー、ボックス及びパレットについては、物品を収納していてもよいし、物品を収納していなくてもよい(例えば、トレー、ボックス及びパレット自体が搬送物の場合)。なお、この場合には、「棚」を「搬送物」と置き換えればよいだけであるため、詳細な説明は省略する。また、かかる搬送物に対する作業がピッキング作業以外の加工、組み立て、梱包又は検品などの作業でもよい。この場合には、「ピッキング」や「ピッキング作業」を「作業」と置き換えればよいだけであるため、詳細な説明は省略する。
【0170】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0171】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0172】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0173】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0174】
2 倉庫
3、3A、3B、3C 搬送装置
4 制御装置
5、5A、5B、5C 棚
6 ピッキングステーション
9 管理装置
10 コントローラ
11 駆動装置
12 記憶装置
13 インターフェース装置
14 センサ(マイクロフォン)
15 差動アンプ
20 駆動機構
20A 補助輪
20D 駆動輪
20E エンコーダ
20M モータ
21 昇降機構
21E エンコーダ
21F エンコーダ
21M テーブル昇降モータ
21R テーブル回転サーボモータ
22 テーブル
22A 上リング
22B 転がりベアリング
22C 下リング
22D 天板
22E 支柱
22F 摩耗粉回収バケツ
22G 刷毛
23 経路テーブル
24 装置テーブル
25 地図テーブル
27 計測テーブル
28 実績テーブル
29 通信プログラム
30 移動制御プログラム
31 計測プログラム
32 位置推定プログラム
40 プロセッサ
41 メモリ
42 記憶装置
43 入力装置
44 出力装置
45 インターフェース装置
50 格納プログラム
51 処理プログラム
53 装置管理テーブル
54 在庫テーブル
55 オーダテーブル
56 地図テーブル
57 棚テーブル
58 ピッキングテーブル
59 ログ
60 床テーブル
90 プロセッサ
91 メモリ
92 記憶装置
93 入力装置
94 出力装置
95 インターフェース装置
96 分析プログラム
99 動作ログ
200 エリア
201 区画
300 マーカ
551 ネットワーク
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23A
図23B
図24
図25
図26
図27