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特開2024-33286光ファイバセンサ及びフィルタ特性測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033286
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】光ファイバセンサ及びフィルタ特性測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01D5/353 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136787
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100085419
【弁理士】
【氏名又は名称】大垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 将規
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA04
2F103CA07
2F103CA08
2F103EB05
2F103EC09
2F103EC16
(57)【要約】
【課題】FBGフィルタの特性を検知する。
【解決手段】光源部は、可変波長光源を備え、所定の周波数のプローブ光を生成する。光スイッチ部は、プローブ光により測定対象となる光ファイバで発生する後方ブリルアン散乱光と、所定の周波数の特性測定用光を選択して測定光としてフィルタ部に送る。フィルタ部は、測定光の特定の周波数成分を透過させる。干渉部は、特定の周波数成分が抽出された測定光を自己遅延干渉させて干渉光を生成する。信号処理部は、干渉光の信号強度と、特性測定用光の周波数に基いて、フィルタ部の透過特性を取得する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、光スイッチ部と、フィルタ部と、干渉部と、信号処理部と
を備え、
前記光源部は、可変波長光源を備え、所定の周波数のプローブ光を生成し、
前記光スイッチ部は、前記プローブ光により測定対象となる光ファイバで発生する後方ブリルアン散乱光と、所定の周波数の特性測定用光を選択して測定光として前記フィルタ部に送り、
前記フィルタ部は、前記測定光の特定の周波数成分を透過させ、
前記干渉部は、特定の周波数成分が抽出された前記測定光を自己遅延干渉させて干渉光を生成し、
前記信号処理部は、前記干渉光の信号強度と、前記特性測定用光の周波数に基いて、前記フィルタ部の透過特性を取得する
ことを特徴とする光ファイバセンサ。
【請求項2】
前記特性測定用光の周波数は、前記フィルタ部が透過させる周波数帯域を含む範囲にわたって変更可能である
ことを特徴とする請求項1の光ファイバセンサ。
【請求項3】
前記特性測定用光を生成する特性測定用光源をさらに備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバセンサ。
【請求項4】
前記可変波長光源が生成した連続光が2分岐され、一方が前記プローブ光として用いられ、他方が前記特性測定用光として用いられる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバセンサ。
【請求項5】
前記光スイッチ部は、
一方の側に1のポートを有し、
他方の側にn(nは2以上の整数)のポートを有する
光スイッチを備え、
前記光スイッチは、前記一方の側の1のポートと、前記他方の側のnのポートから選択された1のポートとを光学的に接続し、
前記他方の側の第nのポートに前記特性測定用光が入力され、
前記他方の側の第1~(n-1)のポートの少なくとも1つに測定対象となる光ファイバが接続される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバセンサ。
【請求項6】
前記干渉部は、
入力された測定光を第1光路及び第2光路に2分岐する分岐部と、
前記第1光路及び前記第2光路のいずれか一方に設けられ、伝搬する光に周波数シフトを与える周波数シフタ部と、
前記第1光路及び前記第2光路のいずれか一方に設けられ、伝搬する光に遅延を与える遅延部と、
前記第1光路及び前記第2光路を経て受け取った光を合波して干渉光を生成する合波部と
を有する自己遅延型のヘテロダイン干渉計である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバセンサ。
【請求項7】
請求項1に記載された光ファイバセンサにおけるフィルタ特性測定方法であって、
前記特性測定用光の周波数を、前記フィルタ部が透過させる周波数を含む範囲にわたっ
て順次変更して、前記特性測定用光の各周波数における、前記合波光の信号強度を取得する信号強度取得過程と、
前記合波光の信号強度が最大となるときの、前記特性測定用光の周波数を、前記フィルタ部の透過周波数として取得する透過周波数取得過程と
を備えることを特徴とするフィルタ特性測定方法。
【請求項8】
前記信号強度取得過程及び前記透過周波数取得過程は、
前記光ファイバを選択した測定を行っている期間中、定期的にかつ低頻度で行われる
ことを特徴とする請求項7に記載のフィルタ特性測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブリルアン散乱光を用いた光ファイバセンサ、及び、この光ファイバセンサで行うことができるフィルタ特性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信の発展とともに、光ファイバ自体をセンシング媒体とする分布型光ファイバセンシングが盛んに研究されている。特に、散乱光を利用する光ファイバセンシングは、点ごとに計測する電気センサとは異なり、長距離の分布としての計測が可能であるため、被測定対象全体の物理量を計測することができる。
【0003】
長距離の分布の計測が可能な分布型光ファイバセンシングとして、光ファイバの片端から光パルスを入射し、光ファイバ中で後方散乱された光を時間に対して測定する時間領域リフレクトメトリ(OTDR:Optical Time Domain Reflectometry)が代表的である(例えば、非特許文献1参照)。光ファイバ中の後方散乱には、レイリー散乱、ブリルアン散乱及びラマン散乱がある。この中で自然ブリルアン散乱を測定するものはBOTDR(Brillouin OTDR)と呼ばれる(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
ブリルアン散乱は、光ファイバに入射される光パルスの中心周波数に対して、ストークス側及び反ストークス側にGHz程度周波数シフトした位置に観測され、そのスペクトルはブリルアン利得スペクトル(BGS:Brillouin Gain Spectrum)と呼ばれる。BGSの周波数シフト及びスペクトル線幅は、それぞれブリルアン周波数シフト(BFS:Brillouin Frequency Shift)及びブリルアン線幅と呼ばれる。BFS及びブリルアン線幅は、光ファイバの材質及び入射される光の波長によって異なる。例えば、石英系のシングルモード光ファイバの場合、波長1.55μmにおけるBFSの大きさ及びブリルアン線幅は、それぞれ約11GHz及び約30MHzとなることが報告されている。また、非特許文献1からシングルモードファイバ中の歪み、温度の変化に伴うBFSの大きさは波長1.55μmにおいて、それぞれ0.049MHz/με、1.0MHz/℃である。
【0005】
このように、BFSは歪みと温度に対して依存性を持つ。このため、BOTDRは橋梁やトンネルなどに代表される大型建造物の劣化診断、プラントの温度モニタリング、及び、地滑りが発生する恐れのある箇所の監視などの目的で利用可能であり、注目されている。
【0006】
BOTDRでは、光ファイバ中で発生する自然ブリルアン散乱光のスペクトル波形を測定するため、別途用意した参照光とのヘテロダイン検波を行うのが一般的である。自然ブリルアン散乱光の強度はレイリー散乱光の強度に比べて2~3桁小さい。このため、ヘテロダイン検波は最小受光感度を向上させる上でも有用となる。
【0007】
ここで、自然ブリルアン散乱光は非常に微弱なため、ヘテロダイン検波を適用しても十分な信号雑音比(S/N)を確保できない。その結果、S/N改善のための平均化処理が必要となる。BOTDRを行う従来の光ファイバ歪み測定装置では、時間、振幅及び周波数の3次元の情報を取得しているが、平均化処理とこの3次元情報の取得のため、測定時間の短縮が難しい。
【0008】
これに対し、自己遅延ヘテロダイン型のBOTDR(SDH-BOTDR:Self-
delayed heterodyne BOTDR)を利用する、光ファイバ歪み測定装置及び光ファイバ歪み測定方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。SDH-BOTDRでは、受信されるビート信号と局発信号の位相比較をすることで、BFSの変化を、ビート信号中の位相変化として観測する。このように、SDH-BOTDRは、周波数掃引を必要とせずに直接BFSを算出できるため、高速かつ安価な測定を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-191659号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】横河技報、Vol.49、No.2、第56-58頁
【非特許文献2】T.Kurashima et al.,“Brillouin Optical-fiber time domain reflectometry”, IEICE Trans. Commun., vol.E76-B, no.4, pp.382-390 (1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
SDH-BOTDRでは、レイリー散乱光の成分とブリルアン散乱光の成分を含む受信光から、ブリルアン散乱光の成分を抽出する必要がある。レイリー散乱光の成分とブリルアン散乱光の成分の周波数の差が小さいため、受信光に対するフィルタとして、狭帯域のFBG(Fiber Bragg Grating)フィルタが通常用いられる。
【0012】
この狭帯域のFBGフィルタを用いる場合、環境温度の変化や、経時劣化によるフィルタ特性の変化によって、所望のブリルアン散乱光を抽出できなくなる可能性がある。
【0013】
この発明は、上述の状況に鑑みてなされたものである。この発明の目的は、FBGフィルタの特性を検知可能な、光ファイバセンサ及びフィルタ特性測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するために、この発明の光ファイバセンサは、光源部と、光スイッチ部と、フィルタ部と、干渉部と、信号処理部とを備えて構成される。光源部は、可変波長光源を備え、所定の周波数のプローブ光を生成する。光スイッチ部は、プローブ光により測定対象となる光ファイバで発生する後方ブリルアン散乱光と、所定の周波数の特性測定用光を選択して測定光としてフィルタ部に送る。フィルタ部は、測定光の特定の周波数成分を透過させる。干渉部は、特定の周波数成分が抽出された測定光を自己遅延干渉させて干渉光を生成する。信号処理部は、干渉光の信号強度と、特性測定用光の周波数に基いて、フィルタ部の透過特性を取得する。
【0015】
この発明の光ファイバセンサの好適実施形態によれば、特性測定用光の周波数は、フィルタ部が透過させる周波数帯域を含む範囲にわたって変更可能である。特性測定用光を生成する特性測定用光源をさらに備える構成にすることができる。また、光源部が備える可変波長光源が生成した連続光を2分岐して、一方をプローブ光として、他方を特性測定用光として用いる構成にすることもできる。
【0016】
光スイッチ部は、一方の側に1のポートを有し、他方の側にn(nは2以上の整数)のポートを有する光スイッチを備える構成にしてもよい。光スイッチは、一方の側の1のポ
ートと、他方の側のnのポートから選択された1のポートと光学的に接続する。光スイッチの他方の側の第nのポートに特性測定用光が入力され、光スイッチの他方の側の第1~(n-1)のポートの少なくとも1つに測定対象となる光ファイバが接続される。
【0017】
また、干渉部は、入力された測定光を第1光路及び第2光路に2分岐する分岐部と、第1光路及び第2光路のいずれか一方に設けられ、伝搬する光に周波数シフトを与える周波数シフタ部と、第1光路及び第2光路のいずれか一方に設けられ、伝搬する光に遅延を与える遅延部と、第1光路及び第2光路を経て受け取った光を合波して干渉光を生成する合波部とを有する自己遅延型のヘテロダイン干渉計としてもよい。
【0018】
また、この発明のフィルタ特性測定方法は、上述の光ファイバセンサで実施することができ、信号強度取得過程及び透過周波数取得過程を備える。
【0019】
信号強度取得過程では、特性測定用光の周波数を、フィルタ部が透過させる周波数を含む範囲にわたって、順次変更して、特性測定用光の各周波数における、合波光の信号強度を取得する。
【0020】
透過周波数取得過程では、合波光の信号強度が最大となるときの、特性測定用光の周波数を、フィルタ部の透過周波数として取得する。
【0021】
信号強度取得過程及び透過周波数取得過程は、光ファイバを選択した測定を行っている期間中、定期的にかつ低頻度で行われるのがよい。
【発明の効果】
【0022】
この発明の光ファイバセンサフィルタ特性測定方法によれば、FBGフィルタの特性を検知可能である。その結果として、所望のブリルアン散乱光の成分を抽出できなくなることを防ぐことも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1光ファイバセンサを示す模式的なブロック図である。
図2】フィルタ特性測定方法を説明するための模式図である。
図3】フィルタ特性の監視を説明するための模式図である。
図4】第2光ファイバセンサを示す模式的なブロック図である。
図5】第3光ファイバセンサを示す模式的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各図は、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0025】
(第1実施形態)
図1を参照して、この発明の第1実施形態に係る、SDH-BOTDRを利用する光ファイバセンサ(以下、第1光ファイバセンサとも称する。)を説明する。図1は、第1光ファイバセンサの模式的なブロック図である。
【0026】
第1光ファイバセンサは、光源部100、光スイッチ部300、フィルタ部600、干渉部800及び信号処理部900を備えて構成される。
【0027】
光源部100は、プローブ光を生成する。光源部100は、例えば、波長可変光源110及び光パルス発生器130を備えて構成される。
【0028】
波長可変光源110は、任意好適な従来公知の波長可変レーザで構成することができる。波長可変光源110は、所定の波長の連続光を生成して、光パルス発生器130に送る。
【0029】
光パルス発生器130は、任意好適な従来公知の、音響光学(AO:Acoust Optical)変調器又は電気光学(EO:Electric Optical)変調器を用いて構成することができる。光パルス発生器130は、外部から入力される電気パルスに応じて、連続光から矩形状の光パルスを生成する。この光パルスの繰り返し周期は、光源部から出力されたプローブ光に含まれる光パルスが、測定対象となる光ファイバである被測定光ファイバ(FUT)400を往復するのに要する時間よりも長く設定される。
【0030】
光パルス発生器130で生成された光パルスは、プローブ光として、サーキュレータ200に送られる。なお、光源部100が、さらに、増幅器や光フィルタなどを備えることもあるが、ここでは、図示及び説明を省略する。
【0031】
サーキュレータ200は、第1~第3の入出力ポートを有している。第1の入出力ポートに入力された光が、第2の入出力ポートから出力され、第2の入出力ポートに入力された光が、第3の入出力ポートから出力される。光源部100からサーキュレータ200に送られたプローブ光は、第1の入出力ポートに入力され、第2の入出力ポートから出力される。サーキュレータ200の第2の入出力ポートから出力されたプローブ光は、光スイッチ部300に送られる。
【0032】
なお、サーキュレータ200に換えて、光カプラを用いても良い。
【0033】
光スイッチ部は、基準点ファイバ320、特性測定用光源310と光スイッチ330を備えて構成される。特性測定用光源310は、光源部100が備える波長可変光源110と同様に、所定の波長の連続光を生成することができる。光スイッチ330は、一方の側に1のポートを備え、他方の側にn(nは2以上の整数)ポートを備えている。ここでは、光スイッチ330の一方のポートをポート0(port-0)と称し、他方の側のポートを第1~第nのポート(port-1~port-n)と称する。
【0034】
光スイッチ330は、他方の側のnのポート(port-1~port-n)から1のポートを選択し、一方の側のポート(port-0)と、他方の側の選択された第k(kは1以上n以下の整数)のポート(port-k)とを光学的に接続する。光スイッチ330では、port-0に入力された光が、port-kから出力され、port-kに入力された光が、port-0から出力される。
【0035】
ここでは、nが2である場合、すなわち、光スイッチ330が、他方の側に第1のポート(port-1)と第2のポート(port-2)の2つのポートを備える場合を説明する。
【0036】
光スイッチ330の一方の側では、ポート0(port-0)に、基準点ファイバ320が接続される。また、光スイッチ330の他方の側では、ポート1(port-1)にFUT400が接続され、ポート2(port-2)に特性測定用光源310が接続される。
【0037】
FUT400は、橋梁やトンネルなどに代表される大型建造物、プラント、及び、地滑
りが発生する恐れのある箇所などに設けられ、温度や歪の測定に用いられる。
【0038】
プローブ光は、FUT400を伝搬する間に、後方散乱する。後方散乱光は、FUT400から光スイッチ330に送られる。
【0039】
なお、光スイッチ300の他方の側に3以上のポートを備える場合は、第nのポート(port-n)に特性測定用光源310を接続し、第1~第n-1のポート(port-1~port-(n-1))のそれぞれにFUT400を接続してもよい。この場合、光スイッチ330の切替だけで、複数の系統の測定を行うことができる。
【0040】
第1光ファイバセンサは、温度や、構造物の歪みなどの測定に用いられる。基準点ファイバ320は、測定対象の温度変化や歪の影響を受けない箇所に設けられ、温度や歪の測定の基準に用いられる。基準点ファイバ320の一端は、サーキュレータ200の第2の入出力ポートに光学的に接続される。また、基準点ファイバ320の他端は、光スイッチ330のport-0に光学的に接続される。光スイッチ部300では、光源部100から受け取ったプローブ光を、基準点ファイバ320を伝搬させて、光スイッチ330に送る。
【0041】
なお、温度や歪について、FUT400の各位置の相対的な変化が分かればよい場合は、基準点ファイバ320を備えない構成にしてもよい。また、基準点ファイバ320を光スイッチ330とFUT400の間に設けてもよい。これらの場合は、サーキュレータ200の第2の入出力ポートと、光スイッチ300のport-0が基準点ファイバ320を経ずに光学的に接続される。
【0042】
特性測定用光源310は、光減衰器(ATT)340及び光アイソレータ(ISO)350を経て、光スイッチ330の第nのポート(port-n)に、図1に示す構成例では、port-2に接続される。
【0043】
ここで、特性測定用光源310で生成された連続光である特性測定用光は、光スイッチ330のport-nに入力された後、後方散乱光と同じ経路を通り、信号処理部900で電気信号に変換される。以下の説明では、後方散乱光と特性測定用光を測定光と称することもある。
【0044】
ブリルアン散乱光の強度は、一般的には小さく、電気信号への変換は、後述のように、例えば、アバランシェフォトダイオード(APD)で行われる。APDに過大な強度の光が入力されるとAPDが破損する恐れがある。このため、ブリルアン散乱光の強度との差を少なくするために、ATT340が用いられる。なお、特性測定用光源310で生成される連続光の光強度をAPDの破損を招かない程度に小さくできる場合は、ATT340を備えなくてもよい。
【0045】
光スイッチ330が他方の側のポートとしてport-nを選択している場合は、特性測定用光が光スイッチ330のport-nに入力されるとともに、光スイッチ330のport-nからプローブ光が出力されている。このport-nから出力されるプローブ光が特性測定用光源310等に入力されないように、プローブ光を遮断するためにISO350が設けられるのがよい。ISO350は、順方向の光を透過させ、逆方向の光を遮断する。
【0046】
後方散乱光又は特性測定用光である測定光は、光スイッチ部330からサーキュレータ200、フィルタ部600、干渉部800を経て信号処理部900に送られる。信号処理部900は、測定光を電気信号に変換した後、BFSや、BFSに基いて温度や歪を得る
【0047】
測定光は、サーキュレータ200の第2の入出力ポートに入力され、第3の入出力ポートから出力される。サーキュレータ200の第3の入出力ポートから出力された測定光は、光増幅器500に送られる。
【0048】
光増幅器500は、例えば、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)などで構成される。光増幅器500は、測定光を増幅する。光増幅器500で増幅された測定光は、フィルタ部600を透過して、1:99カプラ700に送られる。
【0049】
フィルタ部600は、直列に接続されている第1フィルタ610及び第2フィルタ620を備えて構成される。フィルタ部600に送られた測定光は、第1フィルタ及び第2フィルタを順に透過する。第1フィルタ及び第2フィルタは、同様に構成され、この構成例では、狭帯域のFBGフィルタである。同様の構成のFBGフィルタを直列に設けることで、フィルタ部600の透過特性をシャープにすることができる。
【0050】
先ず、第1フィルタ610について説明する。第1フィルタ610は、サーキュレータ612と、FBG614とを備えて構成される。第1フィルタ610が備えるサーキュレータ612の第1の入出力ポートは、光増幅器500に接続され、第2の入出力ポートは、FBG部614の一端に接続され、第3の入出力ポートは、第2フィルタ620に接続される。また、FBG部614の他端は終端部616において終端されるのが良い。
【0051】
第1フィルタ610に送られた測定光は、サーキュレータ612の第1の入出力ポートに入力されて、第2の入出力ポートから出力される。第2の入出力ポートから出力される後方散乱光は、FBG614で、回折条件を満たす波長の光が反射され、サーキュレータ612の第2の入出力ポートに入力される。サーキュレータ612の第2の入出力ポートに入力された測定光は、第3の入出力ポートから出力され、第2フィルタ620に送られる。
【0052】
第2フィルタ620は、第1フィルタ610と同様に、サーキュレータ622と、FBG624とを備えて構成される。第2フィルタ620が備えるサーキュレータ622の第1の入出力ポートは、第1フィルタ610が備えるサーキュレータ612の第3の入出力ポートに接続され、第2の入出力ポートは、FBG624の一端に接続され、第3の入出力ポートは、1:99カプラ700に接続される。また、FBG624の他端は終端部626において終端されるのが良い。
【0053】
第2フィルタ620に送られた測定光は、サーキュレータ622の第1の入出力ポートに入力されて、第2の入出力ポートから出力される。第2の入出力ポートから出力される後方散乱光は、FBG624で、回折条件を満たす波長の光が反射され、サーキュレータ622の第2の入出力ポートに入力される。サーキュレータ622の第2の入出力ポートに入力された測定光は、第3の入出力ポートから出力され、1:99カプラ700に送られる。
【0054】
1:99カプラ700は、第2フィルタ620から送られた測定光を2分岐して、一方を干渉部800に送り、他方をモニターポートから外部に出力する。このモニターポートから外部に出力される光は、波長可変光源110と、特性測定用光源310を同じ設定値としたときの、実際の周波数の差分を測定する場合などに用いることができる。
【0055】
干渉部800は、分岐部810と、周波数シフタ部820、遅延部830及び合波部840を備える、自己遅延ヘテロダイン干渉計として構成される。
【0056】
分岐部810は、1:99カプラ700を経て測定光を受け取り、第1光路及び第2光路に2分岐する。
【0057】
周波数シフタ部820は第1光路及び第2光路のいずれか一方、この例では第1光路に設けられおり、第1光路を伝搬する光に、ビート周波数Δfの周波数シフトを与える。ビート周波数Δfについては、局発電気信号源で生成される電気信号により与えられる。局発電気信号源については、従来公知の構成にすることができるので、図示及び説明を省略する。
【0058】
遅延部830は第1光路及び第2光路のいずれか一方、この例では第2光路に設けられており、第2光路を伝搬する光に、時間τの遅延を与える。
【0059】
合波部840は、第1光路及び第2光路を伝搬する光を合波して干渉光を生成する。干渉光は、信号処理部900に送られる。
【0060】
信号処理部900は、2つのAPD912及び914と受信電気回路920を備えて構成される。2つのAPD912及び914は、バランス型フォトダイオードを構成し、干渉光を電気信号に変換する。2つのAPD912及び914で得られる電気信号は、受信電気回路920に送られる。受信電気回路920は、アナログ-ディジタル変換器、ミキサ、ローパスフィルタ、ディジタル信号処理部などを備えて構成される。
【0061】
APD912及び914で生成されるアナログ電気信号は、ADCでディジタル信号に変換される。その後、ミキサ及びローパスフィルタで、ディジタル信号と局発電気信号源で生成される電気信号とのビート信号が得られる。ビート信号はディジタル信号処理部に送られる。
【0062】
ディジタル信号処理部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び記憶部を備えて構成される。CPUがROMに格納されているプログラムを実行することにより、BFSの算出や、BFSに基いて得られる、温度や歪の算出、さらに、フィルタ特性の取得が行われる。
【0063】
干渉部800の構成及び動作、並びに、信号処理部900の構成及び動作は、例えば、特許文献1に開示されている、従来公知の技術で実現できるので、ここでは、図示及び詳細な説明を省略する。
【0064】
(フィルタ特性測定方法)
図2を参照して、フィルタ特性測定方法を説明する。図2は、フィルタ特性測定方法を説明するための模式図である。図2(A)は、フィルタ特性を示す図であり、横軸に周波数を取って示し、縦軸に、第1フィルタの透過率を取って示している。図2(B)は、特性測定用光源310の出力を示す図であり、横軸に周波数を取って示し、縦軸に光強度を取って示している。図2(C)は、受信電気回路で測定される電気信号強度を示す図であり、横軸に周波数を取って示し、縦軸に電気信号強度として電圧を取って示している。
【0065】
通常の測定を行う際は、光スイッチ330において、第1のポート(port-1)を選択して、FUT400での後方散乱光を測定する。一方、フィルタ特性の測定を行う際は、光スイッチ330において、第2のポート(port-2)を選択して、特性測定用光源310で生成される特性測定用光を測定する。
【0066】
フィルタ特性の測定では、信号強度取得過程において、特性測定用光源310の周波数設定値を、第1フィルタ610及び第2フィルタ620のフィルタ帯域を含む範囲で徐々に変更(スイープ)しながら、受信電気回路920で振幅値を取得する。例えば、周波数が低い方(図2(B)の左側)から、周波数が高い方(図2(B)の右側)に向けて、フィルタ部600の透過周波数帯域の幅よりも小さい変化量で、等間隔で徐々に、周波数設定値を順次変更する。その後、透過周波数取得過程において、干渉光の信号強度が最大となるときの、特性測定用光の周波数を、フィルタ部の透過周波数として取得する。
【0067】
この結果、図2(C)に示される、周波数設定値と、電気信号の強度から、フィルタ特性が得られる。ここで得られるフィルタ特性は、フィルタに入力される光の周波数と、フィルタを透過する光強度の関係を示す透過特性である。また、フィルタがFBGである場合、フィルタ特性をFBG特性とも称する。周波数設定値を徐々に変更するにあたっては、光源が備える周波数スイープ機構を用いることができる。この場合、周波数設定値を取得するために、予め、受信光の受信時刻から、その受信光に対応する周波数設定値が算出できるようにしておくのが良い。
【0068】
また、各周波数設定値において、複数回測定して平均化するなどして、ノイズ低減を図ることも有効と考えられる。
【0069】
また、port-1での通常の測定に対して、時分割多重の要領で、低頻度で、port-2の測定を挿入することで、通常の測定を行っている期間内に、常時、FBG特性を監視することができる。
【0070】
図3を参照して、FBG特性の監視について説明する。図3は、FBG特性の監視を説明するための模式図である。図3(A)は、nが3の場合の光スイッチの模式図である。を示し、図3(B)は、FUTでの通常測定と、FBGの特性測定の時系列を示す模式図である。図3(C)は、通常測定時の、光スイッチ331の切換を示し、図3(D)は、特性測定時の光スイッチ331の切換を示している。
【0071】
なお、FBG特性の測定は常時行うのが良いが、FBG特性の測定を行っている間は、通常測定ができない。従って、FBGの特性測定の頻度、及び、その時間は、通常測定に与える影響を無視できる程度に決定するのが良い。すなわち、特性測定は、定期的かつ低頻度で行うのが良い。
【0072】
図3(B)に示すように、特性測定にかかる時間は、通常測定にかかる時間よりも短く設定される。通常測定時は、図3(C)に示すように、port-1とport-2を切り換えて行われ、2系統の測定を常時行う。これに対し、特性測定時は、図3(D)に示すように、port-1~port-3を切り換えて測定を行う。
【0073】
(第2光ファイバセンサ)
図4を参照して、第2光ファイバセンサを説明する。図4は、第2光ファイバセンサの模式図である。
【0074】
第1光ファイバセンサは、光スイッチ部300に特性測定用光源310を備えているが、第2光ファイバセンサは、特性測定用光源310、ATT340及びISO350を、特性測定用光源部301として、光ファイバセンサの外部に設けている。これ以外の構成は、第1光ファイバセンサと同様なので、重複する説明を省略する。
【0075】
この第2光ファイバセンサでは、光スイッチ330のport-nに、特性測定用光源部301のISO350を接続するためのコネクタが必要となる。このため、port-nでのコネクタ接続によるフレネル反射の影響等で特性が劣化する可能性がある。また、特性測定用光源310の制御に用いるインタフェースを別途用意しなければならない。
【0076】
しかしながら、従来の構成を拡張する形で実施可能という利点がある。
【0077】
(第3光ファイバセンサ)
図5を参照して、第3光ファイバセンサを説明する。図5は、第3光ファイバセンサの模式図である。
【0078】
第1光ファイバセンサは、光スイッチ部300に特性測定用光源310を備えているが、第3光ファイバセンサは、光源部103が備える波長可変光源110を特性測定用光源として利用する。このため、第3光ファイバセンサの光源部103は、第1光源部の光源部の構成に対して、1:99カプラ120、ATT140及びISO150をさらに備える。
【0079】
波長可変光源110で生成された連続光は、1:99カプラ120で2分岐され、一方は、光パルス発生器130に送られプローブ光として用いられる。他方は、ATT140及びISO150を経て、光スイッチ部300が備える光スイッチ330のport-nに送られる。第3光ファイバセンサは、第1光ファイバセンサに比べて、1:99カプラ120の挿入損失やクロストークによって特性が劣化することが懸念される。また、特性測定の際に、波長可変光源110の周波数を徐々に変化させるので、特性測定のたびに、通常測定での波長設定をやり直すことになるので、特性測定にかかる時間が長くなる。
【0080】
その一方、特性測定用光源を別途設ける必要がないので、製造コストを抑えることができる。また、通常測定と特性測定とで、同じ波長可変光源を用いるので、2つの光源の差が生じない。このため、第1光ファイバセンサなどで行われる、波長可変光源110と、特性測定用光源310を同じ設定値としたときの、実際の周波数の差分を測定する必要がない。
【0081】
以上説明したように、この発明の、第1~第3光ファイバセンサ及びフィルタ特性測定方法によれば、FBGフィルタの特性を検知可能である。フィルタ特性の測定の結果、FBGフィルタの特性が変化した場合は、波長可変光源の周波数を変更するなどして、所望のブリルアン散乱光の成分を抽出できなくなることを防ぐことも可能になる。
【0082】
なお、特性測定を定期的に行うだけでなく、波長可変光源及び特性測定用光源の、周波数設定値と、実際の出力周波数についても、1:99カプラ700の出力を利用するなどして、定期的に監視するのが望ましい。
【符号の説明】
【0083】
100、103 光源部
110 可変波長光源
120、 700 1:99カプラ
130 光パルス発生器
140、340 光減衰器(ATT)
150、350 光アイソレータ(ISO)
200、612、614 サーキュレータ
300 光スイッチ部
310 特性測定用光源
320 基準点ファイバ
330、331 光スイッチ
400 被測定光ファイバ(FUT)
500 光増幅器
600 フィルタ部
610 第1フィルタ
614、624 FBG
616、626 終端部
620 第2フィルタ
800 干渉部
810 分岐部
820 周波数シフタ部
830 遅延部
840 合波部
900 信号処理部
912、914 アバランシェフォトダイオード(APD)
920 受信電気回路
図1
図2
図3
図4
図5