(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033291
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】打ち継ぎ面における型枠を作製する方法
(51)【国際特許分類】
E04G 11/06 20060101AFI20240306BHJP
E04B 2/86 20060101ALI20240306BHJP
E04B 1/16 20060101ALI20240306BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20240306BHJP
E02D 27/01 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
E04G11/06 A
E04B2/86 601Z
E04B1/16 D
E04G21/02 103A
E02D27/01 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136793
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512329002
【氏名又は名称】有限会社日光工業
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】高沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】岡本 圭史
【テーマコード(参考)】
2D046
2E150
2E172
【Fターム(参考)】
2D046BA15
2E150BA14
2E150BA32
2E150BA46
2E150HC00
2E150MA02X
2E150MA02Z
2E172AA05
2E172DD02
(57)【要約】
【課題】打ち継ぎ面の型枠としてラス網を使用した場合の固定強度を確保する。
【解決手段】打ち継ぎ面に対して交差する方向に延びるコンクリート基礎梁の配筋82に、打ち継ぎ面に対して略平行に延びる縦材12を固定する。縦材12に、打ち継ぎ面に対して略平行かつ縦材12に対して交差する方向に延びる横材14を固定する。横材14に、ラス網11を固定して、打ち継ぎ面における型枠10とする。配筋82を囲んで固定部材13を配置し、縦材貫通穴に縦材12を挿通し、螺合貫通穴にボルト15を螺合させて、ボルト15と縦材12との間に配筋82を挟み込み、ボルト15を締め付けることにより、縦材12を配筋82に固定してもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち継ぎにより形成されるコンクリート基礎梁の打ち継ぎ面における型枠を作製する方法において、
前記打ち継ぎ面に対して交差する方向に延びる前記コンクリート基礎梁の配筋に、前記打ち継ぎ面に対して略平行に延びる縦材を固定し、
前記縦材に、前記打ち継ぎ面に対して略平行かつ前記縦材に対して交差する方向に延びる横材を固定し、
前記横材に、ラス網を固定して、前記打ち継ぎ面における型枠とする、
方法。
【請求項2】
前記縦材は、固定部材を用いて前記配筋に固定され、
前記固定部材は、
略長方形板状の中間部と、
略長方形板状であり、一方の辺が前記中間部の一方の辺に接続された第一側部と、
略長方形板状であり、一方の辺が前記中間部の前記第一側部に接続された辺に対向する辺に接続された第二側部と
を有し、
前記中間部は、ボルトと螺合する螺合貫通穴を有し、
前記第一側部及び前記第二側部は、前記縦材を挿通するための縦材貫通穴を有し、
前記配筋を囲んで前記固定部材を配置し、前記縦材貫通穴に前記縦材を挿通し、前記螺合貫通穴にボルトを螺合させて、前記ボルトと前記縦材との間に前記配筋を挟み込み、前記ボルトを締め付けることにより、前記縦材を前記配筋に固定する、
請求項1の方法。
【請求項3】
前記縦材は、
長手方向に延びる長尺板状の基部と、
前記長手方向に延びる長尺板状であり、幅方向の端が前記基部の幅方向の端に接続された縁部と
を有し、
前記横材を挿通するための横材貫通穴が前記基部に設けられている、
請求項1又は2の方法。
【請求項4】
前記横材は、鉄筋である、
請求項1又は2の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの打ち継ぎ面における型枠を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートを打設するための型枠として、ラス網を使用することが行われている(例えば、特許文献1など)。
また、大規模建築物の工事現場において、工区を分割して、コンクリートを打ち継ぐことが行われている(例えば、特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-173547号公報
【特許文献2】特開2019-019462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
打ち継ぎ面の型枠としてラス網を使用すると、打設されたコンクリートによる側圧に対する型枠の固定強度及び型枠面の強度が不足する場合がある。
この発明は、例えばこのような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
打ち継ぎにより形成されるコンクリート基礎梁の打ち継ぎ面における型枠を作製する方法において、前記打ち継ぎ面に対して交差する方向に延びる前記コンクリート基礎梁の配筋に、前記打ち継ぎ面に対して略平行に延びる縦材を固定する。前記縦材に、前記打ち継ぎ面に対して略平行かつ前記縦材に対して交差する方向に延びる横材を固定する。前記横材に、ラス網を固定して、前記打ち継ぎ面における型枠とする。
前記縦材は、固定部材を用いて前記配筋に固定されてもよい。前記固定部材は、略長方形板状の中間部と、略長方形板状であり、一方の辺が前記中間部の一方の辺に接続された第一側部と、略長方形板状であり、一方の辺が前記中間部の前記第一側部に接続された辺に対向する辺に接続された第二側部とを有してもよい。前記中間部は、ボルトと螺合する螺合貫通穴を有してもよい。前記第一側部及び前記第二側部は、前記縦材を挿通するための縦材貫通穴を有してもよい。前記配筋を囲んで前記固定部材を配置し、前記縦材貫通穴に前記縦材を挿通し、前記螺合貫通穴にボルトを螺合させて、前記ボルトと前記縦材との間に前記配筋を挟み込み、前記ボルトを締め付けることにより、前記縦材を前記配筋に固定してもよい。
前記縦材は、長手方向に延びる長尺板状の基部と、前記長手方向に延びる長尺板状であり、幅方向の端が前記基部の幅方向の端に接続された縁部とを有してもよい。前記横材を挿通するための横材貫通穴を前記基部に設けてもよい。
前記横材は、鉄筋であってもよい。
【発明の効果】
【0006】
縦材及び横材を介してコンクリート基礎梁の配筋にラス網を固定するので、固定強度を確保することができる。ラス網により、打ち継ぎ面に適度な粗さが付与されるので、あとで打設するコンクリートとの付着性が向上する。また、組み立て・撤去が容易なので、工期を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】打ち継ぎ面型枠作製工程の一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照して、型枠10について説明する。
型枠10は、例えば大規模な建築物などの基礎梁80において、分割して打設されるコンクリートの境目に設けられる打ち継ぎ面に用いられる。
【0009】
基礎梁80は、例えば捨てコンクリート81の上に形成される。基礎梁80は、例えば、配筋82及び83を有し、その周りにコンクリートを打設することにより形成される。なお、
図1は、コンクリート打設前の状態を示している。
配筋82は、基礎梁80の下端近く及び上端近くにそれぞれ複数(例えば五つずつ)配列され、基礎梁80の長手方向に沿って延びている。
配筋83は、基礎梁80の長手方向に沿って離間して複数配列され、基礎梁80の周囲を取り囲んで環状に配置されている。
【0010】
基礎梁80のコンクリートを打設するにあたり、配筋82及び83の左右に離間して、例えばラス網によって形成された型枠(不図示)を作製する。この型枠は、例えば特許文献1に記載されているような従来技術と同様の方法で作製する。
それに加えて、基礎梁80のコンクリートを複数回に分割して打設するため、今回打設する領域と今回は打設しない領域との境目に打ち継ぎ面を設け、その打ち継ぎ面に型枠10を作製する。
【0011】
型枠10は、例えば、ラス網11と、縦材12と、固定部材13と、横材14と、ボルト15とを有する。
縦材12は、打ち継ぎ面に対して略平行な方向(例えば略鉛直方向)に延びる長尺部材であり、左右方向に離間して(例えば700mm(ミリメートル)以下の間隔で)複数配置され、複数箇所(例えば上下二箇所)で配筋82に固定されている。縦材12は、例えば固定部材13及びボルト15を用いて、配筋82に固定される。
横材14は、打ち継ぎ面に対して略平行かつ縦材12に対して交差する方向(例えば略水平方向)に延びる長尺部材であり、上下方向に離間して(例えば200mm間隔で)複数配置され、複数箇所(例えば左右二箇所)で固定部材13に固定されている。横材14は、例えば縦材12に設けられた横材貫通穴26に挿通することにより、縦材12に固定される。
ラス網11は、複数箇所で横材14に固定され、打ち継ぎ面を構成する。ラス網11は、例えばなまし鉄線などの線材で横材14に縛り付けることにより、横材14に固定される。
【0012】
図2を参照して、縦材12について詳しく説明する。
縦材12は、例えば、基部21と、縁部22及び23とを有する断面コ字状であり、例えば長尺長方形状の鋼板を折り曲げて形成される。
基部21は、長手方向に延びる長尺板状(例えば長方形板状)であり、多数の横材貫通穴26が、基部21の幅方向の一方の端の近くに、長手方向に平行な直線上に離間して(例えば50mm間隔で)配列されている。横材貫通穴26は、基部21を厚さ方向に貫通し、横材14が挿通される。
縁部22は、長手方向に延びる長尺板状(例えば長方形板状)であり、幅方向の端部が基部21の幅方向の端部に接続されている。縁部22は、例えば、基部21の幅方向の端部を(例えば直角に)折り曲げることにより形成される。
縁部23は、長手方向に延びる長尺板状(例えば長方形板状)であり、幅方向の端部が
基部21の幅方向の(縁部22とは反対側の)端部に接続されている。縁部23は、基部21の幅方向の端部を縁部22と同じ側に(例えば直角に)折り曲げることにより形成される。
縦材12は、基部21が打ち継ぎ面に対して略垂直になり、横材貫通穴26がコンクリートを打設する側に近い側に来るよう配置される。
このようにコ字状に形成された縦材12を用いることにより、横材貫通穴26を設けたことにより低下した強度を補うことができ、打設するコンクリートの側圧に対する抵抗力を高めることができる。
また、多数の横材貫通穴26を設けることにより、必要とされる強度に応じて横材14の数を変えることができ、型枠面の強度を確保することができる。
【0013】
図3を参照して、固定部材13について詳しく説明する。
固定部材13は、例えば、中間部31と、側部32及び33とを有する断面コ字状であり、例えば長方形状の鋼板を折り曲げて形成される。
中間部31は、略長方形板状であり、螺合貫通穴36が略中央に設けられている。螺合貫通穴36は、中間部31を厚さ方向に貫通し、内側にボルト15と螺合する雌ねじが切られている。
側部32は、略長方形板状であり、一方の辺が中間部31の一方の辺に接続している。側部32には、中間部31に接続している辺に対向する辺の近くに、縦材貫通穴37が設けられている。縦材貫通穴37は、側部32を厚さ方向に貫通し、縦材12が挿通される。
側部33は、略長方形板状であり、一方の辺が中間部31の一方の辺(側部32が接続している編に対向する辺)に接続している。側部33には、中間部31に接続している辺に対向する辺の近くに、縦材貫通穴38が設けられている。縦材貫通穴38は、側部33を厚さ方向に貫通し、側部32の縦材貫通穴37に挿通された縦材12が挿通される。
【0014】
図4を参照して、基礎梁分割作製処理90について説明する。
基礎梁分割作製処理90において、基礎梁80を分割した部分を作製する。基礎梁分割作製処理90は、例えば、梁配筋工程91と、打ち継ぎ面型枠作製工程92と、側面型枠作製工程93と、コンクリート打設工程94と、打ち継ぎ面型枠撤去工程95とを有する。
最初に、梁配筋工程91において、配筋82及び83を配筋する。
次に、打ち継ぎ面型枠作製工程92において、打ち継ぎ面の型枠10を作製する。
次に、側面型枠作製工程93において、基礎梁80の左右側面の型枠を作製する。
次に、コンクリート打設工程94において、打ち継ぎ面型枠作製工程92で作製した型枠10及び側面型枠作製工程93で作製した型枠で囲まれた空間のなかに、コンクリートを打設することにより、基礎梁80の一部を作製する。
打設したコンクリートが固化したのち、打ち継ぎ面型枠撤去工程95において、型枠10(ラス網11を除く。)を撤去する。
【0015】
図5を参照して、打ち継ぎ面型枠作製工程92について説明する。
打ち継ぎ面型枠作製工程92は、例えば、縦材固定工程921と、横材固定工程922と、ラス網固定工程923とを有する。
最初に、縦材固定工程921において、固定部材13及びボルト15を用いて、縦材12を配筋82に固定する。例えば、まず、固定部材13の側部32及び33の間に配筋82を挟み込むよう、配筋82に固定部材13を内側から取り付ける。その後、固定部材13の縦材貫通穴37及び38に縦材12を挿通することにより、配筋82を縦材12及び固定部材13で取り囲む。最後に、螺合貫通穴36にボルト15を螺合させて締め付けることにより、ボルト15と縦材12との間に配筋82を挟持する。
次に、横材固定工程922において、横材14を縦材12に固定する。例えば、縦材12の横材貫通穴26に横材14を挿通する。
その後、ラス網固定工程923において、ラス網11を横材14に固定する。例えば、なまし鉄線などの線材を用いて、多数箇所で横材14にラス網11を縛り付ける。
【0016】
このように、縦材12及び横材14を介してラス網11を配筋82に固定することにより、固定強度を高めることができる。また、固定部材13を用いて配筋82に縦材12を固定し、縦材12の横材貫通穴26に横材14を挿通することにより横材14を縦材12に固定することにより、型枠10を簡単に作製することができる。
縦材12や横材14の数を容易に増やすことができるので、打ち継ぎ面が大きい場合であっても、必要な強度を保つことができる。
【0017】
コンクリートを打設したのち、ラス網11は、打設したコンクリートと一体化され、それ以外の部品(縦材12、固定部材13、横材14及びボルト15)は、取り外されて、再利用される。
このように、打設したコンクリートの打ち継ぎ面にラス網11が配置され、適度な粗さを有するので、あとで打設するコンクリートとの付着性が向上する。
また、縦材12などを容易に撤去できるので、隣接する領域にコンクリートを打設するための型枠作製をすぐに始めることができ、工期を短縮することができる。
【0018】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【0019】
昨今の躯体工事の省力化・省人化の流れを受け、基礎梁型枠面材の材料として合板ではなくラス網を使用するラス型枠工法が多く採用される。このラス型枠は合板型枠よりも強度が小さいため、コンクリート打ち継ぎ面の型枠の固定強度を確保することが難しい。
大規模物流物件では、基礎躯体の部材断面(梁背・梁幅)が大きく、コンクリート数量も多くなり、基礎コンクリートの打ち継ぎ箇所が必然的に多くなる。これらの打ち継ぎ型枠の強度を確保しつつ効率よく施工することが現場のニーズとなっている。
打ち継ぎ型枠を強度の低いラス型枠ではなく基礎梁配筋に固定し、基礎梁鉄筋の配置に応じて打ち継ぎ面のラス網を支持できるよう有孔曲げ鋼板と鉄筋を使用することで、簡易な固定方法で強度を確保できる。打ち継ぎ面をラス網とすることで、後から打設するコンクリートとの付着を確保できる。
縦材を基礎梁主筋に挟み込み固定とすることで取り付け強度を確保する。
縦材の部材強度を確保するため、曲げ加工し断面性能を上げ、コンクリート側圧に抵抗させる。
打ち継ぎ面にはラス網を使用し付着の確保に適した粗面とすることができる。
縦材に等間隔で孔空けを行い、ラス網保持のための鉄筋を挿入する。
鉄筋本数、縦材の本数を多くすることで、コンクリート断面が大きくなる場合の対応が可能である。
これにより、簡易な部材で打ち継ぎ型枠の施工が完結する。また、撤去する部材が鋼材のみのため、転用が容易である。そして、基礎梁鉄筋が完了した段階で施工可能で、後から打設する工区の型枠工事の工程にも影響せずクリティカルパスの工程から外れる。溶接などの火気使用による固定ではなく、鋼材の機械固定による方法のため、作業員の技量による差が出にくい。
【符号の説明】
【0020】
10 型枠、11 ラス網、12 縦材、21 基部、22,23 縁部、26 横材貫通穴、13 固定部材、31 中間部、32,33 側部、36 螺合貫通穴、37,38 縦材貫通穴、14 横材、15 ボルト、80 基礎梁、81 捨てコンクリート、82,83 配筋、90 基礎梁分割作製処理、91 梁配筋工程、92 打ち継ぎ面型枠作製工程、921 縦材固定工程、922 横材固定工程、923 ラス網固定工程、93 側面型枠作製工程、94 コンクリート打設工程、95 打ち継ぎ面型枠撤去工程。