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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033310
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ICカード
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G06K19/077 212
G06K19/077 196
G06K19/077 244
G06K19/077 272
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136822
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】保坂 和宏
(72)【発明者】
【氏名】後藤 寛佳
(57)【要約】
【課題】本発明に係るICカードによれば、ワイヤが剥離することなく、安定して切削加工できるICカードを提供することができる。
【解決手段】本発明に係るICカードは、表面に嵌合孔6が形成され、絶縁性のアンテナシート33と、アンテナシート33に埋め込まれて線状に形成された導電性のアンテナコイル32と、を有するカード本体と、カード本体の嵌合孔6に嵌め込まれ、シート状に形成された基板と、基板の表面に配置された接触端子と、基板の裏面に配置されたICチップと、ICチップと電気的に接続する電極と、を有するICモジュールと、を備え、アンテナコイル32の両端部320は、嵌合孔6から露出する複数の露出部321と、複数の露出部321を接続する深端部322と、を形成し、深端部322は、露出部321よりも深い位置に埋め込まれ、露出部321と電極とが電気的に接続される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に嵌合孔が形成され、絶縁性のアンテナシートと、前記アンテナシートに埋め込まれて線状に形成された導電性のアンテナコイルと、を有するカード本体と、
前記カード本体の前記嵌合孔に嵌め込まれ、シート状に形成された基板と、前記基板の表面に配置された接触端子と、前記基板の裏面に配置されたICチップと、前記ICチップと電気的に接続する電極と、を有するICモジュールと、
を備え、
前記アンテナコイルの両端部は、前記嵌合孔から露出する複数の露出部と、複数の前記露出部を接続する深端部と、を形成し、
前記深端部は、前記カード本体の板厚方向において前記露出部よりも裏面側に対して深い位置に埋め込まれ、
前記露出部と前記電極とが電気的に接続される
ICカード。
【請求項2】
前記深端部は、前記嵌合孔から露出しない
請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記露出部は、前記嵌合孔の周方向に延びて形成された接続部であり、
前記深端部は、複数の前記接続部を接続する折返し部である
請求項2に記載のICカード。
【請求項4】
前記露出部は、前記嵌合孔の周方向に延びて形成され、前記嵌合孔の径方向に配列している
請求項1または請求項2に記載のICカード。
【請求項5】
前記深端部は、前記カード本体の板厚方向から見て、前記露出部と重ならない
請求項1または請求項2に記載のICカード。
【請求項6】
前記露出部は、前記嵌合孔の径方向の1辺と平行となるように形成されている
請求項1または請求項2に記載のICカード。
【請求項7】
前記アンテナコイルの前記両端部は、前記嵌合孔の外周側から内周側に向かって蛇行状に形成されており、
前記露出部は、前記嵌合孔の周方向に延びて形成された直線状の接続部であり、
前記深端部は、複数の前記接続部を接続する折返し部である
請求項1に記載のICカード。
【請求項8】
前記嵌合孔は、裏面側に第一底面を備えた第一凹部と、前記第一底面において前記第一凹部に連通して前記第一凹部よりも狭い開口幅を有する第二凹部と、を有し、
前記露出部は、前記第一凹部の前記第一底面において露出する
請求項1または請求項2に記載のICカード。
【請求項9】
前記深端部は、前記アンテナシートにおいて、前記露出部よりも前記アンテナコイルの直径の20パーセント以上裏面側に埋め込まれる
請求項1または請求項2に記載のICカード。
【請求項10】
前記アンテナコイルは、前記アンテナシートに描画されており、
前記露出部または前記深端部のどちらか一方は、他方よりも描画される速度が遅い
請求項1または請求項2に記載のICカード。
【請求項11】
前記アンテナコイルは、前記アンテナシートに描画されており、
前記露出部または前記深端部のどちらか一方は、他方よりも描画される圧力が強い
請求項1または請求項2に記載のICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クレジットカードなどの金融系カード、マイナンバーカードなどの公共カードおよび身分証明に使用されて来た接触型ICカードが、デュアルICカードに切り替わりつつある。デュアルICカードは、通常、接触型ICカードで使用される接触端子を備えたICモジュールの他に、非接触通信を可能とする巻線アンテナ(アンテナコイル)がカードの周縁部に沿って備えられている。
【0003】
デュアルICカードの製造方法としては、一般的に、まず、アンテナシートにワイヤを描画し、アンテナコイルを埋め込んで、その他のシートを積層してラミネートし、カード本体となるカード基材を製造する。その後、ミリング加工機等の加工機を用いて、切削加工(ミリング加工)し、カード基材に凹部を形成する。形成した凹部からは、内包したアンテナコイルの端子が露出する。その後、凹部にICモジュールが収納され、アンテナコイルの端子とICモジュールの端子とが電気的に接続される。
【0004】
特許文献1に記載のように、アンテナシートにアンテナコイルを埋め込む作業においては、図9に示すように、アンテナコイル32Aの両端部に設けられた接続端子(アンテナ部)320Aが、ICモジュール側の端子に電気的接続させる面積を増やすため、複数回折り返されることによってジグザグ状(または蛇行状)に形成され、アンテナシート33Aに埋め込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-51330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたICカードは、アンテナシート33Aにアンテナコイル32Aが埋め込まれる際に、接続端子320Aのワイヤ同士の間隔が狭く、十分に埋め込まれていない場合がある。すると、図10に示すように、ミリング加工によって凹部6Aを形成した際に、凹部6Aから露出した接続端子320Bがミリング加工機に付着してアンテナシート33Aから剥離してしまう。そのため、ICモジュール側の端子に対する接続面積が減り、接続信頼性の低下を引き起こしてしまう虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、アンテナコイルとICモジュールとが電気的に接続する面積を維持しつつ、接続信頼性を確保して加工しやすくするICカードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係るICカードは、表面に嵌合孔が形成され、絶縁性のアンテナシートと、前記アンテナシートに埋め込まれて線状に形成された導電性のアンテナコイルと、を有するカード本体と、前記カード本体の前記嵌合孔に嵌め込まれ、シート状に形成された基板と、前記基板の表面に配置された接触端子と、前記基板の裏面に配置されたICチップと、前記ICチップと電気的に接続する電極と、を有するICモジュールと、を備え、前記アンテナコイルの両端部は、前記嵌合孔から露出する複数の露出部と、複数の前記露出部を接続する深端部と、を形成し、前記深端部は、前記カード本体の板厚方向において前記露出部よりも裏面側に対して深い位置に埋め込まれ、前記露出部と前記電極とが電気的に接続される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るICカードによれば、アンテナコイルとICモジュールとが電気的に接続する面積を維持しつつ、接続信頼性を確保して加工しやすくするICカードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るICカードを模式的に示す平面図である。
図2図1のA-A断面に沿う同ICカードの模式的な断面図である。
図3】同ICカードに嵌合孔が形成される前のアンテナシートに埋め込まれたアンテナコアシートを上側から見た平面図である。
図4】同嵌合孔が形成された後のアンテナコイルの接続端子を拡大した図である。
図5】(A)は、同嵌合孔が形成された後の図4のB-B断面を示すアンテナコイルの接続端子の拡大図である。(B)は、図5(A)のC-C断面を示すアンテナコイルの接続端子の拡大図である。
図6】同ICカードに嵌合孔が形成される前のアンテナシートに埋め込まれたアンテナコイルの接続端子を拡大した図である。
図7】(A)は、同嵌合孔が形成される前の図6のD-D断面を示すアンテナコイルの接続端子の拡大図である。(B)は、図7(A)のE-E断面を示すアンテナコイルの接続端子の拡大図である。
図8図1のA-A断面に沿う同ICカードに嵌合孔が形成される前のICカードのカード本体を短辺方向から見た状態を模式的に示す断面図である。
図9】従来のICカードのアンテナコイルを説明する図である。
図10】従来のICカードのアンテナコイルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(一実施形態)
本発明の一実施形態について、図1から図8を参照して説明する。また、以下で説明する実施形態や変形例において、相互に対応する構成については同一の符号を付し、重複部分については説明を省略する場合がある。さらに、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るICカード1を模式的に示す平面図である。図2は、図1のA-A断面に沿うICカード1の模式的な断面図である。
【0013】
以下のICカード1の説明において、ICカード1の長辺に沿う方向を長辺方向D1とし、水平面上で長辺方向D1に直交するICカード1の短辺に沿う方向を短辺方向D2とする。長辺方向D1及び短辺方向D2に沿う面は水平面とする(以下、単に水平面という)。また、長辺方向D1及び短辺方向D2と直交する鉛直方向を板厚方向Dtとする。さらに、ICカード1の板厚方向Dtにおいて、ICカード1の表面1f側を上側UPとし、裏面1g側を下側DWとする。
【0014】
図1に示すように、ICカード1は、例えば、外部機器との間で、接触型通信と非接触型通信とを可能としたデュアルICカードである。ICカード1は、水平面に沿う板状であり、板厚方向Dtの上側UP側から見て、互いに対向する長辺及び短辺を有する長方形形状に形成されている。ICカード1は、板厚方向Dtの厚みが、例えば、0.5~1.0mm程度に形成されている(ICカード1がクレジットカードである場合、ICカード1の厚みは0.76mm)。
【0015】
ICカード1は、カード本体2と、ICモジュール7と、を備えている。
【0016】
[カード本体2]
カード本体2は、図1に示すように、ICカード1の外形をなす部分である。カード本体2は、水平面に沿う板状であり、板厚方向Dtの上側UP側から見て、互いに対向する長辺及び短辺を有する長方形形状に形成されている。
【0017】
カード本体2は、板厚方向Dtの厚みが、例えば、0.68~0.84mm程度になるように形成されたのちラミネート加工を施される。ラミネート加工されたカード本体2は、上側UPからミリング加工(切削加工)される。すると、嵌合孔(凹部)6が形成される。また、カード本体2は、図2に示すように、アンテナシート3と、中間シート4と、外装基材(外装シート)5とを備える。
【0018】
[嵌合孔(凹部)6]
嵌合孔(凹部)6は、図1及び図2に示すように、ミリング加工(切削加工)によってカード本体2に形成された孔である。嵌合孔6は、カード本体2の上側UPの表面2fに開口部6hを有する。嵌合孔6は、例えば板厚方向Dtの上側UP側から見て、長辺方向D1及び短辺方向D2を嵌合孔6の周方向として、長辺方向D1に一対の辺6aを有し、短辺方向D2に一対の辺6bを有する略矩形状に形成されている。以降の説明において、嵌合孔6の周方向は、長辺方向D1または短辺方向D2ともいう。また、嵌合孔6の径方向において、嵌合孔6の中心O1側を内周側P1とし、内周側P1の反対側を外周側P2とする(図4参照)。ここで、径方向とは、短辺方向D2を周方向としたときに長辺方向D1であり、長辺方向D1を周方向としたときに短辺方向D2である。
【0019】
嵌合孔6は、図2に示すように、カード本体2にICモジュール7が接合される場合に、カード本体2に干渉せずにICモジュール7を収容して、ICカード1の表面1f上に凹凸が出ないように設けられている。嵌合孔6は、第一収容部(第一凹部)61と、第二収容部(第二凹部)62とを備える。
【0020】
第一収容部(第一凹部)61は、図1に示すように、カード本体2の表面2fに開口部を備える。第一収容部61の開口部は、嵌合孔6の備える開口部6hである。第一収容部61は、本実施形態では、ICモジュール7のモジュール基板71の大きさに対応している。また、第一収容部61の板厚方向Dtの厚みは、ICモジュール7のモジュール基板71及び接触端子74の厚み等を考慮して設定するのが好ましい。
【0021】
第一収容部61は、図2に示すように、カード本体2の表面2fに形成された表側外装基材51と、中間シート4の表側中間シート41とを板厚方向Dtに貫通する。第一収容部61は、表側中間シート41の下側DWに積層されたアンテナシート3のアンテナコアシート33において、貫通しない。第一収容部61は、第一内側面61bと、アンテナコアシート33において第一底面61aと、を形成する。なお、第一収容部61の第一内側面61bは、傾斜のついた形状であってもよいし、傾斜のない形状であってもよい。
【0022】
第二収容部(第二凹部)62は、図2に示すように、第一収容部61の第一底面61aにおいて第一収容部61に連通し、第一収容部61よりも長辺方向D1及び短辺方向D2において開口幅の狭い凹部である。第二収容部62は、本実施形態では、樹脂封止部76の大きさに対応している。
【0023】
第二収容部62は、図2に示すように、アンテナシート3のコアシート31及びアンテナコアシート33を板厚方向Dtに貫通する。また、第二収容部62は、コアシート31の下側DWに備えられた裏側中間シート42において、貫通しない。第二収容部62は、第二内側面62bと、裏側中間シート42において第二底面62aと、を形成する。第二底面62aは、本実施形態では、裏側中間シート42と略平行になるように形成される。なお、第二収容部62の第二内側面62bは、傾斜のついた形状であってもよいし、傾斜のない形状であってもよい。
【0024】
[アンテナシート3]
アンテナシート3は、本実施形態において、図2に示すように、中間シート4に備えられた表側中間シート41と裏側中間シート42との間に備えられる。アンテナシート3は、コアシート31と、アンテナコアシート(アンテナシート)33と、アンテナコイル(巻線アンテナ)32と、を備える。
【0025】
[コアシート31]
コアシート31は、図2に示すように、アンテナコアシート33の裏面33g及び中間シート4の裏側中間シート42の上側UPである表面に積層された可撓性を有する絶縁性の基板である。コアシート31は、板厚方向Dtの上側UP側から見て、互いに対向する長辺及び短辺を有する長方形形状に形成されている。コアシート31の板厚方向Dtの厚みは、例えば、0.015mm~0.05mmの範囲の厚みに設定されている。
【0026】
コアシート31は、本実施形態では、例えばPETG樹脂材料を用いて形成される。ただし、コアシート31の材料は特に限定されず、例えば、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート共重合体(PETG)、ポリブチレンテレフタレート材料、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体などのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン-4フッ化エチレン共重合体などのポリフッ化エチレン樹脂、ナイロン-6、ナイロン6、6などのポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル樹脂、三酢酸セルロース、セロファンなどのセルロース樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド樹脂などの絶縁性を有する基材を適宜選択することができる。なお、樹脂材料の含有量は、30質量パーセント以上80質量パーセント以下であることが好ましい。
【0027】
また、コアシート31は、カード本体2に形成された嵌合孔6によって、一部に貫通孔を備える。
【0028】
[アンテナコアシート(アンテナシート)33]
アンテナコアシート(アンテナシート)33は、図2に示すように、コアシート31の上側UPの表面31f側に積層された可撓性を有する絶縁性の基材である。アンテナコアシート33は、コアシート31と同様に、板厚方向Dtの上側UP側から見て、互いに対向する長辺及び短辺を有する長方形形状に形成されている。また、アンテナコアシート33の材料は、特に限定されず、例えばコアシート31と同様の材料を用いてもよい。
【0029】
[アンテナコイル(巻線アンテナ)32]
図3は、ICカード1に嵌合孔6が形成される前のICカード1のアンテナシート3に備えられたアンテナコアシート33を上側UPから見た平面図である。なお、図3に示すアンテナコイル32は、アンテナコアシート33の裏面33gに形成されているが、説明の便宜上実線で図示している。
アンテナコイル(巻線アンテナ)32は、アンテナシート3に内包されている。アンテナコイル32は、例えば、図3に示すように、アンテナコアシート33の下側DWである裏面33gにおいて、直径0.1mm程度の被覆導線をアンテナコアシート33に埋め込んだ状態で形成される。また、アンテナコイル32は、アンテナコアシート33の周縁33kに沿って一巻きから四巻き程度に巻回して矩形状に形成されている。アンテナコイル32は、リーダライタなどの非接触型外部機器との非接触型通信を行う。
【0030】
アンテナコイル32の被覆導線は、例えば導電性のマグネットワイヤを好適に使用することができる。マグネットワイヤとは、銅、銅合金、アルミニウムなどの導電線の表面を絶縁樹脂層で被覆したワイヤである。絶縁樹脂としては、ポロビニールホルマール、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミド、ポリイミドなどが使用される。アンテナコイル32は、価格、耐熱性などにより適宜選択することができる。アンテナコイル(巻線アンテナ)32の両端部には、接続端子320が形成されている。
【0031】
[接続端子(両端部)320]
図4は、嵌合孔6が形成された後のアンテナコイル32の接続端子320を拡大した図である。
接続端子(両端部)320は、図3及び図4に示すように、アンテナコイル32の両端を少なくとも一回以上折り返されることによって形成される。接続端子320を折り返す回数は、特に限定されないが、本実施形態では、20~30回程度折り返されて蛇行状(またはジグザグ状)に形成されている(図6参照)。なお、図2の断面図おいては、説明の便宜上、アンテナコイル32の接続端子320が3回程度に折り返された状態に簡素化して図示している。アンテナコイル32の両端に形成された接続端子320は、図4に示すように、カード本体2に形成される嵌合孔6の中心O1に対して対称となるように長辺方向D1の外周側P2から内周側P1に向かって蛇行状(またはジグザグ状)に形成されている。接続端子320は、接続部321と、折返し部322と、を備える。
【0032】
[接続部(露出部)321]
図5(A)は、嵌合孔6が形成された後の図4のB-B断面を示すアンテナコイル32の接続端子320の拡大図である。図5(B)は、図5(A)のC-C断面を示すアンテナコイル32の接続端子320の拡大図である。
接続部(露出部)321は、図4及び図5に示すように、接続端子320において、短辺方向(周方向)D2に延びて形成された直線部分である。接続部321は、少なくとも一つ以上設けられており、本実施形態では、20~30本の複数の接続部321を嵌合孔6の一辺である辺6bをそれぞれ挟むように辺6bの長辺方向(径方向)D1に配列される。具体的には、接続部321は、辺6bの内周側P1と外周側P2との両方に配置されている。また、接続部321は、辺6bと平行である。なお、接続部321は、辺6bの内周側P1のみに配置されていてもよい。接続部321は、嵌合孔6が形成されると、図5(A)及び図5(B)に示すように、第一収容部61の第一底面61aに接続面321aを形成する。接続面321aについては、後述する。なお、接続部321は、長辺方向(周方向)D1に延びて形成されていてもよい。また、この時、接続部321は、嵌合孔6の辺6aをそれぞれ挟むように辺6aの短辺方向(径方向)D2に配列されてもよい。
【0033】
[折返し部(深端部)322]
折返し部(深端部)322は、接続端子320において、複数の接続部321をそれぞれ接続する折返し部分である。折返し部322は、例えば、長辺方向D1に延びる一つの接続部321の一方側の一端と、一つの接続部321と隣り合う接続部321の一方側の一端とを接続する。折返し部322は、板厚方向Dtから見て、接続部321と重ならない。折返し部322は、図5(A)に示すように、板厚方向Dtにおいて接続部321よりも下側(裏面側)DWに深い位置に形成されており、図3から図5において点線で図示する。折返し部322は、嵌合孔6が形成された場合に、嵌合孔6から露出しない。そのため、折返し部322は、非露出部ともいう。
【0034】
アンテナコイル32の接続端子320は、接続部321と、折返し部322との板厚方向Dtの深さ(高さ)を変更してアンテナコアシート33に埋め込まれている。アンテナコイル32をアンテナコアシート33に埋め込む工程については、後述する。
【0035】
[中間シート4]
中間シート4は、図2に示すように、アンテナシート3の表裏に積層された絶縁性を有するシート状の基材である。中間シート4は、表側中間シート41と、裏側中間シート42と、を備える。
【0036】
表側中間シート41は、コアシート31の上側UPに備えられる。裏側中間シート42は、コアシート31の下側(裏面側)DWに備えられる。表側中間シート41及び裏側中間シート42は、板厚方向Dtの上側UP側から見て、互いに対向する長辺及び短辺を有する長方形形状に形成されている。また、表側中間シート41及び裏側中間シート42は、本実施形態では、コアシート31と同様に、PETG樹脂を用いて形成される。ただし、中間シート4に用いる樹脂材料は、特に限定されない。
【0037】
中間シート4の板厚方向Dtの厚みは、カードの厚さ制限を超えない範囲で適宜選定することができる。中間シート4は、ICカード1の仕様に応じて印刷を行う場合があるため、印刷インキに対する印刷適性が備えられている事が望ましい。
【0038】
[外装基材(外装シート)5]
外装基材(外装シート)5は、図2に示すように、アンテナシート3及び中間シート4の表裏に積層される基材である。外装基材5は、オーバーシートともいう。外装基材5は、ICカード1の表面1fに表側外装基材51を備え、ICカード1の裏面1gに裏側外装基材52を備える。外装基材5の材料は特に限定されず、例えば、アンテナシート3や中間シート4と同様のPETG樹脂などのプラスチック樹脂材料を用いて形成される。また、外装基材5は、金属シートや磁性体材料(磁気テープ)などを用いて形成されることもある。さらに、外装基材5は、UV硬化タイプや混合液反応硬化タイプ等の高い流動性と絶縁性とを有するプラスチック樹脂材料を用いて、カード形状に成形することもある。なお、外装基材5は、単層であってもよいし、複数層に形成されていてもよい。また、外装基材5は、さらに磁気層、保護層等を設けてもよいし、感熱・熱転写・インクジェット等の機能性の表面コートが施されていてもよい。外装基材5の表側外装基材51及び裏側外装基材52の板厚方向Dtの厚みは、ICカード1の厚さ制限を超えない範囲で適宜選定できる。
【0039】
[ICモジュール7]
ICモジュール7は、図2に示すように、モジュール基板(基板)71と、ICチップ72と、パッド電極(電極)73と、接触端子74と、ワイヤ75と、樹脂封止部76とを備える。ICモジュール7の外形サイズは、例えば接触端子74が、6端子で構成されている場合には、水平面において、約8mm×10.6mmの寸法で形成される。
【0040】
モジュール基板(基板)71は、ガラスエポキシやPETなどの材料を用いて水平面上に形成されたシート状の基板である。モジュール基板71は、板厚方向Dtにおいて、表面71fと、裏面71gとを有し、板厚方向Dtから見て、矩形状に形成されている。モジュール基板71の厚さは、例えば、50~200μmである。モジュール基板71は、貫通孔71aを備える。
【0041】
貫通孔71aは、図2に示すように、モジュール基板71を板厚方向Dtに貫通する孔である。貫通孔71aは、ICチップ72の周囲に備えられる。貫通孔71aは、例えば、板厚方向Dtから見て断面が略円状となるように、略円柱状に形成される。貫通孔71aには、図2に示すように、後述のワイヤ75が挿通する。貫通孔71aの個数は、特に限定されず、1個のみ備えられていてもよいし、複数備えていてもよい。貫通孔71aの個数は、本実施形態では、ワイヤ75を介して接触端子74と接続されるICチップ72の電極の個数に合わせて形成されている。なお、貫通孔71aの配置、形状及び大きさ等は、特に限定されない。また、貫通孔71aは、金属めっきの施されたスルーホール等であってもよい。
【0042】
ICチップ72は、モジュール基板71の裏面71gへ備えられる。ICチップ72は、接触型通信機能および非接触型通信機能を有する公知の構成のものを用いることができる。ICチップ72は、板厚方向Dtから見て矩形状に形成されている。ICチップ72の実装の形態は特に限定されないが、本実施形態では、例えばキャリアテープに実装されたCOT(Chip On Tape)の形態でICモジュール基板71に実装される。ICチップ72は、下側DWの表面に図示しない電極を備えている。
【0043】
パッド電極(電極)73は、モジュール基板71の裏面71gに備えられる。パッド電極73は、モジュール基板71の中央部に配置されたICチップ72の周囲に配置されている。パッド電極73は、図2に示すように、ICモジュール7がカード本体2の嵌合孔6に嵌め込まれた際に、第一収容部61の第一底面61aから露出した接続部321の接続面321aの上側UPに配置される。
【0044】
パッド電極73は、ワイヤ75を介してICチップ72の電極へ電気的に接続される。また、パッド電極73は、例えば、カード本体2の備える接続部321の接続面321aに、はんだ付け、導電性インキ、導電性接着剤、または異方性導電フィルム(ACF)等を介して接続することができる。この構成により、カード本体2のアンテナコイル32と、ICモジュール7のICチップ72とは電気的に接続される。ただし、カード本体2のアンテナコイル32と、ICモジュール7のICチップ72との電気的な接続方法は、本実施形態に限定されない。
【0045】
接触端子74は、図示しない接触型外部機器と接触可能に構成される。接触端子74は、図2に示すように、モジュール基板71の表面71fへ形成される。接触端子74は、裏面に図示しない電極を備える。接触端子74は、ワイヤ75を介してICチップ72の電極へ電気的に接続される。
【0046】
ワイヤ75は、貫通孔71aを挿通する。ワイヤ75は、図2に示すように、ワイヤボンディング等によってモジュール基板71の裏面71gのICチップ72の電極と、表面71fの接触端子74に備えられた電極及びパッド電極73とを接続する。ICチップ72と接触端子74及びパッド電極73とは、ワイヤ75を介して電気的に接続される。ワイヤ75としては、金ワイヤが好ましい。ただし、ワイヤ75は、銀、白金、アルミニウム、銅、合金、異種金属によるコーティング線等のワイヤを使用してもよい。
【0047】
樹脂封止部76は、ICチップ72とワイヤ75とを被覆する突起状部位である。樹脂封止部76は、図2に示すように、モジュール基板71の裏面71gに備えられている。樹脂封止部76は、例えば、公知のエポキシ樹脂、紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂等などで形成することができる。樹脂封止部76は、ICチップ72を外力負荷や環境負荷から保護したり、ワイヤ75等の断線を防いだりすることができる。樹脂封止部76は、一般的にICチップ72に中心を合わせて配置する。
【0048】
ICカード1は、例えば、ミリング加工によって嵌合孔6が形成されたカード本体2と、嵌合孔6に嵌め込まれたICモジュール7とを、熱圧によるラミネートあるいは接着等により挟み込んで一体化させ、その後、カードの形状に打ち抜いて成形される。成形されたICカード1は、さらにエンボス加工等を施されていてもよい。
【0049】
次に、ICカード1の製造方法を用いて説明する。
図6は、ICカード1に嵌合孔6が形成される前のアンテナシート3に埋め込まれたアンテナコイル32の接続端子320を拡大した図である。図6において、アンテナコイル32は、アンテナコアシート33に埋め込まれているが、説明の便宜上、アンテナコイル32を実線で示している。
【0050】
まず、アンテナコイル32をアンテナコアシート33に埋め込む工程について説明する。
アンテナコイル32は、例えば、図3に示すように、アンテナコアシート33の裏面33gに直径0.1mmのマグネットワイヤを、超音波振動子を使用して描画することによって形成される。アンテナコイル32の両端部には、図6に示すように、少なくとも一回以上折り返されることによって形成された接続端子320が備えられている。
【0051】
図7(A)は、嵌合孔6が形成される前の図6のD-D断面を示すアンテナコイル32の接続端子320の拡大図である。図7(B)は、図7(A)のE-E断面を示すアンテナコイル32の接続端子320の拡大図である。
接続端子320の接続部321は、図7(A)に示すように、アンテナコアシート33の裏面33g側から上側UPに、板厚方向Dtにおいて折返し部322よりも深くなるように形成される。具体的には、接続部321は、圧力を折返し部322における圧力よりも約6~15Nまで上げる、または描画するスピードを折返し部322におけるスピードよりも10~25mm/s下げる(遅くする)ことによって、板厚方向Dtにおいて折返し部322よりも深くなるように形成される。すると、接続部321は、図7(A)及び図7(B)に示すように、板厚方向Dtにおいて、折返し部322よりも上側UPに配置される。言い換えると、折返し部(深端部)322は、板厚方向Dtにおいて接続部321よりも裏面33g側である下側DWに対して深い位置に埋め込まれる。ここで、接続部321の中心O2から、折返し部322の中心O3までの高さの差H1は、アンテナコイル32の直径よりも20パーセント以上の高さの差があるのが好ましい。具体的には、高さの差H1は、アンテナコイル32の直径0.1mmの20パーセント以上である0.02mm以上に設定されているのが好ましい。本実施形態では、高さの差H1は、0.05mm程度に設定されている。
【0052】
次に、アンテナコイル32のミリング加工による切削工程について説明する。
図8は、図1のA-A断面に沿うICカード1に嵌合孔6が形成される前のICカード1のカード本体2を短辺方向D2から見た状態を模式的に示す断面図である。なお、図8の断面図おいては、説明の便宜上、アンテナコイル32の接続端子320が3回程度に折り返された状態に簡素化して図示している。
上述の工程により、アンテナコイル32を内包したアンテナシート3は、中間シート4と外装基材5とを、さらにホットメルト接着剤等で板厚方向Dtに積層され、熱プレスする事により、図8に示すように、ラミネートされたカード本体2を得る。その後、カード本体は、図2に示すように、ミリング加工によってICモジュール7を収めるための嵌合孔6を形成する。ミリング加工には、例えば、カード専用のミリング加工機を使用することができる。
【0053】
ミリング加工によって嵌合孔6が形成されると、接続端子320の上側UPのアンテナコアシート33が削られる。本実施形態では、嵌合孔6は、第一収容部61と、第二収容部62とを備えている。
【0054】
接続部321は、図5(A)及び図5(B)に示すように、アンテナコアシート33が削られると同時に、上側UPの一部を削られ、接続部321の表面を被覆している絶縁樹脂層を除去される。すると、図4及び図5に示すように、接続面321aが形成されて嵌合孔6の第一収容部61の第一底面61aから露出する。接続端子320に形成された接続面320aの露出面積は、板厚方向Dtにおいてアンテナコイル32の半径である0.05mmまでミリング加工した時が最大となる。そのため、接続部321は、接続面321aの露出面積が半径までミリング加工されている事が好ましい。
【0055】
折返し部(深端部)322は、上述したように、アンテナコアシート33において、接続部321よりもアンテナコイル32の直径の20パーセント以上を裏面33g側に対して深い位置に埋め込まれる。そのため、折返し部322は、上側UPのアンテナコアシート33が削られても、嵌合孔6の第一収容部61の第一底面61aから露出せず、アンテナコアシート33に埋め込まれた状態を保つ。すると、切削機(ミリング加工機)によってアンテナコイルが引っ張られる力が従来と同様に働いても、折返し部322が接続部321の剥離を抑えるため、図4に示すように、接続部321が剥離したり破断したりすることなく、アンテナコイル32に留まることができる。
【0056】
なお、嵌合孔6の第二収容部62は、アンテナコアシート33を板厚方向Dtに貫通する。そのため、第二収容部62が形成された位置に配置されていた接続部321及び折返し部322は、図4に示すように、すべて削り取られる。
【0057】
嵌合孔6は、カード本体2にICモジュール7が接合される場合に、ICモジュール7を収容してICカード1の表面1f上に凹凸が出ないように設けられている。そのため、ICモジュール7は、カード本体2の各シート(層)に干渉せずに収容できる。そして、ICモジュール7のパッド電極(電極)73は、アンテナコイル32に備えられ、第一収容部61の第一底面61aから露出した接続部321の接続面321aの上側UPに配置される。パッド電極73と接続面321aとは、はんだ付け、導電性インキ、導電性接着剤、または異方性導電フィルム(ACF)等を介して、電気的に接続することができる。
【0058】
本実施形態では、折返し部322は、接続部321よりも下側DWに対して深い位置に埋め込まれる。そのため、ミリング加工時に接続部321がアンテナコアシート33から剥離したり、ちぎれてしまったりして、ICモジュール7との接続面積が減少する虞を低減することができる。また、アンテナコイル32は、安定してICモジュール7と電気的に接続でき、接続信頼性を向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、接続部321は、嵌合孔6の短辺方向(周方向)D2に沿って形成される。また、接続部321は、20~30本の接続部321を嵌合孔6の辺6bをそれぞれ挟むように辺6bの径方向に配列されている。そのため、接続部321は、なるべくICモジュール7のパッド電極73と電気的に接続可能な面積を増やし、接続信頼性をさらに向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態では、嵌合孔6は、第一収容部(第一凹部)61と、第二収容部(第二凹部)62とを備える。そのため、嵌合孔6は、第一収容部61の第一底面61aにおいて接続部321を露出させつつ、接触端子74、ICチップ72及び樹脂封止部76を備えたICモジュール7を好適に収容させることができる。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態及び以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0062】
(実験)
次に、一実施形態に係るICカード1の作用を確認するための評価試験を行った。
【0063】
本実験には、ICカードのサンプルである実施例1と、比較例1とを使用する。ここで、実施例1は、一実施形態に係るICカード1と同様の構成である。すなわち、折返し部322は、アンテナコアシート33において、接続部321よりもアンテナコイルの32の直径の20パーセント以上を下側DWに埋め込まれる。比較例1は、図9及び図10に示す従来のICカードであり、一実施形態に係るICカード1と比較して、アンテナコイルにおける折返し部と接続部との板厚方向Dtの高さが略同じである従来のICカードと同様の構成である。
【0064】
また、本試験の評価基準としては、カード本体にミリング加工によって嵌合孔6を形成した際に、第一収容部61の第一底面61aから露出した接続部321のワイヤが剥離または破断するかどうかを判断基準とする。接続部321のワイヤが剥離または破断する場合は、ICカード1は不良品であるとする。接続部321のワイヤが剥離または破断しない場合は、ICカード1は良品であるとする。
【0065】
用意された実施例1及び比較例1を用いて試験(ミリング加工歩留り試験)を実施した。今回は、実施例1のサンプルと、比較例1のサンプルとをそれぞれ500枚ずつ用意し、ミリング加工機によって嵌合孔6を形成したのち、良品数と不良品数との枚数を確認する。得られた試験結果は、表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示すように、実施例1の良品数は500枚、不良品数は、0枚であった。実施例1は、すべてのサンプルにおいて、接続部321のワイヤの剥離または破断が発生しなかった。また、比較例1の良品数は421枚、不良品数は、79枚であった。
【0068】
以上の結果より、実施例1は、比較例1よりも接続部321のワイヤの剥離または破断の発生率が低いことが分かった。すなわち、実施例1の折返し部322は、接続部321よりもアンテナコアシート33の裏面33g側である下側DWに対して深い位置に埋め込まれることで、ミリング加工時に接続部321がアンテナコアシート33から剥離したり、ちぎれてしまったりして、ICモジュール7との接続面積が減少する虞を低減することができることができたと考察できる。
【0069】
(変形例)
例えば、上述した実施形態では、アンテナコイル(巻線アンテナ)は、アンテナシートのアンテナコアシートの下側DWに設けられているが、特に限定されない。アンテナコイルは、アンテナシートに内包されていればよい。例えば、アンテナコイルは、アンテナコアシートではなく、コアシートの上側UPに設けられていてもよい。この場合は、コアシートにおいて、折返し部(深端部)が、接続部(露出部)よりもアンテナコイルの直径の20パーセント以上を裏面側である下側DWに対して深い位置に埋め込まれることで上述と同様の効果を奏することができる。
【0070】
具体的には、アンテナコイルの接続端子の折返し部は、圧力を接続端子の接続部における圧力よりも約6~15Nまで上げる、または描画するスピードを接続部におけるスピードよりも10~25mm/s下げる(遅くする)ことによって、接続部よりも深くなるように形成することができる。このようにして形成されたアンテナコイルは、アンテナシートに内包され、中間シートと外装基材とを、板厚方向Dtに積層されてラミネートされたカード本体2を得る。そして、上述と同様に、カード本体2は、ミリング加工されて、嵌合孔を形成するとともに、接続部を露出させることができる。なお、板厚方向Dtにおけるミリング加工の深さ(高さ)は、ミリング加工機の設定を変更したり、各シート(層)の厚みを変更したりすることで調整することができる。
【0071】
また、本実施形態では、折返し部322は、嵌合孔6が形成された場合に、嵌合孔6から露出しないが、折返し部322は、嵌合孔6から露出していてもよい。
【0072】
また、本発明にかかるアンテナコイルは、非接触型外部機器との非接触型通信が可能であればよく、巻き数、形状及び線幅等については特に限定されない。
【0073】
また、本発明に係るアンテナコイルの製造方法は、本実施形態に限定されず、例えば、金属板や金属箔のレーザー切断や打ち抜き、金属箔や金属層のエッチング、金属線の配置などを例示できる。打ち抜きは、例えばアンテナコイルを幅広に形成する際に好適である。
【0074】
また、本発明のICカードは、例えば、上述の実施形態に示す1つのICチップが接触式及び非接触式の双方として機能するデュアルカードに限定されず、嵌合孔にICモジュールが嵌め込まれ、嵌合孔から露出したアンテナコイルの端子とICモジュールの端子とが電気的に接続される構造全般に適用してもよい。
【0075】
また、上述した実施形態のアンテナシートは、アンテナコイルへ直列又は並列に電気的に接続され、アンテナコイルと共振回路を構成し共振周波数を調整するチップコンデンサ等(平板コンデンサも含む)をさらに備えていてもよい。
【0076】
また、上述した実施形態のICカードに備えられた嵌合孔の形状及び大きさ及び形状は、上述の実施形態に限らず、モジュール基板、ICチップ及び樹脂封止部の形状及び大きさに応じて適宜変更可能である。また、本実施形態では、嵌合孔は、矩形状であるが、特に限定されず、例えば板厚方向Dtの上側UP側から見て、円形状や多角形状であってもよい。
【0077】
いずれの上記形態においても、本発明に係るICカードによれば、アンテナコイルとICモジュールとが電気的に接続する面積を維持しつつ、接続信頼性を確保して加工しやすくするICカードを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係るICカードによれば、アンテナコイルとICモジュールとが電気的に接続する面積を維持しつつ、接続信頼性を確保して加工しやすくするICカードを提供することができるので産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 ICカード
1f 表面
1g 裏面
2 カード本体
3 アンテナシート
31 コアシート
32、32A アンテナコイル(巻線アンテナ)
320、320A、320B 接続端子
321 接続部(露出部)
321a 接続面
322 折返し部(深端部)
33、33A アンテナコアシート(アンテナシート)
4 中間シート
41 表側中間シート
42 裏側中間シート
5 外装基材(外装シート)
51 表側外装基材
52 裏側外装基材
6、6A 嵌合孔(凹部)
6h 開口部
61 第一収容部(第一凹部)
61a 第一底面
61b 第一内側面
62 第二収容部(第二凹部)
62a 第二底面
62b 第二内側面
7 ICモジュール
71 モジュール基板(基板)
72 ICチップ
73 パッド電極(電極)
74 接触端子
75 ワイヤ
76 樹脂封止部
Dt 板厚方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10