(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033319
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】防水板装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20240306BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136837
(22)【出願日】2022-08-30
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(71)【出願人】
【識別番号】000154288
【氏名又は名称】株式会社富士精工本社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】安立 直也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 眞也
(72)【発明者】
【氏名】細川 祐生
【テーマコード(参考)】
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E139AA08
2E139AC19
2E139AC20
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】保守点検を簡便に行うことができる防水板装置を提供する。
【解決手段】ベース3に倒伏位置と起立位置との間を上下に回動可能に枢着された防水板4と、防水板4を起立位置まで押し上げる起立機構5とを備える防水板装置1であって、起立機構5は電動式のアクチュエータ51を備え、防水板4が倒伏位置から動作しない状態で、アクチュエータ51の動作をモニタリングするモニタリング手段C1を備えている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに倒伏位置と起立位置との間を上下に回動可能に枢着された防水板と、該防水板を前記起立位置まで押し上げる起立機構とを備える防水板装置であって、
前記起立機構は電動式のアクチュエータを備え、
前記防水板が前記倒伏位置から動作しない状態で、前記アクチュエータの動作をモニタリングするモニタリング手段を備えていることを特徴とする防水板装置。
【請求項2】
前記起立機構と前記ベースとの接続部に遊びがあることを特徴とする請求項1に記載の防水板装置。
【請求項3】
前記起立機構と前記防水板との接続部に遊びがあることを特徴とする請求項1に記載の防水板装置。
【請求項4】
前記起立機構は前記アクチュエータからの駆動力を受けて前記防水板に力を伝達するリンク機構が設けられており、
前記アクチュエータと前記リンク機構との接続部に遊びがあることを特徴とする請求項3に記載の防水板装置。
【請求項5】
前記アクチュエータの動作をモニタリングした後、前記アクチュエータを初期位置に復帰させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の防水板装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは動作情報を出力する外部出力機能を有していることを特徴とする請求項1に記載の防水板装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の出入口等に設置される防水板装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば洪水や集中豪雨等により想定以上の大量の水が道路に溢れた場合、家屋、ビル、地下駐車場、地下鉄等の出入口を介して建造物内に水が浸入するおそれがある。そこで、建造物内への水の浸入を防止するために、洪水時に防水板(防水扉)を起立させて建造物の出入口を閉塞することができるようにした防水板装置(防水扉装置)が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の防水板装置の起立機構は、高圧ガスを駆動源として作動するシリンダと、一端部を中心として上下に回動し、他端部に設けたローラの転動により防水板を起立させるアームとを備え、ガス供給部の水感知部が増水を感知したとき、ガスボンベの高圧ガスがシリンダに供給されてアームと共に防水板を自動的に起立させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-114619号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような防水板装置にあっては、例えば経時劣化等により起立機構に不具合が生じた場合、防水が必要な状況下において防水板を確実に起立させることができない虞があるため、起立機構の保守点検が定期的に行われる。起立機構の保守点検を行う際には、実際に起立機構を駆動させ防水板を動作させるため、起立機構の保守点検作業時には、安全性の観点から防水板装置の周辺の立ち入りの制限や、作業員の配置等が必要になり、起立機構の保守点検が煩雑であった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、保守点検を簡便に行うことができる防水板装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の防水板装置は、
ベースに倒伏位置と起立位置との間を上下に回動可能に枢着された防水板と、該防水板を前記起立位置まで押し上げる起立機構とを備える防水板装置であって、
前記起立機構は電動式のアクチュエータを備え、
前記防水板が前記倒伏位置から動作しない状態で、前記アクチュエータの動作をモニタリングするモニタリング手段を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、防水板を動作させることなく、電動式のアクチュエータのみを動作させてアクチュエータや電気関係の情報を収集し、正常に動作するか否かをモニタリングすることにより、アクチュエータや電気関係等に関するメンテナンスが必要かどうかを判断することができるため、防水板装置の保守点検を簡便に行うことができる。
【0008】
前記起立機構と前記ベースとの接続部に遊びがあることを特徴としている。
この特徴によれば、簡便な構造で防水板を動作させずにアクチュエータを駆動させることができる。
【0009】
前記起立機構と前記防水板との接続部に遊びがあることを特徴としている。
この特徴によれば、簡便な構造で防水板を動作させずにアクチュエータを駆動させることができる。また、起立機構の動作を安定させることができる。
【0010】
前記起立機構は前記アクチュエータからの駆動力を受けて前記防水板に力を伝達するリンク機構が設けられており、
前記アクチュエータと前記リンク機構との接続部に遊びがあることを特徴としている。
この特徴によれば、防水板の負荷がかからない状態でアクチュエータを駆動させることができる。
【0011】
前記アクチュエータの動作をモニタリングした後、前記アクチュエータを初期位置に復帰させることを特徴としている。
この特徴によれば、アクチュエータの動作を継続的にモニタリングできる。
【0012】
前記アクチュエータは動作情報を出力する外部出力機能を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、簡便な構造でアクチュエータの動作をモニタリングできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係る防水板装置における防水板が倒伏位置にあるときの平面図である。
【
図3】
図1のB-B線断面図である。説明の便宜上、奥側の部材の図示を省略している。
【
図4】防水板が起立位置にあるときの平面図である。
【
図6】
図4のD-D線断面図である。説明の便宜上、奥側の部材の図示を省略している。
【
図8】(a)はブラケットを示す斜視図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく側面図、(d)は同じく下面図である。
【
図9】防水板の倒伏位置における電動シリンダの初期位置を示す側断面図である。
【
図11】電動シリンダの点検動作が行われた状態を示す側断面図である。
【
図12】(a)は表示部のメイン画面を示す図、(b)は表示部の点検画面を示す図である。
【
図13】(a)は電動シリンダの点検動作の完了を知らせるメッセージが表示された状態を示す図、(b)は電動シリンダの異常を知らせるメッセージが表示された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る防水板装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
実施例に係る防水板装置につき、
図1から
図13を参照して説明する。以下においては、防水板の起立方向である屋外側(
図1の紙面上方)を前方、倒伏方向である屋内側を後方として説明する。
【0016】
図1~
図7に示すように、防水板装置1は、建造物の出入口の左右一対の柱2、2間の屋内側の床面に設置され、洪水や集中豪雨等の非常時に後記する防水板4を起立させ、柱2、2の後面に密封状に押し当てることにより、建造物内への水の浸入を防止するものである。
【0017】
防水板装置1は、床面または地中に形成された凹部内に設置されるベースとしての上面が開口する箱形金属製のケース3と、ケース3の前端部の底面に枢着された防水板4と、ケース3の底面に左右に離間して設置された電気(商用電源)を駆動源として作動する起立機構5、5、5と、起立機構5、5、5を外部から制御する制御装置C(
図10参照)と、を備えている。
【0018】
尚、本実施例では、電気を駆動源とする起立機構5が設けられる形態を例示したが、起立機構5の他に電気以外の駆動源(例えば油圧等)で作動する起立機構が設けられていてもよい。
【0019】
防水板4は、金属製の長方形の板材により形成され、その裏面(起立状態において後面)には、複数の補強材7が溶接により縦横に固着されている。防水板4は、一方の長辺が左右複数(実施例では3個)のヒンジ機構8によりケース3の前側の底面に上下方向(前後方向)に回動可能に枢着され、倒伏位置(
図1~
図3参照)と起立位置(
図4~
図6参照)との間を上下方向に回動することができる。
【0020】
倒伏状態での防水板4の前後寸法は、ケース3の前後寸法よりも所要寸法短く形成され、防水板4の後端とケース3の後壁との間に、点検等に使用されるケース3の内部空間にアクセス可能な開口9が形成されるようになっている。開口9は、取外し可能なカバープレート10により常時閉塞されている。なお、カバープレート10はヒンジによりケース3に開閉可能に枢着してもよい。
【0021】
防水板4が倒伏位置まで回動すると、その後端部の裏面が、ケース3の後方寄りの底面に立設された左右複数のストッパ杆11の上端に当接し、防水板4の上面と床面Fとがほぼ同一面に整合するようになっている(
図3参照)。また、防水板4が起立位置まで回動すると、防水板4の表面(前面)が左右の柱2、2の後面にシール部材(図示略)を介して密封状に圧接するとともに、下端縁がケース3の前面の設けられたシール部材(図示略)に密封状に圧接して防水性が維持されるようになっている。
【0022】
ケース3の前方寄りの内側面には、ケース3よりも若干高さの低い平面視内向きコ字状の枠部材12、12が固着され、枠部材12の下方のケース3の底面は開口されている。枠部材12、12に生コンクリートを流し込むことにより、ケース3を床面Fの基礎に固定することができる。
【0023】
起立機構5、5、5は、それぞれアクチュエータである電動シリンダ(電動アクチュエータ)51と、電動シリンダ51の駆動力を防水板4に伝達するリンク機構としてのアーム52とを備えている。
【0024】
電動シリンダ51は、中空の筒状であるシリンダ513と、シリンダ513に対して前後方向に進退可能なシリンダロッド511とからなるシリンダ部材510と、モータ512とを備えている。電動シリンダ51は公知のものであり、電動シリンダ51の内部には、モータ512により回転させられる軸方向に延びるボールねじ(図示略)が収容されている。また、シリンダロッド511には、ボールねじに対し共回りが規制された状態で螺合するナット(図示略)が固定されている。モータ512によりボールねじが回転すると、ナットがボールねじに沿ってねじ送りされることにより、シリンダロッド511が進退するようになっている。電動シリンダ51を用いると、制御装置Cにより複数の電動シリンダ51を同期させて作動させることができる。
【0025】
本実施例の電動シリンダ51は、自己動作状況を検出し、制御装置Cに出力する外部出力機能を有している。詳しくは、電動シリンダ51は、シリンダロッド511の進退方向の位置情報を得ることができるエンコーダ(図示略)を有しており、該位置情報を制御装置Cに出力するようになっている。尚、電動シリンダ51は、エンコーダに限られず、ひずみセンサや電流計または電圧計を設け、それらで得られたデータを制御装置Cに出力するようになっていてもよい。
【0026】
ケース3の底面の後部側には、それぞれシリンダブラケット13がボルト止めされ、各シリンダブラケット13の左右の起立片13a、13aには、それぞれ起立機構5、5、5の電動シリンダ51の基端部(後端部)が左右方向を向く枢軸14により上下に回動可能に枢着されている。
【0027】
起立機構5のアーム52は、それぞれ左右に所定寸法離間して対向する左右一対の側板部材521、521と、左右の側板部材521の長手方向の一端部と他端部(倒伏時において前端部と後端部)同士及び一端部寄りの中間部同士を連結する左右方向を向く連結軸522とを備え、一対の側板部材521は、連結軸522により一体をなすようにユニット化されている。各アーム52の一端部と他端部の連結軸522は、側板部材521の外側方に突出し、他端部の連結軸522の左右の突出部には、移動端部である転動ローラ15、15が枢支されている。転動ローラ15,15は、防水板4の裏面に沿って相対移動する(詳細は後述する)。
【0028】
ケース3の底面の前部側には、アームブラケット16がボルト止めされ、各アームブラケット16の左右の起立片16a、16aには、それぞれ起立機構5のアーム52における一端部側の連結軸522の左右の突出部が枢支されている。これにより各アーム52は、一端部(前端部)を中心として上下に回動することができる。
【0029】
各アーム52の中間部の連結軸522の左右方向の中央部には、それぞれ起立機構5のシリンダロッド511の先端部が後述するブラケット30を介して回動可能に枢着されている。各アーム52は、電動シリンダ51の推力により一端部を中心として上向きに回動し、他端部の転動ローラ15により防水板4が押し上げられるようになる。なお、
図3及び
図6に示すように、アーム52の側板部材521には、シリンダロッド511の連結軸522が取付けられる取付孔17が複数設けてあり、防水板4の重量や大きさの違いに対応して、推力やストロークの異なるアクチュエータのシリンダロッドの枢着位置を変更できるようにしてある。
【0030】
防水板4の裏面の補強材7の左右両側部と中央部とには、それぞれ左右一対ずつのレール部材18、18とガード部材19、19とが、各起立機構5に対応して設けられている。なお、左右両側と中央の全てのレール部材18、18及びガード部材19、19は、構造並びに取付形態が同一であるため、以下、右側方のもののみ詳細に説明する。
【0031】
図5~
図7に示すように(防水板が起立した状態で説明する)、補強材7の互いに隣接する縦補強材7a、7aの裏面の上下方向の中央部には、取付基板20が溶接により固定され、この取付基板20の中央部の裏面(後面)に上下方向を向く左右一対のレール部材18、18のフランジ部18aが複数のボルト21により固定されている。また、取付基板20における左右のレール部材18を挟む左右両側には、左右一対のガード部材19、19の外向きフランジ部19a、19aが複数のボルト21により固定されている。
【0032】
レール部材18、18は、後方(防水板4の裏面方向)に突出し、それらの後端面(なお、倒伏状態において下面である。)は、アーム52の転動ローラ15、15を案内する案内面18b、18bとなっている。案内面18bは、始端から終端(
図5、
図6において上端から下端)に向けて、防水板4の裏面方向に徐々に突出する傾斜面となっている。
図6に示すように、左右の案内面(傾斜面)18b、18bの終端には、案内面18bと鈍角に交わる面により段部18cが形成されている。この段部18cには、防水板4が起立位置まで回動したとき、転動ローラ15、15が落ち込むようになっている。
【0033】
ガード部材19、19は、レール部材18、18の案内面18b、18bに沿って延び、後方に突出する側壁部19b、19bと、側壁部19b、19bの後端から左右内側に延びる規制部19c、19cを有している(
図7参照)。規制部19c、19cとレール部材18、18の案内面18b、18bとの対向面は、転動ローラ15、15が通過可能なように離間している。
【0034】
なお、ガード部材19の上下寸法はレール部材18よりも短寸とされ、規制部19cはレール部材18よりもヒンジ機構8側(起立状態の防水板4の下方側)に配置してある。詳しくは、
図5に示すように、規制部19cの始端がレール部材18の始端よりも下方に位置するようにしてある。これは、防水板4が倒伏位置にあるとき、転動ローラ15が案内面18bと規制部19cとの間に位置しないようにするためである。
【0035】
次に、起立機構5のシリンダロッド511の先端部に接続されるブラケット30について説明する。
図8に示されるように、ブラケット30は、正面視略矩形状のベース部31と、ベース部31の左右から立ち上がる起立部32,32と、を備えている。
【0036】
ベース部31には、上下方向(起立部32,32の立ち上がり方向)に貫通する貫通孔31aと、左右方向に貫通する貫通孔31bと、が形成されている。貫通孔31aと貫通孔31bとは互いに連通している。
【0037】
起立部32,32には、左右に対向する位置に左右に貫通し上下方向に長い長孔32a,32aが形成されている。
【0038】
図9に示されるように、シリンダロッド511の先端部は、ブラケット30の貫通孔31aに挿通されている。この先端部は、左右方向に貫通する図示しない孔を有しており、該孔と貫通孔31bとにボルト・ナット40を挿通し締結することで、シリンダロッド511の先端部にブラケット30が接続される。
【0039】
起立機構5のアーム52の中間部の連結軸522は、ブラケット30の起立部32,32に設けられた長孔32a,32aに挿通されている。すなわち、ブラケット30は、アーム52の連結軸522に対する若干の相対距離Δiniの移動が許容されている。言い換えれば、シリンダロッド511とアーム52との接続部に遊びが形成されている。
【0040】
図10に示されるように、制御装置Cは、制御盤C1と操作盤C2とから構成されている。制御盤C1には、外部電源、例えば商用電源から延びる電源用配線LN1が接続されているとともに、操作盤C2から延びる制御信号用配線LN2が接続されている。
【0041】
また、制御盤C1から延びる電源用配線LN3と制御信号用配線LN4は、接続ボックス50に接続されている。
【0042】
また、接続ボックス50は、電源用配線LN5および制御信号用配線LN6により各電動シリンダ51に接続されている。
【0043】
次に、防水板装置1の動作及び作用効果について説明する。
図1~
図3に示すように、通常時は防水板4が完全に倒伏した状態にあり、防水板4の上面と床面Fとはほぼ同一面をなしている。洪水や集中豪雨等の緊急時において建造物内への水の浸入を防止する必要が生じた場合には、制御装置Cを操作して各起立機構5を同時に作動させる。
【0044】
各起立機構5を作動させると、アーム52が一端部(前端部)を中心として徐々に上向きに回動する。そして、アーム52の他端部に枢支された転動ローラ15、15が防水板4の裏面のレール部材18、18の案内面18bに当接し、防水板4を徐々に押し上げながら下方に相対移動する。
【0045】
図4~
図6に示されるように、防水板4が起立位置まで回動すると、転動ローラ15がレール部材18の段部18cに落ち込む。
【0046】
防水板4を倒伏位置に復帰させるには、制御装置Cを操作して電動シリンダ51のモータ512を逆回転させる。すると、アーム52が後方に回動し、転動ローラ15が段部18cから離脱する。転動ローラ15はガード部材19の規制部19cに当接し、防水板4が規制部19cを介して倒伏方向に押動される。
【0047】
そして、シリンダロッド511が最小ストローク位置まで縮退すると、モータ512が自動的に停止し、防水板4は倒伏位置まで回動して停止する。
【0048】
次に、
図9~
図13に基づいて、電動シリンダ51の保守点検作業について説明する。
【0049】
図9に示されるように、防水板4の倒伏位置にあっては、各シリンダロッド511が最小ストローク位置(すなわち電動シリンダ51の初期位置)となっており、ブラケット30の長孔32a,32aの前端部にアーム52の連結軸522が配置されている。
【0050】
電動シリンダ51の保守点検作業を行う際には、制御装置Cを操作する。具体的には、
図12(a)に示されるように、操作盤C2は、表示部SCを有しており、表示部SCのメイン画面P1には、防水板4を上昇させる上昇ボタンB1と、防水板4を下降させる下降ボタンB2と、防水板4の動作を停止させる停止ボタンB3と、電動シリンダ51の保守点検作業を行う点検ボタンB4と、が表示されている。上昇ボタンB1、下降ボタンB2、停止ボタンB3を適宜操作することで、防水板4の通常動作を行うことができるようになっている。
【0051】
図12(b)に示されるように、点検ボタンB4が押されると、表示部SCが点検画面P2に切り換わる。点検画面P2には、点検開始ボタンB10と、点検中断ボタンB11と、メイン画面P1に戻る戻りボタンB12が表示される。
【0052】
点検開始ボタンB10が押されると、電動シリンダ51を伸び方向に駆動させシリンダロッド511が最小ストローク位置から予め決められた距離Δtest伸長する(
図11参照。)。次いで、所定の時間(例えば数秒)電動シリンダ51の駆動を停止する。その後、電動シリンダ51を縮み方向に駆動させシリンダロッド511を最小ストローク位置まで退縮する(
図9参照。)。ここで、距離Δtestは距離Δini未満に設定されているので、点検動作時にはアーム52の連結軸522がブラケット30の長孔32a,32aの前端部に当接しない(
図11参照)。
【0053】
尚、電動シリンダ51の点検動作中に点検中断ボタンB11が押されると、電動シリンダ51の点検動作が中断される。また、制御盤C1は、シリンダロッド511が最小ストローク位置にあるときに、次の保守点検作業時における制御装置Cの操作を受け付け可能になっている。
【0054】
制御盤C1に設けられたPLC(Programmable Logic Controller)は、各電動シリンダ51の点検動作中において各電動シリンダ51から出力されるシリンダロッド511の進退方向の位置情報をモニタリングすることで、各電動シリンダ51が正常に動作したか否かを判別するようになっている。すなわち、制御装置Cの制御盤C1は、電動シリンダ51の動作をモニタリングするモニタリング手段として機能している。なお、モニタリングはシリンダロッド511の伸び動作時の位置情報のみ、縮み動作時の位置情報のみで各電動シリンダ51が正常に動作したか否かを判別するものであってもよい。
【0055】
図13(a)に示されるように、各電動シリンダ51の点検動作が正常に完了すると、制御盤C1は、各電動シリンダ51の点検動作が完了したことを示すメッセージを表示部SCにポップアップ表示するようになっている。
【0056】
一方、
図13(b)に示されるように、電動シリンダ51の点検動作時において、いずれかの電動シリンダ51の動作と、制御装置Cからの動作指示と、の誤差が許容範囲外となると、制御盤C1は、電動シリンダ51の異常が生じたことを示すメッセージを表示部SCにポップアップ表示するようになっている。
【0057】
電動シリンダ51の異常(本実施例では中央の電動シリンダ51の異常)が生じた場合には、左右の電動シリンダ51、または外部から例えば油圧シリンダなどの別の起立機構を用いて防水板4を起立させ、異常が生じた電動シリンダ51のメンテナンスを行うことができる。
【0058】
以上説明したように、制御盤C1は、防水板4を動作させることなく、電動式の電動シリンダ51のみを動作させて電動シリンダ51や電気関係の情報を収集し、正常に動作するか否かをモニタリングすることにより、電動シリンダ51や電気関係等に関するメンテナンスが必要かどうかを判断することができるため、防水板装置1の保守点検を簡便に行うことができる。
【0059】
また、起立機構5と防水板4との接続部に遊びがある。これによれば、簡便な構造で防水板4を動作させずに電動シリンダ51を駆動させることができる。また、起立機構5とケース3との接続部に遊びがある形態に比べて起立機構5の動作を安定させることができる。
【0060】
また、具体的には、起立機構5は、電動シリンダ51からの駆動力を受けて防水板4に力を伝達するアーム52が設けられており、アーム52の連結軸522がシリンダロッド511の先端部に設けられた長孔32a,32aに伸縮方向の相対移動が許容された状態で挿通されている。これによれば、アーム52で防水板4を支持するため、電動シリンダ51に防水板4の負荷がかからない状態で電動シリンダ51を駆動させることができる。
【0061】
また、シリンダロッド511の先端部には、長孔32a,32aが形成されたブラケット30が取付けられているので、ブラケット30を交換することで電動シリンダ51の点検動作の距離を簡便に変更できる。
【0062】
また、制御盤C1は、電動シリンダ51の点検動作をモニタリングした後、シリンダロッド511を初期位置に復帰させるようになっているため、電動シリンダ51の点検動作を継続的にモニタリングすることができる。
【0063】
また、電動シリンダ51は、自己動作状況を検出し、制御装置Cに出力する外部出力機能を有しているため、簡便な構造で電動シリンダ51の動作をモニタリングできる。
【0064】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内における追加や変更があっても、本発明に含まれる。
【0065】
例えば、本実施例では、制御装置Cは、電動シリンダ51から出力されるシリンダロッド511の進退方向の位置情報をモニタリングする形態を例示したが、これに限られず、電動シリンダ51への電流値または電圧値をモニタリングしてもよい。また、ひずみセンサによるシリンダロッド511の変形量をモニタリングしてもよい。また、温度センサによる電動シリンダの内部温度をモニタリングしてもよい。また、これらを複数組み合わせてモニタリングしてもよい。
【0066】
また、前記実施例では、点検動作時にアーム52の連結軸522がブラケット30の長孔32a,32aの前端部に当接しない範囲で電動シリンダ51が動作する形態を例示したが、連結軸522を長孔32a,32aの前端部に当接させた後のトルクをモニタリングしてもよい。
【0067】
また、前記実施例では、起立機構5と防水板4との接続部に遊びがあることで、防水板4が倒伏位置から動作しない状態で電動シリンダ51の動作をモニタリングできるようになっている形態を例示したが、これに限られず、電動シリンダ51と防水板4とがクラッチにより接続されており、電動シリンダ51の点検時には、電動シリンダ51と防水板4とを切り離して動作させるようにしてもよい。
【0068】
また、前記実施例では、起立機構5と防水板4との接続部に遊びがある形態を例示したが、これに限られず、起立機構5とケース3との接続部に遊びがあってもよい。この場合でも、簡便な構造で防水板4を動作させずに電動シリンダ51を駆動させることができる。
【0069】
また、前記実施例では、アーム52に連結軸522が設けられ、シリンダロッド511に長孔32a,32aが設けられる形態を例示したが、アーム52に長孔を設け、シリンダロッド511に連結軸を設けてもよい。