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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033346
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電動作業車
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20240306BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240306BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240306BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240306BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/12
B60L3/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136871
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 一人
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA20
5H125AC12
5H125AC22
5H125BA00
5H125BC15
5H125BC18
5H125CA01
5H125CA10
5H125CD02
5H125EE27
5H125EE49
(57)【要約】
【課題】蓄電装置の供給電力を枯渇させずに移動する電動作業車の提供。
【解決手段】電力を蓄える蓄電装置と、蓄電装置に蓄えられている電力を消費することによって走行装置と作業装置との少なくとも一方を駆動させるモータと、蓄電装置が電力を供給可能な残量を検出する残量検出部と、残量を示す残量値が予め設定された閾値よりも大きい場合にモータの駆動を制御する第一制御と、残量値が閾値以下である場合にモータの消費電力が第一制御よりも小さくなるようにモータの駆動を制御する第二制御と、の切り替えが可能な制御装置と、が備えられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を蓄える蓄電装置と、
前記蓄電装置に蓄えられている電力を消費することによって走行装置と作業装置との少なくとも一方を駆動させるモータと、
前記蓄電装置が電力を供給可能な残量を検出する残量検出部と、
前記残量を示す残量値が予め設定された閾値よりも大きい場合に前記モータの駆動を制御する第一制御と、前記残量値が前記閾値以下である場合に前記モータの消費電力が前記第一制御よりも小さくなるように前記モータの駆動を制御する第二制御と、の切り替えが可能な制御装置と、が備えられている電動作業車。
【請求項2】
人為操作に基づいて前記閾値を設定可能な閾値設定部が備えられている請求項1に記載の電動作業車。
【請求項3】
前記閾値は、前記蓄電装置が電力を供給可能な総量に対して5パーセント以上かつ20パーセント以下の範囲内に設定されている請求項1または2に記載の電動作業車。
【請求項4】
前記モータから前記作業装置への動力伝達を可能な作業動力伝達装置が備えられ、
前記制御装置は、前記第二制御において、前記作業動力伝達装置に前記動力伝達を遮断させる請求項1または2に記載の電動作業車。
【請求項5】
前記作業装置を連結可能であって、前記作業装置が作業する作業位置と、前記作業位置よりも高い非作業位置と、に昇降可能なリンク機構と、
前記リンク機構を昇降させる昇降装置と、が備えられ、
前記制御装置は、前記第二制御において、前記リンク機構が前記作業位置に位置している場合、前記昇降装置に前記リンク機構を前記非作業位置へ上昇させる請求項1または2に記載の電動作業車。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第一制御を実行しているときに、前記残量値が前記閾値以下になると、前記モータの駆動を停止する請求項1または2に記載の電動作業車。
【請求項7】
人為操作を受け付ける操作具が備えられ、
前記制御装置は、前記残量値が前記閾値以下である場合、かつ、前記操作具が操作された場合に、前記第二制御へ切り替える請求項6に記載の電動作業車。
【請求項8】
前記残量を表示可能な表示部が備えられ、
前記表示部は、前記蓄電装置が電力を供給可能な総量と、前記閾値と、の範囲で前記残量を表示する請求項1または2に記載の電動作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されている電動作業車(文献では「電動作業機」)において、電力を蓄える蓄電装置(文献では「バッテリ」)と、蓄電装置に蓄えられている電力に基づいて駆動可能なモータ(文献では「電動モータ」)と、蓄電装置が電力を供給可能な残量を検出する残量検出部(文献では「残量検出手段」)と、が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-110893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された電動作業車においては、残量検出部の検出値と、予め記憶された検出値と、に基づいて作業の終了時期が報知される。ところで、作業の終了時期が報知された後も、運転者が無理に作業を継続する場合が考えられるが、特許文献1に開示された電動作業車の構成であると、運転者が無理に作業を継続した場合、作業終了後の移動途中で蓄電装置の供給電力が枯渇する虞が考えられる。作業車の動力源が内燃機関である場合、内燃機関の燃料が枯渇した場合であっても、その場で燃料を補給すれば作業車の自走が再び可能となる。電動作業車の場合、移動途中で蓄電装置の供給電力が枯渇すると、電動作業車を充電場所まで牽引する牽引車や、充電用の電源車等を手配する必要がある。このことから、電動作業車の電源が移動途中で枯渇すると、運転者等は、作業車の動力源が内燃機関である場合よりも面倒な作業を強いられる。このため、電動作業車が充電場所に到着するまで、蓄電装置の供給電力を確実に枯渇させないように、改善する余地がある。
【0005】
本発明の目的は、蓄電装置の供給電力を枯渇させずに移動する電動作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動作業車は、電力を蓄える蓄電装置と、前記蓄電装置に蓄えられている電力を消費することによって走行装置と作業装置との少なくとも一方を駆動させるモータと、前記蓄電装置が電力を供給可能な残量を検出する残量検出部と、前記残量を示す残量値が予め設定された閾値よりも大きい場合に前記モータの駆動を制御する第一制御と、前記残量値が前記閾値以下である場合に前記モータの消費電力が前記第一制御よりも小さくなるように前記モータの駆動を制御する第二制御と、の切り替えが可能な制御装置と、が備えられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、制御装置が第一制御と第二制御とに切替可能であって、第二制御におけるモータの消費電力が第一制御の場合よりも小さくなる。このため、蓄電装置における電力の残量が少なくなった場合に、モータの消費電力を少なくすることによって、蓄電装置に残された電力の消費が抑制される。これにより、運転者は、蓄電装置の電力が枯渇する前に、電動作業車を自走させ、電動作業車を充電場所へ移動させることが可能となる。これにより、蓄電装置の供給電力を枯渇させずに移動する電動作業車が実現される。
【0008】
本発明において、人為操作に基づいて前記閾値を設定可能な閾値設定部が備えられていると好適である。
【0009】
作業対象の場所と充電場所との距離は作業環境ごとにことなるため、閾値は作業環境に合わせて設定できる構成が望ましい。本構成であれば、例えば作業対象の場所と充電場所との距離に応じて閾値を設定可能である。このため、電動作業車の作業走行において、電動作業車が蓄電装置の供給可能な電力分を余すことなく消費しつつ、移動途中で電力を枯渇させること無く充電場所への移動が可能となる。
【0010】
本発明において、前記閾値は、前記蓄電装置が電力を供給可能な総量に対して5パーセント以上かつ20パーセント以下の範囲内に設定されていると好適である。
【0011】
本構成であれば、蓄電装置の供給可能な電力が枯渇する前の適切な値に閾値を設定可能となる。
【0012】
本発明において、前記モータから前記作業装置への動力伝達を可能な作業動力伝達装置が備えられ、前記制御装置は、前記第二制御において、前記作業動力伝達装置に前記動力伝達を遮断させると好適である。
【0013】
本構成によって、第二制御において作業装置が駆動しなくなり、電動作業車は第二制御に基づいて走行のみが可能となる。これにより、蓄電装置に残された電力の消費が抑制される。
【0014】
本発明において、前記作業装置を連結可能であって、前記作業装置が作業する作業位置と、前記作業位置よりも高い非作業位置と、に昇降可能なリンク機構と、前記リンク機構を昇降させる昇降装置と、が備えられ、前記制御装置は、前記第二制御において、前記リンク機構が前記作業位置に位置している場合、前記昇降装置に前記リンク機構を前記非作業位置へ上昇させると好適である。
【0015】
本構成によって、第二制御において作業装置は対地作業を不能となる。これにより、蓄電装置に残された電力の消費が抑制される。
【0016】
本発明において、前記制御装置は、前記第一制御を実行しているときに、前記残量値が前記閾値以下になると、前記モータの駆動を停止すると好適である。
【0017】
本構成によって、蓄電装置の供給可能な電力の残量値が閾値以下になった状態で、運転者が無理に作業を継続する虞が回避される。
【0018】
本発明において、人為操作を受け付ける操作具が備えられ、前記制御装置は、前記残量値が前記閾値以下である場合、かつ、前記操作具が操作された場合に、前記第二制御へ切り替えると好適である。
【0019】
本構成によると、モータの駆動が停止した状態から、操作具の人為操作に基づいて制御装置が第二制御を実行する。これにより、運転者が気付かないうちに第一制御から第二制御へ切り替わる虞が回避される。
【0020】
本発明において、前記残量を表示可能な表示部が備えられ、前記表示部は、前記蓄電装置が電力を供給可能な総量と、前記閾値と、の範囲で前記残量を表示すると好適である。
【0021】
本構成であれば、運転者は、表示部に表示された残量に基づいて、通常の作業走行を伴う電動作業車の操作を行える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】電動トラクタの左側面図である。
図2】インバータ等の配置を示す左側面図である。
図3】動力伝達の流れを示す図である。
図4】電動作業車の制御の構成を示すブロック図である。
図5】メータパネルに表示される電力の残量値を示す図である。
図6】第一制御から第二制御に切り替わる処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。なお、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印「F」の方向を「前」、矢印「B」の方向を「後」とし、矢印「L」の方向を「左」、矢印「R」の方向を「右」とする。また、図中の矢印「U」の方向を「上」、矢印「D」の方向を「下」とする。
【0024】
〔電動作業車の全体構成〕
以下では、本実施形態の電動作業車について説明する。図1に電動作業車の一例として電動トラクタを示している。図1に示すように、電動トラクタは、左右の前車輪10、左右の後車輪11、カバー部材12を備えている。
【0025】
また、電動トラクタは、機体フレーム2及び運転部3を備えている。機体フレーム2は、左右の前車輪10及び左右の後車輪11に支持されている。
【0026】
カバー部材12は、機体前部に配置されている。そして、運転部3は、カバー部材12の後方に設けられている。言い換えれば、カバー部材12は、運転部3の前方に配置されている。
【0027】
運転部3は、保護フレーム30、座席31、ステアリングホイール32を有している。運転者は、座席31に着座可能である。これにより、運転者は、運転部3に搭乗可能である。ステアリングホイール32の操作によって、左右の前車輪10は操向操作される。運転者は、運転部3において、各種の運転操作を行うことができる。
【0028】
電動トラクタは、バッテリ装置4を備えている。また、カバー部材12は、機体左右方向に沿う開閉軸芯Q周りに揺動可能に構成されている。これにより、カバー部材12は、開閉可能に構成されている。カバー部材12が閉状態であるとき、バッテリ装置4は、カバー部材12に覆われている。バッテリ装置4は、本発明の『蓄電装置』に相当する。
【0029】
図2に示すように、電動トラクタは、インバータ14及びモータMを備えている。バッテリ装置4は、インバータ14へ電力を供給する。インバータ14は、バッテリ装置4からの直流電力を交流電力に変換してモータMへ供給する。そして、モータMは、インバータ14から供給される交流電力によって駆動する。換言すると、モータMは、バッテリ装置4に蓄えられている電力を消費することによって駆動する。
【0030】
図2及び図3に示すように、電動トラクタは、静油圧式無段変速機15及びトランスミッション16を備えている。図3に示すように、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15a及び油圧モータ15bを有している。
【0031】
油圧ポンプ15aは、モータMからの回転動力によって駆動する。油圧ポンプ15aが駆動することによって、油圧モータ15bから回転動力が出力される。なお、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15aと油圧モータ15bとの間で回転動力が変速されるように構成されている。また、静油圧式無段変速機15は、変速比を無段階に変更可能に構成されている。
【0032】
油圧モータ15bから出力された回転動力は、トランスミッション16に伝達される。トランスミッション16に伝達された回転動力は、トランスミッション16の有するギヤ式変速機構によって変速され、左右の前車輪10及び左右の後車輪11へ分配される。これにより、左右の前車輪10及び左右の後車輪11が駆動する。
【0033】
また、図2及び図3に示すように、電動トラクタは、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18を備えている。モータMとミッドPTO軸17との間に第一クラッチ17aが介在する。また、モータMとリヤPTO軸18との間に第二クラッチ18aが介在する。
【0034】
第一クラッチ17a及び第二クラッチ18aはPTOクラッチとして機能する。第一クラッチ17a及び第二クラッチ18aの夫々は、動力を伝達する入状態と、動力を伝達しない切状態と、の間で状態変更可能に構成されている。第一クラッチ17aが入状態であるとき、モータMからミッドPTO軸17へ回転動力が伝達される。また、第二クラッチ18aが入状態であるとき、モータMからリヤPTO軸18へ回転動力が伝達される。第一クラッチ17a及び第二クラッチ18aは、本発明において、モータMから作業装置への動力伝達を可能な『作業動力伝達装置』に相当する。
【0035】
このように、モータMから出力された回転動力は、油圧ポンプ15a、ミッドPTO軸17、及び、リヤPTO軸18へ分配される。これにより、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18が回転する。即ち、モータMは、バッテリ装置4に蓄えられている電力を消費することによって走行装置と作業装置との少なくとも一方を駆動させる。
【0036】
ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18に作業装置が接続されていれば、ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18の回転動力によって、作業装置が駆動する。例えば、図2に示すように、本実施形態では、ミッドPTO軸17に草刈装置19が接続されている。ミッドPTO軸17の回転動力によって、草刈装置19が駆動する。
【0037】
草刈装置19はリンク機構20によって吊り下げ支持されている。リンク機構20にミッドリフトアーム21が連結されている。ミッドリフトアーム21は油圧駆動によって上下揺動することによって、リンク機構20を昇降させる。換言すると、リンク機構20は、草刈装置19に例示される作業装置を連結可能である。そしてリンク機構20、及び、草刈装置19に例示される作業装置は、作業装置が作業する作業位置と、当該作業位置よりも高い非作業位置と、に昇降可能である。ミッドリフトアーム21は、本発明の『昇降装置』に相当する。
【0038】
図示はしないが、機体フレーム2の後端部に、公知の三点リンク機構が備えられている。この三点リンク機構にリヤリフトアーム22が連結されている。リヤリフトアーム22は油圧駆動によって上下揺動することによって、三点リンク機構を昇降させる。これにより、三点リンク機構、及び、三点リンク機構に連結された作業装置は、作業装置が作業する作業位置と、当該作業位置よりも高い非作業位置と、に昇降可能である。リヤリフトアーム22は、本発明の『昇降装置』に相当する。
【0039】
〔制御係の構成〕
図4に示すように、モータMの制御構成に、アクセル装置33と、モータMの駆動を制御する制御装置34と、インバータ14と、が備えられている。制御装置34は、電動作業車の制御系の中核要素であり、複数のECUの集合体として構成されている。アクセル装置33は、ステアリングホイール32の近傍に備えられている。図示はしないが、アクセル装置33は、揺動操作可能なレバーと、レバーの揺動操作量を検出するポテンショメータと、を有する。アクセル装置33は制御装置34と接続されている。制御装置34は、CAN(Controller Area Network)方式の信号用ハーネス35を介して、インバータ14、ミッドリフトアーム21のバルブ制御ユニット、リヤリフトアーム22のバルブ制御ユニット、第一クラッチ17aの制御ユニット、及び、第二クラッチ18aの制御ユニットと接続されている。制御装置34に、走行制御部34Aと作業制御部34Bとが備えられている。
【0040】
走行制御部34Aは、アクセル装置33の指令に応じて、インバータ14へ指令信号を出力する。インバータ14は、制御装置34の指令信号に応じて、バッテリ装置4からモータMに供給される電力(電圧値、周波数、及び、電流値等)を調整してモータMの出力を制御する。
【0041】
作業制御部34Bは、不図示の作業操作具の指令に応じて、ミッドリフトアーム21、リヤリフトアーム22、第一クラッチ17a、及び、第二クラッチ18aの夫々の制御ユニットへ指令信号を出力する。不図示の作業操作具とは、例えばミッドリフトアーム21を操作するための昇降レバー、リヤリフトアーム22を操作するための昇降レバー、第一クラッチ17aを操作するためのレバーやボタン、第二クラッチ18aを操作するためのレバーやボタン等である。
【0042】
バッテリ装置4は、例えばリチウムイオンバッテリである。図示はしないが、バッテリ装置4は、低電圧の小型の単位電池(セル)を多数積層した状態で構成されている。バッテリ装置4の出力電圧は、例えば250ボルトである。単位電池(セル)は収納ケースによって収納されている。これら単位電池(セル)は、当該収納ケースによって密閉されている。
【0043】
残量検出部36は、バッテリ装置4から出力される電圧に基づいて、バッテリ装置4が電力を供給可能な残量を検出する。残量検出部36が検出した値は、制御装置34へ送られる。
【0044】
操作パネル43にメータパネル48が備えられている。メータパネル48は制御装置34に接続され、制御装置34はメータパネル48の作動を制御する。メータパネル48は、本発明の『表示部』に相当する。
【0045】
図5に示すように、メータパネル48に、バッテリ残量表示領域48a、バッテリ温度表示領域48b、速度表示領域48c、多目的表示領域48d、等が含まれている。バッテリ残量表示領域48aは、セグメント棒グラフとして形成されており、バッテリ装置4が電力を供給可能な残量を段階的に表示する。つまり、メータパネル48は、バッテリ装置4の供給可能な電力の残量を表示可能である。バッテリ温度表示領域48bも、セグメント棒グラフとして形成されており、バッテリ装置4の発熱温度を段階的に表示する。速度表示領域48c及び多目的表示領域48dは、デジタル数値表示で一般的に用いられている7セグメント表示体である。速度表示領域48cは、例えば、車体の走行状態(対地速度)、作業状態(例えばミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18の回転速度)等を表示する。多目的表示領域48dは、通常はアワーメータや走行当たりのバッテリ消費メータとして用いられるが、エラー発生時には、エラーコードを表示する。
【0046】
バッテリ残量表示領域48aのうち、「F」で示されている部分が、バッテリ装置4が満充電である状態を示している。バッテリ残量表示領域48aのうち、「E」で示されている部分が、バッテリ装置4の供給可能な電力が枯渇寸前である状態を示している。本実施形態では、バッテリ装置4が電力を供給可能な総量に対して、例えば10パーセントの残量値が閾値Tとして設定されている。バッテリ残量表示領域48aにおけるセグメント棒グラフの表示が「E」の部分まで下がっても、バッテリ装置4の供給可能な電力の残量が閾値Tで設定された分だけ残る。つまり、メータパネル48は、バッテリ装置4が電力を供給可能な総量と、閾値Tと、の範囲で残量を表示する。これにより、バッテリ残量表示領域48aにおけるセグメント棒グラフの表示が「E」の部分まで下がっても、作業車はバッテリ装置4の残った電力で自走可能である。
【0047】
閾値Tは、例えば作業対象の圃場と、充電ステーションと、の距離に応じて設定可能である。制御装置34は閾値設定部38からの信号を入力可能である。閾値設定部38は、例えばボリュームつまみやスイッチ、メータパネル48に表示されるソフトボタン等である。閾値設定部38は人為操作を受け付ける。制御装置34は、閾値設定部38の人為操作に基づいて閾値Tを設定可能である。運転者が閾値設定部38を操作することによって、閾値Tは、バッテリ装置4が電力を供給可能な総量、即ちバッテリ装置4の容量に対して、例えば5パーセント以上かつ20パーセント以下の範囲内に設定可能である。
【0048】
〔第一制御及び第二制御について〕
制御装置34は、電力の残量値が閾値Tよりも大きい場合に第一制御を実行し、電力の残量値が閾値T以下である場合に第二制御を実行する。
【0049】
第一制御とは、走行制御部34Aがインバータ14へ指令信号を出力可能であって、かつ、作業制御部34Bがミッドリフトアーム21、リヤリフトアーム22、第一クラッチ17a、及び、第二クラッチ18aの夫々の制御ユニットへ指令信号を出力可能な制御である。電力の残量を示す残量値が予め設定された閾値Tよりも大きい場合に、作業車は第一制御に基づいて作業走行を可能である。
【0050】
第二制御とは、走行制御部34Aがインバータ14へ指令信号を出力可能であって、かつ、作業制御部34Bがミッドリフトアーム21、リヤリフトアーム22、第一クラッチ17a、及び、第二クラッチ18aの夫々の制御ユニットへ作業停止のための指令信号を出力する制御である。また、第二制御において走行制御部34Aは、モータMの消費電力が第一制御よりも小さくなるようにインバータ14へ指令信号を出力する。即ち、第二制御とは、電力の残量値が閾値T以下である場合にモータMの消費電力が第一制御よりも小さくなるようにモータMの駆動を制御するものである。
【0051】
このように、制御装置34は、残量を示す残量値が予め設定された閾値Tよりも大きい場合にモータMの駆動を制御する第一制御と、残量値が閾値T以下である場合にモータMの消費電力が第一制御よりも小さくなるようにモータMの駆動を制御する第二制御と、の切り替えが可能である。
【0052】
制御装置34は切替操作具37からの信号を入力可能である。切替操作具37は、例えばレバーやスイッチ、メータパネル48に表示されるソフトボタン等である。切替操作具37は人為操作を受け付ける。制御装置34は、切替操作具37の人為操作に基づいて第一制御と第二制御とを切替可能である。切替操作具37は、本発明の『操作具』に相当する。
【0053】
図6に基づいて、第一制御から第二制御への切り替えに関して説明する。制御装置34は、バッテリ装置4の供給可能な電力の残量値が閾値T以下であるか否かを判定する(ステップ#01)。そして、電力の残量値が閾値Tよりも大きければ(ステップ#01:No)、制御装置34は第一制御を実行する(ステップ#02)。一方、電力の残量値が閾値T以下である場合(ステップ#01:Yes)、制御装置34は作業車を停止させる処理を実行する(ステップ#03)。ステップ#03において、走行制御部34Aはインバータ14へ停止信号を出力する。これにより、モータMは停止し、モータMの停止に伴って走行装置及び作業装置は停止する。即ち、制御装置34は、第一制御を実行しているときに、バッテリ装置4の供給可能な電力の残量値が閾値T以下になると、モータMの駆動を停止する。
【0054】
モータMの停止後に、制御装置34は切替操作具37が操作されたか否かを判定する(ステップ#04)。切替操作具37が操作されなければ(ステップ#04:No)、モータMが停止したまま、ステップ#04の処理が継続する。つまり、制御装置34は、バッテリ装置4が電力を供給可能な残量値が閾値T以下である場合、かつ、切替操作具37が操作された場合に、第二制御へ切り替える。
【0055】
切替操作具37が操作されたら(ステップ#04:Yes)、制御装置34は、第二制御を実行するに際し、下記ステップ#05及びステップ#07の判定を行う。制御装置34は、第一クラッチ17aと第二クラッチ18aとの夫々が動力を伝達しているか否かを判定する(ステップ#05)。第一クラッチ17aと第二クラッチ18aとの両方が動力を遮断していれば(ステップ#05:No)、ステップ#07の処理へ進む。第一クラッチ17aが動力を伝達していれば(ステップ#05:Yes)、作業制御部34Bは第一クラッチ17aの制御ユニットへ動力遮断用の指令信号を出力し、第一クラッチ17aは動力を遮断する(ステップ#06)。また、第二クラッチ18aが動力を伝達していれば(ステップ#05:Yes)、作業制御部34Bは第二クラッチ18aの制御ユニットへ動力遮断用の指令信号を出力し、第二クラッチ18aは動力を遮断する(ステップ#06)。これにより、草刈装置19に例示される作業装置は停止する。このように、制御装置34は、第二制御において、作業動力伝達装置に動力伝達を遮断させる。
【0056】
ステップ#07において制御装置34は、リンク機構20と、機体フレーム2の後端部に備えられた三点リンク機構と、の夫々が作業位置に位置しているか否かを判定する。リンク機構20と三点リンク機構との両方が非作業位置に位置すると(ステップ#07:No)、制御装置34は第二制御に基づいてモータMを制御可能となる(ステップ#09)。リンク機構20が作業位置に位置していると(ステップ#07:Yes)、作業制御部34Bは、ミッドリフトアーム21の制御ユニットへ上昇用の指令信号を出力し、ミッドリフトアーム21は上向きに揺動する(ステップ#08)。これにより、リンク機構20は非作業位置へ上昇する。このように、制御装置34は、第二制御において、リンク機構20が作業位置に位置している場合、ミッドリフトアーム21にリンク機構20を非作業位置へ上昇させる。また、三点リンク機構が作業位置に位置していると(ステップ#07:Yes)、作業制御部34Bは、リヤリフトアーム22の制御ユニットへ上昇用の指令信号を出力し、リヤリフトアーム22は上向きに揺動する(ステップ#08)。これにより、三点リンク機構は非作業位置へ上昇する。このように、制御装置34は、第二制御において、三点リンク機構が作業位置に位置している場合、リヤリフトアーム22に三点リンク機構を非作業位置へ上昇させる。
【0057】
ステップ#09において制御装置34が第二制御を実行するとき、作業装置の駆動は禁止され、走行装置のみの駆動が可能となる。また、制御装置34は、第二制御において、モータMの消費電力が第一制御よりも小さくなるようにモータMの駆動を制御する。これにより、バッテリ装置4の供給可能な電力が少なくなった状態であっても、必要最低限の電力だけを消費しながら、作業車の自走が可能となる。
【0058】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0059】
(1)上述の実施形態では、モータMは走行装置(左右の前車輪10及び左右の後車輪11)と作業装置(草刈装置19)との両方を回転駆動させるが、この実施形態に限定されない。モータMは、走行装置と作業装置との一方を駆動させる構成であっても良い。
【0060】
(2)上述の実施形態において、蓄電装置としてバッテリ装置4を例示し、バッテリ装置4としてリチウムイオンバッテリを例示したが、この実施形態に限定されない。例えば、蓄電装置は、全固体電池であっても良い。
【0061】
(3)図6に基づいて上述した実施形態において、制御装置34は、第二制御において、第一クラッチ17a及び第二クラッチ18aに動力伝達を遮断させるが、この実施形態に限定されない。例えば、制御装置34は、第二制御において、第一クラッチ17a及び第二クラッチ18aに動力伝達を遮断させない構成であっても良い。この場合、制御装置34が第二制御を実行しているときに、運転者が人為操作で第一クラッチ17a及び第二クラッチ18aを遮断させる構成であっても良い。
【0062】
(4)図6に基づいて上述した実施形態において、制御装置34は、第二制御において、リンク機構20が作業位置に位置している場合、ミッドリフトアーム21にリンク機構20を非作業位置へ上昇させる。また、制御装置34は、第二制御において、三点リンク機構が作業位置に位置している場合、リヤリフトアーム22に三点リンク機構を非作業位置へ上昇させる。これらの実施形態に限定されず、例えば、制御装置34は、第二制御において、ミッドリフトアーム21にリンク機構20を非作業位置へ上昇させず、リヤリフトアーム22に三点リンク機構を非作業位置へ上昇させない構成であっても良い。この場合、制御装置34が第二制御を実行しているときに、運転者が人為操作でミッドリフトアーム21及びリヤリフトアーム22を遮断させる構成であっても良い。
【0063】
(5)図6に基づいて上述した実施形態において、制御装置34は、第一制御を実行しているときに、残量値が閾値T以下になると、モータMの駆動を停止するが、この実施形態に限定されない。例えば、制御装置34は、第一制御を実行しているときに、残量値が閾値T以下になると、モータMの駆動を停止せずに第二制御に切り替えて、そのまま第二制御を実行する構成であっても良い。この場合、切替操作具37が備えられない構成であっても良い。
【0064】
(6)図5に基づいて上述した実施形態において、メータパネル48のバッテリ残量表示領域48aは、バッテリ装置4が電力を供給可能な総量と、閾値Tと、の範囲で残量を表示するが、この実施形態に限定されない。例えば、バッテリ残量表示領域48aは、バッテリ装置4が満充電の状態から、バッテリ装置4の電力が完全に枯渇する状態までの範囲で残量を表示する構成であっても良い。
【0065】
(7)上述の実施形態においては、作業装置として草刈装置19を例示した。この実施形態に限定されず、作業装置は、例えば、作業装置は、カルティベータ、播種装置、プランタ、施肥装置、切葉装置、散布装置、ベーラー、マルチャー、ストーンピッカー、ロータリーレーキ、及び、テッダー、牽引式の収穫選別装置、摘芯装置、中耕管理装置、畝立装置、等であっても良い。
【0066】
(8)上述の実施形態では、電動作業車として電動トラクタが示されたが、この実施形態に限定されない。例えば、電動作業車は、電動田植機、電動散布機、電動スプレーヤー、電動コンバイン、電動草刈機、電動中耕管理機、電動ホイールローダ、及び、電動バックホー等であっても良い。
【0067】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、電動トラクタだけではなく、コンバイン、田植機、建設作業機等の種々の電動作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
4 :バッテリ装置(蓄電装置)
10 :前車輪(走行装置)
11 :後車輪(走行装置)
17a :第一クラッチ(作業動力伝達装置)
18a :第二クラッチ(作業動力伝達装置)
19 :草刈装置(作業装置)
20 :リンク機構
21 :ミッドリフトアーム(昇降装置)
22 :リヤリフトアーム(昇降装置)
34 :制御装置
36 :残量検出部
37 :切替操作具(操作具)
38 :閾値設定部
48 :メータパネル(表示部)
M :モータ
T :閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6