(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033356
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】鉗子
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20240306BHJP
A61B 17/50 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B17/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136886
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】原田 大輔
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG24
4C160GG36
(57)【要約】
【課題】部品点数の少ない簡単な構造で軸方向の入力を顎の開閉作動力に変換することができる、新規な構造の鉗子を提供する。
【解決手段】対象物を把持可能とされた複数の顎12を有する鉗子10であって、顎12の外周縁を構成する枠状外周部22が設けられており、顎12の基端側において軸方向の外力が及ぼされる入力部32が設けられており、入力部32に作用する外力を枠状外周部22の先端部分38に伝達する伝達部36が、枠状外周部22及び入力部32と一体的に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持可能とされた複数の顎を有する鉗子であって、
前記顎の外周縁を構成する枠状外周部が設けられており、
該顎の基端側において軸方向の外力が及ぼされる入力部が設けられており、
該入力部に作用する該外力を該枠状外周部の先端部分に伝達する伝達部が、該枠状外周部及び該入力部と一体的に設けられている鉗子。
【請求項2】
前記枠状外周部と前記入力部と前記伝達部とが、パイプ材から切り出されて一体形成されている請求項1に記載の鉗子。
【請求項3】
前記枠状外周部と前記入力部と前記伝達部とを一体的に備える筒状の外シャフトが設けられており、
該外シャフトに内シャフトが挿入されており、
該入力部が該内シャフトに固定されて、該内シャフトの該外シャフトに対する軸方向の移動によって該入力部に軸方向の前記外力が入力される請求項1又は2に記載の鉗子。
【請求項4】
前記枠状外周部の基端側に連続して設けられた保持部が前記外シャフトに設けられており、
前記入力部と該保持部には接続リングが外挿されており、
該接続リングが該入力部と前記内シャフトに対して軸方向で位置決めされており、
該接続リングが該保持部に対して軸方向に摺動可能とされている請求項3に記載の鉗子。
【請求項5】
前記入力部と前記接続リングとを貫通する接続穴が形成されており、
該接続穴に充填された接続材が前記内シャフトに固着されている請求項4に記載の鉗子。
【請求項6】
前記内シャフトが先端に開口する内腔を備えている請求項3に記載の鉗子。
【請求項7】
前記伝達部が前記枠状外周部における幅方向両側間を前記入力部から該枠状外周部の先端部分へ向けて延びている請求項1又は2に記載の鉗子。
【請求項8】
前記伝達部が前記枠状外周部の幅方向両側部分よりも太くされている請求項7に記載の鉗子。
【請求項9】
前記伝達部と前記枠状外周部を幅方向で相互に連結する連結部が設けられている請求項7に記載の鉗子。
【請求項10】
前記連結部が湾曲部を有している請求項9に記載の鉗子。
【請求項11】
前記伝達部の先端部分には基端部分よりも細い変形部が設けられている請求項7に記載の鉗子。
【請求項12】
前記顎の幅寸法が前記変形部の設けられた先端部分において基端部分よりも小さくされている請求項11に記載の鉗子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば体内へ挿入されるシャフトの先端部分に設けられて、体内の異物などの対象物を把持することができる鉗子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、体内へ挿入されるシャフトの先端部分に設けられて、体内の異物等の対象物を把持する鉗子が、例えば涙道鏡異物除去等の施術に用いられている。鉗子は、例えば、特表2020-508825号公報(特許文献1)や国際公開第2014/078049号(特許文献2)等に開示されているように、対象物を把持する複数の顎を備えており、顎が開閉作動することによって、対象物を掴む或いは放すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-508825号公報
【特許文献2】国際公開第2014/078049号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の鉗子は、構造が複雑で部品点数も多いことから、製造が困難であると共に、例えば涙道に挿入されるような極めて小型の鉗子を実現することが難しかった。
【0005】
また、特許文献2の鉗子は、スリーブを軸方向に移動させて、初期形状で開いた状態の顎を覆うようにスリーブを外挿することで、顎の外面をスリーブで直接に内方へ押して閉じる構造であることから、摺動可能な別体のスリーブが必要になると共に、スリーブが顎に引っ掛かって開閉作動が妨げられるおそれもあった。
【0006】
本発明の解決課題は、部品点数の少ない簡単な構造で軸方向の入力を顎の開閉作動力に変換することができる、新規な構造の鉗子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第1の態様は、対象物を把持可能とされた複数の顎を有する鉗子であって、前記顎の外周縁を構成する枠状外周部が設けられており、該顎の基端側において軸方向の外力が及ぼされる入力部が設けられており、該入力部に作用する該外力を該枠状外周部の先端部分に伝達する伝達部が、該枠状外周部及び該入力部と一体的に設けられているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた鉗子によれば、顎を構成する枠状外周部と入力部と伝達部とが一体的に設けられていることから、部品点数の少ない簡単な構造とすることができて、小型化を容易に図ることができる。しかも、入力部に作用する軸方向外力を伝達部によって枠状外周部の先端部分に伝達することによって、軸方向外力を顎の開閉作動力に変換して枠状外周部に及ぼすことができるようになっており、力の作用方向の変換が一体的な部品による簡単な構造によって実現される。
【0010】
本態様では、顎の外周縁が枠状外周部によって構成されていることから、顎を構成する各部の幅寸法(断面積)を大きくすることなく、顎全体の幅寸法を大きく設定することもできる。それゆえ、例えば、幅広の顎による把持対象の安定した把持を実現しつつ、顎の開閉作動時の変形剛性を抑えて、小さな入力によって顎を有効に開閉作動させることも可能となる。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に記載された鉗子において、前記枠状外周部と前記入力部と前記伝達部とが、パイプ材から切り出されて一体形成されているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた鉗子によれば、枠状外周部と入力部と伝達部とを一体的に備えた顎を、パイプ材からの切り出しによって容易に得ることができる。
【0013】
第3の態様は、第1又は第2の態様に記載された鉗子において、前記枠状外周部と前記入力部と前記伝達部とを一体的に備える筒状の外シャフトが設けられており、該外シャフトに内シャフトが挿入されており、該入力部が該内シャフトに固定されて、該内シャフトの該外シャフトに対する軸方向の移動によって該入力部に軸方向の前記外力が入力されるものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた鉗子によれば、外シャフトの切り出しやエッチングなどによって、一体的に設けられた枠状外周部と入力部と伝達部とを容易に形成することができる。
【0015】
また、入力部が固定された内シャフトに対して軸方向の力を及ぼして、内シャフトを外シャフトに対して軸方向で相対的に移動させることによって、顎の開閉を簡単に操作することができる。
【0016】
第4の態様は、第3の態様に記載された鉗子において、前記枠状外周部の基端側に連続して設けられた保持部が前記外シャフトに設けられており、前記入力部と該保持部には接続リングが外挿されており、該接続リングが該入力部と前記内シャフトとに固定されており、該接続リングが該保持部に対して軸方向に摺動可能とされているものである。
【0017】
入力部に軸方向の外力を加えて顎を閉作動させる際に、入力部は顎の閉作動に伴って外シャフトの外周側へ変位しようとするが、本態様に従う構造とされた鉗子によれば、入力部に外挿された接続リングが入力部の外周側への変位を制限することから、外シャフトの外径寸法の変化を防ぐことができる。
【0018】
内シャフトに対して入力される軸方向の外力は、接続リングを介して内シャフトと連結された外シャフトの入力部に作用する一方、接続リングに対する摺動が許容される外シャフトの保持部には実質的に作用しない。それ故、内シャフトに対する入力操作によって、入力部と保持部を軸方向に相対変位させて、顎を有効に開閉作動させることができる。
【0019】
第5の態様は、第4の態様に記載された鉗子において、前記入力部と前記接続リングとを貫通する接続穴が形成されており、該接続穴に充填された接続材が前記内シャフトに固着されているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた鉗子によれば、例えば、入力部が接続リング及び内シャフトに対して直接固定し難い材質の場合にも、接続穴に充填されて内シャフトに固着されたはんだ等の接続材が、入力部及び接続リングに対して軸方向で係止されることによって、内シャフトへの軸方向入力を入力部に有効に伝達させることができる。
【0021】
第6の態様は、第3~第5の何れか1つの態様に記載された鉗子において、内シャフトが先端に開口する内腔を備えているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた鉗子によれば、内シャフトの内腔に種々の器具を挿入して、内シャフトの先端側において器具による撮像、焼灼、投薬、切開などを行うことができる。例えば、内シャフトの内腔に器具の一種である内視鏡を挿入することにより、内視鏡による内シャフト先端側の撮像によって把持対象物を見ることができる。なお、内シャフトの内腔の近位端側の開口は、例えば内シャフトの長さ方向の途中で側方に開口していてもよいが、好適には内シャフトの近位端に開口しており、内腔が内シャフトを貫通して形成されている。
【0023】
第7の態様は、第1~第6の何れか1つの態様に記載された鉗子において、前記伝達部が前記枠状外周部における幅方向両側間を前記入力部から該枠状外周部の先端部分へ向けて延びているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた鉗子によれば、入力部から枠状外周部の先端部分へ向けて延びる伝達部によって、入力部に作用する軸方向の外力を枠状外周部の先端部分へ効率的に伝達することができる。
【0025】
第8の態様は、第7の態様に記載された鉗子において、前記伝達部が前記枠状外周部の幅方向両側部分よりも太くされているものである。
【0026】
本態様に従う構造とされた鉗子によれば、伝達部の変形剛性を比較的に大きく確保することで、入力部から枠状外周部の先端部分への伝達部による外力の伝達を効率的に得ることができる。
【0027】
第9の態様は、第7又は8の態様に記載された鉗子において、前記伝達部と前記枠状外周部を幅方向で相互に連結する連結部が設けられているものである。
【0028】
本態様に従う構造とされた鉗子によれば、伝達部が連結部によってある程度拘束されることから、例えば伝達部の幅方向への曲がり等の不必要な変形を抑えることができる。また、連結部のばね作用(弾性)によって、顎の開閉作動を補助することもできる。また、伝達部と枠状外周部との間に連結部が設けられることにより、把持対象物が伝達部と枠状外周部との間から零れ落ち難くなる。更に、伝達部と枠状外周部に加えて連結部も把持対象物に接し得ることから、把持対象物をより広範囲にわたって包み込むように把持することができる。
【0029】
第10の態様は、第9の態様に記載された鉗子において、前記連結部が湾曲部を有しているものである。
【0030】
本態様に従う構造とされた鉗子によれば、湾曲部によって連結部の弾性を調節することにより、連結部のばね作用を効率的に得ることができる。
【0031】
第11の態様は、第7~第10の何れか1つの態様に記載された鉗子において、前記伝達部の先端部分には基端部分よりも細い変形部が設けられているものである。
【0032】
本態様に従う構造とされた鉗子によれば、伝達部によって軸方向の外力が伝達される際に、伝達部の先端部分に設けられた変形部を積極的に変形させることで、顎を効率的に開閉させることができる。
【0033】
第12の態様は、第11の態様に記載された鉗子において、前記顎の幅寸法が前記変形部の設けられた先端部分において基端部分よりも小さくされているものである。
【0034】
本態様に従う構造とされた鉗子によれば、顎の開閉作動量や開閉作動形態などの開閉態様の調節などが可能になる。また、細い顎の先端部分によって摘まむような細かい作動なども実現可能になる。特に、顎の閉作動状態において、複数の顎の先端部分間の隙間がより小さくなって、対象物を把持し易くなる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、鉗子において、部品点数の少ない簡単な構造で軸方向の入力を顎の開閉作動力に変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1実施形態としての鉗子を示す斜視図
【
図2】
図1の鉗子の一部を切断した断面として示した斜視図
【
図7A】
図4の鉗子の先端部分を拡大して示す右側面図であって、一対の顎が開いた状態を示す図
【
図7B】
図4の鉗子の先端部分を拡大して示す右側面図であって、一対の顎が閉じた状態を示す図
【
図8】本発明の第2実施形態としての鉗子を示す斜視図
【
図11A】
図10の鉗子の先端部分を拡大して示す右側面図であって、一対の顎が開いた状態を示す図
【
図11B】
図10の鉗子の先端部分を拡大して示す右側面図であって、一対の顎が閉じた状態を示す図
【
図12】本発明の第3実施形態としての鉗子を示す斜視図
【
図15】本発明の別の一実施形態としての鉗子を示す斜視断面図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0038】
図1~
図6には、本発明の第1実施形態としての鉗子10が示されている。鉗子10は、先端部分に一対の顎12,12を備えて、体組織などの対象物を挟んで把持することが可能とされている。鉗子10は、一対の顎12,12を構成する外シャフト14と、外シャフト14に挿入された内シャフト16とを、備えている。以下の説明では、原則として、上下方向とは
図4中の上下方向を、前後方向とは
図3中の左右方向を、左右方向とは
図3中の上下方向を、それぞれ言う。
【0039】
外シャフト14は、先端部分を構成する外パイプ部18を備えている。外パイプ部18は、例えば、Ni-Ti合金やSUS等の金属、硬度の高い樹脂などによって形成されている。外パイプ部18は、基端部分が円筒状の筒状部20とされていると共に、先端部分が一対の顎12,12とされている。顎12は、全体として外パイプ部18の周上の一部によって構成された湾曲板状とされている。
【0040】
顎12は、外周縁部を構成する枠状外周部22を備えている。枠状外周部22は、先端部分が基端部分よりも周方向長さが小さい先端幅狭部24とされており、顎12の先端部分が基端部分よりも幅狭とされている。枠状外周部22は、先端面及び周方向の両端面がそれぞれ滑らかに連続する湾曲面で構成されており、例えば体内への挿入に際して引っ掛かり等が生じ難くなっている。顎12は、一対が上下方向で対向して配されている。一対の顎12,12の周方向端部間には、スリット状の開放部26,26が形成されており、それら一対の顎12,12が開放部26,26によって相互に離隔している。
【0041】
一対の顎12,12の枠状外周部22,22は、基端において一体的に連続している。枠状外周部22,22の基端での接続部分は、半円弧状に湾曲するヒンジ部28とされており、ヒンジ部28の変形によって一対の顎12,12の開閉作動が許容されている。ヒンジ部28は、左右両側にそれぞれ設けられている。ヒンジ部28の前方には、開放部26が位置している。ヒンジ部28は、基端側へ延び出す幅狭の接続部29を介して、保持部30と一体的に連続している。保持部30は、外パイプ部18の周方向の一部を構成する湾曲板状とされている。保持部30は、左右方向の両側において筒状部20から先端へ延び出す一対が設けられている。ヒンジ部28は、例えば、枠状外周部22,22の基端を単につないだV字状であってもよいが、好適には、本実施形態の如き半円弧状や、S字湾曲状などとされることによって、開閉作動に対するばね要素を付与することができる。
【0042】
外パイプ部18における一対の保持部30,30の周方向間には、それぞれ入力部32が配されている。入力部32は、外パイプ部18の一部で構成された湾曲板状の部分であって、筒状部20に対して先端側に離隔していると共に、一対の保持部30,30に対して周方向に離隔している。入力部32には、厚さ方向に貫通する貫通孔34が形成されている。貫通孔34の断面形状は、特に限定されないが、本実施形態では四角形断面とされている。
【0043】
外パイプ部18は、入力部32から先端側へ一体で延び出す伝達部36を備えている。伝達部36は、先端が枠状外周部22の先端部分に連続しており、入力部32と枠状外周部22の先端部分とを相互に連結している。これにより、枠状外周部22の先端は、後述するように伝達部36によって伝達された外力が作用する作用部38とされている。本実施形態の伝達部36は、枠状外周部22の左右両側間(より好適には顎12の左右中央)を入力部32から作用部38へ向けて直線的に延びている。伝達部36は、基端部分が入力部32と略同じ幅寸法を有する変形制限部40とされていると共に、先端部分が変形制限部40よりも細い変形部42とされている。変形部42は、変形制限部40に対して厚さ寸法が同じで幅寸法が小さくされていることから、変形制限部40よりも変形剛性が小さくされており、外力の作用時に優先的に変形する。変形部42の幅寸法wは、変形制限部40の幅寸法Wの1/3以下とされていることが望ましい。また、変形部42の幅寸法wは、好適には、枠状外周部22の左右両側部分の幅寸法よりも大きくされている。変形部42の少なくとも先端部分の左右両側には、枠状外周部22の先端幅狭部24が位置している。
【0044】
外パイプ部18は、例えば、パイプ材に切り出しやエッチング等の加工を施すことによって、一対の顎12,12等を備える所定の形状とされる。好適には、レーザーによるパイプ材の切り出しによって、高い加工精度で外パイプ部18を得ることができる。本実施形態では、外パイプ部18がパイプ材から切り出されて形成されることによって、筒状部20と枠状外周部22とヒンジ部28と接続部29と保持部30と入力部32と伝達部36とが、一体形成されている。尤も、一対の顎12,12等を備える外パイプ部18は、樹脂材料や金属材料を用いて3Dプリンタで形成することもできるし、金属粉体射出成形(Metal Injection Molding;MIM)によって形成することもできる。
【0045】
外シャフト14は、外パイプ部18から基端側へ延び出す外チューブ部44を備えている。外チューブ部44は、例えば、樹脂やゴム等のエラストマーで形成されており、曲げ変形や断面形状の変化を許容する柔軟なチューブとされている。外チューブ部44は、先端部分が外パイプ部18の基端部分を構成する筒状部20に外挿状態で取り付けられている。外チューブ部44は、外パイプ部18に対して非接着で嵌め合わされて取り付けられていてもよいが、好適には接着や溶着によって固着されている。なお、例えば、外チューブ部44を部分的に内周側へ凹ませて外パイプ部18に当接させた状態で、当該当接部分をスポット的に溶着又は接着等することにより、外パイプ部18と外チューブ部44とを連結することもできる。この場合に、例えば、外チューブ部44の当該凹んだ部分の周囲を部分的に延びる切込み等を形成しても良い。具体的には、例えば外チューブ部44の周方向に所定長さで延びる平行な2本のスリット状の切込みを形成し、それら2本の切込み間を内周へ凹ませることができる。これにより、局所的に内周へ凹んだ部分を容易に変形させて形成できると共に、凹んだ部分の周囲の変形を効果的に回避して外チューブ部44の円形の筒形状を精度良く保つことが可能となる。なお、上記の如き連結構造は、例えば外チューブ部44が金属製の場合にも採用可能であり、スポット的な溶接又は接着等によって外パイプ部18と外チューブ部44とを連結することができる。
【0046】
外シャフト14の内周には、内シャフト16が挿入されている。内シャフト16は、中空筒状とされており、中心軸上を長さ方向に貫通する内腔としてのルーメン46を備えている。内シャフト16は、先端部分を構成する内パイプ部48を備えている。内パイプ部48は、外パイプ部18に挿入可能な外径寸法を有している。内パイプ部48は、外パイプ部18の筒状部20に挿通されており、筒状部20に対して長さ方向の両側へ略同じ長さだけ突出している。内パイプ部48の先端は、外パイプ部18の入力部32の基端を越えて先端側へ突出しており、先端部分が入力部32と径方向に重ね合わされている。内パイプ部48は、例えば、医療用ステンレス等の金属で形成されている。
【0047】
内シャフト16は、内パイプ部48から基端側へ延び出す内チューブ部50を備えている。内チューブ部50は、外チューブ部44と同様に、エラストマーで形成された柔軟なチューブとされている。内チューブ部50は、先端部分が外チューブ部44に挿入されて、内パイプ部48の基端部分に外挿状態で取り付けられている。内チューブ部50は、内パイプ部48に対して非接着で嵌め合わされて取り付けられていてもよいが、好適には接着や溶着によって固着されている。
【0048】
内パイプ部48と重ね合わされた外パイプ部18には、接続リング52が外挿されている。接続リング52は、例えば、医療用ステンレス等の金属で形成されている。接続リング52は、略円筒形状とされており、外パイプ部18の外径寸法と同じか僅かに大きい内径寸法を有して、外パイプ部18に外挿可能とされている。接続リング52は、基端部分が外パイプ部18の筒状部20に外挿されていると共に、先端部分が外パイプ部18の入力部32,32及び保持部30,30に外挿されている。接続リング52には、径方向の両側にそれぞれ窓部54が設けられている。窓部54は、外パイプ部18の貫通孔34と対応する位置に設けられて、貫通孔34と連通されており、貫通孔34と窓部54とによって本実施形態の接続穴が構成されている。本実施形態では、貫通孔34と窓部54は、周方向の幅寸法が互いに異なる四角断面形状とされているが、それらの形状や大きさは相互に同一であってもよい。
【0049】
相互に連通された接続リング52の窓部54と外パイプ部18の貫通孔34の内部には、接続材56が配されている。接続材56は、例えばはんだのような蝋材や接着剤であって、窓部54及び貫通孔34内で固化しており、
図5,
図6に示すように、貫通孔34を通じて内パイプ部48の外周面に重ね合わされて、内パイプ部48に固着されている。接続材56は、
図5に示すように、窓部54と貫通孔34の各内周面に対して、軸方向で接している。接続材56は、
図6に示すように、窓部54の内周面に対して周方向で接していると共に、貫通孔34の内周面に対して周方向で離隔している。尤も、接続材56は、周方向において、窓部54の内周面から離隔していてもよいし、貫通孔34の内周面に接していてもよい。
【0050】
このような接続材56によって、接続リング52と、外パイプ部18の入力部32と、内パイプ部48とが、軸方向で相互に連結されており、軸方向に一体的に移動するようになっている。例えばNi-Ti合金で形成された外パイプ部18の入力部32と、医療用ステンレスで形成された接続リング52及び内パイプ部48とは、接着や溶接等の手段で相互に固定し難いが、本実施形態では、接続材56が内パイプ部48に固着されて、入力部32に対して軸方向で係止されることにより、それら内パイプ部48と入力部32を軸方向で位置決めして連結することができる。接続材56が固着された内パイプ部48は、接続リング52と外パイプ部18の入力部32との少なくとも一方に対して、周方向に変位可能とされていてもよい。
【0051】
また、内パイプ部48と接続リング52は、外パイプ部18の保持部30及び筒状部20に対して軸方向の摺動を許容されており、保持部30及び筒状部20に対して軸方向で相対的に移動可能とされている。
【0052】
かくの如き構造とされた鉗子10は、内シャフト16に軸方向の外力を及ぼすことによって、一対の顎12,12が開閉作動される。
【0053】
顎12,12を開く場合には、使用者は、内シャフト16の基端部分を構成する内チューブ部50を外シャフト14に対して基端側へ引っ張ることにより、内チューブ部50に基端側への軸方向外力を及ぼして、内チューブ部50に連結された内パイプ部48を基端側へ移動させる。
【0054】
内パイプ部48は、外パイプ部18の入力部32に対して接続材56で連結されていることから、内パイプ部48から入力部32へ基端側への軸方向外力が伝達されて、入力部32が内パイプ部48と一体的に基端側へ移動する。外パイプ部18の保持部30は、内パイプ部48に対して摺動可能とされていることから、内パイプ部48から外力は実質的に伝達されない。
【0055】
入力部32から一体で先端側へ延び出す伝達部36は、先端が枠状外周部22の先端部分に接続されていることから、入力部32に及ぼされた軸方向の外力(基端側への軸方向力)が伝達部36を介して枠状外周部22の先端部分に伝達される。枠状外周部22の基端部であるヒンジ部28,28は、保持部30につながっていることから、基端側への軸方向が作用しない。その結果、
図7Aに示すように、一対の枠状外周部22,22の先端部分が上下方向で相互に離隔する外側へ変位して、一対の顎12,12の開作動が実現される。なお、
図7Aには、入力部32,32が初期位置から基端側へ距離d1だけ移動するように入力された状態が示されている。
【0056】
一方、顎12,12を閉じる場合には、使用者は、内シャフト16の基端部分を構成する内チューブ部50を外シャフト14に対して先端側へ押し込むことにより、内チューブ部50に先端側への軸方向外力を及ぼして、内チューブ部50に連結された内パイプ部48を先端側へ移動させる。
【0057】
内パイプ部48は、外パイプ部18の入力部32に対して接続材56で連結されていることから、内パイプ部48から入力部32へ先端側への軸方向外力が伝達されて、入力部32が内パイプ部48と一体的に先端側へ移動する。外パイプ部18の保持部30は、内パイプ部48に対して摺動可能とされていることから、内パイプ部48からの外力の伝達が実質的にない。
【0058】
入力部32に及ぼされた軸方向の外力(先端側への軸方向力)は、伝達部36を介して枠状外周部22の先端部分に伝達される。枠状外周部22の基端部であるヒンジ部28,28は、保持部30につながっていることから、先端側への圧縮力が作用しない。その結果、
図7Bに示すように、一対の枠状外周部22,22の先端部分が上下方向で相互に接近する内側へ変位して、一対の顎12,12の閉作動が実現される。なお、
図7Bには、入力部32,32が初期位置から先端側へ距離d2だけ移動するように入力された状態が示されている。なお、
図7中には、開閉作動前の初期状態の鉗子10が薄墨で示されている。
【0059】
伝達部36,36は、先端が上下方向で相互に接近すると、基端が上下方向で相互に離隔しようとするが、伝達部36,36の基端側に設けられた入力部32,32が接続リング52によって上下方向の外側への変位を規制されていることから、伝達部36,36の基端は上下方向で相互に離隔する変位が制限される。それ故、伝達部36,36の基端側から先端側への外力の伝達が効率的に図られて、顎12,12の閉作動が効率的に実現される。また、伝達部36,36の基端部及び入力部32,32の上下外側への変位が防止されることで、鉗子10の外径寸法の変化が抑えられる。
【0060】
このように、鉗子10は、内シャフト16を外シャフト14に対して軸方向に相対移動させることにより、一対の顎12,12が開閉作動するようになっている。そして、鉗子10は、体組織等の対象物を一対の顎12,12の閉作動によって先端部分で摘まむことができると共に、摘まんだ対象物を開作動によって放すことができる。
【0061】
鉗子10の顎12は、枠状外周部22と入力部32と伝達部36とが一体的に設けられた部品点数の少ない簡単な構造とされていることから、小型化が容易であり、体内へ挿入して使用する場合の低侵襲性を実現することができる。本実施形態では、枠状外周部22と入力部32と伝達部36が、例えばレーザーカットによるパイプ材(外パイプ部18)からの切り出しによって一体形成されることから、小型の顎12を容易に得ることができる。
【0062】
一体的に設けられた枠状外周部22と入力部32と伝達部36において、入力部32に作用する軸方向外力が伝達部36によって枠状外周部22の先端部分に伝達されることにより、軸方向外力を顎12の開閉作動力に変換して枠状外周部22に及ぼすことができるようになっており、力の作用方向の変換が一体的な部品による簡単な構造によって実現される。従って、鉗子10の開閉作動は、内シャフト16を軸方向に押し引きする操作によって実現されるようになっており、体内への挿入状態でも簡単に操作することができる。
【0063】
本実施形態では、伝達部36が入力部32から枠状外周部22の先端部分である作用部38へ向けて直線的に延びていることから、入力部32に作用する軸方向の外力が作用部38へ効率的に伝達されて、鉗子10の開閉作動を小さな力で実行することができる。また、伝達部36が並列的に延びる枠状外周部22の左右両側部分よりも太くされていることにより、変形剛性が比較的に大きくされた伝達部36によって、入力部32から作用部38へ外力を効率的に伝達させることができる。
【0064】
また、伝達部36の先端部分である変形部42が、基端部分である変形制限部40よりも細くされていることにより、伝達部36によって外力が伝達される際に、伝達部36の変形部42を積極的に上下方向に湾曲させることで、外力の伝達方向を前後方向から上下方向に効率的に変換して、入力された外力を顎12,12の開閉方向に有効に作用させることができる。
【0065】
さらに、顎12の幅寸法が、変形部42が設けられた先端部分において、変形制限部40が設けられた基端部分よりも小さくされており、変形部42の変形によって伝達方向を変換された外力が作用する顎12の先端部分において、顎12の変形が生じ易くなっている。このように、顎12の幅寸法を調節することによって、顎12の開閉作動量や開閉作動時の変形態様等の開閉態様の調節も可能になる。また、細い顎12の先端部分によって摘まむような細かい把持動作なども実現可能になる。特に、鉗子10の閉作動状態において、上下の顎12,12の先端部分がより隙間なく閉じやすくなって、対象物を把持し易くなる。
【0066】
顎12は、外周縁が枠状外周部22で構成されていることから、幅寸法を大きな自由度で設定することが可能とされている。即ち、顎12の幅寸法は、枠状外周部22における伝達部36の両側に位置する部分間の距離によって設定することが可能であり、顎12の幅寸法を大きく設定する場合に、必ずしも枠状外周部22や伝達部36の幅寸法を大きくする必要はない。それゆえ、顎12の幅寸法と、顎12の開閉作動時の変形剛性とを、それぞれ調節して設定することが可能とされており、例えば、顎12の幅寸法を確保して把持対象を包み込むように安定して把持可能としながら、顎12の開閉作動に要する力を小さく抑えることもできる。
【0067】
本実施形態の鉗子10は、顎12,12がパイプ材である外シャフト14によって形成されていることから、内シャフト16の先端に開口するルーメン46が顎12,12の間で先端側へ開放されている。それ故、ルーメン46に内視鏡を挿通して体内の把持対象物を内視鏡による撮像視下で把持したり、ルーメン46に挿通された各種処置具によって例えば焼灼等の把持以外の処置を行うこともできる。
【0068】
図8~
図10には、本発明の第2実施形態としての鉗子60が示されている。鉗子60は、一対の顎62,62を備えている。顎62は、枠状外周部64と入力部32と伝達部66とを、一体的に備えている。なお、
図9,
図10には、鉗子60の先端部分だけが示されている。また、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0069】
本実施形態の枠状外周部64は、前記第1実施形態の枠状外周部22のような段差状に幅狭となる先端幅狭部24を備えておらず、先端へ向けて徐々に幅狭となる先細テーパー形状とされている。枠状外周部64は、前後方向に対する傾斜角度が、先端部分において基端部分よりも大きくされている。
【0070】
伝達部66は、略一定の幅寸法で前後方向に直線的に延びている。伝達部66は、厚さ寸法も略一定とされており、前記第1実施形態のような断面積が相互に異なる変形制限部40と変形部42は設けられていない。
【0071】
このような構造とされた鉗子60は、第1実施形態の鉗子10と同様に、内シャフト16を軸方向に押し引き操作することによって、
図11A,
図11Bに示すように、一対の顎62,62が開閉作動する。これにより、鉗子60は、外部からの入力操作によって、一対の顎62,62の間で対象物を把持することが可能とされていると共に、把持した対象物を放すことも可能とされている。
【0072】
図12~
図14には、本発明の第3実施形態としての鉗子70が示されている。鉗子70は、一対の顎72,72を備えている。顎72は、枠状外周部64と入力部32と伝達部66とを一体的に備えていると共に、枠状外周部64と伝達部66とをつなぐ複数の連結部74を一体的に備えている。
【0073】
連結部74は、前後方向に延びる枠状外周部64の左右両側部分と、伝達部66との左右方向間に配されている。連結部74は、全体として左右方向に延びており、左右方向の内側端部が伝達部66につながっていると共に、左右方向の外側端部が枠状外周部64につながっている。連結部74の左右方向中央部分は、前後方向に延びるストレート部76とされている。連結部74は、ストレート部76の両端部から延び出すS字状の湾曲部78,78を備えており、湾曲部78,78の端部が枠状外周部64と伝達部66に連続している。連結部74は弾性を有するばね材として機能し、連結部74の弾性変形によって、枠状外周部64と伝達部66との相対変位がある程度拘束されつつ許容されている。本実施形態の連結部74は、湾曲部78,78によって、弾性が調節されている。本実施形態において、連結部74は、伝達部66の左右両側にそれぞれ3つが前後方向で並んで配されており、1つの顎72に6つが設けられているが、1つの顎72に設けられる連結部74の数は、特に限定されない。伝達部66の左右両側に配された連結部74は、伝達部66に対して相互に対称に設けられている。
【0074】
このような構造とされた鉗子70は、内シャフト16を軸方向に押し引き操作することによって、一対の顎72,72が開閉作動する。これにより、鉗子70は、外部からの入力操作によって、一対の顎72,72の間で対象物を把持することが可能とされていると共に、把持した対象物を放すことも可能とされている。
【0075】
本実施形態では、入力に対する一対の顎72,72の開閉変形量や顎72の変形時の形態等を、連結部74の弾性的な拘束力によって調節することができる。即ち、例えば伝達部66の幅方向への曲がり等の不必要な変形を連結部74の拘束力によって抑える等することで、開閉作動のコントロールが容易になり得る。更に、連結部74に湾曲部78が設けられていることにより、開閉作動特性の調節自由度を大きく得ることができる。また、例えば、顎72が開いた状態或いは閉じた状態では、連結部74のばね作用(弾性)が初期形状へ戻る復元力として作用することから、連結部74のばね作用によって顎72の開閉作動を補助することもできる。
【0076】
なお、連結部74は、必ずしもストレート部76と湾曲部78とを備えていなくてもよく、例えば、全体が湾曲形状とされていてもよいし、全体が直線的に延びる形状とされていてもよい。また、例えば、湾曲部はS字状に限定されず、半円弧状等であってもよいし、ストレート部は前後方向に対して傾斜して延びていてもよい。
【0077】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、顎の数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。また、複数の顎は、互いに略同一形状且つ同一の大きさであることが一様な作動を実現する等の観点から望ましいが、例えば、複数の顎を互いに異なる形状や大きさとすることによって、入力に対する開閉作動量等を相互に異ならせることもできる。
【0078】
伝達部は、前後方向へ直線的に延びる形状に限定されるものではない。伝達部は、例えば、前後方向に対して傾斜したり、蛇行したり、ジグザグに屈折したりしていてもよい。伝達部は、必ずしも枠状外周部の幅方向両側部分間の中央に位置している必要はなく、幅方向で当該中央からずれた位置に配され得る。前後方向に延びる伝達部は、例えば、1つの顎に複数が並列的に設けられていてもよい。更に、伝達部は、例えば、枠状外周部の内周側に配されるメッシュ状等とすることも可能であり、必ずしも前後方向に延びる形状を明確に看取されるものには限定されない。
【0079】
前後方向に延びる伝達部は、先端部分が複数に分岐していてもよい。要するに、1つの顎に複数の伝達部が並列的に設けられる場合に、全体が複数であってもよいし、先端部分又は基端部分だけ或いは中間部分だけが複数に分岐していてもよい。先端部分が並列的に延びる複数とされた伝達部において、先端部分の断面積の合計が基端部分の断面積(基端部分が並列的に延びる複数である場合には断面積の合計)よりも小さくされていれば、先端部分を基端部分よりも細い変形部とみなすことができる。
【0080】
枠状外周部は、顎の外周縁部を構成していれば、形状が限定されるものではない。具体的には、例えば、基端側が先端側よりも幅狭とされていたり、軸方向の途中に部分的な幅狭部分や幅広部分が設けられていてもよい。
【0081】
外シャフト14の入力部32と内シャフト16(内パイプ部48)との連結構造は、接続材56を用いた前記実施形態の構造には限定されず、例えば溶接や溶着、接着、かしめ等の機械的な手段等によって連結することもできる。具体的には、例えば、接続リング52に窓部54が設けられておらず、接続リング52の当該窓部54に相当する部分が、内周側へ凹まされて、入力部32の貫通孔34を通じて内パイプ部48と重ね合わされており、接続リング52と内パイプ部48の重ね合わせ部分が溶接や接着等の手段で固定されていてもよい。これによれば、接続リング52の内周へ凹んだ部分が入力部32の貫通孔34に挿入されており、接続リング52の内周へ凹んだ部分と入力部32とが軸方向で係止されることから、内シャフト16と接続リング52との間に軸方向の力を及ぼすことによって、入力部32に対して顎12を開閉作動させる軸方向の力を作用させることができる。要するに、上記態様では、接続リング52の内周へ凹んだ部分(及び/又は内パイプ部48との溶接乃至は接着の部分)が、接続リング52と内パイプ部48の固定機能と内パイプ部48から入力部32への力の伝達機能という、前記実施形態の接続材56と同様の機能を発揮する。なお、接続リング52に対して局所的に内周へ凹んだ部分を形成するに際しては、当該凹んだ部分の周囲を部分的に延びる切込み等を形成しても良い。具体的には、例えば接続リング52の周方向に所定長さで延びる平行な2本のスリット状の切込みを形成し、それら2本の切込み間を内周へ凹ませることができる。これにより、局所的に内周へ凹んだ部分を容易に変形させて形成できると共に、凹んだ部分の周囲の変形を効果的に回避して接続リング52の円形の筒形状を精度良く保つことが可能となる。更に、例えば、外シャフト14の入力部32を使用者が把持する近位端まで延び出させて、入力部32に外力が直接的に及ぼされるようにしてもよい。
【0082】
外チューブ部は、柔軟に湾曲可能であれば、形成材料がエラストマーに限定されるものではなく、例えば、
図15に示す鉗子80の外チューブ部材82のように、Ni-TiやSUS等の金属で形成されたパイプ材にスリット84を形成して湾曲可能とすることで得ることもできる。なお、この場合のスリット84は、パイプ材に必要な柔軟性を付与できれば、形成数や形状、大きさ等が限定されるものではないが、例えば、C字環状の切込みを長さ方向で相互に離隔して多数設けることにより、外チューブ部82に必要な柔軟性を得ることができる。同様に、内チューブ部は、金属製のパイプ材に柔軟性を付与するためのスリットを形成して得ることもできる。
【0083】
第1実施形態では、内シャフト16が内パイプ部48と内チューブ部50とによって構成されていたが、例えば、
図15に示す鉗子80のように、内シャフト16は、内パイプ部86だけで構成することもできる。この場合には、例えば、内パイプ部86をより基端側まで、即ち第1実施形態の内チューブ部44の位置まで延び出させて、内パイプ部86の基端側への延出部分にスリット88を形成することによって、内パイプ部86の当該延出部分に柔軟性を付与すればよい。同様に、外シャフトも外パイプ部18と外チューブ部44とを備える構造に限定されず、例えば、外シャフトは外パイプ部だけで構成することもできる。
【0084】
前記第1実施形態では、鉗子10のルーメン46に内視鏡等を挿通して使用する態様を例示したが、例えば、鉗子10は、内視鏡のワーキングチャネルやカテーテル等に挿通して使用することもできる。この場合に、内シャフト16は、ルーメン46を備える中空筒状に限定されず、例えば中実ロッド状とされ得る。
【符号の説明】
【0085】
10 鉗子(第1実施形態)
12 顎
14 外シャフト
16 内シャフト
18 外パイプ部
20 筒状部
22 枠状外周部
24 先端幅狭部
26 開放部
28 ヒンジ部
29 接続部
30 保持部
32 入力部
34 貫通孔(接続穴)
36 伝達部
38 作用部
40 変形制限部
42 変形部
44 外チューブ部
46 ルーメン
48 内パイプ部
50 内チューブ部
52 接続リング
54 窓部(接続穴)
56 接続材
60 鉗子(第2実施形態)
62 顎
64 枠状外周部
66 伝達部
70 鉗子(第3実施形態)
72 顎
74 連結部
76 ストレート部
78 湾曲部
80 鉗子(別の実施形態)
82 外チューブ部
84 スリット
86 内チューブ部
88 スリット