(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033373
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】位置決め固定装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/00 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B23Q3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136913
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】596037194
【氏名又は名称】パスカルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 卓也
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016AA03
(57)【要約】
【課題】クランプ力を向上させながら精度の高い位置決め固定を行うことが可能な位置決め固定装置を提供する。
【解決手段】位置決め固定装置は、第1の機構に固定されるロッド部材と、第2の機構に設けられるシリンダ機構と、第1の方向の位置決めの基準となる第1基準面を有する第1部材と、ロッド部材に当接し、少なくとも第1の方向に直交する第2の方向の位置決めの基準となる第2基準面を有する第2部材とを備える。第2部材は、第1部材に対して少なくとも第1の方向に移動可能である。シリンダ機構は、第1の方向に沿ってロッド部材を第2の機構側に引き付けることが可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の機構と第2の機構との相対的な位置決めを行うとともに、前記第1の機構と前記第2の機構とを互いに固定することが可能な位置決め固定装置であって、
前記第1の機構に固定されるロッド部材と、
前記第2の機構に設けられるシリンダ機構と、
第1の方向の位置決めの基準となる第1基準面を有する第1部材と、
前記ロッド部材に当接し、少なくとも前記第1の方向に直交する第2の方向の位置決めの基準となる第2基準面を有する第2部材とを備え、
前記第2部材は、前記第1部材に対して少なくとも前記第1の方向に移動可能であり、
前記シリンダ機構は、前記第1の方向に沿って前記ロッド部材を前記第2の機構側に引き付けることが可能である、位置決め固定装置。
【請求項2】
前記第2部材は、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向において前記第1部材に拘束される、請求項1に記載の位置決め固定装置。
【請求項3】
前記第2部材は、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向において前記第1部材に対して移動可能である、請求項1に記載の位置決め固定装置。
【請求項4】
前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に並ぶように一対の前記第2部材が設けられ、
一対の前記第2部材の一方は、前記第1部材に対して前記第3の方向に移動可能であり、
一対の前記第2部材の他方は、前記第3の方向において前記第1部材に拘束される、請求項1に記載の位置決め固定装置。
【請求項5】
前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に並ぶように一対の前記シリンダ機構が設けられ、
一対の前記シリンダ機構の間に位置し、一対の前記シリンダ機構に作動流体を供給する流体路が設けられる、請求項1に記載の位置決め固定装置。
【請求項6】
前記ロッド部材に係合し、前記シリンダ機構の駆動力を前記ロッド部材に伝達する係合具をさらに備え、
前記第2部材は、前記係合具を保持する保持部を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の位置決め固定装置。
【請求項7】
前記シリンダ機構は、ピストン部材と、前記ピストン部材により区画されるシリンダ室とを含み、
前記位置決め固定装置は、前記シリンダ室に設けられ、前記ロッド部材を前記第1の機構に近づける方向に前記ピストン部材を付勢する付勢部材をさらに備える、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の位置決め固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、位置決め固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベース体の上に固定対象物(機械加工に供するワークを取り付けるワークパレット、金型等)を位置決め固定するための位置決め固定装置として、下記の特許文献1ないし特許文献4に記載のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/079749号
【特許文献2】独国特許発明第102011080504号明細書
【特許文献3】欧州特許第2764952号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10317336号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
位置決め固定装置には、高いクランプ力と精度の高い位置決めを行うことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本技術に係る位置決め固定装置は、第1の機構と第2の機構との相対的な位置決めを行うとともに、第1の機構と第2の機構とを互いに固定することが可能である。
【0006】
位置決め固定装置は、第1の機構に固定されるロッド部材と、第2の機構に設けられるシリンダ機構と、第1の方向の位置決めの基準となる第1基準面を有する第1部材と、ロッド部材に当接し、少なくとも第1の方向に直交する第2の方向の位置決めの基準となる第2基準面を有する第2部材とを備える。第2部材は、第1部材に対して少なくとも第1の方向に移動可能である。シリンダ機構は、第1の方向に沿ってロッド部材を第2の機構側に引き付けることが可能である。
【発明の効果】
【0007】
本技術によれば、第2部材が第1部材に対して第1の方向に移動可能であるため、互いに異なる方向の位置決め機能を第1部材および第2部材に各々持たせることが可能である。具体的には、第1基準面を有する第1部材により第1の方向の位置決めを行い、第2基準面を有する第2部材により第2の方向の位置決めを行うことができる。
【0008】
また、第2部材の第2基準面は、ロッド部材に当接することにより第2の方向の位置決めを行うため、クランプ力を生じさせるロッド部材に位置決め機能を持たせることができる。このように、固定のためのクランプ力を生じさせる部材と、位置決め部材とを兼用することにより、位置決め固定装置の限られたスペースを有効に利用して、第1の機構と第2の機構との位置決め固定を行うことができる。
【0009】
以上の結果として、クランプ力を向上させながら精度の高い位置決め固定を行うことが可能な位置決め固定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】位置決め固定装置のクランプ状態(第1の状態)を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す状態における係合具周辺を示す拡大図である。
【
図3】位置決め固定装置のアンクランプ状態(第2の状態)におけるベース体側の機構(第2の機構)を示す断面図である。
【
図6】ベース体側の機構(第2の機構)から分離された固定対象物側の機構(第1の機構)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0012】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0013】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0014】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0015】
図1は、位置決め固定装置のクランプ状態(第1の状態)を示す断面図である。
図1に示す位置決め固定装置は、第1の機構10と第2の機構20との相対的な位置決め(X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向)を行うとともに、第1の機構10と第2の機構20とを互いに固定することが可能なものである。
【0016】
図1に示すように、第1の機構10は、パレット10A(固定対象物)を含む。第2の機構20は、ベース体20Aを含む。パレット10Aには、たとえば、切削加工に供するワークが取り付けられる。パレット10Aは、固定対象物の一例であって、本技術における固定対象物はこれに限定されない。たとえばパレット10Aに代わり金型を固定対象物としてもよい。ベース体20Aは、静止物に固定されていてもよいし、回転支持機構などに支持されて可動状態となっていてもよい。また、本技術に係る位置決め固定装置は、ロボット(アームなど)にも適用され得る。
【0017】
第1の機構10において、パレット10Aに基板100が取り付けられている。基板100にロッド部材200が螺着されている。ロッド部材200は、基板100から第2の機構20側に突出するように設けられる。
【0018】
第2の機構20において、基板100に対向するように着座部材300(第1部材)が設けられている。着座部材300に環状部材400(第2部材)が取り付けられる。環状部材400は、ロッド部材200と略同芯に配置される。
【0019】
第2の機構20は、さらに、係合具500と、ハウジング600と、キャップ部材700と、シリンダ機構800と、付勢部材900とを含む。
【0020】
係合具500は、環状部材400に保持されている。ハウジング600は、キャップ部材700とともに、シリンダ機構800を構成する。ハウジング600は、位置決め固定装置の軽量化のため、アルミニウムなどの軽量材により構成し得る。着座部材300は、位置決め精度向上のため、ハウジング600よりも高硬度の素材により形成され得る。係合具500は、ロッド部材200に係合し、シリンダ機構800の駆動力をロッド部材200に伝達する。シリンダ機構800内に付勢部材900が収納される。
【0021】
第1の機構10において、ロッド部材200は、複数の(
図1の例では一対の)ロッド部材201,202を含む。一対のロッド部材201,202は、X軸方向に並ぶように設けられている。第2の機構20において、複数のクランプ装置1,2が形成される。複数のクランプ装置1,2は、環状部材401,402、係合具501,502、キャップ部材701,702、シリンダ機構801,802、および付勢部材901,902を各々含む。
【0022】
シリンダ機構801,802は、シリンダ室811,812と、ピストン部材821,822とを各々含む。シリンダ室811,812は、ピストン部材821,822によりクランプ室811A,812Aとアンクランプ室811B,812Bとに各々区画される。
【0023】
付勢部材901,902は、クランプ室811A,812Aに各々設けられる。付勢部材901,902は、ピストン部材821,822を第1の機構10に近づける方向(クランプ方向)にピストン部材821,822を各々付勢する。すなわち、付勢部材901,902は、
図1中の下方向にピストン部材821,822を各々付勢する。
【0024】
第2の機構20に設けられたクランプ装置1,2において、シリンダ機構801,802は、ピストン部材821,822を退入側(第1の機構10を第2の機構20に近づける方向)および進出側(第1の機構10を第2の機構20から遠ざける方向)に駆動する。これにより、ベース体20Aに対するパレット10Aのクランプ状態とアンクランプ状態とが切り換えられる。
【0025】
シリンダ機構801,802の間に位置するハウジング600には、シリンダ機構801,802に作動エア(作動流体)を供給するエア通路1000(流体路)が設けられる。着座部材300には検知エア通路1100が設けられる。検知エア通路1100には、基板100の着座を検知するためのエアが供給される。検知エア通路1100のエア圧が上昇したことに基づいて、基板100が着座した状態にあることが検知される。
【0026】
図1の例において、一対の環状部材400は、いずれも着座部材300に対してZ軸方向(第1の方向)に拘束されず、Z軸方向に若干量移動可能である。すなわち、環状部材401,402は、Z軸方向に若干の隙間を有する状態で着座部材300およびハウジング600に保持されている。
【0027】
図1に示される一対の環状部材400のうち、環状部材401は、X軸方向(第3の方向)において着座部材300に拘束される。環状部材402は、X軸方向(第3の方向)において着座部材300に拘束されず、X軸方向に若干量移動可能である。すなわち、環状部材401は、X軸方向に実質的に隙間がない状態で着座部材300に嵌合され、環状部材402は、X軸方向に若干の隙間を有する状態で着座部材300に嵌合されている。
【0028】
図1に示される一対の環状部材400は、いずれもY軸方向(第2の方向)において着座部材300に拘束される。すなわち、環状部材401,402は、いずれもY軸方向には実質的に隙間がない状態で着座部材300に嵌合されている。
【0029】
換言すると、
図1に示される一対の環状部材400のうち、環状部材401は、着座部材300に対してZ軸方向(第1の方向)においては若干量移動可能であり、かつ、Y軸方向(第2の方向)およびX軸方向(第3の方向)においては着座部材300に拘束される。他方、環状部材402は、着座部材300に対してZ軸方向(第1の方向)およびX軸方向(第3の方向)に若干量移動可能であり、かつ、Y軸方向(第2の方向)においては着座部材300に拘束されている。
【0030】
このように、
図1に示される一対の環状部材400は、着座部材300に対して少なくともZ軸方向(第1の方向)に移動可能である。
【0031】
上述のとおり、一対の環状部材401,402のうち一方の環状部材402のみをX軸方向に移動可能とすることで、第1の機構10と第2の機構20とを組み合わせるときに、ロッド部材201,202のX軸方向の芯ずれを吸収することが可能である。
【0032】
図2は、
図1に示すクランプ状態における係合具501の周辺を示す拡大図である。なお、
図2においては、クランプ装置1の係合具501の周辺の構造について示しているが、クランプ装置2の係合具502の周辺の構造についても、環状部材402がX軸方向に若干移動可能であることを除いては、
図2と同様である。
【0033】
図2に示すように、基板100は主面100Aを有し、ロッド部材201は外周面201Aと凹部201Bとを有する。
【0034】
着座部材300は、Z軸方向の位置決めの基準となる基準面300A(第1基準面)と、環状部材401をX軸方向およびY軸方向に拘束する周面300Bとを有する。着座部材300の基準面300Aが基板100の主面100Aに当接することにより、Z軸方向の位置決めが行われる。
【0035】
環状部材401は、着座部材300の周面300Bと当接する外周面401Aと、ロッド部材201の外周面201Aと当接する内周面401Bと、係合具501を保持する保持部401Cを有する。環状部材401の内周面401B(第2基準面)がロッド部材201の外周面201Aに当接し、環状部材401の外周面401A(第3基準面)が着座部材300の周面300Bに当接することにより、X軸方向およびY軸方向の位置決めが行われる。ロッド部材201の外周面201A、ならびに環状部材401の外周面401Aおよび内周面401Bは、Z軸方向から見たときに円形状を有する。
【0036】
図1,
図2に示すクランプ状態においては、シリンダ機構800のクランプ室811A,812Aにエア圧が供給される。この結果、ピストン部材821,822が
図1,
図2中の下側に向かって駆動される。
【0037】
シリンダ機構801のピストン部材821は、係合具501に当接する傾斜面821Aを有する。ピストン部材821がクランプ側(
図2中下側)に駆動されたとき、傾斜面821Aは、係合具501を内径側かつ基板100側(図中斜め下方向)に押圧する。傾斜面821Aに押圧された係合具501は、環状部材401をパレット10A側(図中下方向)に押圧するとともに、ロッド部材201の凹部201Bに係合して、ロッド部材201をベース体20A側(図中斜め上方向)に押圧する。鋼球からなる係合具501はロッド部材201の周方向に並んで複数設けられている。各々の係合具501から斜め上方向に押圧されたロッド部材201は、図中上方向に駆動され、基板100が着座部材300に押しつけられる。このとき、着座部材300の基準面300AによりZ軸方向の位置決めが行われ、環状部材401の外周面401Aおよび内周面401BによりX軸方向およびY軸方向の位置決めが行われる。
【0038】
付勢部材900は、シリンダ機構800をクランプ方向に付勢する。したがって、エア圧の供給が中断されても、付勢部材900の付勢力により位置決め固定された状態が維持される。
【0039】
このように、本実施の形態に係る位置決め固定装置においては、基準面300Aを有する着座部材300によりZ軸方向の位置決めを行い、外周面401Aおよび内周面401Bを有する環状部材401によりX軸方向およびY軸方向の位置決めを行うことができる。すなわち、着座部材300と環状部材400とに互いに異なる方向の位置決め機能を各々持たせることが可能である。
【0040】
また、環状部材401の内周面401B(第2基準面)がロッド部材201の外周面201Aに当接することによりX軸方向およびY軸方向の位置決めを行うため、クランプ力を生じさせるロッド部材201に位置決め機能を持たせることができる。このように、固定のためのクランプ力を生じさせる部材と、位置決め部材とを兼用することにより、位置決め固定装置の限られたスペースを有効に利用して、第1の機構10と第2の機構20との位置決め固定を行うことができる。この結果、クランプ力を向上させながら精度の高い位置決め固定を行うことができる。
【0041】
ロッド部材201の外周面201Aをロッド部材201の根元側(図面下側)に向かうにつれて外径側に向かうように傾斜させることにより、位置決めの精度をさらに向上させることができる。
【0042】
なお、クランプ装置2では、X軸方向において着座部材300の周面300Bと環状部材402との間に若干の隙間が形成される。したがって、環状部材402は、X軸方向には拘束されず、Y軸方向にのみ拘束される。このため、クランプ装置2においては、ロッド部材202と環状部材402とにより、X軸方向およびY軸方向のうち、Y軸方向の位置決めのみが行われる。クランプ装置2においても、着座部材300によりZ軸方向の位置決めは行われる。上述した着座部材300ならびに一対のロッド部材201,202および環状部材401,402を含むクランプ装置1,2が同時に作動することにより、ロッド部材201,202のX軸方向のピッチ間誤差を吸収しながら、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の位置決めを行うことができる。
【0043】
次に、
図3~
図7を用いて、位置決め固定装置のアンクランプ状態(第2の状態)について説明する。
【0044】
図3は、アンクランプ状態における第2の機構20を示す断面図であり、
図4,
図5は、各々、
図3に示す第2の機構20の上面図、下面図である。
図6は、第2の機構20から分離された第1の機構10を示す断面図であり、
図7は、
図6に示す第1の機構10の上面図である。
【0045】
図1,
図2に示すクランプ状態から、シリンダ機構のアンクランプ室811B,812Bにエア圧が供給されると、ピストン部材821,822は、
図3に示すように、付勢部材901,902の付勢力に抗してアンクランプ側(
図3中上側)に駆動される。この結果、係合具500とロッド部材200との係合が解除され、ロッド部材200は第2の機構20から離脱可能となる。
【0046】
図4,
図5に示すように、第2の機構20において、ハウジング600および着座部材300は、取付用穴20Bを介してベース体20Aに螺着されている。クランプ室811A,812Aに作動エア圧を供給するエア通路1010と、アンクランプ室811B,812Bに作動エア圧を供給するエア通路1020とがY軸方向に並ぶように形成されている。
【0047】
図5に示すように、環状部材401,402は、着座部材300に設けられた嵌合孔301,302に各々嵌合されている。嵌合孔301,302は、着座部材300の周面300Bを構成する。嵌合孔301は、円形状を有する。したがって、環状部材401は、X軸方向およびY軸方向において着座部材300に拘束される。嵌合孔302は、Y軸方向よりもX軸方向に若干長い形状を有する。したがって、環状部材402は、Y軸方向においては着座部材300に拘束されるが、X軸方向においては着座部材300に対して若干量移動可能である。これにより、ロッド部材201,202のX軸方向のピッチ間誤差が吸収可能となる。
【0048】
図6,
図7に示すように、第1の機構10において、基板100は、取付用穴10Bを介してパレット10Aに螺着されている。
図6,
図7に示すように、基板100には、一対のロッド部材201,202を設ける簡易な構造で足りるため、位置決め固定装置のユーザにおいて複雑な構成を準備する必要がない。なお、ロッド部材201,202をパレット10Aに直接螺着してもよい。
【0049】
本実施の形態に係る位置決め固定装置によれば、一対のクランプ装置1,2を用いてX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の変位、ならびにX軸、Y軸、およびZ軸の3軸まわりの回転について位置決めを行うことができる(本明細書では、この状態を「完全な位置決め」と称する。)。このように、クランプ装置1,2が位置決め機能を有するため、位置決め固定装置の限られたスペースを有効に利用して、第1の機構10と第2の機構20との完全な位置決めを行うことができる。結果として、高いクランプ力と精度の高い位置決めとを両立し得る。
【0050】
ただし、本技術の範囲は一対のクランプ装置1,2を含む場合に限定されず、クランプ装置1,2を単体で用いる場合も含む。
【0051】
クランプ装置1を単体で用いる場合には、完全な位置決めを行うために、Z軸まわりの回転を拘束する機構を別途設ける必要がある。クランプ装置2を単体で用いる場合には、完全な位置決めを行うために、X軸方向の変位およびZ軸まわりの回転を拘束する機構を別途設ける必要がある。これらの機構については、周知の構造を適用することができる。いずれの場合も、少なくともY軸方向およびZ軸方向の変位、ならびにX軸およびY軸まわりの回転がクランプ装置により拘束されているため、位置決め機能を有しないクランプ装置を用いる場合と比較して、別途に設ける機構を簡素化することが可能である。したがって、位置決め固定装置の限られたスペースを有効に利用して、第1の機構10と第2の機構20との完全な位置決めを行うことができる。結果として、高いクランプ力と精度の高い位置決めとを両立し得る。
【0052】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1,2 クランプ装置、10 第1の機構、10A パレット、10B 取付用穴、20 第2の機構、20A ベース体、20B 取付用穴、100 基板、100A 主面、200,201,202 ロッド部材、201A 外周面、201B 凹部、300 着座部材、300A 基準面、300B 周面、301,302 嵌合孔、400,401,402 環状部材、401A 外周面、401B 内周面、401C 保持部、500,501,502 係合具、600 ハウジング、700,701,702 キャップ部材、800,801,802 シリンダ機構、811,812 シリンダ室、811A,812A クランプ室、811B,812B アンクランプ室、821,822 ピストン部材、821A 傾斜面、900,901,902 付勢部材、1000,1010,1020 エア通路、1100 検知エア通路。