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特開2024-33374トンネルインバートの架設装置とその施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033374
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】トンネルインバートの架設装置とその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/40 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
E21D11/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136914
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000228785
【氏名又は名称】日本サミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康夫
(72)【発明者】
【氏名】西田 浩之
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BB02
2D155CA08
2D155GB01
2D155GB07
2D155GB08
(57)【要約】
【課題】施工性に優れたトンネルインバートの架設装置と架設方法を提供する。
【解決手段】トンネル1内にトンネルインバート用のプレキャスト版11を据え付けるトンネルインバートの架設装置21において、走行車輪23を有する本体22と、本体22の上部に設けられ、前側が本体22から張り出すビーム部材51と、本体22内にプレキャスト版11を吊り下げた状態でビーム部材51に移動可能に設けられた吊上げ移動手段81とを備える。プレキャスト版11の架設位置の上方にビーム部材51の前側を合わせ、本体22の後側で吊上げ移動手段81によりプレキャスト版11を吊上げ、プレキャスト版11を吊り下げた状態で、吊上げ移動手段81をビーム部材51の前側に移動し、架設位置にプレキャスト版11を吊り下すことができるため、複数のプレキャスト版11を連続して吊り上げ、移動、吊り下しすることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内にトンネルインバート用のプレキャスト版を据え付けるトンネルインバートの架設装置において、
走行手段を有する本体と、
前記本体の上部に設けられ、前後方向一側が該本体から張り出すビーム部材と、
前記本体内に前記プレキャスト版を吊り下げた状態で前記ビーム部材に移動可能に設けられた吊上げ移動手段と、
を備えることを特徴とするトンネルインバートの架設装置。
【請求項2】
前記ビーム部材の前後方向他側が前記本体から張り出すことを特徴とする請求項1記載のトンネルインバートの架設装置。
【請求項3】
前記ビーム部材が前記本体の幅方向に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のトンネルインバートの架設装置。
【請求項4】
前記走行手段が走行車輪であり、前記走行車輪を前記本体の下部の前後左右に設け、それら走行車輪を独立して回転駆動する回転駆動手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のトンネルインバートの架設装置。
【請求項5】
請求項1記載のトンネルインバートの架設装置を用い、前記ビーム部材の前後方向他側で前記吊上げ移動手段により前記プレキャスト版を吊上げ、この吊上げた状態で前記本体内を通って前記吊上げ移動手段を前記ビーム部材の前後方向一側に移動し、架設位置に前記プレキャスト版を吊り下すことを特徴とするトンネルインバートの架設方法。
【請求項6】
前記トンネルの路面を複数の単位施工領域がトンネル長さ方向に並んだ複数の区画に分割し、
前記区画の前記単位施工領域を掘削して複数の前記プレキャスト版を据え付ける掘削孔を形成し、前記架設装置により前記掘削孔に複数のプレキャスト版を吊り下ろした後、前記架設装置を他の区画に移動して前記他の区画の前記掘削孔に前記複数のプレキャスト版を吊り下ろし、
前記架設装置が、前記区画から他の区画に移動し、前記区画に戻るまでに、前記区画に前記掘削孔を形成することを特徴とする請求項5記載のトンネルインバートの架設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルインバートの架設装置とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のトンネルインバートの架設装置として、自走式車両に起伏可能に設けられた起伏アームを備えた重量物架設装置(例えば特許文献1)がある。
【0003】
上記従来技術の重量物架設装置では、持ち上げたトンネルインバートの垂直方向及び平面方向の向きを変えることができ、トンネルインバートの据付作業の効率化を図ることができる。
【0004】
しかし、重量物架設装置を工事中の車線に位置させ、隣りの車線の運搬車両からトンネルインバートを受け取るため、この際、上下車線を通行停めとする必要がある。
【0005】
これに対して、装置本体における後胴の上部に、インバートブロックを吊り降ろすレーン装置を設けたトンネルのトンネル改修装置(例えば特許文献2)があり、全面通行止めを行わずに施工することができる。
【0006】
しかし、上記トンネル改修装置は、敷設済みのインバートブロックを反力として延伸方向に伸縮する掘進ジャッキを有し、インバートブロックを敷設する箇所に配置されたインバート改修装置で土留めしながらトンネル底部を撤去する掘削工程と、トンネル底部の撤去に応じて掘進ジャッキを伸長し、インバート改修装置を延伸方向に前進させ、所定長さ分前進したインバート改修装置の掘進ジャッキを縮小させて、インバートブロックを敷設するインバートブロック敷設工程とを、繰り返して行うものであり、このように掘削ジャッキによりインバート改修装置を前進させるため、前進移動に時間が掛かると共に、装置が大がかりなものになる問題がある。
【0007】
また、インバート改修装置の装置本体には、インバートブロックを吊り上げるクレーン装置が設けられているが、クレーンがフォークリフトからインバートブロックを吊上げた後、インバート改修装置がインバートブロックの分だけ前進した後、空いた部分にインバートブロックを吊り下すため、インバートブロックの吊り上げから吊り下し迄に時間が掛かるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-184294号公報
【特許文献2】特開2020-117928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するものであり、施工性に優れたトンネルインバートの架設装置と架設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、トンネル内にトンネルインバート用のプレキャスト版を据え付けるトンネルインバートの架設装置において、走行手段を有する本体と、前記本体の上部に設けられ、前後方向一側が該本体から張り出すビーム部材と、前記本体内に前記プレキャスト版を吊り下げた状態で前記ビーム部材に移動可能に設けられた吊上げ移動手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、前記ビーム部材の前後方向他側が前記本体から張り出すことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、前記ビーム部材が前記本体の幅方向に移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、前記走行手段が走行車輪であり、前記走行車輪を前記本体の下部の前後左右に設け、それら走行車輪を独立して回転駆動する回転駆動手段を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1記載のトンネルインバートの架設装置を用い、前記ビーム部材の前後方向他側で前記吊上げ移動手段により前記プレキャスト版を吊上げ、この吊上げた状態で前記本体内を通って前記吊上げ移動手段を前記ビーム部材の前後方向一側に移動し、架設位置に前記プレキャスト版を吊り下すことを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、前記トンネルの路面を複数の単位施工領域がトンネル長さ方向に並んだ複数の区画に分割し、前記区画の前記単位施工領域を掘削して複数の前記プレキャスト版を据え付ける掘削孔を形成し、前記架設装置により前記掘削孔に複数のプレキャスト版を吊り下ろした後、前記架設装置を他の区画に移動して前記他の区画の前記掘削孔に前記複数のプレキャスト版を吊り下ろし、前記架設装置が、前記区画から他の区画に移動し、前記区画に戻るまでに、前記区画に前記掘削孔を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の構成によれば、プレキャスト版の架設位置の上方にビーム部材の前後方向一側を合わせ、本体の後側で吊上げ移動手段によりプレキャスト版を吊上げ、プレキャスト版を吊り下げた状態で、吊上げ移動手段をビーム部材の前後方向一側に移動し、架設位置にプレキャスト版を吊り下すことができるため、複数のプレキャスト版を連続して吊上げ、移動、吊下しすることができる。
【0017】
請求項2の構成によれば、本体の前後方向他側で外側に張り出したビーム部材の前後方向他側で、吊上げ移動手段によりプレキャスト版を吊り上げることができる。
【0018】
請求項3の構成によれば、吊下しの際にプレキャスト版の本体の幅方向の位置を調整することができる。また、架設装置の移動時にビーム部材がトンネル内面に近接することも防止できる。
【0019】
請求項4の構成によれば、走行車輪をそれぞれ独立して回転駆動することにより、操舵装置が無くても、旋回することができる。
【0020】
請求項5の構成によれば、複数のプレキャスト版を連続して吊上げ、移動、吊下しすることができる。
【0021】
請求項6の構成によれば、単位施工領域の掘削孔にプレキャスト版を吊り下した後、このプレキャスト版を吊り下した区画とは別の他の区画の単位施工領域の掘削を待つことなく、架設装置を移動して他の区画の単位施工領域の掘削孔にプレキャスト版を吊り下すことができ、掘削作業による待ち時間がなく、施工性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1を示すアーチ形トンネルの断面図である。
図2】同上、架設装置の側面図である。
図3】同上、架設装置の分解図である。
図4】同上、架設装置の門型枠の分解図である。
図5】同上、架設装置の正面図である。
図6】同上、架設装置の平面図である。
図7】同上、架設装置の本体の平面図である。
図8】同上、吊上げ移動手段と門型枠の側面図である。
図9】同上、運搬車両の荷台からプレキャスト版を吊上げる作業の斜視図である。
図10】同上、吊上げ移動手段により吊上げたプレキャスト版を本体内を通して移送する状態を示す斜視図である。
図11】同上、掘削孔にプレキャスト版を吊り下した状態を示す斜視図である。
図12】同上、架設装置の斜視図である。
図13】同上、区画と単位基本領域を示す路面の平面説明図である。
図14】同上、施工手順を示す説明図である。
図15】本発明の実施例2を示す架設装置の側面図である。
図16】本発明の実施例3を示す施工手順を示す路面の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例0024】
以下、本発明の実施例について添付図面を参照して説明する。図1図14は本発明の実施例1を示し、図1は既設のアーチ形トンネル1の断面を示し、アーチ形に組んだ山側壁体2と内壁体3とによりアーチ形構造体4を形成しており、それら山側壁体2及び内壁体3は現場打ちコンクリートにより形成される。
【0025】
また、アーチ形構造体4の左右の下部は、既設インバート(図示せず)により連結され、この既設インバートは現場打ちコンクリートやプレキャスト版により構成され、既設インバートの上に路面5が形成されている。
【0026】
また、既設アーチ形トンネル1の既設の前記路面5を掘削し、この路面5を掘削した掘削孔6に、インバート7(図1)を設け、このインバート7により前記アーチ形構造体4の下部を連結している。また、アーチ形構造体4はロックアンカー8により地山9に固定され、前記ロックアンカー8は地山9に打ち込まれている。また、前記インバート7はトンネル1の底部の略半分の幅を有する湾曲状でコンクリート製のインバート用プレキャスト版11,11により形成されている。尚、この例では、トンネルインバートたるプレキャスト版11はインバート7をトンネル幅方向に2分割し、分割したプレキャスト版11,11の分割箇所12を連結し、掘削孔6を埋戻し材13により埋め戻して新設の路面5を形成する。
【0027】
尚、図1などでは、既設のトンネル1の路面を掘削し、新設のプレキャスト版11,11を架設してインバート7を形成し、埋め戻した状態を図示している。
【0028】
また、図1及び図5に示すように、掘削孔6の底面には支持部材たる支持ブロック15を配置し、この支持ブロック15の上面に、プレキャスト版11に螺合した高さ調整手段たる高さ調整ボルト16の下端を当接し、高さ調整ボルト16によりプレキャスト版11の高さを調整可能に構成している。
【0029】
また、プレキャスト版11には複数の裏込め材用充填孔17が貫通形成されており、複数のプレキャスト版11,11・・・をトンネル長さ方向に並設した後、裏込め材用充填孔17からプレキャスト版11と掘削孔6の底面との間に裏込め材18を充填し、この裏込め材18としては速硬性のグラウト材などが用いられる。また、前記トンネル長さ方向に隣り合うプレキャスト版11,11の目地部にも前記裏込め材18や目地材が充填され、前記裏込め材18等の充填後、掘削孔6を埋戻すことができる。
【0030】
トンネルインバートの架設装置21は、本体22の下部に走行手段たる走行車輪23,23,23,23を設け、前記本体22は、前後方向に長い左右のベース部24,24を左右に間隔を置いて設け、このベース部24はH形鋼などの長尺部材からなり、左右のベース部24,24の左右外側で前後に前記走行車輪23,23が設けられている。
【0031】
また、本体22の前後に門型枠26を設け、この門型枠26は、前記左右のベース部24,24上に一体に立設した左右の支柱部27,27と、これら左右の支柱部27,27の上部に設けられ、左右方向中央側に傾斜した左右の斜め支柱部28,28と、これら左右の斜め支柱部28,28の上部を連結する横方向の横梁部29とを一体に備える。尚、左右のベース部24,24は、前後の門型枠26,26のみにより連結され、本体22は、内部を車両が通行可能に構成されている。
【0032】
図2及び図3に示すように、前記ベース部24には、各走行車輪23に対応して、走行車輪23を回転駆動する回転駆動手段たる走行モータ31が設けられ、この走行モータ31の回転がチェーン32により走行車輪23に伝達される。また、前記走行モータ31の駆動源である電源33と、該走行モータ31の操作部たる操作盤34が本体22に設けられている。
【0033】
このように4つの走行車輪23,23,23,23が独立して駆動するため、架設装置21を旋回することができる。この例では、図13などに示すように、路面5は左右の車線100L,100Rを有し、例えば、前進で左側の車線100Lから右の車線100Rに移動するには、右旋回のために左側の前後の走行車輪23,23のみを回転し、架設装置21を斜め右向きとした後、全ての走行車輪23,23,23,23を回転して斜め右向きで直進し、この後、左旋回のために右側の前後の走行車輪23,23のみを回転し、右の車線100R内で架設装置21を真っすぐの向きとすることできる。
【0034】
また、図2及び図3に示すように、前記ベース部24,24の左右外側で該ベース部24,24の前,後端部側には、アウトリガー35が設けられ、昇降手段たる油圧シリンダ36などにより支持脚37が昇降し、4つの支持脚37、37,37,37が降下することにより、道路から走行車輪23が持ち上がり、架設装置21を4つの支持脚37、37,37,37により支持することができる。また、アウトリガー35を駆動する手動油圧ポンプ38を本体22に搭載している。
【0035】
また、前後の門型枠26,26の支柱部27,27の上部を、前後方向の中央連結部材41により連結し、前後の門型枠26,26の斜め支柱部28,28を、前後方向の上連結部材42により連結している。さらに、本体22の前後において、支柱部27の下部と中央連結部材41の下面とを斜材43により連結している。
【0036】
また、前記操作盤34は、後側の門型枠26の左右一側である左側の支柱部27に取り付けられており、前記操作盤34を操作する作業員が乗る作業台39が、前記左側の支柱部27に取り付けられている。
【0037】
前記本体22の上部には、前後方向に長いトンネル長さ方向のビーム部材51が設けられている。このビーム部材51は、H形鋼からなる上弦材52と、H形鋼からなる下弦材53と、これら上弦材52と下弦材53とを連結する複数の斜材54及び鉛直材55とを備えたトラス構造である。また、前記上弦材52の前後端には、上弦材52と断面同形の縦材56が設けられ、この縦材56により上弦材52と下弦材53が連結されている。尚、下弦材53はフランジ部53F,53Fを上下に配置し、これらフランジ部53F,53Fをウエブ部53Uにより連結している。
【0038】
そして、前記ビーム部材51は、前記本体22上の部分がビーム中央部51Sであり、本体22から前方に張り出す部分がビーム前張出部51Mであり、本体22から後方に張り出すビーム後張出部51Uである。また、ビーム前張出部51Mには、下弦材53を延長した下弦材延長部53Eが設けられている。この下弦材延長部53Eは、上弦材52の端部位置より前側に延びている部分である。
【0039】
前記ビーム部材51は、図4及び図5などに示すように、該ビーム部材51を左右方向にスライドするスライド駆動機構61により門型枠26の横梁部29にスライド可能に連結される。前記スライド駆動機構61は、前記横梁部29にスライド可能に取り付けた移動体62を備え、この移動体62をビーム部材51の高さ方向中央に固定している。具体的には、図5に示すように、移動体62の上部を前記上弦材52の下面に固定すると共に、移動体62の下部を下弦材53の上面に固定し、さらに、移動体62の前後方向一側面を前後方向の固定梁63により前記鉛直材55に固定している。
【0040】
前記移動体62は、左右の上ローラ65,65と左右の下ローラ66,66により横梁部29を上下から挟んで左右移動可能に設けられている。また、前記横梁部29の前面又は後面の少なくとも一方に、左右方向のラック67を設け、このラック67に歯合するピニオン68が前記移動体62に設けられている。また、移動体62は、前記ピニオン68を回転する減速機69を備える。
【0041】
従って、ピニオン68を回転駆動することにより、ラック67を設けた横梁部29の長さ方向に移動体62が移動し、移動体62を固定したビーム部材51が左右(トンネル幅方向)に移動する。
【0042】
さらに、スライド駆動機構61は、前後の移動体62,62のピニオン68,68を同期して駆動し、このために図3図6及び図12に示すようにビーム部材51の前後方向中央側に1台の原動機たる減速機付モータ71を備え、このモータ71により回転する前後の回転軸72,72を設け、これら前後の回転軸72,72はビーム部材51の長さ方向に一直線状に並ぶ。また、それら前後の回転軸72,72の先端を、前後の移動体62,62の前記減速機69,69に連結し、モータ71の回転により前後の回転軸72,72が同一回転速度で同一方向に回転し、この回転が減速機69,69により減速され、前後のピニオン68,68が同一回転速度で回転し、前後の移動体62,62が同期して左右にスライドする。このため長尺で重たいビーム部材51を安定して横移動させることができる。
【0043】
また、本体22の前後にビーム前張出部51Mとビーム後張出部51Uが張り出しているため、前記右旋回時の前に、ビーム部材51を左側(トンネル1の中央)側に移動し、右旋回時にビーム後張出部51Uの先端がトンネル1の内壁体3の左側に近接しないようにする。また、斜め右向き直進時に、ビーム前張出部51Mの先端がトンネル1の内壁体3の右側に近接しないように、ビーム部材51を右側(トンネル1の中央)側に移動し、ビーム部材51の先端が内壁体3に当たらないようにすることができる。
【0044】
図1などに示すように、架設装置21の本体22はトンネル1の片側車線に収まる左右幅を有し、且つ本体22内に車両が通行可能な内部通路73が形成される。従って、架設装置21の内部通路73内を緊急車両などが通行することができる。
【0045】
前記ビーム部材51には吊上げ移動手段81が吊設される。この吊上げ移動手段81は、図8に示すように、昇降手段たるチェーンブロック82と、このチェーンブロック82を前記下弦材53に吊下げる走行手段83とを備える。この走行手段83は、前記下弦材53の下側のフランジ部53Fの上面に係止する走行輪84と、この走行輪84を回転駆動する駆動用モータ85とを備える。
【0046】
前記プレキャスト版11の上面左右には、図5に示すように、吊り具たるデーハーアンカー91,91が取り付けられており、このデーハーアンカー91は、係止受け部たる径大な頭部92を有する。
【0047】
前記チェーンブロック82により巻き取り・繰り出しされるチェーン93には、フック94が設けられ、このフック94には吊り治具95が着脱可能に吊設される。図8に示すように、吊り治具95はその中央部95Aに前記フック94を係止する軸部96を有し、その中央部95Aの両側に斜め上向きの腕部95B,95Bを有し、これら腕部95B,95Bの先端側下部に紐状体97(図8)を吊設し、この紐状体97に、デーハーアンカー91の頭部92に係脱可能な係止部たる係止爪部98が連結されている。尚、フック94の上端は水平回動部94A(図8)によりチェーン93に水平回動可能に連結されている。
【0048】
また、前記吊上げ移動手段81の前記駆動用モータ85と前記電源33及び操作盤34とが、給電用ケーブル86により連結され、図2に示すように、給電用ケーブル86の途中に複数の吊り滑車87,87・・・を設け、これら吊り滑車87,87・・・を下弦材53の下のフランジ部53Fに移動可能に吊設している。尚、操作盤34により、走行モータ31,アウトリガー35,スライド駆動機構61及び吊上げ移動手段81を操作可能に構成してもよい。
【0049】
従って、図2の左側に示すように、吊り滑車87,87・・・を近接し、隣り合う吊り滑車87,87の間に給電用ケーブル86を吊下げ、給電用ケーブル86を束ね、ここから吊上げ移動手段81を後側に移動すると、一点鎖線に示すように、給電用ケーブル86が直線状に延びる。尚、図2においては、説明のために符号81を付した吊上げ移動手段81以外に、2台の吊上げ移動手段を図示しているが、実際には、図3に示すように、架設装置21に設ける吊上げ移動手段81は1台である。
【0050】
次に、前記架設装置21を用いたトンネルインバートたるプレキャスト版11の架設方法について説明する。
【0051】
既設のトンネル1のインバートの施工において、路面5がトンネル幅方向中央にセンターライン100Sを有する二車線であれば、施工する車線100Lの隣りの車線100Rの通行を確保して施工を行い、先に施工する車線100Lが最初の施工範囲となる。即ち、トンネル1の路面5をトンネル1の幅方向に複数(2つ)に分割された施工範囲たる車線100L,100Rの一方である車線100Lを、図13に示すように、トンネル長さ方向の複数の単位施工領域が並んだ複数の区画K1,K2・・・に分割して先に施工を行う。尚、車線100Rを先に施工してもよい。この例では、トンネル1の路面5の長さ方向の一部を、2つの区画K1,K2に分割しているが、トンネル1の全長を二分割してもよい。
【0052】
例えば、図13に示したように、第1~第20の単位施工領域R101,R102,R103・・・R120がトンネル長さ方向に並んだ第1の区画K1の隣りに、第1~第20の単位施工領域R201,R202,R203・・・R220が並んだ第2の区画K2を区分する。尚、第1の区画K1の最後の第20の単位施工領域R120は、第2の区画K2の最初の第1の単位施工領域R201にトンネル長さ方向に隣り合う。さらに、トンネル1の長さにより、同様に図示しない第3の区画K3,第4の区画K4・・・がトンネル長さ方向に並ぶ。
【0053】
尚、それら区画と単位施工領域は、n及びmを整数として、第nの区画Knの第mの単位施工領域R(n×100+m)で表される。また、1つのトンネル1において、少なくとも複数(2つ)の区画K1,K2を設けることが好ましい。例えば、第1の区画K1の第12の単位施工領域は、符号R(1×100+12)で、R112となる。
【0054】
また、この例では、区画K1,K2・・・の長さは架設装置21と運搬車両131を並べた長さより長く、こうすることにより、第1の区画K1の第1の単位施工領域R101と第2の区画K2の第1の単位施工領域R201との間に、架設装置21と運搬車両131を配置したり、運搬車両131が隣りの車線100Rに移動したりすることができる。
【0055】
第1の区画K1の第1の単位施工領域R101を掘削して掘削孔6を形成する。掘削孔6は所定枚数である4枚のプレキャスト版11を据え付け可能な長さと幅を有する。そして、架設装置21が走行して第1の単位施工領域R101の掘削孔6の手前の作業位置で停止し、4つのアウトリガー35を降下する。尚、ビーム前張出部51Mは掘削孔6の上方に位置する。また、架設装置21の前記作業位置は、ビーム部材51を用いて掘削孔6にプレキャスト版11を吊り下すことができる位置である。
【0056】
複数のプレキャスト版11を搭載した運搬車両131を、架設装置21の後部まで走行し、一方の施工領域である車線100L内に位置させる。尚、運搬車両131は後ろ向きである。走行手段83により、チェーンブロック82をビーム後張出部51Uに移動し、運搬車両131の荷台132上のプレキャスト版11を吊上げられる位置に、チェーンブロック82を止める。この状態で、架設装置21及び運搬車両131は施工する車線100Lに位置し、隣りの車線100Lの通行を確保することができる。即ち、図5などに示すように、架設装置21は、片方の車線100L内に収まる幅を有し、他方の車線100Rの通行を確保することができる。
【0057】
尚、図1及ぶ図5に示すように、本体22はプレキャスト版11を搭載した前記荷台132を挿入可能な大きさを有し、本体22の内部通路73を運搬車両131が通行可能である。
【0058】
次に、プレキャスト版11の吊上作業として、荷台132上のプレキャスト版11(図9)のデーハーアンカー91に係止爪部98を係止し、チェーンブロック82を駆動して荷台132より上方にプレキャスト版11を吊上げる。
【0059】
この吊上げの後、運搬車両131は前進により後側に移動し、荷台132にプレキャスト版11を搭載している場合は、吊上げたプレキャスト版11が荷台132から外れる位置まで移動して待機し、一方、荷台132にプレキャスト版11が無い場合は、プレキャスト版11がある場所まで移動し、新たに荷台132にプレキャスト版11を積む。
【0060】
運搬車両131が後側に移動したら、荷台132の高さに対応して吊上げていたプレキャスト版11をこれより下げて運搬する。
【0061】
吊上げ移動手段81により吊上げた状態で、図10に示すように、プレキャスト版11は本体22内を通して移送され、ビーム前張出部51Mにおいて、架設位置上にて停止する。この場合、吊上げ後、本体22内を通過するまでは、プレキャスト版11はその幅方向である湾曲方向をトンネル1の長さ方向に合わせた状態で吊られている。
【0062】
本体22内を通過した後、ビーム前張出部51Mの位置において、水平回動部94Aによりプレキャスト版11を平面略90度回転して据え付け状態に向きを合わせる。この後、チェーンブロック82によりプレキャスト版11を掘削孔6の底部の据付位置に吊り下し(図11)、チェーンブロック82の吊り上げが不要になったら、デーハーアンカー91から係止爪部98を外す。
【0063】
このように後側のビーム後張出部51Uにおいて吊上げ移動手段81により荷台132からプレキャスト版11を吊り上げ、本体22内を通してプレキャスト版11をビーム前張出部51Mに移送して吊り下し、掘削孔6の上部に直接移送することができ、この移送の際に架設装置21を移動する必要もなく、掘削孔6への複数のプレキャスト版11の吊下し(吊降ろし)作業を効率よく行うことができる。この場合、ビーム後張出部51Uを張り出して設けることにより、運搬車両131の荷台132を本体22内に挿入する必要がなく、荷台132からのプレキャスト板11の吊上げ作業を簡便に行うことができる。
【0064】
これを繰り返し、1箇所の単位施工領域に所定数である4枚のプレキャスト版11をトンネル長さ方向に並設して吊り下し、他の重量物を吊り下しする必要が無くなったら、支持脚37を上昇して走行車輪23を接地し、架設装置21を走行可能とする。また、後の運搬車両131も架設装置21が後方に移動できるように、他の場所に移動する。尚、プレキャスト版11の所定数は4枚に限定されず、複数(2枚以上)であればよい。
【0065】
走行車輪23を接地した後、上述したように複数の走行車輪23,23,23,23の回転を制御することにより、向きを変えるように架設装置21を旋回し、後退しながら隣りの車線100Rに移り、隣りの第2の区画K2の第1の単位施工領域R201の後方の作業位置に架設装置21を移動し、この作業位置で支持脚37を降下する。
【0066】
第1の区画K1の第1の単位施工領域R101に複数のプレキャスト版11を吊り下ろす吊下作業の後、プレキャスト版11の高さ調整やトンネル長さ方向のプレキャスト版11,11同士の連結などの据付作業を行い、この据付作業後、プレキャスト版11の下面と掘削孔6の底面との間に裏込め材18などを充填する裏込作業を行い、この裏込作業後、掘削孔6を埋戻し材13により埋め戻して路面5を形成する埋戻作業を行い、隣りの第2の単位施工領域R102の掘削作業などが行われる。尚、第2の区画K2で埋め戻した単位施工領域Rの上に、架設装置21が移動可能となる。
【0067】
尚、前記埋戻作業は、複数のプレキャスト版11の全部を埋める必要はなく、一部だけを埋め戻しても良いし、隣りの第2の単位施工領域R102のプレキャスト版11と連結できるように、一部のプレキャスト版11の一部分を露出した状態で残しても良い。
【0068】
吊下作業の後、架設装置21は次の単位施工領域に移動することができるが、据付作業、裏込作業、埋戻作業の施工機械などの重量物を吊上げ移動手段81を用いて移送すると共に、吊り下ろしする場合は、その吊り下ろしが終わった後、架設装置21を次の単位施工領域に移動するようにすればよい。
【0069】
第2の単位施工領域R102の掘削作業は、第2の区画K2に移動した架設装置21が戻って来るまでの間に完了する。また、据付作業,裏込作業,埋戻作業も、架設装置21が戻ってくるまでの間に完了することが好ましいが、それら据付作業,裏込作業,埋戻作業は、トンネル長さ方向の隣り合う複数の単位施工範囲毎に行うようにしても良い。
【0070】
架設装置21が次の施工領域である第2の区画K2の第1の単位施工領域R201の作業位置に移動する前に、この第2の区画K2の第1の単位施工領域R201を掘削して掘削孔6を形成しておく。
【0071】
第2の区画K2の第1の単位施工領域R201においても、第1の単位施工領域R101と同様に、プレキャスト版11の吊り下し作業を行った後、架設装置21を、第1の区画K1の次の単位施工領域である第2の単位施工領域R102の後方の作業位置に移動し、同第1の単位施工領域R101と同様に、プレキャスト版11の吊り下し作業を行った後、架設装置21を、第2の区画K2の次の単位施工領域である第2の単位施工領域R202の後方の作業位置に移動する。これらの場合、架設装置21を、次の単位施工領域である隣りの区画の作業位置への移動を開始し、これまでの作業位置から架設装置21が移動したら、直前にプレキャスト版11を吊り下した単位施工領域の隣りの単位施工領域を掘削して掘削孔6を形成し、これを架設装置21が区画に戻ってくるまで完了する。
【0072】
図14を用いて架設装置21の移動、プレキャスト版11の吊下ろし、掘削孔6の掘削の施工手順について説明する。図14において、中央の太い縦線は、上から下に向かって時間の経過を示す。また、太線の右側は架設装置21の移動・位置及び架設装置21によるプレキャスト版11の吊下作業を示し、太線の左側は掘削孔6の形成について示している。
【0073】
図14に示すように、単位施工領域R101を掘削して掘削孔6を形成(S1)した後、架設装置21が単位施工領域R101の作業位置に到着(S2)する。即ち、作業位置に到着(S2)する前に、掘削孔6を形成(S1)しておく。架設装置21により単位施工領域R101の掘削孔6にプレキャスト版11を吊り下した吊下作業(S3)の後、架設装置21が隣りの区画K2の単位施工領域R201への移動を開始(S4)し、単位施工領域R201の作業位置に到着(S6)し、吊下作業(S7)の後、架設装置21が隣り区画K1の単位施工領域R102への移動を開始(S4)する。
【0074】
尚、吊下作業(S3)の後、架設装置21が移動を開始(S4)する前に、プレキャスト版11の高さ調整・相互の連結などの据付作業を行ったり、据付作業と裏込作業を行ったり、据付作業と裏込作業と埋戻作業を行ったりしてもよく、これらは以下の工程でも同様である。
【0075】
一方、架設装置21が隣りの区画K2の第1の単位施工領域R201の作業位置に到着(S6)する前に、単位施工領域R201を掘削して掘削孔6を形成(S5)する。
【0076】
単位施工領域R201の作業位置に架設装置21が到着(S6)し、単位施工領域R201の掘削孔6における吊下作業(S7)を行った後、架設装置21が隣りの区画K1の単位施工領域R102への移動を開始(S8)し、単位施工領域R202の作業位置に到着(S10)する。
【0077】
一方、単位施工領域R101の作業位置にいた架設装置21が前記移動を開始(S4)した後、即ち単位施工領域R102の掘削が可能になった後であって、単位施工領域R102の作業位置に架設装置21が到着(S10)する前に、単位施工領域R102を掘削して掘削孔6を形成(S9)する。
【0078】
同様に、単位施工領域R102の掘削孔6における吊下作業(S11)の後、架設装置21が隣り区画K2の単位施工領域R202への移動を開始(S12)し、単位施工領域R202の作業位置に到着(S14)する。
【0079】
一方、前記移動を開始(S8)した後であって、単位施工領域R202の作業位置に架設装置21が到着(S14)する前に、単位施工領域R202を掘削して掘削孔6を形成(S12)し、さらに、単位施工領域R103の作業位置に架設装置21が到着する前に、単位施工領域R103を掘削して掘削孔6を形成(S15)し、これらを繰り返して全ての単位基本領域にプレキャスト版11を据え付ける。
【0080】
このようにして一方の車線100Lの施工が完了し、埋戻が完了して一方の車線100Lの通行が可能になったら、同様にして他方の車線100Rの施工を行う。この場合、架設装置21はビーム前張出部51Mとビーム後張出部51Uを有するから、架設装置21を180度旋回する必要はなく、前後を逆にしてそのまま架設作業を行うことができる。
【0081】
このように本実施例では、請求項1に対応して、トンネル1内にトンネルインバート用のプレキャスト版11を据え付けるトンネルインバートの架設装置21において、走行手段たる走行車輪23を有する本体22と、本体22の上部に設けられ、前後方向一側である前側が該本体22から張り出すトンネル1の長さ方向のビーム部材51と、本体22内にプレキャスト版11を吊り下げた状態でビーム部材51に移動可能に設けられた吊上げ移動手段81と、を備えるから、プレキャスト版11の架設位置の上方にビーム部材51の前側を合わせ、本体22の後側で吊上げ移動手段81によりプレキャスト版11を吊上げ、プレキャスト版11を吊り下げた状態で、吊上げ移動手段81をビーム部材51の前側に移動し、架設位置にプレキャスト版11を吊り下すことができるため、複数のプレキャスト版11を連続して吊上げ、移動、吊下しすることができる。
【0082】
このように本実施例では、請求項2に対応して、ビーム部材51の前後方向他側たる後側が本体22から張り出すから、本体22の後側で外側に張り出したビーム部材51の後側で、吊上げ移動手段81によりプレキャスト版11を吊り上げることができる。
【0083】
このように本実施例では、請求項3に対応して、ビーム部材51が本体22の幅方向に移動可能に設けられているから、吊下しの際にプレキャスト版11の本体22の幅方向の位置を調整することができる。また、架設装置21の走行移動時にビーム部材51がトンネル内面に近接することも防止できる。
【0084】
このように本実施例では、請求項4に対応して、走行手段が走行車輪23であり、走行車輪23を本体22の下部の前後左右に設け、それら走行車輪23を独立して回転駆動する回転駆動手段たるモータ31を備えるから、走行車輪23,23,23,23をそれぞれ独立して回転駆動することにより、操舵装置が無くても、旋回することができる。
【0085】
このように本実施例では、請求項5に対応して、請求項1記載のトンネルインバートの架設装置21を用い、ビーム部材51の前後方向他側たる後側で吊上げ移動手段81によりプレキャスト版11を吊上げ、この吊上げた状態で本体22内を通って吊上げ移動手段81をビーム部材51の前後方向一側たる前側に移動し、架設位置にプレキャスト版11を吊り下すから、複数のプレキャスト版11を連続して吊上げ、移動、吊下しすることができる。
【0086】
このように本実施例では、請求項6に対応して、トンネル1の路面5を複数の単位施工領域R101,R102・・・R201,R202・・・がトンネル長さ方向に並んだ複数の区画K1,K2に分割し、区画K1,K2の単位施工領域R101,R102・・・R201,R202・・・を掘削して複数のプレキャスト版11を据え付ける掘削孔6を形成し、架設装置21により掘削孔6に複数のプレキャスト版11を吊り下ろした後、架設装置21を他の区画K2に移動して他の区画K2の掘削孔6に複数のプレキャスト版11,11・・・を吊り下ろし、架設装置21が、区画K1,K2から他の区画K2,K1に移動し、区画K1,K2に戻るまでに、区画K1,K2に掘削孔6を形成するから、単位施工領域Rの掘削孔6にプレキャスト版11を吊り下した後、このプレキャスト版11を吊り下した区画K1,K2とは別の他の区画K2,K1の単位施工領域の掘削を待つことなく、架設装置21を移動して他の区画K2,K1の単位施工領域の掘削孔6にプレキャスト版11を吊り下すことができ、掘削作業による待ち時間がなく、施工性を向上することができる。
【0087】
以下、実施例上の効果として、トンネル1の路面5を該トンネル1の幅方向に分割した複数の施工範囲である車線100L,100Rのいずれかを、複数の単位施工領域がトンネル長さ方向に並んだ複数の区画K1,K2に分割し、第1の区画K1の第1の単位施工領域R101を掘削して複数のプレキャスト版11を据え付ける掘削孔6を形成し、第1の区画K1の第1の単位施工領域R101の作業位置において架設装置21により掘削孔6に複数のプレキャスト版11を吊り下ろした後、架設装置21を移動して第2の区画K2の第1の単位施工領域R201を掘削した掘削孔6に複数のプレキャスト版11を吊り下ろし、架設装置21を第1の区画K1の第1の単位施工領域R101の隣りの第2の単位施工領域R102の作業位置に移動し、この作業位置への移動の前に第1の区画K1の第2の単位施工領域R102を掘削して掘削孔6を形成し、第1の区画K1の第2の単位施工領域R102の掘削孔6にプレキャスト版11を吊り下した後、架設装置21を第2の区画K2の第1の単位施工領域R201の隣りの第2の単位施工領域R201の作業位置に移動し、この作業位置への移動の前に第2の区画K2の第2の単位施工領域R202を掘削して掘削孔6を形成し、架設装置21が、第1の区画K1から第2の区画K2に移動し、第1の区画K1に戻るまでに、第1の区画K1に掘削孔6を形成し、架設装置21が、第2の区画K2から第1の区画K1に移動し、第2の区画K2に戻るまでに、第2の区画K2に掘削孔6を形成するから、単位施工領域の掘削孔6にプレキャスト版11を吊り下した後、このプレキャスト版11を吊り下した単位施工領域の隣りの区画の単位施工領域の掘削を待つことなく、架設装置21を移動して隣りの区画の単位施工領域の掘削孔6にプレキャスト版11を吊り下すことができ、掘削作業による待ち時間がなく、施工性を向上することができる。
【0088】
また、本体22の前後の門型枠26は、縦方向の左右の支柱部27,27の上部に左右方向中央側に傾斜した左右の斜め支柱部28,28を設け、この左右の斜め支柱部28,28の上部を左右方向で水平な横梁部29により連結したから、支柱部と横梁部が直交する門型枠に比べて、横梁部29が短く、この横梁部29により重量物であるビーム部材51を安定して支持することができ、さらに、支柱部と横梁部が直交する門型枠のように、支柱部と横梁部の角部が90度の場合に比べて、斜め支柱部28はトンネル1の内壁体3に近接せずに、本体22を路肩側に近付けて配置することができる。また、斜め支柱部28の支柱部27に対する角度は45度でなく、25度以上、40度以下であるから、トンネル1の幅方向を分割した車線100L,100Rに本体22を配置した場合、斜め支柱部28はトンネル1の内壁体3に近接し難くなる。
【0089】
また、ビーム部材51は、上弦材52と下弦材53との間に斜材54を設けたトラス構造であるから、ビーム前張出部51M及びビーム後張出部51Uが片持ち梁として高い強度を備えると共に、ビーム中央部51Sが両端支持梁として高い強度を備えたものとなる。さらに、トラス構造のビーム部材51の下弦材53をH型鋼から構成し、下弦材53の下フランジ部53Fに、吊上げ移動手段81を移動可能に吊設すると共に、前記下弦材53に吊下げる走行手段83とを備えるから、別途専用レールなどを取り付けることなく、トラス構造のビーム部材51を利用して、該ビーム部材51に効率よく吊上げ移動手段81を取り付けることができる。
【0090】
また、ビーム部材51を左右方向にスライドするスライド駆動機構61は、ビーム部材51に固定した移動体62,62を、前後の門型枠26,26の横梁部29,29に左右方向移動可能に設け、前後の移動体62,62を左右に駆動するスライド駆動機構61,61は、1台の原動機たるモータ71により回転する前後の回転軸72,72を備え、これら前後のモータ71,71により、前後のスライド駆動機構61,61を同期して駆動するから、長尺で重たいビーム部材51を安定して横移動させることができる。
【0091】
また、吊上げ移動手段81は、プレキャスト版11を吊った状態で、前後方向両端に縦材56,56の位置で移動し、下弦材53に縦材56の位置より延長した下弦材延長部53Eを設け、図2に示すように、給電用ケーブル86の途中に複数の吊り滑車87,87・・・を設け、これら吊り滑車87,87・・・を下弦材53の下のフランジ部53Fに移動可能に吊設したから、図2の左側に示すように、吊り滑車87,87・・・を近接し、隣り合う吊り滑車87,87の間に給電用ケーブル86の吊下げ、給電用ケーブル86を束ね、ここから吊上げ移動手段81を後側に移動すると、一点鎖線に示すように、給電用ケーブル86が直線状に延び、ビーム部材51に沿って移動する吊上げ移動手段81に給電することができる。
【実施例0092】
図15は本発明の実施例2を示し、前記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述すると、この例では、架設装置21のビーム部材51には、ビーム後張出部51Uが設けられておらず、本体22内の後側左右で、支柱部27の前面と中央連結部材41の下面と斜材43の上面の間に、実施例1には無いカウンターウエイト30が設けられている。
【0093】
このように本体22の後側にカウンターウエイト30を設けることにより、図15に示すように、ビーム部材51の前側のみが突出し、その前側にプレキャスト版11を吊設しても架設装置21の安定性を確保することができる。
【0094】
また、ビーム部材51の後側に荷台132からプレキャスト版11を吊上げる際には、図1などに示したように、本体22内に荷台132の一部を挿入し、その荷台132のプレキャスト版11をビーム中央部51Sにおいて吊上げることできる。この例のようにビーム後張出部51Uの無いビーム部材51においては、ビーム中央部51Sがビーム部材51の前後方向他側である後側となる。
【0095】
このように本実施例では、請求項2以外の請求項に対応して、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0096】
また、ビーム後張出部51Uの分だけ架設装置21を短くできるため、トンネル長さ方向に制約のある現場での使用に適したものとなる。さらに、図3に示したように、ビーム中央部51Sとビーム後張出部51Uとは連結手段たるボルト・ナット(図示せず)などにより着脱可能に設けられているから、ビーム後張出部51Uを着脱することにより、必要に応じてビーム部材51の長さを調整することができる。また、本体22内には荷台132が挿入可能であるから、本体22内において荷台132からプレキャスト版11を吊上げることができる。
【実施例0097】
図16は本発明の実施例3を示し、前記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。
【0098】
図16は施工工程の平面説明図であり、図16(A)に示すように、第1の区画K1の第1の単位基本領域R101の掘削作業を行う。
【0099】
単位施工領域R101の掘削後(図16(A))、図16(B)に示すように、架設装置21が第1の単位施工領域R101の作業位置に移動し、その掘削孔6にプレキャスト版11を吊り下ろす吊下作業の後、プレキャスト版11の高さ調整やトンネル長さ方向のプレキャスト版11,11同士の連結などの据付作業を行い、この据付作業後、プレキャスト版11の下面と掘削孔6の底面との間に裏込め材18などを充填する裏込作業を行う。そして、これら吊下作業、据付作業、裏込作業がプレキャスト版11の架設作業であり、架設作業後の単位施工領域にハッチングを付している。また、第1の単位施工領域R101の据付作業中に第2の区画K2の第1の単位施工領域R201の掘削作業を行う。
【0100】
単位施工領域R101の架設作業の後であって、単位施工領域R201の掘削作業後(図16(B))、図16(C)に示すように、架設装置21が第2の区画K2の第1の単位施工領域R201の作業位置に移動し、その掘削孔6にプレキャスト版11を架設する架設作業を行う。また、単位施工領域R201の架設作業中に、第1の区画K1の第1の単位施工領域R101の埋戻し作業と、第2の単位施工領域R102の掘削作業を行う。尚、埋戻し後の単位施工領域にクロスハッチングを付している。また、単位施工領域R201の架設作業中であっても、架設作業に吊上げ移動手段81を使う必要が無くなったら、単位施工領域R102の掘削後、架設装置21は隣りの単位施工領域R102の作業位置(図16(D))に移動してもよく、図16(B)に示す工程や以下の各工程でも同様である。据付作業に吊上げ移動手段81を使う必要が無くなるとは、作業に吊上げ移動手段81を用いて運搬するものが無くなったり、他の重機を使用したりする場合である。
【0101】
単位施工領域R201の架設作業の後であって、単位施工領域R102の掘削後、図16(D)に示すように、架設装置21が単位施工領域R102の作業位置に移動し、その掘削孔6にプレキャスト版11の架設作業を行い、同時に第2の区画K2の第1の単位施工領域R201の埋戻作業と第2の単位施工領域R202の掘削作業を行う。
【0102】
単位施工領域R102の架設作業の後であって、単位施工領域R202の掘削作業後、図16(E)に示すように、架設装置21は単位施工領域R202の作業位置に移動し、その掘削孔6にプレキャスト版11を据え付ける据付作業を行う。また、第2の単位施工領域R202の架設作業中に、第1の区画K1の第2の単位施工領域R102の埋戻作業と第3の単位施工領域R203の掘削作業を行う。
【0103】
これらの作業工程を繰り返して区画K1,K2の全ての単位施工領域にプレキャスト版11を架設して埋め戻す。
【0104】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0105】
また、図16(D)(E)に示すように、一方の区画K1,K2で架設作業を行い、この間に他方の区画K2,K1で埋戻作業と掘削作業を行うから、架設作業を行う作業者と、埋戻作業及び掘削作業を行う作業者を分けて、効率よく作業を行うことができる。
【0106】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、ビーム部材はトラス構造に限らず、各種の構造を採用できる。また、スライド駆動機構は、実施例に限定されず、ビーム部材をトンネル幅方向に移動できるように駆動する機構であれば、各種のものを用いることができる。さらに、施工領域を3以上の区画に分割してもよい。また、トンネルの全長を区画K1,K2に区画したり、トンネルの全長を複数の区画K1,K2に区画したりすることができる。
【符号の説明】
【0107】
1 アーチ形トンネル
5 路面
6 掘削孔
7 インバート
11 プレキャスト版(トンネルインバート)
21 架設装置
22 本体
23 走行車輪(走行手段)
51 ビーム部材
61 スライド駆動機構
81 吊上げ移動手段
100L 車線(施工領域)
100R 車線(施工領域)
K1,K2 区画(他の区画)
R101,R102,R103・・・ 単位施工領域
R201,R202,R203・・・ 単位施工領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16