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特開2024-33376信号方位表示処理装置、信号処理システム、信号方位表示処理方法および信号方位表示処理方法のプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033376
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】信号方位表示処理装置、信号処理システム、信号方位表示処理方法および信号方位表示処理方法のプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/84 20060101AFI20240306BHJP
   G01S 7/62 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G01S3/84
G01S7/62 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136916
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】隈 拓海
(72)【発明者】
【氏名】大野 広祥
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA05
5J083AB12
5J083AC29
5J083AD18
5J083CA09
5J083CA12
5J083EA03
5J083EA08
5J083EA09
5J083EA27
(57)【要約】
【課題】目標の到来水平方位およびふ仰角並びに目標数を、より明確に表示させることができる信号方位表示処理装置などを得る。
【解決手段】目標信号が到来する水平方位およびふ仰角を表示する処理を行う信号方位表示処理装置300であって、目標信号の水平整相処理結果に基づいて、円錐座標系の2次元変換データに変換処理を行うELAZ補間処理部320と、目標信号が極大となる信号レベルを含む円錐座標系における目標信号の到来方位情報に係るデータを生成する目標検出処理部330と、目標信号の到来方位情報を変換する座標変換処理部340と、水平方位-ふ仰角座標系による到来方位情報に基づき、信号レベルを、対応する水平方位およびふ仰角の位置にプロットする表示データを生成する表示処理部350とを備えるものである。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標により発せられる目標信号が到来する水平方位およびふ仰角を表示する処理を行う信号方位表示処理装置であって、
前記水平方位と前記ふ仰角とによる水平方位-ふ仰角座標系の座標で表される前記目標信号の水平整相処理結果に基づいて、円錐座標系の2次元変換データに変換処理を行う補間処理部と、
前記2次元変換データに基づいて、前記目標信号が極大となる信号レベルを含む前記円錐座標系における前記目標信号の到来方位情報に係るデータを生成する目標検出処理部と、
前記円錐座標系による前記目標信号の前記到来方位情報を、前記水平方位-ふ仰角座標系による前記目標信号の前記到来方位情報に変換する座標変換処理部と、
前記水平方位-ふ仰角座標系による前記到来方位情報に基づき、前記信号レベルを、対応する前記水平方位および前記ふ仰角の位置にプロットして表示装置に表示させる表示データを生成する表示処理部と
を備える信号方位表示処理装置。
【請求項2】
前記補間処理部は、
前記水平整相処理結果を並び替えて並び替えデータを生成する処理部と、
前記円錐座標系の前記2次元変換データに対応する前記水平方位-ふ仰角座標系の座標を算出する座標変換元算出処理部と、
前記並び替えデータに基づき、前記座標変換元算出処理部が算出した座標における前記信号レベルを算出する補間処理を行う変換処理部と
を有する請求項1に記載の信号方位表示処理装置。
【請求項3】
目標により発せられる目標信号が到来する水平方位およびふ仰角を表示する処理を行う信号方位表示処理装置であって、
前記目標信号の主極の広がりにおける曲線上の点における前記水平方位と信号レベルとの関係を示すデータを、θ-φ座標変換テーブルとして記憶する記憶部と、
前記θ-φ座標変換テーブルに基づいて、水平方位-ふ仰角座標系の座標で表される前記目標信号の水平整相処理結果に対応する前記水平方位における前記信号レベルを求め、前記水平方位と前記信号レベルとの関係を表す2次元データを生成するビーム応答処理部と、
前記2次元データに基づいて、前記目標信号が極大となる前記信号レベルを含む前記目標信号の到来方位情報に係るデータを生成する目標検出処理部と、
前記到来方位情報に基づき、前記信号レベルを、対応する前記水平方位および前記ふ仰角の位置にプロットして表示装置に表示させる表示データを生成する表示処理部と
を備える信号方位表示処理装置。
【請求項4】
前記目標検出処理部は、前記2次元データに対して、前記水平方位ごとに前記ふ仰角の方向における最大レベルを算出する最大値処理および前記最大レベルの極大値となる極大レベルを算出する極大値処理を行って、前記目標信号の前記到来方位情報および前記信号レベルに係るデータを生成する請求項3に記載の信号方位表示処理装置。
【請求項5】
複数の受波器を有し、受波に係る受波信号を出力する受波器アレイと、
前記受波信号に基づいて、目標により発せられる目標信号に係る整相処理を行う信号処理装置と、
請求項1または請求項3に記載の信号方位表示処理装置と、
信号方位表示処理装置が処理を行って生成した表示データを含む表示信号に基づいて表示を行う表示装置と
を有する信号処理システム。
【請求項6】
目標により発せられる目標信号が到来する水平方位およびふ仰角を表示する処理を行う信号方位表示処理方法であって、
前記水平方位と前記ふ仰角とによる水平方位-ふ仰角座標系の座標で表される前記目標信号の水平整相処理結果に基づいて、円錐座標系の2次元変換データに変換処理を行う補間処理工程と、
前記2次元変換データに基づいて、前記目標信号が極大となる信号レベルを含む前記円錐座標系における前記目標信号の到来方位情報に係るデータを生成する目標検出処理工程と、
前記円錐座標系による前記目標信号の前記到来方位情報を、前記水平方位-ふ仰角座標系による前記目標信号の前記到来方位情報に変換する座標変換処理工程と、
前記水平方位-ふ仰角座標系による前記到来方位情報に基づき、前記信号レベルを、対応する前記水平方位および前記ふ仰角の位置にプロットして表示装置に表示させる表示データを生成する表示処理工程と
を有する信号方位表示処理方法。
【請求項7】
目標により発せられる目標信号が到来する水平方位およびふ仰角を表示する処理を行う信号方位表示処理方法であって、
前記目標信号の主極の広がりにおける曲線上の点における前記水平方位と信号レベルとの関係を示すデータを記憶するθ-φ座標変換テーブルに基づいて、水平方位-ふ仰角座標系の座標で表される前記目標信号の水平整相処理結果に対応する前記水平方位における前記信号レベルを求め、前記水平方位と前記信号レベルとの関係を表す2次元データを生成するビーム応答処理工程と、
前記2次元データに基づいて、前記目標信号が極大となる前記信号レベルを含む前記目標信号の到来方位情報に係るデータを生成する目標検出処理工程と、
前記到来方位情報に基づき、前記信号レベルを、対応する前記水平方位および前記ふ仰角の位置にプロットして表示装置に表示させる表示データを生成する表示処理工程と
を有する信号方位表示処理方法。
【請求項8】
目標により発せられる目標信号が到来する水平方位およびふ仰角を表示する処理を行う信号方位表示処理方法のプログラムであって、
前記水平方位と前記ふ仰角とによる水平方位-ふ仰角座標系の座標で表される前記目標信号の水平整相処理結果に基づいて、円錐座標系の2次元変換データに変換処理を行う補間処理工程と、
前記2次元変換データに基づいて、前記目標信号が極大となる信号レベルを含む前記円錐座標系における前記目標信号の到来方位情報に係るデータを生成する目標検出処理工程と、
前記円錐座標系による前記目標信号の前記到来方位情報を、前記水平方位-ふ仰角座標系による前記目標信号の前記到来方位情報に変換する座標変換処理工程と、
前記水平方位-ふ仰角座標系による前記到来方位情報に基づき、前記信号レベルを、対応する前記水平方位および前記ふ仰角の位置にプロットして表示装置に表示させる表示データを生成する表示処理工程と
をコンピュータに行わせる信号方位表示処理方法のプログラム。
【請求項9】
目標により発せられる目標信号が到来する水平方位およびふ仰角を表示する処理を行う信号方位表示処理方法のプログラムであって、
前記目標信号の主極の広がりにおける曲線上の点における前記水平方位と信号レベルとの関係を示すデータを記憶するθ-φ座標変換テーブルに基づいて、水平方位-ふ仰角座標系の座標で表される前記目標信号の水平整相処理結果に対応する前記水平方位における前記信号レベルを求め、前記水平方位と前記信号レベルとの関係を表す2次元データを生成するビーム応答処理工程と、
前記2次元データに基づいて、前記目標信号が極大となる前記信号レベルを含む前記目標信号の到来方位情報に係るデータを生成する目標検出処理工程と、
前記到来方位情報に基づき、前記信号レベルを、対応する前記水平方位および前記ふ仰角の位置にプロットして表示装置に表示させる表示データを生成する表示処理工程と
をコンピュータに行わせる信号方位表示処理方法のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、信号方位表示処理装置、信号処理システム、信号方位表示処理方法および信号方位表示処理方法のプログラムに関するものである。特に、受波器が受信した目標物が発する信号の到来方位などを表示する処理に係るものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、複数の受波器を有するソーナーなどの受波器アレイが受信した音などの受信信号に基づく整相処理などを行い、目標となる対象物の特定、目標の方位推定などを行う信号処理装置(ソーナー装置)などがある。そして、信号処理装置が処理して得たデータに基づき、目標が発する信号の到来水平方位および到来ふ仰角並びに目標の水平方向における移動方向および方位変化量などを表示装置に表示する。
【0003】
到来水平方位などを表示装置に表示する方法として、水平方位ごとおよびふ仰角ごとに信号レベルを濃淡表示したELAZ(Elevation-Azimuth:ふ仰角-水平方位)表示する方法がある。また、水平方位毎の信号の強度を時系列に濃淡表示したBTR(Bearing-Time-Recorder)表示を、指定したふ仰角に応じて表示する方法がある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-091300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ELAZ表示と指定したふ仰角に応じたBTR表示とについて説明する。信号処理装置は、受波器アレイが受波した信号に対して、複数の異なるふ仰角に対して水平整相処理を行い、ふ仰角ごとに水平整相処理結果BL(Bearing-Level)のデータを生成する。信号処理装置が生成したふ仰角ごとの水平整相処理結果BLを、ふ仰角順に並べてふ仰角×水平方位の2次元データとして構成する。さらに、信号の強度を濃淡に変換して、水平方位を横軸とし、ふ仰角を縦軸としたELAZ表示を行う。一方、指定したふ仰角における水平整相処理結果BLを、時系列に並べて2次元データを構成し、信号の強度を濃淡に変換して、水平方位を横軸とし、時系列を縦軸としたBTR表示を行う。したがって、オペレータは、表示装置に表示されたELAZ表示を確認することで、目標から発せられた信号の到来方位を把握することができる。また、オペレータは、BTR表示から目標の水平方向における移動方向や方位変化量を把握することができる。
【0006】
図1は、ELAZ表示の一例を示す図である。受波器アレイは、水平方向のアレイ長が40mおよびふ仰方向のアレイ長が3mにわたって複数の受波器が矩形状に配列された平面アレイである。平面アレイの水平方位のブロードサイドは90度の方向、ふ仰角のブロードサイドは0度の方向であり、ビーム間隔は水平方向とふ仰方向で1度間隔に形成している。図1における表示は、平面アレイが到来水平方位が60度、ふ仰角が40度の信号と到来水平方位30度、ふ仰角が20度の目標から発せられた信号を受波したものをELAZ表示したものである。
【0007】
図2は、図1に係るELAZ表示のふ仰角10度ごとの水平整相処理結果BLを表示した図である。図2に示すレベルのピークのうち、ふ仰角40度のBLデータの水平方位60度にあるピークおよびふ仰角20度のBLデータの水平方位30度にあるピークが本当の目標による信号レベルのピークである。一方、本当の目標によるピークの水平方位に対して、異なる水平方位にも、ふ仰角のBLごとにピークが表示されていることが分かる。これらのピークは、ふ仰角40度とふ仰角20度の目標信号の主極の広がりによって生じる偽目標からのピークとなる。このため、水平整相処理結果BLを時系列に並べてふ仰角ごとのBTR表示をした場合には、指定したふ仰角によって、目標の到来水平方位が異なる表示となる。
【0008】
以上のように、目標信号における主極の広がりによって、ふ仰角によって異なる水平方位に、目標からのピークが現れる表示がなされると、オペレータが、目標の到来水平方位およびふ仰角、目標数などを誤認識してしまう可能性がある。
【0009】
そこで、目標の到来水平方位およびふ仰角並びに目標数を、より明確に表示させる処理を行うことができる信号方位表示処理装置、信号処理システム、信号方位表示処理方法および信号方位表示処理方法のプログラムの実現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この開示に係る信号方位表示処理装置は、目標により発せられる目標信号が到来する水平方位およびふ仰角を表示する処理を行う信号方位表示処理装置であって、水平方位とふ仰角とによる水平方位-ふ仰角座標系の座標で表される目標信号の水平整相処理結果に基づいて、円錐座標系の2次元変換データに変換処理を行う補間処理部と、2次元変換データに基づいて、目標信号が極大となる信号レベルを含む円錐座標系における目標信号の到来方位情報に係るデータを生成する目標検出処理部と、円錐座標系による目標信号の到来方位情報を、水平方位-ふ仰角座標系による目標信号の到来方位情報に変換する座標変換処理部と、水平方位-ふ仰角座標系による到来方位情報に基づき、信号レベルを、対応する水平方位およびふ仰角の位置にプロットして表示装置に表示させる表示データを生成する表示処理部とを備えるものである。
【0011】
また、開示に係る信号処理システムは、複数の受波器を有し、受波に係る受波信号を出力する受波器アレイと、受波信号に基づいて、目標により発せられる目標信号に係る整相処理を行う信号処理装置と、上記の信号方位表示処理装置と、信号方位表示処理装置が処理を行って生成した表示データを含む表示信号に基づいて表示を行う表示装置とを有するものである。
【0012】
また、開示に係る信号方位表示処理方法は、目標により発せられる目標信号が到来する水平方位およびふ仰角を表示する処理を行う信号方位表示処理方法であって、水平方位とふ仰角とによる水平方位-ふ仰角座標系の座標で表される目標信号の水平整相処理結果に基づいて、円錐座標系の2次元変換データに変換処理を行う補間処理工程と、2次元変換データに基づいて、目標信号が極大となる信号レベルを含む円錐座標系における目標信号の到来方位情報に係るデータを生成する目標検出処理工程と、円錐座標系による目標信号の到来方位情報を、水平方位-ふ仰角座標系による目標信号の到来方位情報に変換する座標変換処理工程と、水平方位-ふ仰角座標系による到来方位情報に基づき、信号レベルを、対応する水平方位およびふ仰角の位置にプロットして表示装置に表示させる表示データを生成する表示処理工程とを有するものである。
【0013】
また、開示に係る信号方位表示処理方法のプログラムは、目標により発せられる目標信号が到来する水平方位およびふ仰角を表示する処理を行う信号方位表示処理方法のプログラムであって、水平方位とふ仰角とによる水平方位-ふ仰角座標系の座標で表される目標信号の水平整相処理結果に基づいて、円錐座標系の2次元変換データに変換処理を行う補間処理工程と、2次元変換データに基づいて、目標信号が極大となる信号レベルを含む円錐座標系における目標信号の到来方位情報に係るデータを生成する目標検出処理工程と、円錐座標系による目標信号の到来方位情報を、水平方位-ふ仰角座標系による目標信号の到来方位情報に変換する座標変換処理工程と、水平方位-ふ仰角座標系による到来方位情報に基づき、信号レベルを、対応する水平方位およびふ仰角の位置にプロットして表示装置に表示させる表示データを生成する表示処理工程とをコンピュータに行わせるものである。
【発明の効果】
【0014】
開示に係る信号方位表示処理装置などによれば、目標信号を整相処理した水平整相処理結果に基づき、目標信号において極大となる信号レベルおよび水平方位およびふ仰角を検出し、表示データを生成して表示装置に表示させることができる。したがって、目標の方位などは、目標信号の主極の広がりとして表示されないものとなる。したがって、オペレータが、目標の到来水平方位および到来ふ仰角の誤認識および目標数の誤認識を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ELAZ表示の一例を示す図である。
図2図1に係るELAZ表示のふ仰角10度ごとの水平整相処理結果BLを表示した図である。
図3】目標信号における主極の広がりについて説明する図である。
図4】座標変換による目標信号における主極の形状について説明する図である。
図5】各種座標系による目標と受波器アレイとの位置関係を示す図である。
図6】実施の形態1に係る信号方位表示処理装置300を中心とする信号処理システムの構成を示す図である。
図7】実施の形態1に係る表示装置400が表示する表示例を示す図である。
図8】実施の形態1に係る信号方位表示処理装置300の処理の流れを説明する図である。
図9】実施の形態1の表示処理部350における処理の一例を示す図である。
図10】実施の形態2に係る信号処理システムにおける受波器アレイ100の構成について説明する図である。
図11】実施の形態2に係る信号処理システムにおいて、y軸方向に湾曲した平面アレイによるふ仰角ごとの水平整相出力の一例を示す図である。
図12】実施の形態2に係るθ-φ座標変換テーブル371について説明する図である。
図13】実施の形態2に係るθ-φ座標変換テーブル371の作成の流れを説明する図である。
図14】目標方位(θ(m),0)におけるビーム応答ELAZによる表示の一例を示す図である。
図15】実施の形態2に係る信号処理システムの構成を示す図である。
図16】実施の形態2のビーム応答処理部380における信号レベル作成処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態に係る信号方位表示処理装置などについて、図面などを参照しながら説明する。以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。また、図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。そして、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。明細書に記載された機器がすべて含まれていなくてもよい場合がある。特に構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。また、添字で区別などしている複数の同種の機器などについて、特に区別したり、特定したりする必要がない場合には、符号、添字などを省略して記載する場合がある。
【0017】
実施の形態1.
目標が発する音波などにより得られる信号(以下、目標信号という)を処理し、到来方位などを表示する実施の形態1の信号処理システムにおいて、後述する信号方位表示処理装置300が行う表示に係る処理の概要について説明する。
【0018】
図3は、目標信号における主極の広がりについて説明する図である。信号処理システムが目標信号の到来方位などを表示するには、目標信号における信号レベルのピークに対応する水平方位とふ仰角とにおけるそれぞれの値を取得する必要がある。図3に示すように、横軸を水平方位θ[rad]とし、縦軸をふ仰角φ[rad]とする極座標系に基づいて、整相処理した目標信号について、水平方位θとふ仰角φとの関係をグラフにより表示する。このとき、グラフにおいて、目標信号は、主極が湾曲してふ仰方向にわたって広がる形状に表示される。したがって、信号処理システムにおいて、目標信号における信号レベルのピークを検出する際には、目標信号の広がりに沿って走査しなければならない。ここで、水平方位θおよびふ仰角φによる極座標系を、水平方位―ふ仰角座標系とする。
【0019】
図4は、座標変換による目標信号における主極の形状について説明する図である。整相処理した目標信号の主極について、図3のような水平方位―ふ仰角座標系から、後述する図5に示すsinξを横軸とし、ψを縦軸とする極座標系に座標変換する。図4に示すように、座標変換することにより、目標信号の主極が、ψ方向に沿うような直線状に表示される。このため、ψ方向に沿った直線上を走査することによって、目標信号のピークを検出できるようになる。ここで、横軸をsinξとし、縦軸をψとする極座標系を、円錐座標系とする。
【0020】
円錐座標系において、目標信号到来方位を示す信号レベルのピーク点を算出するため、(θ,φ)等間隔の2次元データを、(sinξ,ψ)等間隔の2次元データに変換する必要がある。そこで、実施の形態1では、後述する信号方位表示処理装置300が、(sinξ,ψ)等間隔に相当する(θ’,φ’)座標を求める。また、信号方位表示処理装置300は、(θ,φ)等間隔の2次元データの座標系で補間し、補間した値を(sinξ,ψ)等間隔の2次元データの座標系に等間隔で並べる。その後、信号方位表示処理装置300は、ピーク点の座標を、円錐座標系(sinξ,ψ)で推定する。そして、信号方位表示処理装置300は、ピーク点の座標(sinξ,ψ)を、再度(θ,φ)座標に変換し、目標の到来方位(θ,φ)を得る。
【0021】
図5は、各種座標系による目標と受波器アレイ100との位置関係を示す図である。次に、水平方位-ふ仰角座標系と円錐座標系との間における座標変換の原理について説明する。図5に示すように、xz平面内(y=0)に、後述する受波器アレイ100として、矩形状の平面アレイが配置されているものとする。そして、平面アレイが受信した信号を用いて、水平方位θ(xy面内でx軸からの角度)、ふ仰角φ(xy平面からの角度)に整相する場合の指向性は、x軸からの角度がξの円錐面に沿って形成されるものとする。このとき、円錐頂点からの距離r=1の円錐面内の座標を、円錐座標系によって(sinξ,ψ)とすると、水平方位-ふ仰角座標系上の点(θ,φ)と円錐座標上の点(sinξ,ψ)との関係は、次式(1)および次式(2)で表される。
【0022】
【数1】
【0023】
【数2】
【0024】
円錐座標系の空間では、目標信号の主極がsinξに直交したものになる。逆に、円錐座標系から、水平方位-ふ仰角座標系への変換は、次式(3)および次式(4)で表される。以上のような関係に基づき、実施の形態1の信号処理システムは、整相処理に係るデータを水平方位-ふ仰角座標系から円錐座標系に座標変換して目標信号のピーク点を検出する。そして、ピーク点を円錐座標系から水平方位-ふ仰角座標系に座標変換することで、目標の水平方位などを明確にする表示処理を行う。
【0025】
【数3】
【0026】
【数4】
【0027】
図6は、実施の形態1に係る信号方位表示処理装置300を中心とする信号処理システムの構成を示す図である。図6に示すように、実施の形態1の信号処理システムは、受波器アレイ100、信号処理装置200、信号方位表示処理装置300および表示装置400を有する。
【0028】
受波器アレイ100は、信号を受波する複数の受波器(図示せず)を有するソーナーなどの機器であり、受波器が受波した受波信号を、信号処理装置200に送信する。受波信号には、目標が発する目標信号が含まれる。ここで、実施の形態1における受波器アレイ100は、複数の受波器が矩形状に配列された平面アレイであるものとする。受波器は、前述した図5に示すように、平面アレイの中心を原点とする直交座標系において、xz平面上に配列される。
【0029】
信号処理装置200は、整相処理装置などを有し、受波器アレイ100が受信した受波信号を、設定されたふ仰角ごとに整相処理する。そして、信号処理装置200は、水平整相処理結果BF(m)(n=1~N、m=1~M)のデータを含む整相信号を出力する。ここで、Nは、整相ふ仰角数であり、また、Mは、設定された水平方位数である。
【0030】
信号方位表示処理装置300は、入力端子部310、ELAZ補間処理部320、目標検出処理部330、座標変換処理部340、表示処理部350、出力端子部360および記憶部370を有する。
【0031】
入力端子部310は、信号処理装置200が出力した整相信号を受信する端子である。前述したように、入力端子部310を介して、整相信号中の水平整相処理結果BF(m)のデータがELAZ補間処理部320に入力される。図6では、入力端子部310は、N個の入力端子を有するものとしているが、入力端子数を限定するものではない。
【0032】
ELAZ補間処理部320は、水平整相処理結果BF(m)のデータに基づいて、補間および変換処理を行い、2次元変換データELcone(p,q)(p=1~P、q=1~Q)を生成する。ここで、Pは、sinξ軸方向のデータ数であり、また、Qは、ψ軸方向のデータ数である。ELAZ補間処理部320は、並び替え処理部321、座標変換元算出処理部322および変換処理部323を有する。並び替え処理部321、座標変換元算出処理部322および変換処理部323については、後述する。
【0033】
目標検出処理部330は、2次元変換データELcone(p,q)に基づいて、目標の検出を行い、円錐座標系における目標信号の到来方位情報のデータ(以下、円錐座標系到来方位情報という)を生成する目標検出処理工程を行う。ここで、円錐座標系到来方位情報は、到来する目標信号に係るsinξ情報CK(t)およびψ情報CP(CK(t))並びに信号レベルCD(t)(t=1~T)である。Tは、信号検出数である(以下、同じ)。
【0034】
座標変換処理部340は、円錐座標系到来方位情報のデータに基づいて、円錐座標系から水平方位-ふ仰角座標系への座標変換処理を行う。そして、座標変換処理部340は、水平方位-ふ仰角座標系における到来方位情報(以下、方位座標系到来方位情報という)のデータを生成する座標変換処理工程を行う。方位座標系到来方位情報は、到来する目標信号に係る水平方位情報CS(t)およびふ仰角情報CH(t)並びに対応する信号レベルCD(t)(t=1~T)である。
【0035】
表示処理部350は、方位座標系到来方位情報のデータに基づいて表示処理を行う。表示処理部350は、表示処理を行って、到来水平方位の時間変化を表すBTR表示と到来ふ仰角の時間変化を表すETR(Elevation-Time-Recorder)表示とによる表示データを生成する表示処理工程を行う。そして、出力端子部360は、表示処理部350が処理して生成した表示データを含む表示信号を出力する。
【0036】
ここで、信号方位表示処理装置300は、ハードウェアとしては、通常、たとえば、CPU(Central Processing Unit)を中心とするコンピュータなどの制御演算処理を行う制御演算装置を有する。そして、前述したELAZ補間処理部320、目標検出処理部330、座標変換処理部340および表示処理部350は、制御演算装置が各部が行う処理方法の工程手順をあらかじめプログラム化したものを実行して、各部の処理工程を実現する。ここで、プログラムは、たとえば、後述する記憶部370がデータを有する。ただし、ハードウェアの構成は、このような構成に限定するものではなく、各部を別個に専用機器で構成するなどしてもよい。
【0037】
記憶部370は、信号方位表示処理装置300の各部が処理を行う際に必要となるデータを記憶する。記憶部370は、ELAZ補間処理部320、目標検出処理部330、座標変換処理部340および表示処理部350が各部の処理を行う際に用いるデータを記憶する。記憶部370は、データを一時的に記憶できるランダムアクセスメモリ(RAM)などの揮発性記憶装置(図示せず)およびデータを長期的に記憶できるフラッシュメモリなどの不揮発性の補助記憶装置(図示せず)を有する。また、記憶部370は、前述したように、プログラムを記憶し、ELAZ補間処理部320、目標検出処理部330、座標変換処理部340および表示処理部350が、プログラムに基づいて処理工程を実行して、各部が行う処理を実現する。
【0038】
図7は、実施の形態1に係る表示装置400が表示する表示例を示す図である。ここで、図7(a)は、BTR表示を示す。また、図7(b)は、ETR表示を示す。図7において、縦軸の0[sec]が最新の時間を表している。表示装置400は、信号方位表示処理装置300から送られる表示信号に基づいて、表示を行う。
【0039】
図8は、実施の形態1に係る信号方位表示処理装置300の処理の流れを説明する図である。次に、実施の形態1における信号方位表示処理装置300が行う処理工程について、さらに詳細に説明する。
【0040】
ELAZ補間処理部320は、入力端子部310を介して送られた整相信号中の水平整相処理結果BF(m)のデータを処理する。ELAZ補間処理部320は、補間処理工程を実現するため、前述したように、並び替え処理部321、座標変換元算出処理部322および変換処理部323を有する。
【0041】
ELAZ補間処理部320の並び替え処理部321は、水平整相処理結果BF(m)のデータを、ふ仰方向について並べ替えを行う並べ替え処理を行う(ステップS1)。ここで、並び替え処理部321が並び替えた水平方位-ふ仰角座標系の2次元データを並び替えデータELθ-φ(m,n)とする。並び替えデータELθ-φ(m,n)は、次式(5)で表される。
【0042】
【数5】
【0043】
一方、座標変換元算出処理部322は、変換先となる円錐座標系の点(sinξ(p),ψ(q))の座標変換元となる水平方位-ふ仰角座標系の座標(θ’(p,q),φ’(p,q))を求める座標変換元算出処理を行う(ステップS2)。座標変換元算出処理部322は、前述した式(3)および(4)の原理を用いた次式(6)および(7)に基づいて、座標(θ’(p,q),φ’(p,q))を求めることができる。ここで、座標変換元算出処理部322は、並べ替え処理よりも前に座標変換元算出処理を行い、座標(θ’(p,q),φ’(p,q))を求めておいてもよい。
【0044】
【数6】
【0045】
【数7】
【0046】
変換処理部323は、並び替えデータELθ-φ(m,n)に基づいて、座標変換元算出処理部322が求めた座標(θ’(p,q),φ’(p,q))における目標信号のレベルを、補間処理によって求める(ステップS3)。ここで、実施の形態1においては、変換処理部323は、バイリニア法で補間処理を行うものとする。したがって、変換処理部323は、座標(θ’(p,q),φ’(p,q))に対して、最近傍である4点[ELθ-φ(m,n),ELθ-φ(m+1,n),ELθ-φ(m,n+1),ELθ-φ(m+1,n+1)]に基づいて補間処理を行う。変換処理部323は、水平方位-ふ仰角座標系のレベルを表す並び替えデータELθ-φ(m,n)に基づく補間を行い、円錐座標系の点(sinξ(p),ψ(q))のレベルを表す2次元変換データELcone(p,q)に座標系を変換することができる。
【0047】
2次元変換データELcone(p,q)は、次式(8)によって算出される。ここで、BIL[]は、バイリニア法を用いた補間処理を表す。第1引数は座標変換元の2次元データ、第2引数は補間によって得られた座標である。以上のようにして、ELAZ補間処理部320は、2次元変換データELcone(p,q)を生成する。2次元変換データELcone(p,q)は、目標検出処理部330が行う処理で用いられる。
【0048】
【数8】
【0049】
目標検出処理部330は、変換処理部323が演算して得られた2次元変換データELcone(p,q)に対して、sinξ(p)ごとに、ψ方向におけるレベルの最大値を探し出す最大値処理を行う(ステップS4)。目標検出処理部330は、次式(9)に基づいて、最大レベルCL(p)と最大値ふ仰角CP(p)とを算出する。ここで、最大レベルCL(p)は、算出したレベルの最大値である。また、最大値ふ仰角CP(p)は、最大レベルCL(p)を算出したふ仰角ψである。そして、MAX[]は最大値処理、第1引数は最大値処理の対象データであり、第2引数は最大値処理を実行する座標軸の方向を表す。
【0050】
【数9】
【0051】
また、目標検出処理部330は、式(9)によって算出した1次元の最大レベルCL(p)に対して、sinξ方向に走査して極大値(極大レベル)を探し出す極大値処理を行う(ステップS5)。また、目標検出処理部330は、次式(10)に基づいて、信号レベルCD(t)とsinξ情報CK(t)とを算出する。ここで、信号レベルCD(t)は、レベルの極大値である。また、sinξ情報CK(t)は、信号レベルCD(t)が得られたときのsinξである。そして、PK[]は、極大値処理を表す。また、PK[]の引数は、極大値処理の対象データを表す。目標検出処理部330は、さらに、極大値における最大値ふ仰角CP(p)となるψ情報CP(CK(t))を求める。ここで、たとえば、受波器アレイ100が、目標となる2以上の物体からの目標信号を受波しているような場合は、極大値が2以上見つかる場合がある。
【0052】
【数10】
【0053】
座標変換処理部340は、sinξ情報CK(t)およびψ情報CP(CK(t))を、水平方位について変換した変換水平方位θ”(t)およびふ仰角について変換した変換ふ仰角φ”(t)に座標変換処理する(ステップS6)。変換水平方位θ”(t)および変換ふ仰角φ”(t)は、次式(11)および(12)で表される。
【0054】
【数11】
【0055】
【数12】
【0056】
そして、座標変換処理部340は、次式(13)と(14)に示すように、変換水平方位θ”(t)と変換ふ仰角φ”(t)とを目標の水平方位情報CS(t)およびふ仰角情報CH(t)とする。
【0057】
【数13】
【0058】
【数14】
【0059】
表示処理部350は、水平方位情報CS(t)およびふ仰角情報CH(t)並びに信号レベルCD(t)に基づいて表示データを生成する表示処理を行う(ステップS7)。まず、目標検出処理部330が処理した信号レベルCD(t)を、輝度値に変換する処理を行う。そして、表示処理部350は、BTR上においては、座標変換処理部340が処理して得た水平方位情報CS(t)に対応する位置に、信号レベルCD(t)に対応する輝度の点をプロットする表示データを生成する表示処理を行う。また、表示処理部350は、ETR上においては、座標変換処理部340が処理して得たふ仰角情報CH(t)に対応する位置に、信号レベルCD(t)に対応する輝度の点をプロットする表示データを生成する表示処理を行う。たとえば、信号レベルCD(t)が高ければ、より明るく表示されるような輝度の点をプロットする。
【0060】
図9は、実施の形態1の表示処理部350における処理の一例を示す図である。図9では、表示処理部350における表示処理の動作についてBTRを例とする。BTR上において、表示処理部350は、信号レベルCD(t)に対応する輝度の点を、水平方位情報CS(t)に対応する位置に新たにプロットする際、図9に示す縦軸の最も上に位置するグリッド(-30[sec])に位置する点(輝度値のデータ)を消去する。また、それ以外の点は、それぞれ1つ上のグリッドにプロットし直す。そして、表示処理部350は、図9に示す最も下に位置するグリッド(0[sec])の、水平方位情報CS(t)に対応する位置に、新たな点をプロットする。ETR表示についても、表示処理部350は、BTR表示における水平方位情報CS(t)の代わりに、ふ仰角情報CH(t)に基づいて同様に新たな点をプロットする。
【0061】
信号方位表示処理装置300の各部は、以上の処理を繰り返し、出力端子部360から表示信号を出力する。表示装置400は、信号方位表示処理装置300から送られる表示信号中の表示データに基づいて、BTR表示およびETR表示を行う。オペレータは、表示装置400の画面に基づき、目標位置および目標数を判断する。
【0062】
以上のように、実施の形態1における信号処理システムにおいては、受波器アレイ100となる平面アレイの受波信号を、信号処理装置200がふ仰角ごとに水平整相処理を行って水平整相処理結果BF(m)のデータを得る。そして、信号方位表示処理装置300のELAZ補間処理部320は、水平整相処理結果BF(m)について、水平方位―ふ仰角座標系から円錐座標系の2次元変換データELcone(p,q)に変換し、目標信号の主極の広がりをsinξ軸に直交させる。また、目標検出処理部330は、sinξ軸ごとにψ方向に最大値を取得する最大値処理を行って最大レベルCL(p)を算出する。目標検出処理部330は、さらに、sinξ方向に極大値を探し出す極大値処理を行って、信号レベルCD(t)、sinξ情報CK(t)およびψ情報CP(CK(t))を円錐座標系到来方位情報として算出する。座標変換処理部340は、円錐座標系到来方位情報を座標変換し、方位座標系到来方位情報のデータ(水平方位情報CS(t)およびふ仰角情報CH(t))を生成する。そして、表示処理部350が表示処理を行って得た表示信号を表示装置400に送り、表示装置400にBTR表示およびETR表示に表示させる。このため、信号方位表示処理装置300は、目標信号の到来水平方位と到来ふ仰角とを時系列で表示させることができる。このため、信号方位表示処理装置300は、円錐座標系において信号レベルが極大となる方位(目標が位置する方位)などを明確にした上で、水平方位-ふ仰角座標系に戻して表示装置400に表示させる処理を行うことができる。したがって、オペレータが、目標の到来水平方位および到来ふ仰角の誤認識および目標数の誤認識を防ぐことができる。
【0063】
実施の形態2.
図10は、実施の形態2に係る信号処理システムにおける受波器アレイ100の構成について説明する図である。実施の形態1においては、受波器アレイ100がxz平面に展開される矩形状の平面アレイであるものとして説明した。実施の形態2における信号処理システムでは、受波器アレイ100は、図10に示すように、y軸の正の方向または負の方向に湾曲した矩形状の平面アレイで構成されているものとする。
【0064】
図11は、実施の形態2に係る信号処理システムにおいて、y軸方向に湾曲した平面アレイによるふ仰角ごとの水平整相出力の一例を示す図である。図11のように、湾曲した平面アレイによって生成された曲面上における2次元のデータは、式(1)~式(4)に基づく、水平方位θおよびふ仰角φで表される水平方位-ふ仰角座標系から、sinξおよびψで表される円錐座標系への座標変換ができない。
【0065】
そこで、実施の形態2の信号処理システムでは、実施の形態1において、ELAZ補間処理部320が行った座標変換処理を行う代わりに、平面アレイのビーム応答における数値計算結果を用いたビーム応答処理を行う。具体的には、目標信号の広がりの各点における水平方位θをあらかじめ求めてテーブル形式のデータにし、後述するθ-φ座標変換テーブル371として、記憶部370に記憶しておく。そして、θ-φ座標変換テーブル371を参照して、各位置における信号レベルを求める信号レベル生成処理を行う。
【0066】
図12は、実施の形態2に係るθ-φ座標変換テーブル371について説明する図である。また、図13は、実施の形態2に係るθ-φ座標変換テーブル371の作成の流れを説明する図である。θ-φ座標変換テーブル371は、次に示す手順1~手順3に基づいて求められる。
【0067】
図14は、目標方位(θ(m),0)におけるビーム応答ELAZによる表示の一例を示す図である。まず、受波器アレイ100であるy軸方向に湾曲した平面アレイに、目標方位(θ(m),0)から目標信号が到来したときの整相方位(θ(m),φ(n))に対するビーム応答ELAZを計算する(手順1)。
【0068】
計算したビーム応答ELAZから、ふ仰角φ(n)ごとに水平方向に最大値処理を行って、最大値に対応する水平方位θを取得する。そして、取得した水平方位θを、図12(a)に示すように、θ-φ座標変換テーブル371における水平方位θ(m,n)の項目の値を表すデータとして格納する(手順2)。対応する水平方位θとふ仰角φとの関係は図12(b)に示す。
【0069】
このとき、図13に示すように、最大値処理によって得られた値が、あらかじめ設定された閾値を下回っている場合は、水平方位θ(m,n)の項目における値としてnull値をデータとして格納するものとする。水平方位θ(m,n)の項目における値については、次式(15)に基づいて取得する。ここで、式(15)において、NULL[]は、第1引数の値が第2引数の値より小さい値である場合には、NULL値を与えることを表す。
【0070】
【数15】
【0071】
そして、各m(m=1~M、Mは水平方位数)について、前述した手順1および手順2を繰り返し行い、θ-φ座標変換テーブル371を作成する(手順3)。
【0072】
以上のようにして、実施の形態2における信号方位表示処理装置300は、記憶部370がθ-φ座標変換テーブル371をデータとして記憶する。そして、実施の形態1においてELAZ補間処理部320が式(11)に基づく座標変換処理を行う代わりに、信号方位表示処理装置300は、記憶部370に記憶されたθ-φ座標変換テーブル371を検索して得られた水平方位θに基づく処理を行う。
【0073】
図15は、実施の形態2に係る信号処理システムの構成を示す図である。図15において、図6と同じ符号を付している処理部などについては、実施の形態1と同様の処理などを行う。図15に示すように、実施の形態2における信号方位表示処理装置300は、ELAZ補間処理部320の代わりに、ビーム応答処理部380を有する。また、目標検出処理部331は、方位座標系到来方位情報に関するデータを生成する目標検出処理工程を行う。そして、記憶部370は、前述したように、θ-φ座標変換テーブル371をデータとして有する。
【0074】
ビーム応答処理部380は、記憶部370が記憶するθ-φ座標変換テーブル371に基づき、水平整相処理結果BF(m)から水平方位θ(m,n)に対応した信号レベルに関する2次元データである2次元信号レベルEQθ-φ(m,n)を得る。また、目標検出処理部331は、2次元信号レベルEQθ-φ(m,n)のデータから目標が発する目標信号を検出し、到来する目標信号の水平方位情報CS(t)、ふ仰角情報CH(t)および信号レベルCD(t)を生成するビーム応答処理工程を行う。
【0075】
次に、実施の形態2における信号方位表示処理装置300の処理動作について、さらに詳細に説明する。
【0076】
図16は、実施の形態2のビーム応答処理部380における信号レベル生成処理を説明する図である。ビーム応答処理部380は、記憶部370が記憶するθ-φ座標変換テーブル371から水平方位θ(m,n)における値を読み出す。そして、ビーム応答処理部380は、整相信号に含まれる水平整相処理結果BF(m)のデータに基づき、水平方位θ(m,n)に対応する2次元信号レベルEQθ-φ(m,n)を、次式(16)に基づいて取得する。2次元信号レベルEQθ-φ(m,n)は、水平方位θ(m,n)における水平整相処理結果BF(m)である。
【0077】
【数16】
【0078】
目標検出処理部331は、ビーム応答処理部380が取得した2次元信号レベルEQθ-φ(m,n)に対して、次式(17)に基づいて、水平方位θごとに、ふ仰角におけるレベルの最大値を探し出す最大値処理を行う。ここで、最大レベルCL(m)は、レベルの最大値である。また、最大値ふ仰角インデックスCI(m)は、最大レベルCL(m)に対応した、2次元信号レベルの行列EQθ-φより、ふ仰角を表す列方向の番号nがインデックスとして格納される。そして、MAX[]は最大値処理、第1引数は最大値処理の対象データであり、第2引数は最大値処理を実行するふ仰角を表す。
【0079】
【数17】
【0080】
目標検出処理部331は、さらに、1次元データである最大レベルCL(m)に対して、水平方位θに対して極大値を探し出す極大値処理を行う。目標検出処理部331は、次式(18)に基づいて、信号レベルCD(t)と水平方位方向インデックスCJ(t)とを求める。ここで、信号レベルCD(t)は、前述したように、レベルの極大値である。また、水平方位方向インデックスCJ(t)は、信号レベルCD(t)が得られた水平方位θ方向を表す1次元データである最大レベルCL(m)の配列番号mがインデックスとして格納される。ここで、t=1~T(Tは検出した極大値数=信号検出数)である。
【0081】
【数18】
【0082】
そして、目標検出処理部331は、次式(19)と(20)に基づき、目標の水平方位情報CS(t)およびふ仰角情報CH(t)を得る。以上のようにして得られた信号レベルCD(t)、目標の水平方位情報CS(t)およびふ仰角情報CH(t)は、表示処理部350において表示処理される。表示処理部350における表示処理は、実施の形態1で説明したことと同様である。
【0083】
【数19】
【0084】
【数20】
【0085】
以上のように、実施の形態2における信号処理システムにおいては、記憶部370が、目標信号の広がりの各点における水平方位θをデータとするθ-φ座標変換テーブル371を、記憶しておく。そして、ビーム応答処理部380は、θ-φ座標変換テーブル371に基づき、信号処理装置200からの整相信号に含まれる水平整相処理結果BFm(m)から水平方位θ(m,n)に対応した2次元信号レベルEQθ-φ(m,n)を得る。また、目標検出処理部331は、2次元信号レベルEQθ-φ(m,n)のデータから目標が発する目標信号を検出し、到来する目標信号の水平方位情報CS(t)、ふ仰角情報CH(t)および信号レベルCD(t)を生成処理する。そして、表示処理部350が表示処理を行って得た表示信号を表示装置400に送り、表示装置400にBTR表示およびETR表示に表示させる。このため、信号方位表示処理装置300は、目標信号の到来水平方位と到来ふ仰角とを時系列で表示させることができる。したがって、信号レベルが極大となる方位(目標が位置する方位)などを明確にした上で、表示装置400に表示させることで、オペレータが、目標の到来水平方位および到来ふ仰角の誤認識および目標数の誤認識を防ぐことができる。特に、実施の形態2における信号処理システムでは、たとえば、湾曲した平面アレイで構成された受波器アレイ100などのように、座標変換を利用した処理を行うことができない場合でも、座標変換処理を行うことなく、極大値処理などを行うことができる。したがって、目標の方位などを明確に表示することができる。
【0086】
実施の形態3.
前述した実施の形態1では、ELAZ補間処理部320は、補間処理を行って求める点(θ’(p,q),φ’(p,q))を座標変換の式(6)と式(7)で計算しているが、これに限定するものではない。たとえば、あらかじめ演算などによって点(θ’(p,q),φ’(p,q))を算出し、テーブルデータとして記憶部370に記憶しておいてもよい。そして、ELAZ補間処理部320は、記憶部370から対応する点(θ’(p,q),φ’(p,q))を検索して求めてもよい。
【0087】
また、前述した実施の形態1では、変換処理部323は、バイリニア法で補間処理を行ったが、ほかの補間方法を用いて実現してもよい。たとえば、変換処理部323は、座標(θ’(p,q),φ’(p,q))に対して、最近傍である16点を用いたバイキュービック法によって補間処理を行ってもよい。バイキュービック法を行うことで、処理量は多くなるが、より正確なレベルを算出することができる。
【0088】
また、前述した実施の形態2における受波器アレイ100は、y軸方向に湾曲した平面アレイとしたが、これに限定するものではない。受波器アレイ100のビーム応答を用いて、目標信号の主極の曲線上に広がる点の水平方位を計算することができれば、湾曲の方向がy軸方向以外の面アレイでも適用することができる。また、実施の形態2のような処理部で構成した信号方位表示処理装置300は、解析的な座標変換ができない形状の受波器アレイ100だけでなく、実施の形態1のように、解析的に座標変換できる形状の受波器アレイ100で受波する場合にも用いることができる。
【0089】
さらに、前述した実施の形態1および実施の形態2で説明した受波器アレイ100は、矩形状に複数の受波器が配列されているものとしたが、受波器アレイ100の配列は矩形状に限定するものではない。たとえば、円盤状、楕円盤状に受波器を配列した受波器アレイ100でも適用することができる。
【0090】
また、目標から発せられる目標信号は、狭帯域信号を例にして説明したが、これに限定するものではない。たとえば、目標信号が広帯域である場合は、信号処理装置200が、周波数方向に対してあらかじめ信号合成などを行って整相処理などを行った上で、整相信号を信号方位表示処理装置300に送る。これにより、信号方位表示処理装置300は、実施の形態1および実施の形態2で説明した処理を行うことができる。
【0091】
そして、前述した実施の形態1および実施の形態2で説明した信号処理システムは、信号処理装置200、信号方位表示処理装置300および表示装置400を、それぞれ別構成の装置として構成したが、これに限定するものではない。たとえば、信号方位表示処理装置300と表示装置400とを一体で構成する装置としてもよい。また、信号処理装置200、信号方位表示処理装置300および表示装置400を、一体とした構成であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
100 受波器アレイ
200 信号処理装置
300 信号方位表示処理装置
310 入力端子部
320 ELAZ補間処理部
321 並び替え処理部
322 座標変換元算出処理部
323 変換処理部
330,331 目標検出処理部
340 座標変換処理部
350 表示処理部
360 出力端子部
370 記憶部
371 θ-φ座標変換テーブル
380 ビーム応答処理部
400 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16