(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003338
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】燻蒸装置
(51)【国際特許分類】
A01N 25/18 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
A01N25/18 103B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102412
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】横山 吏世
(72)【発明者】
【氏名】青木 和美
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】矢島 佐保
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011DB04
4H011DE06
(57)【要約】
【課題】水と接することで発熱して薬剤が発煙される燻蒸装置にあって、紙製の外側容器が焦げたり焦げ臭がしたりしない燻蒸装置を提供する。
【解決手段】薬剤及び発熱剤を収容する内側容器1と、内側容器1及び水を収容することができ、少なくとも内側面2bが防水機能を有し、紙製又は紙を主体とする材料製の外側容器2と、外側容器2の内側に配置された状態で内側容器1を外側容器2の周壁2aの内側面2bから所定距離だけ離れた状態に維持する位置決め部材3と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と接することで薬剤を発煙する燻蒸装置であって、
前記薬剤及び発熱剤を収容する内側容器と、
前記内側容器及び水を収容することができ、少なくとも内側面が防水機能を有し、紙製又は紙を主体とする材料製の外側容器と、
前記外側容器の内側に配置された状態で前記内側容器を前記外側容器の周壁の内側面から所定距離だけ離れた状態に維持する位置決め部材と、を備えた燻蒸装置。
【請求項2】
前記外側容器は、有底のカップ部材であり、底部に対して開口端側が外側広がりのテーパ状の周壁を有する、請求項1に記載の燻蒸装置。
【請求項3】
前記位置決め部材は、前記外側容器の内側面と前記内側容器の周壁部との間に配置される、請求項1又は2に記載の燻蒸装置。
【請求項4】
前記位置決め部材の高さ方向寸法は、前記外側容器内への注水の規定高さに一致している、請求項3に記載の燻蒸装置。
【請求項5】
前記位置決め部材は、前記外側容器の内側に配置された状態で前記外側容器内への注水に対して浮き上がりを防止する浮き上がり防止構造を有する、請求項3に記載の燻蒸装置。
【請求項6】
前記位置決め部材は、水より大きい比重の材料製である、請求項3に記載の燻蒸装置。
【請求項7】
前記位置決め部材は、前記外側容器の蓋部材で構成される、請求項3に記載の燻蒸装置。
【請求項8】
前記位置決め部材は、前記内側容器を挿通可能な内穴を有し、前記外側容器の底部に配置される円環状の底板部と、底板部の内穴周縁部から上方に立ち上げられた内壁部と、底板部の外周縁部から上方に立ち上げられた外壁部と、を有する請求項3に記載の燻蒸装置。
【請求項9】
前記位置決め部材は、伏せた椀形状の曲面部材で構成され、平面視中央部に前記内側容器を挿通可能な内穴が形成された、請求項3に記載の燻蒸装置。
【請求項10】
前記位置決め部材は、2つの板部材を平面視十字状に組合せて構成され、平面視中央部に前記内側容器を搭載する支持部が形成され、その外側に前記内側容器の周壁部の位置を規制する位置決め部が形成された、請求項3に記載の燻蒸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燻蒸装置、特に水と接することで薬剤を発煙する燻蒸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような燻蒸装置としては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。この特許文献1に記載される燻蒸装置は、害虫駆除の薬剤を発煙するものであり、外側容器の内部に所定量の水を入れ、その後に薬剤が収容された内側容器を外側容器の内部に収容する。内側容器は二重缶構造となっており、内側缶の内部に薬剤が収容されており、内側缶と外側缶の間に発熱剤が収容されている。発熱剤が水と接すると発熱し、この熱量で内側缶内の薬剤が加熱されて気化した薬剤が発煙される。このように水と接することで薬剤を発煙する燻蒸装置には、カビを防止する薬剤を発煙するものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現行製品化されている燻蒸装置では、外側容器は樹脂製のものが主流であるが、環境対応(環境問題の改善や環境負荷の低減)として外側容器の紙製化が求められている。しかしながら、外側容器を紙製にすると、発熱剤が発熱したときに外側容器が焦げたり、焦げなくとも焦げた臭い(焦げ臭)がしたりするおそれがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、紙製の外側容器が焦げたり焦げ臭がしたりしない燻蒸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る燻蒸装置は、水と接することで薬剤を発煙する燻蒸装置であって、前記薬剤及び発熱剤を収容する内側容器と、前記内側容器及び水を収容することができ、少なくとも内側面が防水機能を有し、紙製又は紙を主体とする材料製の外側容器と、前記外側容器の内側に配置された状態で前記内側容器を前記外側容器の周壁の内側面から所定距離だけ離れた状態に維持する位置決め部材と、を備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の燻蒸装置によれば、紙製の外側容器内に注水しても外側容器に水が浸み込んだり外側容器から水が漏れたりすることがなく、また内側容器は外側容器の周壁の内側面から所定距離だけ離れて固定されるため、内側容器内で発熱剤が発熱しても外側容器が焦げたり焦げ臭がしたりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の燻蒸装置の第1実施形態を示す一部断面正面図である。
【
図3】
図1の外側容器内に内側容器をセットした状態の斜視図である。
【
図4】
図1の燻蒸装置の使用状態を示す一部断面正面図である。
【
図5】本発明の燻蒸装置の第2実施形態を示す一部断面正面図である。
【
図6】
図5の燻蒸装置の位置決め部材の斜視図である。
【
図7】
図5の燻蒸装置の使用状態を示す一部断面正面図である。
【
図8】本発明の燻蒸装置の第3実施形態を示す位置決め部材の斜視図である。
【
図9】
図8の燻蒸装置の使用状態を示す一部断面正面図である。
【
図10】本発明の燻蒸装置の第4実施形態を示す位置決め部材の斜視図である。
【
図11】
図10の燻蒸装置の使用状態を示す一部断面正面図である。
【
図12】本発明の燻蒸装置の第5実施形態を示す位置決め部材の斜視図である。
【
図13】
図12の位置決め部材を外側容器内にセットした状態の一部断面正面図である。
【
図14】
図12の燻蒸装置の使用状態を示す一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の燻蒸装置の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
図1は、燻蒸装置の第1実施形態を示す一部断面正面図、
図2は、
図1の燻蒸装置の内側容器1の斜視図、
図3は、
図1の外側容器2内に内側容器1をセットした状態の斜視図、
図4は、
図1の燻蒸装置の使用状態を示す一部断面正面図である。
図1は、製品状態の燻蒸装置を示す。製品状態の燻蒸装置は、例えば、外側容器2の内部に内側容器1と位置決め部材3が収容され、外側容器2の上側開口端が蓋部材4で覆われ、全体がシュリンクフィルム(包装フィルム)51で包装されている。使用時には、シュリンクフィルム51と蓋部材4を外し、内側容器1と位置決め部材3をいったん取り出す。そして、外側容器2内に位置決め部材3を配置して注水し、その後に外側容器2内に内側容器1を入れる。なお、内側容器1と位置決め部材3の収容形態は図示に限定されない。
【0009】
図2bが内側容器1の外観であり、
図2aは、製品状態で外側容器2内に収容されている内側容器1の外観である。この実施形態の内側容器1は、
図2bに示すように、寸胴の円筒缶である。内側容器1内には害虫駆除や防カビなどのための薬剤が収容されている。一例として、内側容器1は金属製の二重缶構造とされており、内側缶は内側容器1内の上部に配置され、内側缶の内部に薬剤が収容され、内側缶と外側缶の間に発熱剤が収容されている。前述のように、発熱剤は水と接して発熱するので、
図2aに示すように、使用以前の内側缶は外気と触れないように袋状の包装材52によって密封状態に包装されている。使用に際しては、この包装材52を外して内側容器1を取り出して使用する。
【0010】
この実施形態の外側容器2は紙製であるが、環境対応のためには紙を主体とする材料製であってもよい。使用時には、この外側容器2内に水を入れて使用するので、少なくとも内側面2bは防水機能を有する。具体的には、外側容器2の内側面2bに例えばポリエチレンなどの樹脂層(膜)が被覆されている。この外側容器2は、断面が円形の有底の紙製カップ部材であり、周壁2aは、底部2cから開口端側、すなわち上側に向けて外側広がりのテーパ状、つまり逆円錐台の錐体面形状とされている。これは、製造された外側容器2の在庫時や搬送時に外側容器2同士を互いに積み重ねておけるようにするためであり、また、後述のように、外側容器2内に内側容器1を入れたり、使用後に取り出したりする際、入れやすく、また取り出しやすくするためでもある。なお、外側容器2の断面形状は、円形の他、角部がR面取りされた方形などであってもよい。
【0011】
外側容器2内には水を入れて使用するので、外側容器2は開口端を上向きにして使用される。この実施形態では、
図4に示すように、内側容器1が外側容器2の底部(底板部)2cに当接した状態で使用される(発熱する)ので、周壁2aの下端部に高台状の脚部21を設けて底部2cが床などに直接当接しないようにしている。この実施形態の脚部21は、周壁2aの下端部を内側上方に立ち上げるようにして構成されており、その上端部に底部(底板部)2cが連設されている。この他、一般的な紙コップのように、紙部材を丸めて逆円錐台形状のカップ部(周壁2a)を形成し、その下端部よりも少し上側の内側面2bに底板部2cを接合するようにしてそれより下方に脚部21を形成してもよい。また、この実施形態の外側容器2の上方開口端の周縁部22は、カップ部材の開口端部の強度を確保するために紙部材が外側に丸く折り込まれている。紙部材を折り込むことに代えて、リング状の別部材を開口端周縁部22に接合するようにしてもよい。
【0012】
この実施形態の位置決め部材3は、
図3、
図4に示すように、円形の内穴3aを有する円環状の底板部31と、この底板部31の内穴周縁部から真っ直ぐ上方に立ち上げられた内壁部32と、底板部31の外周縁部から斜め外向き上方に立ち上げられた外壁部33を有する。この位置決め部材3は、紙製、又は紙を主体とする材料製であってもよく、また紙以外の異なる材料で構成されてもよい。紙製又は紙を主体とする材料製の場合には防水加工をすることが好ましい。また、使用(発煙)時、外側容器2内の水は最大100℃の高温となるので、位置決め部材3に用いられる材料は100℃以上の融点のものである必要がある。内壁部32の内側に形成される内穴3aは、少なくとも寸胴円筒缶からなる内側容器1の周壁部1aが収容される大きさを有し、この実施形態では、内壁部32が内側容器1の周壁部1aに僅かに接触する大きさとした。また、外壁部33は、底板部31が外側容器2の底部2cに当接されている状態で外側容器2の内側面2bに比較的緊密に当接する逆円錐台の錐体面形状とされている。なお、この実施形態の外壁部33は、外側広がりになっている上端部のみが外側容器2の内側面2bに当接するようにしてもよい。
【0013】
この実施形態の位置決め部材3では、底板部31に例えば円形の貫通穴3bが複数形成されている。この実施形態の燻蒸装置は、前述のように、外側容器2の内部に位置決め部材3を配置してから注水し、その後で内側容器1を外側容器2内、より具体的には位置決め部材3の内壁部32の内穴3a内に入れて使用される。この外側容器2内への注水時、底板部31に設けられた貫通穴3bを通じて水や空気が出入りし、これにより位置決め部材3の浮き上がりが防止される。すなわち、底板部31に設けられた貫通穴3bは、注水時の浮き上がり防止構造の1つである。また、この実施形態の位置決め部材3では、外壁部33の外側広がりの上端部が凸部3cと凹部3dの交互形成構造とされている。凹部3dはへこみ部分である。このような構成とすることにより、外壁部33の上端が平坦な円周形状である構成と比較して、凹部3dと外側容器2の内側面2bの間に隙間ができ、外側容器2内への注水時、この隙間を通じて水や空気が出入りし、これにより位置決め部材3の浮き上がりが防止される。また、位置決め部材3を外側容器2内に挿入する際、例えば凸部3cが外側容器2の内側面2bに押当されて弾性変形し、それに伴って生じる弾性力が位置決め部材3を保持する力となって注水時の浮き上がりが防止される。これらも注水時の浮き上がり防止構造である。
【0014】
この実施形態では、一例として、使用時における位置決め部材3の外壁部33の上端位置を内壁部32の上端位置よりも高く設定した。そして、外側容器2内への注水時、水を位置決め部材3の外壁部33の上端位置まで入れ、その後に内側容器1を外側容器2の内部、具体的には位置決め部材3の内穴3a内にセットする。周知のように、水と接することで発熱剤が発熱して薬剤が発煙される燻蒸装置では、水の量が適切であることが望まれる。そこで、位置決め部材3の外壁部33の上端位置を注水の目印となるように、より具体的には、外壁部33の高さ寸法が発熱剤を好適に発熱させる水の高さと一致するように、位置決め部材3を製造することが望ましい。このような構成であれば、例えば外側容器2の内側面2bに施されたマークを注水の目印とするような場合に比して、目印が見やすいし、注水も容易になる。しかも、位置決め部材3全体が水に浸ることになるから、水面から上に飛び出した位置決め部材3の一部が発熱剤の熱を直接受けて焦げたり焦げ臭がしたりすることもない。なお、注水の目印についての説明は、製品状態の燻蒸装置の包装材や取扱説明書などに記載しておけばよい。すなわち、位置決め部材3の高さ方向寸法は、注水の高さを規定しており、ユーザーには、それが注水の高さとして指定されている。また、位置決め部材3の底板部31から立ち上げられた内壁部32が内側容器1の周壁部1aに当接されるので、外側容器2の底部2c(=内側容器1の底部1b)よりも高い位置で内側容器1の周壁部1aの径方向への移動が規制されており、その結果、内側容器1が倒れてしまうのを抑制・防止することができる。
【0015】
この実施形態の燻蒸装置では、使用(発煙)時、位置決め部材3の内穴3a内に挿入された内側容器1の周壁部1aは、円環状の底板部31の内外径差によって外側容器2の内側面2bから所定距離だけ離れた状態に維持(固定)される。この内側容器1の周壁部1aと外側容器2の内側面2bの間には水が存在し、少なくとも外側容器2の内側面2bは防水機能を有していることから、この水が紙製又は紙を主体とする材料製の外側容器2に浸み込んだり外側容器2から漏れたりすることはない。したがって、内側容器1と外側容器2の内側面2bとの距離を適切に設定することで、内側容器1が発熱しても、紙製又は紙を主体とする外側容器2が焦げたり焦げ臭がしたりすることはない。内側容器1と外側容器2の内側面2bの距離は、10mm以上であることが望ましい。
【0016】
図5は、燻蒸装置の第2実施形態を示す一部断面正面図、
図6は、
図5の燻蒸装置の位置決め部材3の斜視図、
図7は、
図5の燻蒸装置の使用状態を示す一部断面正面図である。この実施形態の外側容器2や内側容器1は、上記第1実施形態のものと同様である。この実施形態では、位置決め部材3が変更されている。この位置決め部材3は、内部が空洞のドーム形状、或いは椀の形状に形成され、この実施形態では、
図7に示すように、この椀を伏せた状態で位置決め部材3を使用する。すなわち、この実施形態の位置決め部材3は、伏せた椀形状の曲面部材で構成される。この位置決め部材3は、紙製、又は紙を主体とする材料製であってもよく、また紙以外の異なる材料で構成されてもよい。紙製又は紙を主体とする材料製の場合には防水加工をすることが好ましい。また、使用(発煙)時、外側容器2内の水は最大100℃の高温となるので、位置決め部材3に用いられる材料は100℃以上の融点のものである必要がある。椀形状の位置決め部材3の中央部には、内側容器1を挿通可能な内穴3aが形成されている。製品状態の燻蒸装置では、
図5aに示すように、第1実施形態と同様、包装されている内側容器1の上側に椀が上向きになるように位置決め部材3を配置してもよいし、
図5bに示すように、椀を上向きにした位置決め部材3の上に包装された内側容器1を配置してもよい。また、椀を伏せた状態で内側容器1の上に位置決め部材3を配置するようにしてもよい。内側容器1と位置決め部材3の収容形態はこれらに限定されない。
【0017】
前述のように、この実施形態の燻蒸装置では、
図7に示すように、椀を伏せた状態で位置決め部材3を外側容器2内に配置し、その位置決め部材3の上面(上端位置)まで注水した後、位置決め部材3の内穴3a内に内側容器1を入れて使用(発煙)する。すなわち、この実施形態では、伏せた椀形状の位置決め部材3の上端位置が注水の目印である。換言すれば、位置決め部材3の高さ方向寸法は、注水の高さを規定しており、ユーザーには、それが注水の高さとして指定されている。この位置決め部材3の内穴3aによって、内側容器1の周壁部1aは外側容器2の底部2c(=内側容器1の底部1b)よりも高い位置で径方向への移動が規制されるので、内側容器1が倒れてしまうのを抑制・防止することができる。また、この位置決め部材3の空洞の椀状部には、内部と外部を連通する複数の貫通穴3bが形成されており、この貫通穴3bを通じて注水時に水と空気が出入りし、位置決め部材3の浮き上がりが防止される。また、この位置決め部材3の椀形状の外周縁部は、第1実施形態と同様に、凹部(へこみ)3dと凸部3cの交互形成構造とされている。これにより、凹部3dと外側容器2の内側面2bの間に隙間ができ、この隙間を通じて注水時に水と空気が出入りし、位置決め部材3の浮き上がりが防止される。また、位置決め部材3を外側容器2内に挿入するときに凸部3cに弾性力が生じれば、それが位置決め部材3を保持する力となって注水時の浮き上がりが防止される。また、外側容器2の脚部21の内側にできている隙間に位置決め部材3の外周縁部が差し込まれるようにすることで、その外周縁部が脚部21の隙間で挟持されて浮き上がりが防止される。これらは、注水時における位置決め部材3の浮き上がり防止構造である。なお、位置決め部材3によって離間される内側容器1と外側容器2の内側面2bの適正な距離やその効果は第1実施形態と同様である。
【0018】
図8は、燻蒸装置の第3実施形態を示す位置決め部材3の斜視図、
図9は、
図8の燻蒸装置の使用状態を示す一部断面正面図である。この実施形態の外側容器2や内側容器1は、上記第1実施形態のものと同様である。この実施形態では、位置決め部材3が変更されている。この位置決め部材3は、
図8aに示すように、2つの板部材34を木工継手の十字相欠き継ぎ構造で
図8bのように平面視十字状に組合せて構成される。すなわち、製品状態の燻蒸装置では、2つの板部材34が外側容器2の内部に収容されており、それらをユーザーが組合せて位置決め部材3を作成する。板部材34は、紙製、又は紙を主体とする材料製であってもよく、また紙以外の異なる材料で構成されてもよい。紙製又は紙を主体とする材料製の場合には防水加工をすることが好ましい。また、使用(発煙)時、外側容器2内の水は最大100℃の高温となるので、位置決め部材3に用いられる材料は100℃以上の融点のものである必要がある。組合されて構成された位置決め部材3は、
図8bに示すように、平面視中央部に設けられ、内側容器1の底部1bを支持する支持部3eと、
図9に示すように、この支持部3eに支持された内側容器1の周壁部1aと外側容器2の内側面2bの間に介在して内側容器1の周壁部1aの位置を規制し、内側容器1を外側容器2の内側面2bから所定距離だけ離れた状態に維持する位置決め部3fを有する。位置決め部3fの上面(上端位置)は支持部3eよりも高く設定されている。なお、この位置決め部材3は、予め
図8bの形状に構成されたものを製品状態の燻蒸装置の外側容器2内に収容しておいてもよい。
【0019】
使用時には、
図9に示すように、位置決め部材3を外側容器2内に配置して位置決め部3fの上面(上端位置)まで注水した後、支持部3eの上に内側容器1を搭載して使用(発煙)する。すなわち、この実施形態では、位置決め部材3における位置決め部3fの上端位置が注水の目印である。換言すれば、位置決め部材3の高さ方向寸法は、注水の高さを規定しており、ユーザーには、それが注水の高さとして指定されている。この位置決め部材3の位置決め部3fによって、内側容器1の周壁部1aは内側容器1の底部1bよりも高い位置で径方向への移動が規制されるので、内側容器1が倒れてしまうのを抑制・防止することができる。また、この実施形態では、注水の際、位置決め部材3の下方に空気が溜まりにくいので位置決め部材3が浮き上がることはなく、また使用時には内側容器1の重みがかかるので、同じく位置決め部材3が浮き上がることはない。したがって、これらは注水時における位置決め部材3の浮き上がり防止構造である。また、この実施形態では、内側容器1の底部1bが外側容器2の底部2cに直接当接されないので、例えば外側容器2の脚部21を小さく(低く)することも可能である。なお、位置決め部材3によって離間される内側容器1と外側容器2の内側面2bの適正な距離やその効果は第1実施形態と同様である。
【0020】
このように、これらの実施形態の燻蒸装置では、薬剤が収容された内側容器1及び水を収容する外側容器2が紙製又は紙を主体とする材料製であることから環境対応することができる。また、外側容器2の少なくとも内側面2bが防水機能を有することから、紙製の外側容器2内に注水しても外側容器2に水が浸み込んだり外側容器2から水が漏れたりすることがなく、しかも外側容器2の内側に配置された位置決め部材3によって内側容器1が外側容器2の周壁2aの内側面2bから所定距離だけ離れた状態に維持(固定)されるので、内側容器1内で発熱剤が発熱しても外側容器2が焦げたり焦げ臭がしたりすることがない。
【0021】
また、外側容器2が有底のカップ部材であり、その周壁2aは底部2cに対して開口端側が外側広がりのテーパ状となっているので、外側容器2同士が互いに内側に収容されるようにして積み重ねておくことが可能であり、例えば、在庫時には場所をとらず、搬送時には搬送しやすい。また、外側容器2の開口端が広がっているので、外側容器2内に内側容器1を入れやすく、また取り出しやすい。
また、外側容器2の内側に配置された状態で位置決め部材3の高さ(上端位置)が外側容器2内への注水の目印となるので、外側容器2の内側面2bに付されたマークなどに比して見やすく、結果として注水しやすい。また、位置決め部材3が水中に浸漬されるので、位置決め部材3が紙製である場合にも、それが焦げたり焦げ臭がしたりすることがない。
【0022】
また、外側容器2の内側に配置された状態で位置決め部材3が外側容器2内への注水に対して浮き上がりを防止する浮き上がり防止構造を有するので、注水の目印機能が確保されると共に、開口端側が外側広がりのテーパ状になっている外側容器2の内側面2bに対し、内側容器1を外側容器2の内側面2bから所定距離だけ離しておく機能も維持される。
図10は、燻蒸装置の第4実施形態を示す位置決め部材3の斜視図、
図11は、
図10の燻蒸装置の使用状態を示す一部断面正面図である。この実施形態の外側容器2や内側容器1は、上記第1実施形態のものと同様である。この実施形態では、位置決め部材3が変更されている。この位置決め部材3は、外側容器2の底部2cにおいて外側容器2の内側面2bと内側容器1の周壁部1aの間に収まるリング形状に形成されている。このリング形状の位置決め部材3は、水の比重より大きい比重の材料からなり、例えば比重の大きな樹脂が挙げられる。この材料には、紙などのバイオマスを含んでいてもよい。また、水に浮かなければ、多孔質な材質であってもよい。また、使用(発煙)時、外側容器2内の水は最大100℃の高温となるので、位置決め部材3に用いられる材料は100℃以上の融点のものである必要がある。リング形状の位置決め部材3の内穴3aの内径は内側容器1が収容可能な大きさであり、位置決め部材3の外径は、位置決め部材3が外側容器2の底部2cに当接されている状態で外側容器2の内側面2bに僅かに接触する大きさである。
【0023】
この実施形態の燻蒸装置では、
図11に示すように、リング形状の一方の端面が外側容器2の底部2cに接触するようにして位置決め部材3を外側容器2内に配置し、その位置決め部材3の上面(上端位置)まで注水した後、位置決め部材3の内穴3a内に内側容器1を入れて使用(発煙)する。すなわち、この実施形態では、位置決め部材3の上端位置が注水の目印である。換言すれば、位置決め部材3の高さ方向寸法は、注水の高さを規定しており、ユーザーには、それが注水の高さとして指定されている。この位置決め部材3によって、内側容器1の周壁部1aは外側容器2の底部2c(=内側容器1の底部1b)よりも高い位置で径方向への移動が規制されるので、内側容器1が倒れてしまうのを抑制・防止することができる。また、位置決め部材3には、天面(上面)から底面(下面)まで貫通する複数の貫通穴3bが形成されている。これにより、位置決め部材3に使用される樹脂などの材料の量を低減することが可能となる。なお、位置決め部材3によって離間される内側容器1と外側容器2の内側面2bの適正な距離やその効果は第1実施形態と同様である。
【0024】
このように、この実施形態の包装容器では、水より大きい比重の材料で位置決め部材3を構成することにより、多様な材料で位置決め部材3を形成することができると共に、注水に対する特殊な浮き上がり防止構造を必要としないことから簡素な構造とすることができる。
図12は、燻蒸装置の第5実施形態を示す位置決め部材3の斜視図、
図13は、
図12の位置決め部材3を外側容器2内にセットした状態の一部断面正面図、
図14は、
図12の燻蒸装置の使用状態を示す一部断面正面図である。この実施形態の外側容器2や内側容器1は、上記第1実施形態のものと同様である。この実施形態では、位置決め部材3が変更されている。この実施形態では、外側容器2の蓋部材4を位置決め部材3として使用する。蓋部材4は、紙製、又は紙を主体とする材料製であってもよく、また紙以外の異なる材料で構成されてもよい。紙製又は紙を主体とする材料製の場合には防水加工をすることが好ましい。また、使用(発煙)時、外側容器2内の水は最大100℃の高温となるので、位置決め部材3に用いられる材料は100℃以上の融点のものである必要がある。
【0025】
図12は、使用する以前の状態の位置決め部材3、すなわち蓋部材4である。この蓋部材4を外側容器2内に押し込むことによって位置決め部材3とする。蓋部材4を押し込む高さ方向の位置は、
図14に示すように、注水の高さ位置である。蓋部材4の外径は、周壁2aが開口端側(上側)に向けてテーパ状に広がる外側容器2の開口端を覆うものであるから、これを外側容器2の周壁2a内に押し込むと外周縁部が邪魔になる。そこで、蓋部材4の外周縁部に対し、注水の規定(指定)高さ位置における外側容器2の周壁2a(内側面2b)の内径と同じ径位置まで外周から径方向に沿って複数の切り込みが設けられている。これにより、蓋部材4を外側容器2の周壁2a内に押し込んだ際、
図13aに示すように、切り込みよりも径方向外側部分が外側容器2の開口端周縁部及び内側面2bによって外側容器2の底部2cと反対向き、すなわち上向きに折れ曲がるようにしている。この切り込みより径方向外側部分は、
図13bに示すように、下向きに折り曲げてもよい。外側容器2の周壁2a内に押し込まれた蓋部材4の停止位置は、注水の規定(指定)高さ位置であるから、押し込まれた蓋部材4の上面(上端位置)まで注水すればよい。すなわち、この実施形態では、位置決め部材3として外側容器2内に押し込まれた蓋部材4(=位置決め部材3)の上端位置が注水の目印である。外側容器2内に押し込まれた蓋部材4は位置決め部材3であるから、以下では、その状態の蓋部材4を位置決め部材3として扱う。
【0026】
外側容器2への押し込み時、複数の切り込みから上向きに折れ曲がった分割された位置決め部材3の外周縁部には、切り込みの部分、すなわち切り込みでできた凸部3cの間にへこみ(凹部3d)が形成されている。したがって、注水時には、凹部3dと外側容器2の内側面2bの間に隙間ができ、この隙間を通じて注水時に水と空気が出入りし、位置決め部材3の浮き上がりが防止される。また、位置決め部材3を外側容器2内に押し込む際に凸部3cに弾性力が生じるので、それが位置決め部材3を保持する力となって注水時の浮き上がりが防止される。なお、
図12に一点鎖線で示すように、蓋部材4の外周縁部の隣り合う切り込み端同士を連結する直線状の折れ曲がり部(罫線)を設けておくと、蓋部材4を外側容器2内に押し込みやすい。この折れ曲がり部は、例えば蓋部材4が紙製又は紙を主体とする材料製である場合には、折れ曲がり部に沿って蓋部材4を厚さ方向に圧縮することで得られる。また、この蓋部材4には、
図12に示すように、上面(表面)と下面(裏面)に貫通する複数の貫通穴4a(3a)が設けられており、この貫通穴4a(3a)を通じて注水時に水と空気が出入りし、これによっても位置決め部材3の浮き上がりが防止される。上記外周縁部の凹部3dや凸部3cによって注水時の蓋部材4(位置決め部材3)の浮き上がりが防止される場合には、この貫通穴4a(3a)はなくともよい。
【0027】
一方、蓋部材4の中央部には、内側容器1の周壁部1aの外径よりも小径な内穴4aが設けられており、この内穴4aの内周から内側容器1の周壁部1aの外径と同じ径位置まで径方向に沿って複数の切り込みが設けられている。したがって、注水後、蓋部材4の内穴4aの部分に内側容器1を押し込むと位置決め部材3の内穴3aが形成されると共に、内側容器1の底部1b及び周壁部1aによって切り込み間の部分が外側容器2の底部2c側、すなわち下向きに折れ曲がる。なお、
図12に一点鎖線で示すように、蓋部材4の内周縁部の隣り合う切り込み端同士を連結する直線状の折れ曲がり部(罫線)を設けておくと、内側容器1を蓋部材4の内穴4aの部分に押し込みやすい。この折れ曲がり部は、例えば蓋部材4が紙製又は紙を主体とする材料からなる場合には、折れ曲がり部に沿って蓋部材4を厚さ方向に圧縮することで得られる。そして、このように折れ曲がった部分は、内側容器1の周壁部1aに当接しているので、内側容器1の周壁部1aは外側容器2の底部2c(=内側容器1の底部1b)よりも高い位置で径方向への移動が規制され、内側容器1が倒れてしまうのを抑制・防止することができる。なお、位置決め部材3によって離間される内側容器1と外側容器2の内側面2bの適正な距離やその効果は第1実施形態と同様である。
【0028】
この実施形態では、蓋部材4の外周縁部が外側容器2の内側面2bに沿って上向き、すなわち外側容器2の底部2cと反対向きに折り曲げられているが、これを底部2c側に折り曲げるようにしてもよい。同様に、この実施形態では、蓋部材4の内周縁部が内側容器1の外側面に沿って下向き、すなわち外側容器2の底部2c側に折り曲げられているが、これを底部2cと反対向きに折り曲げるようにしてもよい。また、蓋部材4の内周縁部を内側容器1に沿って折り曲げる以外に、内側容器1が収容可能な内穴3aを形成するようにしてもよい。この内穴3aは、例えば蓋部材4に予め穿設しておく以外に、例えば内穴3aに相当する部位にミシン目を入れておき、ユーザーがその部分を手指で押し抜いて内穴3aが形成されるようにしてもよい。
【0029】
このように、この実施形態の包装容器では、位置決め部材3を外側容器2の蓋部材4で構成することにより、個別の位置決め部材3を製造したり一緒に梱包したりする必要がなく、その分だけ、構造が簡潔となり、コストを低廉化することもできる。
以上、実施形態に係る燻蒸装置について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記実施形態の燻蒸装置では、位置決め部材3が外側容器2の内側面2bと内側容器1の外側面の双方に接触しているが、この位置決め部材3は、内側容器1を外側容器2の内側面2bから所定距離だけ離れた状態に維持するものであるから、その機能が発現できれば、外側容器2内の適切な位置に内側容器1を配置させたときには外側容器2の内側面2bにも内側容器1の外側面にも接触していない寸法であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 内側容器
2 外側容器
2a 周壁
2b 内側面
2c 底部
3 位置決め部材
4 蓋部材