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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033385
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】所得分配契約の支援装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/1053 20230101AFI20240306BHJP
   G06Q 40/12 20230101ALI20240306BHJP
【FI】
G06Q10/10 322
G06Q40/00 420
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136928
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】522298587
【氏名又は名称】株式会社EduCare
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【弁理士】
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太
【テーマコード(参考)】
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L049AA11
5L055BB65
(57)【要約】
【課題】貸与型奨学金を所得分配契約にリファイナンスすることの支援を通じて学生の卒業後の生活等を支援すること。
【解決手段】本発明の支援装置1は、人材に関する情報の1以上を含む人材情報を受信可能な人材情報受信部111と、事業者に関する情報の1以上を含む事業者情報を受信可能な事業者情報受信部112と、人材情報及び事業者情報に基づいて所得分配契約の契約条件を提案可能な提案部115と、を備え、人材情報は、人材が返済義務を負う貸与型奨学金の返済に関する情報である返済情報を含み、提案部115は、事業者が人材と雇用契約を締結することと、所得分配契約に基づく分配金の少なくとも一部を貸与型奨学金の返済に充てることと、を含む契約条件を提案可能であり、分配金は、所定期間において人材が事業者から得る給与所得から、所得分配契約が含む分配率に基づいて分配される分配金である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人材に関する情報の1以上を含む人材情報を受信可能な人材情報受信部と、
事業者に関する情報の1以上を含む事業者情報を受信可能な事業者情報受信部と、
前記人材情報及び前記事業者情報に基づいて所得分配契約の契約条件を提案可能な提案部と、
を備え、
前記人材情報は、前記人材が返済義務を負う貸与型奨学金の返済に関する情報等である返済情報を含み、
前記提案部は、前記事業者が前記人材と雇用契約を締結することと、前記所得分配契約に基づく分配金の少なくとも一部を前記貸与型奨学金の返済に充てること等、を含む前記契約条件を提案可能であり、
前記分配金は、所定期間において前記人材が前記事業者から得る給与所得から、前記所得分配契約が含む分配率に基づいて分配される分配金である、
所得分配契約の支援装置。
【請求項2】
前記提案部は、前記人材情報及び前記事業者情報に基づく前記契約条件の提案に関する機械学習に基づいて、前記契約条件を提案可能である、請求項1に記載の支援装置。
【請求項3】
前記人材からの指令に応じて前記事業者情報の少なくとも一部を前記人材に提供可能な事業者情報提供部をさらに備え、
前記提案部は、前記指令を行った人材に対応する前記人材情報と、前記事業者情報提供部が提供した前記事業者情報に基づいて前記人材が指定した前記事業者に対応する前記事業者情報と、に基づいて前記契約条件を提案可能である、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項4】
前記事業者からの指令に応じて前記人材情報の少なくとも一部を前記事業者に提供可能な人材情報提供部をさらに備え、
前記提案部は、前記人材情報提供部が提供した前記人材情報に基づいて前記事業者が指定した前記人材に対応する前記人材情報と、前記指令を行った事業者に対応する前記事業者情報と、に基づいて前記契約条件を提案可能である、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項5】
前記提案部は、前記事業者における前記人材の勤務期間に応じて前記分配率が変化する等の前記契約条件を提案可能である、請求項1に記載の支援装置。
【請求項6】
前記所得分配契約を締結した前記人材と雇用契約を締結した事業者に、前記分配金の支払いを指令可能な支払指令部をさらに備える、請求項1に記載の支援装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所得分配契約の支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
学生が各種学校において教育を受けるためには、学費等の支払いが必要となる。各種学校として、例えば、看護業界の場合においては、看護学校、看護大学、看護大学院等が挙げられる。学費等は、例えば、入学金、授業料、教科書代、学用品代等を含む。学費等の支払いを支援するべく、各種の奨学金制度が設けられている。
【0003】
各種の奨学金制度は、事業者等が学生に奨学金を貸与する貸与型奨学金制度を含む。貸与型奨学金制度は、返還の免除に関する条件が設けられた奨学金を含む。返還の免除に関する条件として、例えば、貸与された学生が貸与した者が指定する事業者の下で卒業後に一定期間勤務することにより、貸与された奨学金の一部又は全部の返還を免除されるとの条件が挙げられる。
【0004】
しかしながら、各種の事情によって、貸与された学生が貸与した事業者の下で一定期間勤務できない場合がある。貸与型奨学金のリファイナンスは、このような学生の卒業後の生活等を支援し得る。
【0005】
学生が借りた金銭をリファイナンスすることに関し、特許文献1は、借り換えのオファーを開始すること、借り換えのリクエストを開始すること、借り換えの金利、支払いスケジュール、残高、担保等を設定すること等からなるグループから選択されるローン借り換え活動に関し、ローン借り換え活動のセット及びローン借り換えの結果のセットについて訓練される、ロボティックプロセスオートメーション回路等を含むことを特徴とするシステムを開示している。特許文献1において、ローンは、学生ローン等を含む。
【0006】
特許文献1は、各種ローンに関し、貸付トランザクション又は貸付環境の問題を解決し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2022-506460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、学生の卒業後の所得が貸与された奨学金の返済額に対して不十分な場合があり得る。とりわけ、貸与された奨学金の一括返済を求められるようなタイプの貸与型奨学金では、卒業後の学生は、奨学金の返済に著しい困難を覚え得る。
【0009】
特許文献1の技術は、学生ローンを金利、支払いスケジュール、残高、担保等が設定された別のローンに借り換えることを支援し得るに留まる。特許文献1の技術は、卒業後の所得が奨学金の返済額に対して不十分な学生を支援する点において、さらなる改良の余地がある。
【0010】
本発明の目的は、貸与型奨学金を所得分配契約にリファイナンスすることの支援を通じて学生の卒業後の生活等を支援することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、事業者への就職を希望する人材と就職先となる事業者それぞれの情報に基づいて分配金の少なくとも一部を貸与型奨学金の返済に充てる所得分配契約の契約条件を提案可能な支援装置によって、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0012】
第1の特徴に係る発明は、人材に関する情報の1以上を含む人材情報を受信可能な人材情報受信部と、事業者に関する情報の1以上を含む事業者情報を受信可能な事業者情報受信部と、前記人材情報及び前記事業者情報に基づいて所得分配契約の契約条件を提案可能な提案部と、を備え、前記人材情報は、前記人材が返済義務を負う貸与型奨学金の返済に関する情報である返済情報を含み、前記提案部は、前記事業者が前記人材と雇用契約を締結することと、前記所得分配契約に基づく分配金の少なくとも一部を前記貸与型奨学金の返済に充てることと、を含む前記契約条件を提案可能であり、前記分配金は、所定期間において前記人材が前記事業者から得る給与所得から、前記所得分配契約が含む分配率に基づいて分配される分配金である、所得分配契約の支援装置を提供する。
【0013】
学生における受講料の支払いに係る負担を軽減可能な契約モデルとして、所得分配契約(Income Share Agreement、ISA)が提案されている。所得分配契約では、学生等が、受講料等の支払いを入学前、もしくは在学中に行うことの代わりとして、学生の卒業後の特定期間の所得の一部(分配金)を支払うことを契約する。これにより、所得分配契約は、卒業後の学生の負担能力に応じた支払いを可能とする。よって、卒業後の学生は、卒業後の所得がリファイナンス前の貸与型奨学金の返済額に対して不十分であっても、支払いを続けられる。
【0014】
第1の特徴に係る発明は、人材情報及び事業者情報に基づいて所得分配契約の契約条件を提案できる。ここで、人材情報は、人材が返済義務を負う貸与型奨学金の返済情報等を含む。事業者情報は、該人材が雇用契約を締結する予定の事業者の情報である。このように契約条件を提案できることにより、該人材と該事業者は、該人材が返済義務を負う貸与型奨学金を、該人材が負担能力に応じた分配金を支払う所得分配契約にリファイナンスできる。
【発明の効果】
【0015】
よって、本発明は、貸与型奨学金を所得分配契約にリファイナンスすることの支援を通じて学生の卒業後の生活等を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態の支援システムSのハードウェア構成及びソフトウェア構成を示すブロック図である。
図2図2は、人材リスト121の一例である。
図3図3は、事業者リスト122の一例である。
図4図4は、契約リスト123の一例である。
図5図5は、本実施形態の支援装置1が実行する支援処理の好ましい流れの一例を示すメインフローチャートである。
図6図6は、図5に続くフローチャートである。
図7図7は、図6に続くフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下は、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明するものである。
【0018】
<支援システムS>
図1は、本実施形態の支援システムSのハードウェア構成及びソフトウェア構成を示すブロック図である。本実施形態の支援システムSは、支援装置1を少なくとも含んで構成される。本実施形態の支援システムSは、事業者端末C及び/又は人材端末Tをさらに含んで構成されることが好ましい。
【0019】
〔支援装置1〕
支援装置1は、人材情報及び事業者情報に基づいて所得分配契約の契約条件を提案できる。支援装置1は、制御部11と記憶部12と通信部13とを少なくとも備える。
【0020】
支援装置1は、特に限定されない。支援装置1は、例えば、各種サーバ、互いに通信可能な複数のサーバを含んで構成されるクラウドサーバ、パーソナルコンピュータ等によって例示される端末、等の1以上を含む装置でよい。
【0021】
[制御部11]
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)等を備える。
【0022】
制御部11は、必要に応じて記憶部12及び/又は通信部13と協働する。そして、制御部11は、支援装置1で実行される本実施形態のプログラムのソフトウェア構成要素である、人材情報受信部111、事業者情報受信部112、事業者情報提供部113、人材情報提供部114、提案部115、支払指令部116、等を実現する。本実施形態のプログラムのソフトウェア構成要素それぞれが提供する機能は、後述する支援処理の好ましい流れの説明において示される。
【0023】
[記憶部12]
記憶部12は、データ及び/又はファイルが記憶される装置であって、ハードディスク、半導体メモリ、記録媒体、及びメモリカード等によるデータのストレージ部を有する。
【0024】
記憶部12は、ネットワークNを介してNAS、SAN、クラウドストレージ、ファイルサーバ及び/又は分散ファイルシステム等の記憶装置又は記憶システムとの接続を可能にする仕組みを有してもよい。NASは、Network Attached Storageの略語である。SANは、Storage Area Networkの略語である。
【0025】
記憶部12には、マイクロコンピューターで実行されるプログラム、人材情報リスト121、事業者情報リスト122、契約リスト123、並びに、人材情報及び事業者情報に基づく所得分配契約の契約条件の提案に関する機械学習のデータ、等が記憶されている。
【0026】
(人材情報リスト121)
人材情報リスト121は、人材に関する情報の1以上を含む。本実施形態における「人材」は、貸与型奨学金の返済義務に関する所得分配契約の締結が見込まれる者及び/又は該所得分配契約を締結した者を指す。
【0027】
人材情報リスト121は、人材情報を識別できる人材情報IDを対応する人材情報と関連付けて格納できることが好ましい。これにより、支援装置1は、人材情報IDを用いて人材情報を管理し得る。
【0028】
人材に関する情報は、人材が返済義務を負う貸与型奨学金の返済に関する返済情報を含むものであれば、特に限定されない。返済情報は、例えば、貸与型奨学金の返済に関する債権者、貸与型奨学金の返済残高、等を含む。これにより、提案部115は、貸与型奨学金の債権者・返済残高を踏まえた契約条件を提案できる。
【0029】
人材に関する情報は、以下に示す定量的情報及び定性的情報の1以上をさらに含むことが好ましい。
【0030】
定量的情報は、人材に関する情報のうち、数値によって分析できる情報である。定量的情報は、例えば、人材が受けた教育年数、人材が受けた教育の種類、人材が教育を受けた教育機関の種類、人材の年齢、人材が有する資格、人材の世帯構成、人材の職位、人材の経験職場数、人材の勤続年数、等の1以上を含む。
【0031】
教育年数、教育の種類、教育機関の種類、年齢、資格、職位、経験職場数、及び勤続年数等は、人材が雇用契約を締結した場合の予想年収、人材が勤続すると見込まれる年数、等によって例示される人材の将来のキャリアに影響を及ぼし得る。将来のキャリアは、予想年収、貸倒率等によって例示される、契約条件において考慮対象となる予測に影響を及ぼし得る。よって、定量的情報が上述の各種情報等を含むことにより、提案部115は、これらを踏まえた契約条件を提案できる。
【0032】
年齢及び世帯構成等は、人材が新たに子供を持つことになる可能性及び新たに子供を持つと見込まれる時期等に影響を及ぼし得る。人材が新たに子供を持つことになった場合、該人材は、離職リスクが高くなることが見込まれる。また、すでに人材が子供を持っていて、なお働く意思を有する場合、該人材は、離職リスクが低いことが見込まれる。よって、定量的情報が年齢及び世帯構成等を含むことにより、提案部115は、これらを踏まえた契約条件を提案できる。
【0033】
年齢等は、年収の伸び率等に影響を及ぼし得る。例えば、看護師においては、30代半ばから年収の伸び率が緩やかになると言われている。よって、定量的情報が年齢等を含むことにより、提案部115は、これを踏まえた契約条件を提案できる。
【0034】
世帯構成等は、人材がパートナーの扶養者となる可能性等に影響を及ぼし得る。パートナーの扶養者となった場合、該人材は、勤務時間を減らし得る。また、扶養者となった人材は、離職する可能性がある。したがって、人材がパートナーの扶養者となる可能性は、該人材の勤務状況及び年収等に影響を及ぼし得る。よって、定量的情報が世帯構成等を含むことにより、提案部115は、これらを踏まえた契約条件を提案できる。
【0035】
定性的情報は、人材に関する情報のうち、数値によって分析できない情報である。定性的情報は、例えば、人材のキャリア設計、人材が希望する勤務先、等の1以上を含む。
【0036】
人材のキャリア設計は、人材が雇用契約を締結した場合の予想年収、人材が勤続すると見込まれる年数、等によって例示される人材の将来のキャリアに影響を及ぼし得る。将来のキャリアは、予想年収、貸倒率等、契約条件において考慮対象となる予測に影響を及ぼし得る。よって、定性的情報が人材のキャリア設計を含むことにより、提案部115は、これらを踏まえた契約条件を提案できる。
【0037】
人材が希望する勤務先は、人材の将来のキャリア及び事業者ごとの離職リスク等に影響を及ぼし得る。離職リスクは、貸倒率等によって例示される、契約条件において考慮対象となる予測に影響を及ぼし得る。よって、定性的情報が希望する勤務先を含むことにより、提案部115
は、これらを踏まえた契約条件を提案できる。
【0038】
図2は、人材情報リスト121の一例である。図2に示す人材情報リスト121は、人材情報ID「T0001」と関連付けられた人材情報を含む。図2に示す例において、該人材情報に対応する人材は、看護師である。該人材情報は、返済情報、定量的情報、及び定性的情報等、を有する。
【0039】
該返済情報は、債権者が「医療法人〇〇会」であり、返済残高が「90万円」であるとの該人材が貸与を受けた貸与型奨学金の返済に関する情報を含む。これにより、提案部115は、返済残高「90万円」の貸与型奨学金を、転職先の病院が「医療法人〇〇会」に建て替えて支払い、該人材が給与の一定割合を分配金として該病院に対して返済できるような契約条件を提案できる。
【0040】
該定量的情報は、該人材が専門学校で3年間の教育を受けたこと、年齢が〇〇歳であること、世帯構成が単身世帯であること、該人材が准看護師の資格を有すること等、との情報を含む。これにより、提案部115は、該人材が雇用契約を締結した場合の予想年収等を見積ることができる。そして、提案部115は、該見積もりを踏まえた契約条件を提案できる。
【0041】
該定性的情報は、該人材が育児中でも勤務可能な職場を希望しているとの勤務希望先に関する情報と、該人材が正看護師となって定年まで働き続けることを希望しているとのキャリア設計等を含む。これにより、提案部115は、人材のキャリア設計を見積ることができる。そして、提案部115は、該見積もりを踏まえた契約条件を提案できる。
【0042】
(事業者情報リスト122)
事業者情報リスト122は、事業者に関する情報の1以上を含む事業者情報を含む。本実施形態における「事業者」は、貸与型奨学金の返済義務に関する所得分配契約を被雇用者と締結することが見込まれる事業者及び/又は該所得分配契約を締結した事業者を指す。
【0043】
事業者情報リスト122は、事業者情報を識別できる事業者情報IDを対応する事業者情報と関連付けて格納できることが好ましい。これにより、支援装置1は、事業者情報IDを用いて事業者情報を管理し得る。
【0044】
事業者に関する情報は、特に限定されない。事業者情報は、例えば、事業者の規模、勤務先の立地、事業者の種類、等の1以上を含む。
【0045】
事業者の規模を示す情報は、特に限定されない。規模を示す情報は、事業者の種類に応じた適宜の数値指標でよい。事業者の種類が病院である場合、規模を示す情報として、例えば、病床数が挙げられる。
【0046】
勤務先の立地は、例えば、事業者が人材を勤務させる施設等の立地に関する情報である。立地は、例えば、具体的な地名の一部又は全部、立地を分類する情報、等の1以上を含む。立地を分類する情報として、例えば、立地を都心部と地方とに分類する情報が挙げられる。
【0047】
事業者の種類を示す情報は、特に限定されない。種類を示す情報は、例えば、事業者の経営主体の分類、事業者において取り扱いが多い業務、等の1以上を含む。事業者の経営主体の分類として、例えば、事業者の種類が病院である場合、国立病院、医療法人、民間病院、市立病院、大学附属病院、等が挙げられる。事業者において取り扱いが多い業務として、例えば、事業者の種類が病院である場合、急性期医療、慢性期医療、回復期医療、等が挙げられる。
【0048】
規模を示す情報、立地、及び種類は、人材が雇用契約を締結した場合の予想年収、人材が勤続を続けると見込まれる年数、等によって例示される人材の将来のキャリアに影響を及ぼし得る。将来のキャリアは、予想年収、貸倒率等、契約条件において考慮対象となる予測に影響を及ぼし得る。よって、事業者情報が規模を示す情報、立地、及び/又は種類を含むことにより、提案部115は、これらを踏まえた契約条件を提案できる。
【0049】
立地は、人材の離職リスクに影響を及ぼし得る。例えば、同業他社が多いと見込まれる都心部では、同業他社への転職による離職リスクが高まり得る。また、地方では、都心に比べ、同一地方に留まるキャリア志向を有する学生が多いと考えられることから、離職リスクは低いと考え得る。よって、事業者情報が立地を含むことにより、提案部115は、該リスクを踏まえた契約条件を提案できる。また、人材が希望する勤務地と立地とが一致する場合、人材が所得分配契約及び雇用契約を締結する見込みが増し得る。加えて、人材が希望する勤務地と立地とが一致する場合、離職リスクが低くなることが見込まれる。よって、事業者情報が立地を含むことにより、提案部115は、これらを踏まえた契約条件を提案できる。
【0050】
図3は、事業者情報リスト122の一例である。図3に示す事業者情報リスト122は、事業者情報ID「C0001」と関連付けられた事業者情報を含む。図3に示す例において、該事業者情報に対応する事業者の種類は、病院である。
【0051】
該事業者情報は、事業者名が「市立〇〇病院」であり、該事業者が急性期医療を主体とする市立病院であり、病床数が640床の規模であり、地方(〇〇市)に立地するとの事業者に関する情報等を含む。これにより、提案部115は、該事業者情報から想定される予想年収、貸倒率、離職リスク等に応じた契約条件を提案できる。
【0052】
(契約リスト123)
契約リスト123は、支援装置1において管理対象となる所得分配契約を格納する。所得分配契約は、事業者が人材と雇用契約を締結することと、所得分配契約に基づいて分配される分配金の少なくとも一部を該人材が返済義務を負う貸与型奨学金の返済に充てること等、を契約条件に含むものであれば、特に限定されない。
【0053】
契約リスト123は、所得分配契約を識別できる契約IDを対応する所得分配契約と関連付けて格納できることが好ましい。これにより、支援装置1は、契約IDを用いて所得分配契約を管理し得る。
【0054】
契約リスト123に格納される所得分配契約は、所得分配契約に基づく分配金の分配率を含む。これにより、人材と事業者は、該人材が返済義務を負う貸与型奨学金を、該人材が負担能力に応じた分配率の分配金を支払う所得分配契約にリファイナンスできる。
【0055】
契約リスト123に格納される所得分配契約は、事業者における人材の勤務期間に応じて分配率が変化する契約条件を含むことが好ましい。これにより、支援装置1は、例えば、勤務期間が長くなるほど分配率が下がる契約条件を管理できる。このような契約条件は、人材が事業者との雇用契約を早期に終了させるリスクを低減し、事業者における定着率を高め得る。これにより、事業者は、人材の卒業後の生活等により適した契約条件で人材と雇用契約及び所得分配契約を締結し得る。
【0056】
図4は、契約リスト123の一例である。図4に示す契約リスト123は、契約ID「A0001」と関連付けられた所得分配契約を含む。図4に示す例において、該所得分配契約は、看護師である人材と病院である事業者との間で締結され得る契約である。
【0057】
該所得分配契約は、事業者が人材と雇用契約を締結することと、所得分配契約に基づく分配金の少なくとも一部を該人材が返済義務を負う貸与型奨学金の返済に充てることと、を契約条件に含む。これにより、支援装置1は、人材が返済義務を負う貸与型奨学金を、該人材が負担能力に応じた分配金を支払うようリファイナンスした所得分配契約を管理できる。
【0058】
該所得分配契約は、事業者における人材の勤務期間が長くなった期間の程度に応じて分配率が逓減していく契約条件を含む。これにより、支援装置1は、勤務期間が長くなるほど分配率が下がる契約条件を管理できる。
【0059】
(機械学習)
記憶部12には、人材情報及び事業者情報に基づく所得分配契約の契約条件の提案に関する機械学習のデータが記憶されることが好ましい。
【0060】
所得分配契約へのリファイナンスにおいて、検討すべき情報は、多岐にわたる。このような情報として、例えば、事業者の規模、勤務先の立地、事業者の種類、等の各種事業者情報が含まれる。また、このような情報として、例えば、人材が教育を受けた年数、人材が受けた教育のコース、人材の年齢、人材が有する資格、人材の世帯構成、人材が示したキャリア設計、等の各種人材情報が挙げられる。
【0061】
多岐に渡る情報を検討して適切な契約条件を提案するのは、容易でない。記憶部12に上述の機械学習のデータが記憶されることにより、支援装置1は、該機械学習のデータを用いて、検討すべき情報が多岐に渡る所得分配契約であっても、貸与型奨学金の返済と、学生の卒業後の生活等の支援と、を両立可能な契約条件を提案し得る。
【0062】
機械学習のデータは、人材情報及び事業者情報に基づく所得分配契約の契約条件の提案に関する機械学習のデータであれば、特に限定されない。
【0063】
該データとして、例えば、教師あり学習に基づく機械学習であって、人材情報及び事業者情報の組み合わせを複数の契約条件のいずれかに分類可能な機械学習を含むデータが挙げられる。これにより、提案部115は、教師あり学習に基づく信頼できる機械学習が行った分類に基づいて、契約条件を提案できる。
【0064】
また、該データとして、例えば、教師なし学習に基づく機械学習であって、人材情報及び事業者情報の組み合わせを複数の契約条件のいずれかに分類可能な機械学習を含むデータが挙げられる。これにより、提案部115は、教師データがない人材情報及び事業者情報の組合せについて、複数の契約条件のいずれかに分類できる。そして、提案部115は、該分類に基づいて、契約条件を提案できる。
【0065】
加えて、該データとして、例えば、ディープラーニングを用いた機械学習のデータが挙げられる。これにより、提案部115は、上述の分類の全体像から細部までの各々の粒度の概念を階層構造として関連させた機械学習に基づいて、契約条件を提案できる。
【0066】
[通信部13]
通信部13は、支援装置1をネットワークNに接続して事業者端末C及び/又は人材端末T等と通信可能にするものであれば特に限定されない。通信部13として、例えば、携帯電話ネットワークに対応した無線装置、IEEE802.11に準拠したWi-Fi(Wireless Fidelity)対応デバイス、Bluetooth(登録商標)規格等に対応した近距離無線装置、及びイーサネット規格に対応したネットワークカード等が挙げられる。
【0067】
〔事業者端末C〕
事業者端末Cは、事業者が利用する端末である。事業者端末Cは、ネットワークN等を介して支援装置1と通信可能であれば、特に限定されない。事業者端末Cは、例えば、パーソナルコンピュータ等によって例示される据え置き型端末、タブレット端末によって例示される携帯端末、等の1以上を含む端末でよい。
【0068】
事業者端末Cは、事業者に関する情報の1以上を含む事業者情報を支援装置1に送信できる。また、事業者端末Cは、人材情報の少なくとも一部を提供するよう支援装置1に指令できる。加えて、事業者端末Cは、支援装置1から提供された人材情報に基づいて事業者が指定した人材を特定可能な情報を支援装置1に送信できる。
【0069】
〔人材端末T〕
人材端末Tは、人材が利用する端末である。人材端末Tは、ネットワークN等を介して支援装置1と通信可能であれば、特に限定されない。人材端末Tは、例えば、スマートフォン及びタブレット端末によって例示される携帯端末、パーソナルコンピュータ等によって例示される据え置き型端末、等の1以上を含む端末でよい。
【0070】
人材端末Tは、人材に関する情報の1以上を含む人材情報を支援装置1に送信できる。また、人材端末Tは、事業者情報の少なくとも一部を提供するよう支援装置1に指令できる。加えて、人材端末Tは、支援装置1から提供された事業者情報に基づいて人材が指定した事業者を特定可能な情報を支援装置1に送信できる。
【0071】
〔ネットワークN〕
ネットワークNの種類は、支援装置1と事業者端末C及び/又は人材端末T等とを通信可能にするものであれば特に限定されない。ネットワークNは、例えば、ローカルエリアネットワーク、イントラネット、エクストラネット、インターネット、あるいはこれらネットワークを複数組み合わせたネットワーク等が挙げられる。
【0072】
〔貸与型奨学金〕
貸与型奨学金は、特に限定されない。貸与型奨学金は、特定の資格又は特定分野に関する一群の資格を取得するための教育に関する奨学金であることが好ましい。これにより、該奨学金の返済義務を負う人材と雇用契約を締結することを希望する事業者との対応付けが容易になる。
【0073】
なかでも、貸与型奨学金は、貸与された学生が貸与した者が指定する事業者の下で卒業後に一定期間勤務することにより貸与された奨学金の一部又は全部の返還を免除されるとの条件をつけたものであることが好ましい。このような貸与型奨学金として、例えば、看護師の教育に関する奨学金が挙げられる。よって、貸与型奨学金が上述のような条件をつけた奨学金であることにより、支援装置1は、貸与型奨学金を貸与した者が指定する事業者と異なる事業者の下で人材が勤務することを容易にし得る。
【0074】
貸与型奨学金が看護師の教育に関する奨学金であり、かつ、事業者の種類が病院である場合、転職先の病院の立地が地方となる場合があり得る。このような場合において、支援装置1は、立地が都心部である場合より低い分配率となる契約条件を提案することで、地方等における看護師不足の問題の解消を支援し得る。これにより、支援装置1は、看護学生の卒業後の生活等を支援することと、地方等における看護師不足の問題の解消を支援することと、を両立し得る。
【0075】
〔本実施形態の支援装置1が実行する支援処理のメインフローチャート〕
図5は、本実施形態の支援装置1が実行する支援処理の好ましい流れの一例を示すメインフローチャートである。図6は、図5に続くフローチャートである。図7は、図6に続くフローチャートである。以下、図5から図7を用いて、該支援処理の好ましい流れの一例が説明される。
【0076】
[ステップS1:人材情報を受信したか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して人材情報受信部111を実行する。そして、制御部11は、人材情報を受信したか判別する処理を行う(ステップS1、人材情報受信ステップ)。受信したと判別したならば、制御部11は、処理をステップS2に移す。受信したと判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS3へ移す。
【0077】
[ステップS2:人材情報を格納]
制御部11は、記憶部12と協働して人材情報受信部111を実行する。そして、制御部11は、ステップS1で受信したと判別された人材情報を人材情報リスト121に格納する処理を行う(ステップS2、人材情報格納ステップ)。制御部11は、処理をステップS3へ移す。
【0078】
[ステップS3:事業者情報を受信したか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して事業者情報受信部112を実行する。そして、制御部11は、事業者情報を受信したか判別する処理を行う(ステップS3、事業者情報受信ステップ)。受信したと判別したならば、制御部11は、処理をステップS4に移す。受信したと判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS5へ移す。
【0079】
[ステップS4:事業者情報を格納]
制御部11は、記憶部12と協働して事業者情報受信部112を実行する。そして、制御部11は、ステップS3で受信したと判別された事業者情報を事業者情報リスト122に格納する処理を行う(ステップS4、事業者情報格納ステップ)。制御部11は、処理をステップS5へ移す。
【0080】
必須の態様ではないが、支援処理は、ステップS5からステップS6の事業者情報の提供に関する一連の処理を含むことが好ましい。これにより、学生等の人材は、事業者情報に基づいて指定した所望の事業者に関する所得分配契約の契約条件を確認できる。よって、該人材は、契約条件を含めた検討を行い、卒業後の生活等に適した事業者を選択できる。そして、該人材は、選択した事業者と所得分配契約の締結交渉を進め得る。
【0081】
[ステップS5:事業者情報の提供を指令されたか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して事業者情報提供部113を実行する。そして、制御部11は、人材端末Tから事業者情報の提供を指令されたか判別する処理を行う(ステップS5、事業者情報提供依頼判別ステップ)。指令されたと判別したならば、制御部11は、処理をステップS6に移す。指令されたと判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS7へ移す。
【0082】
[ステップS6:事業者情報を提供]
制御部11は、記憶部12と協働して事業者情報提供部113を実行する。そして、制御部11は、ステップS5で提供を指令した人材端末Tに提供を依頼された事業者情報を提供する処理を行う(ステップS6、事業者情報提供ステップ)。制御部11は、処理をステップS7へ移す。
【0083】
必須の態様ではないが、支援処理は、ステップS7からステップS8の人材情報の提供に関する一連の処理を含むことが好ましい。これにより、事業者は、人材情報に基づいて指定した所望の人材に関する所得分配契約の契約条件を確認できる。よって、該事業者は、契約条件を含めた検討を行い、所得分配契約を締結して雇用したい人材を選択できる。そして、該事業者は、選択した人材と所得分配契約の締結交渉を進め得る。これにより、人材は、所得分配契約を締結可能である、卒業後の生活等に適した事業者と雇用契約を結び得る。
【0084】
[ステップS7:人材情報の提供を指令されたか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して人材情報提供部114を実行する。そして、制御部11は、事業者端末Cから人材情報の提供を指令されたか判別する処理を行う(ステップS7、人材情報提供依頼判別ステップ)。指令されたと判別したならば、制御部11は、処理をステップS8に移す。指令されたと判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS9へ移す。
【0085】
[ステップS8:人材情報を提供]
制御部11は、記憶部12と協働して人材情報提供部114を実行する。そして、制御部11は、ステップS5で提供を依頼した事業者端末Cに提供を依頼された人材情報を提供する処理を行う(ステップS8、人材情報提供ステップ)。制御部11は、処理をステップS9へ移す。
【0086】
[ステップS9:契約条件の提案を指令されたか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して提案部115を実行する。そして、制御部11は、端末から契約条件の提案を指令されたか判別する処理を行う(ステップS9、提案指令判別ステップ)。指令されたと判別したならば、制御部11は、処理をステップS10に移す。指令されたと判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS11へ移す。
【0087】
端末が事業者端末Cである場合、提案指令判別ステップは、当該事業者端末Cから人材を指定する情報を含む指令を受信できることが好ましい。これにより、後述する提案ステップは、ステップS7で指令を行った事業者に対応する事業者情報と、ステップS8で提供された人材情報に基づいてステップS5で指令を行った事業者が指定した人材に対応する人材情報と、に基づいて契約条件を提案できる。
【0088】
端末が人材端末Tである場合、提案指令判別ステップは、当該人材端末Tから事業者を指定する情報を含む指令を受信できることが好ましい。これにより、後述する提案ステップは、ステップS7で指令を行った人材に対応する人材情報と、ステップS6で提供された事業者情報に基づいてステップS5で指令を行った人材が指定した事業者に対応する事業者情報と、に基づいて契約条件を提案できる。
【0089】
[ステップS10:契約条件を提案]
制御部11は、記憶部12と協働して提案部115を実行する。そして、制御部11は、ステップS9において判別対象となった提案に対応する人材情報及び事業者情報に基づいて所得分配契約の契約条件を提案する処理を行う(ステップS10、提案ステップ)。制御部11は、処理をステップS11へ移す。提案ステップは、ステップS9で指令を行った端末に提案する契約条件を送信する処理を含むことが好ましい。
【0090】
提案ステップにおける契約条件の提案は、所得分配契約の契約期間、分配率、及び/又は、インセンティブ設計等、を人材情報及び事業者情報に基づいて適切に定めることを含む。インセンティブ設計として、例えば、事業者の立地が地方である場合の分配率を事業者の立地が都心である場合の分配率より低くする設計、勤務期間に応じて分配率が逓減する設計、等が挙げられる。これにより、支援装置1は、適切なリファイナンスを実現し得る。
【0091】
提案ステップは、所得分配契約及び雇用契約の締結に関するリスクを提示可能であることが好ましい。これにより、支援装置1は、例えば、貸倒率が高い等のリスクを事業者に提示し得る。よって、事業者は、提示されたリスクに基づいて、所得分配契約等の交渉を進めるか否かを判断できる。
【0092】
記憶部12に人材情報及び事業者情報に基づく契約条件の提案に関する機械学習が記憶されている場合、提案ステップは、該機械学習に基づいて、契約条件を提案できることが好ましい。
【0093】
貸与型奨学金から所得分配契約へのリファイナンスにおいて、検討すべき情報は、多岐にわたる。このような情報として、例えば、貸与型奨学金の債権者、貸与型奨学金の返済残高、等によって例示される、人材が返済義務を負う貸与型奨学金の返済に関する情報が含まれる。また、このような情報として、例えば、事業者の規模、勤務先の立地、事業者の種類、等によって例示される各種事業者情報が含まれる。加えて、このような情報として、例えば、人材が教育を受けた年数、人材が受けた教育のコース、人材の年齢、人材が有する資格、人材の世帯構成、人材が示したキャリア設計、等によって例示される各種人材情報が挙げられる。
【0094】
多岐に渡る情報を検討して適切な契約条件を提案するのは、容易でない。機械学習に基づいて契約条件を提案できる提案ステップは、機械学習を用いることにより、検討すべき情報が多岐に渡る所得分配契約であっても、貸与型奨学金の返済と、学生の卒業後の生活等の支援と、を両立可能な契約条件を提案し得る。
【0095】
支援処理が事業者情報の提供に関するステップS5からステップS6の一連の処理を含む場合、提案ステップにおいて参照される人材情報は、ステップS5で指令を行った人材に対応する人材情報であることが好ましい。また、この場合において、事業者情報は、ステップS6で提供された事業者情報に基づいてステップS5で指令を行った人材が指定した事業者に対応する事業者情報であることが好ましい。
【0096】
これにより、学生等の人材は、事業者情報に基づいて指定した所望の事業者に関する所得分配契約の契約条件を確認できる。よって、該人材は、契約条件を含めた検討を行い、卒業後の生活等に適した事業者を選択できる。そして、該人材は、選択した事業者と所得分配契約の締結交渉を進め得る。
【0097】
支援処理が人材情報の提供に関するステップS7からステップS8の一連の処理を含む場合、提案ステップにおいて参照される事業者情報は、ステップS7で指令を行った事業者に対応する事業者情報であることが好ましい。また、この場合において、人材情報はステップS8で提供された人材情報であることが好ましい。
【0098】
これにより、事業者は、人材情報に基づいて指定した所望の人材に関する所得分配契約の契約条件を確認できる。よって、該事業者は、契約条件を含めた検討を行い、所得分配契約を締結して雇用したい人材を選択できる。そして、該事業者は、選択した人材と所得分配契約の締結交渉を進め得る。これにより、人材は、所得分配契約を締結可能である、卒業後の生活等に適した事業者と雇用契約を結び得る。
【0099】
提案ステップは、事業者における人材の勤務期間に応じて分配率が変化する契約条件を提案できることが好ましい。
【0100】
これにより、提案ステップは、例えば、勤務期間が長くなるほど分配率が低減する契約条件を提案できる。このような契約条件は、人材が事業者との雇用契約を早期に終了させるリスクを低減し得る。これにより、事業者は、人材の卒業後の生活等により適した契約条件で人材と雇用契約及び所得分配契約を締結し得る。
【0101】
提案ステップは、疾病等の人材の責によらず、解雇や求職等で勤務を継続できなかった場合に、求職活動を行っている限りにおいて、契約期間を継続し、かつ、分配金の支払いを停止する条項を含む等の契約条件を提案できることが好ましい。これにより、支援装置1は、やむを得ず休職等することとなった学生の卒業後の生活等をより一層支援できる。
【0102】
提案ステップは、例えば産休等の事由により、人材が復帰を前提として一時的に休職した場合に、契約期間を休職中停止し、分配金の支払いを停止し、かつ、復職後に契約期間及び支払いが再開する条項を含む等の契約条件を提案できることが好ましい。これにより、支援装置1は、復帰を前提として休職等することとなった人材の生活等をより一層支援できる。
【0103】
提案ステップは、人材が自らの責によって勤務を継続せず、かつ、被扶養者となった場合に、契約期間を継続し、かつ、世帯収入から分配金を支払う条項を含む等の契約条件を提案できることが好ましい。これにより、支援装置1は、被扶養者となった人材が負担能力に応じた分配金を支払う所得分配契約の締結を支援できる。
【0104】
貸与型奨学金が看護学生や医学部生等の医療系学生に対する奨学金であり、かつ、事業者が病院等である場合がある。このような場合において、提案ステップは、立地が地方である場合、立地が都心部である場合より低い分配率となる契約条件、等の地方勤務を促すインセンティブ設計に基づく契約条件を提案できることが好ましい。これにより、支援装置1は、地方における、看護師をはじめとした医療従事者に関する問題の解消を支援し得る。該問題は、看護師をはじめとした医療従事者の離職率増加の問題、看護師をはじめとした医療従事者不足の問題、等を含む。
【0105】
支援処理は、ステップS11からステップS14の分配金の天引きを指令することに関する一連の処理を含むことが好ましい。本実施形態における「天引き」は、事業者が人材に支払う給与から分配金相当額を予め差し引くことを指す。
【0106】
これにより、支援装置1は、事業者が人材の所得から分配金を天引きして支払うことを支援可能である。よって、事業者及び人材において、所得分配契約に係る事務的負担が低減され得る。したがって、事業者及び人材が所得分配契約を締結することが、より一層見込まれ得る。
【0107】
[ステップS11:契約が締結されたか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して支払指令部116を実行する。そして、制御部11は、所得分配契約が締結されたか判別する処理を行う(ステップS11、締結判別ステップ)。締結されたと判別したならば、制御部11は、処理をステップS12に移す。締結されたと判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS13へ移す。
【0108】
[ステップS12:締結された所得分配契約の契約条件を格納]
制御部11は、記憶部12と協働して支払指令部116を実行する。そして、制御部11は、ステップS11において判別対象となった所得分配契約の契約条件を契約リスト123に格納する処理を行う(ステップS12、契約条件格納ステップ)。制御部11は、処理をステップS13へ移す。
【0109】
[ステップS13:分配金の天引きを指令するか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して支払指令部116を実行する。そして、制御部11は、契約リスト123に格納された所得分配契約の契約条件に基づいて、事業者に分配金の天引きを指令するか判別する処理を行う(ステップS13、支払指令判別ステップ)。指令すると判別したならば、制御部11は、処理をステップS14に移す。指令すると判別しなかったならば、制御部11は、支援処理を終了し、ステップS1からステップS14の処理を繰り返す。
【0110】
[ステップS14:分配金の天引きを指令]
制御部11は、記憶部12と協働して支払指令部116を実行する。そして、制御部11は、ステップS13において判別対象となった分配金の天引きをステップS13において判別対象となった事業者に指令する処理を行う(ステップS14、支払指令ステップ)。制御部11は、支援処理を終了し、ステップS1からステップS14の処理を繰り返す。
【0111】
[支援処理の効果]
学生における受講料の支払いに係る負担を軽減可能な契約モデルとして、所得分配契約(Income Share Agreement、ISA)が提案されている。所得分配契約では、学生等が、受講料等の支払いを入学前、もしくは在学中に行うことの代わりとして、学生の卒業後の特定期間の所得の一部(分配金)を支払うことを契約する。
【0112】
これにより、所得分配契約は、卒業後の学生の負担能力に応じた支払いを可能とする。よって、卒業後の学生は、卒業後の所得がリファイナンス前の貸与型奨学金の返済額に対して不十分であっても、支払いを続けられる。
【0113】
支援装置1は、ステップS1からステップS14の支援処理を実行する。これにより、支援装置1は、人材が返済義務を負う貸与型奨学金の返済情報を含む人材情報及び該人材が雇用契約を締結する予定の事業者の事業者情報に基づいて所得分配契約の契約条件を提案できる。これにより、該人材と該事業者は、該人材が返済義務を負う貸与型奨学金を、該人材が負担能力に応じた分配金を支払う所得分配契約にリファイナンスできる。
【0114】
よって、ステップS1からステップS14の支援処理を実行する支援装置1は、貸与型奨学金を所得分配契約にリファイナンスすることの支援を通じて学生の卒業後の生活等を支援できる。
【0115】
また、本実施形態によれば、支援装置1の運用を介して所得分配契約の締結を支援する支援者は、所得分配契約の締結に際してリファイナンスフィー及びISA返済金を獲得し得る。これにより、支援者は、支援装置1の運用を介して所得分配契約の締結を支援する動機付けを得うる。よって、本実施形態によれば、所得分配契約の締結を介した学生の卒業後の生活等への支援がよりいっそう促され得る。リファイナンスフィーは、所得分配契約の締結に際して転職先の事業者が支援者に支払う手数料である。リファイナンスフィーの金額は、例えば、貸与型奨学金の返済額に所定の割合をかけた金額等である。ISA返済金は、分配金のうちから支援者に支払われる手数料である。ISA返済金の金額は、例えば、分配金に所定の割合をかけた金額等である。
【0116】
<支援装置1の使用例>
以下は、本実施形態における支援装置1の使用例の説明である。
【0117】
〔人材情報の登録〕
貸与型奨学金を利用した学生(人材)は、人材端末Tを介して人材情報を支援装置1に送信する。支援装置1は、該人材情報を受信し、人材情報リスト121に格納する。
【0118】
〔事業者情報の登録〕
事業者は、事業者端末Cを介して事業者情報を支援装置1に送信する。支援装置1は、該事業者情報を受信し、事業者情報リスト122に格納する。
【0119】
〔人材側からアプローチする場合〕
以下は、人材側からアプローチする場合の使用例である。この使用例では、人材側が事業者と該事業者と締結し得る所得分配契約とに関する情報を用いて調べ、事業者を指定して所得分配契約及び雇用契約を締結する。
【0120】
[事業者の指定]
人材は、人材端末Tを介して事業者情報の提供を支援装置1から受ける。人材は、提供された事業者情報を用いてどの事業者の下で勤務するか検討する。そして、人材は、勤務を希望する事業者に関する所得分配契約の契約条件を提案するよう、人材端末Tを介して支援装置1に指令する。
【0121】
[所得分配契約及び雇用契約の締結を交渉]
人材は、支援装置1に提案された契約条件を確認する。そして、人材は、該契約条件に基づいて事業者と所得分配契約及び雇用契約の締結を交渉する。そして、人材と事業者とは、交渉により、支援装置1により提案された契約条件又は該契約条件を修正した契約条件等で所得分配契約等を締結する。契約が締結された場合、支援装置1は、該所得分配契約を人材又は事業者から受信する。そして、支援装置1は、締結された所得分配契約の契約条件を契約リスト123に格納する。
【0122】
[事業者の下で勤務]
人材は、事業者の下で勤務し、給与を受け取る。そして、人材は、該給与から所得分配契約に基づく分配金を支払う。これにより、人材は、貸与型奨学金を一括返済する代わりに、負担能力に応じた分配金を払うことができる。
【0123】
〔事業者側からアプローチする場合〕
以下は、事業者側からアプローチする場合の使用例である。この使用例では、事業者側が人材と該人材と締結し得る所得分配契約とに関する情報を用いて調べ、人材を指定して所得分配契約及び雇用契約を締結する。
【0124】
[人材の指定]
事業者は、事業者端末Cを介して人材情報の提供を支援装置1から受ける。事業者は、提供された人材情報を用いてどの人材に所得分配契約及び雇用契約の締結を打診するか検討する。そして、事業者は、打診を希望する人材に関する所得分配契約の契約条件を提案するよう、事業者端末Cを介して支援装置1に指令する。
【0125】
[所得分配契約及び雇用契約の締結を交渉]
事業者は、支援装置1に提案された契約条件を確認する。そして、事業者は、該契約条件に基づいて人材と所得分配契約及び雇用契約の締結を交渉する。契約が締結された場合、支援装置1は、該所得分配契約を人材又は事業者から受信する。そして、支援装置1は、締結された所得分配契約の契約条件を契約リスト123に格納する。事業者は、所得分配契約の締結に伴い、該人材に関する貸与型奨学金の返済金を立て替え払いする。
【0126】
[分配金の天引き]
支援装置1は、事業者が人材に給与を支払うタイミング等で、分配金の天引きを事業者に指令する。事業者は、人材に払う給与等から分配金を天引きする。そして、事業者は、所得分配契約の締結に伴って立て替え払いした貸与型奨学金の返済金を、天引きした分配金の一部又は全部によって充当する。
【0127】
以上、本発明の好ましい態様の一例が説明された。なお、本発明の思想の範疇において、当業者であれば各種の変更例及び修正例に想到し得るものである。よって、それら変更例及び修正例は、上述の一例と同様に、本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものは、本発明の要旨を備えている限り、上述の一例と同様に、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
S 支援システム
1 支援装置
11 制御部
111 人材情報受信部
112 事業者情報受信部
113 事業者情報提供部
114 人材情報提供部
115 提案部
116 支払指令部
12 記憶部
121 人材情報リスト
122 事業者情報リスト
123 契約リスト
13 通信部
N ネットワーク
C 事業者端末
T 人材端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7