IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三甲株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-台車 図1
  • 特開-台車 図2
  • 特開-台車 図3
  • 特開-台車 図4
  • 特開-台車 図5
  • 特開-台車 図6
  • 特開-台車 図7
  • 特開-台車 図8
  • 特開-台車 図9
  • 特開-台車 図10
  • 特開-台車 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033395
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/00 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B62B5/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136943
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】西村 翔馬
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB02
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050FF05
(57)【要約】
【課題】キャスターの座板を台盤に固定するための規制部材の紛失を防ぐ。
【解決手段】本開示の台車10は、キャスター50の座板51が台盤11における取付準備位置から取付位置へとスライド移動されてから、規制部材60が台盤11における規制位置に配置されることで、座板51の取付準備位置への戻りが規制されてキャスター50が台盤11に固定される。そして、その規制部材60は、座板51の取付準備位置への戻りを許容する規制準備位置と規制位置との間を変位可能に台盤11に保持されている。また、規制部材60は、規制準備位置で取付準備位置の座板51を受容する受容部60Jを備えている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車のキャスターの座板が台盤における取付準備位置から取付位置へとスライド移動されてから、規制部材が前記台盤における規制位置に配置されることで、前記座板の前記取付準備位置への戻りが規制されて前記キャスターが前記台盤に固定される台車において、
前記規制部材は、前記座板の前記取付準備位置への戻りを許容する規制準備位置と前記規制位置との間を変位可能に前記台盤に保持されると共に、前記規制準備位置で前記取付準備位置の前記座板を受容する受容部を備える台車。
【請求項2】
前記規制部材は、前記座板の前記スライド移動の方向と直交する水平軸を中心に回動可能に保持されている請求項1に記載の台車。
【請求項3】
前記規制部材の回動中心は、前記座板が前記取付位置から前記取付準備位置に戻る戻り領域の上下方向の中心より上方に位置し、
前記規制部材には、
前記規制位置で、前記戻り領域の下方に位置し、前記規制準備位置で、前記戻り領域の上方に位置し、前記規制位置と前記規制準備位置との間の途中位置で、前記戻り領域内に位置すると共に、円弧状の外面を有する第1干渉部と、
前記規制位置で、前記戻り領域内に位置し、前記規制準備位置で、前記戻り領域の上方に位置すると共に、前記第1干渉部の外面の曲率半径以上の曲率半径の円弧状又は平坦な外面を有する第2干渉部と、が備えられている請求項2に記載の台車。
【請求項4】
前記規制部材と前記台盤とに設けられ、互いに係合して前記規制部材を前記規制位置に係止する係合部を備える請求項3に記載の台車。
【請求項5】
前記規制部材は、前記規制位置で回動中心を挟んで前記座板の反対側に配置される突片状の操作部を備える請求項4に記載の台車。
【請求項6】
前記操作部は、前記回動中心側に曲げ変形可能な片持ち梁構造をなし、
前記規制部材の前記係合部は、前記操作部の外面に配置されている請求項5に記載の台車。
【請求項7】
前記台盤には、
前記座板が前記スライド移動する方向である第1方向で対向する1対の対向壁と、
前記1対の対向壁から前記第1方向に延びて徐々に幅狭になる下面を有して前記座板の上面に当接する複数の上面当接壁と、が備えられている請求項1から5の何れか1の請求項に記載の台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、台盤にキャスターの座板が螺子を使わずに固定される台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の台車として、キャスターの座板が台盤における取付準備位置から取付位置へとスライド移動されてから、規制部材が台盤における規制位置に配置されることで、座板の取付準備位置への戻りが規制されてキャスターが台盤に固定されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-15449号公報(図14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の台車では、キャスターが台盤から取り外される際に、規制部材が台盤から分離して紛失することがあり、その紛失を防ぐために対策が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本開示の台車は、台車のキャスターの座板が台盤における取付準備位置から取付位置へとスライド移動されてから、規制部材が前記台盤における規制位置に配置されることで、前記座板の前記取付準備位置への戻りが規制されて前記キャスターが前記台盤に固定される台車において、前記規制部材は、前記座板の前記取付準備位置への戻りを許容する規制準備位置と前記規制位置との間を変位可能に前記台盤に保持されると共に、前記規制準備位置で前記取付準備位置の前記座板を受容する受容部を備える台車。
【発明の効果】
【0006】
本開示の台車では、規制部材は、規制位置か規制準備位置かに拘わらず台盤から分離しないから、規制部材の紛失が防がれる。また、規制部材には、座板を受容する受容部が備えられているから、規制部材を規制位置から規制準備位置に移動する際に大きく移動しなくてもよくなる。即ち、本開示の台車によれば、規制部材の配置スペースの省スペース化を図りつつ、規制部材による座板の固定を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る台車の斜視図
図2】台車の下面側の斜視図
図3】キャスターの斜視図
図4】台車の座板固定部の斜視図
図5】台車の座板固定部の側断面図
図6】規制部材が規制位置に配置されている座板固定部の斜視図
図7】規制部材が規制準備位置に配置されている座板固定部の斜視図
図8】規制部材の斜視図
図9】台盤の一部と規制部材の側断面図
図10】座板固定部と規制部材と座板の側断面図
図11】座板固定部と規制部材と座板の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図11を参照して、本開示の一実施形態の台車10について説明する。本実施形態の台車10は、例えば、前後方向H1に長い長方形の台盤11を備える。台盤11は、例えば、樹脂の成形品であって、図2に示すように主板12の下面の略全体にリブを備えた構造をなし、外形の長方形と略相似した長方形の矩形孔41を中央に備えている。また、図1に示すように、台盤11の上面の外縁部には、主板12の一部を段付き状に隆起させて土手部42が形成されている。さらに、台盤11の各辺の中央には、土手部42の内側隣り位置に長孔状の持手孔40がそれぞれ形成されている。
【0009】
図2に示すように、台盤11の下面四隅にはキャスター50が固定され、図1に示すように、台盤11の上面四隅には、ローラー受容凹部43が形成されている。そして、複数の台車10が段積みされたときに、上段側の台車10のキャスター50のローラー53が、下段側の台車10のローラー受容凹部43に受容される。
【0010】
図3に示すように、キャスター50は、前後方向H1に長い略長方形の座板51を備える。座板51の四隅には、取付孔51Aが形成されている。また、座板51の外縁部の角部は、円弧状に面取りされ、座板51の前後方向H1の両端面は、緩やかな丸みを帯びて僅かに凹んでいる。
【0011】
座板51の下面の中央部には、円形の台座部51Bが形成され、その台座部51Bの真裏となる座板51の上面中央部には、円形の陥没部51Cが形成されている。そして、台座部51Bの下面にローラー支持部材52の天井部52Aが重ねられ、台座部51Bと天井部52Aとを上下に貫通するリベット51Dにてローラー支持部材52が座板51に回動可能に連結されている。また、ローラー支持部材52には、天井部52Aから垂下する1対の脚部52Bが備えられ、それら1対の脚部52Bの下端部の間に差し渡された支持シャフト53Sにローラー53が回動可能に支持されている。
【0012】
図1に示すように、前述のローラー受容凹部43は、前後方向H1に延びる角溝状をなし、台盤11の前後方向H1の両端部における横方向H2の両端寄り位置に配置されている。また、ローラー受容凹部43の長手方向の両端部は、上下に対して傾斜している。さらには、各ローラー受容凹部43内には、長手方向の途中位置を横切るようにリブ43Aが形成されている。また、図5に示すように、台盤11のうちローラー受容凹部43の裏側部分は下面突部43Tとなって主板12から下方に突出している。
【0013】
台盤11の下面の詳細構造は以下のようになっている。即ち、図2に示すように台盤11の下面のリブは、前後方向H1に延びる複数の縦リブ13と、横方向H2に延びる複数の横リブ14とが含まれ、全体的に格子状になっている。また、複数の縦リブ13及び複数の横リブ14のそれぞれの一部により、台盤11の外側面や矩形孔41及び持手孔40の内側面が形成されている。
【0014】
複数の縦リブ13には、台盤11の横方向H2の両端寄り位置に1対ずつ配置されている横対向リブ15が含まれている。それら横対向リブ15は、台盤11の前後方向H1の全体に亘って延びている。また、横対向リブ15は、前後方向H1の両端部においては台盤11全体の下面より僅かに下方に突出すると共に、両端部を除く長手方向の途中部分においては台盤11全体の下面から大きく突出している。なお、横対向リブ15の両端寄り位置は、上下方向に対して緩やかに傾斜する中間傾斜部15Sになっている。
【0015】
各対の横対向リブ15の対向面間の距離は、キャスター50の座板51の横幅と略同一になっている。そして、各対の横対向リブ15における長手方向の両端部の間が、座板51を固定するための座板固定部90になっている。
【0016】
図4には、座板固定部90の1つが拡大して示されている。同図に示すように、座板固定部90には、1対の横対向リブ15と、それらの間を連絡して前後方向H1で対向する第1と第2の前後対向リブ16X,16Yとによって包囲された座板収容部屋91が備えられている。
【0017】
第1と第2の前後対向リブ16X,16Yは、横対向リブ15の下面と面一の下面を有する。第1の前後対向リブ16Xは、台盤11の前後方向H1の末端で外側面を形成する横リブ14より僅かに内側に配置され、第2の前後対向リブ16Yは、第1の前後対向リブ16Xと横対向リブ15の中間傾斜部15Sとの間に配置されている。また、第1の前後対向リブ16Xと前後方向H1の末端の横リブ14とは挟まれた横対向リブ15の下面には、傾斜部15Tが形成されている。さらに、第1の前後対向リブ16Xの横方向H2の中央と横リブ14との間は補強リブ16Hで連絡され、その補強リブ16Hの下面にも傾斜部15Tが形成されている。
【0018】
なお、1対の横対向リブ15のうち第1と第2の前後対向リブ16X,16Yが接続された部分には、1対の横対向リブ15同士の対向面の裏面側に増肉部15Nが形成されている。
【0019】
前述の下面突部43Tは、1対の横対向リブ15同士の間の中央に位置し、1対の横対向リブ15との間に隙間を有する。また、図5に示すように、第1と第2の前後対向リブ16X,16Yは、下面突部43Tの水平な下面における前後方向H1の両端部に接続されている。そして、図4に示すように、下面突部43Tの下面には、前後方向H1に延びて第1と第2の前後対向リブ16X,16Yの間を連絡する1対の縦リブ24が備えられている。
【0020】
図5に示すように、1対の縦リブ24の高さは、下面突部43Tの下面から第1及び第2の前後対向リブ16X,16Yの下面までの高さの半分より僅かに低くなっていて、それら1対の縦リブ24の下面は、互いに面一で水平になっている。また、図4に示すように、1対の縦リブ24には、両端寄り位置から両端に向かうに従って板厚が左右対称に徐々に大きくなるように肉盛りされた増肉部24Aが形成されている。
【0021】
また、1対の横対向リブ15の対向面のうち増肉部24Aと対向する4箇所には、縦リブ24の片面の増肉部24Aと同一形状の増肉部25が形成され、それら増肉部25の下面と縦リブ24の下面とは面一になっている。また、第1と第2の前後対向リブ16X,16Yの間の中央には、1対の横対向リブ15の間を連絡する横リブ23が備えられ、その横リブ23の下面も縦リブ24の下面と面一になっている。そして、上述した縦リブ24、増肉部25、横リブ23等の下面により、座板収容部屋91内の天井面91Jが形成されている。なお、本実施形態では、増肉部24A,25が、本開示に係る「上面当接壁」に相当する。
【0022】
図5に示すように、第1と第2の前後対向リブ16X,16Yの対向面には、座板収容部屋91の天井面91Jから下方に離れた位置に第1と第2の庇部17,18が設けられている。第1の庇部17は、第1の前後対向リブ16Xから第2の前後対向リブ16Yに向かって張り出し、横方向H2の両端部を1対の横対向リブ15に接続されている。また、第1の庇部17の上面は、天井面91Jと平行な水平面になっている。そして、第1の庇部17と天井面91Jとの間隔が、座板51の板厚と略同一になっている。なお、第1の庇部17の下面には、第1の前後対向リブ16Xから離れた縁部に沿って補強用の突条17Aが形成されている。
【0023】
第2の庇部18は、第2の前後対向リブ16Yから第1の前後対向リブ16Xに向かって張り出し、横方向H2の両端部を1対の横対向リブ15に接続されている。また、第2の庇部18の上面は、第2の前後対向リブ16Yから離れるに従って下るように傾斜するガイド面18Gになっている。
【0024】
第2の前後対向リブ16Yには、天井面91Jと第2の庇部18との間にスリット16Aが形成されている。スリット16Aは、第2の前後対向リブ16Yの横方向H2の全体に亘って延び、スリット16Aの上側内面と下側内面との間隔は、第1の庇部17の上面と天井面91Jとの間隔と同じ又は当該間隔より僅かに大きくなっていて、スリット16Aの上側内面は、天井面91Jと面一になっている。また、ガイド面18Gの上縁部は、スリット16Aの下側内面の縁部に繋がっている。
【0025】
図4に示すように、第2の前後対向リブ16Yには、座板収容部屋91と反対側から横リブ19が対向している。図5に示すように、横リブ19は、下面突部43Tのうち前後方向H1の端部の傾斜部下に配置されて、1対の横対向リブ15の間を連絡している。また、横リブ19の下面は、天井面91Jの僅かに下方に位置している。さらには、横リブ19の下端寄り位置には、係合孔19Aが形成されている。その係合孔19Aは、横リブ19の横方向H2における一端寄り位置から他端寄り位置に亘って延びるスリット状になっている。
【0026】
なお、横リブ19の横方向H2の中央には、横リブ19と下面突部43Tの傾斜部との間を連絡する補強リブ19Lが備えられている。その補強リブ19Lは、後述する規制部材60との干渉を回避するために下面の一部が傾斜面になっている。また、図4に示すように、横リブ19のうち第2の前後対向リブ16Yと反対側の面には、係合孔19Aの両横部分に1対の縦リブ13が接続されている。また、それら1対の縦リブ13の下面と横リブ19の下面とは面一になっている。さらには、1対の横対向リブ15の外側では、横リブ19,23と第2の前後対向リブ16Yの横方向H2の延長線上に、それぞれ横リブ14が備えられている。
【0027】
第2の前後対向リブ16Yと横リブ19との間は、規制部材収容部屋92になっている。そして、図6及び図7に示されているように、規制部材収容部屋92に規制部材60が収容されて回動可能に支持されている。その支持のために、図4に示すように規制部材収容部屋92の両側部には、1対の横対向リブ15を貫通する1対の支持孔21が設けられている。
【0028】
詳細には、図5に示すように1対の支持孔21は、前後方向H1においては、横リブ19と第2の前後対向リブ16Yとの間の略中央に位置している。また、高さ方向においては、支持孔21の中心軸21Jが、スリット16Aの上側内面と下側内面との間の中心より僅かに上方に配置されている。より具体的には、支持孔21の中心軸21Jは、天井面91Jと略同一面内に配置されている。
【0029】
図4に示すように、1対の横対向リブ15の対向面には、1対の支持孔21の真下部分にガイド溝22が形成されている。各ガイド溝22は、支持孔21の内径と略同一の幅をなして横対向リブ15の下面から支持孔21の僅かに下となる位置まで延びている。また、ガイド溝22は、上下方向の途中位置から上端に向かって徐々に浅くなっている。
【0030】
図8には、規制部材60が単体状態で示されている。図8(B)に示すように、規制部材60は、概ね断面U字形をなして横方向H2に延び、その両端面が、互いに平行で平坦面になっている。また、規制部材60の両端面間は、1対の横対向リブ15の対向面間の距離と略同一になっている。
【0031】
規制部材60の両端面からは、1対の回動軸部64が突出している。図8(A)に示すように、各回動軸部64は、扁平な円柱体の先端側の一部を斜めにカットしてガイド斜面64Aを備えた形状をなしている。また、ガイド斜面64Aは、規制部材60の断面形状であるU字の底部側に配置されている。そして、規制部材60は、底部側から規制部材収容部屋92に押し込まれる。すると、1対の回動軸部64が前述の1対のガイド溝22に収まって各回動軸部64のガイド斜面64Aが各ガイド溝22の斜面した内面と重なる。その状態から規制部材60が更に規制部材収容部屋92の奥部に押し込まれると、ガイド斜面64Aとガイド溝22の内面との摺接によって1対の横対向リブ15が左右に押し拡げられ、1対の回動軸部64が1対の支持孔21に嵌合したところで1対の横対向リブ15が弾性復帰する。これにより規制部材60は、台盤11に回動可能に支持されかつ台盤11から容易に分離しないように保持されている。なお、規制部材60が規制部材収容部屋92に押し込まれたときに、横リブ19も弾性変形するようになってもよい。
【0032】
図8(B)に示すように規制部材60のうち底部より一方側には、規制部材60の横方向H2の全体に亘って延びる干渉壁65が備えられ、底部より他方側は、横方向H2の中央の操作片62と、その両横の突片66群とに分かれている。そして、図9(C)に示すように、規制部材60の底部が最上部に配置される規制部材60の原点位置で、干渉壁65が第2の前後対向リブ16Y側に配置されると共に、操作片62等が横リブ19側に配置される。以下、規制部材60が上記原点位置に配置されているものとして、規制部材60の形状の詳細について説明する。
【0033】
図9(C)に示すように、規制部材60のうち操作片62が設けられている部分の断面形状は、回動軸部64を中心とする略半円形の湾曲部の両端から鉛直下方に1対の直線部が垂下した形状になっている。そして、その断面形状のうち横リブ19側の一方の直線部と湾曲部の略半分とから操作片62が形成され、他方の直線部と湾曲部の残り半分とから干渉壁65が形成されている。
【0034】
図8(C)に示すように、操作片62は、その両側の突片66群との間にスリット62Sを有し、基端部を中心にして弾性変形可能になっている。また、図8(B)に示すように、操作片62の外面には、円弧面と平坦面との境界部分に沿って横方向H2に延びる係合突部63が備えられている。係合突部63は、断面形状が略三角形をなしている。そして、規制部材60の原点位置では、図9(C)に示すように、係合突部63が係合孔19Aに係合して係合突部63における下向きの係合面63Bと係合孔19Aの下側内面とが重なることで、規制部材60の同図における時計回り方向への回動が規制される。また、操作片62の外面の下端縁には、断面半円状の滑止突条62Tが形成されている。
【0035】
図9(C)に示すように、干渉壁65には、その先端部に位置して外面が円弧状の第1干渉部65Aと、第1干渉部65Aより基端側に位置して外面が平坦面になった第2干渉部65Bとが含まれている。そして、規制部材60の原点位置では、第2干渉部65Bの外面が第2の前後対向リブ16Yのうち横リブ19との対向面に重なり、第1干渉部65Aの外面と第2干渉部65Bの外面との境界部分が、スリット16Aに対向する。
【0036】
規制部材60のうち操作片62の両側部分は、上述した操作片62を有する部分の規制部材60の断面形状のうち干渉壁65と操作片62との間を底部から第2干渉部65Bまで補強肉部60Mで埋めて、その補強肉部60Mから下方に第1干渉部65Aと複数の突片66とが垂下した形状になっている。
【0037】
図8(C)に示すように、複数の突片66は、同一形状をなし、スリット66Aを介して横並びに配置されている。また、図9(C)に示すように、各突片66の外面は、回動軸部64を中心とする円弧面になっている。一方、突片66の内面は、第1干渉部65Aの内面と平行な平坦面になって、規制部材60の回動中心60Pより僅かに横リブ19側に配置されている。そして、干渉壁65の第1干渉部65Aと、突片66群及び操作片62との間の空間が、後述するように座板51の一端部を受容する受容部60Jになっている。なお、図8(A)に示すように、干渉壁65には、補強肉部60Mを挟んで複数のスリット66Aと反対側となる位置に、スリット66Bが形成されている。
【0038】
規制部材60は、操作片62を内側に倒すように弾性変形させることで、前述の係合突部63と横リブ19Aとの係合が解除され、原点位置から図9(C)における時計回り方向に回動可能になる。また、そのように規制部材60を回動させると、図9(A)に示すように、操作片62の先端が第2の前後対向リブ16Yに当接して規制部材60がそれ以上回動しないように位置決めされる。また、規制部材60が、原点位置から図9(C)における反時計回り方向に回動された場合には、図9(B)に示すように、係合突部63が横リブ19の下端部に当接してそれ以上回動しないように位置決めされる。
【0039】
図11(A)に示すように、受容部60Jの開口がスリット16Aに対向する位置を第1回動位置とすると、第1回動位置及びその近傍位置(例えば図9(A)の位置)は「規制準備位置」に相当する。また、上記原点位置(図9(C)参照)から図9(B)に示された位置までの範囲は「規制位置」に相当し、規制部材60が規制位置に配置されると、図9(B)、図9(C)及び図11(B)に示すように、スリット16Aに干渉壁65が対向する。
【0040】
本実施形態の台車10の構造に関する説明は以上である。次に、この台車10の作用効果について説明する。
【0041】
キャスタ50を台盤11に取り付けるには、図10(A)に示すように、台盤11の上下を逆にし、各座板固定部90の規制部材収容部屋92の規制部材60を規制準備位置に配置しておく。そして、キャスタ50の座板51を、上下方向及び前後方向に対して傾斜させて座板51の前後方向の一端部をスリット16Aに挿入する。その際、第2の庇部18のガイド面18Gの案内により座板51が好適な傾斜角となってスリット16Aに挿入されて、座板51の一端部がスリット16Aを貫通して規制部材60の受容部60Jに受容される。また、このとき、図9(A)に示すように取付位置の座板51と突片66群の先端部とが対向していても、突片66群の先端部は曲面になっているため、座板51の取付準備位置側へのスライド移動の際に曲面に案内されて受容部60Jに受容される。 そして、座板51の他端部が第1の庇部17に対して上下方向で重ならない位置に配置されたら、図10(B)に示すように、座板51を水平姿勢にして天井面91Jに重ねる。この状態の台盤11における座板51の位置は、「取付準備位置」に相当し、座板51は、取付準備位置では、上述のように傾斜させて座板収容部屋91から容易に取り外すことができる。
【0042】
座板51が取付準備位置に配置されたら、座板51を第1の庇部17側にスライドさせる。すると、図11(A)に示すように、座板51の他端部が第1の庇部17と天井面91Jとの間に入り込み、第1の前後対向リブ16Xに当接して位置決めされる。また、このとき、座板51の一端部は、スリット16Aから規制部材60側に突出しなくなり、座板51の一端面は、スリット16Aのうち規制部材60との対向面側に位置する。この状態の台盤11における座板51の位置は、「取付位置」に相当し、座板51は、取付位置では、取付準備位置側へのスライド移動(水平移動)以外の移動が規制される。
【0043】
座板51が取付位置に配置されたら、図11(B)に示すように、規制部材60を規制準備位置から規制位置に回動する。そのためには、規制部材60の滑止突条62T又は係合突部63に指をかけて操作片62の先端部が、第2の前後対向リブ16Yから十分に離れる位置まで規制部材60を回動する。そして、操作片62の先端部に指を掛けて、さらに規制部材60を回動すればよい。すると、係合突部63のガイド面63Aが横リブ19に摺接して操作片62が内側に撓み、係合突部63が横リブ19Aに対向したところで操作片62が弾性復帰して係合突部63が横リブ19Aに係合し、規制部材60が規制位置に保持される。そして、規制部材60の干渉壁65がスリット16Aに対向し、座板51の取付準備位置側へのスライド移動(水平移動)も規制され、座板51が台盤11に固定される。以上を以てキャスタ50の台盤11への取り付けが完了する。
【0044】
キャスタ50を台盤11から取り外す場合には、先ずは、規制部材60を規制位置から規制準備位置に回動する。そのためには、係合突部63の先端部の滑止突条62Tに指をかけて操作片62を内側に撓ませた状態に保持して、係合突部63と横リブ19Aとの係合を解除し、規制部材60を前述の規制準備位置まで回動すればよい。そして、上述の操作とは逆の操作を行って座板51を座板収容部屋91から取り外すことができる。
【0045】
上述したように本実施形態の台車10では、キャスタ50を台盤11に固定するための規制部材60が台盤11から分離しないから、規制部材60の紛失が防がれる。ここで、規制部材60を大きくすると、台盤11による規制部材60の支持が強固になって座板51の固定が安定する。しかしながら、規制部材60を単に大きくしただけでは、移動スペースを含んだ規制部材60の配置スペースが大きくなる。これに対し、本実施形態の規制部材60には、座板51を受容する受容部60Jが備えられているから、規制部材60を規制位置から規制準備位置に移動する際に大きく移動しなくてもよくなる。即ち、本実施形態の台車10によれば、規制部材60の配置スペースの省スペース化を図りつつ、規制部材60による座板51の固定を安定させることができる。
【0046】
また、座板51が取付位置から取付準備位置に戻る領域を、戻り領域51R(図9(A)参照)とすると、本実施形態の台車10では、規制部材60の回動中心60Pが、戻り領域51Rの上下方向の中心より上方に位置している。そして、規制部材60の第2干渉部65Bが、規制準備位置では、戻り領域51Rの上方に位置し(図9(A)参照)、そこから下がって規制位置で戻り領域51R内に配置される(図9(B)及び図9(C)参照)。これにより、座板51が第2干渉部65Bを押圧した場合に、その押圧力が、規制部材60を規制準備位置に移動させるように作用することが防がれ、座板51の固定が安定する。また、規制部材60には、規制位置で、戻り領域51Rの下方に位置し、規制準備位置で、戻り領域51Rの上方に位置する第1干渉部65Aが備えられているから、仮に規制部材60が外的負荷により規制位置から規制準備位置側に移動したとしても、第1干渉部65Aが戻り領域51R内に配置されて座板51が戻り領域51Rに移動することが防がれ、この点においても座板51の固定が安定する。
【0047】
さらには、規制部材60を規制位置から規制準備位置に回動するには、操作片62を撓ませながら回動する操作が必要であるから、規制位置の規制部材60に異物が当接して勝手に規制準備位置へと回動するような事態は生じない。
【0048】
また、台盤11のうち座板51の上面に当接する部分には増肉部24,25が備えられているから台盤11と座板51との当接面積が広くなり、座板51の固定が安定する。また、増肉部24,25を備えたことで、縦リブ24及び横対向リブ15のうち第1及び第2の庇部17,18によるアンダーカット部分を成形する金型の強度アップが図られる。
【0049】
さらには、規制部材60は、規制準備位置と規制位置とのどちらの状態でも、台盤11の厚さの寸法内(台盤11の厚みの範囲内)に収まる。つまり、規制部材60は側面視で見て台盤11の外に飛び出ない。そして、規制部材60は、規制準備位置と規制位置とのどちらの状態であっても、座板51に対して旋回するローラー支持部材52及びローラー53と干渉することはない。
【0050】
[他の実施形態]
(1)前記実施形態では、規制部材60は、台盤11に回動可能に保持されていたが、台盤11に対して上下方向にスライド可能に保持されていてもよい。なお、前記実施形態のように規制部材60が台盤11に回動可能に保持されている構成とすれば、上下方向にスライド可能に保持されているものより上下方向でコンパクトになり、台盤11の厚さ方向における規制部材60の突出が抑えられる。
【0051】
(2)実施形態の座板51は、長方形であったが、正方形であってもよい。また、座板51は取付孔51Aを備えていなくてもよい。さらには、キャスター50のローラー支持部材52は、座板51に回動可能に連結されていたが、ローラー支持部材52が座板51に対して回動不能に固定されていてもよい。
【0052】
(3)前記実施形態の台車10は、複数のローラー受容凹部43及び下面突部43Tを有しているが、それらを有していなくてもよい。
【0053】
(4)前記実施形態の台車10は、その外側面を形成する横リブ14と第1の前後対向リブ16Xとが別個になっていたが、外側面を形成する横リブ14が第1の前後対向リブ16Xであってもよい。
【0054】
(5)前記実施形態の台車10では、規制部材60の幅が座板51の幅と略同一であったが、規制部材60の幅が、座板51の幅より大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0055】
(6)前記実施形態の台車10では、座板51が長方形で、その長方形の一方の短辺側に規制部材収容部屋92が配置されていたが、一方の長辺側に規制部材収容部屋92が設けられていてもよい。
【0056】
(7)前記実施形態の第2干渉部65Bの外面は、平坦面であったが、第1干渉部65Aの外面の曲率半径以上の曲率半径の円弧面であってもよいし、一部がそのような円弧面と残りが平坦面であってもよい。
【0057】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、これら特徴群は、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0058】
[特徴1]
台車(10)のキャスター(50)の座板(51)が台盤(11)における取付準備位置から取付位置へとスライド移動されてから、規制部材(60)が前記台盤(11)における規制位置に配置されることで、前記座板(51)の前記取付準備位置への戻りが規制されて前記キャスター(50)が前記台盤(11)に固定される台車(10)において、前記規制部材(60)は、前記座板(51)の前記取付準備位置への戻りを許容する規制準備位置と前記規制位置との間を変位可能に前記台盤(11)に保持されると共に、前記規制準備位置で前記取付準備位置の前記座板(51)を受容する受容部(60J)を備える台車(10)。
【0059】
この特徴の台車(10)では、規制部材(60)は、規制位置か規制準備位置かに拘わらず台盤(11)から分離しないから、規制部材(60)の紛失が防がれる。ここで、規制部材(60)を大きくすると、台盤(11)による規制部材(60)の支持が強固になって座板(51)の固定が安定する。しかしながら、規制部材(60)を単に大きくした場合には、移動スペースを含んだ規制部材(60)の配置スペースが大きくなる。これに対し、この特徴の規制部材(60)には、座板(51)を受容する受容部(60J)が備えられているから、規制部材(60)を規制位置から規制準備位置に移動する際に大きく移動しなくてもよくなる。即ち、この特徴の台車(10)によれば、規制部材(60)の配置スペースの省スペース化を図りつつ、規制部材(60)による座板(51)の固定を安定させることができる。
【0060】
[特徴2]
前記規制部材(60)は、前記座板(51)の前記スライド移動の方向と直交する水平軸を中心に回動可能に保持されている特徴1に記載の台車(10)。
【0061】
規制部材(60)は、上下方向にスライド可能に保持されていてもよいし、特徴2のように回動可能に保持されていてもよい。特徴2のように規制部材(60)が回動可能に保持されている構成とすれば、上下方向にスライド可能に保持されているものより上下方向でコンパクトになり、台盤(11)の厚さ方向における規制部材(60)の突出が抑えられる。
【0062】
[特徴3]
前記規制部材(60)の回動中心は、前記座板(51)が前記取付位置から前記取付準備位置に戻る戻り領域(51R)の上下方向の中心より上方に位置し、前記規制部材(60)には、前記規制位置で、前記戻り領域(51R)の下方に位置し、前記規制準備位置で、前記戻り領域(51R)の上方に位置し、前記規制位置と前記規制準備位置との間の途中位置で、前記戻り領域(51R)内に位置すると共に、円弧状の外面を有する第1干渉部(65A)と、前記規制位置で、前記戻り領域(51R)内に位置し、前記規制準備位置で、前記戻り領域(51R)の上方に位置すると共に、前記第1干渉部(65A)の外面の曲率半径以上の曲率半径の円弧状又は平坦な外面を有する第2干渉部(65B)と、が備えられている請求項2に記載の台車。
【0063】
この特徴では、規制部材(60)の回動中心は、座板(51)が取付位置から取付準備位置に戻る戻り領域(51R)の上下方向の中心より上方に位置し、規制部材(60)の第2干渉部(65B)は、規制準備位置で、戻り領域(51R)の上方に位置すると共に、そこから下がって規制位置で戻り領域(51R)内に配置される。これにより、座板(51)が第2干渉部(65B)を押圧した場合に、その押圧力が、規制部材(60)を規制準備位置に移動させるようには作用することが防がれ、座板(51)の固定が安定する。また、規制部材(60)には、規制位置で、戻り領域(51R)の下方に位置し、規制準備位置で、戻り領域(51R)の上方に位置する第1干渉部(65A)が備えられているから、仮に規制部材(60)が外的負荷により規制位置から規制準備位置側に移動したとしても、第1干渉部(65A)が戻り領域(51R)内に配置されて座板(51)が戻り領域(51R)に移動することが防がれるので、この点においても座板(51)の固定が安定する。
【0064】
[特徴4]
前記規制部材(60)と前記台盤(11)とに設けられ、互いに係合して前記規制部材(60)を前記規制位置に係止する係合部(19A,63)を備える特徴3に記載の台車(10)。
【0065】
この特徴によれば、係合部(19A,63)により規制部材(60)が規制位置に保持され、規制位置の規制部材(60)による座板(51)の固定が安定する。
【0066】
[特徴5]
前記規制部材(60)は、前記規制位置で回動中心を挟んで前記座板(51)の反対側に配置される突片状の操作部(62)を備える特徴4に記載の台車(10)。
【0067】
この特徴によれば、操作部(62)に指を掛けることで規制部材(60)の回動操作を容易に行うことができる。
【0068】
[特徴6]
前記操作部(62)は、前記回動中心側に曲げ変形可能な片持ち梁構造をなし、前記規制部材(60)の前記係合部(19A,63)は、前記操作部(62)の外面に配置されている特徴5に記載の台車(10)。
【0069】
この特徴によれば、操作部(62)を回動中心側に曲げ変形させるように操作することで、係合部(19A,63)の係合が解除され、規制部材(60)を規制位置から規制準備位置へと容易に回動することができる。
【0070】
[特徴7]
前記台盤(11)には、前記座板(51)が前記スライド移動する方向である第1方向(H1)で対向する1対の対向壁(16X,16Y)と、前記1対の対向壁(16X,16Y)から前記第1方向(H1)に延びて徐々に幅狭になる下面を有して前記座板(51)の上面に当接する複数の上面当接壁(24A,25)と、が備えられている請求項1から5の何れか1の請求項に記載の台車。
【0071】
この特徴によれば、台盤(11)のうち座板(51)と当接する部分が強化されて、座板(51)の固定が安定する。
【0072】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0073】
10 台車
11 台盤
15 横対向リブ
16X,16Y 第1と第2の前後対向リブ(対向壁)
19A 係合孔(係合部)
24A 増肉部(第2の当接壁)
25 増肉部(第2の当接壁)
50 キャスター
51 座板
51R 戻り領域
60 規制部材
60J 受容部
60P 回動中心
62 操作片
63 係合突部(係合部)
65A 第1干渉部
65B 第2干渉部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11