(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033406
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】運動評価システム及び運動評価方法
(51)【国際特許分類】
A63B 69/00 20060101AFI20240306BHJP
A63B 71/06 20060101ALI20240306BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20240306BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A63B69/00 C
A63B71/06 T
A61B5/107 300
A61B5/11 200
A61B5/11 230
A63B71/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136963
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】522345722
【氏名又は名称】伊藤 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】弁理士法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達哉
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB11
4C038VB14
4C038VB40
4C038VC09
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で、ユーザの運動を評価し、優先順位に基づいて選択的に改善項目を通知することが可能な運動評価システム及び方法を提供する。
【解決手段】運動評価システムは、姿勢を含む人体の状態を示す姿勢特性値を測定する測定部101と、前記測定部101により測定された前記姿勢特性値を閾値に基づいて評価し、前記評価に基づいて決定した優先順位に従って改善項目を通知する制御部102と、前記通知された改善項目を提示する通知提示部106と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
姿勢を含む人体の状態を示す姿勢特性値を測定する測定部と、前記測定部により測定された前記姿勢特性値を閾値に基づいて評価し、前記評価に基づいて決定した優先順位に従って改善項目を通知する制御部と、前記通知された改善項目を提示する通知提示部と、を有する運動評価システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記閾値を前記姿勢特性値の測定結果に基づいて更新する請求項1に記載の運動評価システム。
【請求項3】
更に、記憶部を有し、
前記記憶部は、前記測定された前記姿勢特性値と、前記評価と、前記通知された改善項目と、を記憶する請求項2に記載の運動評価システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記通知された改善項目の通知実績に基づいて、前記優先順位を変更する請求項3記載の運動評価システム。
【請求項5】
前記記憶部は、それぞれの運動種目に適した評価項目と、前記評価項目毎の基準となる閾値と、を示す基準閾値情報を予め記憶する請求項4に記載の運動評価システム。
【請求項6】
更に、操作部を有し、
前記操作部は、前記記憶部に記憶されている前記基準閾値情報を更新する請求項5に記載の運動評価システム。
【請求項7】
更に、表示部を有し、
前記測定された前記姿勢特性値と、前記評価と、を前記表示部が表示する請求項6に記載の運動評価システム。
【請求項8】
更に、通信部と、外部サーバとを有し、
前記記憶部に記憶されている前記測定された前記姿勢特性値と、前記評価と、前記通知された改善項目とに基づいた付加情報を、前記通信部が前記外部サーバから受信し、前記表示部が、前記測定された前記姿勢特性値と、前記評価と、前記付加情報と、を表示する請求項7に記載の運動評価システム。
【請求項9】
コンピュータが、
姿勢を含む人体の状態を示す姿勢特性値を測定し、
測定された前記姿勢特性値を閾値に基づいて評価し、前記評価に基づいて決定した優先順位に従って改善項目を通知し、前記通知された改善項目を提示すること、を含む運動評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動評価システム及び運動評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運動習慣は健康維持のために重要であり、正しく行うことで、よりその効果を高めることができる。中でも筋力を維持または肥大させるための筋力トレーニングは、適切に行うことで年齢を問わず継続することができる。筋力トレーニングは、成人病や腰痛、関節痛などの予防、さらには睡眠リズムを整えるなどの効果も期待できる。
【0003】
最近では、筋力や身体能力が下がるサルコペニアが、高齢者だけでなく、運動不足と過度な食事制限やカロリー制限などにより若年層にも発生リスクがあるとされる。よって、筋力トレーニングを正しい姿勢と適切な負荷状態で行うことの重要性は一層増加している。
【0004】
従来、人体の動作を分析し、動作を改善するためのシステムとして、特許文献1のような動作データを用いた動作評価システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、優先順位に基づいた改善項目の通知を行うことができない。また、従来技術は、動作評価に熟練度スコアを介在させるため、評価対象とする動作に応じて、熟練度スコア算出のためのシステム設計が必要となり、簡便さに欠けるという問題がある。
【0007】
本発明は、簡便な構成で、ユーザの運動を評価し、優先順位に基づいて選択的に改善項目を通知することが可能な運動評価システム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る運動評価システムは、
姿勢を含む人体の状態を示す姿勢特性値を測定する測定部と、前記測定部により測定された前記姿勢特性値を閾値に基づいて評価し、前記評価に基づいて決定した優先順位に従って改善項目を通知する制御部と、前記通知された改善項目を提示する通知提示部と、を有する。
【0009】
本発明に係る運動評価方法は、
コンピュータが、
姿勢を含む人体の状態を示す姿勢特性値を測定し、
測定された前記姿勢特性値を閾値に基づいて評価し、前記評価に基づいて決定した優先順位に従って改善項目を通知し、前記通知された改善項目を提示すること、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便な構成で、ユーザの運動を評価し、優先順位に基づいて選択的に改善項目を通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの全体構成の例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る着用可能センサユニットの着用例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る全体処理フローチャートの例である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る測定値評価と改善項目通知の処理フローチャートの例である。
【
図5】スクワット運動における基準閾値情報の例を示す図である。
【
図6】スクワット運動における初回閾値と3段階評価の評価基準の例を示す図である。
【
図7】スクワット運動における初回閾値と乖離度評価の評価基準の例を示す図である。
【
図8】スクワット運動における測定値の例を示す図である。
【
図9】スクワット運動における3段階評価での評価結果の例を示す図である。
【
図10】スクワット運動における乖離度評価での評価結果の例を示す図である。
【
図11】スクワット運動における3段階評価での通知優先順位の例を示す図である。
【
図12】スクワット運動における乖離度評価での通知優先順位の例を示す図である。
【
図13】スクワット運動における3段階評価での通知記録の例を示す図である。
【
図14】スクワット運動における乖離度評価での通知記録の例を示す図である。
【
図15】スクワット運動における閾値更新判断情報の例を示す図である。
【
図16】スクワット運動における測定値と評価結果の表示の例を示す図である。
【
図17】スクワット運動における測定値と評価結果の他の表示の例を示す図である。
【
図18】スクワット運動における一定期間内の測定値推移の表示の例を示す図である。
【
図19】スクワット運動における測定値と評価結果に外部サーバから取得したアドバイスを加えた表示の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、一実施形態に係る運動評価システムの全体構成の例を示すブロック図である。
図1に示すように、一実施形態に係る運動評価システムは、
姿勢を含む人体の状態を示す姿勢特性値を測定する測定部101と、測定部101により測定された姿勢特性値を閾値に基づいて評価し、評価に基づいて決定した優先順位に従って改善項目を通知する制御部102と、通知された改善項目を提示する通知提示部106と、を有する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る運動評価システム(以降、単に「システム」ということもある。)は、姿勢を含むユーザの体の状態、すなわちユーザの姿勢や関節の状態等を測定する複数のセンサを含む測定部101と、ユーザが各種指示操作を行う操作部103と、各種情報の表示を行う表示部104と、各種情報を記憶する記憶部105と、ユーザへの通知情報を提示する通知提示部106と、外部サーバ120との間で情報通信網110を介して情報を送受信する通信部107と、を有している。本実施形態に係る運動評価システムは更に、測定部101、操作部103、表示部104、記憶部105、通知提示部106、および通信部107を制御する制御部102を有している。
【0014】
測定部101、制御部102、操作部103、表示部104、記憶部105、通知提示部106、通信部107の各部は、それぞれ、各種の電気信号、制御情報、電子データ等の交換が可能な状態で接続されている。接続形態は、有線または無線のネットワークを利用する形態であってもよい。また、通信部107は、例えばインターネットなどの情報通信網110を介して、外部サーバ120と送受信することができる。
【0015】
上記の各部を構成するハードウェアやソフトウェアは、所定の機能を実装できるものであれば、特に制限はない。具体的には、例えば、ハードウェアは、単独または複数のサーバやその周辺機器、スマートフォンなどの携帯情報端末、あるいはASIC(特定用途向け集積回路、Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路で実装されていてもよい。例えば、ソフトウェアは、上述の各種ハードウェア上で動作するプログラム等であってよい。また、各部をソフトウェアとして実装するときにOSやミドルウェア等を使用する場合も、特にOSやミドルウェア等の種類は限定されない。
【0016】
上記の各部は、一般向けに提供されているクラウドプラットフォームを使用して実装されていてもよい。
【0017】
例えば、制御部102は、ソフトウェア化し、ユーザが利用するスマートフォンにインストールしてもよい。操作部103は、種々の文字、記号、画像等の入力が可能であり、各種機能実行ボタンの押下あるいはタップ等が可能な入力インターフェースを備えているのが好ましい。表示部104は、例えば、種々の文字、記号及び画像等を表示することが可能なディスプレイ機器や、紙媒体への印刷が可能なプリンタであってもよい。記憶部105は、メモリ、ソリッドステートドライブ及びハードディスクドライブ等であり、種々の情報及びプログラムを記憶してもよい。通知提示部106は、音声及び画像等を出力する。したがって、スピーカー及びディスプレイの機能を持つ機器等が好ましい。通信部107は、各種の通信プロトコルに対応しており、情報通信網110を使用した送受信を制限なく実施できることが好ましい。情報通信網110は、インターネットが好ましいが、LAN、WANなどの他の情報通信網を用いることもできる。外部サーバ120は、標準的な演算処理、通信処理、記憶処理等を実行できるものであれば、特に制限はない。外部サーバ120は、クラウドプラットフォーム上のサーバであってもよい。
【0018】
測定部101内の各センサは、着用可能なセンサである。例えば、各センサは、角度センサ、傾斜センサ、角速度センサ、加速度センサ、筋電センサなどの電気センサ、または電子センサを指す。各センサは、測定対象の物理パラメータ(角度、力、距離、電位)を検出して測定する。各センサは、利用可能な電気信号に変換するトランスデューサまでを含む。
【0019】
図2は、一実施形態に係る着用可能センサユニットの着用例を示す図である。
図2において、着用可能センサユニットは、それが搭載している電気センサ、または電子センサにて、着用しているユーザの体の状態を示す姿勢特性値を測定し、その値を制御部102に送信することができるようになっている。ここで姿勢特性値は、ユーザの姿勢或いは動作、ユーザの肩、肘、手首、股、膝、足首等の各関節の状態、更に皮膚表面の電位の変化等を示す値である。姿勢特性値は、具体的には、慣性計測装置(IMU)201、ゴニオメーター202、筋電センサ203等を使用して測定することが好ましい。
【0020】
慣性計測装置(IMU)201は、ジャイロセンサ、加速度センサ、コンパス、気圧センサをはじめとする複数のセンサにより、三次元空間での物体の動きを検出し追跡する装置である。これにより、自由空間での運動が計測可能となる。
ゴニオメーター202は、複数の平面での動的な関節の動きを素早く、簡単に、正確に測定可能な測定具である。非常に頑丈で、軽量で柔軟性があり、関節の実際の動きを妨げることなく、快適に着用可能である。
筋電センサ203は、筋肉の動きに係る皮膚表面の電位の変化を測定することができる。
【0021】
図3は、一実施形態に係る全体処理フローチャートの例である。
【0022】
図3のステップST301において、ユーザは、操作部103を操作してシステムの初期設定を行う。初期設定とは、運動種目、ユーザの性別、年齢、体重、運動目的、経験度等を設定することである。この設定により、それぞれの運動種目に適した評価項目と、初回の測定時に使用される評価項目毎の閾値が決定される。
【0023】
それぞれの運動種目に適した評価項目と、その評価項目毎の基準となる閾値は、基準閾値情報として、記憶部105に予め記憶されていることが好ましい。あるいは、基準閾値情報は、外部サーバ120に記憶されており、通信部107を介して、入手できるようにしてもよい。
図5は、基準閾値情報の一例を示す図である。運動種目が「スクワット」、性別が「男性」、年齢が「40代」、体重が「70kg」、運動目的が「筋力UP」の場合で、経験度が「初心者」、「中級者」、「上級者」のそれぞれの場合の評価項目毎の基準閾値の範囲が示されている。
各評価項目には、それぞれ対応する測定項目がある。測定項目は、各種センサにより測定される姿勢特性値自体であっても良いし、複数の姿勢特性値から算出される値であっても良い。基準閾値の範囲は、この測定項目に対する数値の範囲を示す。
これらの基準閾値の情報は、記憶部105または外部サーバ120に予め記憶されている。
すなわち、運動種目スクワットの場合の評価項目および測定項目は、「膝の角度が浅すぎないか(沈込み時膝角度)」、「前屈みになっていないか(膝部傾斜角度)」、「背中が丸まっていないか(背中の曲げ角度)」、「内股になっていないか(両膝の距離)」等々である。また、上述のユーザが、経験度を「初心者」を選択する場合、それぞれの基準閾値は、沈込み時膝角度:60~70度、膝部傾斜角度:15~10度、背中の曲げ角度:15~10度、両膝の距離:-5~0cm、等々であることが示されている。
当然、運動種目が異なれば、適した評価項目は異なったものとなる。例えば、ベンチプレスの場合は、「浅すぎないか」、「背中が反りすぎていないか」、「腕を広げすぎていないか」等々となる。この場合でも、ユーザの経験度が異なれば、基準となる閾値の値も異なるのは、スクワットの時と同様である。
【0024】
上述の基準閾値情報は、操作部103を操作して、更新できることが好ましい。すなわち、ユーザが、操作部103を操作して、対象とする運動種目の追加と削除、それぞれの運動種目に適した評価項目の追加と削除、評価項目毎の基準となる閾値の値の変更等ができることが好ましい。基準閾値情報は、トレーニング効果度の向上を目的として、システム利用により蓄積されたデータに基づき、適宜、見直されることとしてもよい。
【0025】
図3のステップST302において、ユーザは操作部103を操作して測定をスタートさせ、着用可能センサを装着した状態で運動を行う。測定部101は、各センサから得られる姿勢特性値の測定値を制御部102に送信する。測定部101は、各測定値を測定の都度、制御部102に送信してもよいし、所定の回数分をまとめて制御部102に送信してもよい。これにより、各センサの種類に応じたデータ属性をもつ測定値が、時系列で制御部102に送信されることとなる。
【0026】
図3のステップST303において、制御部102は、測定値の評価と改善項目の通知を行う。
図4は、
図3のステップST303を更に詳細化した手順で示すフローチャートの例である。
【0027】
図4のST401において、制御部102は、測定部101から姿勢特性値の測定値を受信する。受信された測定値は、記憶部105に一時的に記憶されてよい。
【0028】
図4のST402において、制御部102は、測定対象となっている運動種目の評価項目を設定されている閾値に従って評価する。初回測定の場合は、初期設定にて設定された閾値を使用する。2回目以降の測定の場合は、前回の測定結果を踏まえて決定された閾値を使用する。したがって、閾値は、前回測定時と同じ閾値が使用される場合もあれば、異なる場合もある。
【0029】
図6は、上述のユーザ(男性・40代・体重70kg・筋力UP目的)が、経験度「初心者」を選択してスクワット運動する場合において、例えば、測定値を3段階(A、B、C)で評価する際の閾値の設定例を示す図である。「A」が最も高い評価で、「B」、「C」の順に低い評価となる。評価項目および測定項目が「膝の角度が浅すぎないか(沈込み時膝角度)」の場合、沈込み時膝角度が「70度以上」であれば評価「A」、「60度以上」であれば評価「B」、「60度未満」であれば評価「C」であることが示されている。その他の評価項目に対しても、同様の事項が示されている。
【0030】
図7は、
図6に例示した3段階の評価方式とは異なり、評価項目毎に、それぞれひとつの閾値のみを設定して、その閾値からの乖離度で評価する場合の閾値の設定例を示す図である。
評価項目および測定項目が「膝の角度が浅すぎないか(沈込み時膝角度)」の場合、閾値「60度以上」を基準として、測定の結果、その値を達成できていれば、「評価:OK(問題なし)」と判断する。その値を達成できていない場合は、その基準値からの乖離度の値で評価する。
【0031】
測定値を評価する方式は、上述の3段階評価や乖離度評価の方式に限らず、自由に設定してよい。
【0032】
具体的な測定値の評価の例を以下に記述する。
図8は、スクワット運動の3回分の測定値の例である。
スクワット運動の各評価項目に対応する測定値が記録されている。各測定値は、各測定回において、時系列で記録した測定値の平均値であってよい。筋電位は、心理的限界値を100とする指数で記録されている。この指数の値は、センサの測定値から算出されたものである。
【0033】
図9は、
図8に示す各回の測定値を、
図6で示した3段階の評価基準の例によって評価したものである。各評価項目の測定値は、評価が高い順に、A、B、Cで判定されている。「筋電位の心理的限界越え」は、指数が100より大きければ、「OK」と評価され、指数が100以下であれば、「NG」と評価される。これは、スクワット運動の目標のひとつが、「筋電位の心理的限界値を拡大して、生理的限界値に近づける」であることを踏まえたものである。
図9は、第1回測定では、全評価項目が「C」評価であったが、第2回測定、第3回測定と進むにつれ、全体として評価が改善していることを示している。
【0034】
図10は、
図8に示す各回の測定値を、
図7で示した乖離度での評価の例によって評価したものである。各評価項目の測定値は、「評価:OK」の閾値を満たしているか否かで評価され、満たしていない場合は、その値から何パーセント乖離しているかの数字が記録される。乖離度のパーセンテージが大きいほど低い評価ということになる。
図10では、第1回測定では、全評価項目が「評価:OK」の閾値を満たしておらず、乖離度のパーセンテージで記録されている。また、
図10は、第2回測定、第3回測定と進むにつれ、全体として改善して、「評価:OK」の評価項目が増加していることを示している。
【0035】
図4のST403において、制御部102は、改善項目の有無を判断する。
例えば、評価項目毎の測定値を3段階評価(A、B、C)で評価する場合、評価「C」の評価項目は、改善する必要があると判断してもよい。また、乖離度で評価する場合は、「評価:OK」以外の評価項目は、改善する必要があると判断してもよい。
改善する必要があると判断された評価項目は、判断後は、改善項目として扱われる。
【0036】
改善項目がある場合、
図4のST404において、制御部102は、優先順位を決定する。優先順位とは、正しく効果的な運動とするために必要な、複数の改善項目間の優先の度合いである。各測定値に対する評価が低い改善項目ほど、改善の優先順位は高くなる。ただし、対象としている運動の特性に応じて、それぞれの改善項目への重みづけが必要な場合は、対応する測定値の評価に重みづけをした値で比較して、優先順位を決定してもよい。
【0037】
図11は、
図9に示す評価結果に対して、改善項目の優先順位を決定した例を示す図である。3段階評価で、評価「C」の評価項目を改善項目と判断している。評価「C」の評価項目が複数ある場合は、スクワッド運動に対するそれぞれの改善項目の重要度を踏まえた重みづけをして、優先順位を決定している。
【0038】
図12は、
図10に示す評価結果に対して、改善項目の優先順位を決定した例を示す図である。「評価:OK」の閾値を満たしていない評価項目を改善項目と判断している。乖離度に基づく評価であり、「評価:OK」の閾値からの乖離度が大きいほど優先順位が高い。同一の乖離度の場合は、スクワッド運動に対するそれぞれの改善項目の重要度を踏まえた重みづけをして、優先順位を決定している。
【0039】
図4のST405において、制御部102は、優先順位の高い改善項目に対応する通知情報を、通知提示部106に送信することでユーザに通知する。通知は、優先順位が最も高い改善項目のみであってもよいし、上位から複数の改善項目であってもよい。その結果、通知提示部106は、例えば、改善項目に適した音声を出力して、運動実施中のユーザを鼓舞することにより、運動動作の改善を促すことが好ましい。
例えば、運動種目が「スクワット」で、通知する改善項目が「膝の角度が浅すぎないか」である場合、音声として、「1、2、3、4、もっと膝を深く曲げましょう」を出力してもよい。
改善項目が「背中が丸まっていないか」である場合、音声として、「1、2、3、4、背中が丸まっているようです」を出力してもよい。
通知提示部106が、ビジュアルイメージを表示できるディスプレイ画面も備えている場合、音声に加えて、実際の測定値をビジュアルイメージに反映させた、運動者の動的なビジュアルイメージを提示してもよい。
図13と
図14は、上述したスクワット運動の3回の測定値の例において、改善要の通知の例を示す図である。
図13が3段階評価を実施した場合の例であり、
図14が乖離度評価を実施した場合の例である。ともに、優先順位が最も高い改善項目のみを改善要の通知の対象としている。
【0040】
図4のST403において改善項目がないと判断された場合は、
図4のST406において、制御部102は、改善項目がない旨を通知提示部106に送信してユーザに通知する。通知提示部106は、音声として、「1、2、3、4、はい、いいですよ~」を出力してもよい。
図13の下段に、通知提示部106が出力した音声の例を示している。
【0041】
図3のステップST304において、制御部102は、各センサの時系列の測定値、閾値による評価結果、ユーザ通知した改善項目を、記憶部105あるいは通信部107を介して、外部サーバ120に記憶することが好ましい。
【0042】
更に、制御部102は、測定値の測定結果に基づいて、次回測定時に基準とする閾値の値を更新することが好ましい。
図15は、基準とする閾値を更新するために使用する閾値更新判断情報の一例を示す図である。対象の運動種目はスクワットである。評価項目に対する3段階評価の評価値(A、B、C)毎の個数と、センサ測定値から計算できる筋電位の指数(心理的限界値を100とする)との組み合わせによって、次回測定時に基準とする閾値のレベルをアップするのか、維持するのか、ダウンするのかを決定することとしている。アップあるいはダウンする閾値の数値自体は、運動種目や経験度等、あるいは測定値の変化の度合い等に応じて決定することが好ましい。
【0043】
更に、制御部102は、ユーザに対する過去の通知実績に基づいて、次回測定時の通知の優先順位を変更することが好ましい。例えば、同一ユーザの同一の運動種目に対して、2回連続して通知した改善項目は、次の測定時の改善項目の通知対象から外す処理をすることが好ましい。運動するユーザの心理的な面にも配慮する必要があるからである。
【0044】
図3のステップST305において、制御部102は、操作部103を使用して行われた操作に応じて、記憶部105に記憶されている測定値と評価結果を表示部104に表示することが好ましい。
図16、
図17および
図18は、スクワット運動における表示の例を示す図である。日別や項目別など用途に応じた表示がされる。
【0045】
更に、制御部102は、記憶部105に記憶されている測定値と評価結果に加えて、外部サーバ120から通信部107によって受信する付加情報を合わせて、表示部104に表示するのが好ましい。
図19は、記憶部105に記憶された測定値と評価結果に外部サーバ120から取得できる運動評価に応じたアドバイスを加えた表示例である。上段には、従来の運動の平均値に対して改善、または悪化した項目の従来平均値、直近の平均値と変動率が表示される。中段には、従来の運動時の筋力負荷平均値に対して、今日の筋力負荷平均値と変動率が表示される。下段には、記憶された各測定値と運動評価結果に応じて外部サーバ120から取得されたアドバイスが表示される。
【0046】
制御部102が、外部サーバ120から通信部107によって受信して、表示部104に表示する付加情報は、同一のユーザに閉じた情報である必要はなく、多数のユーザの測定値の統計データから得られる情報等であってもよい。
【0047】
図3のステップST306において、ユーザは操作部103を操作して、測定を継続または終了させる。
【0048】
一実施形態に係る運動評価方法は、上述した運動評価システムの一実施形態に対応する方法である。
【0049】
次に、一実施形態が奏する効果について説明する。なお、以下に記載する効果は一例であり、一実施形態が奏する効果は、以下に記載するものに限定されることはない。
【0050】
上述した一実施形態の運動評価システム及び方法を利用することで、ユーザは、現在実施している運動が正しい姿勢で行われているのか、適切な負荷がかかっているのか、を運動実施中に認知することができる。また、ユーザは、最も優先して対応すべき改善項目をリアルタイムで知ることができ、即時に運動の改善に繋げることができる。さらに、ユーザは、運動改善を促す適切な音声やビジュアルイメージ等により、心理的に鼓舞されることにもなる。すなわち、ユーザは、各種運動の専門家がパーソナルトレーナーとなったような効果を得られることになる。
【0051】
また、一実施形態によれば、ユーザの運動の実施結果に基づいて、同一ユーザが、次回同一種目の運動を行う際の適切な閾値及び評価基準が決定される。したがって、運動の実施効果を、各個人に応じて、正しい方向に無理のないレベルで向上させていくことができる。
【0052】
また、一実施形態によれば、運動の実績として、運動実施時毎の各測定値、評価結果、改善項目の通知結果が記憶される。したがって、ユーザは、必要に応じて過去実績データを利用できる。例えば、運動改善のための分析の基礎データとして利用することができる。
【0053】
また、一実施形態によれば、改善項目の過去の通知実績に基づいて、通知の優先順位が変更される。ユーザは、何度も何度も繰り返して同じ改善項目の通知を受けると、心理的に追い詰められたり、継続的に運動すること自体をやめてしまったりすることがあり得る。これらに対する配慮のために、例えば、2回連続して通知した改善項目は、次の通知の対象から外す変更を行うなどの対処ができる。
【0054】
また、一実施形態によれば、それぞれの運動種目に適した評価項目と、評価項目毎の基準となる閾値と、を示す基準閾値情報を予め準備することができる。したがって、システム管理者は、事前に多数の運動種目に対応する評価の準備を行うことができる。
【0055】
また、一実施形態によれば、上述の基準閾値情報を更新することができる。したがって、システム管理者は、システム利用実績データを踏まえた更新を行うことで、システム全体の効果度の向上を図ることができる。また、システム管理者は、必要に応じて、特定の運動種目に対する新しい評価項目、あるいは新しい運動種目自体をシステムに追加することもできる。
【0056】
また、一実施形態によれば、ユーザは、用途と目的に応じて編集された情報を入手できる。画面表示やプリントアウト等、それぞれのユーザが、利用しやすい表示媒体を活用することができる。
【0057】
また、一実施形態によれば、ユーザは、各個人の運動結果に対する適切なアドバイスなどの付加情報を得ることができる。適切なアドバイスは、ユーザの運動改善やモチベーション維持に効果的である。また、付加情報は、各個人に閉じた情報のみでなく、多数のユーザの運動実績データを統計的に分析して得られた情報にすることもできる。これにより、各ユーザは、各種の母集団の中、自分がどの程度の水準で運動しているのかを知ることもできる。
【符号の説明】
【0058】
101 測定部
102 制御部
103 操作部
104 表示部
105 記憶部
106 通知提示部
107 通信部
110 情報通信網
120 外部サーバ
201慣性計測装置(IMU)
202 ゴニオメーター
203 筋電センサ