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特開2024-33408既設トンネル内部への内管設置システムと内管設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033408
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】既設トンネル内部への内管設置システムと内管設置方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/045 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
E02D29/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136965
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正幹
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 茂
(72)【発明者】
【氏名】長田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】青木 瞭太
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AC10
(57)【要約】
【課題】既設トンネルの内部に効率的に内管を設置することのできる、既設トンネル内部への内管設置システムと内管設置方法を提供する。
【解決手段】立坑10Aから延びる既設トンネル10の内部に、複数の分割内管20を連接して内管20Bを設置する、既設トンネル内部への内管設置システム70であり、立坑10Aに設置され、立坑10Aに搬入された複数の分割内管20を押し出す、元押しジャッキ30と、既設トンネル10の内周面と、分割内管20の外周面との間の隙間15に対して充填材90を充填する際に、既設トンネル10の長手方向に設けられている複数の充填区間の妻部において隙間15を閉塞する、妻枠体50とを有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立坑から延びる既設トンネルの内部に、複数の分割内管を連接して内管を設置する、既設トンネル内部への内管設置システムであって、
前記立坑に設置され、該立坑に搬入された複数の前記分割内管を押し出す、元押しジャッキと、
前記既設トンネルの内周面と、前記分割内管の外周面との間の隙間に対して充填材を充填する際に、前記既設トンネルの長手方向に設けられている複数の充填区間の妻部において該隙間を閉塞する、妻枠体と、を有することを特徴とする、既設トンネル内部への内管設置システム。
【請求項2】
前記既設トンネル内に敷設されて、前記分割内管を案内する案内レールをさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の既設トンネル内部への内管設置システム。
【請求項3】
前記案内レールにおいて、前記分割内管が摺接する上面に摩擦軽減材が設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の既設トンネル内部への内管設置システム。
【請求項4】
複数の前記分割内管のうち、前記充填区間に対応する前方の分割内管群と、後方の分割内管群の双方に固定され、該後方の分割内管群に反力を取って、該前方の分割内管群を押し出す、先端押し出しジャッキをさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の既設トンネル内部への内管設置システム。
【請求項5】
前記分割内管のリング継手面に、角欠け防止材が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の既設トンネル内部への内管設置システム。
【請求項6】
前記妻枠体は、U字状の中空シートにより形成され、該中空シートの内部に流体が充填されて膨らみ、該中空シートの端部同士が上方で繋がれていることを特徴とする、請求項1に記載の既設トンネル内部への内管設置システム。
【請求項7】
立坑から延びる既設トンネルの内部に、複数の分割内管を連接して内管を設置する、既設トンネル内部への内管設置方法であって、
前記立坑に設置されている元押しジャッキにより、該立坑に搬入された複数の前記分割内管を順次押し出し、複数の前記分割内管による分割内管群を、前記既設トンネルの内部における所定の設置位置から所定長さ後方で停止させる、A工程と、
前方にある複数の前記分割内管からなる分割内管群を、後方にある複数の前記分割内管からなる分割内管群に反力を取って前記所定長さ押し出す、B工程と、
前記押し出しによって形成されたスペースに充填材の充填設備を設置するとともに、該スペースを利用して押し出された前記分割内管群の後方に妻枠体を設置し、押し出された前記分割内管群の外周面と前記既設トンネルの内周面の間にある隙間を、充填区間の隙間として、該充填区間の隙間の一部もしくは全部に対して、充填材を充填する、C工程とを有し、
前記B工程と前記C工程をセットとして、該セットを繰り返して前記内管を設置することを特徴とする、既設トンネル内部への内管設置方法。
【請求項8】
前記C工程では、前記充填区間の隙間への充填材の充填を、該隙間の下半への充填と、該隙間の上半への充填に分けて行い、
後行で形成された後方の前記充填区間の下半の隙間と、先行で形成された前方の前記充填区間の上半の隙間への充填をセットとして行うことを特徴とする、請求項7に記載の既設トンネル内部への内管設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設トンネル内部への内管設置システムと内管設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既に施工済みの既設トンネルの老朽化に対する補強対策として、あるいは、既設トンネルを他の目的に供用するための対策として、既設トンネルの内部に内管を設置する場合がある。一例としては、原子力発電の施設内において、海水の取水路として施工済みの既設トンネルの内部に内管を設置することにより、耐震性に優れ、安全性の高い新規の取水路を施工する場合等を挙げることができる。
しかしながら、このように既設トンネルの内部に内管を設置する施工例は極めて少なく、またその要請も少ないことから、効率的に内管を設置するための技術が現状では確立されてない。
【0003】
ここで、特許文献1には、地下に埋設されて老朽化した配管内に、配管内壁との間で所定の間隙を形成するべく縮径された内管を、その周方向と長手方向に分割したセグメントで形成し、複数のセグメントを配管内に搬入し、複数のセグメントを周方向と長手方向に継いで内管を組み立てた後、内管と配管の間の間隙にモルタル等の充填材を充填する、地下埋設配管の補修再生方法が提案されている。この補修再生方法では、埋設配管のマンホールを利用して、マンホールからセグメントを埋設配管内に搬入することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-126223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の地下埋設配管の補修再生方法では、マンホールからセグメントを埋設配管内に搬入するとしているが、セグメントを搬入した後、配管の内部でどのようにセグメントを搬送して内管を組み立てるのかが具体的に示されていない。既設トンネル内部への内管の設置においては、既設トンネル内における内管の搬送をどのように行うか、さらには、既設トンネルと内管の間の隙間にどのように充填材を充填するかが、施工全体の工期を決定する極めて重要な要素であるにも関わらず、特許文献1には重要な要素のうちの搬送方法に関する具体的な記載がない。
【0006】
本発明は、既設トンネルの内部に効率的に内管を設置することのできる、既設トンネル内部への内管設置システムと内管設置方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による既設トンネル内部への内管設置システムの一態様は、
立坑から延びる既設トンネルの内部に、複数の分割内管を連接して内管を設置する、既設トンネル内部への内管設置システムであって、
前記立坑に設置され、該立坑に搬入された複数の前記分割内管を押し出す、元押しジャッキと、
前記既設トンネルの内周面と、前記分割内管の外周面との間の隙間に対して充填材を充填する際に、前記既設トンネルの長手方向に設けられている複数の充填区間の妻部において該隙間を閉塞する、妻枠体と、を有することを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、立坑に設置されている元押しジャッキにて、立坑に搬入された複数の分割内管を順次押し出すことにより、既設トンネル内における分割内管の効率的な搬送を実現でき、複数の分割内管が連接された内管を既設トンネル内部に設置することができる。
さらに、既設トンネルの内周面と、分割内管の外周面との間の隙間に対して充填材を充填する際に、既設トンネルの長手方向に複数の充填区間を設けた上で、充填区間の妻部において妻枠体にて隙間を閉塞することにより、既設トンネルと内管(分割内管)との間の隙間に対する充填材の充填を可能にでき、さらには、既設トンネルの延長が長い場合でも、充填区間ごとに充填材を充填することにより、既設トンネルの全長に対する充填材の効率的かつ確実な充填が可能になる。
本態様は、地盤内に函体を推進させる推進工法と異なり、既設トンネル内部において元押しジャッキにて分割内管を押し出す(推進させる)システムであり、従来には存在しない新規の押し出しシステムとなる。
【0009】
ここで、内管が設置される「既設トンネル」には、シールド工法の下で鋼製セグメント等の各種セグメントにより形成されるシールドトンネルの他、推進工法により施工される推進トンネル、NATM(New Austrian Tunneling Method)工法等によって施工された山岳トンネル、鉄筋コンクリート製の一次覆工等、様々なトンネルが含まれる。また、既設トンネルの延長区間ごとに、岩盤区間と比較的軟質な地盤区間が存在する場合は、山岳トンネル区間とシールドトンネル区間の双方を備えたトンネルも含まれる。
また、分割内管は、鉄筋コンクリート製のプレキャスト管(ヒューム管)等が含まれ、このプレキャスト管には、様々な付帯設備を分割内管の内部に設置するためのインサートが埋設されていてもよい。
また、既設トンネルの内周面と分割内管の外周面の間の隙間に充填される充填材には、モルタルやセメント等が適用される。
【0010】
また、本発明による既設トンネル内部への内管設置システムの他の態様は、
前記既設トンネル内に敷設されて、前記分割内管を案内する案内レールをさらに有することを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、分割内管を案内する案内レールが既設トンネル内に敷設されていることにより、分割内管を効率的に押し出すことができる。また、案内レールによって各分割内管を案内することにより、既設トンネルの内部において、各分割内管を設計位置に精緻に位置決めして設置することが可能になる。一例として、案内レールにより、既設トンネルの断面設計中心位置に、分割内管の断面中心位置を揃えることができる。
【0012】
例えば、断面が円形もしくは馬蹄形の既設トンネルの下方に後施工されたインバートの上に、既設トンネルの長手方向に延設する2条の案内レールを設置し、この2条の案内レールにて各分割内管を安定的に案内する形態を挙げることができる。ここで、案内レールは、H形鋼や溝形鋼等形鋼材等により形成できる。
【0013】
また、本発明による既設トンネル内部への内管設置システムの他の態様は、
前記案内レールにおいて、前記分割内管が摺接する上面に摩擦軽減材が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、案内レールの上面に摩擦軽減材が設けられていることにより、案内レールに摺接しながら押し出される分割内管と案内レールとの間の動摩擦力を低減でき、より一層効率的な分割内管の押し出しを実現できる。
【0015】
また、本発明による既設トンネル内部への内管設置システムの他の態様は、
複数の前記分割内管のうち、前記充填区間に対応する前方の分割内管群と、後方の分割内管群の双方に固定され、該後方の分割内管群に反力を取って、該前方の分割内管群を押し出す、先端押し出しジャッキをさらに有することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、全ての分割内管を元押しジャッキにて前方の所定位置まで押し出した後、そのうちの一部を、充填区間に対応する前方の分割内管群として所定の設置位置(設計位置)まで順次押し出す際に、この前方の分割内管群の押し出しを後方の分割内管群に反力を取って実行する先端押し出しジャッキをさらに有することにより、分割内管群の効率的な押し出しを実現できる。
例えば、全ての分割内管の数が100である場合に、100基の分割内管を元押しジャッキにて所定の設置位置の前方まで押し出した後、10基程度の分割内管を分割内管群として、この分割内管群を先端押し出しジャッキにて押し出すことができる。
この分割内管群の押し出しにより、押し出された前方の分割内管群(例えば10基の分割内管)と、後方の分割内管群(例えば90基の分割内管)の間には押し出し量に相当するスペースが形成されるが、このスペースに対して充填材の充填設備を設置し、かつこのスペースを利用して押し出された分割内管群の後方に妻枠体を設置することが可能になる。あるいは、このスペースに妻枠体を設置してもよい。
【0017】
また、本発明による既設トンネル内部への内管設置システムの他の態様は、
前記分割内管のリング継手面に、角欠け防止材が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、分割内管のリング継手面に角欠け防止材が設けられていることにより、リング継手面で相互に押圧しながら押し出される複数の分割内管のリング継手面における角欠けを効果的に防止することができる。
【0019】
また、本発明による既設トンネル内部への内管設置システムの他の態様において、
前記妻枠体は、U字状の中空シートにより形成され、該中空シートの内部に流体が充填されて膨らみ、該中空シートの端部同士が上方で繋がれていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、妻枠体がU字状の中空シートにより形成され、中空シートの内部に流体(エアや水等)が充填されて膨らみ、中空シートの端部同士が上方で繋がれて使用されることにより、例えば円形断面の既設トンネルの内周面と円形断面の分割内管の外周面との間の隙間への、妻枠体の取り付け性が良好になり、かつ、環状の隙間の閉塞性も良好になる。
ここで、既設トンネルが鋼製セグメントにより形成される場合は、周方向に延設する鋼製セグメントの主桁を跨ぐようにして中空シートを設置することにより、妻部における隙間の閉塞性がより一層向上する。
【0021】
また、本発明による既設トンネル内部への内管設置方法の一態様は、
立坑から延びる既設トンネルの内部に、複数の分割内管を連接して内管を設置する、既設トンネル内部への内管設置方法であって、
前記立坑に設置されている元押しジャッキにより、該立坑に搬入された複数の前記分割内管を順次押し出し、複数の前記分割内管による分割内管群を、前記既設トンネルの内部における所定の設置位置から所定長さ後方で停止させる、A工程と、
前方にある複数の前記分割内管からなる分割内管群を、後方にある複数の前記分割内管からなる分割内管群に反力を取って前記所定長さ押し出す、B工程と、
前記押し出しによって形成されたスペースに充填材の充填設備を設置するとともに、該スペースを利用して押し出された前記分割内管群の後方に妻枠体を設置し、押し出された前記分割内管群の外周面と前記既設トンネルの内周面の間にある隙間を、充填区間の隙間として、該充填区間の隙間の一部もしくは全部に対して、充填材を充填する、C工程とを有し、
前記B工程と前記C工程をセットとして、該セットを繰り返して前記内管を設置することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、元押しジャッキによって複数の分割内管を順次押し出し、全分割内管からなる分割内管群を所定の設置位置(設計位置)から所定長さ後方で停止させ、そのうちの一部の複数の分割内管を所定長さ押し出すことにより形成されたスペースに充填材の充填設備を設置するとともに、スペースを利用して押し出された分割内管群の後方に妻枠体を設置し、押し出された分割内管群と既設トンネルの間にある、充填区間の隙間の一部もしくは全部に対して充填材を充填し、この分割内管群の押し出しと充填区間の隙間への充填材の充填を繰り返し行うことにより、分割内管の搬送から隙間への充填材の充填までの一連の施工を効率的に行うことができる。
ここで、「充填区間の隙間の一部もしくは全部に対して充填材を充填する」とは、充填区間の隙間の全部に対して充填材を充填することと、先行して形成された充填区間の隙間の一部(例えば下半や上半のみ)に対して充填材を充填することを含んでいる。例えば、先行して形成された充填区間の隙間の上半と、後行して形成された充填区間の隙間の下半に連続的に充填材を充填する場合は、1つの充填区間への充填に関して言えば、「充填区間の一部に対して充填材を充填する」ことになる。
【0023】
また、本発明による既設トンネル内部への内管設置方法の他の態様において、
前記C工程では、前記充填区間の隙間への充填材の充填を、該隙間の下半への充填と、該隙間の上半への充填に分けて行い、
後行で形成された後方の前記充填区間の下半の隙間と、先行で形成された前方の前記充填区間の上半の隙間への充填をセットとして行うことを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、充填区間の隙間への充填材の充填を、隙間の下半への充填と上半への充填に分けて行い、後行で形成された後方の充填区間の下半の隙間と、先行で形成された前方の充填区間の上半の隙間への充填をセットとして行うことにより、隙間に対する効率的な充填材の充填を実現できる。
尚、最初の充填区間に対しては、隙間の下半への充填材の充填のみを行い、その後は、上記するように、先行の充填区間の上半の隙間と後行の充填区間の下半の隙間への連続的な充填材の充填を行うことになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の既設トンネル内部への内管設置システムと内管設置方法によれば、既設トンネルの内部に効率的に内管を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る内管設置方法の一例の工程図であって、A工程を説明する図である。
図2】実施形態に係る内管設置システムを構成する元押しジャッキの周辺を示す斜視図である。
図3図1のIII-III矢視図であって、分割内管のリング継手面を正面から見たトンネル軸に直交する縦断面図である。
図4】案内レールの上の摩擦軽減材に対して、分割内管が摺接している状態を示す図である。
図5図1に続いて、実施形態に係る内管設置方法の一例の工程図であって、A工程を説明する図である。
図6図5に続いて、実施形態に係る内管設置方法の一例の工程図であって、B工程とC工程を説明する図であり、実施形態に係る内管設置システムの一例をともに示す図である。
図7】前方の分割内管群を先端押し出しジャッキにて押し出している状態を示す図である。
図8】第1充填区間におけるC工程を詳細に説明する図である。
図9】分割内管とインバートの間にライナープレートを介在させている状態を示す図である。
図10】既設トンネルを構成する鋼製セグメントの主桁を跨ぐようにして妻枠体が設置されている状態を示す図である。
図11図8に続いて、実施形態に係る内管設置方法の一例の工程図である。
図12】第2充填区間におけるC工程を詳細に説明する図である。
図13図12に続いて、実施形態に係る内管設置方法の一例の工程図である。
図14図13に続いて、実施形態に係る内管設置方法の一例の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態に係る既設トンネル内部への内管設置システムと内管設置方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0028】
[実施形態に係る内管設置システムと内管設置方法]
図1乃至図14を参照して、実施形態に係る内管設置システムと内管設置方法の一例について説明する。
ここで、図1,5は、実施形態に係る内管設置方法の一例の工程図であって、A工程を説明する図であり、図6は、図5に続いて、実施形態に係る内管設置方法の一例の工程図であって、B工程とC工程を説明する図であり、実施形態に係る内管設置システムの一例をともに示す図である。また、図8は、第1充填区間におけるC工程を詳細に説明する図であり、図11は、図8に続いて、実施形態に係る内管設置方法の一例の工程図であり、図12は、第2充填区間におけるC工程を詳細に説明する図であり、図13図14は順に、図12に続いて、実施形態に係る内管設置方法の一例の工程図である。
【0029】
内管が内部に設置される既設トンネル10は、岩盤である地盤Gに施工されているNATMトンネル区間とシールドトンネル区間とを有し、シールドトンネル区間の先端には場所打ちの覆工区間がある、ハイブリット構造のトンネルである。図示例は、実施形態に係る内管設置方法により、既設トンネル10の内部に、耐震性に優れ、安全性の高い新規の取水路を形成するものとする。
【0030】
また、図示例の既設トンネル10は、直線状で所定勾配(数%勾配)の縦断線形を有するトンネルであり、従って、後方からの分割内管群の押し出し(推進)により分割内管群を所定の設計位置に位置決めできるようになっている。尚、既設トンネルにはその他様々な仕様のトンネルがあり、内部に設置される内管もその他様々な用途に供されてよい。
【0031】
図1に示すように、既設トンネル10は、立坑10Aから所定勾配で一方向に延設している。この既設トンネル10の内部の下方には、内管の設置に際してインバート18が施工される。
【0032】
立坑10Aには、実施形態に係る内管設置システムを構成する、元押しジャッキ30が設置される。立坑10Aを介して、地上から分割内管20がX1方向に順次吊り下ろされるようになっている。立坑10Aに搬入された複数の分割内管20は、元押しジャッキ30によりシールドトンネル区間の先端側へX2方向に順次押し出される。
【0033】
図2に示すように、立坑10A内では、H形鋼等の型鋼材によって架構31が組み立てられ、架構31の上に押し角32が立設され、押し角32の前方において押し角32に反力を取るようにして2本の元押しジャッキ30が設置される。2本の元押しジャッキ30のロッドの先端には当て輪33が設置され、ロッドの伸長により、当て輪33を介して分割内管20が押し出されるようになっている。尚、元押しジャッキ30の本数は図示例に限定されるものではなく、例えば4本や6本等であってもよい。また、架構の形態も様々に存在し、図示例に限定されるものでない。尚、図示例のようなバックトラス式の形態では、後方にある立坑10Aの壁(図示せず)から鋼材で突っ張りを取ることができる。
【0034】
図1図3に示すように、既設トンネル10と分割内管20は、いずれも断面形状が円形である。図3に示すように、インバート18の天端面は平坦で、縦断方向には既設トンネル10と同様の所定勾配で施工されており、その左右位置に、既設トンネル10の長手方向に延設する一対の案内レール40が設置されている。ここで、一対の案内レール40はH形鋼等により形成され、その下方にはH形鋼の上フランジを内側に傾斜させるための台座が設けられており、一対のH形鋼40の上フランジがともに内側に傾斜した姿勢で、断面円形の分割内管20の外周面を安定的に支持して案内するようになっている。
【0035】
元押しジャッキ30により押し出された各分割内管20は、一対の案内レール40に案内されながらシールドトンネル区間の先端側へ移動する。
【0036】
図3に示すように、分割内管20は内部に水路となる中空21を備え、端部のリング継手面25には角欠け防止材26が設置されている。ここで、角欠け防止材26には、パルリング等のクッション材を適用できる。また、角欠け防止材26の外縁には、無端状の定型シール材27(例えば、水膨張性の定型シール材等)がさらに設けられ、隣接する分割内管のリング継手面との間の止水性が確保されるようになっている。
【0037】
分割内管20のリング継手面25に角欠け防止材26が設けられていることにより、リング継手面25で相互に押圧しながら押し出される複数の分割内管20のリング継手面25における角欠けを、効果的に防止することができる。
【0038】
ここで、複数の分割内管20により形成される内管20B(図5等参照)は、その軸方向の耐震性を向上させるべく、隣接する分割内管20のリング継手面25同士をボルト等で接続せず、相互に押圧した状態で当接している(だけの)構造を有している。
【0039】
一対の案内レール40により、既設トンネル10の内周面と分割内管20の外周面の間には、環状の隙間15が設けられる。すなわち、案内レール40は、既設トンネル10の内部において分割内管20の移動を案内する部材であることの他に、既設トンネル10の内周面との間において周方向に均等な幅の隙間15を形成することができる。言い換えると、シールドトンネルである既設トンネル10が蛇行して設計位置からずれている場合でも、分割内管20が設計高さに位置合わせされるような高さでインバート18を施工し、一対の案内レール40を分割内管20が設計位置に配置されるように左右に調整して設置することにより、分割内管20を設計位置に設置することが可能になる。
【0040】
従って、一対の案内レール40に沿って各分割内管20が所定の設置位置に位置合わせされた際に、例えば、周方向に均等な幅の隙間15が形成されることになる。尚、実際に、分割内管20が設計位置にあり、既設トンネル10が蛇行している場合には、隙間15の幅は周方向に均等になり難い。図3に示すように、環状の隙間15は、既設トンネル10のスプリングラインの上方の上半と、下方の下半に形式的に分割することができ、以下で説明する充填材の充填では、上半への充填と下半への充填が個別に行われる。
【0041】
図4に示すように、案内レール40の上面には、摩擦軽減材45が取り付けられている。ここで、摩擦軽減材45には、PTFE(polytetrafluoroethylene)等のフッ素樹脂製のシートや板材を適用でき、ナフロン(登録商標)PTFEシートやテフロン(登録商標)PTFEシート等を一例として挙げることができる。
【0042】
案内レール40の上面に摩擦軽減材45が取り付けられていることにより、案内レール40に摺接しながら押し出される分割内管20と案内レール40との間の動摩擦力を低減でき、より一層効率的な分割内管20の押し出しを実現できる。
【0043】
分割内管20の幅t1(図1参照)は、1m乃至数mの範囲に設定でき、例えば2mに設定できる。また、分割内管20の断面寸法は外径1m乃至数m程度に設定でき、例えば外径2.5m程度に対して直径1.5m程度の中空21を備えた分割内管を使用できる。さらに、既設トンネル10の断面寸法は外径数m程度で例えば4m程度である場合は、既設トンネル10の内周面と分割内管20の外周面の間に幅500mm程度の隙間15が形成される。
【0044】
図1に示すように、立坑10A内に搬入された分割内管20が順次継ぎ足されながら、複数の分割内管20による分割内管群20Aが直線状で所定勾配を有するインバート18の上の一対の案内レール40に沿って移動し、図2に示すように、既設トンネル10の内部に設置される全数の分割内管20により形成される内管20Bは、ストラット35を介して元押しジャッキ30により押し出される。ここで、内管20Bの全長は100m乃至数百m程度に設定でき、例えば200m程度に設定できる。
【0045】
ここで、図5に示すシールドトンネル区間の先端位置は、内管20Bの先端が設置されるべき、設計先端設置位置P(所定の設置位置の一例)であるが、ここでは、内管20Bの先端を設計先端設置位置Pから所定長さt2だけ後方で停止させる。
【0046】
ここで、所定長さt2は、以下で説明するように、内管20Bの内部に形成されるスペースの幅に相当する。内管設置方法では、このスペースを利用して、充填材を充填するための各種設備を設置したり、妻枠体を設置することから、所定長さt2はスペースに必要な幅に設定される(以上、図1図5による一連の施工をまとめて、A工程)。
【0047】
次に、図6に示すように、前方にある複数(図示例は8基)の分割内管20からなる分割内管群20Cを、先端押し出しジャッキ60により、後方にある複数(全体100基程度から前方の8基を差し引いた基数)の分割内管20からなる分割内管群20Dに反力を取って、前方へX3方向に所定長さt2だけ押し出すことにより、前方の分割内管群20Cと後方の分割内管群20Dの間にスペースSを形成する(B工程)。
【0048】
図7に示すように、後方の分割内管群20Dの最前に位置する分割内管20と、前方の分割内管群20Cの最後尾の分割内管20の双方の内部に跨がるようにして、2条のガイド材64を設置する。後方の分割内管群20Dの最前に位置する分割内管20には、2条のガイド材64の内部でロッドが往復道するようにして先端押し出しジャッキ60を設置する。一方、前方の分割内管群20Cの最後尾の分割内管20には、2条のガイド材64の内部に被押し込みコマ材65を設けておく。
【0049】
一対の先端押し出しジャッキ60が一対の被押し込みコマ材65をX3方向に押し込むことにより、先端押し出しジャッキ60が後方の分割内管群20Dに反力を取って、前方の分割内管群20Cを押し出すことになる。
【0050】
図6に戻り、形成されたスペースSを利用して、前方の分割内管群20Cの後方側に妻枠体50を設置し、妻枠体50にて端部の隙間を閉塞しながら充填材90Aの充填を行う(C工程)。図6に示すように、最初に押し出された分割内管群20Cは、既設トンネル10の内部において各分割内管20が設置されるべき位置に設置されており、この分割内管群20Cと既設トンネル10との間の隙間15が第1充填区間となる。
【0051】
尚、図6に示すように、立坑10Aの内部にある元押しジャッキ30と、妻枠体50と、先端押し出しジャッキ60とにより、内管設置システム70が形成される。
【0052】
図8は、第1充填区間におけるC工程を詳細に説明する図である。第1充填区間の長さt3は、図示例では8基の分割内管20の全体幅となっている。前方の分割内管群20Cから後方の分割内管群20Dに亘り、その内部には充填材が搬送される充填配管81が延設している。スペースSには作業足場88(充填設備の一例)が設置され、スペースSを利用して、前方の分割内管群20Cの最後尾の分割内管20の周囲に妻枠体50を設置する。
【0053】
図9に示すように、分割内管20の下方は一対の案内レール40にて支持されているが、最下端においてインバート18との間に複数枚のライナープレート86を嵌め込むことにより、分割内管20の安定性を確保する。
【0054】
妻枠体50は、U字状の中空シートにより形成され、中空シートの内部にモルタル等の流体が充填されて膨らみ、中空シートの端部同士が上方で繋がれるようになっている。
【0055】
このように、妻枠体50がU字状の中空シートにより形成され、中空シートの内部に流体が充填されて膨らみ、中空シートの端部同士が上方で繋がれて使用されることにより、円形断面の既設トンネル10の内周面と円形断面の分割内管20の外周面との間の隙間15に対する妻枠体50の取り付け性が良好になり、かつ、環状の隙間15の閉塞性も良好になる。
【0056】
妻枠体50の設置に関し、より詳細には、図10に示すように、既設トンネル10を形成する鋼製セグメント11が備える、周方向に延設する主桁12を跨ぐようにして妻枠体50を設置する。このように、主桁12を跨ぐようにして妻枠体50を設置することにより、妻部における隙間15の閉塞性がより一層向上する。
【0057】
図8に戻り、妻枠体50の上部と既設トンネル10の間には浮力受け材85を介在させ、充填された充填材による妻枠体50の浮き上がり防止措置を講じる。
【0058】
充填配管81は、妻枠体50の後方で二股に分かれ、一方は妻枠体50を貫通した充填筒先83Aを備え、他方は第1充填区間の先端側にある充填筒先83Bを備える。充填筒先83Bにはバルブ82が設けられ、その近傍にはエア抜きパイプ84が設置される。エア抜きパイプ84を介して第1充填区間の隙間15にあるエアを抜きながら、2つの充填筒先83A,83Bからモルタル等の充填材を充填する。
【0059】
図示例の内管設置方法では、まず、第1充填区間の隙間15の下半のみに充填材90A(下半充填材)を充填する。
【0060】
次に、図11に示すように、次の8基の分割内管20を新たな前方の分割内管群20Cとし、その後方にある分割内管群を新たな後方の分割内管群20Dとした上で、先端押し出しジャッキ60を利用して既に説明した方法により前方の分割内管群20Cを前方へX4方向に押し出す。この押し出しにより、前方の分割内管群20Cと後方の分割内管群20Dとの間に、新たなスペースSを形成する。
【0061】
図11と、第2充填区間におけるC工程を詳細に説明する図12に示すように、第1充填区間において充填材が充填されていない上半の隙間15への充填材90Bの充填と、第2充填区間における下半の隙間15への充填材90Aの充填を連続して行う。
【0062】
このように、後行で形成された後方の充填区間の下半の隙間15と、先行で形成された前方の充填区間の上半の隙間15への充填材の充填をセットとして、複数(図示例は8基)の分割内管20による分割内管群20Cの押し出しと合わせて、以後繰り返し行うことにより、図13に示すように、内管20Bの押し出しと、シールドトンネル区間における隙間15に対する充填材の充填が完了する。
【0063】
図13に示すように、NATMトンネル区間では、端部に設置されるテーパー管20Eを先端押し出しジャッキ60を利用して立坑10Aから押し出し、内管20Bとの間に離間Rを設けておく。この離間Rは、長尺の内管20Bの管長伸びに対応するための空間である。
【0064】
図14に示すように、現場にてコンクリートを打設することによって施工される現場打設覆工20Fにより、離間Rを閉塞する。次いで、NATMトンネル区間における内管20Bや現場打設覆工20F、テーパー管20Eの周囲の隙間をMMR(Man made rock:人工岩盤)90Cにて閉塞することにより、既設トンネル10の内部への内管20Bの設置が完了する。
【0065】
図示する内管設置システム70を用いた内管設置方法によれば、元押しジャッキ30によって複数の分割内管20を順次押し出し、全分割内管20からなる分割内管群20Bを所定の設置位置から所定長さt2後方で停止させ、そのうちの一部の複数の分割内管20を所定長さ押し出すことにより形成されたスペースSに充填材90の充填設備を設置するとともに、スペースSを利用して押し出された分割内管群20Cの後方に妻枠体50を設置し、押し出された分割内管群20Cと既設トンネル10の間にある、充填区間の隙間15の一部もしくは全部に対して充填材90を充填し、この分割内管群20Cの押し出しと充填区間の隙間15への充填材90の充填を繰り返し行うことにより、分割内管20の搬送から隙間15への充填材90の充填までの一連の施工を、効率的に行うことが可能になる。
【0066】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0067】
10:既設トンネル
10A:立坑
11:鋼製セグメント
12:主桁
13:縦リブ
15:隙間
18:インバート
20:分割内管
20A:分割内管群
20B:内管(分割内管群)
20C:前方の分割内管群(分割内管群)
20D:後方の分割内管群(分割内管群)
20E:テーパー管
20F:現場打設覆工
21:中空
25:リング継手面
26:角欠け防止材
27:シール材
30:元押しジャッキ
31:架構
32:押し角
33:当て輪
35:ストラット
40:案内レール(H形鋼)
45:摩擦軽減材
50:妻枠体
60:先端押し出しジャッキ
64:ガイド材
65:被押し込みコマ材
70:内管設置システム
81:充填配管
82:バルブ
83A,83B:充填筒先
84:エア抜きパイプ
85:浮力受け材
86:ライナープレート
88:作業足場(充填設備)
90:充填材
90A:下半充填材(充填材)
90B:上半充填材(充填材)
90C:MMR
G:地盤
P:設計先端設置位置
S:スペース
R:離間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14