(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033418
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品、回路基板、および積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240306BHJP
H01C 7/02 20060101ALI20240306BHJP
H01C 7/04 20060101ALI20240306BHJP
H01C 7/06 20060101ALI20240306BHJP
H01C 7/10 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 201C
H01G4/30 201G
H01G4/30 201D
H01C7/02
H01C7/04
H01C7/06
H01C7/10
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 517
H01G4/30 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136982
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】金田 和巳
【テーマコード(参考)】
5E001
5E034
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AD04
5E001AJ01
5E034AB05
5E034BB05
5E034CB05
5E082AB03
5E082BC35
5E082EE11
5E082EE21
5E082GG11
5E082GG21
(57)【要約】
【課題】 IR劣化を抑制することができる積層セラミック電子部品、回路基板、および積層セラミック電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 積層セラミック電子部品は、複数の誘電体層11と、複数の誘電体層11を介して設けられ互いに対向する複数の内部電極層12と、が積層された素体10と、素体10の第1側面に設けられ、複数の内部電極層12が積層される方向において最も外側の2層の内部電極層12に接続された第1外部電極20aと、素体10の第1側面と反対側の第2側面に設けられ、2層の内部電極層12以外の少なくとも一部の内部電極層12に接続された第2外部電極20bと、を備え、第1外部電極20aは、第2外部電極20bよりも厚く形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と、前記複数の誘電体層を介して設けられ互いに対向する複数の内部電極層と、が積層された素体と、
前記素体の第1側面に設けられ、前記複数の内部電極層が積層される方向において最も外側の2層の内部電極層に接続された第1外部電極と、
前記素体の前記第1側面と反対側の第2側面に設けられ、前記2層の内部電極層以外の少なくとも一部の内部電極層に接続された第2外部電極と、を備え、
前記第1外部電極は、前記第2外部電極よりも厚い、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記複数の内部電極層のうち、前記第1外部電極に接続される内部電極層は、前記第2外部電極に接続される内部電極層より1層以上多い、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記第2外部電極の主成分の金属は、前記複数の内部電極層の主成分の金属と同じであり、
前記第1外部電極の主成分の金属は、前記複数の内部電極層の主成分の金属と異なる、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記第1外部電極上および前記第2外部電極上にさらにメッキ層を有する、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記複数の内部電極層の主成分の金属および前記第2外部電極の主成分の金属の融点は、前記第1外部電極の主成分の金属より高い、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記複数の内部電極層および前記第2外部電極の主成分の金属は、ニッケルであり、
前記第1外部電極の主成分の金属は、銅である、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記第2外部電極は、セラミック粒子を含み、
前記第1外部電極は、ガラス成分を含む、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品と、
前記積層セラミック電子部品が実装された基板と、を備え、
前記第1外部電極は、陽極である、回路基板。
【請求項9】
内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層し、積層方向において最も外側の2層の前記内部電極パターンが第1側面に露出し、前記第1側面と反対側の第2側面に前記2層の前記内部電極パターン以外の内部電極パターンの少なくとも一部が露出するように積層体を得る工程と、
前記積層体に熱処理を行なうことによって素体を焼成する工程と、
前記素体と共に焼成するか、前記積層体を焼成した後に焼成することによって、前記第1側面に第1外部電極を形成する工程と、
前記素体と共に焼成するか、前記積層体を焼成した後に焼成することによって、前記第2側面に第2外部電極を形成する工程と、を含み、
前記第2外部電極よりも前記第1外部電極を厚く形成する、積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記第2外部電極は、前記素体と共に焼成し、
前記第1外部電極は、前記素体を焼成した後に焼き付ける、請求項9に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記第1外部電極を焼き付ける工程の温度を、前記第2外部電極を焼成する温度よりも低くする、請求項10に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記第1外部電極上および前記第2外部電極上にさらにメッキ層を形成する工程を含む、請求項9または請求項10に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品、回路基板、および積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部電極層と誘電体層とが交互に積層された積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品が知られている(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57-72313号公報
【特許文献2】特開2014-154690号公報
【特許文献3】特開2014-127504号公報
【特許文献4】特開2010-093037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような積層セラミック電子部品において、素体の内部に存在する水分から発生する水素に起因してIR(絶縁抵抗)劣化が生じることがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、IR劣化を抑制することができる積層セラミック電子部品、回路基板、および積層セラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る積層セラミック電子部品は、複数の誘電体層と、前記複数の誘電体層を介して設けられ互いに対向する複数の内部電極層と、が積層された素体と、前記素体の第1側面に設けられ、前記複数の内部電極層が積層される方向において最も外側の2層の内部電極層に接続された第1外部電極と、前記素体の前記第1側面と反対側の第2側面に設けられ、前記2層の内部電極層以外の少なくとも一部の内部電極層に接続された第2外部電極と、を備え、前記第1外部電極は、前記第2外部電極よりも厚く形成されている。
【0007】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数の内部電極層のうち、前記第1外部電極に接続される内部電極層は、前記第2外部電極に接続される内部電極層より1層以上多くてもよい。
【0008】
上記積層セラミック電子部品において、前記第2外部電極の主成分の金属は、前記複数の内部電極層の主成分の金属と同じであり、前記第1外部電極の主成分の金属は、前記複数の内部電極層の主成分の金属と異なっていてもよい。
【0009】
上記積層セラミック電子部品において、前記第1外部電極上および前記第2外部電極上にさらにメッキ層を有していてもよい。
【0010】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数の内部電極層の主成分の金属および前記第2外部電極の主成分の金属の融点は、前記第1外部電極の主成分の金属より高くてもよい。
【0011】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数の内部電極層および前記第2外部電極の主成分の金属は、ニッケルであり、前記第1外部電極の主成分の金属は、銅であってもよい。
【0012】
上記積層セラミック電子部品において、前記第2外部電極は、セラミック粒子を含み、前記第1外部電極は、ガラス成分を含んでいてもよい。
【0013】
本発明に係る回路基板は、積層セラミック電子部品と、前記積層セラミック電子部品が実装された基板と、を備え、前記第1外部電極は、陽極である。
【0014】
本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層し、積層方向において最も外側の2層の前記内部電極パターンが第1側面に露出し、前記第1側面と反対側の第2側面に前記2層の前記内部電極パターン以外の内部電極パターンの少なくとも一部が露出するように積層体を得る工程と、前記積層体に熱処理を行なうことによって素体を焼成する工程と、前記素体と共に焼成するか、前記積層体を焼成した後に焼成することによって、前記第1側面に第1外部電極を形成する工程と、前記素体と共に焼成するか、前記積層体を焼成した後に焼成することによって、前記第2側面に第2外部電極を形成する工程と、を含み、前記第2外部電極よりも前記第1外部電極を厚く形成する。
【0015】
上記製造方法において、前記第2外部電極は、前記素体と共に焼成し、前記第1外部電極は、前記素体を焼成した後に焼き付けてもよい。
【0016】
上記製造方法において、前記第1外部電極を焼き付ける工程の温度を、前記第2外部電極を焼成する温度よりも低くしてもよい。
【0017】
上記製造方法において、前記第1外部電極上および前記第2外部電極上にさらにメッキ層を形成する工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、IR劣化を抑制することができる積層セラミック電子部品、回路基板、および積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
【
図3】第1外部電極および第2外部電極について説明するための図である。
【
図6】(a)および(b)はメッキ層を例示する図である。
【
図7】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
【
図8】(a)および(b)は積層工程を例示する図である。
【
図9】積層セラミックコンデンサの他の製造方法のフローを例示する図である。
【
図10】積層セラミックコンデンサの他の製造方法のフローを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0021】
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。
図1で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する素体10と、素体10の対向する第1側面および第2側面にそれぞれ設けられた第1外部電極20aおよび第2外部電極20bとを備える。なお、素体10の第1側面および第2側面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を第3側面および第4側面と称する。第1外部電極20aおよび第2外部電極20bは、素体10の積層方向の上面、下面、第3側面および第4側面に延在している。ただし、第1外部電極20aと第2外部電極20bとは、互いに離間している。
【0022】
素体10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、金属を主成分とする内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。言い換えると、素体10は、互いに対向する複数の内部電極層12と、複数の内部電極層12の間に各々挟まれた誘電体層11と、を備えている。各内部電極層12が延伸される方向の端縁は、素体10の第1外部電極20aが設けられた第1側面と、第2外部電極20bが設けられた第2側面において、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、第1外部電極20aと第2外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。第2側面は、第1側面と反対側の側面である。また、誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13は、誘電体層11と組成が同じであっても、異なっていても構わない。
【0023】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.110mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.1mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0024】
誘電体層11は、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主相とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、チタン酸バリウム(BaTiO3),ジルコン酸カルシウム(CaZrO3),チタン酸カルシウム(CaTiO3),チタン酸ストロンチウム(SrTiO3),チタン酸マグネシウム(MgTiO3),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等のうち少なくとも1つから選択して用いることができる。Ba1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3は、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよびチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムなどである。
【0025】
誘電体層11には、添加物が添加されていてもよい。誘電体層11への添加物として、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはケイ素(Si)を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。
【0026】
内部電極層12は、ニッケル(Ni),銅(Cu),スズ(Sn)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12の主成分として、白金(Pt),パラジウム(Pd),銀(Ag),金(Au)などの貴金属やこれらの一部を含む合金を用いてもよい。積層方向において、素体10の下面側の最外層の内部電極層12は、第1外部電極20aに接続されている。また、素体10の上面側の最外層の内部電極層12も、第1外部電極20aに接続されている。それにより、第1外部電極20aに接続される内部電極層12は、第2外部電極20bに接続される内部電極層12よりも、1層以上多くなる。
【0027】
このような構成において、
図2で例示するように、第2外部電極20bを陽極として用い、第1外部電極20aを陰極として用いると仮定すると、最外層の内部電極層12の第2外部電極20b側の先端と、第2外部電極20bとの間(楕円の箇所)において、積層セラミックコンデンサ100の使用中に周囲の環境(例えば雰囲気ガス)が素体10内に侵入した水分から発生する水素やメッキ処理時に外部電極に侵入した水素に起因して、下記式(1)でIR(絶縁抵抗)劣化が生じる。楕円の箇所でIR劣化が生じるのは、水素はプラスに帯電してH
+になっていると考えられ、外部電極と対抗内部電極との間の電界により、H
+が誘電体中を移動し得ると考えられるためである。
H
2O → 2H
+ + 1/2O
2 + 2e
- (1)
【0028】
そこで、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、IR劣化を抑制することができる構成を有している。
【0029】
具体的には、
図3で例示するように、第1外部電極20aが第2外部電極20bよりも厚く形成されている。この構成によれば、第1外部電極20aの厚さと第2外部電極20bの厚さが異なることから、第1外部電極20aと第2外部電極20bとを識別できるようになる。それにより、第1外部電極20aを陽極側に接続できるようになる。第1外部電極20aを陽極として用いることができれば、上記式(1)の反応が抑制され、IR劣化が抑制される。また、第1外部電極20aが厚く形成されることから、第1外部電極20aがバリア層として機能し、第1外部電極20aからの素体10の内部への水分の侵入が抑制される。それにより、上記式(1)の反応が抑制され、IR劣化が抑制される。
【0030】
図4は、回路基板について例示する図である。
図4で例示するように、積層方向の下面が基板201上のランド203と対向するように配置される。基板201上のランド203に対して、ハンダ202を介して第1外部電極20aおよび第2外部電極20bがそれぞれ独立して基板201に電気的に接続される。
図5で例示するように、基板201において第2外部電極20bを接地することによって、第1外部電極20aを陽極として用いることができる。
【0031】
第1外部電極20aを第2外部電極20bよりも厚く形成するためには、第2外部電極20bを素体10と共に焼成し、第1外部電極20aを素体10の焼成後に焼き付けることが好ましい。したがって、第2外部電極20bの主成分の金属は、内部電極層12の主成分の金属と同じであり、第1外部電極20aの主成分の金属は、内部電極層12の主成分の金属と異なることが好ましい。例えば、内部電極層12の主成分の金属および第2外部電極20bの主成分の金属の融点は、第1外部電極20aの主成分の金属より高いことが好ましい。例えば、内部電極層12および第2外部電極20bの主成分の金属は、ニッケルであり、第1外部電極20aの主成分の金属は、銅であることが好ましい。第2外部電極20bを素体10と共に焼成するためには、第2外部電極20bの焼結性を制御するためにセラミック粒子を共材として第2外部電極20bに含ませることが好ましい。第1外部電極20aを焼き付けるためには、第1外部電極20aにガラス成分を含ませることが好ましい。
【0032】
図6(a)および
図6(b)で例示するように、第1外部電極20a上にメッキ層が設けられていてもよく、第2外部電極20b上にメッキ層が設けられていてもよい。メッキ処理時には、第1外部電極20aおよび第2外部電極20bは、下地層として機能する。メッキ層は、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、スズなどの金属またはこれらの2以上の合金を主成分とする。メッキ層は、単一金属成分のメッキ層でもよく、互いに異なる金属成分の複数のメッキ層でもよい。例えば、メッキ層は、下地層側から順に、第1メッキ層21、第2メッキ層22および第3メッキ層23が形成された構造を有する。第1メッキ層21は、例えば、銅メッキ層である。第2メッキ層22は、例えば、ニッケルメッキ層である。第3メッキ層23は、例えば、スズメッキ層である。なお、メッキ層が形成されていても、第1外部電極20aが第2外部電極20bよりも厚く形成されていることにより、2つの外部電極のうちいずれが第1外部電極20aであるか視認することができる。
【0033】
第1外部電極20aを第2外部電極20bよりも十分に厚く形成する観点から、第1外部電極20aは第2外部電極20bよりも30%以上厚く形成されていることが好ましく、50%以上厚く形成されていることがより好ましく、100%以上厚く形成されていることがさらに好ましい。第1外部電極20aおよび第2外部電極20bの厚みは、積層セラミックコンデンサ100を側面のサイドマージンから研磨して得られた断面において、SEM写真を用いて測定することができる。
【0034】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
図7は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0035】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABO3の粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、BaTiO3は、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い誘電率を示す。このBaTiO3は、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。誘電体層11の主成分セラミックの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル-ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0036】
得られたセラミック粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはケイ素(Si)を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。これらのうち、主としてSiO2が焼結助剤として機能する。
【0037】
例えば、セラミック原料粉末に添加化合物を含む化合物を湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック材料を調製する。例えば、上記のようにして得られたセラミック材料について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。以上の工程により、誘電体材料が得られる。
【0038】
(塗工工程)
次に、得られた誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材51上にセラミックグリーンシート52を塗工して乾燥させる。基材51は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
【0039】
(内部電極形成工程)
次に、
図8(a)で例示するように、セラミックグリーンシート52上に、内部電極パターン53を成膜する。
図8(a)では、一例として、セラミックグリーンシート52上に4層の内部電極パターン53が所定の間隔を空けて成膜されている。内部電極パターン53が成膜されたセラミックグリーンシート52を、積層単位とする。内部電極パターン53には、内部電極層12の主成分金属の金属ペーストを用いる。成膜の手法は、印刷、スパッタ、蒸着などであってもよい。
【0040】
(圧着工程)
次に、セラミックグリーンシート52を基材51から剥がしつつ、
図8(b)で例示するように、積層単位を積層する。次に、積層単位が積層されることで得られた積層体の上下にカバーシート54を所定数(例えば2~10層)だけ積層して熱圧着させ、所定チップ寸法(例えば1.0mm×0.5mm)にカットする。この場合において、最外層の2層の内部電極パターン53は、積層体の第1側面に露出させる。
図8(b)の例では、点線に沿ってカットする。カバーシート54は、セラミックグリーンシート52と同じ成分であってもよく、添加物が異なっていてもよい。
【0041】
(第1塗布工程)
次に、積層体の第2側面に、第2外部電極20bとなる金属ペーストをディップ法などで塗布する。この金属ペーストには、セラミック粒子を共材として含ませる。
【0042】
(焼成工程)
その後、酸素分圧10-5~10-8atmの還元雰囲気中で1100℃~1300℃で10分~2時間焼成する。このようにして、素体10と第2外部電極20bを得ることができる。
【0043】
(再酸化処理工程)
その後、N2ガス雰囲気中において600℃~1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0044】
(第2塗布工程)
次に、積層体の第1側面に、第1外部電極20aとなる金属ペーストをディップ法などで塗布する。この金属ペーストには、ガラスフリットなどのガラス成分を含ませる。
【0045】
(焼付工程)
次に、700℃~900℃程度の温度で金属ペーストを焼き付けることで、第1外部電極20aを形成する。この場合において、第1外部電極20aを第2外部電極20bよりも厚く形成する。
【0046】
(めっき処理工程)
その後、めっき処理により、第1外部電極20aおよび第2外部電極20b上に、銅、ニッケル、スズ等の金属コーティングを行ってもよい。
【0047】
図9は、積層セラミックコンデンサ100の他の製造方法のフローを例示する図である。
図9で例示するように、圧着工程までは
図7と同様である。
【0048】
(塗布工程)
次に、積層体の第1側面に、第1外部電極20aとなる金属ペーストをディップ法などで塗布し、積層体の第2側面に、第2外部電極20bとなる金属ペーストをディップ法などで塗布する。これらの金属ペーストには、セラミック粒子を共材として含ませる。
【0049】
(焼成工程)
その後、酸素分圧10-5~10-8atmの還元雰囲気中で1100℃~1300℃で10分~2時間焼成する。このようにして、素体10と第1外部電極20aと第2外部電極20bとを得ることができる。金属ペーストの厚みを調整するなどして、第1外部電極20aを第2外部電極20bよりも厚く形成する。
【0050】
(再酸化処理工程)
その後、N2ガス雰囲気中において600℃~1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0051】
(めっき処理工程)
その後、めっき処理により、第1外部電極20aおよび第2外部電極20b上に、銅、ニッケル、スズ等の金属コーティングを行ってもよい。
【0052】
図10は、積層セラミックコンデンサ100の他の製造方法のフローを例示する図である。
図10で例示するように、圧着工程までは
図7と同様である。
【0053】
(焼成工程)
その後、酸素分圧10-5~10-8atmの還元雰囲気中で1100℃~1300℃で10分~2時間焼成する。このようにして、素体10を得ることができる。
【0054】
(再酸化処理工程)
その後、N2ガス雰囲気中において600℃~1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0055】
(塗布工程)
次に、積層体の第1側面に、第1外部電極20aとなる金属ペーストをディップ法などで塗布し、積層体の第2側面に、第2外部電極20bとなる金属ペーストをディップ法などで塗布する。これらの金属ペーストには、ガラスフリットなどをガラス成分として含ませる。
【0056】
(焼付工程)
次に、700℃~900℃程度の温度で金属ペーストを焼き付けることで、第1外部電極20aおよび第2外部電極20bを形成する。金属ペーストの厚みを調整するなどして、第1外部電極20aを第2外部電極20bよりも厚く形成する。
【0057】
(めっき処理工程)
その後、めっき処理により、第1外部電極20aおよび第2外部電極20b上に、銅、ニッケル、スズ等の金属コーティングを行ってもよい。
【0058】
なお、上記各実施形態は、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、上記各実施形態の構成は、バリスタやサーミスタなどの、他の積層セラミック電子部品に適用することもできる。
【0059】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 素体
11 誘電体層
12 内部電極層
13 カバー層
20a 第1外部電極
20b 第2外部電極
51 基材
52 セラミックグリーンシート
53 内部電極パターン
100 積層セラミックコンデンサ