IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大平 吉夫の特許一覧

<>
  • 特開-インソール 図1
  • 特開-インソール 図2
  • 特開-インソール 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003342
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】インソール
(51)【国際特許分類】
   A43B 17/00 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
A43B17/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102417
(22)【出願日】2022-06-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】517220933
【氏名又は名称】大平 吉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176337
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】大平 吉夫
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050EA03
4F050HA56
4F050HA57
4F050HA63
4F050HA71
4F050JA01
4F050JA02
(57)【要約】
【課題】膝関節が左右方向に動揺することを抑制できるインソールを提供する。
【解決手段】インソールは、踵を支持するヒールカップ部を含むインソールであって、ヒールカップ部は、外側の高さが内側の高さよりも高い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
踵を支持するヒールカップ部を含むインソールであって、
前記ヒールカップ部は、外側の高さが内側の高さよりも高い
インソール。
【請求項2】
前記ヒールカップ部を構成する体重支持部と、
前記体重支持部の底面に接合される補強部と、を備える
請求項1に記載のインソール。
【請求項3】
前記補強部は、足のうちの外側を支持できるように前記体重支持部に接合される外側補強部を含む
請求項2に記載のインソール。
【請求項4】
前記補強部は、
第1中足骨の骨頭部底面を支持する第1支持部と、
前記第1支持部と接合され、第2中足骨の骨頭部底面から第5中足骨の骨頭部底面を支持する第2支持部と、をさらに含み、
前記第1支持部を構成する材料は、前記第2支持部を構成する材料よりも軟らかい
請求項3に記載のインソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インソールに関する。
【背景技術】
【0002】
靴に装着されるインソールが知られている。特許文献1は、インソールの一例を開示している。このインソールは、足部の踵を支持するヒールカップ部を備える。ヒールカップ部は、踵の内側、外側、および、後側を覆う。ヒールカップ部の高さは概ね一定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-62164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
距骨下関節が回内運動した場合、下腿が内側に捻じれることに起因して、膝関節に捻じれの力が作用し、膝関節を構成する各組織にダメージが与えられる。距骨下関節の回内運動が長期的に継続した場合、膝関節は、不安定となるため、左右方向への動揺をしやすくなる。膝関節が左右方向に動揺することは、ゴルフおよびバスケットボール等のスポーツ競技において、パフォーマンスの低下、および、怪我の発生の要因となる。また、膝関節が左右方向に動揺することは、変形性膝関節症の治療、疼痛軽減、および、予防の面でも妨げとなる。上記インソールは、このような点について、検討されていない。
【0005】
本発明の目的は、膝関節が左右方向に動揺することを抑制できるインソールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係るインソールは、踵を支持するヒールカップ部を含むインソールであって、前記ヒールカップ部は、外側の高さが内側の高さよりも高い。
【0007】
足部は、踵骨を含む外側柱と、距骨を含む内側柱とによって構成される。距骨および踵骨は、距骨下関節で回内および回外の運動軸を持ち、これらの運動は距舟関節と踵立方関節の運動軸に影響する。距骨下関節の回内位では、距舟関節軸と踵立方関節軸が平行となるため、関節可動域が大きくなることで、足部は柔らかくなる。一方、距骨下関節の回外位では、距舟関節軸と踵立方関節軸が交差し、関節可動域が小さくなるため、足部は固くなる。なお、回内とは、背屈、外転、および、外返しの複合運動であり、回外とは、底屈、内転、および、内がえしの複合運動である。
【0008】
上記インソールによれば、ヒールカップ部の外側の高さが内側の高さよりも高いため、回内の一要素である踵骨の外返し運動が制限される。距骨下関節を回内位から中間位に好適に誘導できるため、膝関節が安定する。このため、膝関節が左右方向に動揺することを抑制できる。
【0009】
本発明の第2観点に係るインソールは、第1観点に係るインソールであって、前記ヒールカップ部を構成する体重支持部と、前記体重支持部の底面に接合される補強部と、を備える。
【0010】
上記インソールによれば、体重支持部の剛性が高められる。
【0011】
本発明の第3観点に係るインソールは、第2観点に係るインソールであって、前記補強部は、足のうちの外側を支持できるように前記体重支持部に接合される外側補強部を含む。
【0012】
上記インソールによれば、外側補強部によって、体重支持部の外側の剛性が高められるため、荷重が作用した場合に足部の外側が沈むことを抑制できる。このため、外側縦アーチの保持が促進される、換言すれば、横足根関節に対し、外返し方向の力が継続して与えられる。
【0013】
横足根関節に対して、外返し方向の力が与えられると、隣り合う踵骨および立方骨の関節の形状によって、これら2つの骨が噛みあい、圧縮の応力が生じる。このため、横足根関節がロックされる。なお、踵骨は「後足部」とよばれるユニット(距骨と踵骨とから構成される、足の後方部)に属し、立方骨は「前足部」とよばれるユニット(距骨と踵骨とを除くそれより前方の全ての骨)に属する。
【0014】
横足根関節のロックがされた場合、後足部と前足部との接合が強固になるため、足部全体の剛性が高められる。このため、足部、下肢、および、身体の安定性が向上する。
【0015】
また、体重支持部の外側の剛性が高められるため、足部が外側に倒れること、下腿が外側に倒れること、大腿が外側に倒れること、身体が左右方向に倒れること、および、重心が左右方向に変位すること等が抑制される。また、前足部と後足部との接合が強固になるため、足部よりも上方に存在する関節が左右方向に曲がろうとする力の発生を抑制できる。なお、足部よりも上方に存在する関節とは、例えば、足部と下腿との間にある足関節、下腿と大腿との間にある膝関節、大腿と骨盤との間にある股関節、骨盤と椎骨との間にある仙椎関節、および、各椎骨同士の間にある椎間関節等である。特に膝関節を具体例にして説明する場合、下腿が外側に倒れた場合、膝関節が元々存在した位置から外側に変位することにより、膝関節には、内転する力、いわゆるO脚を促進する力が作用する。上記インソールによれば、膝関節にこのような力が作用することが抑制される。
【0016】
本発明の第4観点に係るインソールは、第3観点に係るインソールであって、前記補強部は、第1中足骨の骨頭部底面を支持する第1支持部と、前記第1支持部と接合され、第2中足骨の骨頭部底面から第5中足骨の骨頭部底面を支持する第2支持部と、をさらに含み、前記第1支持部を構成する材料は、前記第2支持部を構成する材料よりも軟らかい。
【0017】
上記インソールによれば、第1中足骨の骨頭部が、第2中足骨の骨頭部から第5中足骨の骨頭部よりも落ち込むことができるため、例えば、ゴルフのスイング動作において、足部の第1列が底屈位となる状態をスムーズに形成できる。ユーザは、第1中足骨の骨頭部を容易に意識付けできるため、例えば、ゴルフのスイング動作において重要である第1中足骨の骨頭部を蹴るような動作、換言すれば母趾球で地面を蹴るような動作を容易に実行できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に関するインソールによれば、膝関節が左右方向に動揺することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態のインソールの斜視図。
図2図1のインソールの分解斜視図。
図3図1のインソールの背面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るインソールの一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、実施形態のインソール10(以下では、「インソール10」と称する)の斜視図である。図2は、図1のインソール10の分解斜視図である。図3は、図1のインソール10の背面図である。
【0021】
<1.インソールの構成>
従来のインソールは、適合型インソールと機能型インソールとに分類される。適合型インソールは、主に足裏に作用する圧力を分散させることを目的として使用される。このため、適合型インソールでは、例えば、ウレタン樹脂、EVA(Ethylene Vinyl Acetate)樹脂等の軟らかい樹脂、または、ゴム等の化合物によって、体重支持部が構成される。適合型インソールでは、体重支持部に荷重が作用することによって、体重支持部が塑性変形しやすい。また、体重支持部を構成する材料が軟らかいため、足部を中間位に誘導する補助力が好適に得られない。しかし、適合型インソールは、部分的に厚さおよび硬さ等を容易に変更できるため、部分的に支持性、クッション性、および、衝撃吸収性等を容易に変更できる。なお、中間位は、距骨下関節が回内位および回外位ではない位置である。距骨下関節の中間位において、足部は、機能を最大限に発揮できる。
【0022】
一方、機能型インソールは、主に、足部を中間位に誘導することを目的として使用される。機能型インソールは、足部を中間位に誘導するため、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、炭素繊維、または、ガラス繊維等の比較的硬い材料によって体重支持部が構成される。このため、機能型インソールでは、体重支持部の支持性および反発性を任意の部分で調整することが難しい。また、機能型インソールでは、ヒールカップ部を深く形成することによって、足部のコントロール性が増すが、靴の踵部が外方に押し広げられる。このため、足と靴とのフィット感が低下する。図1に示されるインソール10は、従来の適合型インソールおよび機能型インソールのデメリットが解消されるように構成される。インソール10は、適合型インソールの特徴、および、機能型インソールの特徴を有する、いわば、ハイブリット型のインソールである。
【0023】
図1に示されるインソール10は、距骨下関節を中間位に誘導することによって、膝関節が左右方向に動揺することを抑制するように構成される。膝関節が左右に動揺することは、スポーツ競技において、パフォーマンスの低下、および、怪我の発生の要因となる。スポーツ競技は、例えば、サイドステップを行う競技、左右方向へのフェイント動作を行う競技、または、身体が外側方向に不安定にならないように踏ん張ることが求められる競技である。具体的には、スポーツ競技は、ゴルフ、テニス、卓球、バスケットボール、サッカー、ダンス、または、陸上競技等が挙げられる。インソール10によれば、スポーツ競技において、パフォーマンスの低下、および、怪我が発生することが抑制される。また、膝関節が左右方向に動揺することは、変形性膝関節症の治療、疼痛軽減、および、予防の面でも妨げとなる。インソール10によれば、変形性膝関節症の治療、疼痛軽減、および、予防の面でも効果が期待できる。
【0024】
図1に示されるインソール10は、例えば、右足用の靴に装着されて使用される、右足用のインソールである。インソール10は、例えば、ゴルフ、テニス、卓球、バスケットボール、サッカー、ダンス、または、陸上競技等で使用される靴に装着されるものであってもよく、変形性膝関節症の患者、または、膝関節に痛みがある人の靴に装着されるものであってもよい。インソール10は、ユーザの右足の距骨下関節を中間位に誘導するように構成される。ユーザの左足の距骨下関節を中間位に誘導するインソールは、図1等に示されるインソールと、中心線XOに対して左右が反転して構成される点を除いて同様の構成であるため、説明を省略する。なお、以下では、インソール10に足が載せられた場合に、中心線XOに対して母趾球が存在する側を内側と称し、内側と反対側を外側と称する場合がある。
【0025】
インソール10は、距骨下関節を中間位に誘導することができるように、内側縦アーチに対応する部分が隆起した形状である。インソール10は、トップカバー20と、ボトムカバー30と、ヒールグリップ40と、体重支持部50と、補強部60と、エクステンション70と、を備える。インソール10は、トップカバー20、ボトムカバー30、ヒールグリップ40、体重支持部50、補強部60、および、エクステンション70が互いに接合される。インソール10を構成する各要素は、例えば、接着剤によって互いに接合される。
【0026】
トップカバー20は、インソール10を構成する要素のうち、最も上に位置する。トップカバー20は、体重支持部50を含むインソール10を構成する各要素の天面形状に沿うように、または、密着するように、接合している。トップカバー20は、ユーザの右足裏と接触する。トップカバー20を構成する材料は、任意に選択可能である。本実施形態では、トップカバー20を構成する材料は、例えば、合皮ビニールと裏布とが接合されたシート材である。トップカバー20を構成する材料は、足部底面への衝撃を減少させるために、クッション性を有する材料であってもよい。クッション性を有する材料は、例えば、発泡ウレタンまたは発泡EVA等のシート材である。
【0027】
ボトムカバー30は、インソール10を構成する要素のうち、最も下に位置する。ボトムカバー30は、靴の中底に載せられる。換言すれば、靴に予め挿入されていた中敷きは取り外されて、中敷きの代わりにインソール10が使用される。ボトムカバー30は、インソール10の底面形状に沿うように、または、密着するように、インソール10を構成する各要素と接合している。ボトムカバー30を構成する材料は、任意に選択可能である。本実施形態では、ボトムカバー30を構成する材料は、例えば、合成スウェード等のシート材である。
【0028】
ヒールグリップ40は、靴の中底に対してインソール10が滑ることを抑制する。ヒールグリップ40の天面は、後足部ポスト62に沿うように、または、密着するように後足部ポスト62の底面に接合される。ヒールグリップ40の先端は、ボトムカバー30の後端と接合される。ヒールグリップ40を構成する材料は、任意に選択可能である。本実施形態では、ヒールグリップ40を構成する材料は、ゴムと裏布とが接合されたシート材である。
【0029】
体重支持部50は、右足底における、踵部から、中足骨の骨頭部の近位(中足骨の骨頭部は含まない)までを覆う。体重支持部50は、距骨下関節を中間位に誘導するように、足底形状に修正を施した形状である。体重支持部50の天面は、トップカバー20の底面と接合される。体重支持部50を構成する材料は、任意に選択可能である。体重支持部50は、距骨下関節を中間位に誘導することができるように、ある程度の剛性を有する材料、または、反発性のある材料で構成されることが好ましい。本実施形態では、体重支持部50を構成する材料は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、カーボンFRP(Fiber Reinforced Plastics)、または、グラスFRP等のシート材である。
【0030】
本実施形態では、トップカバー20の一部、および、体重支持部50の一部は、右足の踵の一部を覆うヒールカップ部80を構成する。図3に示されるように、ヒールカップ部80は、外部81、後部82、および、内部83を有する。外部81は、右足の踵の外側の一部を覆う。後部82は、右足の踵の後部の一部を覆う。内部83は、右足の踵の内側の一部を覆う。ヒールカップ部80は、ユーザの右足の距骨下関節を中間位に誘導できるように、外部81の高さHAが内部83の高さHBよりも高い。高さHAは、例えば、15mm~25mmの範囲に含まれることが好ましい。高さHAは、例えば、20mmである。高さHBは、例えば、5mmm~15mmの範囲に含まれることが好ましい。高さHBは、例えば、10mmである。高さHAと高さHBとの差ΔHは、任意に選択可能である。距骨下関節を中間位に好適に誘導することができるように、差ΔHは、10mm程度であることが好ましい。インソール10の長手方向(中心線XOの延びる方向)において、外部81は、踵骨に対応する部分、または、第5中足骨基部の近傍まで形成されていることが好ましい。
【0031】
補強部60は、外側補強部61、第1支持部61A、第2支持部61B、および、後足部ポスト62を含む。補強部60は、体重支持部50が過度に弾性変形することを抑制する。換言すれば、補強部60は、荷重によって体重支持部50が過度に撓む、または、過度に沈むことを抑制する。さらには、補強部60は、剛性および支持性を増強し、または、反発性を増強する。
【0032】
外側補強部61は、体重支持部50とボトムカバー30との間に位置する。外側補強部61は、足部のうちの外側を支持する。外側補強部61は、足部のうちの外側に沿って延びる形状である。外側補強部61の天面は、体重支持部50の底面と接合される。外側補強部61の底面は、ボトムカバー30の天面と接合される。平面視において、インソール10の長手方向(中心線XOが延びる方向)と直交する短手方向において、外側補強部61の隣りには、部材が存在しない。本実施形態では、外側補強部61を構成する材料は、発泡EVA等のシート材である。
【0033】
第1支持部61Aは、第1中足骨の骨頭部底面を支持する。第1支持部61Aの天面は、トップカバー20の底面と接合される。第1支持部61Aの底面は、ボトムカバー30の天面と接合される。第1支持部61Aの後端の外側は、外側補強部61の先端と接合される。
【0034】
第2支持部61Bは、第1支持部61Aと接合され、第2中足骨の骨頭部底面から第5中足骨の骨頭部底面を支持する。第2支持部61Bの天面は、トップカバー20の底面と接合される。第2支持部61Bの底面は、ボトムカバー30の天面と接合される。
【0035】
第1支持部61Aを構成する材料は、第2支持部61Bを構成する材料よりも軟らかい材料であることが好ましい。本実施形態では、第1支持部61Aを構成する材料は、例えば、発泡ウレタンを含む低反発クッション等のシート材である。第2支持部61Bを構成する材料は、発泡EVA等のシート材である。
【0036】
後足部ポスト62は、踵を支持する。後足部ポスト62は、距骨下関節を中間位に誘導するために、体重支持部50の前額面における傾きにおいて、踵骨を任意の角度で安定させる。後足部ポスト62の先端の外側は、外側補強部61の後端と接合される。後足部ポスト62の天面は、体重支持部50の底面と接合される。後足部ポスト62の底面は、ヒールグリップ40の天面と接合される。換言すれば、後足部ポスト62は、体重支持部50とヒールグリップ40とに挟まれる。本実施形態では、後足部ポスト62を構成する材料は、発泡EVA等のシート材である。
【0037】
エクステンション70は、足趾を支持する。エクステンション70は、足趾の概ね全体を支持する半円に類似する形状である。エクステンション70の天面は、トップカバー20の底面と接合される。エクステンション70の底面は、ボトムカバー30の底面と接合される。エクステンション70の後端は、第1支持部61Aおよび第2支持部61Bの先端と接合される。なお、第1中足骨の骨頭部底面から第5中足骨の骨頭部底面にさらに高いクッション性を付与したい場合は、エクステンション70は、第1支持部61Aおよび第2支持部61Bの上に重ねる形で、後方に延長してもよい。エクステンション70を構成する材料は、任意に選択可能である。エクステンション70を構成する材料は、クッション性を有する材料であることが好ましい。本実施形態では、エクステンション70を構成する材料は、例えば、発泡ウレタンを含む高反発クッション等のシート材である。
【0038】
<2.インソールの作用および効果>
足部は、踵骨を含む外側柱と、距骨を含む内側柱とによって構成される。距骨および踵骨は、距骨下関節で回内および回外の運動軸を持ち、これらの運動は距舟関節と踵立方関節の運動軸に影響する。距骨下関節の回内位では、距舟関節軸と踵立方関節軸が平行となるため、関節可動域が大きくなることで、足部は柔らかくなる。一方、距骨下関節の回外位では、距舟関節軸と踵立方関節軸が交差し、関節可動域が小さくなるため、足部は固くなる。なお、回内とは、背屈、外転、および、外返しの複合運動であり、回外とは、底屈、内転、および、内がえしの複合運動である。
【0039】
インソール10によれば、ヒールカップ部80の外部81の高さHAが内部83の高さHBよりも高いため、ユーザの右足がトップカバー20に載せられた場合、回内の一要素である踵骨の外返し運動が制限される。距骨下関節を回内位から中間位に好適に誘導できるため、膝関節が安定する。このため、膝関節が左右方向に動揺することを抑制できる。
【0040】
<3.本実施形態の効果>
以上のように構成されたインソール10では、さらに次の効果を得ることができる。
<3-1>
インソール10は、体重支持部50の底面に接合される補強部60を有するため、体重支持部50の剛性が高められる。
【0041】
<3-2>
補強部60は、足のうちの外側を支持する外側補強部61を含む。体重支持部50の外側の剛性が高められるため、荷重が作用した場合に足部の外側が沈むことを抑制できる。このため、外側縦アーチの保持が促進される、換言すれば、横足根関節に対し、外返し方向の力が継続して与えられる。
【0042】
横足根関節に対して、外返し方向の力が与えられると、隣り合う踵骨および立方骨の関節の形状によって、これら2つの骨が噛みあい、圧縮の応力が生じる。このため、横足根関節がロックされる。なお、踵骨は「後足部」とよばれるユニット(距骨と踵骨とから構成される、足の後方部)に属し、立方骨は「前足部」とよばれるユニット(距骨と踵骨とを除くそれより前方の全ての骨)に属する。
【0043】
横足根関節のロックがされた場合、後足部と前足部との接合が強固になるため、足部全体の剛性が高められる。このため、足部、下肢、および、身体の安定性が向上する。
【0044】
また、体重支持部の外側の剛性が高められるため、足部が外側に倒れること、下腿が外側に倒れること、大腿が外側に倒れること、身体が左右方向に倒れること、および、重心が左右方向に変位すること等が抑制される。また、前足部と後足部との接合が強固になるため、足部よりも上方に存在する関節が左右方向に曲がろうとする力の発生を抑制できる。なお、足部よりも上方に存在する関節とは、例えば、足部と下腿との間にある足関節、下腿と大腿との間にある膝関節、大腿と骨盤との間にある股関節、骨盤と椎骨との間にある仙椎関節、および、各椎骨同士の間にある椎間関節等である。特に膝関節を具体例にして説明する場合、下腿が外側に倒れた場合、膝関節が元々存在した位置から外側に変位することにより、膝関節には、内転する力、いわゆるO脚を促進する力が作用する。インソール10によれば、膝関節にこのような力が作用することが抑制される。
【0045】
<3-3>
第1支持部61Aを構成する材料は、第2支持部61Bを構成する材料よりも軟らかい。第1中足骨の骨頭部が、第2中足骨の骨頭部から第5中足骨の骨頭部よりも落ち込むことができるため、例えば、インソール10がゴルフ用のインソールである場合、ゴルフのスイング動作において、足部の第1列が底屈位となる状態をスムーズに形成できる。ユーザは、第1中足骨の骨頭部を容易に意識付けできるため、例えば、ゴルフのスイング動作において重要である第1中足骨の骨頭部を蹴るような動作、換言すれば母趾球で地面を蹴るような動作を容易に実行できる。
【0046】
<3-4>
ヒールカップ部80の外部81の高さHAが内部83の高さHBよりも高いため、ヒールカップ部の高さが概ね一定である従来のインソールと比較して、インソール10によって、靴の踵部が外方向に押し広げられることが抑制される。このため、ユーザの足部と靴とのフィット感が高められる。なお、距骨下関節を中間位に好適に誘導するために、例えば、内部83の高さHBを外部81の高さHAと同程度に構成したインソール(以下では、「仮想インソール」と称する)が考えられる。仮想インソールは、靴の踵部が外方向に押し広げられるため、ユーザの足部と靴とのフィット感が低下する。本実施形態のインソール10は、高さHAを十分高くしている一方、高さHBを低くしているため、ユーザの足と靴とのフィット感が低下することを抑制しつつ、距骨下関節を中間位に好適に誘導できる。
【0047】
<3-5>
距骨下関節が回内位から中間位に誘導されるため、インソール10がゴルフ用のインソールである場合、ゴルフのスイング動作において、足部の剛性が増す。このため、ユーザは、下半身が安定するため、安定感のあるスイングを実施できる。
【0048】
<3-6>
インソール10がゴルフ用のインソールである場合、バックスイング時とフォロースルー時において、踵骨の外側がヒールカップ部80の外部81により固定され、踵骨が外反すること、および、外側に変位することが抑制されるため、身体の軸が左右に移動することが軽減される。
【0049】
<3-7>
外側補強部61によって、体重支持部50のうちの外側の剛性が高められるため、インソール10がゴルフ用のインソールである場合、バックスイング時とフォロースルー時において、身体の軸が左右に移動することが軽減される。
【0050】
<4.変形例>
上記実施形態は本発明に関するインソールが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関するインソールは、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の幾つかの例を示す。なお、以下の各変形例は、技術的に矛盾しない範囲において互いに組み合わせることができる。
【0051】
<4-1>
ヒールカップ部80において、後部82および内部83の少なくとも一方を省略してもよい。
【0052】
<4-2>
第1支持部61Aと第2支持部61Bとを同じ材料によって構成してもよい。外側補強部61と、第1支持部61Aと、第2支持部61Bと、後足部ポスト62とを互いに異なる材料によって構成してもよい。インソール10から、第1支持部61Aおよび第2支持部61Bの少なくとも一方を省略してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 :インソール
50 :体重支持部
60 :補強部
61 :外側補強部
61A :第1支持部
61B :第2支持部
80 :ヒールカップ部
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
踵を支持するヒールカップ部を含むインソールであって、
前記ヒールカップ部は、踵の側面の外側に対応する部分の高さが、踵の側面の内側に対応する部分の高さよりも高く、
足部が載せられたときに、前記踵の側面の外側に対応する部分は、踵の側面の内側に対応する部分よりも踵の高い位置を覆うように構成される
インソール。
【請求項2】
前記ヒールカップ部を構成する体重支持部と、
前記体重支持部の底面に接合される補強部と、を備える
請求項1に記載のインソール。
【請求項3】
前記補強部は、足のうちの外側縦アーチを支持できるように前記体重支持部に接合される外側補強部を含む
請求項2に記載のインソール。
【請求項4】
前記補強部は、
第1中足骨の骨頭部底面を支持する第1支持部と、
前記第1支持部と接合され、第2中足骨の骨頭部底面から第5中足骨の骨頭部底面を支持する第2支持部と、をさらに含み、
前記第1支持部を構成する材料は、前記第2支持部を構成する材料よりも軟らかい
請求項3に記載のインソール。
【請求項5】
前記踵の側面の外側に対応する部分の高さに対する前記踵の側面の内側に対応する部分の高さの割合は、60%以下である
請求項1~4のいずれか一項に記載のインソール。