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特開2024-33428井戸洗浄装置及び井戸洗浄用のブラシ体
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  • 特開-井戸洗浄装置及び井戸洗浄用のブラシ体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033428
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】井戸洗浄装置及び井戸洗浄用のブラシ体
(51)【国際特許分類】
   E03B 3/15 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
E03B3/15
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136996
(22)【出願日】2022-08-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】521435639
【氏名又は名称】くびき野温泉開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】丸山 隆志
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 哲行
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来に無い画期的な井戸洗浄装置及び井戸洗浄用のブラシ体を提供することを目的とする。
【解決手段】掘削孔51にケーシング体61を配して構築された井戸60を洗浄する井戸洗浄装置であって、前記ケーシング体61内に吊下手段20を介して配されるブラシ体1を有し、このブラシ体1は前記ケーシング体61内の水Wに没入状態で上昇させることで該ケーシング体61の内壁を洗浄するように構成され、前記ブラシ体1には、該ブラシ体1の上面部1aから下面部1bにかけて貫通し前記ケーシング体61内での上昇時に当該ケーシング体61内の前記水Wの通過を許容する水通過孔部2aが設けられたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔にケーシング体を配して構築された井戸を洗浄する井戸洗浄装置であって、前記ケーシング体内に吊下手段を介して配されるブラシ体を有し、このブラシ体は前記ケーシング体内の水に没入状態で上昇させることで該ケーシング体の内壁を洗浄するように構成され、前記ブラシ体には、該ブラシ体の上面部から下面部にかけて貫通し前記ケーシング体内での上昇時に当該ケーシング体内の前記水の通過を許容する水通過孔部が設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置。
【請求項2】
請求項1記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体は、軸状の重り材の側周面にブラシ材を設けて構成されており、前記重り材には縦孔から成る前記水通過孔部が設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置。
【請求項3】
請求項2記載の井戸洗浄装置において、前記吊下手段は前記ケーシング体内に配される長尺の吊材を有し、この吊材の下端部と連結する連結部が前記重り材に設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体の外径寸法は前記ケーシング体の内径寸法以上に設定されていることを特徴とする井戸洗浄装置。
【請求項5】
請求項1~3いずれか1項に記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体は上下方向の長さを調整可能に設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置。
【請求項6】
請求項4記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体は上下方向の長さを調整可能に設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置。
【請求項7】
掘削孔にケーシング体を配して構築された井戸を洗浄する井戸洗浄用のブラシ体であって、このブラシ体は、前記ケーシング体内に吊下手段を介して配され、前記ケーシング体内の水に没入状態で上昇させることで該ケーシング体の内壁を洗浄するように構成されており、前記ブラシ体には、該ブラシ体の上面部から下面部にかけて貫通し前記ケーシング体内での上昇時に当該ケーシング体内の前記水の通過を許容する水通過孔部が設けられていることを特徴とする井戸洗浄用のブラシ体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸洗浄装置及び井戸洗浄用のブラシ体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、掘削孔にケーシング体を配して構築される井戸を洗浄するための装置として特開2005-307575号に開示される井戸洗浄装置(以下、「従来例」という。)が提案されている。
【0003】
この従来例は、井戸(ケーシング体)内へ挿入可能な揚水管の外周面に、ケーシング体の内周面に付着した汚れを掻き落とすブラシ体を設けたものであり、このブラシ体を上方向に移動させることでケーシング体内を洗浄するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-307575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来例は、前述したようにブラシ体を上方向に移動させて洗浄するが、ブラシ体を上昇させた際の勢いでブラシ体よりも下方水域が負圧状態となってケーシング体が潰れてしまう場合がある。
【0006】
このケーシング体の破損は、ブラシをゆっくり上昇させるようにすれば防げるが、当然ながら、このブラシ体の上昇を遅くすればするほど作業に時間がかかってしまい、特に営業を営む温泉井戸の場合、なるべく早期に作業が完了することが望まれることもあって、この加減が分からず作業を急ぐあまり破損させてしまうケースが多い。
【0007】
本発明は、前述した問題点について鑑みてなされたものであり、従来に無い画期的な井戸洗浄装置及び井戸洗浄用のブラシ体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
掘削孔51にケーシング体61を配して構築された井戸60を洗浄する井戸洗浄装置であって、前記ケーシング体61内に吊下手段20を介して配されるブラシ体1を有し、このブラシ体1は前記ケーシング体61内の水Wに没入状態で上昇させることで該ケーシング体61の内壁を洗浄するように構成され、前記ブラシ体1には、該ブラシ体1の上面部1aから下面部1bにかけて貫通し前記ケーシング体61内での上昇時に当該ケーシング体61内の前記水Wの通過を許容する水通過孔部2aが設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0010】
また、請求項1記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体1は、軸状の重り材2の側周面にブラシ材3を設けて構成されており、前記重り材2には縦孔から成る前記水通過孔部2aが設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0011】
また、請求項2記載の井戸洗浄装置において、前記吊下手段20は前記ケーシング体61内に配される長尺の吊材21を有し、この吊材21の下端部と連結する連結部4aが前記重り材2に設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0012】
また、請求項1~3いずれか1項に記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体1の外径寸法は前記ケーシング体61の内径寸法以上に設定されていることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1~3いずれか1項に記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体1は上下方向の長さを調整可能に設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0014】
また、請求項4記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体1は上下方向の長さを調整可能に設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0015】
また、掘削孔51にケーシング体61を配して構築された井戸60を洗浄する井戸洗浄用のブラシ体1であって、このブラシ体1は、前記ケーシング体61内に吊下手段20を介して配され、前記ケーシング体61内の水Wに没入状態で上昇させることで該ケーシング体61の内壁を洗浄するように構成されており、前記ブラシ体1には、該ブラシ体1の上面部1aから下面部1bにかけて貫通し前記ケーシング体61内での上昇時に当該ケーシング体61内の前記水Wの通過を許容する水通過孔部2aが設けられていることを特徴とする井戸洗浄用のブラシ体に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、井戸を破損させることなく良好に洗浄することができるなど、従来に無い画期的な井戸洗浄装置及び井戸洗浄用のブラシ体となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施例に係る要部を示す斜視図である。
図2】本実施例に係る要部の説明断面図である。
図3】洗浄対象となる井戸60の説明図である。
図4】洗浄対象となる井戸60に汚れDが付着した状態の拡大説明図である。
図5】本実施例に係る井戸洗浄方法の説明図である。
図6】本実施例に係る井戸洗浄方法の説明図である。
図7】本実施例に係る井戸洗浄方法の説明図である。
図8】本実施例に係る井戸洗浄方法の説明図である。
図9】本実施例に係る井戸洗浄方法の説明図である。
図10】本実施例で洗浄した後の井戸60の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
例えば、井戸60(ケーシング体61)内にブラシ体1を配し、吊下手段20を介してブラシ体1を上昇させることでケーシング体61内を洗浄する。
【0020】
本発明のブラシ体1には、該ブラシ体1の上面部1aから下面部1bにかけて貫通しケーシング体61内での上昇時に当該ケーシング体61内の水Wの通過を許容する水通過孔部2aが設けられており、この構成から、前述した従来例のようにブラシ体1の下方水域が負圧となることが防止され、ケーシング体61を破損させることなく良好に洗浄することができ、また、洗浄対象となるケーシング体61を破損させない程度にできるだけ速い速度で上昇させることができるため、ケーシング体61内の洗浄作業が迅速に行えることになる。
【実施例0021】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施例は、地盤50に形成した掘削孔51にストレーナ部62を有するケーシング体61を配して構築される井戸60内を洗浄する井戸洗浄装置である。
【0023】
本実施例では、図3に図示したように洗浄対象となる井戸60は温泉井戸であり、約1500mの掘削孔51に直径約15cmの管部材61aを多数継合して成るケーシング体61を配設して構成され、このケーシング体61の途中部位(水源となる部位)に複数本の通水用スリット62a(幅約6~12mm,長さ約10~30cm)が長さ方向に形成された管部材61aを配してストレーナ部62(ケーシング体61における地下800m~1500mの範囲に合計約400mの長さのストレーナ部62)が設けられている。符号63は揚水管、64はポンプ(水位計を備えたポンプ)である。
【0024】
具体的には、本実施例は、井戸60(ケーシング体61)内に設けられるブラシ体1と、このブラシ体1を吊下げ状態で保持して降下させた後に上昇させる吊下手段22とを有している。
【0025】
ブラシ体1は、図1,2に図示したように円形軸状の重り材2と、この重り材2の側周面に設けられる線状のブラシ材3とで構成されており、無数のブラシ材3が重り材2の側周面に巻回固定される固定バンド5を介して設けられている。
【0026】
本実施例では、重り材2の側周面と該重り材2の側周面に巻回固定される固定バンド5との間にL字状に設けたブラシ材3の一方の部位を挿入固定することで、他方の部位を重り材2の側周面から放射方向へ突出状態となるように設けている。
【0027】
従って、ブラシ材3の量を簡易に調整することができる。尚、上記の構成の他、予めブラシ材3が設けられた固定バンド5を重り材2の側周面に巻回固定するだけの構成や、ブラシ材3を重り材2の側周面に直接付設する構成としても良い。
【0028】
本実施例では、ブラシ体1を構成する重り材2の長さは100cm(約80~100cm)、径は約120cm、重さは88kg(約80~100kg)、比重は7.86であり、また、ブラシ材3の重り材2の側周面からの突出長さは3cm(約2~3cm/ブラシ体1の外径が直径約15cmのケーシング体61を対象とする長さ)であり、また、重り材2及びブラシ材3は金属製(ステンレス)であるが、これらの素材はメッシュワイヤーや硬質のプラスチック(例えば硬質ナイロン)でも良い。
【0029】
また、本実施例は、ブラシ体1の外径寸法はケーシング体61の内径寸法以上(ケーシング体61の内径よりも大きい寸法)に設定されている。
【0030】
また、本実施例は、ブラシ体1は複数(4つ)の小ブラシ体1’(長さ約25cmの短尺の重り材2の側周面にブラシ材3が設けられた構成のブラシ体)から成る分割構造体であり、この小ブラシ体1’同士は、重り材2を貫通する左右一対のボルト軸4bを有するU字形状の連結部材4(Uボルト)を介して上下方向に積層状態に連結されている。
【0031】
従って、小ブラシ体1’の数を変更することで、ブラシ体1は上下方向(ケーシング体61の長さ方向)の長さを調整可能となり、ケーシング体61や作業箇所の条件において小ブラシ体1’の数を適宜選択してブラシ体1の上下方向の長さを調整することができる。このブラシ体1の上下方向の長さを調整する際、必要に応じて連結部材4も変更する。
【0032】
また、ブラシ体1は、重り材2の上面部に連結部材4の折り返し湾曲部が突出状態に設けられており、この折り返し湾曲部は後述する吊下手段2の連結端部21aを連結する連結部4aとして構成されている。
【0033】
符号4cはボルト軸4bに螺着され重り材2の上下面に当接するダブルナットである。
【0034】
また、ブラシ体1(小ブラシ体1’)には該ブラシ体1の上面部1aから下面部1bにかけて貫通する水通過孔部2aが設けられている。
【0035】
この水通過孔部2aは、重り材2の軸心中央部位に該重り材2の上下面に貫通する直径が約4cmの断面円形の縦孔を設けて構成されており、ケーシング体61内での昇降時におけるブラシ体1の上方水域と下方水域との水Wの行き来を可能とするように構成されている。尚、水通過孔部2aは、レンコンのように周方向の等間隔を介した部位に複数(2つ以上)設けるようにしても良い。
【0036】
また、ブラシ体1の外径はケーシング体61(ストレーナ部62)の内径よりも大きい径(約16.5cm)に設定されている(図6参照)。
【0037】
具体的には、本実施例では、井戸60の内径よりも径大となる複数種類の外径寸法のブラシ体1が用意されている。
【0038】
従って、この上昇するブラシ体1により、ストレーナ部62の通水用スリット62a内縁やケーシング体61の内面に付着する汚れDを良好に除去することができる(図7参照)。
【0039】
吊下手段20は、図4に図示したように地盤50の表面に設置されるケース体22内に、下端にブラシ体1が連結される連結端部21aを有する吊材21(ワイヤー)を送り出し自在に巻回する図示省略の吊材巻回部(駆動モーター)を設けて構成されており、この吊下手段20は、各種作動条件を入力・操作し得る電動の制御手段(コンピュータシステム)で制御されて作動する。
【0040】
尚、吊下手段20は、吊材21を手動により巻回作動する構成としても良い。符号23は吊材21を垂設するための滑車である。
【0041】
従って、ブラシ体1は、吊下手段20の作動により上昇させることができる。尚、本実施例では、ブラシ体1の降下はブラシ体1の自重により行われるが、駆動により降下する構成としても良い。
【0042】
特に汚れが多く付着するストレーナ部62の洗浄は、ストレーナ部62の下端部から上端部までブラシ体1を吊下手段20の駆動により上昇し、ブラシ体1を停止して自重によりブラシ体1をストレーナ部62の上端部から下端部まで降下し、この駆動上昇と自重降下を2~3度繰り返し行うことで1つのストレーナ部62の洗浄作業(ブラッシング工程)が完了する。
【0043】
また、本実施例では、前述したブラッシング工程においてブラシ体1で除去された汚れDが水W(地下水)内に浮いた汚れ含有水DW(濁った地下水)を排出する汚れ含有水排出装置24を設けている。
【0044】
この汚れ含有水排出装置24は、多数の金属製の管部材を継合して成る排出用揚水管24aと、この排出用揚水管24aの下端部に設けられる排出用ポンプ24bとで構成されている。
【0045】
従って、この汚れ含有水排出装置24によりブラッシング工程で出た汚れ含有水DWを地上(井戸60外)に排出する作業(汚れ含有水排出工程)が行われる。
【0046】
以上の構成から成る本実施例に係る井戸洗浄装置を用いた井戸60の洗浄方法について説明する。尚、通常、ストレーナ部62の通水用スリット62a内縁に汚れDが付着して該通水用スリット62aを塞ぐように成長するが(図3,4参照)、この汚れDの付着により水位(動水位)が低下していると判断された場合に井戸60(ストレーナ部62)の洗浄作業が行われる。
【0047】
先ず、揚水管63及びポンプ64を撤去し、本実施例に係る井戸洗浄装置を配置する。
【0048】
具体的には、制御手段の制御により吊下手段20が作動して吊材21は所定量(ブラシ体1が洗浄するストレーナ部62に到達する量)だけ送り出され、ブラシ体1は自重により洗浄する位置(ストレーナ部62の下端部)まで降下する(図5~7参照)。このブラシ体1が自重で降下する際、ブラシ体1の下方領域の水Wは水通過孔部2aを通過して該ブラシ体1の上方領域へ抜けることになり、ブラシ体1はスムーズに降下する。
【0049】
続いて、ブラシ体1が洗浄するストレーナ部62の下端位置まで達した後、制御手段の制御によりブラシ体1は上昇しながら洗浄する(図8参照)。このブラシ体1が吊下手段20により上昇する際、ブラシ体1の下方領域の水Wは水通過孔部2aを通過して該ブラシ体1の下方領域へ抜けることになり、この下方領域が負圧になることはない。
【0050】
また、ブラシ体1がストレーナ部62の上端部まで上昇した後、ブラシ体1を停止して自重によりブラシ体1をストレーナ部62の上端部から下端部まで降下し、この洗浄を行う駆動上昇と自重降下を2~3度繰り返し行うことで1箇所のストレーナ部62の洗浄作業(ブラッシング工程)が完了する。このブラッシング工程を井戸60のストレーナ部62全てに対して行う。
【0051】
尚、ケーシング体61の内面(ストレーナ部62以外の部位)においては、ブラシ体1を自重降下させる際及びブラシ体1を吊下手段20で駆動上昇させる際、ブラシ体1のブラシ材3が擦れることで汚れDが除去される。
【0052】
続いて、ブラッシング工程完了後、井戸60からブラシ体1を撤去する。前述した場合と同様、ブラシ体1が吊下手段20によりケーシング体61の上限まで上昇させる際、ブラシ体1の下方領域の水Wは水通過孔部2aを通過して該ブラシ体1の下方領域へ抜けることになり、この下方領域が負圧になることはない。よって、迅速に引き上げることができる。
【0053】
続いて、汚れ含有水排出装置24(排出用揚水管24a及び排出用ポンプ24b)を配置して汚れDの浮いた汚れ含有水DWを排出する(図9参照)。この汚れ含有水DWの排出は、揚水される水Wが所定の基準(温泉水として使用できる状態)になるまで行う。
【0054】
続いて、井戸60から汚れ含有水排出装置24を撤去し、揚水管63及びポンプ64を配置して通常稼働を行う(図10参照)。
【0055】
本実施例は上述のように構成したから、前述した従来のようにブラシ体1の下方水域が負圧となることが無いから、ケーシング体61を破損させることなく良好に洗浄することができ、また、洗浄対象となるケーシング体61を破損させない(潰さない)程度にできるだけ速い速度で上昇させることができるため、ケーシング体61内の洗浄作業が迅速に行えることになる。
【0056】
尚、本実施例に係るブラシ体1を用いて直径約15cmのケーシング体61に対して行った洗浄実験では、ケーシング体61が潰れることなく且つストレーナ部62(通水用スリット62a)からケーシング体61内に細砂を引き込まない昇降可能な速度として、最大0.8m/secであることが分かった。
【0057】
また、本実施例は、ブラシ体1は、軸状の重り材2の側周面にブラシ材3を設けて構成されており、重り材2には縦孔から成る水通過孔部2aが設けられているから、この水通過孔部2a(水通過機能)をブラシ材3に設けた場合に懸念される目詰まりなどの問題が生じることはなく、前述した作用効果を確実に奏することになる。
【0058】
また、本実施例は、吊下手段20はケーシング体61内に配される長尺の吊材21を有し、この吊材21の下端部と連結する連結部4aが重り材2に設けられているから、ケーシング体61内に配したブラシ体1を確実に上昇させることができる。
【0059】
また、本実施例は、ブラシ体1の外径はケーシング体61の内径以上に設定されているから、確実且つ良好に井戸60(ケーシング体61の内壁)を洗浄することができる。
【0060】
また、本実施例は、ブラシ体1はケーシング体61の長さ方向の長さが可変可能に設けられているから、ケーシング体61や作業箇所の条件においてブラシ体1の長さを適宜可変して良好に洗浄作業が行える。
【0061】
また、本実施例は、井戸60は温泉井戸であるから、本実施例のメリット(ケーシング体61を破損することなく最短で良好に洗浄できるメリット)を十分に発揮することができる。
【0062】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0063】
W 水
1 ブラシ体
1a 上面部
1b 下面部
2 重り材
2a 水通過孔部
3 ブラシ材
4a 連結部
20 吊下手段
21 吊材
51 掘削孔
60 井戸
61 ケーシング体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔にケーシング体を配して構築された井戸を洗浄する井戸洗浄装置であって、前記ケーシング体内に吊下手段を介して配されるブラシ体を有し、このブラシ体は前記ケーシング体内の水に没入状態で上昇させることで該ケーシング体の内壁を洗浄するように構成され、前記ブラシ体には、上面部から下面部にかけて貫通し前記ケーシング体内での上昇時に該ケーシング体内の前記水の通過を許容する水通過孔部が設けられ、また、前記ブラシ体は、前記水通過孔部を有する軸状の重り材の側周面にブラシ材を設けて構成され、前記ブラシ材は前記重り材の側周面に固定バンドにより固定されていることを特徴とする井戸洗浄装置。
【請求項2】
請求項記載の井戸洗浄装置において、前記吊下手段は前記ケーシング体内に配される長尺の吊材を有し、前記重り材には、前記吊材の下端部と連結する連結部が設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体の外径寸法は前記ケーシング体の内径寸法以上に設定されていることを特徴とする井戸洗浄装置。
【請求項4】
請求項1,2いずれか1項に記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体は上下方向の長さを調整可能に設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置。
【請求項5】
請求項記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体は上下方向の長さを調整可能に設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置。
【請求項6】
掘削孔にケーシング体を配して構築された井戸を洗浄する井戸洗浄用のブラシ体であって、このブラシ体は、前記ケーシング体内に吊下手段を介して配され、前記ケーシング体内の水に没入状態で上昇させることで該ケーシング体の内壁を洗浄するように構成され、また、このブラシ体には、上面部から下面部にかけて貫通し前記ケーシング体内での上昇時に該ケーシング体内の前記水の通過を許容する水通過孔部が設けられ、更に、このブラシ体は、前記水通過孔部を有する軸状の重り材の側周面にブラシ材を設けて構成され、前記ブラシ材は前記重り材の側周面に固定バンドにより固定されていることを特徴とする井戸洗浄用のブラシ体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸洗浄装置及び井戸洗浄用のブラシ体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、掘削孔にケーシング体を配して構築される井戸を洗浄するための装置として特開2005-307575号に開示される井戸洗浄装置(以下、「従来例」という。)が提案されている。
【0003】
この従来例は、井戸(ケーシング体)内へ挿入可能な揚水管の外周面に、ケーシング体の内周面に付着した汚れを掻き落とすブラシ体を設けたものであり、このブラシ体を上方向に移動させることでケーシング体内を洗浄するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-307575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来例は、前述したようにブラシ体を上方向に移動させて洗浄するが、ブラシ体を上昇させた際の勢いでブラシ体よりも下方水域が負圧状態となってケーシング体が潰れてしまう場合がある。
【0006】
このケーシング体の破損は、ブラシをゆっくり上昇させるようにすれば防げるが、当然ながら、このブラシ体の上昇を遅くすればするほど作業に時間がかかってしまい、特に営業を営む温泉井戸の場合、なるべく早期に作業が完了することが望まれることもあって、この加減が分からず作業を急ぐあまり破損させてしまうケースが多い。
【0007】
本発明は、前述した問題点について鑑みてなされたものであり、従来に無い画期的な井戸洗浄装置及び井戸洗浄用のブラシ体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
掘削孔51にケーシング体61を配して構築された井戸60を洗浄する井戸洗浄装置であって、前記ケーシング体61内に吊下手段20を介して配されるブラシ体1を有し、このブラシ体1は前記ケーシング体61内の水Wに没入状態で上昇させることで該ケーシング体61の内壁を洗浄するように構成され、前記ブラシ体1には、上面部1aから下面部1bにかけて貫通し前記ケーシング体61内での上昇時に該ケーシング体61内の前記水Wの通過を許容する水通過孔部2aが設けられ、また、前記ブラシ体1は、前記水通過孔部2aを有する軸状の重り材2の側周面にブラシ材3を設けて構成され、前記ブラシ材3は前記重り材2の側周面に固定バンド5により固定されていることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0010】
また、請求項記載の井戸洗浄装置において、前記吊下手段20は前記ケーシング体61内に配される長尺の吊材21を有し、前記重り材2には、前記吊材21の下端部と連結する連結部4aが設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0011】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体1の外径寸法は前記ケーシング体61の内径寸法以上に設定されていることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0012】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体1は上下方向の長さを調整可能に設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0013】
また、請求項記載の井戸洗浄装置において、前記ブラシ体1は上下方向の長さを調整可能に設けられていることを特徴とする井戸洗浄装置に係るものである。
【0014】
また、掘削孔51にケーシング体61を配して構築された井戸60を洗浄する井戸洗浄用のブラシ体1であって、このブラシ体1は、前記ケーシング体61内に吊下手段20を介して配され、前記ケーシング体61内の水Wに没入状態で上昇させることで該ケーシング体61の内壁を洗浄するように構成され、また、このブラシ体1には、上面部1aから下面部1bにかけて貫通し前記ケーシング体61内での上昇時に該ケーシング体61内の前記水Wの通過を許容する水通過孔部2aが設けられ、更に、このブラシ体1は、前記水通過孔部2aを有する軸状の重り材2の側周面にブラシ材3を設けて構成され、前記ブラシ材3は前記重り材2の側周面に固定バンド5により固定されていることを特徴とする井戸洗浄用のブラシ体に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、井戸を破損させることなく良好に洗浄することができるなど、従来に無い画期的な井戸洗浄装置及び井戸洗浄用のブラシ体となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施例に係る要部を示す斜視図である。
図2】本実施例に係る要部の説明断面図である。
図3】洗浄対象となる井戸60の説明図である。
図4】洗浄対象となる井戸60に汚れDが付着した状態の拡大説明図である。
図5】本実施例に係る井戸洗浄方法の説明図である。
図6】本実施例に係る井戸洗浄方法の説明図である。
図7】本実施例に係る井戸洗浄方法の説明図である。
図8】本実施例に係る井戸洗浄方法の説明図である。
図9】本実施例に係る井戸洗浄方法の説明図である。
図10】本実施例で洗浄した後の井戸60の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0018】
例えば、井戸60(ケーシング体61)内にブラシ体1を配し、吊下手段20を介してブラシ体1を上昇させることでケーシング体61内を洗浄する。
【0019】
本発明のブラシ体1には、該ブラシ体1の上面部1aから下面部1bにかけて貫通しケーシング体61内での上昇時に当該ケーシング体61内の水Wの通過を許容する水通過孔部2aが設けられており、この構成から、前述した従来例のようにブラシ体1の下方水域が負圧となることが防止され、ケーシング体61を破損させることなく良好に洗浄することができ、また、洗浄対象となるケーシング体61を破損させない程度にできるだけ速い速度で上昇させることができるため、ケーシング体61内の洗浄作業が迅速に行えることになる。
【実施例0020】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0021】
本実施例は、地盤50に形成した掘削孔51にストレーナ部62を有するケーシング体61を配して構築される井戸60内を洗浄する井戸洗浄装置である。
【0022】
本実施例では、図3に図示したように洗浄対象となる井戸60は温泉井戸であり、約1500mの掘削孔51に直径約15cmの管部材61aを多数継合して成るケーシング体61を配設して構成され、このケーシング体61の途中部位(水源となる部位)に複数本の通水用スリット62a(幅約6~12mm,長さ約10~30cm)が長さ方向に形成された管部材61aを配してストレーナ部62(ケーシング体61における地下800m~1500mの範囲に合計約400mの長さのストレーナ部62)が設けられている。符号63は揚水管、64はポンプ(水位計を備えたポンプ)である。
【0023】
具体的には、本実施例は、井戸60(ケーシング体61)内に設けられるブラシ体1と、このブラシ体1を吊下げ状態で保持して降下させた後に上昇させる吊下手段22とを有している。
【0024】
ブラシ体1は、図1,2に図示したように円形軸状の重り材2と、この重り材2の側周面に設けられる線状のブラシ材3とで構成されており、無数のブラシ材3が重り材2の側周面に巻回固定される固定バンド5を介して設けられている。
【0025】
本実施例では、重り材2の側周面と該重り材2の側周面に巻回固定される固定バンド5との間にL字状に設けたブラシ材3の一方の部位を挿入固定することで、他方の部位を重り材2の側周面から放射方向へ突出状態となるように設けている。
【0026】
従って、ブラシ材3の量を簡易に調整することができる。尚、上記の構成の他、予めブラシ材3が設けられた固定バンド5を重り材2の側周面に巻回固定するだけの構成や、ブラシ材3を重り材2の側周面に直接付設する構成としても良い。
【0027】
本実施例では、ブラシ体1を構成する重り材2の長さは100cm(約80~100cm)、径は約120cm、重さは88kg(約80~100kg)、比重は7.86であり、また、ブラシ材3の重り材2の側周面からの突出長さは3cm(約2~3cm/ブラシ体1の外径が直径約15cmのケーシング体61を対象とする長さ)であり、また、重り材2及びブラシ材3は金属製(ステンレス)であるが、これらの素材はメッシュワイヤーや硬質のプラスチック(例えば硬質ナイロン)でも良い。
【0028】
また、本実施例は、ブラシ体1の外径寸法はケーシング体61の内径寸法以上(ケーシング体61の内径よりも大きい寸法)に設定されている。
【0029】
また、本実施例は、ブラシ体1は複数(4つ)の小ブラシ体1’(長さ約25cmの短尺の重り材2の側周面にブラシ材3が設けられた構成のブラシ体)から成る分割構造体であり、この小ブラシ体1’同士は、重り材2を貫通する左右一対のボルト軸4bを有するU字形状の連結部材4(Uボルト)を介して上下方向に積層状態に連結されている。
【0030】
従って、小ブラシ体1’の数を変更することで、ブラシ体1は上下方向(ケーシング体61の長さ方向)の長さを調整可能となり、ケーシング体61や作業箇所の条件において小ブラシ体1’の数を適宜選択してブラシ体1の上下方向の長さを調整することができる。このブラシ体1の上下方向の長さを調整する際、必要に応じて連結部材4も変更する。
【0031】
また、ブラシ体1は、重り材2の上面部に連結部材4の折り返し湾曲部が突出状態に設けられており、この折り返し湾曲部は後述する吊下手段2の連結端部21aを連結する連結部4aとして構成されている。
【0032】
符号4cはボルト軸4bに螺着され重り材2の上下面に当接するダブルナットである。
【0033】
また、ブラシ体1(小ブラシ体1’)には該ブラシ体1の上面部1aから下面部1bにかけて貫通する水通過孔部2aが設けられている。
【0034】
この水通過孔部2aは、重り材2の軸心中央部位に該重り材2の上下面に貫通する直径が約4cmの断面円形の縦孔を設けて構成されており、ケーシング体61内での昇降時におけるブラシ体1の上方水域と下方水域との水Wの行き来を可能とするように構成されている。尚、水通過孔部2aは、レンコンのように周方向の等間隔を介した部位に複数(2つ以上)設けるようにしても良い。
【0035】
また、ブラシ体1の外径はケーシング体61(ストレーナ部62)の内径よりも大きい径(約16.5cm)に設定されている(図6参照)。
【0036】
具体的には、本実施例では、井戸60の内径よりも径大となる複数種類の外径寸法のブラシ体1が用意されている。
【0037】
従って、この上昇するブラシ体1により、ストレーナ部62の通水用スリット62a内縁やケーシング体61の内面に付着する汚れDを良好に除去することができる(図7参照)。
【0038】
吊下手段20は、図4に図示したように地盤50の表面に設置されるケース体22内に、下端にブラシ体1が連結される連結端部21aを有する吊材21(ワイヤー)を送り出し自在に巻回する図示省略の吊材巻回部(駆動モーター)を設けて構成されており、この吊下手段20は、各種作動条件を入力・操作し得る電動の制御手段(コンピュータシステム)で制御されて作動する。
【0039】
尚、吊下手段20は、吊材21を手動により巻回作動する構成としても良い。符号23は吊材21を垂設するための滑車である。
【0040】
従って、ブラシ体1は、吊下手段20の作動により上昇させることができる。尚、本実施例では、ブラシ体1の降下はブラシ体1の自重により行われるが、駆動により降下する構成としても良い。
【0041】
特に汚れが多く付着するストレーナ部62の洗浄は、ストレーナ部62の下端部から上端部までブラシ体1を吊下手段20の駆動により上昇し、ブラシ体1を停止して自重によりブラシ体1をストレーナ部62の上端部から下端部まで降下し、この駆動上昇と自重降下を2~3度繰り返し行うことで1つのストレーナ部62の洗浄作業(ブラッシング工程)が完了する。
【0042】
また、本実施例では、前述したブラッシング工程においてブラシ体1で除去された汚れDが水W(地下水)内に浮いた汚れ含有水DW(濁った地下水)を排出する汚れ含有水排出装置24を設けている。
【0043】
この汚れ含有水排出装置24は、多数の金属製の管部材を継合して成る排出用揚水管24aと、この排出用揚水管24aの下端部に設けられる排出用ポンプ24bとで構成されている。
【0044】
従って、この汚れ含有水排出装置24によりブラッシング工程で出た汚れ含有水DWを地上(井戸60外)に排出する作業(汚れ含有水排出工程)が行われる。
【0045】
以上の構成から成る本実施例に係る井戸洗浄装置を用いた井戸60の洗浄方法について説明する。尚、通常、ストレーナ部62の通水用スリット62a内縁に汚れDが付着して該通水用スリット62aを塞ぐように成長するが(図3,4参照)、この汚れDの付着により水位(動水位)が低下していると判断された場合に井戸60(ストレーナ部62)の洗浄作業が行われる。
【0046】
先ず、揚水管63及びポンプ64を撤去し、本実施例に係る井戸洗浄装置を配置する。
【0047】
具体的には、制御手段の制御により吊下手段20が作動して吊材21は所定量(ブラシ体1が洗浄するストレーナ部62に到達する量)だけ送り出され、ブラシ体1は自重により洗浄する位置(ストレーナ部62の下端部)まで降下する(図5~7参照)。このブラシ体1が自重で降下する際、ブラシ体1の下方領域の水Wは水通過孔部2aを通過して該ブラシ体1の上方領域へ抜けることになり、ブラシ体1はスムーズに降下する。
【0048】
続いて、ブラシ体1が洗浄するストレーナ部62の下端位置まで達した後、制御手段の制御によりブラシ体1は上昇しながら洗浄する(図8参照)。このブラシ体1が吊下手段20により上昇する際、ブラシ体1の下方領域の水Wは水通過孔部2aを通過して該ブラシ体1の下方領域へ抜けることになり、この下方領域が負圧になることはない。
【0049】
また、ブラシ体1がストレーナ部62の上端部まで上昇した後、ブラシ体1を停止して自重によりブラシ体1をストレーナ部62の上端部から下端部まで降下し、この洗浄を行う駆動上昇と自重降下を2~3度繰り返し行うことで1箇所のストレーナ部62の洗浄作業(ブラッシング工程)が完了する。このブラッシング工程を井戸60のストレーナ部62全てに対して行う。
【0050】
尚、ケーシング体61の内面(ストレーナ部62以外の部位)においては、ブラシ体1を自重降下させる際及びブラシ体1を吊下手段20で駆動上昇させる際、ブラシ体1のブラシ材3が擦れることで汚れDが除去される。
【0051】
続いて、ブラッシング工程完了後、井戸60からブラシ体1を撤去する。前述した場合と同様、ブラシ体1が吊下手段20によりケーシング体61の上限まで上昇させる際、ブラシ体1の下方領域の水Wは水通過孔部2aを通過して該ブラシ体1の下方領域へ抜けることになり、この下方領域が負圧になることはない。よって、迅速に引き上げることができる。
【0052】
続いて、汚れ含有水排出装置24(排出用揚水管24a及び排出用ポンプ24b)を配置して汚れDの浮いた汚れ含有水DWを排出する(図9参照)。この汚れ含有水DWの排出は、揚水される水Wが所定の基準(温泉水として使用できる状態)になるまで行う。
【0053】
続いて、井戸60から汚れ含有水排出装置24を撤去し、揚水管63及びポンプ64を配置して通常稼働を行う(図10参照)。
【0054】
本実施例は上述のように構成したから、前述した従来のようにブラシ体1の下方水域が負圧となることが無いから、ケーシング体61を破損させることなく良好に洗浄することができ、また、洗浄対象となるケーシング体61を破損させない(潰さない)程度にできるだけ速い速度で上昇させることができるため、ケーシング体61内の洗浄作業が迅速に行えることになる。
【0055】
尚、本実施例に係るブラシ体1を用いて直径約15cmのケーシング体61に対して行った洗浄実験では、ケーシング体61が潰れることなく且つストレーナ部62(通水用スリット62a)からケーシング体61内に細砂を引き込まない昇降可能な速度として、最大0.8m/secであることが分かった。
【0056】
また、本実施例は、ブラシ体1は、軸状の重り材2の側周面にブラシ材3を設けて構成されており、重り材2には縦孔から成る水通過孔部2aが設けられているから、この水通過孔部2a(水通過機能)をブラシ材3に設けた場合に懸念される目詰まりなどの問題が生じることはなく、前述した作用効果を確実に奏することになる。
【0057】
また、本実施例は、吊下手段20はケーシング体61内に配される長尺の吊材21を有し、この吊材21の下端部と連結する連結部4aが重り材2に設けられているから、ケーシング体61内に配したブラシ体1を確実に上昇させることができる。
【0058】
また、本実施例は、ブラシ体1の外径はケーシング体61の内径以上に設定されているから、確実且つ良好に井戸60(ケーシング体61の内壁)を洗浄することができる。
【0059】
また、本実施例は、ブラシ体1はケーシング体61の長さ方向の長さが可変可能に設けられているから、ケーシング体61や作業箇所の条件においてブラシ体1の長さを適宜可変して良好に洗浄作業が行える。
【0060】
また、本実施例は、井戸60は温泉井戸であるから、本実施例のメリット(ケーシング体61を破損することなく最短で良好に洗浄できるメリット)を十分に発揮することができる。
【0061】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0062】
W 水
1 ブラシ体
1a 上面部
1b 下面部
2 重り材
2a 水通過孔部
3 ブラシ材
4a 連結部
固定バンド
20 吊下手段
21 吊材
51 掘削孔
60 井戸
61 ケーシング体