(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033429
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】表示装置、及び危険物検知システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240306BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240306BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20240306BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H04N7/18 U
G09G5/00 550C
G09G5/38 A
G09G5/36 520P
G09G5/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136998
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】小川 千隼
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真起
【テーマコード(参考)】
5C054
5C182
【Fターム(参考)】
5C054CA01
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC01
5C054FC12
5C054FC14
5C054FD03
5C054FD07
5C054FE12
5C054FF03
5C054GB01
5C054GB05
5C182AA03
5C182AB18
5C182AC03
5C182AC39
5C182BA14
5C182BA27
5C182BA54
5C182BC22
5C182BC25
5C182CB13
5C182CB14
5C182CB42
5C182CB44
5C182CB52
5C182CB54
5C182CC24
5C182DA53
5C182DA70
(57)【要約】
【課題】経験・スキルのないユーザにも走査画像の位置と撮影画像の位置との対応付けを可能にさせる。
【解決手段】第1取得部111は、検知器2から走査信号を取得する。生成部112は、取得した走査信号から走査画像を生成する。第1抽出部113は、生成した走査画像から人領域を抽出する。検知部114は、走査画像に示されている危険物を検知する。補正部115は、走査画像の歪みを補正する。第2取得部116は、光学カメラ3から、人Qが撮影された撮影画像を取得する。第2抽出部117は、メモリ12から学習済モデル123を読み出して、これに記述された特徴量等を用いることにより、第2取得部116が取得した撮影画像から人領域を抽出する。表示制御部118は、走査画像と撮影画像とを、それぞれにおいて抽出された人領域の位置の対応関係をユーザが特定できるような態様で表示部15に表示させる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受波方向の変化により空間を走査して生成した走査画像と、光学カメラで撮影した撮影画像とを、ユーザが対応する位置を特定可能な態様でそれぞれ表示する表示装置。
【請求項2】
前記走査画像により示される対象物の位置が前記撮影画像により示される該対象物の位置に合うように該走査画像を補正する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記走査画像と前記撮影画像とを前記ユーザが比較可能に表示する
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の表示装置を有し、
前記走査画像に基づいて危険物を検知して、該危険物の位置を前記表示装置に表示させる
危険物検知システム。
【請求項5】
前記撮影画像から人を示す領域を抽出して、該領域の位置を前記表示装置に表示させる
請求項4に記載の危険物検知システム。
【請求項6】
2以上の周波数の異なる電波を受けて、それぞれ前記走査画像を生成し、該走査画像のそれぞれに基づいて、種類の異なる前記危険物を検知する
請求項4に記載の危険物検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波によって人の所持物を表示する表示装置、及び人の所持物の中から危険物を検知する危険物検知システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
所持物検査を行う方法として、電磁波を使用して衣服の下に隠匿された危険物の有無を検査する方法がある。例えば、特許文献1は、検査部から得られる計測データに基づいて、ゲート領域を通過する対象者が衣服の中に所持する危険物等を2次元的な半透過像として可視化する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、所持物検査装置が半透過像等により危険物を発見したとしても、その半透過像等の表示を目で見て確認するのは所持物検査の現場にいる係員である。半透過像等の表示は可視光に基づく像ではないから、可視光下の肉眼で対象者を見ている係員にとって、その対象者の外観と半透過像等の表示とを関連付けることが難しいことがある。
【0005】
また、特許文献1に記載された技術等において、検査部はZ方向(縦、高さ方向)に細長いライン状検出像を繰り返し取得し、これらを対象者が移動するY方向(横方向)に繋ぎ合わせて、対象者の前面や側面に対応する画像を生成する。
【0006】
こういった一方向に走査する検査部が得る画像は、一本の走査線において端に近い領域ほど像が歪む。この歪みのため、検査部が表示する半透過像等と係員が肉眼で捉える対象者の外観との対応付けはさらに困難になり易く、係員は、対象者の何処に危険物が秘匿されているかを判断できないことがあった。
【0007】
本発明の目的の一つは、経験・スキルのないユーザ(係員)にも走査画像の位置と撮影画像の位置との対応付けを可能にさせることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、受波方向の変化により空間を走査して生成した走査画像と、光学カメラで撮影した撮影画像とを、ユーザが対応する位置を特定可能な態様でそれぞれ表示する表示装置、を第1の態様として提供する。
【0009】
第1の態様の表示装置によれば、経験・スキルのないユーザにも走査画像の位置と撮影画像の位置との対応付けを可能にさせることができる。
【0010】
第1の態様の表示装置において、前記走査画像により示される対象物の位置が前記撮影画像により示される該対象物の位置に合うように該走査画像を補正する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0011】
第2の態様の表示装置によれば、撮影画像に対する走査画像の歪みが目立たなくなる。
【0012】
第1又は第2の態様の表示装置において、前記走査画像と前記撮影画像とを前記ユーザが比較可能に表示する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0013】
第3の態様の表示装置によれば、ユーザは走査画像と撮影画像とを比較することができる。
【0014】
本発明は、請求項1又は2に記載の表示装置を有し、前記走査画像に基づいて危険物を検知して、該危険物の位置を前記表示装置に表示させる危険物検知システム、を第4の態様として提供する。
【0015】
第4の態様の危険物検知システムによれば、ユーザは危険物の位置を確認することができる。
【0016】
第4の態様の危険物検知システムにおいて、前記撮影画像から人を示す領域を抽出して、該領域の位置を前記表示装置に表示させる、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0017】
第5の態様の危険物検知システムによれば、ユーザは撮影画像における人を示す領域を確認することができる。
【0018】
第4の態様の危険物検知システムにおいて、2以上の周波数の異なる電波を受けて、それぞれ前記走査画像を生成し、該走査画像のそれぞれに基づいて、種類の異なる前記危険物を検知する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0019】
第6の態様の危険物検知システムによれば、ユーザは、2以上の周波数ごとに検知される、異なる種類の危険物をそれぞれ確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る危険物検知システム9の構成を示すブロック図。
【
図2】検知器2、及び光学カメラ3の配置を示す平面図。
【
図3】検知器2の検知領域Raを説明するための図。
【
図4】軸Fを中心に検知対象物を捉えることによる歪みを説明するための図。
【
図9】表示装置1の動作の流れの例を示すフロー図。
【
図11】走査画像を加工して人領域を抽出する処理を説明するための図。
【
図12】抽出した人領域を走査画像に重ねて表示する例を示す図。
【
図13】抽出した人領域を撮影画像に重ねて表示する例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態>
<危険物検知システムの構成>
以下、図において、各構成が配置される空間をXYZ右手系座標空間として表す。また、図に示す座標記号のうち、円の中に点を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表す。空間においてX軸に沿う方向をX軸方向という。また、X軸方向のうち、X成分が増加する方向を+X方向といい、X成分が減少する方向を-X方向という。Y、Z成分についても、X成分と同様に定義される。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る危険物検知システム9の構成を示すブロック図である。
図1に示す危険物検知システム9は、表示装置1、検知器2、及び光学カメラ3を有する。表示装置1は、検知器2、及び光学カメラ3と有線又は無線により通信可能に接続されている。危険物検知システム9において、表示装置1、検知器2、及び光学カメラ3の数は、いずれも1つでもよいし、複数でもよい。
【0023】
図2は、危険物検知システム9のうち、検知器2、及び光学カメラ3の配置を示す平面図である。
図2に示す危険物検知システム9は、検知器2、及び光学カメラ3をそれぞれ4つずつ有している。
【0024】
図2において、-Z方向は下向き、つまり、重力の方向であり、X軸方向は、進路Paの幅の方向であり、Y軸方向は、進路Paに沿った方向である。危険物検知システム9は、進路Paに沿って+Y方向に歩行する人Qの所持物を検査するシステムである。
【0025】
検知器2は、進路Paの両側にそれぞれ2つずつ、計4つが配置されている。4つの検知器2は、人Q、及び人Qが所持している物(所持物という)が進路PaのY軸方向の中央付近に位置しているときに、四方にそれぞれ放射されるテラヘルツ波等の電磁波を受光(又は受波)する。この電磁波の伝搬する経路を伝搬路Dという。なお、人Qは、危険物検知システム9の検知器2により検査の対象となる者、つまり、検査対象者である。
【0026】
進路Paに沿って+Y方向に移動する人Qから見て右手前側の検知器2と、左奥側の検知器2とは、互いに対向しており、一方の検知器2における、電磁波を受波する領域の延長線上に他方の検知器2が配置されている。進路Paに沿って+Y方向に移動する人Qから見て左手前側の検知器2と、右奥側の検知器2との関係も同様である。ただし、各検知器2の対向配置は必須構成ではない。
【0027】
4つの検知器2は、それぞれ、人Q及びその所持物の、Z軸方向のスキャンを行う。また、進路Paを人Qが+Y方向に歩行(移動)することにより、人Q及びその所持物は、4つの検知器2がそれぞれ受波する電磁波の伝搬路Dを通過する。これにより、4つの検知器2は、Y軸方向、及びX軸方向(すなわち水平方向)に人Q及びその所持物をスキャンすることとなる。
【0028】
光学カメラ3は、4つの検知器2の近傍にそれぞれ1つずつ配置され、それぞれ伝搬路Dの延長線上から人Qを撮影可能なように設定されている。
【0029】
<検知器の構成>
図3は、検知器2の検知領域Raを説明するための図である。
図3には、
図2に示すZ軸方向、及び、伝搬路Dの双方に交差する方向から見た検知器2の形状と、検知器2により検知される検知領域Raの形状とが示されている。この検知器2は、レドーム21、光学系22、フィルタ23、及びセンサ24を有する。光学系22、及びセンサ24は、表示装置1と有線、又は無線で通信可能に接続されており、表示装置1により制御されている。
【0030】
レドーム21は、板状の部材であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルペンテン等の、電磁波を比較的透過させ易い樹脂材料により形成される。レドーム21は、検知器2の筐体の外部から届く電磁波を内部へ透過させつつ、内部を埃等から保護する。この電磁波は、例えば、周波数が100GHz以上10THz未満のテラヘルツ波である。
【0031】
光学系22、フィルタ23、及びセンサ24はセンサユニットUを構成する。このセンサユニットUは、例えば、幅が200ミリメートル、奥行きが300ミリメートル、高さが400ミリメートルの直方体のユニットである。
【0032】
図3に示す光学系22は、例えばポリゴンミラーと集光ミラーとを有する。ポリゴンミラーは、
図3に示す軸Fを中心に回転する多角形のミラーであり、例えば、鏡面で構成される四角錐である。人Qから発され、伝搬路Dに沿って伝搬する電磁波は、レドーム21を透過し、ポリゴンミラーによって反射され集光ミラーに集められる。
【0033】
回転により、ポリゴンミラーの反射面は角度を変化させるため、光学系22が電磁波を受波(検知)する範囲は、
図3に示す軸Fを中心とする扇形の検知領域Raとなる。すなわち、ポリゴンミラーが軸Fを中心に回転することにより、検知器2は、高さ方向(Z軸方向)の走査(スキャン)を行う。
【0034】
光学系22を構成する集光ミラーは、ポリゴンミラーによって集められた電磁波を反射させてフィルタ23及びセンサ24に導く鏡である。集光ミラーは、例えば放物面鏡である。
【0035】
検知領域Raは、検知器2により電磁波を感知し得る領域である。
図3に示す検知領域Raは、軸Fを中心に角度が約100度の範囲内である。なお、検知領域Raの厚みは、数センチメートルである。
【0036】
ここで
図3に示す検知対象位置Taは、検知の対象物が存在する位置であり、高さ方向に伸びている。検知領域Raは軸Fを中心として受波方向を高さ方向に走査しているので、軸Fと、検知対象位置Taとの距離は、その高さに依存して異なる。すなわち、検知対象位置Taにおいて軸Fと同じ高さにあるとき、検知対象物は軸Fに最も近く、軸Fと高さが異なるほど検知対象物は軸Fから遠ざかる。そのため、例えば、均等な角度ごとに走査画像の画素が生成される場合、その走査画像は、高さ方向の上又は下になるほど歪む。
【0037】
図4は、軸Fを中心に検知対象物を捉えることによる歪みを説明するための図である。軸Fから水平距離rだけ離れた位置において高さ方向に伸びる検知対象位置Taの位置Zは、以下の式(1)により角度θの正接で表される。
【0038】
【0039】
光学系22は、検知領域Raの角度範囲を複数に分割し、分割された区画ごとに走査画像の画素を生成する。例えば、光学系22は、検知領域Raの角度範囲である100°を228回にわたって等分割する。すなわち、この光学系22は、検知領域Raの角度範囲を均等な角度の228区画に分割する。この場合、分割された扇型の軸Fを中心とした角度は、どの区画も等しくなるように調整されているので、一区画分の微小角Δθは、100°/228≒0.439°である。
【0040】
ここで、センサユニットUがこの一区画分の視野である微小角Δθによって捉える画像の高さ方向の大きさΔZは、以下の式(2)により表される。
【0041】
【0042】
この大きさΔZは、θが0に近いほど小さく、0から離れるほど大きくなる。一方、Δyは、水平距離rを半径とする円において、微小角Δθに対応する円周・弧の長さである。このΔyは、水平距離rと微小角Δθとを含む以下の式(3)により表される。
【0043】
【0044】
水平距離r、及び微小角Δθは、いずれも一定であるため、Δyは、一定である。つまり、
図4に示すΔyは、走査の角度がどこであっても、共通の大きさである。そして、ΔZは、センサユニットUによって、
図4に示す共通の大きさΔyに収まるように縮小される。
【0045】
つまり、検知対象位置Taに存在する検知対象物は、軸Fよりも高い位置にあるほど、又は低い位置にあるほど、一区画あたりの視野に入る実際の大きさΔZが大きくなる。そして、このΔZが、共通の大きさΔyに収まるように縮小されるので走査画像は歪む。
【0046】
ΔZ/Δyの比率は、微小角Δθを0に近づけると以下の式(4)に示す通り、dZ/dyになる。
【0047】
【0048】
したがって、この走査画像は、上下端に近づくほど実寸よりも縮小されているため歪んでいる。この歪みを解消するために、走査画像は受波方向である角度θに応じてdZ/dy=(1/cos2θ)を乗じる必要がある。走査画像は、例えば、表示装置1により、このdZ/dyを用いて補正される。
【0049】
なお、歪みを戻すための補正に用いる値は上述した例に限らない。例えば、走査画像は、角度θにおける高さ方向の画像の大きさに(1/cosθ)の倍率をかけることで補正されてもよい。また、走査画像は分割された一区画ごとに異なる倍率をかけて補正されなくてもよい。走査画像は、例えば、軸Fに近い領域と、その上下に位置する遠い領域と、の3区画に分けられて、そのそれぞれに決められた倍率をかけることで補正されてもよい。
【0050】
図3に示すフィルタ23は、例えば偏光フィルタ等の光学的フィルタである。フィルタ23は、光学系22から導かれた電磁波を、例えば、100GHzを中心とした第1の周波数帯(低周波数帯という)と、150GHzを中心とした第2の周波数帯(高周波数帯という)と、にそれぞれ分離してセンサ24に供給する。低周波数帯、及び高周波数帯の電磁波は、それぞれ異なるタイミングでセンサ24に供給されてもよい。この場合、フィルタ23は、複数の光学的フィルタを有し、そのそれぞれが周期的に光路を遮る位置に配置されるよう移動させられるとよい。
【0051】
センサ24は、光学系22で集められ、反射されたテラヘルツ波等の電磁波のうち、フィルタ23によって抽出された低周波数帯、又は高周波数帯の電磁波を感知してその強度を計測する。
【0052】
例えば、人Qは、テラヘルツ波を発している。一方、人Qが衣服の内側に金属等のテラヘルツ波を透過し難い所持物を隠し持っていると、その所持物により人Qが発するテラヘルツ波は遮蔽される。そのため、検知器2は、人Qを走査すると、上述した所持物の輪郭で受波の強度に差が生じている走査画像を生成する。生成されたこの走査画像により、例えば、表示装置1は、人Qの所持物の形状を特定する。
【0053】
このようにして検知器2は、人Qが衣服の内側に隠した金属、爆発物、セラミック、可燃性液体等の所持物を検知する。
【0054】
<表示装置の構成>
図5は、表示装置1の構成の例を示す図である。表示装置1は、プロセッサ11、メモリ12、インタフェース13、及び表示部15を有する。
【0055】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有し、コンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を記憶する。
【0056】
また、
図5に示すメモリ12は、抽出基準表121、検知基準表122、及び学習済モデル123を記憶する。これらはプロセッサ11が処理を実行する際に用いられる。
【0057】
例えば、学習済モデル123は、人を示す領域(以下「人領域」ともいう)の有無の情報と、それが有る場合の位置とが対応付けられた写真画像を教師データとして学習することにより構築された、人領域の特徴を示すモデルである。学習済モデル123を参照することでプロセッサ11は、光学カメラ3で撮影された撮影画像から人領域を抽出する。
【0058】
プロセッサ11は、メモリ12からプログラムを読出して実行することにより表示装置1を制御する。また、プロセッサ11は、インタフェース13を介して検知器2、及び光学カメラ3を制御する。プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。また、プロセッサ11は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよいし、FPGAを含んでもよい。また、このプロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は他のプログラマブル論理デバイスを有し、これらによって制御を行ってもよい。
【0059】
インタフェース13は、有線又は無線により表示装置1を他の装置に通信可能に接続する通信回路である。
【0060】
表示部15は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有しており、プロセッサ11の制御の下、画像を表示する。
【0061】
<抽出基準表の構成>
図6は、抽出基準表121の構成の例を示す図である。抽出基準表121は、走査画像から上述した人領域を抽出する際に基準として用いるパラメータを記述した表である。
図6に示す抽出基準表121は、項目として「縦方向連続数」、「横方向連続数」、「縦方向例外条件」、及び「横方向例外条件」を記憶し、そのそれぞれに対応する値を記憶している。
【0062】
<検知基準表の構成>
図7は、検知基準表122の構成の例を示す図である。検知基準表122は、走査画像の周波数帯域ごとに、危険物として検知する検知対象物の種類と、その検知のパターンとを対応付けて記憶する表である。
【0063】
テラヘルツ波等の電磁波は、周波数帯域によって物体に対する透過特性が異なる。例えば、高周波数帯の電磁波によって生成された走査画像は、低周波数帯の電磁波によって生成された走査画像に比べて粉状の物体を検知し易い。一方、低周波数帯の電磁波によって生成された走査画像は、高周波数帯の電磁波によって生成された走査画像に比べて金属等の形状を検知し易い。
【0064】
検知基準表122は、高周波数帯、又は低周波数帯等の周波数帯域ごとに、検知対象とされる所持物の素材と、それが検知されるときの画素のパターンとを記憶している。プロセッサ11は、この検知基準表122を参照して、走査画像から危険物を検知する。
【0065】
<表示装置の機能的構成>
図8は、表示装置1の機能的構成の例を示す図である。表示装置1のプロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより、第1取得部111、生成部112、第1抽出部113、検知部114、補正部115、第2取得部116、第2抽出部117、及び表示制御部118として機能する。
【0066】
第1取得部111は、検知器2が受波方向を変化させて空間を走査して得た走査信号を取得する。
【0067】
生成部112は、第1取得部111が取得した走査信号から、例えば短冊状の細長い画像をそれぞれ生成し、それら複数の短冊状画像を時間の経過に沿って並べることにより、走査画像を生成する。これにより生成された走査画像は、受波方向の変化により空間を走査して生成した走査画像の例である。
【0068】
第1抽出部113は、メモリ12から抽出基準表121を読み出して、これに記述されたパラメータを用いることで、生成部112が生成した走査画像から人領域を抽出する。
【0069】
検知部114は、メモリ12から検知基準表122を読み出して、これに記述されたパラメータを用いることで、走査画像に示されている危険物を検知する。
【0070】
補正部115は、走査画像に対して例えば、上述したdZ/dy等の数値を用いた変換を行うことで、上述した軸Fを中心に検知対象位置Taに存在する検知対象物を捉えることによる歪みを補正する。
【0071】
第2取得部116は、光学カメラ3から、人Qが撮影された撮影画像を取得する。第2取得部116が取得するこの撮影画像は、光学カメラで撮影した撮影画像の例である。
【0072】
第2抽出部117は、メモリ12から学習済モデル123を読み出して、これに記述された特徴量等を用いることにより、第2取得部116が取得した撮影画像から人領域を抽出する。
【0073】
表示制御部118は、走査画像と撮影画像とを、それぞれにおいて抽出された人領域の位置の対応関係をユーザが特定できるような態様で表示部15に表示させる。すなわち、表示制御部118として機能するプロセッサ11を有する表示装置1は、走査画像と、光学カメラで撮影した撮影画像とを、ユーザが対応する位置を特定可能な態様でそれぞれ表示する表示装置の例である。
【0074】
<表示装置の動作>
図9は、表示装置1の動作の流れの例を示すフロー図である。表示装置1のプロセッサ11は、ステップS101からステップS107までの走査画像に対する処理と、ステップS201からステップS202までの撮影画像に対する処理と、を並行して実行する。
【0075】
<走査画像に対する処理>
表示装置1のプロセッサ11は、検知器2から走査信号を取得したか否かを判断する(ステップS101)。走査信号を取得していない、と判断する間(ステップS101;NO)、プロセッサ11は、この判断を続ける。
【0076】
一方、走査信号を取得した、と判断すると(ステップS101;YES)、プロセッサ11は、取得した走査信号を時間の経過に沿って並べる等の処理をすることで、走査信号から走査画像を生成する(ステップS103)。
【0077】
そして、プロセッサ11は、生成した走査画像を二値化し(ステップS104)、上述した抽出基準表121に沿って、二値化されたこの走査画像から人領域を抽出する(ステップS105)。
【0078】
図10は、走査画像の二値化の例を示す図である。
図10の(a)には二値化される前の走査画像が示されている。この走査画像の各画素に対して、予め決められた閾値との比較を行うことにより走査画像は、
図10の(b)に示す通り二値化される。
【0079】
図11は、二値化された走査画像を加工して人領域を抽出する処理を説明するための図である。
図10の(b)に示した二値化された走査画像は、白画素を下方に集める処理をすることで
図11の(a)に示した画像に加工される。
【0080】
プロセッサ11により実現される上述した第1抽出部113は、抽出基準表121に記述されている縦方向連続数L1を読み出す。そして、第1抽出部113は、この縦方向連続数L1を
図11の(a)に示した加工画像の縦方向の画素群に対して閾値として比較することで、縦方向に連続する白画素の数がL1を超える範囲の幅Wとその位置とを特定する。
【0081】
また、
図10の(b)に示した二値化された走査画像は、白画素を右に集める処理をすることで
図11の(b)に示した画像に加工される。
【0082】
第1抽出部113は、抽出基準表121に記述されている横方向連続数L2を読み出す。そして、第1抽出部113は、この横方向連続数L2を
図11の(b)に示した加工画像の横方向の画素群に対して閾値として比較することで、横方向に連続する白画素の数がL2を超える範囲の高さHとその位置とを特定する。これら特定された幅W、高さH、及びこれらの位置は、走査画像から人領域を抽出するのに用いられる。
【0083】
図9のフロー図の説明に戻る。プロセッサ11は、人領域を抽出すると、上述した検知基準表122に沿って、例えば、人領域の内側に対して危険物の検知を試みる(ステップS106)。走査画像の中で危険物が検知された場合、プロセッサ11は、その走査画像において危険物が存在すると推定される範囲(危険物範囲という)を特定する。
【0084】
プロセッサ11は、走査画像を高さ方向に拡大又は縮小して、検知領域Raにより検知対象物を捉えることによる走査画像の歪みを補正する(ステップS107)。
【0085】
<撮影画像に対する処理>
一方、プロセッサ11は、上述した走査画像に対する処理に並行して撮影画像に対する処理を実行する。プロセッサ11は、光学カメラ3から撮影画像を取得したか否かを判断する(ステップS201)。撮影画像を取得していない、と判断する間(ステップS201;NO)、プロセッサ11は、この判断を続ける。
【0086】
一方、撮影画像を取得した、と判断すると(ステップS201;YES)、プロセッサ11は、メモリ12から学習済モデル123を読み込み、取得した撮影画像の中から人領域を抽出する(ステップS202)。
【0087】
ステップS107、及びステップS202がいずれも完了すると、プロセッサ11は、走査画像において抽出された人領域、及び撮影画像において抽出された人領域の互いに対応する位置をユーザが特定可能な態様で表示部15にそれぞれ表示させる。
【0088】
図12は、抽出した人領域を走査画像に重ねて表示する例を示す図である。プロセッサ11は、二値化される前の走査画像に対して、抽出した人領域を示す枠R0を重ねて表示部15に表示させる。これにより、ユーザは、走査画像において枠R0の内側が人領域であることを把握する。
【0089】
また、プロセッサ11は、上述した走査画像に対して、特定した危険物範囲を示す枠R1を重ねて表示部15に表示させる。これにより、ユーザは、走査画像において枠R1の内側が危険物範囲であることを把握する。
【0090】
すなわち、表示装置1を有する危険物検知システム9は、表示装置を有し、走査画像に基づいて危険物を検知して、その危険物の位置を表示装置に表示させる危険物検知システムの例である。
【0091】
図13は、抽出した人領域を撮影画像に重ねて表示する例を示す図である。プロセッサ11は、光学カメラ3で撮影された撮影画像に対して、学習済モデル123を用いて抽出した人領域を示す枠R2を重ねて表示部15に表示させる。これにより、ユーザは、走査画像において枠R2の内側が人領域であることを把握する。
【0092】
すなわち、表示装置1を有する危険物検知システム9は、撮影画像から人を示す領域を抽出して、その領域の位置を表示装置に表示させる危険物検知システムの例である。
【0093】
また、プロセッサ11は、上述した撮影画像に対して、特定した危険物範囲を示す枠R3を重ねて表示部15に表示させる。この危険物範囲を示す枠R3は、走査画像において抽出された人領域を示す枠R0に対する危険物範囲を示す枠R1の相対的な位置・大きさを、撮影画像において抽出された人領域を示す枠R2に対して当てはめて、その位置・大きさを決定されてもよい。
【0094】
プロセッサ11は、表示部15に
図12に示す走査画像と、
図13に示す撮影画像とを、それぞれの対応する位置がユーザによって比較され、その対応関係が把握され得るように表示部15によって表示させる。つまり、このプロセッサ11を有する表示装置1は、走査画像と撮影画像とをユーザが比較可能に表示する表示装置の例である。
【0095】
例えば、プロセッサ11は、走査画像と撮影画像とを並べて表示部15に表示させてもよい。また、プロセッサ11は、枠R0と枠R2とが同じ位置に表示されるように、走査画像と撮影画像とを交互に表示させてもよい。また、プロセッサ11は、枠R0と枠R2とが同じ位置に表示されるように、走査画像と撮影画像とを重ねて表示させてもよい。走査画像と撮影画像とを重ねて表示させる場合、少なくともいずれか一方の透過率を調整して両方が同時に視認可能なように合成すればよい。
【0096】
以上、説明した処理を実行することにより、危険物検知システム9は、経験・スキルのないユーザ(係員)にも走査画像の位置と撮影画像の位置とを対応付けて認識させることができる。
【0097】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0098】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0099】
<1>
上述した実施形態において、危険物検知システム9の検知器2は、光学系22で集められた電磁波から低周波数帯、高周波数帯の電磁波を選択的に透過させる、偏光フィルタ等の光学的フィルタであるフィルタ23を有していたが、検知器2は、フィルタ23を有しなくてもよい。
【0100】
また、危険物検知システム9における表示装置1は、検知器2のフィルタ23に代えて、検知器2が受波した電磁波を周波数帯域ごとに分離してもよい。この場合、
図8に示すプロセッサ11は、フィルタ部110として機能すればよい。
図8に示すフィルタ部110は、第1取得部111が取得した走査信号を周波数帯域ごとに分離すればよい。フィルタ部110は、例えば、離散フーリエ変換等の演算処理を用いて、走査信号の周波数帯域を選択すればよい。
【0101】
なお、この場合、
図9に示すフロー図において、プロセッサ11は、ステップS101によって取得した走査信号に帯域フィルタをかければよい(ステップS102)。そしてプロセッサ11は、ステップS103において分離された走査信号の周波数帯域ごとに異なる走査画像をそれぞれ生成すればよい。
【0102】
検知器2のフィルタ23により、又はプロセッサ11により実現するフィルタ部110により、異なる周波数帯域の電磁波を受波して、それぞれから走査画像を生成する場合、危険物検知システム9は、異なる周波数帯域の電磁波のそれぞれから異なる種類の危険物を検知する。これは、周波数帯域が変化させることで検知し易い危険物の種類も変化するからである。上述したように、複数の異なる周波数帯域の電磁波をそれぞれ受波して危険物を検知する危険物検知システム9は、すなわち、2以上の周波数の異なる電波を受けて、それぞれ走査画像を生成し、それらの走査画像のそれぞれに基づいて、種類の異なる危険物を検知する危険物検知システムの例である。
【0103】
<2>
上述した実施形態において、補正部115として機能するプロセッサ11は、軸Fを中心に検知対象位置Taに存在する検知対象物を捉えることによる歪みを補正していたが、これと異なる補正をしてもよい。例えば、検知対象位置Taは、高さ方向に伸びる位置ではなく、光学カメラ3の光学系の焦点から一定の距離にある球面上の位置であってもよい。
【0104】
図14は、変形例における補正を説明するための図である。
図14において焦点F3は、光学カメラ3の光学系における焦点である。そして、この変形例において検知対象位置Taは、焦点F3から半径r3の距離にある球面上に存在する。この球面上にある物体を光学カメラ3は撮影して平面画像である撮影画像を生成する。プロセッサ11は、軸Fを中心として受波方向を変化させて検知領域Raを走査することにより取得した走査信号を、上述した球面上に存在する検知対象位置Taに合うように補正すればよい。
【0105】
要するに表示装置1は、走査画像により示される対象物の位置が撮影画像により示されるその対象物の位置に合うように走査画像を補正すればよい。すなわち、この表示装置1は、走査画像により示される対象物の位置が撮影画像により示されるその対象物の位置に合うようにその走査画像を補正する表示装置の例である。
【0106】
なお、光学カメラ3により撮影された撮影画像は、レンズ等の光学系に由来する歪みを補正されてもよい。この場合、表示装置1は、走査画像により示される対象物の位置が、補正後の撮影画像により示されるその対象物の位置に合うように走査画像を補正すればよい。
【0107】
<3>
上述した変形例において、検知器2、又は光学カメラ3は、プロセッサ、メモリを有していないが、プロセッサとメモリとを有してもよい。この場合、実施形態において上述した表示装置1のプロセッサ11、及びメモリ12により実現する機能の少なくとも一部を、検知器2、又は光学カメラ3が備えるプロセッサ、又はメモリが実現してもよい。
【符号の説明】
【0108】
1…表示装置、11…プロセッサ、110…フィルタ部、111…第1取得部、112…生成部、113…第1抽出部、114…検知部、115…補正部、116…第2取得部、117…第2抽出部、118…表示制御部、12…メモリ、121…抽出基準表、122…検知基準表、123…学習済モデル、13…インタフェース、15…表示部、2…検知器、21…レドーム、22…光学系、23…フィルタ、24…センサ、3…光学カメラ、9…危険物検知システム、F…軸、F3…焦点、L1…縦方向連続数、L2…横方向連続数、R0…枠、R1…枠、R2…枠、R3…枠、r…水平距離、r3…半径。