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  • 特開-薬液合成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033431
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】薬液合成装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 14/00 20060101AFI20240306BHJP
   B01J 4/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B01J14/00 Z
B01J4/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137000
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井中 千草
【テーマコード(参考)】
4G068
4G075
【Fターム(参考)】
4G068AA02
4G068AB15
4G068AC16
4G068AD39
4G068AD40
4G068AF01
4G068AF29
4G068AF32
4G075AA14
4G075AA57
4G075AA61
4G075BA06
4G075BA10
4G075BB05
4G075BD13
4G075BD15
4G075CA63
4G075EB01
(57)【要約】
【課題】圧送に使用するガスの消費量を抑え、簡単な構成で精度よく計量することができる薬液合成装置を提供する。
【解決手段】薬液が収容された複数の薬液収容部と、それぞれの薬液収容部の薬液を共通に計量する計量機構と、計量機構で計量された薬液を反応させる反応容器と、を備え、薬液収容部から計量機構を経て反応容器に配管を通じて圧送により送液されることにより、薬液を大気に触れさせることなく計量し、反応容器で反応させる薬液合成装置であって、計量機構は、薬液収容部から供給される薬液の供給、停止を制御する送液バルブと、送液バルブと反応容器とに接続される送液配管に薬液を検知する流体検知器と、を有しており、流体検知器により送液される薬液が検知されることにより、送液バルブから流体検知器までの流体容量と、送液バルブの開閉動作による送液時間により、反応容器に供給される薬液が計量される構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が収容された複数の薬液収容部と、
それぞれの前記薬液収容部の薬液を共通に計量する計量機構と、
前記計量機構で計量された薬液を反応させる反応容器と、
を備え、前記薬液収容部から前記計量機構を経て前記反応容器に配管を通じて圧送により送液されることにより、薬液を大気に触れさせることなく計量し、前記反応容器で反応させる薬液合成装置であって、
前記計量機構は、前記薬液収容部から供給される薬液の供給、停止を制御する送液バルブと、
前記送液バルブと前記反応容器とに接続される送液配管に薬液を検知する流体検知器と、を有しており、
前記流体検知器により送液される薬液が検知されることにより、前記送液バルブから前記流体検知器までの流体容量と、前記送液バルブの開閉動作による送液時間により、前記反応容器に供給される薬液が計量されることを特徴とする薬液合成装置。
【請求項2】
前記送液配管には、前記流体検知器よりも上流側に、複数の前記薬液収容部と接続される集合部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薬液合成装置。
【請求項3】
前記流体検知器は、前記集合部の直後に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の薬液合成装置。
【請求項4】
前記送液バルブには、前記送液配管にガスを供給する専用ガス配管が接続されており、前記送液バルブにより、薬液の送液とガスの供給とが切り替え可能に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬液合成装置。
【請求項5】
前記送液バルブには、洗浄液を供給する洗浄液配管が接続されていることを特徴とする請求項4に記載の薬液合成装置。
【請求項6】
洗浄液を供給する洗浄液配管は、前記専用ガス配管に接続されており、前記送液バルブの1ポートで洗浄液の供給とガスの供給が行われることを特徴とする請求項5に記載の薬液合成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気に触れることなく圧送により送液される液体を計量する薬液合成装置に関し、圧送に使用するガスの消費を抑え、簡単な構成で精度よく計量することができる薬液合成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、ペプチド、ポリマー、核酸等を化学合成する薬液合成装置では、複数の薬液(試薬)を反応容器に供給し化学合成が行われる。例えば、核酸を合成する場合には、反応容器内に担体(多孔質のビーズ。)を多数設け、この反応容器に薬液を順次供給しながら、脱トリチル化、カップリング、酸化、キャッピング等の処理を繰り返し行って担体に塩基を次々に結合させる。
【0003】
このような薬液合成装置は、例えば図3に示すように、薬液を収容する薬液容器100と、薬液容器100から供給された薬液を計量する計量機構101と、計量後の薬液を化学合成させる反応容器102と、を備えており、これらが配管106で接続されている。この計量機構101には、薬液容器100から送液された薬液を収容する計量容器103と、この計量容器103を収容する密閉容器105と、計量容器103に供給された薬液の重量を計測する重量センサ(例えばロードセル)104とで形成されている。この密閉容器105は、大気を遮断し密閉容器105内の圧力を調節できるように形成されており、計量容器103は、密閉容器105内に開放した状態で収容されている。すなわち、計量容器103に薬液を供給する場合には、密閉容器105内の圧力を薬液容器100の圧力よりも減圧することにより行われ、計量容器103から薬液を排出する場合には、密閉容器105内にガスを供給し、圧力を下流側の圧力よりも加圧することにより行われる。これにより、薬液容器100から供給される薬液は、大気に触れることなく計量容器103に圧送により供給され、重量センサ104により精度よく計量された後、圧送により下流側に送液されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-167158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記薬液合成装置では、薬液を計量する機構が複雑であり、さらに、薬液を送液するためのガスの消費量が大きいという問題があった。すなわち、上記薬液合成装置では、薬液を計量するために重量センサ104が用いられているため、計量容器103に供給された薬液のみを計量するために、密閉容器105内の計量容器103の支持状態が重量センサ104に影響しないように支持させる必要があり、計量機構が複雑になるという問題があった。
【0006】
また、計量容器103が重量センサ104と共に密閉容器105に収容されているため、計量容器103内の薬液を圧送するために使用するガスは、計量容器103よりも容積の大きい密閉容器105に供給される必要がある。その結果、圧送に使用するガスの消費量が大きく、ランニングコストが高くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、圧送に使用するガスの消費量を抑え、簡単な構成で精度よく計量することができる薬液合成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の薬液合成装置は、薬液が収容された複数の薬液収容部と、それぞれの前記薬液収容部の薬液を共通に計量する計量機構と、前記計量機構で計量された薬液を反応させる反応容器と、を備え、前記薬液収容部から前記計量機構を経て前記反応容器に配管を通じて圧送により送液されることにより、薬液を大気に触れさせることなく計量し、前記反応容器で反応させる薬液合成装置であって、前記計量機構は、前記薬液収容部から供給される薬液の供給、停止を制御する送液バルブと、前記送液バルブと前記反応容器とに接続される送液配管に薬液を検知する流体検知器と、を有しており、前記流体検知器により送液される薬液が検知されることにより、前記送液バルブから前記流体検知器までの流体容量と、前記送液バルブの開閉動作による送液時間により、前記反応容器に供給される薬液が計量されることを特徴としている。
【0009】
上記薬液合成装置によれば、送液バルブから流体検知器までの流体容量と、流体検知器が薬液を検知した後の送液バルブを開状態にした送液時間により反応容器に送液される薬液を計量することができる。すなわち、流体検知器が薬液を検知した際の送液バルブから流体検知器までの経路内に存在する薬液の容量が予めデータとして記憶されており、流体検知器により薬液を検知された後、送液バルブが開状態である時間(送液時間)が制御されることにより、薬液を送液する圧力(送液圧力)との関係から、流体検知器で薬液を検知した後に送液された薬液量が計量される。すなわち、予めデータとして記憶されている送液バルブから流体検知器までの経路内の薬液量と、流体検知器で薬液を検知した後に送液された薬液量とが加算されることにより、反応容器に送液される薬液量が計量される。したがって、送液バルブと流体検知器で計量することができるため、従来のように重量センサ等を設ける必要がなく、簡単な構成で薬液を計量することができる。また、薬液の圧送についても、配管内にガスを供給するだけで送液することができ、従来のように、薬液を圧送するために計量容器を収容する密閉容器にガスを供給する必要がなく、圧送におけるガスの消費量を抑えることができる。
【0010】
また、前記送液配管には、前記流体検知器よりも上流側に、複数の前記薬液収容部と接続される集合部が形成されている構成にしてもよい。
【0011】
この構成によれば、複数の薬液収容部から送液される薬液が、共通の集合部を経由するため、計量に必要な流体検知器を複数の薬液収容部個々に設ける必要がなく、共用させることができる。これにより、部品点数の増加を抑え、薬液合成装置全体のコストを抑えることができる。
【0012】
また、前記流体検知器は、前記集合部の直後に配置されている構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、集合部直後に流体検知器を設けることで、集合部から離れた位置に配置される場合に比べて、少量の薬液量であっても計測可能になる。
【0014】
また、前記送液バルブには、前記送液配管にガスを供給する専用ガス配管が接続されており、前記送液バルブにより、薬液の送液とガスの供給とが切り替え可能に形成されている構成にしてもよい。
【0015】
この構成によれば、専用ガス配管から供給されるガスにより、送液バルブから下流側の薬液を残らず送液することができる。
【0016】
また、前記送液バルブには、洗浄液を供給する洗浄液配管が接続されている構成にしてもよい。
【0017】
この構成によれば、薬液を供給する位置と洗浄液を供給する位置が送液バルブになるため、薬液が付着した部分に洗浄液を流すことができ、洗浄液が供給されず配管内に薬液が残留する問題を回避することができる。
【0018】
また、洗浄液を供給する洗浄液配管は、前記専用ガス配管に接続されており、前記送液バルブの1ポートで洗浄液の供給とガスの供給が行われる構成にしてもよい。
【0019】
この構成によれば、送液バルブとして三方弁を用いることができ、薬液と洗浄液とが送液配管において同じ位置(送液バルブの接続位置)から供給することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の薬液合成装置によれば、圧送に使用するガスの消費量を抑え、簡単な構成で精度よく計量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の薬液合成装置の概略的な配管経路図である。
図2】上記薬液合成装置の計量動作における薬液の送液状態図を示す図である。
図3】従来の薬液合成装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の計量機構及び薬液合成装置に係る実施の形態について図面を用いて説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態における薬液合成装置を示す配管経路図である。なお、本実施形態では、液体として薬液(試薬)が用いられる例を説明するが、本発明は薬液に限定されるものではなく、薬液以外の液体を化学合成、混合等行う場合にも適用することができる。
【0024】
図1に示すように、薬液合成装置は、薬液が貯留される薬液収容部1と、薬液を計量する計量機構2と、計量機構2で計量された薬液を収容し化学合成させる反応容器3と、反応容器3から排出された薬液を貯留する排液タンク4とを備えており、それぞれ配管5で接続されている。そして、反応に必要な所定の薬液が選択されると、その薬液が計量機構2に送液されることにより計量機構2で正確に計量され、計量された薬液を反応容器3に順次供給することにより、脱トリチル化、カップリング、酸化、キャッピング等の処理を繰り返し行ってビーズ(担体ともいう)に塩基を次々に結合させる。これにより、薬液を無駄にすることなく、所望の塩基を形成することができる。
【0025】
薬液収容部1は、化学合成で用いる試薬を貯留するためのものである。薬液収容部1は、複数設けられており、図1の例では、3つの薬液収容部1のみが記載されているが、実際には多数の薬液収容部1が設けられている。そして、それぞれの薬液収容部1は、専用配管5aにより計量機構2と連結されている。ここで、専用配管5a、後述の専用ガス配管5b、送液配管5cは、特に区別する必要がない場合は、単に、配管5と呼び、本実施形態では、すべての配管5は同径のものが使用されている。
【0026】
また、薬液収容部1には、加圧手段61(工場のガス源、ガスボンベ等)が接続されており、この加圧手段61により薬液収容部1の圧力が調節されることにより薬液が送液されるようになっている。すなわち、加圧手段61により薬液収容部1にガスが供給されると、薬液収容部1が加圧され専用配管5aを通じて薬液が計量機構2に送液される。具体的には、複数の薬液収容部1は、加圧手段61により常時加圧されており、後述の送液バルブ51(三方弁)が選択的に切り替えられることにより、複数の薬液収容部1から選択された薬液のみを計量機構2に送液できるようになっている。なお、加圧手段61のガスは、薬液収容部1の薬液と反応しないガス(例えば、不活性ガス、アルゴンガス等)が用いられている。
【0027】
また、薬液収容部1の下流側には、計量機構2が設けられている。計量機構2は、反応容器3において反応させるために必要な薬液を計量するものである。計量機構2は、送液バルブ51と流体検知器2bとを有しており、流体検知器2bにより薬液を検知することにより送液される薬液が計量されるように構成されている。具体的には、後述の制御装置には、薬液が流体検知器2bに反応した際に、送液バルブ51から流体検知器2bまでの送液配管5cに存在する薬液量が記憶されており、また、送液配管5cを流れる薬液の送液圧力、及び、送液時間と、送液される薬液量との関係が記憶されている。そして、薬液が送液されて流体検知器2bが薬液を検知するタイミングで、送液バルブ51から流体検知器2bまでの送液配管5c内の容量と、流体検知器2bによる検知後の送液時間と送液圧力の情報に基づいて、送液配管5cを流れる薬液が計量されるようになっている。
【0028】
ここで、送液バルブ51から流体検知器2bまでの送液配管5cの薬液量は、予め実験により得られる情報であり、薬液が送液配管5cを流れ、流体検知器2bで検知されたタイミングで、送液配管5c内に存在する薬液量を計量することにより得られる薬液量データ(既定薬液量データという)として記憶されている。また、送液圧力と送液時間との情報は、予め実験により得られる情報であり、実際に、対象となる薬液を所定の送液圧力で、所定時間、送液バルブ51を開状態に保持して送液した場合の薬液量データ(送液薬液量データという)である。そして、これらの既定薬液量データと、送液薬液量データが加算されることにより、送液される薬液が計量されるようになっている。
【0029】
また、送液配管5cには、加圧手段62が接続されている。この加圧手段62は、計量後の薬液を圧送するためのものであり、各送液配管5cに送液バルブ51を介して接続されている。すなわち、送液バルブ51は三方弁が使用されており、送液バルブ51を切り替えることにより、薬液収容部1の経路と加圧手段62の経路とを切り替えることができる。具体的には、送液バルブ51には、薬液収容部1に接続される配管と送液配管5cが接続され、さらに、加圧手段62に接続される専用ガス配管5bが接続されている。そして、送液バルブ51を加圧手段62に切り替えることにより送液配管5cを加圧することができる。
【0030】
すなわち、対象となる薬液が既定薬液量データ、及び、送液薬液量データに基づいて計量されると、所定の送液時間で送液バルブ51が閉じられ、専用ガス配管5b側に切り替えられる。これにより、薬液収容部1からの送液が遮断され、計量後の薬液が送液配管5c内に滞留する。そして、加圧手段62で加圧されることにより、送液配管5c内に滞留した薬液が圧送により反応容器3側に送液することができる。すなわち、送液バルブ51の薬液収容部1側を閉じた状態で加圧手段62により送液バルブ51を通じて加圧されることにより、送液配管5c内の薬液は、逃げ場を失い、開放された反応容器3側に流れる。これにより、加圧手段61のみの圧送に比べて加圧手段62で圧送され、計量後の薬液を送液配管5c内に残留させることなく、薬液を送液することができる。このように、計量機構2では、薬液が配管5内で計量されつつ送液されるため、対象となる薬液を大気に触れることなく精度よく計量されるようになっている。
【0031】
また、流体検知器2bは、送液配管5c内に送液された薬液を検知するためのものである。流体検知器2bは、本実施形態では、透過式の気液センサが使用されており、送液配管5cにおける薬液の存在を検知することができる。流体検知器2bは、後述の集合部7に接続される送液配管5cに接続されており、集合部7の直後に設置されている。流体検知器2bが集合部7の直後に配置されることにより、送液バルブ51から流体検知器2bまでの送液配管5cの容積が小さくなり既定薬液量データを小さくすることができるため、計量可能な薬液量の最小値の範囲を延ばすことができる。
【0032】
また、流体検知器2bでは、送液配管5cに流れる薬液の先頭位置である開始端部と、終端位置である終了端部の時間差とを検知するように設定されている。そして、開始端部、及び、終了端部を検知した時間から、送液配管5cを流れる実際の薬液の薬液量が算出される。これにより、送液配管5cを流れる薬液の現実の薬液量が把握されるようになっている。
【0033】
また、本実施形態では、送液配管5cに集合部7が設けられている。この集合部7は、複数の薬液収容部1から送液された薬液を共通の送液配管5cに導くためのものである。集合部7は、円筒形状に形成されており、それぞれの薬液収容部1に接続された送液配管5cが接続される接続部(不図示)が側面に形成されている。これにより、それぞれの薬液収容部1から送液された薬液は、一度、集合部7を経由し、共通の送液配管5cに導かれ、流体検知器2bで検出される。送液配管5cに集合部7を設けたことにより、薬液収容部1から送液された薬液は、それぞれの薬液収容部1毎に流体検知器2bを設ける必要がなく、共通の流体検知器2bで検知することができる。そして、それぞれの薬液収容部1に接続された送液配管5cを共通の配管に接続する際に必要となるバルブ等を使用する必要がないため、配管構成を容易にし、装置全体のコストを抑えることができる。
【0034】
また、反応容器3は、供給された薬液等を接触させて化学合成させる反応場を提供するものである。反応容器3は、一方向に延びる円筒管が使用されており、反応容器3内には担体(不図示)が収容されている。また、この反応容器3の両端部には、配管5が接続可能なポートが設けられており、それぞれのポートに送液配管5c、排液タンク4に接続される配管5が接続されている。そして、送液配管5cから反応容器3に薬液が導入されると、薬液が径方向に広がりつつ反応容器3内に貯留されることにより、薬液と担体とが化学合成され、担体に塩基が結合される。
【0035】
また、反応容器3の下流側(流出側)には、反応容器3で反応完了後に排液された薬液等を貯留する排液タンク4が設けられている。排液タンク4は、反応容器3に比べて容量が大きく形成されており、反応容器3から複数回排出された場合でも貯留できる容量に形成されている。
【0036】
また、本実施形態では、共用される集合部7、送液配管5cを洗浄するため、洗浄液供給部8が設けられている。洗浄液供給部8は、配管5内に洗浄液を供給することにより、配管5、集合部7を洗浄するものであり、洗浄液配管5dを通じて専用ガス配管5bに接続されて設けられている。具体的には、洗浄液供給部8は、それぞれの専用ガス配管5bに洗浄バルブ52(三方弁)を介して接続されており、洗浄液配管5d、専用ガス配管5bを通じて送液配管5cに洗浄液が供給されるようになっている。すなわち、洗浄液を供給する場合には、洗浄バルブ52を開状態にして、送液バルブ51を専用ガス配管5bから集合部7側に開状態に設定する。これにより、洗浄液供給部8から洗浄液が供給されると、専用ガス配管5b、送液配管5c、集合部7に順次供給されることにより、洗浄液がそれぞれの壁面に洗浄液が接触することにより洗浄が行われ、最終的に廃液タンク4に排出されることにより、洗浄が完了する。このように、洗浄液の供給が専用ガス配管5bを通じて送液バルブ51の切替えにより行われることにより、洗浄液及びガスが使用する送液バルブ51のポートが1ポートで行うことができる。よって、薬液の供給、ガスの供給、洗浄液の供給が汎用性のある3方弁で行うことができる。
【0037】
また、本実施形態では、制御装置(不図示)が設けられており、この制御装置により各バルブの開閉動作が制御され、使用する薬液の選択、送液圧力、送液時間等が制御されるようになっている。そして、制御装置には、上述したように、送液バルブ51から流体検知器2bまでの送液配管5cの薬液量である既定薬液量データが記憶されている。すなわち、実際に、薬液収容部1から送液配管5cを通じて薬液を圧送により送液し、流体検知器2bで検知されたタイミングで、送液バルブ51から流体検知器2bまでの送液配管5cに存在する薬液量が既定薬液量データとして記憶されている。
【0038】
また、制御装置には、送液圧力と送液時間との情報である送液薬液量データが記憶されている。所定の薬液を所定の送液圧力で送液した場合に、送液バルブ51の開閉動作に伴うタイムラグによる薬液量の変化等を含めて、実際に送液される薬液量を計量し、送液圧力と送液時間に基づく送液薬液量データとして記憶されている。これら既定薬液量データと送液薬液量データにより、選択された薬液が精度よく計量されるようになっている。
【0039】
次に、具体的な計量動作について図2を用いて説明する。
【0040】
まず、反応させるべき薬液が選択され、薬液量が入力されると、これらの既定薬液量データと、送液薬液量データを基にして、送液時間が決定され、選択された薬液が計量されつつ送液される。すなわち、例えば、反応させるべき薬液量が2mlとし、既定薬液量が0.5mlとした場合、既定薬液量0.5mlを減算した1.5mlが流体検知器2bで検知された後、送液されるべき送液薬液量として設定される。
【0041】
そして、図2(a)に示すように、対象となる送液バルブ51が開かれて、選択された薬液収容部1の薬液が送液配管5cを通じて圧送により送液され、流体検知器2bで検知されると、送液薬液量データから得られた送液時間が対象となる送液バルブ51の開状態の維持時間として制御され、送液時間の経過と共に送液バルブ51が閉じられることにより、選択された薬液が計量される。
【0042】
そして、計量された薬液は、送液配管5c内に残ることなく送液される。具体的には、図2(b)に示すように、送液バルブ51が薬液収容部1側から加圧手段62側に切り替えられ、バルブ52が加圧手段62側に切り替えられることにより、加圧手段62から専用ガス配管5bを通じて送液配管5cにガスが供給される。これにより、送液配管5c内の薬液が集合部7に圧送により送液される。
【0043】
そして、送液配管5cを流れる薬液は、流体検知器2bにより検知され、送液配管5c内の薬液の開始端部、及び、終了端部のそれぞれの検知時間が記憶される。そして、制御装置により、それぞれの検知時間から薬液量が算出され、反応させるべき薬液量(2ml)と比較される。すなわち、算出された薬液量が入力された薬液量と設定誤差範囲かどうかが確認され、設定範囲外であれば、オペレータに警告するようになっている。これにより、一度計量した薬液について、配管5を流れる現在の薬液量が所望の薬液量か否かの確認が行われ、反応容器3に供給される薬液量の精度が担保されるようになっている。
【0044】
次に、送液配管5c等の洗浄が行われる。具体的には、図2(c)に示すように、バルブ52が洗浄液供給部8側に開状態に設定され、所定量の洗浄液が専用ガス配管5bに供給される。そして、バルブ52を加圧手段62側に再度切り替えられ、専用ガス配管5bに供給された洗浄液が圧送により送液される。すなわち、洗浄液が専用ガス配管5b、送液配管5c、集合部7を流れ、最終的に排液タンク4に排液されることにより、これらの配管5が洗浄される。これにより、次に送液される薬液が先に送液された薬液と混ざって薬液純度が低下するのを抑えることができる。
【0045】
このように、上記薬液合成装置によれば、送液バルブから流体検知器までの流体容量と、流体検知器が薬液を検知した後の送液バルブを開状態にした送液時間により反応容器に送液される薬液を計量することができる。すなわち、流体検知器が薬液を検知した際の送液バルブから流体検知器までの経路内に存在する薬液の容量が予めデータとして記憶されており、流体検知器により薬液を検知された後、送液バルブが開状態である時間(送液時間)が制御されることにより、薬液を送液する圧力(送液圧力)との関係から、流体検知器で薬液を検知した後に送液された薬液量が計量される。すなわち、予めデータとして記憶されている送液バルブから流体検知器までの経路内の薬液量と、流体検知器で薬液を検知した後に送液された薬液量とが加算されることにより、反応容器に送液される薬液量が計量される。したがって、送液バルブと流体検知器で計量することができるため、従来のように重量センサ等を設ける必要がなく、簡単な構成で薬液を計量することができる。また、薬液の圧送についても、配管内にガスを供給するだけで送液することができ、従来のように、薬液を圧送するために計量容器を収容する密閉容器にガスを供給する必要がなく、圧送におけるガスの消費量を抑えることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、集合部7を設けることにより、すべての薬液収容部1に対して、流体検知器2bが共用される例について説明したが、集合部7を設けず、いくつかの薬液収容部1毎に流体検知器2bを設けるものであってもよく、薬液収容部1それぞれ個別に設けるものであってもよい。共用することにより、集合部7、流体検知器2bの部品点数を減らすことができる点で好ましい。
【0047】
また、上記実施形態では、送液配管5cに加圧手段62からのガスが供給される専用ガス配管5bが送液バルブ51を介して接続される例について説明したが、集合部7まで加圧手段61で送液し、専用ガス配管5bを集合部7に接続し、集合部7から加圧手段62の圧力で送液するものであってもよい。ただし、上記実施形態のように、薬液が供給される接続箇所に加圧手段62が接続される構成の方が、薬液が送液配管5cに残ったままになる問題を回避できる点で好ましい。
【0048】
また、上記実施形態では、洗浄液供給部8が専用ガス配管5bを通じて送液バルブ51から洗浄液が供給される例について説明したが、専用ガス配管5bが集合部7に接続され、洗浄液が集合部7に供給される構成であってもよい。ただし、上記実施形態のように、薬液が供給される箇所(送液バルブ51)から供給する構成の方が、薬液が送液される送液配管5cに洗浄液を供給することができるため、薬液が送液された箇所に洗浄液が供給されず、薬液残りが生じる問題を回避できる点で好ましい。
【0049】
また、上記実施形態では、洗浄液配管5dが専用ガス配管5bに接続される例について説明したが、送液バルブ51を四方弁にして洗浄液配管5dが直接、送液バルブ51に接続されていてもよい。また、洗浄液配管5dが送液配管5c、集合部7に直接接続されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 収容容器
2 計量機構
2b 流体検知器
3 反応容器
5 配管
5b 専用ガス配管
5c 送液配管
5d 洗浄液配管
7 集合部
51 送液バルブ
図1
図2
図3