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特開2024-33443印刷装置、印刷装置の制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033443
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240306BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240306BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/165 101
B41J2/175 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137019
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 政貴
(72)【発明者】
【氏名】平野 美喜雄
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA17
2C056EB08
2C056EB23
2C056EB29
2C056EB37
2C056EB38
2C056EB50
2C056EB59
2C056EC24
2C056EC37
2C056EC41
2C056EC54
2C056FA10
2C056HA22
2C056JA01
2C056JA02
2C056JA04
2C056JA20
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】インク不足を抑えながらキャッピング状態でのノズル内のインクの乾燥を低減できる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置10では、制御装置80は、アンキャッピング状態において画像データに基づいてノズル21からインクを吐出させて、画像を印刷媒体Aに印刷する印刷動作と、アンキャッピング状態の継続時間であるアンキャッピング時間を計時する計時動作と、アンキャッピング時間に応じたタイミングでノズル21からキャップ60にインクを吐出させる第1フラッシング動作と、を実行し、第1フラッシング動作では、第1タンクのインクの残量F1が所定残量F未満で、第2タンクのインクの残量F2が所定残量F以上である場合には、第1ノズルからインクを吐出させずに、第2ノズルからインクを吐出させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出面に開口した第1ノズル及び前記第1ノズルと異なる第2ノズルを含むノズルと、インクに吐出圧力を付与する駆動素子と、を有するヘッドと、
前記吐出面を被覆可能なキャップと、
前記ヘッド及び前記キャップのうち、前記ヘッドのみを移動させるか、前記キャップのみを移動させるか、前記ヘッドと前記キャップとの両方を移動させることにより、前記吐出面が前記キャップにより被覆されたキャッピング状態と、前記吐出面が前記キャップから離間したアンキャッピング状態との間で状態変更を行う第1移動装置と、
前記第1ノズルに連通し、前記第1ノズルに供給するインクを貯留する第1タンクと、
前記第2ノズルに連通し、前記第2ノズルに供給するインクを貯留する第2タンクと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記アンキャッピング状態において画像データに基づいて前記ノズルからインクを吐出させて、画像を印刷媒体に印刷する印刷動作と、
前記アンキャッピング状態の継続時間であるアンキャッピング時間を計時する計時動作と、
前記アンキャッピング時間に応じたタイミングで前記ノズルから前記キャップにインクを吐出させる第1フラッシング動作と、を実行し、
前記第1フラッシング動作では、前記第1タンクのインクの残量が所定残量未満で、前記第2タンクのインクの残量が前記所定残量以上である場合には、前記第1ノズルからインクを吐出させずに、前記第2ノズルからインクを吐出させる、
印刷装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1フラッシング動作の前に、前記第1フラッシング動作における前記第2ノズルのインク吐出量よりも少ない吐出量のインクを前記第1ノズルから吐出させる第2フラッシング動作を実行する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記吐出面には、前記第1ノズルが第1方向に並んだ複数の第1ノズル列、及び、前記第2ノズルが前記第1方向に並んだ第2ノズル列が、前記第1方向に交差する第2方向に並んでおり、
前記制御装置は、
前記第2フラッシング動作では、前記第2方向において前記第2ノズル列から離れた前記第1ノズル列ほど、インクの吐出量を少なくする、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷媒体が配置されるプラテンと、
前記プラテン上の前記印刷媒体を第3方向に搬送する搬送装置と、
前記第3方向に対して交差する第4方向に前記ヘッドを移動させる第2移動装置と、を備え、
前記キャップ及び前記プラテンは前記第4方向に並んで配置され、
前記制御装置は、前記第1フラッシング動作において、前記ヘッドを前記第2移動装置により前記第4方向へ移動させながら前記第2ノズルから前記キャップにインクを吐出させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
所定量のインクから成る第1インク滴、及び、前記所定量未満のインクから成る第2インク滴を前記ノズルから吐出可能であり、
前記第1フラッシング動作において、前記第2インク滴を前記第2ノズルから吐出させる、
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記キャップは、前記吐出面に接触するリップを有し、
前記制御装置は、前記第1フラッシング動作において、前記ヘッドを前記第2移動装置により前記第4方向へ移動させることにより、前記第2ノズルのうち、前記第4方向における前記リップとの距離が所定距離未満になった前記第2ノズルからはインクを吐出させない、
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷媒体が配置されるプラテンと、
前記プラテン上の前記印刷媒体を第3方向に搬送する搬送装置と、
前記第3方向に対して交差する第4方向に前記ヘッドを移動させる第2移動装置と、を備え、
前記キャップ及び前記プラテンは前記第4方向に並んで配置され、
前記キャップは、底面を有し、
前記底面には、前記第4方向に延びると共に前記プラテンから離れるに伴い深くなる第1溝が設けられている、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記底面には、前記第1溝、及び、前記第4方向に延びると共に前記プラテンに近づくに伴い深さが深くなる第2溝が設けられている、
請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記底面には、前記第3方向に延びると共に前記第3方向の一方よりも他方の深さが深くなる第3溝、及び、前記第3方向に延びると共に前記第3方向の他方よりも一方の深さが深くなる第4溝が設けられている、
請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記印刷媒体が配置されるプラテンと、
前記プラテン上の前記印刷媒体を第3方向に搬送する搬送装置と、
前記第3方向に対して交差する第4方向に前記ヘッドを移動させる第2移動装置と、を備え、
前記キャップ及び前記プラテンは前記第4方向に並んで配置され、
前記キャップには、キャップチップが設けられており、
前記キャップチップには、前記第4方向に延びると共に前記プラテンから離れるに伴い深くなる第5溝が設けられている、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記キャップチップには、前記第5溝、及び、前記第4方向に延びると共に前記プラテンに近づくに伴い深さが深くなる第6溝が設けられている、
請求項10に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記キャップチップには、前記第3方向に延びると共に前記第3方向の一方よりも他方の深さが深くなる第7溝、及び、前記第3方向に延びると共に前記第3方向の他方よりも一方の深さが深くなる第8溝が設けられている、
請求項11に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記ヘッドにおける前記第1ノズルの数が前記第2ノズルの数よりも多い場合には、
前記制御装置は、前記第1フラッシング動作において、前記第1タンクのインクの残量が前記所定残量よりも少なく、前記第2タンクのインクの残量が前記所定残量よりも多い場合でも、前記第2ノズルに加えて前記第1ノズルからインクを吐出させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記第1ノズルの解像度が前記第2ノズルの解像度よりも高い場合には、
前記制御装置は、前記第1フラッシング動作において、前記第1タンクのインクの残量が前記所定残量よりも少なく、前記第2タンクのインクの残量が前記所定残量よりも多い場合でも、前記第2ノズルに加えて前記第1ノズルからインクを吐出させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記第2ノズルは、第1方向において間隔を空けながら並び、
前記第1ノズルは、前記第1方向に対して交差する第2方向において前記第2ノズルと並ぶ第3ノズル、及び、前記第2方向において前記間隔と並ぶ第4ノズルを有し、
前記制御装置は、前記第1フラッシング動作において、前記第1タンクのインクの残量が前記所定残量よりも少なく、前記第2タンクのインクの残量が前記所定残量よりも多い場合でも、前記第3ノズルからインクを吐出させずに、前記第2ノズル及び前記第4ノズルからインクを吐出させる、
請求項14に記載の印刷装置。
【請求項16】
吐出面に開口した第1ノズル及び前記第1ノズルと異なる第2ノズルを含むノズルと、インクに吐出圧力を付与する駆動素子と、を有するヘッドと、
前記吐出面を被覆可能なキャップと、
前記ヘッド及び前記キャップのうち、前記ヘッドのみを移動させるか、前記キャップのみを移動させるか、前記ヘッドと前記キャップとの両方を移動させることにより、前記吐出面が前記キャップにより被覆されたキャッピング状態と、前記吐出面が前記キャップから離間したアンキャッピング状態との間で状態変更を行う第1移動装置と、
前記第1ノズルに連通し、前記第1ノズルに供給するインクを貯留する第1タンクと、
前記第2ノズルに連通し、前記第2ノズルに供給するインクを貯留する第2タンクと、を備える印刷装置の制御方法であって、
前記アンキャッピング状態において画像データに基づいて前記ノズルからインクを吐出させて、画像を印刷媒体に印刷する印刷動作と、
前記アンキャッピング状態の継続時間であるアンキャッピング時間を計時する計時動作と、
前記アンキャッピング時間に応じたタイミングで前記ノズルから前記キャップにインクを吐出させる第1フラッシング動作と、を実行させ、
前記第1フラッシング動作では、前記第1タンクのインクの残量が所定残量未満で、前記第2タンクのインクの残量が前記所定残量以上である場合には、前記第1ノズルからインクを吐出させずに、前記第2ノズルからインクを吐出させる、
印刷装置の制御方法。
【請求項17】
吐出面に開口した第1ノズル及び前記第1ノズルと異なる第2ノズルを含むノズルと、インクに吐出圧力を付与する駆動素子と、を有するヘッドと、
前記吐出面を被覆可能なキャップと、
前記ヘッド及び前記キャップのうち、前記ヘッドのみを移動させるか、前記キャップのみを移動させるか、前記ヘッドと前記キャップとの両方を移動させることにより、前記吐出面が前記キャップにより被覆されたキャッピング状態と、前記吐出面が前記キャップから離間したアンキャッピング状態との間で状態変更を行う第1移動装置と、
前記第1ノズルに連通し、前記第1ノズルに供給するインクを貯留する第1タンクと、
前記第2ノズルに連通し、前記第2ノズルに供給するインクを貯留する第2タンクと、を備える印刷装置に、
前記アンキャッピング状態において画像データに基づいて前記ノズルからインクを吐出させて、画像を印刷媒体に印刷する印刷動作と、
前記アンキャッピング状態の継続時間であるアンキャッピング時間を計時する計時動作と、
前記アンキャッピング時間に応じたタイミングで前記ノズルから前記キャップにインクを吐出させる第1フラッシング動作と、を実行させ、
前記第1フラッシング動作では、前記第1タンクのインクの残量が所定残量未満で、前記第2タンクのインクの残量が前記所定残量以上である場合には、前記第1ノズルからインクを吐出させずに、前記第2ノズルからインクを吐出させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置として、例えば、特許文献1の液体噴射装置が知られている。この液体噴射装置は、液体を噴射するノズルが開口する液体噴射ヘッド、及び、キャッピング装置を備えている。液体噴射装置では、キャッピング装置を開放した状態で、液体噴射ヘッドから液体を噴射させて、印刷動作を実行する。この印刷動作後に、液体噴射ヘッドのノズル開口をキャッピング装置で封止して、ノズル開口から液体を噴射し、ノズル開口の液体の乾燥を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-017543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記液体噴射装置などの装置では、長時間に亘ってキャッピング装置を開放した状態で印刷動作を行うと、その間にキャッピング装置内に残留した液体が乾燥する。このようなキャッピング装置でノズル開口を封止すると、乾燥により液体から析出した色材が吸湿材として機能しノズル開口から液体を吸湿し、ノズルの液体が粘度上昇してしまう。この状態で、次の印刷動作が開始されると、粘度上昇に起因してノズル開口から液体が噴射しない恐れがある。これに対して、キャッピング装置内に多くの液体を噴射すると、キャッピング装置内の乾燥を抑えられるが、液体の不足により印刷動作を中止してしまうことがある。
【0005】
本発明はこのような事態に鑑み、インク不足を抑えながらキャッピング状態でのノズル内のインクの乾燥を低減できる印刷装置、印刷装置の制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る印刷装置は、吐出面に開口した第1ノズル及び前記第1ノズルと異なる第2ノズルを含むノズルと、インクに吐出圧力を付与する駆動素子と、を有するヘッドと、前記吐出面を被覆可能なキャップと、前記ヘッド及び前記キャップのうち、前記ヘッドのみを移動させるか、前記キャップのみを移動させるか、前記ヘッドと前記キャップとの両方を移動させることにより、前記吐出面が前記キャップにより被覆されたキャッピング状態と、前記吐出面が前記キャップから離間したアンキャッピング状態との間で状態変更を行う第1移動装置と、前記第1ノズルに連通し、前記第1ノズルに供給するインクを貯留する第1タンクと、前記第2ノズルに連通し、前記第2ノズルに供給するインクを貯留する第2タンクと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記アンキャッピング状態において画像データに基づいて前記ノズルからインクを吐出させて、画像を印刷媒体に印刷する印刷動作と、前記アンキャッピング状態の継続時間であるアンキャッピング時間を計時する計時動作と、前記アンキャッピング時間に応じたタイミングで前記ノズルから前記キャップにインクを吐出させる第1フラッシング動作と、を実行し、前記第1フラッシング動作では、前記第1タンクのインクの残量が所定残量未満で、前記第2タンクのインクの残量が前記所定残量以上である場合には、前記第1ノズルからインクを吐出させずに、前記第2ノズルからインクを吐出させる。
【0007】
本発明のある態様に係る印刷装置の制御方法は、吐出面に開口した第1ノズル及び前記第1ノズルと異なる第2ノズルを含むノズルと、インクに吐出圧力を付与する駆動素子と、を有するヘッドと、前記吐出面を被覆可能なキャップと、前記ヘッド及び前記キャップのうち、前記ヘッドのみを移動させるか、前記キャップのみを移動させるか、前記ヘッドと前記キャップとの両方を移動させることにより、前記吐出面が前記キャップにより被覆されたキャッピング状態と、前記吐出面が前記キャップから離間したアンキャッピング状態との間で状態変更を行う第1移動装置と、前記第1ノズルに連通し、前記第1ノズルに供給するインクを貯留する第1タンクと、前記第2ノズルに連通し、前記第2ノズルに供給するインクを貯留する第2タンクと、を備える印刷装置の制御方法であって、前記アンキャッピング状態において画像データに基づいて前記ノズルからインクを吐出させて、画像を印刷媒体に印刷する印刷動作と、前記アンキャッピング状態の継続時間であるアンキャッピング時間を計時する計時動作と、前記アンキャッピング時間に応じたタイミングで前記ノズルから前記キャップにインクを吐出させる第1フラッシング動作と、を実行させ、前記第1フラッシング動作では、前記第1タンクのインクの残量が所定残量未満で、前記第2タンクのインクの残量が前記所定残量以上である場合には、前記第1ノズルからインクを吐出させずに、前記第2ノズルからインクを吐出させる。
【0008】
本発明のある態様に係るプログラムは、吐出面に開口した第1ノズル及び前記第1ノズルと異なる第2ノズルを含むノズルと、インクに吐出圧力を付与する駆動素子と、を有するヘッドと、前記吐出面を被覆可能なキャップと、前記ヘッド及び前記キャップのうち、前記ヘッドのみを移動させるか、前記キャップのみを移動させるか、前記ヘッドと前記キャップとの両方を移動させることにより、前記吐出面が前記キャップにより被覆されたキャッピング状態と、前記吐出面が前記キャップから離間したアンキャッピング状態との間で状態変更を行う第1移動装置と、前記第1ノズルに連通し、前記第1ノズルに供給するインクを貯留する第1タンクと、前記第2ノズルに連通し、前記第2ノズルに供給するインクを貯留する第2タンクと、を備える印刷装置に、前記アンキャッピング状態において画像データに基づいて前記ノズルからインクを吐出させて、画像を印刷媒体に印刷する印刷動作と、前記アンキャッピング状態の継続時間であるアンキャッピング時間を計時する計時動作と、前記アンキャッピング時間に応じたタイミングで前記ノズルから前記キャップにインクを吐出させる第1フラッシング動作と、を実行させ、前記第1フラッシング動作では、前記第1タンクのインクの残量が所定残量未満で、前記第2タンクのインクの残量が前記所定残量以上である場合には、前記第1ノズルからインクを吐出させずに、前記第2ノズルからインクを吐出させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、インク不足を抑えながらキャッピング状態でのノズル内のインクの乾燥を低減できる印刷装置、印刷装置の制御方法及びプログラムを提供することが可能であるという効果を奏する。
【0010】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態及び変形例に係る印刷装置を上から視た図である。
図2】印刷装置の機能ブロック図である。
図3図3(a)はキャッピング状態のヘッド及びキャップの図である。図3(b)はアンキャッピング状態のヘッド及びキャップの図である。
図4図4(a)~図4(c)は、ブラックタンク、イエロータンク、シアンタンク及びマゼンタタンクのそれぞれにおけるインクの残量を示すグラフである。
図5】実施の形態に係る印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図6】変形例1に係る印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図7】第2フラッシング動作によりヘッドからインクをキャップに吐出した図である。
図8図8(a)~図8(c)は、ヘッドとキャップとの位置関係を示す図である。
図9図9(a)は、底面に第1溝が設けられたキャップを上から見た図である。図9(b)は、第1溝及びキャップの断面図である。
図10図10(a)は、底面に第1溝及び第2溝が設けられたキャップを上から見た図である。図10(b)は、第2溝及びキャップの断面図である。
図11図11(a)は、底面に第1溝~第4溝が設けられたキャップを上から見た図である。図11(b)は、第3溝及びキャップの断面図である。図11(c)は、第4溝及びキャップの断面図である。
図12図12(a)及び図12(b)はキャップチップを収容したキャップを示す図である。
図13図13(a)は、キャップチップに第5溝が設けられたキャップを上から見た図である。図13(b)は、第5溝及びキャップの断面図である。
図14図14(a)は、キャップチップに第5溝及び第6溝が設けられたキャップを上から見た図である。図14(b)は、第6溝及びキャップの断面図である。
図15図15(a)は、底面に第5溝~第8溝が設けられたキャップを上から見た図である。図15(b)は、第7溝及びキャップの断面図である。図15(c)は、第8溝及びキャップの断面図である。
図16図16(a)はブラックノズルを一列に並べた吐出面を示す図である。16(b)はブラックノズルを互い違いに並べた吐出面を示す図である。
図17】変形例12に係る印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図18】変形例13に係る印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図19】キャップの底面における第2領域に第3溝及び第4溝が設けられたキャップを示す図である。
図20】キャップチップのチップ上面における第4領域に第7溝及び第8溝が設けられたキャップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態)
<印刷装置の構成>
本発明の一実施の形態に係る印刷装置10は、図1の例に示すように、インクを印刷媒体Aにヘッド20のノズル21から吐出して、インクにより印刷媒体Aに画像を印刷する装置である。以下では、印刷装置10を、インクジェットプリンタに適用した例について説明する。また、印刷媒体Aは、例えば、紙及び布等のシートである。
【0013】
印刷装置10は、シリアルヘッド方式であって、ヘッド20、プラテン11、タンク12、筐体13、搬送装置30、第2移動装置40及び制御装置80を備えている。なお、以下では、搬送装置30によりプラテン11上の印刷媒体Aを搬送する第3方向を前後方向と称する。第3方向に対して交差(例えば、直交)する第4方向を左右方向と称する。但し、印刷装置10の配置はこれに限定されない。
【0014】
筐体13は、印刷装置10の各部を収容している。筐体13内において、左右方向にメンテナンス領域B及び印刷領域C及びが設けられている。メンテナンス領域Bは印刷領域Cよりも右に配置されている。
【0015】
ヘッド20は複数のノズル21及び複数の駆動素子22(図2)を有している。駆動素子22は、圧電素子、発熱素子及び静電式アクチュエータ等であって、ノズル21毎に設けられ、ノズル21からインクを吐出する圧力をインクに付与する。
【0016】
ノズル21はヘッド20の下面である吐出面23に開口する。例えば、ノズル21は、ブラックインクを吐出するブラックノズル21k、イエローインクを吐出するイエローノズル21y、シアンインクを吐出するシアンノズル21c、及び、マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル21mを含んでいる。この場合、ブラックノズル21k、イエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mのうち、少なくとも1つのノズル21が第1ノズルであり、この第1ノズルと異なる他のノズル21が第2ノズルである。
【0017】
プラテン11は、印刷領域Cに配置され、平坦な上面を有し、その上面上に印刷媒体Aが載置される。プラテン11は、その上面がヘッド20の吐出面23と対向し、上面上に配置された印刷媒体Aと吐出面23との間の距離を規定する。
【0018】
タンク12は、チューブ15によりヘッド20のノズル21に連通している。例えば、タンク12は、ブラックタンク12k、イエロータンク12y、シアンタンク12c及びマゼンタタンク12mを含んでいる。このブラックタンク12k、イエロータンク12y、シアンタンク12c及びマゼンタタンク12mのうち、第1タンク及び第2タンクを含んでいる。第1タンクは、第1ノズルに連通し、第1ノズルに供給するインクを貯留する。第2タンクは、第2ノズルに連通し、第2ノズルに供給するインクを貯留する。
【0019】
ブラックタンク12kは、ブラックインクを貯留し、ブラックノズル21kに連通してブラックインクを供給する。イエロータンク12yは、イエローインクを貯留し、イエローノズル21yに連通してイエローインクを供給する。シアンタンク12cは、シアンインクを貯留し、シアンノズル21cに連通してシアンインクを供給する。マゼンタタンク12mは、マゼンタインクを貯留し、マゼンタノズル21mに連通してマゼンタインクを供給する。
【0020】
搬送装置30は、例えば、2本の搬送ローラ31、及び、搬送モータ32(図2)を有している。2本の搬送ローラ31は、前後方向において互いの間にプラテン11を挟み、その中心軸が左右方向に延びている。搬送ローラ31は、搬送モータ32に連結されており、搬送モータ32の駆動によって回転し、印刷媒体Aをプラテン11上において前後方向に搬送する。
【0021】
第2移動装置40は、キャリッジ41、2本のガイドレール42、第2移動モータ43、及び、無端ベルト44を有している。キャリッジ41は、ヘッド20を搭載し、左右方向に移動可能に2本のガイドレール42に支持されている。2本のガイドレール42は、前後方向においてヘッド20の吐出面23を互いの間に挟むように、プラテン11の上方において左右方向に延びている。無端ベルト44は、左右方向に延びて、キャリッジ41及び第2移動モータ43に取り付けられている。第2移動モータ43が駆動すると、無端ベルト44が走行し、キャリッジ41はガイドレール42に沿って左右方向に往復移動する。これにより、キャリッジ41は、左右方向においてメンテナンス領域Bと印刷領域Cとの間でヘッド20を移動させる。
【0022】
<キャップ>
印刷装置10は、キャップ60をさらに備えている。キャップ60は、左右方向においてプラテン11と並んで、メンテナンス領域Bに配置されている。図3(a)及び図3(b)の例に示すように、キャップ60は、例えば、ゴムなどの弾性材料から成り、ヘッド20の吐出面23を被覆可能な部材である。キャップ60は、その上部が開口した容器形状を有している。キャップ60は、この上部開口65、内部空間であるキャップ空間66、矩形の平板形状の底壁61と、底壁61の縁から上方に立ち上がる環状の側壁62と、側壁62の上端から上方に突出した環状のリップ63とを有している。
【0023】
上部開口65は、吐出面23においてノズル21が開口している領域であるノズル開口領域よりも大きく、リップ63により取り囲まれている。キャップ空間66は、底壁61、側壁62及びリップ63のそれぞれの内面により取り囲まれており、上部開口65を介して外部に開放されている。リップ63の厚みは、側壁62の厚みよりも薄く、上方ほど薄くなっている。リップ63が吐出面23に接触した状態において、キャップ60はノズル開口領域の周囲を取り囲み、キャップ60内の空間であるキャップ空間66は吐出面23により閉じられる。
【0024】
<第1移動装置>
印刷装置10は、第1移動装置70をさらに備えている。第1移動装置70は、ヘッド20及びキャップ60のうちキャップ60のみを移動させることにより、吐出面23がキャップ60により被覆されたキャッピング状態と吐出面23がキャップ60から離間したアンキャッピング状態との間で状態変更を行う。なお、以下ではキャップ60を第1移動装置70により移動させる場合について説明するが、第1移動装置70はキャップ60のみを移動する場合に限定されない。第1移動装置70は、ヘッド20及びキャップ60のうち、ヘッド20のみを移動させるか、ヘッド20及びキャップ60の両方を移動させることにより、吐出面23がキャップ60により被覆されたキャッピング状態と吐出面23がキャップ60から離間したアンキャッピング状態との間で状態変更を行ってもよい。この場合、例えば、第1移動装置70は、上下方向においてキャップ60に対してヘッド20を移動させてもよい。また、第1移動装置70は、上下方向においてヘッド20及びキャップ60の両方を移動させてもよい。
【0025】
第1移動装置70は、キャップホルダ71及び第1移動モータ72を有している。キャップホルダ71は、その上部が開口した容器形状であって、その内部にキャップ60を収容する。キャップホルダ71は、キャップ60をその外側から支持し、キャップ60の形状を保持している。
【0026】
第1移動モータ72が駆動することにより、キャップホルダ71を上下方向に移動させる。図3(a)の例に示すように、第1移動装置70は、キャップホルダ71を上方に移動させて、キャップホルダ71に保持されたキャップ60を吐出面23に接近させる。そして、キャップ60のリップ63が吐出面23に接触すると、第1移動装置70はキャップ60の移動を停止させる。このキャッピング動作により、吐出面23がキャップ60に被覆されるキャッピング状態になる。このキャッピング状態では、吐出面23及びキャップ60の内面により囲まれたキャップ空間66が閉塞され、吐出面23に開口するノズル21からのインクの乾燥が低減される。
【0027】
一方、図3(b)の例に示すように、第1移動装置70は、キャップホルダ71を下方に移動させて、キャップホルダ71に保持されたキャップ60を吐出面23から離間させて、キャップ60の移動を停止する。このアンキャッピング動作により、吐出面23がキャップ60から離間したアンキャッピング状態になる。アンキャッピング状態では、吐出面23及びキャップ60の内面により囲まれたキャップ空間66が開放されて、吐出面23及びキャップ60の内面が外部に現れる。
【0028】
<制御装置>
制御装置80は、図2の例に示すように、例えば、コンピュータであって、インターフェース81、演算部82及び記憶部83を備えている。インターフェース81は、コンピュータ、カメラ、ネットワーク及び記録媒体等の外部装置Eから画像データ等の各種データを受信する。画像データは、印刷媒体Aに印刷される画像を示すラスタデータなどである。なお、制御装置80は、単独の装置により構成されていてもよく、又は、複数の装置が分散配置されていて、それらが協働して印刷装置10の動作を行うよう構成されていてもよい。
【0029】
記憶部83は、演算部82からアクセス可能なメモリであって、RAM、ROM、E2PROM又はNVRAMなどを少なくとも1つ有している。記憶部83は、画像データ、及び、演算部82により変換されたデータ、各種データ処理を行うためのプログラムなどを記憶している。演算部82は、例えば、CPUなどのプロセッサ、ASICなどの集積回路、又は、その両方の回路を含み、記憶部83に記憶されるプログラムを実行することにより各部を制御し、印刷動作、第1フラッシング動作及び計時動作を実行する。なお、各種動作の詳細については後述する。
【0030】
このような制御装置80は、ヘッド駆動回路84を介してヘッド20の駆動素子22に電気的に接続されている。制御装置80は、駆動素子22の制御信号をヘッド駆動回路84に出力し、ヘッド駆動回路84が制御信号に基づいて駆動信号を生成して駆動素子22に出力する。駆動素子22は、駆動信号に応じて駆動して、インクに吐出圧力を付与する。
【0031】
また、制御装置80は、搬送駆動回路85を介して搬送装置30の搬送モータ32に電気的に接続され、搬送モータ32の駆動を制御する。これにより、搬送装置30による印刷媒体Aの搬送が制御される。さらに、制御装置80は、第2移動駆動回路86を介して第2移動装置40の第2移動モータ43に電気的に接続され、第2移動モータ43の駆動を制御する。これにより、第2移動装置40によるヘッド20の移動が制御される。
【0032】
また、制御装置80は、第1移動駆動回路87を介して第1移動装置70の第1移動モータ72に電気的に接続され、第1移動モータ72の駆動を制御する。これにより、第1移動装置70によるヘッド20及びキャップ60の相対移動が制御され、キャップ60が吐出面23を被覆するキャッピング状態と、キャップ60が吐出面23から離間したアンキャッピング状態との状態変更が制御される。
【0033】
<印刷動作>
このような印刷装置10において、制御装置80は、アンキャッピング状態において画像データに基づいてノズル21からインクを吐出させて、画像を印刷媒体Aに印刷する印刷動作を実行する。具体的には、印刷動作では、制御装置80はパス動作及び搬送動作を実行する。このパス動作では、制御装置80は、印刷領域Cにおいて右又は左にヘッド20を移動させながら、ヘッド20からインクを印刷媒体Aに吐出させる。また、搬送動作では、制御装置80は、印刷媒体Aを前方へ搬送させる。このように、印刷装置10は、パス動作と搬送動作とを交互に繰り返し、印刷動作を進めていく。
【0034】
<計時動作、第1フラッシング動作>
アンキャッピング状態では、キャップ60の上部開口65が開放されているため、キャップ60の乾燥が進む。このため、キャップ60内に残留しているインクが乾燥して、インクに含まれている顔料や染料などの色材が乾燥する。ここで、キャップ60の上部開口65を吐出面23で被覆したキャッピング状態とすると、キャップ60内において乾燥した色材が吸湿材として機能し、吐出面23に開口したノズル21のインクを吸湿して、インクが増粘してしまう。
【0035】
そこで、制御装置80は、計時動作及び第1フラッシング動作を実行する。計時動作では、制御装置80は、アンキャッピング状態の継続時間であるアンキャッピング時間を計時する。アンキャッピング時間は、アンキャッピング動作からその直後のキャッピング動作までのアンキャッピング状態における継続時間である。アンキャッピング時間は、第1フラッシング動作からその直後の第1フラッシング動作までの間において、アンキャッピング時間を累積した時間であってもよい。この場合、制御装置80は、キャッピング動作及びアンキャッピング動作の実行ではアンキャッピング時間を0にリセットせずに、第1フラッシング動作の実行でアンキャッピング時間を0にリセットする。
【0036】
第1フラッシング動作では、制御装置80は、アンキャッピング時間に応じたタイミングでノズル21からキャップ60にインクを吐出させる。アンキャッピング時間に応じたタイミングは、アンキャッピング時間が所定時間以上であるタイミングであって、キャップ60が乾燥する前の時点である。第1フラッシング動作では、制御装置80は、ヘッド20をキャップ60上に移動させて、アンキャッピング状態でノズル21からインクを吐出させる。これにより、インクがキャップ60の内面及びその内面上の色材に付着し、キャップ空間66が加湿されるため、キャッピング状態にしてもノズル21内のインクの乾燥を低減できる。
【0037】
ここで、印刷動作におけるインクのノズル21からの吐出量などに応じて、タンク12の残量が異なる。このため、第1フラッシング動作において、複数のノズル21から一律にインクを吐出させると、タンク12におけるインクの残量不足によって印刷動作を実行できない場合がある。よって、制御装置80は、第1フラッシング動作では、第1タンクのインクの残量F1が所定残量F未満で、第2タンクのインクの残量F2が所定残量F以上である場合には、第1ノズルからインクを吐出させずに、第2ノズルからインクを吐出させる。
【0038】
具体的には、タンク12には、図2の例に示すように、タンクセンサ16が設けられている。タンクセンサ16は、制御装置80に電気的に接続されており、タンク12に残っているインクの残量を検知して、検知した残量を制御装置80に出力する。例えば、タンクセンサ16は、所定容量のタンク12に貯留されているインクの高さを検知して制御装置80に出力する。制御装置80は、タンク12におけるインクの高さに応じて、タンク12に残っているインクの残量を取得する。このインクの高さと残量との関係は記憶部83に予め記憶されている。
【0039】
なお、印刷装置10はタンクセンサ16を有していなくてもよい。この場合には、制御装置80は、印刷動作及びフラッシング動作などによりノズル21からインクを吐出する度に、そのインクの吐出量を取得する。そして、制御装置80は、例えば、タンク12の取り換えから、インクの吐出量を積算して、その積算吐出量を取得し記憶部83に記憶する。それから、制御装置80は、タンク12に予め貯留されているインクの所定貯留量から、積算吐出量を引いた差をインクの残量として取得する。
【0040】
例えば、図4(a)の例では、ブラックタンク12kにおけるブラックインクの残量Fk、イエロータンク12yにおけるイエローインクの残量Fy、シアンタンク12cにおけるシアンインクの残量Fc及びマゼンタタンク12mにおけるマゼンタインクの残量Fmは所定残量F以上である。この場合、第1フラッシング動作では、制御装置80はブラックノズル21k、イエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mからインクをそれぞれ吐出させる。
【0041】
このブラックインクの吐出量、イエローインクの吐出量、シアンインクの吐出量及びマゼンタインクの吐出量の総量を、第1フラッシング動作によりヘッド20から吐出されるインクの所定の総量に等しくする。また、ブラックインクの吐出量、イエローインクの吐出量、シアンインクの吐出量及びマゼンタインクの吐出量を互いに均等にする。これにより、第1フラッシング動作によるブラックインク、イエローインク、シアンインク及びマゼンタインクの一部のインクが極度に減少することが抑えられる。このため、第1フラッシング動作に起因したインク不足を回避しつつ、キャッピング状態におけるノズル21内のインクの乾燥を低減することができる。
【0042】
また、図4(b)の例では、ブラックタンク12kにおけるブラックインクの残量Fkは所定残量F未満である。イエロータンク12yにおけるイエローインクの残量Fy、シアンタンク12cにおけるシアンインクの残量Fc、及び、マゼンタタンク12mにおけるマゼンタインクの残量Fmは所定残量F以上である。この場合、第1フラッシング動作では、制御装置80はブラックノズル21kからインクを吐出させずに、イエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mからインクをそれぞれ吐出させる。
【0043】
このイエローインクの吐出量、シアンインクの吐出量及びマゼンタインクの吐出量を合計した総量を、第1フラッシング動作によりヘッド20から吐出されるインクの所定の総量に等しくする。イエローインクの吐出量、シアンインクの吐出量及びマゼンタインクの吐出量を互いに均等にする。これにより、残量が少ないブラックインクを吐出させずに、イエローインク、シアンインク及びマゼンタインクの消費量を少なく抑えられる。このため、第1フラッシング動作に起因したインク不足を回避しつつ、キャッピング状態におけるノズル21内のインクの乾燥を低減することができる。
【0044】
<制御方法>
制御装置80は、外部装置Eからインターフェース81を介して画像データを受信すると、図5の例に示す制御方法の一例のフローチャートを実行する。まず、制御装置80は、画像データを取得し(ステップS1)、アンキャッピング動作を実行する(ステップS2)。そして、制御装置80は、第1フラッシング動作からのアンキャッピング状態の継続時間であるアンキャッピング時間の計時動作を実行する(ステップS3)。
【0045】
そして、制御装置80は、アンキャッピング状態にて画像データに基づいてノズル21からインクを吐出させる印刷動作を開始し(ステップS4)、ステップS9の処理における印刷動作の終了(S9:YES)まで印刷動作を実行する。この印刷動作の実行中において、制御装置80は、アンキャッピング時間に応じたタイミングであるか否かを判定する(ステップS5)。例えばアンキャッピング時間が所定時間未満であれば、制御装置80は、アンキャッピング時間に応じたタイミングに未だ至っていないと判定して(ステップS5:NO)、ステップS9の処理に進む。
【0046】
一方、例えばアンキャッピング時間が所定時間以上であれば、制御装置80は、アンキャッピング時間に応じたタイミングに至ったと判定し(ステップS5:YES)、第1フラッシング動作を実行する。ここで、制御装置80は、第1フラッシング動作で用いるノズル21を判定するため、第1タンクにおけるインクの残量F1が所定残量F未満であり、第2タンクにおけるインクの残量F2が所定残量F以上か否かを判定する(ステップS6)。
【0047】
第1タンクにおけるインクの残量F1が所定残量F未満であり、第2タンクにおけるインクの残量F2が所定残量F以上である場合(ステップS6:YES)、制御装置80は第1ノズルからインクを吐出させずに第2ノズルからインクを吐出させる第1フラッシング動作を実行する(ステップS7)。インクが第2ノズルからキャップ60に吐出される。
【0048】
例えば、図4(b)の例の場合には、ブラックタンク12kにおけるインクの残量Fkが所定残量F未満であって、イエロータンク12y、シアンタンク12c及びマゼンタタンク12mにおけるインクの残量Fy、Fc、Fmが所定残量F以上である。この場合、制御装置80は、第1フラッシング動作において、ブラックノズル21kからインクを吐出させずに、イエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mからインクをそれぞれ吐出させる。この第1フラッシング動作では、残量が少ないブラックタンク12kにおけるインクが消費されずに、残量の多いタンク12y、12c、12mにそれぞれ連通するノズル21y、21c、21mからインクがキャップ60内に吐出される。このため、インク不足を抑えながらキャッピング状態でのノズル21内のインクの乾燥を低減できる。
【0049】
これに対し、インクの残量F1及び残量F2が所定残量F以上、又は、インクの残量F1及び残量F2が所定残量F未満である場合には(ステップS6:NO)、制御装置80は、第1ノズル及び第2ノズルからインクを吐出させる第1フラッシング動作を実行する(ステップS8)。例えば、図4(a)の例の場合には、制御装置80は、全てのタンク12におけるインクの残量Fk、Fy、Fc、Fmが所定残量F以上であるため、第1フラッシング動作により全てのノズル21k、21y、21c、21mからインクを均等に吐出させる。この第1フラッシング動作により、各ノズル21からのインクの吐出量を少なく抑えつつ、インクをキャップ60内に吐出させる。このため、インク不足を抑えながらキャッピング状態でのノズル21内のインクの乾燥を低減することができる。
【0050】
そして、制御装置80は、印刷動作を終了するか否かを判定する(ステップS9)。画像データに基づいた画像を印刷するための未実行のパス動作が残っていれば、制御装置80は、印刷動作中であると判定し(ステップS9:NO)、ステップS5の処理に戻り、これ以降の処理を実行する。一方、画像データに基づいた画像を印刷するための全てのパス動作を実行したら、制御装置80は、印刷動作が終了したと判定する(ステップS9:YES)。そして、制御装置80は、ヘッド20を印刷領域Cからメンテナンス領域Bに移動させてキャップ60の上部開口65を吐出面23に被覆するキャッピング動作を実行する(ステップS10)。
【0051】
<変形例1>
変形例1に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、制御装置80は、第1フラッシング動作の前に、第1フラッシング動作における第2ノズルのインク吐出量よりも少ない吐出量のインクを第1ノズルから吐出させる第2フラッシング動作を実行する。
【0052】
このような印刷装置10は、図6の例のフローチャートに沿って制御装置80により制御される。この図6のフローチャートでは、ステップS11の処理が図5のフローチャートにおけるステップS6の処理とステップS7の処理の間に実行される。なお、図6のステップS1~S10の処理は、図5のステップS1~S10の処理とそれぞれ同様である。
【0053】
ステップS6の処理において、第1タンクにおけるインクの残量F1が所定残量F未満であり、第2タンクにおけるインクの残量F2が所定残量F以上である場合(ステップS6:YES)。制御装置80は、第2フラッシング動作を実行する(ステップS11)。この第2フラッシング動作では、制御装置80は、ヘッド20をキャップ60上に移動させて、第2タンクに連通する第2ノズルからインクを吐出させずに、第1タンクに連通する第1ノズルからインクを吐出させる。
【0054】
この第2フラッシング動作により全ての第1ノズルから吐出されるインクの総量は、第1フラッシング動作により全ての第2ノズルから吐出されるインクの総量よりも少ない。また、第2フラッシング動作により各第1ノズルから吐出されるインク滴のサイズは、第1フラッシング動作により各第2ノズルから吐出されるインク滴のサイズよりも小さい。それから、制御装置80は、第1ノズルからインクを吐出させずに、第2ノズルからインクを吐出させる第1フラッシング動作を実行する(ステップS7)。
【0055】
例えば、図4(c)の例の場合には、ブラックタンク12k、イエロータンク12y、シアンタンク12cにおけるインクの残量Fk、Fy、Fcが所定残量F未満であってマゼンタタンク12mにおけるインクの残量Fmが所定残量F以上である。この場合、制御装置80は、第2フラッシング動作を実行して、マゼンタノズル21mからインクを吐出させずに、ブラックノズル21k、イエローノズル21y、シアンノズル21cからインクを吐出させる。それから、制御装置80は、第1フラッシング動作を実行して、ブラックノズル21k、イエローノズル21y、シアンノズル21cからインクを吐出させずに、マゼンタノズル21mからインクを吐出させる。
【0056】
この第2フラッシング動作による各ノズル21k、21y、21cからのインク滴のサイズは、第1フラッシング動作による各マゼンタノズル21mからのインク滴のサイズよりも小さい。このような小さなインク滴を第1フラッシング動作の前に第2フラッシング動作によってキャップ60内に付着している。これにより、第1フラッシング動作によるマゼンタインクは、キャップ60内に付着すると、第2フラッシング動作による小さなインク滴によりキャップ60内を広がり易い。また、第2フラッシング動作によるノズル21k、21y、21cから吐出されたインクの総量は、第1フラッシング動作によるマゼンタノズル21mから吐出されたインクの総量よりも少ない。よって、インクの消費量を抑えつつ、インクをキャップ60の広範囲に亘って広げることができるため、インク不足を抑えながらキャッピング状態でのノズル21内のインクの乾燥を低減できる。
【0057】
なお、上記構成では、制御装置80は、第2フラッシング動作において、インクの残量が所定残量F以上の第2タンクに連通する第2ノズルからインクを吐出させずに、インクの残量が所定残量F未満の第1タンクに連通する第1ノズルからインクを吐出させた。しかしながら、制御装置80は、第2フラッシング動作において第1ノズルに加えて第2ノズルからインクを吐出させてもよい。この第2フラッシング動作によりノズル21から吐出されたインクは、キャップ60の広い範囲に亘って付着するため、より一層、第1フラッシング動作によるインクをキャップ60の広範囲に速やかに広げることができる。
【0058】
<変形例2>
変形例2に係る印刷装置10では、変形例1において、吐出面23には、第1ノズルが第1方向に並んだ複数の第1ノズル列、及び、第2ノズルが第1方向に並んだ第2ノズル列が、第1方向に交差する第2方向に並んでいる。制御装置80は、第2フラッシング動作では、第2方向において第2ノズル列から離れた第1ノズル列ほど、インクの吐出量を少なくする。なお、以下では、第1方向を前後方向と称し、第2方向を左右方向と称するが、印刷装置10の配置はこれに限定されない。
【0059】
図1の例では、ヘッド20の吐出面23において、複数のノズル21が前後方向に並んでノズル列を成し、4本のノズル列が左右方向に並んでいる。4本のノズル列は、ブラックノズル列、イエローノズル列、シアンノズル列及びマゼンタノズル列を含んでおり、これらは左から右に並んでいる。ブラックノズル列は、複数のブラックノズル21kが前後方向に並んで形成されたノズル列である。イエローノズル列は、複数のイエローノズル21yが前後方向に並んで形成されたノズル列である。シアンノズル列は、複数のシアンノズル21cが前後方向に並んで形成されたノズル列である。マゼンタノズル列は、複数のマゼンタノズル21mが前後方向に並んで形成されたノズル列である。この場合、ブラックノズル列、イエローノズル列、シアンノズル列及びマゼンタノズル列のうち、少なくとも1つのノズル列が第1ノズル列であり、この第1ノズル列とは異なる他のノズル列が第2ノズル列である。
【0060】
図4(c)の例の場合には、ブラックタンク12k、イエロータンク12y及びシアンタンク12cにおけるインクの残量Fk、Fy、Fcが所定残量F未満であって、マゼンタタンク12mにおけるインクの残量Fmが所定残量F以上である。この場合、制御装置80は、第2フラッシング動作において、マゼンタノズル21mからインクを吐出させずに、ブラックノズル21k、イエローノズル21y及びシアンノズル21cからインクを吐出させる。一方、制御装置80は、第1フラッシング動作において、ブラックノズル21k、イエローノズル21y及びシアンノズル21cからインクを吐出させずに、マゼンタノズル21mからインクを吐出させる。
【0061】
この各ノズル21から吐出されるインクの量、つまり、インク滴のサイズは、フラッシング動作の種類及びノズル列の位置に応じて異なる。例えば、各ノズル21は、所定量のインク滴である中インク滴、所定量よりも多いインク滴である大インク滴、所定量よりも少ないインク滴である小インク滴、及び、小インク滴よりも少ないインク滴である極小インク滴を吐出可能である。
【0062】
この場合、制御装置80は、図7の例に示すように、第1フラッシング動作においてマゼンタノズル21mから大インク滴を吐出させる。これに対し、制御装置80は、第2フラッシング動作において、第1フラッシング動作による大インク滴よりも小さいインク滴をブラックノズル21k、イエローノズル21y及びシアンノズル21cから吐出させる。
【0063】
ここで、左右方向においてマゼンタノズル21mのマゼンタノズル列から離れているほど吐出するインク滴のサイズを小さくする。この場合、ブラックノズル列がマゼンタノズル列から最も遠く、シアンノズル列がマゼンタノズル列に最も近い。よって、ブラックノズル列のブラックノズル21k、イエローノズル列のイエローノズル21y及びシアンノズル列のシアンノズル21cの順で、吐出するインク滴のサイズが大きくなる。例えば、ブラックノズル21kから極小インク滴が吐出され、イエローノズル21yから小インク滴が吐出され、シアンノズル21cから中インク滴が吐出される。
【0064】
よって、第2フラッシング動作の実行後に第1フラッシング動作を実行すると、マゼンタノズル21mからの大インク滴、シアンノズル21cからの中インク滴、イエローノズル21yからの小インク滴、及び、ブラックノズル21kから極小インク滴がこの順で右から左に並ぶ。これにより、大インク滴のマゼンタインクは、中インク滴、小インク滴及び極小インク滴の順で混ざりながら、キャップ60の内面上を広がる。よって、第1フラッシング動作及び第2フラッシング動作によるインクの吐出量を抑えながら、キャップ60の内面に広く広がる。このため、インク不足を抑えながらキャッピング状態でのノズル21内のインクの乾燥を低減できる。
【0065】
<変形例3>
変形例3に係る印刷装置10は、上記実施の形態及び変形例1~2において、印刷媒体Aが配置されるプラテン11と、プラテン11上の印刷媒体Aを第3方向に搬送する搬送装置30と、第3方向に対して交差する第4方向にヘッド20を移動させる第2移動装置40と、を備えている。キャップ60及びプラテン11は第4方向に並んで配置されている。制御装置80は、第1フラッシング動作において、ヘッド20を第2移動装置40により第4方向へ移動させながら第2ノズルからキャップ60にインクを吐出させる。
【0066】
例えば、図4(b)の例の場合には、ブラックタンク12kにおけるインクの残量が所定残量F未満であって、イエロータンク12y、シアンタンク12c及びマゼンタタンク12mにおけるインクの残量が所定残量F以上である。この場合、制御装置80は、第1フラッシング動作において、ブラックノズル21kからインクを吐出させずに、イエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mからインクを吐出させる。
【0067】
また、図8(a)、図8(b)及び図8(c)の例に示すように、制御装置80は、第1フラッシング動作において、ヘッド20を右及び左に移動させながら、キャップ60上にヘッド20のノズル21からインクを吐出させる。このノズル21はヘッド20における所定位置に配置され、キャップ60は筐体13における所定位置に配置されている。このため。制御装置80は、移動するヘッド20の位置に基づいて、ノズル21とキャップ60との左右方向における距離を取得する。そして、制御装置80は、ノズル21のうち、キャップ60上に位置しているノズル21を距離に基づいて取得し、そのノズル21からインクを吐出させる。
【0068】
図8(a)の例では、ヘッド20において右端に位置しているマゼンタノズル21mがキャップ60上に位置し、その他のノズル21はキャップ60よりも左に配置されている。このため、制御装置80は、マゼンタノズル21m以外のノズル21からはインクを吐出させずに、マゼンタノズル21mからマゼンタインクを吐出させる。
【0069】
図8(b)の例に示すように、ヘッド20は右に移動するに伴い、マゼンタノズル21m、シアンノズル21c及びイエローノズル21yがこの順でキャップ60上に位置する。このため、制御装置80は、マゼンタノズル21m、シアンノズル21c及びイエローノズル21yからこの順でインクを吐出させる。
【0070】
さらに、ヘッド20が右に移動すると、マゼンタノズル21mはキャップ60よりも右へ移動するため、制御装置80は、シアンノズル21c及びイエローノズル21yからインクを吐出させつつ、マゼンタノズル21mからのマゼンタインクの吐出を停止する。このように、ヘッド20は右に移動するに伴い、マゼンタノズル21m、シアンノズル21c及びイエローノズル21yがこの順でキャップ60よりも右に位置するため、制御装置80はマゼンタノズル21m、シアンノズル21c及びイエローノズル21yからのインクの吐出をこの順で停止していく。
【0071】
そして、イエローノズル21yがキャップ60の右端上に位置すると、制御装置80は、ヘッド20の移動方向を変えて、ヘッド20を左に移動する。ここで、制御装置80は、キャップ60上に位置するノズル21からインクを吐出させる。
【0072】
このように、制御装置80は、第1フラッシング動作において、ヘッド20を左右方向に移動させながら、ヘッド20からキャップ60にインクを吐出させる。これにより、インクがキャップ60を全体的に均一に付着するため、インク不足を抑えながらキャッピング状態でのノズル21内のインクの乾燥を低減できる。
【0073】
<変形例4>
変形例4に係る印刷装置10では、変形例3において、制御装置80は、所定量のインクから成る第1インク滴、及び、所定量未満のインクから成る第2インク滴をノズル21から吐出可能であり、第1フラッシング動作において、第2インク滴を第2ノズルから吐出させる。
【0074】
具体的には、制御装置80は、インクの吐出量に応じて、複数種類の波形信号から1種類の波形信号を領域毎に選択し、波形選択データを生成する。波形信号は、例えば、パルス信号であって、所定量のインクから成る第1インク滴をノズル21から吐出させる第1波形信号、及び、所定量未満の量のインクから成る第2インク滴をノズル21から吐出させる第2波形信号を有している。
【0075】
そして、制御装置80は、波形選択データ及び波形信号を含む制御データをヘッド駆動回路84に出力する。これに応じ、ヘッド駆動回路84は、制御データの波形選択データに基づいて1種類の波形信号を選択し、この波形信号の波形に応じた電圧の信号を駆動信号として駆動素子22に印加する。これにより、駆動素子22が駆動信号に応じて駆動し、インクに吐出圧力が付与され、駆動信号に応じた量のインクがノズル21から吐出される。
【0076】
この場合、第1フラッシング動作の実行において、制御装置80は、キャップ60上においてヘッド20を左右方向に移動させながら、第2波形信号を選択して駆動素子22を駆動させる。これにより、第1インク滴よりも小さな第2インク滴がノズル21からキャップ60に吐出され、キャップ60の全体に亘って均一に付着することができる。このため、インク不足を抑えながらキャッピング状態でのノズル21内のインクの乾燥を低減できる。
【0077】
<変形例5>
変形例5に係る印刷装置10では、変形例3~4において、キャップ60は、吐出面23に接触するリップ63を有している。制御装置80は、第1フラッシング動作において、ヘッド20を第2移動装置40により第4方向へ移動させることにより、第2ノズルのうち、第4方向におけるリップ63との距離が所定距離未満になった第2ノズルからはインクを吐出させない。
【0078】
例えば、図4(b)の例の場合には、ブラックタンク12kにおけるインクの残量が所定残量F未満であって、イエロータンク12y、シアンタンク12c及びマゼンタタンク12mにおけるインクの残量が所定残量F以上である。この場合、制御装置80は、第1フラッシング動作において、ブラックノズル21kからインクを吐出させずに、イエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mからインクを吐出させる。
【0079】
ここで、図8(a)~図8(c)の例に示すように、制御装置80は、第1フラッシング動作において、キャップ60上において右又は左にヘッド20を移動させながら、ヘッド20からインクをキャップ60内に吐出させる。このキャップ60における所定位置にリップ63は配置されている。このため、制御装置80は、移動するヘッド20の位置に基づいて、ヘッド20のノズル21とキャップ60のリップ63との左右方向における距離を取得する。制御装置80は、キャップ60上に位置するノズル21のうち、リップ63との距離が所定距離以上のノズル21からインクを吐出させる。また、制御装置80は、キャップ60上に位置しないノズル21、及び、キャップ60上に位置していてもリップ63との距離が所定距離未満のノズル21からはインクを吐出させない。
【0080】
図8(a)の例では、マゼンタノズル21mが右へ移動し、キャップ60上に位置しても、左側のリップ63との距離Dmが所定距離未満では、制御装置80はマゼンタノズル21mからインクを吐出させない。さらに、マゼンタノズル21mが右へ移動し、キャップ60上において、左側のリップ63との距離Dmが所定距離以上になると、制御装置80は、マゼンタノズル21mからインクの吐出を開始する。ここで、シアンノズル21cはキャップ60上にあるが、左側のリップ63との距離Dcが処理距離未満であるため、制御装置80はシアンノズル21cからインクを吐出させない。また、イエローノズル21yはキャップ60上にないため、制御装置80はイエローノズル21yからインクを吐出させない。
【0081】
そして、図8(b)の例のように、ヘッド20が右へ移動する。ここでは、イエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mがキャップ60上にあり、且つ、両側のリップ63との距離Dy、Dc、Dmが所定距離以上である。このため、制御装置80は、イエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mからインクを吐出させる。
【0082】
さらに、図8(c)の例のように、ヘッド20が右へ移動する。ここでは、イエローノズル21y及びシアンノズル21cがキャップ60上にあり、且つ、両側のリップ63との距離Dy、Dcが所定距離以上である。一方、マゼンタノズル21mがキャップ60上にあるが、右側のリップ63との距離Dmが所定距離未満になる。このため、制御装置80は、イエローノズル21y及びシアンノズル21cからインクを吐出させるが、マゼンタノズル21mからのインクの吐出を停止する。
【0083】
このように、制御装置80は、第1フラッシング動作において、ヘッド20を左右方向に移動させながら、キャップ60上であって、且つ、両側のリップ63との距離が所定距離以上のノズル21からインクを吐出させる。また、制御装置80は、キャップ60上に位置しないノズル21、及び、リップ63との距離が所定距離未満のノズル21からインクを吐出させない。これにより、ノズル21から吐出されたインクがリップ63に付着せずにキャップ60内に付着する。このため、キャッピング状態においてリップ63に付着したインクによってリップ63が吐出面23と密着できない事態を回避することができる。これにより、キャッピング状態において吐出面23に開口したノズル21内のインクの乾燥を低減できる。
【0084】
<変形例6>
変形例6に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例1~5において、印刷媒体Aが配置されるプラテン11と、プラテン11上の印刷媒体Aを第3方向に搬送する搬送装置30と、第3方向に対して交差する第4方向にヘッド20を移動させる第2移動装置40と、を備えている。キャップ60及びプラテン11は第4方向に並んで配置されている。キャップ60は、底面61aを有している。底面61aには、第4方向に延びると共にプラテン11から離れるに伴い深くなる第1溝51が設けられている。
【0085】
例えば、図3(a)及び図3(b)の例に示すように、キャップ60は、その上部が開口した容器形状を有し、上部開口65、キャップ空間66、底壁61、側壁62及びリップ63を有している。底壁61の底面61aは、キャップ空間66を形成する底壁61の内面であって、側壁62の下端により取り囲まれており、上部開口65と対向し、例えば、水平である。ヘッド20がキャップ60上に位置している状態では、キャップ60の底面61aはヘッド20の吐出面23に対向する。
【0086】
図9(a)及び図9(b)の例に示すように、底面61aには、複数の第1溝51が設けられている。複数の第1溝51は、前後方向に間隔を空けながら、左右方向に延びている。左右方向における第1溝51の長さG1は、前後方向における第1溝51の幅G2よりも長い。左右方向における第1溝51と側壁62との間の距離G3は、例えば、前後方向における第1溝51同士の間の距離G4よりも小さく、0であってもよい。このように、第1溝51は、底面61aにおいて側壁62又はその近くまで左右方向に長く延びている。
【0087】
第1溝51は、底面61aから下方に窪んでいる。上下方向における底面61aと第1溝51の底51aとの間の深さは、右ほど深くなっている。第1溝51の底51aは、例えば、矩形状の平面であって、右斜め下に傾斜している。左右方向においてキャップ60がプラテン11よりも右に配置されている場合、第1溝51は、プラテン11に近づくほど深さが浅くなり、プラテン11から離れるほど深さが深くなっている。
【0088】
例えば、図8(c)の例に示すように、筐体13などの障壁がキャップ60の右に配置されており、ヘッド20の右への移動が制限されている場合がある。このような場合には、第1フラッシング動作によるヘッド20からのインクの吐出量がキャップ60の左側よりも右側で少ない場合がある。このような場合であっても、第1フラッシング動作によりインクはヘッド20から底面61a上に吐出され、第1溝51に沿って右へ流れるため、インクをキャップ60の全体に亘って広げることができる。よって、第1フラッシング動作におけるインクの吐出量を少なく抑えられるため、第1フラッシング動作に起因したインク不足を回避しつつ、キャッピング状態におけるノズル21内のインクの乾燥を低減することができる。
【0089】
<変形例7>
変形例7に係る印刷装置10では、変形例6において、底面61aには、第1溝51、及び、第4方向に延びると共にプラテン11に近づくに伴い深さが深くなる第2溝52が設けられている。
【0090】
図10(a)及び図10(b)の例に示すように、底面61aには、複数の第1溝51及び複数の第2溝52が設けられている。第1溝51及び第2溝52は、前後方向において間隔を空けながら交互に並べられており、左右方向に延びている。第2溝52は、例えば、左右方向における第1溝51の中心線について第1溝51を線対称にした形状及びサイズと同一である。左右方向における第2溝52の長さG1は、前後方向における第2溝52の幅G2よりも長い。左右方向における第2溝52と側壁62との間の距離G3は、例えば、前後方向における第1溝51と第2溝52との間の距離G5よりも小さく、0であってもよい。このように、第2溝52は、底面61aにおいて側壁62又はその近くまで左右方向に長く延びている。
【0091】
第2溝52は、底面61aから下方に窪んでいる。上下方向における底面61aと第2溝52の底52aとの間の深さは、左ほど深くなっている。第2溝52の底52aは、例えば、矩形状の平面であって、左斜め下に傾斜している。左右方向においてキャップ60がプラテン11よりも右に配置されている場合、第2溝52は、プラテン11に近づくほど深さが深くなり、プラテン11から離れるほど深さが浅くなっている。
【0092】
例えば、第1フラッシング動作では、タンク12の残量に応じてインクが吐出されるノズル21が決まる。このため、キャップ60の左右方向において局部的にインクが吐出される場合がある。このような場合であっても、第1フラッシング動作によりインクは、ヘッド20から底面61a上に吐出されて、第1溝51に沿って右へ流れると共に第2溝52に沿って左へ流れるため、インクをキャップ60の全体に亘って広げることができる。よって、第1フラッシング動作におけるインクの吐出量を少なく抑えられるため、第1フラッシング動作に起因したインク不足を回避しつつ、キャッピング状態におけるノズル21内のインクの乾燥を低減することができる。
【0093】
<変形例8>
変形例8に係る印刷装置10では、変形例7において、底面61aには、第3方向に延びると共に第3方向の一方よりも他方の深さが深くなる第3溝53、及び、第3方向に延びると共に第3方向の他方よりも一方の深さが深くなる第4溝54が設けられている。
【0094】
図11の例に示すように、底面61aには、複数の第1溝51、複数の第2溝52、複数の第3溝53及び複数の第4溝54が設けられている。第3溝53及び第4溝54は、左右方向において間隔を空けながら交互に並べられており、第1溝51及び第2溝52に交差しながら前後方向に延びている。前後方向における第3溝53の長さG6は、左右方向における第3溝53の幅G7よりも長い。前後方向における第3溝53と側壁62との間の距離G8は、例えば、左右方向における第3溝53と第4溝54との間の距離G9よりも小さく、0であってもよい。このように、第3溝53は、底面61aにおいて側壁62又はその近くまで前後方向に長く延びている。第4溝54は、例えば、前後方向における第3溝53の中心線について第3溝53を線対称にした形状及びサイズと同一である。このため、第4溝54は、底面61aにおいて側壁62又はその近くまで前後方向に長く延びている。
【0095】
第3溝53は、底面61aから下方に窪んでいる。上下方向における底面61aと第3溝53の底53aとの間の深さは、第3溝53の前端が後端よりも深く、前方ほど深くなっている。第3溝53の底53aは、例えば、矩形状の平面であって、前斜め下に傾斜している。また、第4溝54は、底面61aから下方に窪んでいる。上下方向における底面61aと第4溝54の底54aとの間の深さは、第4溝54の後端が前端よりも深く、後方ほど深くなっている。第4溝54の底54aは、例えば、矩形状の平面であって、後斜め下に傾斜している。
【0096】
例えば、第1フラッシング動作では、タンク12の残量に応じてインクが吐出されるノズル21が決まる。このため、キャップ60の左右方向において局部的にインクが吐出される場合がある。このような場合であっても、図11の例に示すように、第1フラッシング動作によりインクは、ヘッド20から底面61a上に吐出され、第1溝51に沿って右へ流れると共に第2溝52に沿って左へ流れ、また、第3溝53に沿って前へ流れると共に第4溝54に沿って後へ流れる。このため、インクをキャップ60の全体に亘って広げられ、第1フラッシング動作におけるインクの吐出量を少なく抑えられる。このため、第1フラッシング動作に起因したインク不足を回避しつつ、キャッピング状態におけるノズル21内のインクの乾燥を低減することができる。
【0097】
<変形例9>
変形例9に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例1~5において、印刷媒体Aが配置されるプラテン11と、プラテン11上の印刷媒体Aを第3方向に搬送する搬送装置30と、第3方向に対して交差する第4方向にヘッド20を移動させる第2移動装置40と、を備えている。キャップ60及びプラテン11は第4方向に並んで配置されている。キャップ60には、キャップチップ64が設けられている。キャップチップ64には、第4方向に延びると共にプラテン11から離れるに伴い深くなる第5溝55が設けられている。
【0098】
図12(a)及び図12(b)の例に示すように、キャップチップ64がキャップ60内に収容されている。キャップチップ64は、例えば、平板形状であって、矩形状のチップ上面64a及びチップ下面64b、チップ上面64aの縁とチップ下面64bの縁とを繋ぐチップ側面64cを有している。チップ下面64bはキャップ60の底壁61の上面を覆っており、チップ側面64cはキャップ60の側壁62の内面に接する。これにより、キャップチップ64はキャップ60を内側から支持し、キャップ60の形状を保持している。
【0099】
キャップ60の側壁62の内面及びチップ上面64aによりキャップ空間66が取り囲まれる。チップ上面64aは、キャップ60の上部開口65と対向し、例えば、水平である。ヘッド20がキャップ60上に位置している状態では、チップ上面64aはヘッド20の吐出面23に対向する。
【0100】
図13(a)及び図13(b)の例に示すように、チップ上面64aには、複数の第5溝55が設けられている。この第5溝55は、チップ上面64aに配置されているのに対し第1溝51が底面61aに配置されており、第1溝51と配置場所が異なるが、サイズ及び形状は第1溝51と同様である。このため、複数の第5溝55は、前後方向に間隔を空けながら、チップ上面64aにおいて側壁62又はその近くまで左右方向に長く延びている。第5溝55は、その深さが左右方向におけるプラテン11から離れるほど深くなっており、その底55aが右斜め下に傾斜する平坦な傾斜面である。
【0101】
これにより、第1フラッシング動作によりインクは、ヘッド20からチップ上面64a上に吐出されて、第5溝55に沿って右へ流れるため、インクをキャップ60の全体に亘って広げることができる。よって、第1フラッシング動作におけるインクの吐出量を少なく抑えられるため、第1フラッシング動作に起因したインク不足を回避しつつ、キャッピング状態におけるノズル21内のインクの乾燥を低減することができる。
【0102】
<変形例10>
変形例10に係る印刷装置10では、変形例9において、キャップチップ64には、第5溝55、及び、第4方向に延びると共にプラテン11に近づくに伴い深さが深くなる第6溝56が設けられている。
【0103】
図14(a)及び図14(b)の例に示すように、チップ上面64aには、複数の第5溝55及び複数の第6溝56が設けられている。この第6溝56は、チップ上面64aに配置されているのに対し第2溝52が底面61aに配置されており、第2溝52と配置場所が異なるが、サイズ及び形状は第2溝52と同様である。このため、複数の第5溝55及び複数の第6溝56は、前後方向において間隔を空けながら交互に並べられており、チップ上面64aにおいて側壁62又はその近くまで左右方向に長く延びている。第6溝56は、その深さが左右方向におけるプラテン11に近づくほど深くなっており、その底56aが左斜め下に傾斜する平坦な傾斜面である。
【0104】
例えば、第1フラッシング動作によりキャップ60の左右方向において局部的に吐出され場合がある。このような場合であっても、第1フラッシング動作によりインクは、ヘッド20からチップ上面64a上に吐出され、第5溝55に沿って右へ流れると共に第6溝56に沿って左へ流れる。このため、インクをキャップ60の全体に亘って広げられ、第1フラッシング動作におけるインクの吐出量を少なく抑えられる。よって、第1フラッシング動作に起因したインク不足を回避しつつ、キャッピング状態におけるノズル21内のインクの乾燥を低減することができる。
【0105】
<変形例11>
変形例11に係る印刷装置10では、変形例10において、キャップチップ64には、第3方向に延びると共に第3方向の一方よりも他方の深さが深くなる第7溝57、及び、第3方向に延びると共に第3方向の他方よりも一方の深さが深くなる第8溝58が設けられている。
【0106】
図15の例に示すように、チップ上面64aには、複数の第5溝55、複数の第6溝56、複数の第7溝57及び複数の第8溝58が設けられている。この第7溝57は、チップ上面64aに配置されているのに対し第3溝53が底面61aに配置されており、第3溝53と配置場所が異なるが、サイズ及び形状は第3溝53と同様である。また、第8溝58は、チップ上面64aに配置されているのに対し第4溝54が底面61aに配置されており、第4溝54と配置場所が異なるが、サイズ及び形状は第4溝54と同様である。このため、第7溝57及び第8溝58は、左右方向において間隔を空けながら交互に並べられており、第5溝55及び第6溝56に交差しながらチップ上面64aにおいて側壁62又はその近くまで前後方向に延びている。第7溝57は、その深さが前方ほど深くなっており、その底57aが前斜め下に傾斜する平坦な傾斜面である。第8溝58は、その深さが後方ほど深くなっており、その底58aが後斜め下に傾斜する平坦な傾斜面である。
【0107】
例えば、第1フラッシング動作によりインクがキャップ60の左右方向において局部的に吐出される場合であっても、インクは、ヘッド20からチップ上面64a上に吐出され、第5溝55に沿って右へ流れると共に第6溝56に沿って左へ流れ、また、第7溝57に沿って前へ流れると共に第8溝58に沿って後へ流れる。このため、インクをキャップ60の全体に亘って広げられ、第1フラッシング動作におけるインクの吐出量を少なく抑えられる。このため、第1フラッシング動作に起因したインク不足を回避しつつ、キャッピング状態におけるノズル21内のインクの乾燥を低減することができる。
【0108】
<変形例12>
変形例12に係る印刷装置10は、上記実施の形態及び変形例1~11において、ヘッド20における第1ノズルの数が第2ノズルの数よりも多い場合には、制御装置80は、第1フラッシング動作において、第1タンクのインクの残量F1が所定残量Fよりも少なく、第2タンクのインクの残量F2が所定残量Fよりも多い場合でも、第2ノズルに加えて第1ノズルからインクを吐出させる。
【0109】
なお、以下では、第1ノズルがブラックノズル21kであり、第2ノズルがイエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mであり、第1タンクがブラックタンク12kであり、第2タンクがイエロータンク12y、シアンタンク12c及びマゼンタタンク12mである場合について説明する。但し、第1ノズル、第2ノズル、第1タンク及び第2タンクはこれらに限定されない。
【0110】
例えば、図16(a)及び図16(b)の例では、ヘッド20の吐出面23において、ブラックノズル21k、イエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mが開口している。ヘッド20におけるブラックノズル21kの数は、イエローノズル21yの数、シアンノズル21cの数及びマゼンタノズル21mの数のそれぞれよりも多い。
【0111】
このような印刷装置10は、図17の例のフローチャートに沿って制御装置80により制御される。この図17のフローチャートでは、ステップS12の処理が図5のフローチャートにおけるステップS6の処理とステップS7の処理の間に実行される。なお、図17のステップS1~S10の処理は、図5のステップS1~S10の処理とそれぞれ同様である。
【0112】
ステップS6の処理において、図4(b)の例のように、ブラックタンク12kにおけるインクの残量が所定残量F未満であり、その他のタンク12y、12c、12mにおけるインクの残量が所定残量F以上である場合(ステップS6:YES)、制御装置80は、ブラックノズル21kの数がその他のノズル21y、21c、21mのそれぞれの数以下か否かを判定する(ステップS12)。制御装置80は、図1の例のようにブラックノズル21kの数がその他のノズル21y、21c、21mのそれぞれの数以下であれば(ステップS12:YES)、ブラックノズル21kからインクを吐出させずにその他のノズル21y、21c、21mからインクを吐出させる第1フラッシング動作を実行する(ステップS7)。
【0113】
一方、制御装置80は、図16(a)及び図16(b)の例のように、ブラックノズル21kの数がその他のノズル21y、21c、21mのそれぞれの数よりも多ければ(ステップS12:NO)、ブラックノズル21k及びその他のノズル21y、21c、21mからインクを吐出させる第1フラッシング動作を実行する(ステップS8)。このように、ノズル21の数が多いブラックノズル21kからのインクの吐出量を補うために、ノズル21の数が少ないイエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mのインクの吐出量が極度に多くなることを防ぐことができる。よって、インク不足を抑えながらキャッピング状態でのノズル21内のインクの乾燥を低減できる。
【0114】
<変形例13>
変形例13に係る印刷装置10は、上記実施の形態及び変形例1~12において、第1ノズルの解像度が第2ノズルの解像度よりも高い場合には、制御装置80は、第1フラッシング動作において、第1タンクのインクの残量F1が所定残量Fよりも少なく、第2タンクのインクの残量F2が所定残量Fよりも多い場合でも、第2ノズルに加えて第1ノズルからインクを吐出させる。
【0115】
なお、以下では、第1ノズルがブラックノズル21kであり、第2ノズルがイエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mであり、第1タンクがブラックタンク12kであり、第2タンクがイエロータンク12y、シアンタンク12c及びマゼンタタンク12mである場合について説明する。但し、第1ノズル、第2ノズル、第1タンク及び第2タンクはこれらに限定されない。
【0116】
例えば、図16(a)の例では、ヘッド20の吐出面23において、ブラックノズル21k、イエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mが開口している。複数のブラックノズル21kが前後方向に並んでブラックノズル列を成し、複数のイエローノズル21yが前後方向に並んでイエローノズル列を成し、複数のシアンノズル21cが前後方向に並んでシアンノズル列を成し、複数のマゼンタノズル21mが前後方向に並んでマゼンタノズル列を成している。ブラックノズル列、イエローノズル列、シアンノズル列及びマゼンタノズル列はこの順で左から右に並んでいる。
【0117】
ブラックノズル列におけるブラックノズル21kの数は、イエローノズル列におけるイエローノズル21yの数、シアンノズル列におけるシアンノズル21cの数、マゼンタノズル列におけるマゼンタノズル21mの数よりも多い。イエローノズル列におけるイエローノズル21yの数、シアンノズル列におけるシアンノズル21cの数、マゼンタノズル列におけるマゼンタノズル21mの数は、互いに等しい。
【0118】
また、イエローノズル列における前後方向のイエローノズル21y同士の間の距離H2、シアンノズル列における前後方向のシアンノズル21c同士の間の距離H2、マゼンタノズル列における前後方向のマゼンタノズル21m同士の間の距離H2は、互いに等しい。ブラックノズル列における前後方向のブラックノズル21kの間の距離H1は、その他のノズル21同士の間の距離H2よりも小さい。
【0119】
このため、ブラックノズル21kの解像度は、イエローノズル21yの解像度、シアンノズル21cの解像度及びマゼンタノズル21mの解像度よりも大きい。イエローノズル21yの解像度、シアンノズル21cの解像度及びマゼンタノズル21mの解像度は互いに等しい。各ノズル21の解像度は、前後方向におけるノズル21の密度である。前後方向におけるノズル21の間の距離が大きいほど、ノズル21の密度が小さく、ノズル21の解像度が小さい。
【0120】
ブラックノズル21kは、第1ブラックノズル21k1及び第2ブラックノズル21k2を含んでいる。第1ブラックノズル21k1及び第2ブラックノズル21k2は、ブラックノズル列において前後方向に交互に並んでいる。第1ブラックノズル21k1は、イエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mと左右方向に並んでいる。第2ブラックノズル21k2は、前後方向における第1ブラックノズル21k1同士の間に配置され、前後方向のイエローノズル21y同士の間隔Jy、前後方向のシアンノズル21c同士の間隔Jc、及び、前後方向のマゼンタノズル21m同士の間隔Jmと左右方向に並んでいる。
【0121】
このような印刷装置10は、図18の例のフローチャートに沿って制御装置80により制御される。この図18のフローチャートでは、ステップS13の処理が図5のフローチャートにおけるステップS6の処理とステップS7の処理の間に実行される。なお、図17のステップS1~S10の処理は、図5のステップS1~S10の処理とそれぞれ同様である。
【0122】
ステップS6の処理において、ブラックタンク12kにおけるインクの残量が所定残量F未満であり、その他のタンク12y、12c、12mにおけるインクの残量が所定残量F以上である場合(ステップS6:YES)。制御装置80は、図1の例のようにブラックノズル21kの解像度がその他のノズル21y、21c、21mの解像度以下か否かを判定する(ステップS13)。制御装置80は、ブラックノズル21kの解像度がその他のノズル21y、21c、21mの解像度以下であれば(ステップS13:YES)、ブラックノズル21kからインクを吐出させずにその他のノズル21y、21c、21mからインクを吐出させる第1フラッシング動作を実行する(ステップS7)。
【0123】
一方、制御装置80は、図16(a)の例のようにブラックノズル21kの解像度がその他のノズル21y、21c、21mの解像度よりも高ければ(ステップS13:NO)、ブラックノズル21k及びその他のノズル21y、21c、21mからインクを吐出させる第1フラッシング動作を実行する(ステップS8)。このように、解像度が低いイエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mに加えて、解像度が高いブラックノズル21kのブラックノズル21kからインクを吐出させることにより、インクをキャップ60において一層均一に付着させることができる。よって、インク不足を抑えながらキャッピング状態でのノズル21内のインクの乾燥を低減できる。
【0124】
なお、上記構成では、図16(a)の例では、ブラックノズル列は、一列に並ぶ複数のブラックノズル21kにより構成されていたが、複数列に並ぶ複数のブラックノズル21kにより構成されてもよい。例えば、図16(b)の例では、ブラックノズル列は、左右方向において互いに隣接する第1列及び第2列に並ぶ複数のブラックノズル21kにより構成されていてもよい。
【0125】
この場合、第1列では複数の第1ブラックノズル21k1が前後方向に並び、第2列では複数の第2ブラックノズル21k2が前後方向に並ぶ。ブラックノズル列において、第1ブラックノズル21k1及び第2ブラックノズル21k2は、前後方向及び左右方向において互い違いに配置されている。前後方向において互いに隣接している第1ブラックノズル21k1と第2ブラックノズル21k2との間の距離H1は、他のノズル21同士の間の距離H2よりも狭い。このため、ブラックノズル21kの解像度は、イエローノズル21yの解像度、シアンノズル21cの解像度及びマゼンタノズル21mの解像度よりも大きい。
【0126】
<変形例14>
変形例14に係る印刷装置10は、変形例13において、第2ノズルは、第1方向において間隔を空けながら並んでいる。第1ノズルは、第1方向に対して交差する第2方向において第2ノズルと並ぶ第3ノズル、及び、第2方向において間隔と並ぶ第4ノズルを有している。制御装置80は、第1フラッシング動作において、第1タンクのインクの残量F1が所定残量Fよりも少なく、第2タンクのインクの残量F2が所定残量Fよりも多い場合でも、第3ノズルからインクを吐出させずに、第2ノズル及び第4ノズルからインクを吐出させる。
【0127】
なお、以下では、第1ノズルがブラックノズル21kであり、第2ノズルがイエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mであり、第3ノズルが第1ブラックノズル21k1であり、第4ノズルが第2ブラックノズル21k2である場合について説明する。但し、第1ノズル、第2ノズル、第3ノズル及び第4ノズルはこれらに限定されない。
【0128】
例えば、図16(a)の例では、イエローノズル列において複数のイエローノズル21yは間隔Jyを開けながら前後方向に並んでいる。シアンノズル列において複数のシアンノズル21cは間隔Jcを開けながら前後方向に並んでいる。マゼンタノズル列において複数のマゼンタノズル21mは間隔Jmを開けながら前後方向に並んでいる。この前後方向において、イエローノズル21y同士の間隔Jの距離H2、シアンノズル21c同士の間隔Jの距離H2、及び、マゼンタノズル21m同士の間隔Jの距離H2は互いに等しい。
【0129】
ブラックノズル列において複数のブラックノズル21kは間隔Jkを開けながら前後方向に並んでいる。この前後方向において、ブラックノズル21k同士の間隔Jkの距離H1は、その他の間隔Jy、Jc、Jmの距離H2よりも小さい。ブラックノズル21kのうち、第1ブラックノズル21k1は、イエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mと左右方向に並び、第2ブラックノズル21k2は、間隔Jy、Jc、Jmと左右方向に並ぶ。
【0130】
このような印刷装置10において、図18のステップS13の処理において、制御装置80は、図16(a)の例のようにブラックノズル21kの解像度がその他のノズル21y、21c、21mの解像度よりも高ければ(ステップS13:NO)、第1フラッシング動作を実行する(ステップS8)。この第1フラッシング動作において、制御装置80は、第1ブラックノズル21k1からインクを吐出させずに、第2ブラックノズル21k2及びその他のノズル21y、21c、21mからインクを吐出させる。これにより、前後方向においてノズル21同士の間隔に第2ブラックノズル21k2からのインクが吐出されるため、インクの残量Fkが少ないブラックインクの吐出量を少なく抑えながら、インクをキャップ60において一層均一に付着させることができる。よって、インク不足を抑えながらキャッピング状態でのノズル21内のインクの乾燥を低減できる。
【0131】
なお、上記構成では、図16(a)の例では、ブラックノズル列は、一列に並ぶ複数のブラックノズル21kにより構成されていたが、図16(b)の例のように複数列に並ぶ複数のブラックノズル21kにより構成されてもよい。このブラックノズル列において第1ブラックノズル21k1及び第2ブラックノズル21k2が互い違いに配置されている。この場合にも、第1フラッシング動作において、制御装置80は、第1ブラックノズル21k1からインクを吐出させずに、第2ブラックノズル21k2及びその他のノズル21y、21c、21mからインクを吐出させる。これにより、インク不足を抑えながらキャッピング状態でのノズル21内のインクの乾燥を低減できる。
【0132】
また、変形例12~14に係る印刷装置10において、図19の例に示すように、複数の第1溝51、複数の第2溝52、複数の第3溝53及び複数の第4溝54がキャップ60に設けられてもよい。この場合、キャップ60の底面61aは第1領域K1及び第2領域K2を有しており、第1領域K1に第3溝53及び第4溝54が設けられずに、第1領域K1に第3溝53及び第4溝54が設けられる。第1領域K1及び第2領域K2は左右方向に並んで配置される。第1領域K1は、図16(a)及び図16(b)の例に示す吐出面23におけるノズル21の解像度が高いブラックノズル列に対向している。第2領域K2は、図16(a)及び図16(b)の例に示す吐出面23におけるノズル21の解像度が低いイエローノズル列、シアンノズル列及びマゼンタノズル列に対向している。このため、低い解像度のイエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mから第2領域K2に吐出されるインクが少なくても、インクは第3溝53及び第4溝54に沿って流れるため、インクの吐出量を少なく抑えながらインクを広範囲に広めることができる。
【0133】
また、変形例12~14に係る印刷装置10において、図20の例に示すように、複数の第5溝55、複数の第6溝56、複数の第7溝57及び複数の第8溝58がキャップチップ64に設けられてもよい。この場合、キャップチップ64のチップ上面64aは第3領域K3及び第4領域K4を有しており、第3領域K3に第7溝57及び第8溝58が設けられずに、第4領域K4に第7溝57及び第8溝58が設けられる。第3領域K3及び第4領域K4は左右方向に並んで配置される。第3領域K3は、図16(a)及び図16(b)の例に示す吐出面23におけるノズル21の解像度が高いブラックノズル列に対向している。第4領域K4は、図16(a)及び図16(b)の例に示す吐出面23におけるノズル21の解像度が低いイエローノズル列、シアンノズル列及びマゼンタノズル列に対向している。このため、低い解像度のイエローノズル21y、シアンノズル21c及びマゼンタノズル21mから第4領域K4に吐出されるインクが少なくても、インクは第3溝53及び第4溝54に沿って流れるため、インクの吐出量を少なく抑えながらインクを広範囲に広めることができる。
【0134】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、インク不足を抑えながらキャッピング状態でのノズル内のインクの乾燥を低減できる印刷装置、印刷装置の制御方法及びプログラムに適用することができる。
【符号の説明】
【0136】
10 :印刷装置
11 :プラテン
12 :タンク
20 :ヘッド
21 :ノズル
22 :駆動素子
23 :吐出面
30 :搬送装置
40 :第2移動装置
51 :第1溝
52 :第2溝
53 :第3溝
54 :第4溝
55 :第5溝
56 :第6溝
57 :第7溝
58 :第8溝
60 :キャップ
61a :底面
63 :リップ
64 :キャップチップ
70 :第1移動装置
80 :制御装置
図1
図2
図3
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