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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033445
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】決定装置、決定方法、および通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/04 20230101AFI20240306BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20240306BHJP
【FI】
H04W72/04
H04W84/10 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137021
(22)【出願日】2022-08-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、車載ハーネスの軽量化を実現する有線/無線連携通信技術の研究開発委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥原 誠
(72)【発明者】
【氏名】栗岡 伸行
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067DD34
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】通信に用いるプリアンブルを適切に設定でき、安定した通信を行うことができる決定装置、決定方法および通信装置を提供すること。
【解決手段】本願に係る決定装置は、プリアンブルを用いた通信において、通信対象装置が通信に使用するプリアンブルを予め定められたプリアンブルの中から選択して決定する決定装置であって、コントローラを有する。コントローラは、通信対象装置の周囲で実行中の通信に使用されている使用状態プリアンブルの情報を収集し、収集した使用状態プリアンブルの情報に基づいて、使用状態プリアンブルを検出し、検出した使用状態プリアンブルに基づいて通信対象装置の通信に使用するプリアンブルを決定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリアンブルを用いた通信において、通信対象装置が通信に使用するプリアンブルを予め定められたプリアンブルの中から選択して決定する決定装置であって、コントローラを有し、
前記コントローラは、
通信対象装置の周囲で実行中の通信に使用されている使用状態プリアンブルの情報を収集し、収集した前記使用状態プリアンブルの情報に基づいて、使用状態プリアンブルを検出し、前記検出した使用状態プリアンブルに基づいて通信対象装置の通信に使用するプリアンブルを決定する
決定装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記使用状態プリアンブルとは異なる種別のプリアンブルを通信対象装置の通信に使用するプリアンブルとして決定する
請求項1に記載の決定装置。
【請求項3】
プリアンブルは、パルス繰り返し周波数の異なる高コードプリアンブルグループと低コードプリアンブルグループとに層別され、
前記コントローラは、
前記使用状態プリアンブルの属するグループと、前記使用状態プリアンブルとに基づいて、通信対象装置の通信に使用するプリアンブルを決定する
請求項1に記載の決定装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
使用状態プリアンブルが存在しない場合、前記高コードプリアンブルグループに属する種別のプリアンブルの中から通信対象装置の通信に使用するプリアンブルを決定する
請求項3に記載の決定装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
不使用状態の前記高コードプリアンブルグループに属する種別のプリアンブルが存在する場合、不使用状態で前記高コードプリアンブルグループに属する種別のプリアンブルを通信対象装置の通信に使用するプリアンブルとして決定する
請求項3に記載の決定装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
不使用状態の前記高コードプリアンブルグループに属する種別のプリアンブルが存在せず、使用状態の前記低コードプリアンブルグループに属する種別のプリアンブルが存在する場合、前記高コードプリアンブルグループに属する種別の各プリアンブルが使用されている通信数を計数し、計数した前記通信数が最も少ないプリアンブルを通信対象装置の通信に使用するプリアンブルとして決定する
請求項3に記載の決定装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
通信対象装置の周囲で実行中の通信の重要度を示す情報を収集し、収集した前記重要度に基づいて通信対象装置の通信に使用するプリアンブルを決定する
請求項1に記載の決定装置。
【請求項8】
前記コントローラは、
不使用状態のプリアンブルが存在しない場合、前記重要度が通信対象装置の重要度よりも低い通信装置に対して前記プリアンブルの変更を要求する
請求項7に記載の決定装置。
【請求項9】
プリアンブルを用いた通信において、通信対象装置が通信に使用するプリアンブルを予め定められた規定プリアンブルの中から選択して決定する決定方法であって、
通信対象装置の周囲で実行中の通信に使用されている使用状態プリアンブルの情報を収集し、収集した前記使用状態プリアンブルの情報に基づいて、使用状態プリアンブルを検出し、前記検出した使用状態プリアンブルに基づいて通信対象装置の通信に使用するプリアンブルを決定する
決定方法。
【請求項10】
プリアンブルコードを用いた通信を行う通信装置であって、通信部と、コントローラを有し、
前記コントローラは、
周囲で実行中の通信に使用されている使用状態プリアンブルの情報を収集し、収集した前記使用状態プリアンブルの情報に基づいて、使用状態プリアンブルを検出し、前記検出した使用状態プリアンブルに基づいて、予め定められた規定プリアンブルの中から、通信に使用するプリアンブルを選択して決定し、前記決定したプリアンブルを用いた通信を行うように前記通信部に通信指示を行い、
前記通信部は、
前記コントローラからの通信指示に基づくプリアンブルを用いた通信を行う
通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリアンブルを用いた通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信分野においては、配線が不要である等といった設置面での優位性から無線通信が増加しつつある。例えば、8GHz帯の電波を使用するUWB(Ultra Wide Band)通信は、Wi-Fi(登録商標)や、スマートフォン等の携帯端末で使用される電波等との電波干渉が少なく、かつ、500MHzという広帯域のため、透過性がよく、その用途が広がっている。また、UWB通信は、金属の狭空間であり配線が多い車内でも通信が成立しやすいため、車載機器の通信手段として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-200122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、UWB通信が広く普及した場合、車内等の狭空間においては、UWB通信を行う機器同士での電波干渉が生じ通信が不安定となるおそれがある。この電波干渉の問題は、UWBに限らず、複数の機器が同じ周波数帯の電波を使用して通信する場合でも同様に生じるおそれがある。
【0005】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、安定した通信を行うことができる決定装置、決定方法、および通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る決定装置は、プリアンブルを用いた通信において、通信対象装置が通信に使用するプリアンブルを予め定められたプリアンブルの中から選択して決定する決定装置であって、コントローラを有する。前記コントローラは、通信対象装置の周囲で実行中の通信に使用されている使用状態プリアンブルの情報を収集し、収集した前記使用状態プリアンブルの情報に基づいて、使用状態プリアンブルを検出し、前記検出した使用状態プリアンブルに基づいて通信対象装置の通信に使用するプリアンブルを決定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通信に用いるプリアンブルを適切に設定でき、安定した通信を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る通信システムの概要を示す図である。
図2図2は、通信システムで使用される通信方式(UWB)の主要特性を示す図である。
図3図3は、UWB通信装置のブロック図である。
図4図4は、機器情報の一例を示す図である。
図5図5は、UWB通信に用いられるフレームフォーマットを示す図である。
図6図6は、2つのUWB通信が同時に行われた場合における、各UWB通信が通信に使用したプリアンブルの種別の各組合せの通信成功率(実験結果)を示す図である。
図7図7は、図6に示した実験結果の考察結果を示す図である。
図8図8は、通信に使用するプリアンブルのプリアンブルコードを決定するためのプリアンブルコード決定処理用の決定処理情報を示す図である。
図9図9は、スレーブ機のカテゴリレベルに基づくUWB通信に使用するプリアンブルの変更動作例を説明する図である。
図10図10は、プリアンブルの変更時のマスターECUとスレーブ機の動作の流れを説明するシーケンス図である。
図11図11は、プリアンブルコードの決定処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願に係る決定装置、決定方法、および通信装置を実現する一実施形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る決定装置および決定方法が限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0010】
まず、図1および図2を用いて、実施形態に係る通信システムの概要について説明する。図1は、実施形態に係る通信システムの概要を示す図である。図2は、通信システムで使用される通信方式(UWB)の主要特性を示す図(表)である。
【0011】
近年、UWB通信が日本の屋内外で使用可能となり、Wi-Fi(登録商標)や、スマートフォン等の携帯端末で使用される電波等との電波干渉が少なく、かつ、使用周波数が広帯域で透過性がよい周波数帯であるため、その用途が広がってきている。UWB通信は、金属の狭空間であり配線が多い車内でも通信が成立しやすいため、特に車載機器の通信手段として期待されている。
【0012】
図1では、UWB通信を利用したシステムの一例として、車両Cに搭載されたスレーブ機1a~1dと、マスターECU100とがUWB通信により無線通信を行うことで、マスターECU100がスレーブ機1a~1dを制御する車両制御システムS(以下、通信システムS)の例を示している。具体的には、スレーブ機1a~1dは、自身が備えるセンサが検出したセンサ値等を通信によりマスターECU100へ送信したり、マスターECU100から送信される制御信号に基づいて、自身が備えるアクチュエータを制御したりする。
【0013】
例えば、マスターECU100は各車載装置を統合的連携に制御するセンター装置のECUで、スレーブ機1aは車室内の空調を行うエアコン装置、またスレーブ機1bは道路案内を行うナビゲーション装置である。そして、エアコン装置は内気・外気循環の状態信号をセンター装置にUWB通信で送信し、またナビゲーション装置はトンネル内走行状態をセンター装置にUWB通信で送信する。
【0014】
センター装置はUWB通信で受信したエアコン装置の内気・外気循環の状態情報と、ナビゲーション装置からのトンネル内走行状態情報に基づきエアコン装置の内気・外気循環の切替制御信号を生成し、当該切替制御信号をエアコン装置にUWB通信で送信する。これにより、センター装置はエアコン装置を車両の各種状態に応じた動作に制御することができる。
【0015】
このような制御状態において、図1の通信システムSでは、スレーブ機1a~1dと、マスターECU100とがUWB通信によりデータ通信を行っている。
【0016】
また、図1では、車両Cにおける通信システムSの通信領域に、乗員であるユーザが所持する(車内に持ち込んだ)端末装置200と端末子機210とがUWB通信により無線通信を行う場面例を示している。例えば、端末装置200は、UWB通信により端末子機210の位置を検出し、端末装置200の画面に端末子機210の位置を表示するアプリケーションプログラムを実行している。
【0017】
図1に示した例において、複数のUWB通信が同時に実行される場面では、つまりマスターECU100とその通信対象装置(スレーブ機1a~1dのいずれか)間のUWB通信と、端末装置200と端末子機210間のUWB通信とが同時に行われる場合に、複数の機器から同一周波数帯(例えば、8GHz帯)の電波が送信されることで電波干渉が生じるおそれがある。
【0018】
この場合、マスターECU100とその通信対象装置間のUWB通信電波に対して、端末装置200と端末子機210のUWB通信電波である妨害波が電波干渉を起こし、マスターECU100とその通信対象装置間の通信ができなくなるおそれがある。
【0019】
図2は、チャンネル9のUWB通信の概要を示す通信特性表である。図2に示すように、チャンネル9は、中心周波数7987.2MHz、帯域幅499.2MHz、6種のプリアンブルコード(3、4、9、10、11、12)のプリアンブルを選択使用可能なUWB通信である。
【0020】
プリアンブルコードのうち、コード3およびコード4のプリアンブルは、16PRF(Pulse Repletion Freqency:パルス繰り返し周波数)の低コードプリアンブルグループであり、コード9、コード10、コード11およびコード12の4つのプリアンブルは、64PRFの高コードプリアンブルグループである。そして、64PRFのコード9、コード10、コード11およびコード12の各プリアンブルの通信は、16PRFのコード3およびコード4の各プリアンブルの通信に比べて、コード長(長い方が電波干渉から外れる部分が生じやすく、プリアンブルの所定データパターンを検出し易い)やPRF値の関係で電波干渉に強く、当該64PRFのプリアンブルの電波の受信が優先される(電波干渉時に通信が成功し易い)。
【0021】
つまり、UWB通信では、コード9、コード10、コード11またはコード12のいずれかのプリアンブルを用いた通信と、コード3またはコード4のいずれかのプリアンブルを用いた通信とが干渉した場合、コード9、コード10、コード11およびコード12のいずれかのプリアンブルを用いた通信が成功し易いことになる。なお、以下では、コード9、コード10、コード11およびコード12を高コードと称し、コード3およびコード4を低コードと称する場合がある。
【0022】
なお、低コードのプリアンブルは高コードのプリアンブルよりデータ量(プリアンブル自体の通信時間)が大きいことから、通信速度の面では、低コードのプリアンブルを用いた通信の方が有利(高速)となる。
【0023】
また、同時間帯に通信が複数存在する場合、お互いの電波干渉により通信が困難になる。しかし、この状況で各通信が使用しているプリアンブルが異なる場合は、通信タイミングの少しのズレによりプリアンブルが部分的に認識できた場合は、以降の同期処理等の通信確立処理が可能となり、本体データの受信等が可能となる場合がある。これに対して、この状況で各通信が使用しているプリアンブルが同じ場合は、通信タイミングの少しのズレによりプリアンブルが部分的に認識できたとしても、どちらの通信に対応するものか判別できず、以降の同期処理等の通信確立処理が困難となる。
【0024】
また、プリアンブルを認識できて同期処理等の通信確立処理が完了した通信は、データ本体側の冗長性機能により電波干渉に耐性がある。つまり、プリアンブルを用いた通信において、先行して開始された通信は、遅れて開始された通信に対して優先的に通信できる特性がある。
【0025】
そこで、実施形態に係る通信システムでは、これらのプリアンブルを用いた通信の特性を利用して、安定した通信を行うことができる工夫を凝らしている。
【0026】
具体的には、実施形態に係る通信システムSでは、通信システムSにおける通信において適切なプリアンブルコードのプリアンブルを選択設定して、無線干渉による通信不能を抑制し、安定した通信を確保している。
【0027】
以下に通信システムSにおける、通信動作の概要を説明する。なお、マスターECU100およびスレーブ機1a~1dは、通信状況に応じてプリアンブルコードを選択設定する(結果、UWB通信に使用するプリアンブルを決定することになる)決定装置を内蔵しているものとするが、マスターECU100およびスレーブ機1a~1dのいずれかが当該決定装置を内蔵してもよい。
【0028】
また、図1に示した例では、端末装置200および端末子機210は当該決定装置を内蔵していないものとする。そして、スレーブ機1aがマスターECU100と通信を行う場合について説明するが、スレーブ機1b~1dとマスターECU100、あるいはスレーブ機1a~1d間で通信を行う場合も同様の動作となる。
【0029】
具体的には、スレーブ機1aは、マスターECU100とのUWB通信を行う際に、スレーブ機1aの周囲(UWB通信の電波を受信可能な位置)に存在する通信装置(図1の場合、端末子機210)から送信される電波、つまりスレーブ機1aが受信可能な(検出している)電波を受信する。
【0030】
そして、スレーブ機1aは、受信した電波における信号のプリアンブルパターンを解析し、使用されているプリアンブルコードの情報を抽出し記憶する(結果、プリアンブルの種別を記憶することになる)。つまり、スレーブ機1aは、周囲で実行中の通信に使用されている使用状態プリアンブルの情報を収集する。スレーブ機1aは、その周囲の電波におけるプリアンブルのプリアンブルコードを予め定めた所定時間収集した後に、収集したプリアンブルコードに基づいて、使用状態プリアンブルを検出し、検出した使用状態プリアンブルに基づいてスレーブ機1aが通信する際に使用するプリアンブルコードを決定する。
【0031】
図1に示す例では、スレーブ機1aは、端末子機210がUWB通信で使用中のプリアンブルのプリアンブルコード9が収集(検出)されているため、スレーブ機1aが使用するプリアンブルコードとして、プリアンブルコード9以外の高コードのプリアンブルコード、例えばプリアンブルコード10をUWB通信で使用するプリアンブルコードとして決定する。そして、スレーブ機1aは、この周囲の通信装置が使用していないプリアンブルコード(例えば、プリアンブルコード10)のプリアンブルを使用して、UWB通信を行う。なお、決定したプリアンブルコードは、スレーブ機1aからマスターECU100へ電波を送信する場合と、マスターECU100からスレーブ機1aへ電波を送信する場合との両方で使用される。なお、UWB通信で使用するプリアンブルのプリアンブルコードの決定方法の詳細については図8で後述する。
【0032】
このように、実施形態に係る通信システムSでは、周囲(干渉の影響がある範囲)の他通信機器のUWB通信で使用中のプリアンブルの使用を避けて対象装置とのUWB通信を行うことで、UWB通信が重複した(干渉波が存在する)場合であっても、電波干渉によりUWB通信が不安定となることを抑制できる。すなわち、実施形態に係る通信システムSによれば、安定したUWB通信を行うことができる。
【0033】
なお、図1では、端末装置200および端末子機210のUWB通信による電波干渉に対する動作例を説明したが、他のスレーブ機1b~1dのUWB通信による電波干渉に対しても、スレーブ機1aは上述の動作と同様の動作(スレーブ機1b~1dと異なるプリアンブルを使用)を行うことにより、同様の効果を得ることができる。また、スレーブ機1b~1dも、自己のUWB通信の際に上述のスレーブ機1aと同様の動作(他の装置間(端末装置200と端末子機210間等)、および他のスレーブ機1xと異なるプリアンブルを使用)を行うことにより、同様の効果を得ることができる。
【0034】
次に、図3を用いて、実施形態に係る決定装置を内蔵したUWB通信装置(スレーブ機1a~1d、マスターECU100)1の構成例について説明する。図3は、UWB通信装置1のブロック図である。なお、図3では、UWB通信装置1がスレーブ機1(1a~1d)であり、かつ通信対象装置がマスターECU100である場合を例に挙げて説明するが、UWB通信装置1また対象装置がマスターECU100や、端末装置200、端末子機210であってもよい。図3に示すように、実施形態に係るUWB通信装置1は、通信部2と、記憶部3と、制御部4とを備える。
【0035】
通信部2は、マスターECU100等の通信対象装置とUWB通信を行うもので、UWB通信機、たとえば、UWB通信インターフェイス(UWB通信回路)が搭載されたNIC(Network Interface Card)等によって実現される。
【0036】
記憶部3は、制御部4が実行するプログラムで使用する各種データ等を記憶するもので、たとえば、RAM、ROM、不揮発性メモリやフラッシュメモリ、ハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される記憶部である。そして、UWB通信で用いるプリアンブルのプリアンブルコードを決定するために、記憶部3は、機器情報記憶部31に機器情報D31を記憶する。また、記憶部3は、決定処理情報記憶部32に決定処理情報D32を記憶する。
【0037】
機器情報D31は、UWB通信装置1の周囲に存在するUWB通信を行っている通信装置に関する情報である。機器情報D31は、UWB通信装置1がUWB通信を行っている通信装置を検出して(UWB通信電波を受信する)都度更新される。図4は、機器情報D31の一例を示す図である。図4に示すように、機器情報D31は、「機器ID」、「プリアンブルコード」および「カテゴリレベル」の情報を含む。
【0038】
「機器ID」は、通信装置を識別する識別情報であり、通信装置から受信した電波を解析して抽出(ヘッダ信号に含まれる送信元の識別情報を抽出)した送信元の機器の識別情報である。「プリアンブルコード」は、通信装置から受信した電波を解析(プリアンブルの信号パターンを認識し、各プリアンブルの信号パターンと比較して、該当のプリアンブルコードを判別)して抽出したプリアンブルの識別情報であるプリアンブルコードの情報である。「カテゴリレベル」は、通信装置が行う通信の重要度を示す情報であり、例えば、通信装置から受信した電波を解析して抽出(ヘッダ信号に含まれるカテゴリレベル情報を抽出。なお、この場合、ヘッダ信号にカテゴリレベル情報を付加することを規定しておく必要がある)する。なお、図4では、カテゴリレベル「0」が「1」よりも重要度が高いこととする。また、カテゴリレベル情報については、通信データ本体にカテゴリレベル情報を付加する方法や、機器種別(ヘッダ信号や通信データ本体に機器種別情報を含ませておき、受信した電波を解析した認識する)からカテゴリレベルをテーブルデータ(機器種別とカテゴリレベルの対照データ)に基づき判断する方法等により、得ることができる。
【0039】
図3の説明に戻り、制御部4について説明する。制御部4は、所謂コントローラで、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって機能する。
【0040】
制御部4は、収集部41、決定部42および設定部43を備える。
【0041】
収集部41は、UWB通信装置1の周囲に存在する通信装置が使用するプリアンブルのプリアンブルコードの情報を収集する。まず、収集部41は、UWB通信を受信するUWB電波受信モードに移行する。例えば、UWB通信の周波数帯域である8GHz帯の電波を受信し、データ復号処理を行う電波受信モードに移行する。電波受信モードへの移行は、例えば、UWB通信装置1の起動時や、起動から予め定めた所定時間毎、ユーザの操作によるモード移行指示があった場合等に移行する。
【0042】
電波受信モードでは、マスターECU100等との通信は行わず、電波の受信、一部データの復号等を行う。収集部41は、電波受信モードへ移行後、UWB通信の電波を監視し、UWB通信の電波を受信する都度、受信電波を解析し、プリアンブルのプリアンブルコードやカテゴリレベルを認識する。
【0043】
ここで、図5を用いてUWB通信に用いられるフレームフォーマットについて説明する。図5は、UWB通信に用いられるフレームフォーマットを示す図である。図5に示すように、UWB通信のフレームフォーマットFは、プリアンブルを先頭に、SFD(Start Frame Delimiter)、PHR(PHY Header)、データ本体(プリアンブル、SFD、PHRとの違いを分かりやすくするためデータ本体と称する)が順に繋がる構造を有する。
【0044】
プリアンブルは、デジタル通信で受信側に「これからデータが送られてくる」ことを知らせるためにデータ本体に先立って送信される所定パターンのビット列である。これらプリアンブルには複数のパターンが存在し、プリアンブルコードは、これらプリアンブルを識別するためのコードである。収集部41は、受信した電波のフレームにおける先頭のプリアンブルのビット列を解析してプリアンブルコードを抽出する。
【0045】
SFDは、フレームにおけるデータの始まりを合図するための特定パターンのビット列である。PHRは、パケットの解読に必要な情報が含まれる。例えば、PHRは、通信相手のアドレスや、後に繋がるデータのデータ長の情報等が含まれる。
【0046】
データ本体は、通信相手へ送信すべき情報の本体で、伝達すべき実際のデータが含まれる。例えば、データ本体は、フレームの受信先のID情報や、送信元のID情報、UWB通信装置1が備えるセンサが検出したセンサ値、UWB通信装置1の制御対象であるアクチュエータの動作状態、カテゴリレベル等の情報が含まれる。
【0047】
そして、収集部41は、受信した電波のデータ本体を解析してカテゴリレベルと、送信元の識別情報を抽出する。収集部41は、抽出した送信元識別情報、プリアンブルコードおよびカテゴリレベルを関連付けて、機器情報D31として記憶部3に記憶する。つまり、機器情報記憶部31に抽出した送信元識別情報のデータレコードを生成し、当該データレコードに対応するプリアンブルコードおよびカテゴリレベルを記憶する。なお、既に機器情報記憶部31に同じ送信元識別情報のレコードがある場合は、新たに抽出された同じ送信元識別情報におけるプリアンブルコードおよびカテゴリレベルで当該レコードを書き換えることになる。
【0048】
また、UWB通信装置1が通信に使用するプリアンブルを決定する処理には、送信元の識別情報を用いない方法が可能であるので、収集した情報を機器情報記憶部31に記憶する際、機器情報記憶部31における機器IDのデータは、決定装置が適当に作成してもよい。なお、この方法では、1つのUWB電波受信モード期間において、プリアンブルを変更した通信機器がある場合に、未使用のプリアンブルが使用中と判定されることになる欠点がある。しかし、その頻度は少ないと考えられ、またUWB電波受信モード期間長の適度な設定により影響を十分に抑えることができる。
【0049】
収集部41は、電波受信モードに移行後、予め定めた所定時間が経過した場合、電波受信モードから通常モード(通信要求に応じてマスターECU100等との通信を行うモード)に移行する。
【0050】
なお、収集部41は、自己のUWB通信装置1の周辺のUWB電波状況の情報だけでなく、通信相手先となるUWB通信装置(他のスレーブ機1x、マスターECU100)の周辺のUWB電波状況の情報も収集しても良い。この場合、通信相手先となるUWB通信装置との通信(この際は、その時に使用しているプリアンブルを使用)により、各通信装置のUWB電波状況の情報を収集する。なお、各通信装置は、上述説明と同様の方法で、各通信装置における収集部41がUWB電波状況の情報を収集することになる。
【0051】
決定部42は、収集部41が電波受信モード中に収集した周囲機器で使用状態にあるプリアンブルのプリアンブルコードに基づいて、UWB通信装置1が通信に使用するプリアンブルのプリアンブルコードを決定する。ここで、図6図8を用いて、プリアンブルコードの決定方法について説明する。
【0052】
図6は、2つのUWB通信が同時に行われた場合における、各UWB通信が通信に使用したプリアンブルの種別の各組合せの通信成功率(実験結果)を示す図である。図7は、図6に示した実験結果の考察結果を示す表である。
【0053】
図6の実験結果に基づき、図7の考察結果の表で示されるように、通信成功率の傾向には4つのパターンがあると考えられる。
【0054】
(1)のパターンは、各UWB通信におけるプリアンブルが同一である場合であり、この場合、第1通信および第2通信のどちらの通信も失敗する可能性が高い。
【0055】
また、(2)のパターンは、各UWB通信におけるプリアンブルが低コードの異なったプリアンブルである場合であり、この場合、第1通信および第2通信のどちらの通信も成功する可能性が高い。
【0056】
また、(3)のパターンは、各UWB通信におけるプリアンブルが、一方は高コードのプリアンブル、他方は低コードのプリアンブルである場合であり、この場合、高コードのプリアンブルを使用した通信が成功する可能性が高い。
【0057】
また、(4)のパターンは、各UWB通信におけるプリアンブルが高コードの異なったプリアンブルである場合であり、この場合、第1通信および第2通信のどちらの通信も成功する可能性が高い。
【0058】
図8は、通信に使用するプリアンブルのプリアンブルコードを決定するためのプリアンブルコード決定処理用の決定処理情報D32で、図6および図7で示されたUWB通信に使用するプリアンブルに基づく通信成功率の傾向に基づき予め作成され、記憶部3に記憶される。そして、決定部42は、この決定処理情報D32に従って、UWB通信装置1がUWB通信に使用するプリアンブルのプリアンブルコードを決定する。
【0059】
図8に示す決定処理情報D32は、周囲で行われている通信の数と、周囲の通信で使用されているプリアンブルの種類(使用プリアンブル状況)、周囲で行われている通信の状況(通信数と使用されているプリアンブルの種類)に対して使用するのに適したプリアンブルのプリアンブルコード(好適プリアンブルコード)の項目の情報を含む。
【0060】
具体的には、決定部42は、機器情報D31のデータに基づき周囲で行われている通信において使用されているプリアンブルの種類(プリアンブルコード種)の数(以降、使用プリアンブル種類数と称する)と使用されているプリアンブルの種類(プリアンブルコード種)の内訳を集計、集約して、周囲で行われている通信の状況を算出する。そして、算出した通信の状況で決定処理情報D32を参照して、使用するのに適したプリアンブルのプリアンブルコードを決定する。
【0061】
例えば、図8に示す決定処理情報D32によれば、決定部42は、使用プリアンブル種類数がゼロの場合(使用状態プリアンブルが存在しない場合)、高コードのプリアンブルコードであるコード9~12のいずれかをUWB通信装置1が通信に使用するプリアンブルのプリアンブルコードとして決定する。
【0062】
高コードのプリアンブルは、低コードのプリアンブルより干渉に強いので、高コードのプリアンブルを使用した通信中に、低コードのプリアンブルを使用した他通信、あるいは高コードのプリアンブルを使用した他通信が新たに発生した場合でも、電波干渉による通信障害を受けにくいメリットがある。そこで、本例の状況では、周囲に他通信がなく、高コードのプリアンブルの使用に支障は無いので、高コードのプリアンブルを使用することで、安定した通信を実現している。
【0063】
また、決定部42は、使用プリアンブル種類数が1で、かつ使用プリアンブル種類数が低コードのプリアンブルであった場合、高コードのプリアンブルコードであるコード9~12のプリアンブルのいずれか、もしくは別の低コードのプリアンブルを、UWB通信装置1が通信に使用するプリアンブルのプリアンブルコードとして決定する。つまり、決定部42は、不使用状態の高コードプリアンブルグループに属する種別のプリアンブルが存在する場合、不使用状態で高コードプリアンブルグループに属する種別のプリアンブルをUWB通信装置1の通信に使用するプリアンブルとして決定する。これにより、UWB通信装置1のUWB通信に影響を与える周囲の通信が低コードのプリアンブルを使用している場合、UWB通信装置1は当該周囲の通信の影響を受けにくい、使用中でない低コードのプリアンブルあるいは、高コードのプリアンブルを用いたUWB通信を行うことになるので、当該UWB通信は電波干渉による通信障害を受けにくい通信となる。
【0064】
また、決定部42は、使用プリアンブル種類数が1で、かつ使用プリアンブルが高コードのプリアンブルであった場合、別の高コードのプリアンブルを、UWB通信装置1が通信に使用するプリアンブルのプリアンブルコードとして決定する。これにより、UWB通信装置1のUWB通信に影響を与える周囲の通信が高コードのプリアンブルを使用している場合、UWB通信装置1は当該周囲の通信の影響を受けにくい、使用中でない高コードのプリアンブルを用いたUWB通信を行うことになるので、当該UWB通信は電波干渉による通信障害を受けにくい通信となる。
【0065】
また、決定部42は、使用プリアンブル種類数が2で、かつ使用プリアンブルが全て低コードのプリアンブルであった場合、高コードのプリアンブルを、UWB通信装置1が通信に使用するプリアンブルのプリアンブルコードとして決定する。これにより、UWB通信装置1のUWB通信に影響を与える周囲の通信が低コードのプリアンブルを使用している場合、UWB通信装置1は当該周囲の通信の影響を受けにくい、使用中でない高コードのプリアンブルを用いたUWB通信を行うことになるので、当該UWB通信は電波干渉による通信障害を受けにくい通信となる。
【0066】
また、決定部42は、使用プリアンブル種類数が2で、かつ使用プリアンブルが全て高コードのプリアンブルであった場合、別の高コードのプリアンブルを、UWB通信装置1が通信に使用するプリアンブルのプリアンブルコードとして決定する。これにより、UWB通信装置1のUWB通信に影響を与える周囲の通信が高コードのプリアンブルを使用している場合、UWB通信装置1は当該周囲の通信の影響を受けにくい、使用中でない高コードのプリアンブルを用いたUWB通信を行うことになるので、当該UWB通信は電波干渉による通信障害を受けにくい通信となる。
【0067】
また、決定部42は、使用プリアンブル種類数が3で、かつ使用プリアンブルが低コードおよび高コードのプリアンブルの混在、もしくは、全て高コードのプリアンブルであった場合、別の高コードのプリアンブルを、UWB通信装置1が通信に使用するプリアンブルのプリアンブルコードとして決定する。これにより、UWB通信装置1のUWB通信に影響を与える周囲の通信が高コードのプリアンブルを使用している場合(低コードのプリアンブルを使用している場合も含む)、UWB通信装置1は当該周囲の通信の影響を受けにくい、使用中でない高コードのプリアンブルを用いたUWB通信を行うことになるので、当該UWB通信は電波干渉による通信障害を受けにくい通信となる。
【0068】
また、決定部42は、使用プリアンブル種類数が4で、かつ使用プリアンブルが全て高コードのプリアンブルであった場合、低コードのプリアンブルを、UWB通信装置1が通信に使用するプリアンブルのプリアンブルコードとして決定する。これにより、UWB通信装置1のUWB通信に影響を与える周囲の通信が高コードのプリアンブルの全てを使用している場合、UWB通信装置1は当該周囲の通信の影響を受けにくい、使用中でない低コードのプリアンブルを用いたUWB通信を行うことになるので、当該UWB通信は電波干渉による通信障害を受けにくい通信となる。
【0069】
また、決定部42は、使用プリアンブル種類数が4で、かつ使用プリアンブルが低コードのプリアンブルおよび高コードのプリアンブルの混在であった場合、別の高コードのプリアンブルを、UWB通信装置1が通信に使用するプリアンブルのプリアンブルコードとして決定する。これにより、UWB通信装置1のUWB通信に影響を与える周囲の通信が低コードおよび高コードのプリアンブルを使用している場合、UWB通信装置1は当該周囲の通信の影響を受けにくい、使用中でない高コードのプリアンブルを用いたUWB通信を行うことになるので、当該UWB通信は電波干渉による通信障害を受けにくい通信となる。
【0070】
また、決定部42は、使用プリアンブル種類数が5(この場合、使用プリアンブルが低コードおよび高コードの混在となる)であった場合、高コードのプリアンブルの中で使用通信数(当該プリアンブルを使用している通信の数)が最も少ないプリアンブルのプリアンブルコードを、UWB通信装置1が通信に使用するプリアンブルのプリアンブルコードとして決定する。つまり、決定部42は、不使用状態の高コードプリアンブルグループに属する種別のプリアンブルが存在せず、使用状態の低コードプリアンブルグループに属する種別のプリアンブルが存在する場合、高コードプリアンブルグループに属する種別の各プリアンブルが使用されている通信数を計数し、計数した通信数が最も少ないプリアンブルをUWB通信装置1の通信に使用するプリアンブルとして決定する。これにより、UWB通信装置1は当該周囲の通信の影響を受けにくい、使用中でない高コードのプリアンブル、あるいは使用中でない可能性が比較的高い(使用通信数が少ないので、同時通信の可能性が低くなる)高コードのプリアンブルを用いたUWB通信を行うことになるので、当該UWB通信は電波干渉による通信障害を受けにくい通信となる。
【0071】
また、高コードのプリアンブルが全て使用中で、かつ低コードのプリアンブルが使用中(全て、あるいは1つ)の場合、電波干渉を受ける可能性が高くなる。このため、このような状況の場合、他の重要度(優先度)の低い通信を行うUWB通信装置1の使用するプリアンブルを変更させる機能を付加する方法がある。
【0072】
具体的には、図1に示した通信システムSにおけるスレーブ機1a~1dに重要度(図4に示したカテゴリレベル)を設定し、マスターECU100とこれらスレーブ機1a~1dとの通信において、通信が重複した場合に、スレーブ機1a~1d(との間の通信)の重要度に応じて、各通信に使用するプリアンブルを調停(重要度の高いスレーブ機との通信が成立しやすいように、重要度の高いスレーブ機1xの通信で使用するプリアンブルを優先的に設定)する。例えば、マスターECU100は、全ての高コードのプリアンブルが使用されており、また低コードのプリアンブルが使用されている場合に、重要度の高いスレーブ機1xとの通信に使用するプリアンブルを高コードのプリアンブルに設定し、他のスレーブ機1yとの通信に使用するプリアンブルを他のプリアンブルに設定する。
【0073】
図9は、スレーブ機1xのカテゴリレベル(重要度)に基づくUWB通信に使用するプリアンブルの変更動作例を説明する図である。図9の例では、カテゴリレベルが1のスレーブ機1aに、プリアンブルコード11のプリアンブルが通信に使用するプリアンブルとして設定されている。そして、カテゴリレベルが0のスレーブ機1bに、プリアンブルコード11のプリアンブルが通信に使用するプリアンブルとして設定されている。また、プリアンブルコード11以外の高コードのプリアンブルも他のUWB通信(カテゴリレベル0のスレーブ機1x)で使用されているものとする。なお、カテゴリレベルは、0が1よりも通信の重要度が高いこととする。
【0074】
このような状況において、スレーブ機1bの収集部41はUWB通信の電波を監視(受信)し、周辺で行われている(UWB通信に影響のある)UWB通信を検出する。そして、スレーブ機1bの収集部41は周辺で行われているUWB通信におけるスレーブ機の識別情報、通信重要度、使用されているプリアンブルのプリアンブルコードを学習(情報蓄積)する。そして、スレーブ機1bがUWB通信を行う際に、学習による情報に基づき、スレーブ機1bの決定部42は上述の方法によりUWB通信で使用するプリアンブルのプリアンブルコードを決定する(図9の例では、プリアンブルコード11を決定)。この決定において、使用されていない適切なプリアンブルがなく、使用を決定したプリアンブルが重複した場合、決定部42は当該重複したプリアンブルを使用する他の通信(スレーブ機1a)のカテゴリレベル(カテゴリレベル1)と自己の通信(スレーブ機1b)のカテゴリレベル(カテゴリレベル0)を比較し、他の通信装置(スレーブ機1a)のカテゴリレベルが大きければ(重要度低)、マスターECU100を介して他の通信装置(スレーブ機1a)が使用するプリアンブル変更を要求する(スレーブ機1aの使用するプリアンブルをプリアンブルコード3のプリアンブルに変更させる:マスターECU100がスレーブ機1bからの要請の基づきスレーブ機1aに使用するプリアンブルの変更指令を送信)。なお、他の通信装置(スレーブ機1a)が使用するプリアンブルが変更されるまでは、自己の通信は重複したプリアンブルを用いることになり、通信が不安定な状態が起こる可能性がやや高くなるが、他の通信装置(スレーブ機1a)が使用するプリアンブルが変更された後の本来の通信はプリアンブルの重複状態は緩和された状態となり、安定した通信が期待できる。
【0075】
設定部43は、決定部42が決定したプリアンブルコードに対応するプリアンブルをUWB通信に用いるプリアンブルに設定する処理を行う。
【0076】
具体的には、設定部43は、通信相手(スレーブ機1xの場合、マスターECU100)に対して、通信に用いるプリアンブルを決定部42が決定したプリアンブルコードのプリアンブルへの変更依頼を通知する。そして、設定部43は、通信相手から変更依頼に対して通信に用いるプリアンブルの変更を許諾(自動変更の場合は、変更依頼の受信確認)する変更許諾通知(受信確認通知)を受け付けた場合に、通信相手との通信に用いるプリアンブルを決定部42が決定したプリアンブルコードのプリアンブルに設定する。なお、このプリアンブルの設定は、通信部2に対し、プリアンブルコードを用いて使用するプリアンブルを指示指令することにより行い、通信部2は当該指令に基づく種別(プリアンブルコード)のプリアンブルを使用した通信を行う。
【0077】
なお、これら通信に用いるプリアンブルの変更に関する通信は変更前の種別のプリアンブルを用いて行われることになるが、データ容量が少ないこともあり、電波干渉による影響は少なくて済む。
【0078】
また、通信相手側の通信装置(当該通信システムSでは、マスターECU100、あるいはスレーブ機1x)の制御部4(設定部43)は、通信相手からのプリアンブル変更依頼に基づき、変更許諾通知(受信確認通知)を通信相手側の通信装置に送信すると共に、自己の通信部2に対し、当該プリアンブルコードを用いて使用するプリアンブルを指示指令する。
【0079】
図10は、プリアンブルの変更時のマスターECU100とスレーブ機1a(スレーブ機1xの代表して説明する)の動作の流れを説明するシーケンス図で、スレーブ機1aからプリアンブルの変更の要請を行う場合の動作を示す図である。
【0080】
図10に示すように、スレーブ機1aは、まず、周囲に存在する通信装置の電波を受信することで周囲の通信機器が使用しているプリアンブルの種別(プリアンブルコード)を学習し、当該スレーブ機1aが通信に使用するプリアンブルのプリアンブルコードを決定する(ステップS101)。
【0081】
つづいて、スレーブ機1aは、決定したプリアンブルコードへの変更要請を通信相手であるマスターECU100へ通知する(ステップS102)。
【0082】
つづいて、マスターECU100は、変更許諾通知をスレーブ機へ通知する(ステップS103)。その後、マスターECU100は、スレーブ機1aとの通信に用いるプリアンブルを変更要請のあったプリアンブルコードのプリアンブルに変更する。
【0083】
つづいて、スレーブ機1aは、マスターECU100から変更許諾通知を受け取った場合、通信に使用するプリアンブルを変更許諾のあったプリアンブルに設定し(ステップS104)、マスターECU100との間で当該プリアンブルを使用して通信を開始する(ステップS105)。
【0084】
なお、カテゴリレベルを用いたプリアンブルの決定を行い、プリアンブルの変更要請を他の通信装置(当該通信装置をスレーブ機1bとする)に行う際には、ステップS102で当該スレーブ機1bへのプリアンブルの変更要請情報も送信する。そして、マスターECU100は、ステップS103の動作(スレーブ機1aへの変更許諾通知)と共に、スレーブ機1bへのプリアンブル変更指令を送信し、その後スレーブ機1bとの通信に用いるプリアンブルを当該プリアンブル変更指令におけるプリアンブルに変更することになる。
【0085】
次に、図11を用いて、プリアンブルコードの決定処理について説明する。図11は、プリアンブルコードの決定処理を示す図である。なお、図11に示す処理は、UWB通信装置1が起動した直後に行われるとともに、起動してから一定の間隔で繰り返し実行される。これにより、対象装置が起動した直後から電波干渉の影響を抑えた安定して通信行うことができる。さらに、起動後に通信装置が持ち込まれた場合等、周囲の電波環境が変化した場合であっても、電波干渉の影響を抑えて安定した通信行うことができる。
【0086】
図11に示すように、制御部4は、周辺のUWB通信環境を確認するためのUWB通信帯域である8GHz帯の電波の受信モードに移行する(ステップS201)。
【0087】
つづいて、制御部4は、UWB通信の電波を受信したか否かを判定し(ステップS202)、電波を受信した場合(ステップS202:Yes)、UWB通信の電波を復調・復号してプリアンブル等を抽出してプリアンブルコード、送信元の送信機器種別、カテゴリ(さらにカテゴリに基づきカテゴリレベル)等を解析する(ステップS203)。
【0088】
つづいて、制御部4は、解析したプリアンブルコード等の情報を記憶部3の機器情報記憶部31に機器情報D31として記憶する(ステップS204)。
【0089】
つづいて、制御部4は、8GHz帯の電波の受信モードに移行してからUWB通信環境検出期間として予め定めた所定時間経過したか否かを判定する(ステップS205)。
【0090】
制御部4は、所定時間経過した場合(ステップS205:Yes)、周囲での行われているUWB通信で使用されている機器情報D31のプリアンブル(プリアンブルコード)に基づいて、自己の行うUWB通信で使用するプリアンブルのプリアンブルコードを決定し(ステップS206)、処理を終了する。そしてその後、制御部4(設定部43)は、この決定されたプリアンブルコードに基づきUWB通信に用いるプリアンブルを設定し、当該設定されたプリアンブルによるUWB通信が行われることになる。
【0091】
一方、ステップS202において、制御部4は、周囲での行われているUWB通信の電波が受信されない(周囲でUWB通信が行われていない)場合(ステップS202:No)、ステップS205に移行する。また、ステップS205において、制御部4は、所定時間経過していない場合(ステップS205:No)、ステップS202に移行する。
【0092】
上述してきたように、実施形態に係るUWB通信装置1は、周囲のUWB通信の状況、詳細には周囲のUWB通信で使用されているプリアンブルの種別に応じて、UWB通信する際に使用するプリアンブルを決定する。従って、UWB通信装置1は、周囲のUWB通信による電波干渉の影響を抑えるのに適したプリアンブルを使用したUWB通信を行うこととなり、安定した通信を行うことができる。
【0093】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 UWB通信装置
1a~1d スレーブ機
2 通信部
3 記憶部
4 制御部
31 機器情報記憶部
32 決定処理情報記憶部
41 収集部
42 決定部
43 設定部
100 マスターECU
200 端末装置
210 端末子機
D31 機器情報
D32 決定処理情報
C 車両
F フレームフォーマット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11