(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033446
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】モータ及びファン装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20240306BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H02K5/10 A
H02K7/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137022
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】永元 里司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 信吾
(72)【発明者】
【氏名】上原 洋
(72)【発明者】
【氏名】細井 啓一
【テーマコード(参考)】
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
5H605AA02
5H605BB05
5H605BB14
5H605BB19
5H605CC01
5H605CC02
5H605CC03
5H605CC04
5H605DD16
5H605DD33
5H605EB10
5H605EB16
5H605EB31
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB14
5H607BB17
5H607BB25
5H607CC05
5H607DD03
5H607FF04
(57)【要約】
【課題】シャフトの周りの空間に浸入した液滴を、シンプルな構成で排水可能なモータを提供する。
【解決手段】モータは、モータブラケットと、シャフトと、ロータヨークと、ベアリングと、ロータヨークを回転させるための磁界を発生するコイルが巻装されたステータとを備える。ロータヨークは、ステータより径方向の外側に配置されて、複数の永久磁石を内周面で支持する円筒形状の外周壁と、ステータより径方向の内側に配置されて、ベアリングによってシャフトに対して回転自在に支持された円筒形状の内周壁と、シャフトの軸方向の他端側において、外周壁及び内周壁の端部同士を連結する円盤形状の連結壁とを有する。ベアリングの外周面及び内周壁の内周面の少なくとも一方には、軸方向に延設され且つシャフトの他端側に開放された軸方向溝が形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータブラケットと、
軸方向の一端が前記モータブラケットに固定されたシャフトと、
複数の永久磁石を周方向に所定の間隔を隔てて支持するロータヨークと、
前記シャフトに対して前記ロータヨークを回転自在に支持するベアリングと、
複数の前記永久磁石の内側で前記モータブラケットに固定されて、前記ロータヨークを回転させるための磁界を発生するコイルが巻装されたステータとを備えるモータにおいて、
前記ロータヨークは、
前記ステータより径方向の外側に配置されて、複数の前記永久磁石を内周面で支持する円筒形状の外周壁と、
前記ステータより径方向の内側に配置されて、前記ベアリングによって前記シャフトに対して回転自在に支持された円筒形状の内周壁と、
前記シャフトの軸方向の他端側において、前記外周壁及び前記内周壁の端部同士を連結する円盤形状の連結壁と、を有し、
前記ベアリングの外周面及び前記内周壁の内周面の少なくとも一方には、軸方向に延設され且つ前記シャフトの他端側に開放された軸方向溝が形成されていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記ロータヨークは、軸方向に離間した一対の前記ベアリングによって、前記シャフトに対して回転自在に支持され、
前記軸方向溝は、前記内周壁の内周面において軸方向に延設されて、軸方向の一端が一対の前記ベアリングの間に位置し、軸方向の他端が前記連結壁側に開放されていることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記軸方向溝は、周方向に離間した複数の位置に形成されていることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1に記載のモータと、
前記連結壁に固定されて回転するファンとを備えるファン装置において、
前記ファンの前記連結壁に当接する面には、前記連結壁との取付位置を避けて放射状に延設された複数の径方向溝が形成されていることを特徴とするファン装置。
【請求項5】
請求項4に記載のファン装置において、
前記径方向溝は、径方向に直線状に延設されていることを特徴とするファン装置。
【請求項6】
請求項4に記載のファン装置において、
前記径方向溝は、径方向の外向きに向かって、前記ファンの回転方向と反対向きに湾曲していることを特徴とするファン装置。
【請求項7】
請求項4に記載のファン装置において、
前記径方向溝より径方向の外側で且つ前記径方向溝の延長線上において、前記ファン及び前記連結壁の間の隙間を狭くする狭小部を備えることを特徴とするファン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、及びモータを搭載したファン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、持続可能な開発のための2030アジェンダ、平成27(2015)年9月25日国連サミット採択、以下「SDGs」という)の推進に向けた取り組みが行われている。それに伴い、持続可能な生産消費形態の確保などのため、廃棄物や不良品の削減などを目指す技術が知られている。
【0003】
ステータの外側に配置されたロータヨークを回転させるアウターロータ型のブラシレスモータは、例えば、車載の冷却ファンを駆動するファンモータとして利用される。このような用途で使用されるモータには、内部に浸入した液滴(例えば、雨水)を排水する必要がある。
【0004】
そこで、モータの内部に形成した排水路に連通する貫通孔をベアリングホルダに形成して、シャフトの周りの空間に浸入した液滴を排水するモータが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、ブラケット、ステータ、及びロータの隙間に排水路を形成する必要があるので、モータの構造が複雑になると共に、排水路が長くなって液滴が排出され難いという課題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、シャフトの周りの空間に浸入した液滴を、シンプルな構成で排水可能なモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、モータブラケットと、軸方向の一端が前記モータブラケットに固定されたシャフトと、複数の永久磁石を周方向に所定の間隔を隔てて支持するロータヨークと、前記シャフトに対して前記ロータヨークを回転自在に支持するベアリングと、複数の前記永久磁石の内側で前記モータブラケットに固定されて、前記ロータヨークを回転させるための磁界を発生するコイルが巻装されたステータとを備えるモータにおいて、前記ロータヨークは、前記ステータより径方向の外側に配置されて、複数の前記永久磁石を内周面で支持する円筒形状の外周壁と、前記ステータより径方向の内側に配置されて、前記ベアリングによって前記シャフトに対して回転自在に支持された円筒形状の内周壁と、前記シャフトの軸方向の他端側において、前記外周壁及び前記内周壁の端部同士を連結する円盤形状の連結壁と、を有し、前記ベアリングの外周面及び前記内周壁の内周面の少なくとも一方には、軸方向に延設され且つ前記シャフトの他端側に開放された軸方向溝が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シャフトの周りの空間に浸入した液滴を、シンプルな構成で排水することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るファン装置の一構成例を示す外観斜視図である。
【
図2】モータとファンとを分解した場合の分解斜視図である。
【
図4】ロータヨークを除いた状態のモータの構成を示す斜視図である。
【
図6】シャフト周辺の構成部品の分解斜視図である。
【
図7】ロータヨークを表面側(A)及び裏面側(B)から見た斜視図である。
【
図8】ボス部の裏面側の形状のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るファン装置の一態様として、例えば自動車などの車両に搭載され、ラジエータ内を流れるエンジンの冷却水などを冷却するファン装置について説明する。
【0012】
(ファン装置1の全体構成)
まず、
図1および
図2を参照して、ファン装置1の全体構成を説明する。
図1は、実施形態に係るファン装置1の一構成例を示す外観斜視図である。
図2は、モータ2とファン3とを分解した場合の分解斜視図である。
【0013】
図1及び
図2に示すように、ファン装置1は、駆動源であるモータ2と、モータ2により回転駆動されて冷却風を生成するファン3とを備える。ファン装置1は、例えば、エンジンルーム内において、ラジエータと対向するように配設されている。例えば車体が水平面上に位置しているとき、ファン装置1は、モータ2のシャフト21が水平方向に延設されるように、エンジンルーム内に配置される。但し、車体が傾くと、シャフト21の延設方向も水平方向から傾くことになる。
【0014】
(モータ2の構成)
次に、
図3~
図7を参照して、モータ2の構成を説明する。
図3は、モータ2を表面側から見た外観斜視図である。
図4は、ロータヨーク232を除いた状態のモータ2の構成を示す斜視図である。
図5は、
図3におけるV-V線断面図である。
【0015】
図3~
図5に示すように、モータ2は、アウターロータ型のブラシレスモータ201と、ブラシレスモータ201(より詳細には、コイル243による磁界の発生)を制御するドライバ回路202とを含む、所謂「機電一体型」の電動モータである。
【0016】
ブラシレスモータ201は、板状のモータブラケット203に支持されている。ブラシレスモータ201は、モータブラケット203の厚み方向の一方側(表面側)に配置されている。
【0017】
図5に示すように、モータブラケット203の厚み方向の他方側(裏面側)には、複数のネジ205によって、ドライバブラケット204が締結されている。これにより、モータブラケット203及びドライバブラケット204の間には収容空間206が形成される。そして、ドライバ回路202は、この収容空間206に収容される。
【0018】
また、モータブラケット203の端部には、外部ハーネスが接続される2つのコネクタが一体になったコネクタユニット207が取り付けられている。ブラシレスモータ201、ドライバ回路202、及びコネクタユニット207は、モータブラケット203を介して互いに電気的に接続されている。
【0019】
図4及び
図5に示すように、ブラシレスモータ201は、シャフト21と、シャフト21の外周に設けられたベアリング22A、22Bと、シャフト21の軸心周りにベアリング22A、22Bを介して回転自在に支持されたロータ23と、ロータ23を回転させるための磁界を発生するコイル243が巻装された環状のステータ24と、を有する。
【0020】
シャフト21は、軸方向の一端がモータブラケット203に固定された固定軸である。なお、以下、モータ2の構成要素に関する説明において、シャフト21の軸方向を単に「軸方向」とし、シャフト21の軸心を中心とした径方向を単に「径方向」とし、シャフト21の軸心を中心とした周方向を単に「周方向」とする。
【0021】
図6は、シャフト21周辺の構成部品の分解斜視図である。
図6に示すように、ブラシレスモータ201は、シャフト21と、一対のベアリング22A、22Bと、コイルバネ52とをさらに備える。
【0022】
シャフト21は、概ね円柱状の外形を呈する。シャフト21は、第1軸部211と、第2軸部212と、フランジ部213とを主に備える。
【0023】
第1軸部211及び第2軸部212は、フランジ部213を挟んで互いに反対向きに延設された部分である。第1軸部211には、ベアリング22Aの内輪が外挿されている。第2軸部212には、ベアリング22Bの内輪が外挿されている。すなわち、ベアリング22A、22Bは、軸方向に離間して配置されている。
【0024】
フランジ部213は、第1軸部211及び第2軸部212の間において、径方向外向きに突出し且つ周方向に連続する円盤状の部分である。すなわち、フランジ部213の直径は、第1軸部211及び第2軸部212より大きく設定されている。そして、フランジ部213は、コイルバネ52の一端が当接されるばね座として機能する。
【0025】
ベアリング22A、22Bは、内輪と、外輪と、内輪及び外輪の間に配置される複数のボールと、複数のボールの周方向の間隔を保持する保持部とを備えるボールベアリングである。また、ベアリング22A、22Bは、ラジアル方向の荷重を支持するラジアル軸受である。ベアリング22Aは、内輪がシャフト21に外挿され、外輪が内周壁232Bに内挿されている。ベアリング22Bは、内輪がシャフト21に外挿され、外輪が内周壁232Bに内挿されている。これにより、ベアリング22A、22Bは、シャフト21に対してロータヨーク232を回転自在に支持する。
【0026】
コイルバネ52は、ベアリング22Aとフランジ部213との間において、第1軸部211に外挿される。そして、コイルバネ52は、ベアリング22Aをファン3側に向けて付勢する。これにより、フランジ部213は、ベアリング22Bに押し付けられる。
【0027】
図5に示すように、ロータ23は、ステータ24の外周を囲むように周方向に等間隔に並んで配置された複数の永久磁石231と、ステータ24及び複数の永久磁石231を覆うロータヨーク232と、を有する。そして、ロータヨーク232は、シャフト21の軸心と同心になるようにモータブラケット203の表面側に配置されている。また、ロータヨーク232は、ベアリング22A、22Bを介してシャフト21に回転自在に支持されている。
【0028】
図7は、ロータヨーク232を表面側(A)及び裏面側(B)から見た斜視図である。
図5及び
図7に示すように、ロータヨーク232は、外周壁232Aと、内周壁232Bと、連結壁232Cとを備える。
【0029】
外周壁232Aは、円筒形状の外形を呈する。また、外周壁232Aは、ステータ24より径方向の外側に配置されている。さらに、外周壁232Aは、複数の永久磁石231を内周面で支持している。換言すれば、複数の永久磁石231は、周方向に所定の間隔を隔てて外周壁232Aの内周面に固定されている。
【0030】
内周壁232Bは、円筒形状の外形を呈する。また、内周壁232Bは、ステータ24より径方向の内側に配置されている。さらに、内周壁232Bは、ベアリング22A、22Bを介してシャフト21に回転自在に支持される。
【0031】
連結壁232Cは、円盤形状の外形を呈する。また、連結壁232Cは、外周壁232A及び内周壁232Bの軸方向の端部同士を接続する。より詳細には、
図5に示すように、連結壁232Cは、シャフト21の軸方向の他端側(すなわち、モータブラケット203と反対側)において、外周壁232A及び内周壁232Bを接続する。
【0032】
さらに、ロータヨーク232には、複数(本実施形態では、3つ)の軸方向溝233が形成されている。軸方向溝233は、内周壁232Bの内周面において、軸方向に延設されている。また、軸方向溝233は、周方向に離間した複数の位置(本実施形態では、120°間隔)に形成されている。但し、軸方向溝233の数及び間隔は前述の例に限定されず、例えば、6つの軸方向溝233が60°間隔で形成されてもよい。
【0033】
図5に示すように、軸方向溝233は、内周壁232Bの内周面から径方向外向きに凹んでいる。また、軸方向溝233の一端(モータブラケット203側の端部)は、一対のベアリング22A、22Bの間に位置している。さらに、軸方向溝233の他端(連結壁232C側の端部)は、開放されている。
【0034】
これにより、ベアリング22Aの外周面と内周壁232Bの内周面との間には、軸方向溝233によって隙間が形成される。その結果、ベアリング22A、22Bの間においてシャフト21と内周壁232Bとの間に形成された空間(以下、「シャフト21の周りの空間」と表記する。)は、軸方向溝233を通じてモータ2の外部(ファン3側)に連通される。すなわち、シャフト21の周りの空間に浸入した液滴は、軸方向溝233を通じてモータ2の外部に排出される。
【0035】
ステータ24は、外周壁232A、内周壁232B、連結壁232C、及びモータブラケット203で囲まれた空間に収容されている。また、ステータ24は、複数の永久磁石231より径方向の内側において、モータブラケット203の表面側に固定されている。さらに、ステータ24は、径方向に所定の隙間を隔てて複数の永久磁石231に対面している。
【0036】
図4及び
図5に示すように、ステータ24は、円筒形状のステータコア241と、ステータコア241から径方向外向きに突出された複数のティースに対して軸方向の両側に装着される絶縁性のインシュレータ242と、インシュレータ242上に巻回された導電性のコイル243と、を有する。
【0037】
ステータ24は、コイル243に電流が流れることにより磁界を発生する。そして、コイル243で発生した磁界と、複数の永久磁石231との間に生じる引力及び斥力によって、ロータヨーク232がシャフト21の軸心を中心として回転する。
【0038】
(ファン3の構成)
図1及び
図2に示すように、ファン3は、シャフト21の軸心上を回転中心としてロータ23と一体に回転するボス部31と、ボス部31の外周から放射状に張り出された複数(本実施形態では7枚)の羽根32と、隣り合う羽根32同士を先端側で連結する複数(本実施形態では7つ)の連結部材33とを有する。
【0039】
また、ボス部31は、円盤形状の円盤部311と、円盤部311の外縁からモータ2に向けて突出すると共に、複数の羽根32が取り付けられた円筒形状の周壁部312とを含む。ファン3がモータ2に取り付けられると、円盤部311はロータヨーク232の連結壁232Cに対面し、周壁部312はロータヨーク232の外周壁232Aを囲む。
【0040】
図8は、ボス部31の裏面(連結壁232Cに対面する面)側の形状のバリエーションを示す図である。
図8に示すように、円盤部311には、複数のネジ穴313と、複数の径方向溝314A、314Bとが形成されている。
【0041】
複数のネジ穴313は、円盤部311のうちの連結壁232Cに当接するリング状の領域において、円盤部311を厚み方向に貫通する。ネジ穴313は、周方向に所定の間隔(本実施形態では、120°間隔)を隔てて形成されている。但し、ネジ穴313の数及び周方向の間隔は、前述の例に限定されない。
【0042】
そして、
図2に示すように、ファン3は、ネジ穴313に螺合されたネジ10によって、ロータヨーク232に締結される。本実施形態では、ファン3の回転バランスを考慮して、3つのネジ10が、ファン3の回転中心を中心とする円周上において等間隔となるように取り付けられる。なお、ファン3をモータ2に締結する締結部材として必ずしも3つのネジ10を用いる必要はなく、ファン3がモータ2に締結可能であれば、ネジ10の数や締結部材の種類については特に制限はない。
【0043】
複数の径方向溝314A、314Bは、円盤部311のうちの連結壁232Cに当接するリング状の領域において、ファン3の連結壁232Cに対面する側の面に形成されている。複数の径方向溝314A、314Bは、ネジ穴313(すなわち、連結壁232Cとの取付位置)を避けて、放射状に形成されている。より詳細には、複数の径方向溝314A、314Bは、周方向において隣接するネジ穴313の間を通って、径方向に延設されている。
【0044】
一例として、
図8(A)に示すように、径方向溝314Aは、径方向に直線状に延設されていてもよい。他の例として、
図8(B)に示すように、径方向溝314Bは、径方向外向きに向かって、ファン3の回転方向(
図8(B)の例では、反時計回り)と反対向き(すなわち、時計回り)に湾曲していてもよい。
【0045】
図9は、ファン3及びロータヨーク232の断面図である。
図9に矢印で示すように、シャフト21の周りの空間に浸入した液滴は、軸方向溝233を通じて、ファン3及びロータヨーク232の間の空間(すなわち、モータブラケット203と反対側)に排出される。次に、ファン3及びロータヨーク232の間の空間の液滴は、ファン3及びロータヨーク232の回転による遠心力によって、径方向溝314A、314Bを通じて径方向外向きに排出される。
【0046】
また、円盤部311及び連結壁232Cが当接するリング状の領域より径方向外側において、ファン3及びロータヨーク232の間には軸方向の隙間が存在する。そのため、遠心力によって径方向溝314A、314Bから排出された液滴は、この隙間を通じてファン装置1の外部に排出される。一方、ファン装置1の外部からこの隙間に浸入した液滴は、径方向溝314A、314B及び軸方向溝233を通じて、内周壁232B内に浸入する可能性がある。
【0047】
そこで、ファン装置1は、狭小部315をさらに備える。狭小部315は、径方向溝314A、314Bより径方向外側において、ファン3及び連結壁232Cの間に配置されている。また、狭小部315は、周方向に連続するファン3及び連結壁232Cの間の隙間のうち、径方向溝314A、314Bの延長線上に選択的に配置されている。これにより、ファン3及び連結壁232Cの間の隙間は、径方向溝314A、314Bの延長線上が、その他の領域より狭くなる。但し、狭小部315は、ファン3及び連結壁232Cの間の隙間を完全に閉塞せず、ある程度の隙間は維持するものとする。
【0048】
その結果、ファン装置1の外部から径方向溝314A、314Bに液滴が浸入するのを阻止することができる。一方、径方向溝314A、314Bから排出された液滴には遠心力が働くので、狭小部315を迂回してファン装置1の外部に排出される。
【0049】
なお、狭小部315は、ファン3に取り付けられていてもよいし、ロータヨーク232に取り付けられていてもよい。また、狭小部315の具体的な形状は特に限定されず、壁、柱、リブ等でもよい。
【0050】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0051】
上記の実施形態によれば、軸方向溝233を設けるだけで、シャフト21と内周壁232Bとの間に浸入した液滴を、モータ2のモータブラケット203と反対側に排出することができる。これにより、シャフト21の周りの空間に浸入した液滴を、シンプルな構成で排水することができる。その結果、シャフト21、ベアリング22A、22B、及びコイルバネ52の錆を防止してファン装置1の寿命を延伸することができるので、廃棄物の削減に寄与する。
【0052】
また、上記の実施形態によれば、周方向に離間した複数の位置に軸方向溝233を設けることによって、モータ2の取付時の姿勢によらず、シャフト21の周りの空間の液滴を適切に排出することができる。但し、モータ2の取付時の姿勢が固定されている場合は、シャフト21の下方のみに軸方向溝233を設けてもよい。
【0053】
また、上記の実施形態によれば、径方向溝314A、314Bを設けることによって、軸方向溝233を通じて排出された液滴を、ファン装置1の外部に効率的に排出することができる。なお、ファン3が時計回り及び反時計回りの両方に回転する場合、
図8(A)に示すように、径方向溝314Aを直線状に形成することによって、ファン3の回転方向によらず液滴を排出することができる。一方、ファン3が一方のみに回転する場合、
図8(B)に示すように、径方向溝314Bをファン3の回転方向と反対向きに湾曲させることによって、内部の液滴を排出できると共に、外部からの液滴の浸入を防止できる。
【0054】
さらに、上記の実施形態によれば、径方向溝314A、314Bの延長線上に選択的に狭小部315を設けることによって、遠心力が働く液滴の排出を邪魔することなく、液滴の浸入を防止することができる。
【0055】
なお、上記の実施形態では、内周壁232Bの内周面に軸方向溝233を形成した例を説明したが、軸方向溝233の位置は前述の例に限定されない。他の例として、内周壁232Bに接触するベアリング22Aの外周面に、軸方向に延びる軸方向溝233が形成されていてもよい。すなわち、軸方向溝233は、ベアリング22Aの外周面及び内周壁232Bの内周面の少なくとも一方に形成されていればよい。
【0056】
また、上記の実施形態では、ファン装置1の用途として、ラジエータに冷却風を供給する例を説明したが、ファン装置1の用途はこれに限定されない。また、上記の実施形態では、モータ2の用途として、ファン3を回転駆動するファンモータの例を説明したが、モータ2の用途はこれに限定されない。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 :ファン装置
2 :モータ
3 :ファン
10,205 :ネジ
21 :シャフト
22A,22B :ベアリング
23 :ロータ
24 :ステータ
31 :ボス部
32 :羽根
33 :連結部材
52 :コイルバネ
201 :ブラシレスモータ
202 :ドライバ回路
203 :モータブラケット
204 :ドライバブラケット
206 :収容空間
207 :コネクタユニット
211 :第1軸部
212 :第2軸部
213 :フランジ部
231 :永久磁石
232 :ロータヨーク
232A :外周壁
232B :内周壁
232C :連結壁
233 :軸方向溝
241 :ステータコア
242 :インシュレータ
243 :コイル
311 :円盤部
312 :周壁部
313 :ネジ穴
314A,314B :径方向溝
315 :狭小部