(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033453
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】高所点検システムおよび高所点検方法
(51)【国際特許分類】
B64F 3/00 20060101AFI20240306BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240306BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240306BHJP
【FI】
B64F3/00
B64C39/02
B64C27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137032
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】591130319
【氏名又は名称】東京パワーテクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515102770
【氏名又は名称】ルーチェサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 孝治
(57)【要約】
【課題】点検用ケーブルを用いた高所の点検を精度良く行えるようにする。
【解決手段】高所点検システムSは、点検用ケーブルCの上空側の端部が接続されるとともに、被点検部103aに接触する接触部83を有する第1無人飛行体50と、点検用ケーブルCの上空側が固定され、第1無人飛行体50よりも大きな最大揚力の発生が可能に構成された第2無人飛行体10とを備えている。第2無人飛行体10は、点検用ケーブルCの上空側を被点検部103a近傍の所定の高さまで上昇させて保持する。第1無人飛行体50は、第2無人飛行体10よりも被点検部103aに接近して接触部83を被点検部103aに接触させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所に設けられている被点検部を、複数の無人飛行体と地上から延びる点検用ケーブルとを用いて点検する高所点検システムであって、
前記点検用ケーブルの上空側の端部が接続されるとともに、前記被点検部に接触する接触部を有する第1無人飛行体と、
前記点検用ケーブルの上空側が固定される固定部を有し、前記第1無人飛行体よりも大きな最大揚力の発生が可能に構成された第2無人飛行体とを備え、
前記第2無人飛行体は、前記点検用ケーブルの上空側を前記被点検部近傍の所定の高さまで上昇させて保持し、
前記第1無人飛行体は、前記第2無人飛行体よりも前記被点検部に接近して前記接触部を前記被点検部に接触させることを特徴とする高所点検システム。
【請求項2】
請求項1に記載の高所点検システムにおいて、
前記第1無人飛行体と前記第2無人飛行体とは、可撓性を有する連結部材によって連結された状態で飛行可能に構成されていることを特徴とする高所点検システム。
【請求項3】
請求項2に記載の高所点検システムにおいて、
前記連結部材は、前記点検用ケーブルであることを特徴とする高所点検システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の高所点検システムにおいて、
前記第1無人飛行体は、前記連結部材が挿通する筒部材と、当該筒部材の基端部を水平線周りに回動可能に支持する軸部とを備えており、
前記筒部材は、当該筒部材の先端部が前記第1無人飛行体の回転翼よりも上方に位置するまで起立可能に構成されていることを特徴とする高所点検システム。
【請求項5】
高所に設けられている被点検部を、複数の無人飛行体と地上から延びる点検用ケーブルとを用いて点検する高所点検方法であって、
前記被点検部に接触する接触部を有する第1無人飛行体に、前記点検用ケーブルの上空側の端部を接続する接続工程と、
前記第1無人飛行体よりも大きな最大揚力の発生が可能に構成された第2無人飛行体に、前記点検用ケーブルの上空側を固定する固定工程と、
前記接続工程および前記固定工程の後、前記第1無人飛行体および前記第2無人飛行体を飛行させて、前記第2無人飛行体によって前記点検用ケーブルの上空側を前記被点検部近傍の所定の高さまで上昇させて保持しておき、その後、前記第1無人飛行体を、前記第2無人飛行体よりも前記被点検部に接近させて前記接触部を前記被点検部に接触させることを特徴とする高所点検方法。
【請求項6】
請求項5に記載の高所点検方法において、
前記第1無人飛行体と前記第2無人飛行体とを連結しておき、
前記接続工程および前記固定工程の後、前記第1無人飛行体を前記第2無人飛行体の揚力によって上昇させ、その後、前記第1無人飛行体に揚力および推力を発生させて前記接触部を前記被点検部に接触させることを特徴とする高所点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高所点検システムおよび高所点検方法に関し、特に無人飛行体を利用したシステムおよび点検方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えば風力発電設備は、100m以上の高さを有するタワーの頂部にローターブレードが回転可能に取り付けられており、上空の風の力によってローターブレードを回転させて電力を得るように構成されている。このようにローターブレードは、高所かつ周囲に何も無いところに位置していることから、雷に打たれる危険性が高い。そのため、ローターブレードには避雷用のレセプタが設けられており、レセプタにはローターブレード内およびタワー内を通って地面まで延びる避雷用の配線が接続されている。これにより、雷電流はレセプタから避雷用の配線を流れて地面に導かれるので、雷電流によるローターブレード等の損傷を抑制できる。
【0003】
レセプタは避雷用の配線によって地面に導通可能に接続されていなければ避雷効果を発揮できないので、避雷効果が発揮できる状態であるか否か、即ちレセプタが避雷用の配線によって接地されているか否かを定期的に点検する必要がある。
【0004】
例えば特許文献1には、無人飛行体を用いてレセプタを点検することが開示されている。特許文献1では、レセプタに接触可能な接触要素が無人飛行体に設けられており、無人飛行体をレセプタの高さまで上昇させてから、接触要素をレセプタに接触させて点検用ケーブルとともに電気回路を形成することで避雷効果が発揮できる状態であるか否かを検査するようにしている。
【0005】
また、特許文献2、3には、複数の無人飛行体を互いに連結した状態で運用する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6584859号公報
【特許文献2】特許第6883297号公報
【特許文献3】特許第6830187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、風力発電設備のローターブレードは100m以上の高さに位置しているので、点検用ケーブルの長さもそれに対応した長さが必要になり、重量が嵩む。しかも、風力発電設備は風の強い場所を選んで設置されているので、点検用ケーブルが風に吹かれて流されやすい。よって、特許文献1のような無人飛行体で100m以上の点検用ケーブルを目的とする高さまで引き上げていくのは現実には困難である。
【0008】
加えて、レセプタはローターブレードの一部分にだけ設けられている小さなものなので、風の強い中で特許文献1の無人飛行体の接触要素を精度良くレセプタに接触させることも困難である。このように、風力発電設備のような高所の点検作業を無人飛行体で行うことは容易なことではない。
【0009】
また、特許文献2、3では、複数の無人飛行体を互いに連結して運用しているが、高所の点検作業に用いることを想定したものではない。
【0010】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、点検用ケーブルを用いた高所の点検を精度良く行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、高所に設けられている被点検部を、複数の無人飛行体と地上から延びる点検用ケーブルとを用いて点検する高所点検システムを前提とすることができる。高所点検システムは、前記点検用ケーブルの上空側の端部が接続されるとともに、前記被点検部に接触する接触部を有する第1無人飛行体と、前記点検用ケーブルの上空側が固定される固定部を有し、前記第1無人飛行体よりも大きな最大揚力の発生が可能に構成された第2無人飛行体とを備えている。前記第2無人飛行体は、前記点検用ケーブルの上空側を前記被点検部近傍の所定の高さまで上昇させて保持することが可能に構成されている。また、前記第1無人飛行体は、前記第2無人飛行体よりも前記被点検部に接近して前記接触部を前記被点検部に接触させることが可能に構成されている。
【0012】
この構成によれば、点検用ケーブルの上空側が固定される第2無人飛行体の最大揚力が相対的に大きいので、点検用ケーブルの上空側を、例えば数十mまたは100m以上の高所まで上昇させて保持しておくことが可能になる。一方、第1無人飛行体の最大揚力は相対的に小さいので、第1無人飛行体の機体は第2無人飛行体の機体に比べて軽くなり、コントロール性が良好になる。よって、第1無人飛行体を用いて接触部を被点検部に接触させることで、第2無人飛行体を用いた場合に比べて、精度良く接触させることが可能になる。また、第1無人飛行体の機体が軽くなるということは、接触部を被点検部に接触させたときに被点検部に作用する力が小さくなり、被点検部の破損や損傷が抑制される。
【0013】
また、本開示の別の態様に係る第1無人飛行体と第2無人飛行体は、可撓性を有する連結部材によって連結された状態で飛行可能に構成されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、最大揚力の大きな第2無人飛行体により第1無人飛行体に上昇力を与えることができるので、第1無人飛行体に電源としてバッテリを搭載している場合にはバッテリの小型化および軽量化が可能になる。その結果、第1無人飛行体の機体が更に軽量になり、コントロール性の更なる向上が可能になり、また被点検部の破損や損傷の抑制効果がより一層高まる。
【0015】
更に別の態様では、連結部材が点検用ケーブルであってもよい。この構成では、第1無人飛行体と第2無人飛行体とを連結するための連結部材を別途設ける必要が無くなるので、システム全体の重量が軽くなり、高所の点検作業に有利になる。
【0016】
また、前記第1無人飛行体は、前記連結部材が挿通する筒部材と、当該筒部材の基端部を水平線周りに回動可能に支持する軸部とを備えていてもよい。この場合、前記筒部材は、当該筒部材の先端部が前記第1無人飛行体の回転翼よりも上方に位置するまで起立可能に構成することができる。
【0017】
すなわち、第2無人飛行体の揚力を利用して第1無人飛行体を上昇させる場合を想定すると、両無人飛行体が地上に置かれた状態から、第2無人飛行体が先に飛び立ち、その後、第2無人飛行体の揚力によって第1無人飛行体が上昇していくことになる。このとき、連結部材が可撓性を有しているので、機体の向き等によっては連結部材が第1無人飛行体の機体や回転翼に絡まってしまうことが考えられるが、本態様のように筒部材に予め挿通しておくことで、連結部材が機体や回転翼に絡まないようにすることができる。
【0018】
また、高所に設けられている被点検部を、複数の無人飛行体と地上から延びる点検用ケーブルとを用いて点検する高所点検方法を前提とすることもできる。高所点検方法は、前記被点検部に接触する接触部を有する第1無人飛行体に、前記点検用ケーブルの上空側の端部を接続する接続工程と、前記第1無人飛行体よりも大きい最大揚力の発生が可能に構成された第2無人飛行体に、前記点検用ケーブルの上空側を固定する固定工程とを備えている。さらに、前記接続工程および前記固定工程の後、前記第1無人飛行体および前記第2無人飛行体を飛行させて、前記第2無人飛行体によって前記点検用ケーブルの上空側を前記被点検部近傍の所定の高さまで上昇させて保持しておき、その後、前記第1無人飛行体を、前記第2無人飛行体よりも前記被点検部に接近させて前記接触部を前記被点検部に接触させる工程も備えている。
【0019】
前記第1無人飛行体と前記第2無人飛行体とを連結する場合には、前記接続工程および前記固定工程の後、前記第1無人飛行体を前記第2無人飛行体の揚力によって上昇させ、その後、前記第1無人飛行体に揚力および推力を発生させて前記接触部を前記被点検部に接触させることもできる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、第1無人飛行体よりも大きな最大揚力の発生が可能に構成された第2無人飛行体を用いて点検用ケーブルを上昇させておき、第1無人飛行体を用いて接触部を被点検部に接触させることで、点検用ケーブルを用いた高所の点検を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る高所点検システムの運用時を説明する図である。
【
図3】待機用ドローンを上方から見た斜視図である。
【
図4】待機用ドローンを下方から見た斜視図である。
【
図7】接触用ドローンを上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る高所点検システムSの運用時を説明する図である。本実施形態では、高所点検システムSを用いて風力発電設備100を点検する例について説明する。風力発電設備100は、地面Gに設置されたタワー101と、タワー101の頂部に取り付けられたナセル102と、ナセル102に回転可能に支持された複数枚のローターブレード103とを備えている。ナセル102の内部には発電機(図示せず)が内蔵されており、ローターブレード103の回転力が発電機に伝達されて当該発電機が回転して電力が発生する。発生した電力は、タワー101内を通る電力ケーブル(図示せず)によって地上へ送られる。タワー101の高さは、例えば数十m以上、100m以上となる場合がある。風力発電設備100は、例えば海岸、丘陵地等の地上Gに建設されたものであってもよいし、洋上に建設されたものであってもよい。
【0024】
ローターブレード103には、避雷用のレセプタ103aが設けられている。レセプタ103aにはローターブレード103内、ナセル102内およびタワー101内を通って地面Gまで延びる避雷用の配線104が接続されている。レセプタ103aおよび避雷用の配線104により、雷電流が地面Gに導かれるので、雷電流によるローターブレード103等の損傷を抑制できる。高所点検システムSは、レセプタ103aおよび避雷用の配線104によって避雷効果が発揮できるか否か、即ちレセプタ103aが導通可能な状態で、かつ、避雷用の配線104によって接地されているか否かを点検するためのシステムであり、点検装置と呼ぶこともできる。また、高所点検システムSを使用することで、レセプタ103aが導通可能な状態で避雷用の配線104によって接地されているか否かを点検する点検方法を実行することも可能になっている。レセプタ103aは、高所に設けられている被点検部に相当する。
【0025】
尚、高所点検システムSは、風力発電設備100の点検以外にも、各種タワーやビル、橋梁、工場、各種工事現場等の高所に設けられている被点検部を点検する場合にも使用できる。被点検部としては、例えば避雷用のレセプタ以外にも避雷用のケーブル等であってもよい。また、例えば信号灯のような電気設備が被点検部であってもよい。
【0026】
(高所点検システムSの概要)
高所点検システムSは、レセプタ103aを、複数の無人飛行体と地上から延びる点検用ケーブルCとを用いて点検するものである。無人飛行体は、例えばドローン等のような回転翼を複数備えたものであってもよいし、ヘリコプターのようにメインロータとテールロータとを備えたものであってもよい。本実施形態では、無人飛行体としてドローンを用いた場合について説明する。
【0027】
すなわち、高所点検システムSは、待機用ドローン10と、接触用ドローン50と、待機用ドローン10を操縦するための第1送信機P1と、接触用ドローン50を操縦するための第2送信機P2とを備えている。接触用ドローン50が本発明の第1無人飛行体に相当し、待機用ドローン10が本発明の第2無人飛行体に相当する。本例では、待機用ドローン10および接触用ドローン50をそれぞれ第1送信機P1および第2送信機P2で操縦する例を示しているが、1つの送信機で待機用ドローン10および接触用ドローン50を操縦することも可能であり、送信機の数は2つに限定されるものではない。第1送信機P1および第2送信機P2を操作する操縦者は地上に留まったままでもよいし、地上Gから上がった場所にいてもよい。
【0028】
待機用ドローン10は、点検用ケーブルCの上空側を上昇させるとともに、回転翼を停止させた状態の接触用ドローン50も点検用ケーブルCの上空側と一緒に上昇させることが可能に構成されている。つまり、待機用ドローン10は、接触用ドローン50よりも大きな最大揚力の発生が可能となるように構成されており、接触用ドローン50よりも大型、かつ、重いドローンとなっている。尚、点検用ケーブルCは可撓性を有する電線等で構成されている。
【0029】
図2は、高所点検システムSのブロック図である。待機用ドローン10は、回転翼を駆動する第1~第6モータ11~16と、フライトコントローラ20と、センサ21と、通信部22と、通信部22に接続されたアンテナ23と、バッテリ25とを備えている。センサ21は、飛行に必要な情報として、例えば機体の姿勢、位置、加速度等の検出が可能なものであり、検出値はすぐにフライトコントローラ20に入力される。通信部22は、第1送信機P1から電波に乗せて送信される制御信号を受信する部分であり、受信した制御信号はすぐにフライトコントローラ20に入力される。バッテリ25は、第1~第6モータ11~16、フライトコントローラ20、センサ21、通信部22等に電力を供給する電源である。図示しないが、第1~第6モータ11~16はスピードコントローラを介して回転数の制御が行われる。モータの個数は、6つに限られるものではなく、後述する回転翼の数に対応した個数であればよい。
【0030】
フライトコントローラ20による第1~第6モータ11~16の制御は、従来から周知の手法を利用することができるので、詳細な説明は省略するが、フライトコントローラ20は、例えば第1送信機P1から送信された制御信号に従い、操縦者の操縦操作に対応した動作が実現されるように、第1~第6モータ11~16を個別に制御する。このとき、センサ21の各検出値が考慮される。
【0031】
接触用ドローン50の最大揚力は、待機用ドローン10よりも小さく設定されており、接触用ドローン50のモータの数は、待機用ドローン10のモータの数よりも少なくなっている。具体的には、接触用ドローン50は、回転翼を駆動する第1~第4モータ51~54と、フライトコントローラ60と、センサ61と、カメラ62と、通信部63と、通信部63に接続されたアンテナ64と、バッテリ65とを備えている。通信部63は、第2送信機P2から電波に乗せて送信される制御信号を受信する部分である。フライトコントローラ60、センサ61、通信部63、バッテリ65は、待機用ドローン10のものと同様なものであるが、最大揚力が小さく設定されている分、バッテリ65は、待機用ドローン10のバッテリ25に比べて小型かつ軽量になっている。また、カメラ62は、例えばCCD等の撮像素子を有しており、接触用ドローン50の周囲を撮像可能なものである。カメラ62によって取得された画像データは、通信部63を介して第2送信機P2に送信される。第2送信機P2には、受信した画像データを映像として表示可能な表示パネルP2aが設けられており、操縦者は、カメラ62で撮像された映像をほぼリアルタイムで見ることができるようになっている。尚、カメラ62によって取得された画像データは、第1送信機P1に送信して当該第1送信機P1が有する表示パネル(図示せず)に表示させてもよい。また、表示パネルP2aは、第2送信機P2と別体であってもよい。
【0032】
本実施形態では、接触用ドローン50と待機用ドローン10の最大揚力の差が、モータの数、即ち回転翼の数で生じるようにしているが、これに限らず、モータの数が同じであっても、モータの出力の差によって接触用ドローン50と待機用ドローン10の最大揚力の差を生じさせることもできる。また、回転翼の径や最大回転数の差によっても、接触用ドローン50と待機用ドローン10の最大揚力の差を生じさせることができ、どのような方法で最大揚力の差を生じさせてもよい。
【0033】
(待機用ドローン10の詳細構造)
図3~
図6は、待機用ドローン10の外観を示すものである。各図に示すように待機用ドローン10の前と後を仮に定義するが、ドローンは前進、後退、左右方向への移動が自由にできるので、前後の方向は特に限定されない。
【0034】
待機用ドローン10は、機体28と、機体28から放射状に延びる6本のアーム29とを備えている。機体28には、
図2に示しているフライトコントローラ20、センサ21、通信部22、バッテリ25等が搭載されている。6本のアーム29の先端部には、それぞれ第1~第6モータ11~16が固定されている。第1~第6モータ11~16は、回転軸が上下方向に延びる姿勢とされており、回転軸の上端部に第1~第6回転翼31~36がそれぞれ固定されている。6本のアーム29のうちの3本には、脚部29aが機体28よりも下方へ突出するように設けられている。脚部29aには、アンテナ23を内蔵することが可能になっている。
【0035】
尚、機体28やアーム29の形状および構造は図示したものに限られない。例えばアーム29の本数が6本より少なくてもよく、この場合、アーム29の先端側を複数に分岐させ、それぞれにモータを固定すればよい。
【0036】
図4および
図5に示すように、機体28の下部には、点検用ケーブルCの上空側が固定される固定部28aが設けられている。点検用ケーブルCの上空側の部分は、固定部28aに固定され、点検用ケーブルCが待機用ドローン10から離脱しないようになっている。固定部28aは、例えば点検用ケーブルCの上空側の部分を把持する把持部や、点検用ケーブルCの上空側の部分を挟持する挟持部、点検用ケーブルCの上空側の部分を締め付けた状態で固定する締め付け部等で構成することができ、その構造は特に限定されない。
【0037】
待機用ドローン10は、点検用ケーブルCを地面Gから100m以上の高さまで上昇させることが可能な揚力を発生する。また、待機用ドローン10には、接触用ドローン50が点検用ケーブルCを介して連結される。接触用ドローン50が揚力を発生しない状態であったとしても、待機用ドローン10は、接触用ドローン50を点検用ケーブルCとともに、地面Gから100m以上の高さまで上昇させる。このような大きな揚力を発生する必要があることから、第1~第6回転翼31~36を備えるとともに、第1~第6モータ11~16を強力なものにしており、さらにバッテリ25も大容量のものにしている。
【0038】
(接触用ドローン50の詳細構造)
図7~
図10は、接触用ドローン50の外観を示すものである。各図に示すように接触用ドローン50の前と後および左右を仮に定義するが、これは説明の便宜を図るためであり、前後および左右の方向は特に限定されない。
【0039】
接触用ドローン50は、機体68と、機体68から左方向に延びる左アーム69Aおよび右方向に延びる右アーム69Bとを備えている。機体68には、フライトコントローラ60、センサ61、カメラ62(
図7~
図10で示さず)、通信部63、バッテリ65等が搭載されている。
【0040】
左アーム69Aおよび右アーム69Bの先端部はそれぞれ前後方向に分岐しており、左アーム69Aおよび右アーム69Bの先端部には、それぞれ第1~第4モータ51~54が固定されている。第1~第4モータ51~54は、回転軸が上下方向に延びる姿勢とされており、回転軸の下端部に第1~第4回転翼71~74がそれぞれ固定されている。
【0041】
接触用ドローン50の第1~第4回転翼71~74の回転中心を全て通る仮想円と、待機用ドローン10の第1~第6回転翼31~36の回転中心を全て通る仮想円とを想定した時、待機用ドローン10の方が大きくなっている。つまり、待機用ドローン10が接触用ドローン50よりも大型である。
【0042】
また、接触用ドローン50の左アーム69Aおよび右アーム69Bには、それぞれ脚部69aが機体68よりも下方へ突出するように設けられている。尚、機体68やアーム69A、69Bの形状および構造は図示したものに限られない。例えばアームを4本設けて、各アームにモータを固定してもよい。
【0043】
接触用ドローン50には、第1および第4回転翼71、74を保護する右側保護部材80と、第2および第3回転翼72、74を保護する左側保護部材81とが設けられている。右側保護部材80は、第1および第4回転翼71、74の周囲を囲むように形成されており、右アーム69Bに固定されている。左側保護部材81は、第2および第3回転翼72、73の周囲を囲むように形成されており、左アーム69Aに固定されている。
【0044】
右側保護部材80は、棒状部材80aを平面視で矩枠形状をなすように組み合わせて構成することができる。この場合、棒状部材80aを上下方向に互いに間隔をあけて複数設けて一体化することもできる。また、右側保護部材80は、一体成形された枠体等で構成してもよい。左側保護部材81も同様に構成されており、棒状部材81aを組み合わせてもよいし、一体成形された枠体であってもよい。また、右側保護部材80と左側保護部材81とが一体成形されていてもよい。
【0045】
接触用ドローン50は、風力発電設備100のレセプタ103aに接触する接触部83を有している。すなわち、接触部83が取り付けられる取付部84が、左アーム69Aの前端部から右アーム69Bの前端部まで延びるように設けられている。取付部84は、右側保護部材80および左側保護部材81の前端部よりも前方へ突出している。接触部83は導電性を有する材料で構成されており、取付部84の左右方向中央部に前方へ向けて突出するように取り付けられている。接触部83と取付部84との間には電気を通さない部材が介在されており、接触部83と取付部84とが絶縁されている。接触部83には、点検用ケーブルCの上空側の端部が導通可能に接続されている。したがって、接触用ドローン50は、点検用ケーブルCを介して待機用ドローン10と連結されることになる。
【0046】
接触用ドローン50は、点検用ケーブルCが挿通する筒部材85と、筒部材85の基端部を水平線周りに回動可能に支持する軸部86とを備えている。軸部86は、接触用ドローン50の左右方向中央部かつ前後方向中央部において左右方向に略水平に延びている。筒部材85は、例えば硬質樹脂や金属等からなる直管状の部材で構成されており、飛行時に作用する外力で変形しない程度の剛性を有している。筒部材85の長さは、例えば接触用ドローン50の前後方向の寸法の1/2程度に設定されている。
【0047】
筒部材85の内径は、点検用ケーブルCの外径よりも大きく設定されており、点検用ケーブルCを筒部材85に容易に挿通させることができるようになっている。筒部材85の基端部には、左右方向に延びる軸線を持った環状部85aが設けられている。環状部85aに軸部86が挿通された状態になっている。この状態で筒部材85が軸部86周りに上下方向に回動可能になる。筒部材85は、当該筒部材85の先端部が接触用ドローン50の回転翼71~74よりも上方に位置するまで起立可能に構成されている。また、筒部材85は、当該筒部材85の先端部が基端部と略同じ高さに位置するまで倒れるようになっている(
図8に仮想線で示す)。点検用ケーブルCが上方に引っ張られることで筒部材85が起立する一方、点検用ケーブルCが上方に引っ張られていない状態では筒部材85が自然に倒れた状態になる。
【0048】
(高所点検方法)
次に、上述のように構成された高所点検システムSを用いた高所点検方法について説明する。まず、接触用ドローン50に点検用ケーブルCの上空側の端部を接続する接続工程と、待機用ドローン10に点検用ケーブルCの上空側を固定する固定工程とを行う。点検用ケーブルCの「上空側」とは、点検時に上空まで上昇する側のことであり、反対に点検用ケーブルCの「地上側」とは、点検時に地上に留まる側のことである。
【0049】
接続工程では、点検用ケーブルCを筒部材85に挿通させる。また、点検用ケーブルCを、機体68やアーム69A、69Bの所望の箇所に適宜固定しながら、接触部83まで取り回し、点検用ケーブルCの上空側の端部を接触部83に導通可能に接続する。また、固定工程では、点検用ケーブルCの上空側を待機用ドローン10の固定部28a(
図4に示す)に固定する。
【0050】
接続工程および固定工程の後、待機用ドローン10および接触用ドローン50を地上に置く。その後、
図1に示すように、待機用ドローン10および接触用ドローン50を飛行させる。このとき、接触用ドローン50の第1~第4モータ51~54は回転させないままにしておき、待機用ドローン10の第1~第6モータ11~16のみ回転させる。この操作は、第1送信機P1および第2送信機P2の操作によって可能である。尚、このとき、接触用ドローン50の第1~第4モータ51~54を回転させて待機用ドローン10よりも小さな揚力を発生させてもよい。
【0051】
次いで、待機用ドローン10をレセプタ103a近傍の所定の高さまで上昇させてホバリングさせる。これにより、点検用ケーブルCの上空側がレセプタ103a近傍の所定の高さまで上昇した状態で保持される。また、自らが揚力を発生していない接触用ドローン50もレセプタ103a近傍の所定の高さまで上昇する。所定の高さとは、接触用ドローン50がレセプタ103aと同程度の高さとなる高さであり、例えば待機用ドローン10をレセプタ103aよりも数m程度高い所でホバリングさせてもよいし、レセプタ103aと同じ高さでホバリングさせてもよい。
【0052】
待機用ドローン10と接触用ドローン50との距離は、両ドローン10、50間の点検用ケーブルCの長さに相当している。両ドローン10、50間の点検用ケーブルCの長さが長ければ、待機用ドローン10のホバリング高さを高くしておき、反対に、両ドローン10、50間の点検用ケーブルCの長さが短ければ、待機用ドローン10のホバリング高さを低くして、接触用ドローン50がレセプタ103aと同程度の高さとなるようにする。待機用ドローン10のホバリング高さは、第1送信機P1の操作によって任意に変えることができる。
【0053】
また、待機用ドローン10は、ローターブレード103から所定距離だけ離れたところでホバリングするように、第1送信機P1で操作する。所定距離だけ離しておくことで、待機用ドローン10が例えば強風等であおられたとしても、待機用ドローン10がローターブレード103に接触してしまうのを回避できる。
【0054】
その後、第2送信機P2を操作して接触用ドローン50を待機用ドローン10よりもローターブレード103のレセプタ103aに接近させていく。そして、接触用ドローン50の接触部83をレセプタ103aに接触させる。このとき、カメラ62で接触部83とレセプタ103aとを撮像することで、地上の操縦者は接触用ドローン50を的確に操作することが可能になる。接触部83をレセプタ103aに接触させる際、必要に応じて待機用ドローン10もローターブレード103に接近させてもよいが、ローターブレード103と待機用ドローン10との距離は、ローターブレード103と接触用ドローン50との距離よりも長く確保しておく。接触部83をレセプタ103aに接触させる際には、待機用ドローン10はホバリングさせたままでよいので、操縦者は1名であってもよい。
【0055】
接触部83をレセプタ103aに接触させると、タワー101内の電力ケーブル、点検用ケーブルC、接触部83、レセプタ103aにより電気回路が構成される。この電気回路に電気が流れる状態であれば、避雷効果が発揮できる状態であると判定きる。一方、電気回路に電気が流れない状態であれば、避雷効果が発揮できない状態であると判定できる。この判定時には、従来から周知の判定機器等を利用できる。
【0056】
(作用効果)
以上説明したように、本実施形態では、点検用ケーブルCの上空側が固定される待機用ドローン10の最大揚力が接触用ドローン50に比べて大きいので、点検用ケーブルCの上空側を例えば数十mまたは100m以上の高所まで上昇させて保持しておくことが可能になる。また、待機用ドローン10が大型であることから、強風等であおられにくくなり、点検用ケーブルCの上空側がローターブレード103から離れすぎないようにすることができる。
【0057】
一方、接触用ドローン50の最大揚力は待機用ドローン10に比べて小さいので、接触用ドローン50は待機用ドローン10に比べて軽くなり、コントロール性が良好になる。コントロール性が良好になるということは、所望の位置に到達するまで精度良く操縦できるということであり、よって、接触用ドローン50を用いて接触部83をレセプタ103aに接触させることで、待機用ドローン10を用いた場合に比べて、高精度に接触させることができる。また、接触させるまでに要する時間も短縮できる。さらに、接触用ドローン50が軽くなるということは、接触部83をレセプタ103aに接触させたときにレセプタ103aに作用する力が小さくなり、レセプタ103aの破損や損傷を抑制できる。
【0058】
また、仮に接触用ドローン50が故障等によって揚力を発生しなくなった場合には、点検用ケーブルCによって待機用ドローン10に連結されているので、接触用ドローン50の落下が抑制される。従って、接触用ドローン50の破損を抑制できるとともに、点検時の安全性を高めることができる。
【0059】
上述した例では、待機用ドローン10と接触用ドローン50とを点検用ケーブルCで連結した場合について説明したが、これに限らず、点検用ケーブルCとは別の可撓性部材からなる連結部材で待機用ドローン10と接触用ドローン50とを連結してもよい。連結部材としては、例えば紐、ロープ、ワイヤ、糸等を挙げることができる。この場合も連結部材を筒部材85に挿通させることができる。
【0060】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明に係る高所点検システムおよび高所点検方法は、例えば風力発電設備等の点検を行う場合に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
C 点検用ケーブル(連結部材)
S 高所点検システム
10 待機用ドローン(第2無人飛行体)
31~36 第1~第6回転翼
50 接触用ドローン(第1無人飛行体)
71~74 第1~第4回転翼
83 接触部
85 筒部材
86 軸部
103a レセプタ(被点検部)