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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033456
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/02 20060101AFI20240306BHJP
   H05B 6/68 20060101ALI20240306BHJP
   F24C 7/04 20210101ALN20240306BHJP
【FI】
F24C7/02 315E
F24C7/02 320F
H05B6/68 320Q
H05B6/68 320L
F24C7/04 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137037
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹中 香織
(72)【発明者】
【氏名】安島 恵
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 智美
(72)【発明者】
【氏名】山下 みゅう
(72)【発明者】
【氏名】松井 友秀
(72)【発明者】
【氏名】駒▲崎▼ 博紀
【テーマコード(参考)】
3K086
3L086
3L087
【Fターム(参考)】
3K086AA03
3K086BA08
3K086BB02
3K086CA04
3K086CA07
3K086CB04
3K086CD10
3L086AA01
3L086AA13
3L086CA01
3L086CB05
3L086CB11
3L086CB16
3L086CC21
3L086DA01
3L086DA28
3L087AA04
3L087BA01
3L087BB05
3L087BB09
3L087BB12
3L087CA11
3L087DA28
(57)【要約】
【課題】 被加熱物が赤外線センサの死角に置かれた場合でも、被加熱物が適温まで温度上昇したときには、適切なタイミングでレンジ加熱を停止する加熱調理器を提供する。
【解決手段】 底面にテーブルプレートを配置した加熱室と、テーブルプレートに載置した被加熱物を誘電加熱するレンジ加熱部と、テーブルプレート上の温度を検出する赤外線センサと、加熱室内で発生した蒸気を検出する蒸気センサと、被加熱物の仕上がり温度を入力する操作部と、仕上がり温度となるようにレンジ加熱手段を制御する制御部と、を備えた加熱調理器であって、制御部は、赤外線センサの検出温度が所定の判定温度に到達した時間に応じて、レンジ加熱終了時間を設定する第一加熱モードと、蒸気センサの検出温度の変化量が所定の判定変化量に到達した時間に応じて、レンジ加熱終了時間を設定する第二加熱モードと、の何れかを選択してレンジ加熱終了時間を決定する加熱調理器。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面にテーブルプレートを配置した加熱室と、
前記テーブルプレートに載置した被加熱物を誘電加熱するレンジ加熱部と、
前記テーブルプレート上の温度を検出する赤外線センサと、
前記加熱室内で発生した蒸気を検出する蒸気センサと、
前記被加熱物の仕上がり温度を入力する操作部と、
前記仕上がり温度となるように前記レンジ加熱部を制御する制御部と、
を備えた加熱調理器であって、
該制御部は、
前記赤外線センサの検出温度が所定の判定温度に到達した時間に応じて、レンジ加熱終了時間を設定する第一加熱モードと、
前記蒸気センサの検出温度の変化量が所定の判定変化量に到達した時間に応じて、レンジ加熱終了時間を設定する第二加熱モードと、
の何れかを選択してレンジ加熱終了時間を決定することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記蒸気センサの検出温度の変化量が前記判定変化量に到達する前に、前記赤外線センサの検出温度が前記判定温度に到達した場合は、前記第一加熱モードによるレンジ加熱終了時間を選択することを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱調理器において、
前記第一加熱モードによるレンジ加熱終了時間とは、前記赤外線センサの検出温度が前記判定温度に到達するまでに要した初期加熱時間と、該初期加熱時間の長さに略比例した追加加熱時間の和であることを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記赤外線センサの検出温度が前記判定温度に到達する前に、前記蒸気センサの検出温度の変化量が前記判定変化量に到達した場合は、前記第二加熱モードによるレンジ加熱終了時間を選択することを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
請求項4に記載の加熱調理器において、
前記第二加熱モードによるレンジ加熱終了時間とは、前記蒸気センサの検出温度の変化量が前記判定変化量に到達するまでに要した時間と、所定時間の和であることを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサまたは蒸気センサの出力に基づいてレンジ加熱を制御する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤外線センサの出力に基づいてレンジ加熱を制御する加熱調理器として、特許文献1に記載の加熱調理器が知られている。例えば、同文献の請求項1には「加熱室と、被加熱物を加熱する加熱手段と、前記加熱室で前記被加熱物が載置されるテーブルプレートと、前記被加熱物の重量を測定する重量センサと、前記非加熱物に係る温度を検出する温度センサと、仕上がり温度となるように、前記重量センサと前記温度センサの検出値に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段と、を備え、該制御手段は、前記被加熱物を加熱している時の温度上昇を前記温度センサにて検出し、検出した温度上昇に応じて前記被加熱物が冷凍状態であるか否かを保存状態として判定し、前記被加熱物の保存状態に基づいて加熱時間を算出し、前記被加熱物を加熱する」との記載があり、請求項5には「前記温度センサは、赤外線センサである」との記載がある。
【0003】
このように、特許文献1は、赤外線センサが検出した温度上昇に応じて加熱時間を算出することで、被加熱物の保存状態、量、初期表面温度に関わらず、適温に加熱するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-211171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の図3等に示される位置に配置した赤外線センサでは、テーブルプレートの上面全体を観測できないため、赤外線センサの死角(例えば、テーブルプレートの前縁左端や前縁右端)に被加熱物が置かれた場合には、被加熱物の温度上昇を正しく検出できず、被加熱物が適温に加熱された後も、レンジ加熱を継続してしまい被加熱物が過加熱となることがあった。
【0006】
そこで、本発明では、被加熱物が赤外線センサの死角に置かれた場合であっても、被加熱物が適温まで温度上昇したときには、適切なタイミングでレンジ加熱を停止することができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の加熱調理器は、底面にテーブルプレートを配置した加熱室と、前記テーブルプレートに載置した被加熱物を誘電加熱するレンジ加熱部と、前記テーブルプレート上の温度を検出する赤外線センサと、前記加熱室内で発生した蒸気を検出する蒸気センサと、前記被加熱物の仕上がり温度を入力する操作部と、前記仕上がり温度となるように前記レンジ加熱手段を制御する制御部と、を備えた加熱調理器であって、該制御部は、前記赤外線センサの検出温度が所定の判定温度に到達した時間に応じて、レンジ加熱終了時間を設定する第一加熱モードと、前記蒸気センサの検出温度の変化量が所定の判定変化量に到達した時間に応じて、レンジ加熱終了時間を設定する第二加熱モードと、の何れかを選択してレンジ加熱終了時間を決定するものとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加熱調理器によれば、被加熱物が赤外線センサの死角に置かれた場合であっても、被加熱物が適温まで温度上昇したときには、適切なタイミングでレンジ加熱を停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施例に係る加熱調理器の前方斜視図。
図2】一実施例に係る加熱調理器の外枠を外した後方斜視図。
図3図1のA-A断面図。
図4図1のA-A断面図であって、茶わんにごはんを入れて加熱する場合の赤外線センサの動作説明図。
図5】赤外線センサの基準位置を説明する赤外線センサ部の拡大断面図。
図6】赤外線センサの終点位置を説明する赤外線センサ部の拡大断面図。
図7】観測窓を閉めた状態を説明する赤外線センサ部の拡大断面図。
図8】一実施例に係る加熱調理器の制御ブロック図。
図9】一実施例に係る加熱調理器のあたための加熱動作を説明する図。
図10】本発明の実施例に係る加熱調理器の被加熱物の保存状態の判別方法を説明するフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の加熱調理器100の実施例を添付図面に従って説明する。
【0011】
図1から図3は、本実施例の主要部分を示すもので、図1は本実施例の加熱調理器100の本体1を前面側から見た斜視図、図2は同本体の外枠を除いた状態で後方側から見た斜視図、図3図1のA-A断面図である。
【0012】
各図において、加熱調理器100の本体1は、加熱室28の中に加熱する食品(被加熱物)を入れ、マイクロ波やヒータの熱、過熱水蒸気を使用して食品を加熱調理する。
【0013】
ドア2は、加熱室28の内部に食品を出し入れするために開閉するもので、ドア2を閉めることで加熱室28を密閉状態にし、食品を加熱する時に使用するマイクロ波の漏洩を防止し、ヒータの熱や過熱水蒸気を封じ込め、効率良く加熱することを可能とする。
【0014】
取っ手9は、ドア2に取り付けられ、ドア2の開閉を容易にするもので、手で握りやすい形状になっている。
【0015】
ガラス窓3は、調理中の食品の状態が確認できるようにドア2に取り付けられており、ヒータ等の発熱による高温に耐えるガラスを使用している。
【0016】
操作パネル4は、ドア2の前面下側に設けられ、マイクロ波加熱やヒータ加熱等の加熱手段や加熱する時間等と加熱温度の入力するための操作部6と、操作部6から入力された内容や調理の進行状態を表示する表示部5とで構成されている。
【0017】
外枠7は、加熱調理器100の本体1の上面と左右側面を覆うキャビネットである。
【0018】
水タンク42は、過熱水蒸気を作るのに必要な水を溜めておく容器であり、加熱調理器100の本体1の前面下側に設けられ、本体1の前面から着脱可能な構造とすることで給水および排水が容易にできるようになっている。
【0019】
後板10は、前記したキャビネットの後面を形成するものであり、上部に外部排気ダクト18が取り付けられ、食品から排出した蒸気や本体1の内部の部品を冷却した後の冷却風(廃熱)Wを外部排気ダクト18の外部排気口8から排出する。
【0020】
機械室20は、加熱室底面28aと本体1の底板21との間の空間部に設けられ、底板21上には食品を加熱するためのマグネトロン33、マグネトロン33に接続された導波管47、制御部23a(図8参照)を実装した制御基板23、その他後述する各種部品、これらの各種部品を冷却するファン装置15等が取り付けられている。
【0021】
加熱室底面28aは、略中央部が凹状に窪んでおり、その中に回転アンテナ26が設置され、マグネトロン33より放射されるマイクロ波エネルギーが導波管47、回転アンテナ26の出力軸46aが貫通する開孔部47aを通して回転アンテナ26の下面に流入し、回転アンテナ26で拡散されて加熱室28内に放射される。回転アンテナ26の出力軸46aは回転アンテナ駆動手段46に連結されている。
【0022】
ファン装置15は、底板21に取り付けた冷却モータに取り付けられた冷却ファンとで構成する。このファン装置15によって発生する冷却風Wは、機械室20内の自己発熱するマグネトロン33やインバータ回路(図示無し)、奥側重量センサ25c,左側重量センサ25bなどを冷却する。また、冷却風Wは、加熱室28の外側と外枠7の間および前記したように熱風ケース11aと後板10の間を流れ、外枠7と後板10を冷却しながら外部排気ダクト18の外部排気口8より排出される。さらに、後述する熱風モータ13を冷却するためのダクト16aと、後述する赤外線ケース48内に収められた赤外線ユニット50を冷却するためのダクト16bが設けられ、赤外線ユニット50を冷却した冷却風Wは、加熱室28内の排熱(水蒸気など)を廃棄する排気ダクト28eの反対側から排出された後外部排気ダクト18より外に排出される。
【0023】
レンジ加熱部330(図8)はマグネトロン33とインバータ回路(図示せず)よりなり制御部23aによって制御される。
【0024】
加熱室28の後部には、熱風ユニット11が取り付けられ、熱風ユニット11内には加熱室28内の空気を効率良く循環させる熱風ファン32が取り付けられ、加熱室奥壁面28bには空気の通り道となる熱風吸気孔31と熱風吹出し孔30が設けられている。
【0025】
熱風ファン32は、熱風ケース11aの外側に取り付けられた熱風モータ13の駆動により回転し、熱風ヒータ14で循環する空気を加熱する。
【0026】
また、熱風ユニット11は、加熱室奥壁面28bの後部側に熱風ケース11aを設け、加熱室奥壁面28bと熱風ケース11aとの間に熱風ファン32とその外周側に位置するように熱風ヒータ14を設け、熱風ケース11aの後側に熱風モータ13を取り付け、そのモータ軸を熱風ケース11aに設けた穴を通して熱風ファン32と連結している。
【0027】
熱風モータ13は、加熱室28や熱風ヒータ14からの熱によって温度上昇するため、それを防ぐために、熱風モータカバー17によって囲い、略筒状に形成されてダクト16aを熱風ケース11aと後板10との間に位置し、ダクト16aの上端開口部を熱風モータカバー17の下面に接続し、下端開口部をファン装置15の吹出し口に接続し、ファン装置15からの冷却風Wの一部を熱風モータカバー17内に取り入れるようにしている。
【0028】
加熱室28の加熱室天面28cの裏側には、ヒータよりなるグリル加熱手段12が取り付けられている。グリル加熱手段12は、マイカ板にヒータ線を巻き付けて平面状に形成し、加熱室28の天面裏側に押し付けて固定し、加熱室28の天面を加熱して加熱室28内の食品を輻射熱によって焼くものである。
【0029】
また、加熱室28の加熱室天面28cの奥側には後述する赤外線ユニット50が設けられ、赤外線ユニット50を冷却するために赤外線ケース48にて覆い、略筒状に形成されてダクト16bを熱風ケース11aと後板10との間に位置し、ダクト16bの上端開口部を赤外線ケース48の側面に接続し、下端開口部を熱風モータカバー17上面と接続し、ファン装置15からの冷却風Wの一部を取り入れるようにしている。
【0030】
加熱室28の加熱室天面28cの左奥側にはサーミスタを用いて加熱室28の雰囲気の加熱室温度TH1を検出する加熱室温度センサ80を設けている。
【0031】
また、加熱室28の加熱室天面28cの左奥側にはサーミスタを用いて加熱室28内の蒸気を検出する蒸気センサ81を設けている。この蒸気センサ81は、次のように蒸気の発生を検出する。すなわち、食品から蒸気が発生すると、蒸気センサ81の検出温度の単位時間(例えば0.1秒)当たりの変化量が一定値を超えるという特性がある。従って、この一定値を判定変化量ΔTthと定め、蒸気センサ81の検出温度変化量が判定変化量ΔTthを超えたときに、蒸気を検出したと判定することができる。
【0032】
また、加熱室底面28aには、複数個の重量センサ25、例えば前側左右に左側重量センサ25b、右側重量センサ(図示無し)、後側中央に奥側重量センサ25cが設けられ、その上にテーブルプレート24が載置されている。
【0033】
テーブルプレート24は、食品を載置するためのもので、ヒータ加熱とマイクロ波加熱の両方に使用できるように耐熱性を有し、かつ、マイクロ波の透過性が良い材料で成形されている。
【0034】
ボイラー43は、熱風ユニット11の熱風ケース11aの外側面に取り付けられ、飽和水蒸気を熱風ユニット11内に臨ませ、熱風ユニット11内に噴出した飽和水蒸気は熱風ヒータ14によって加熱され過熱水蒸気となる。
【0035】
ポンプ手段87は、水タンク42の水をボイラー43まで汲み上げるもので、ポンプとポンプを駆動するモータで構成される。ボイラー43への給水量の調節はモータのON/OFFの比率で決定する。
【0036】
加熱手段はレンジ加熱部330、熱風ヒータ14、熱風モータ13、グリル加熱手段12、ボイラー43などである。
【0037】
次に、図4図7を用いて加熱室28の上方に設けられた、非接触で被加熱物の温度を検出する赤外線センサについて詳細を説明する。
【0038】
図4図3で示す断面図を使用して茶わんにごはんを入れて加熱する場合の赤外線センサの動作説明図、図5は基準位置を示す赤外線センサ部の説明用の拡大図、図6は、終点位置を示す赤外線センサの説明用の拡大図、図7は、観測窓を閉めた状態を示す赤外線センサの説明用の拡大図である。
【0039】
51はモータで、モータ51の向きは、回転軸51aと加熱室奥壁面28bと並行となるように取り付けられている。そして、回転軸51aが後述する筒状のユニットケース54を回転(駆動)させることで、ユニットケース54に収めた赤外線センサ52を搭載した基板53を回転させて赤外線センサ52のレンズ部52aの向きを加熱室底面28aの奥側(加熱室奥壁面28b側)から加熱室開口部28dまでの範囲を回転移動して温度を検出できるようにしている。モータ51はステッピングモータを使用し制御基板23に設けられた制御部23aの制御によって回転軸51aを正転、逆転、また回転角度を好みに動作可能となっている。
【0040】
赤外線センサ52は、赤外線検出素子(例えばサーモパイル)を複数個設け被加熱物60cを非接触で温度を検出するもので、ここでは、回転軸51aの鉛直方向に一列に8素子整列した赤外線センサを使用している。そのため、加熱室底面28aの左右方向は一度に前記複数個所の温度の検出が可能であり、加熱室28の奥側(加熱室奥壁面28b側)から前側(ドア2側)かけては、赤外線センサ52を回転させることで加熱室底面28aの全域の温度を検出するものである。具体的には、加熱室底面28aに載置するテーブルプレート24の温度を検知する。
【0041】
54は筒状のユニットケースで、最大径部に基板53を配置し赤外線センサ52のレンズ部52aを臨ませる窓部54aを設けている。また、ユニットケース54の材料にはカーボンを含ませることでユニットケース54の特性を導電材とすることで外来ノイズのユニットケース54内への侵入を防止している。
【0042】
55は金属板から成るシャッタである。シャッタ55は、赤外線センサ52を使用しない時に後述する観測窓44aを閉じるものである(図7参照)。また加熱室28の温度がユニットケース54に伝わるのを防止するために、ユニットケース54の外周に冷却風を流せるようにユニットケース54の外周に沿って隙間を設けた風路55cを形成するようにシャッタ55を配置し、前記風路55cに冷却風W流す出入り口となる開口55aと開口55bを設けている。
【0043】
56は位置決め凸部で、赤外線センサ52の検知点を基準位置(図4の検知点a)に合わせるように前記制御部がモータ51の回転を制御した時、赤外線センサ52の検知点の基準位置を補正できるように、シャッタ55によって観測窓44aを閉じた時に、位置決め凸部56が赤外線ケース48に設けられたストッパ(図示無し)に当接させた状態で回転軸51aをスリップさせることで、前記制御部の制御する基準位置と赤外線センサ52の検知する基準位置となる検知点aの位置を補正することができる。
【0044】
44は加熱室28の内方向に突出した円弧状の観測部で、回転軸51aの回転中心と筒状のユニットケース54の中心とユニットケース54の外周に沿って設けられて円弧状に曲げられたシャッタ55の円弧の中心と円弧状の観測部44の各中心位置は全て同一位置となっている。44aは観測部44に設けた観測窓で、赤外線センサ52の検出する視野範囲となる範囲を開口している。また、マイクロ波加熱時に観測窓44aからのマイクロ波漏洩を防止するために、観測窓44aの周囲外側には立上壁(バーリング)44bを2mm程度設けている。
【0045】
観測部44を加熱室28の内側に突出させることで、最低限の狭い観測窓開口範囲で広範囲の温度検知が可能となる。
【0046】
49は凸部であり、加熱室天面28cから赤外線ケース48と赤外線ユニット50を離すもので、加熱室天面28cとの接触を凸部49のみとすることで加熱時にグリル加熱手段12や熱風ユニット11などのヒータによって加熱された加熱室天面28cの温度が赤外線ユニット50に伝わりにくいようにしている。
【0047】
制御基板23に搭載された制御部23aの赤外線センサ52の測定要領について図4により説明する。
【0048】
図4では、茶わんにごはんを入れて加熱する場合の赤外線センサ52の動作を説明する図である。図4では、検知点fにおいて被加熱物60cの表面を直接検出する事ができる。
【0049】
赤外線センサ52は、一度の測定で8点を測定するセンサをモータ51で基準位置(図4、検知点a)から終点位置(図4、検知点h)まで赤外線センサ52を3度ずつ14回、回転移動させて計15列の測定が行われ、左右方向8点×前後方向15列の120か所の温度を検出する。そして前記終点位置から前記基準位置までは赤外線センサ52は測定せずに直接前記基準位置に戻る。
【0050】
温度検知は、前記基準位置から前記終点位置まで赤外線センサ52を3度ずつ14回移動させて15列で測定し、終点位置から基準位置までは戻ることを繰り返す。
【0051】
赤外線センサ52によって検知した被加熱物60cの温度と、制御部23aに記憶している判定温度Tthを比較して、検知した温度が判定温度Tthに到達した到達時間(加熱開始からの経過時間)を初期加熱時間t1として記憶する。制御部23aの制御は後述する。
【0052】
次に赤外線センサ52の回転移動について説明する。
【0053】
図4のように被加熱物(ごはん)60cが入った茶碗を加熱室底面28aに設けられているテーブルプレート24に載置して加熱を開始した時、マグネトロン33が安定発信する1~2秒間はシャッタ55にて観測窓44aを閉じて(図7参照)マグネトロン33の発信開始時の不安定発信によるノイズが赤外線センサ52に入り込むのを防止する。
【0054】
マグネトロン33の発信が安定した後に、制御部23aはモータ51の回転軸51aを基準位置に回転するように制御する。回転軸51aが基準位置へと回転することでユニットケース54を回転し、赤外線センサ52のレンズ部52aの向きも基準位置の検知点aを検知できる位置に回転(図4図5参照)する。この時、冷却風Wは赤外線センサ52のレンズ部52aを流れてセンサ窓部44aから加熱室28へと流れるので、レンズ部52aへの汚れ付着を防止している。
【0055】
ユニットケース54を回転することで、被加熱物60cの温度の検出は前述した基準位置(検知点a)からテーブルプレート24の検知点b、検知点cへと進み、さらにユニットケース54が回転すると茶わん(容器60)の外側の温度を高さ方向に検知し、検知点dから検知点eの温度を検知する。検知点が茶わん(容器60)の開口部の頂点に達した後は、被加熱物60cの表面の温度を検知点fで検知し、次に茶わん(容器60)の内側の温度を検知点gで検知し、次にテーブルプレート24の温度を検知点hで検知する。
【0056】
検知点a~検知点hの温度検知範囲の温度の検知は、ユニットケース54を回転する往路の片方で行い、一度終点まで温度検知を行った後、復路は途中で測定せず温度の検知をしないで、再度基準位置に戻ってから再び検知点a~検知点hと順次行う。
【0057】
温度の検知数は好みに変えられ、前述した検知点a~検知点hは、説明上の例で、前記したように15列のデータを測定する。
【0058】
また、温度の検知は、温度を検知している間はモータ51の回転を止めて検知し、検知した後に回転を行う。正確に温度を検知するため回転を止めて測定する方が良い。
【0059】
例えば、加熱初めは、ユニットケース54の回転を止めて検知し、検知した後に一定角度で回転を行い、回転を止めて検知し、検知した後に一定角度で回転を行うことをくりかえしてマス目状に温度分布を測定する。そうすることで、等角度で一定位置の温度を測定することによりテーブルプレート24の上面を測定するものである。
【0060】
赤外線センサ52は、加熱室底面28aに載置されたテーブルプレート24の四辺から加熱室天面28cに垂直に伸ばした仮想線の内側の加熱室天面28cの左右方向の略中央に設けられている。
【0061】
そして、赤外線センサ52の視野は、検知点aと検知点hはテーブルプレート24の前後のフランジ部の温度を検知する範囲に略定め、赤外線センサ52の整列した複数素子の両側のセンサはテーブルプレート24の左右のフランジ部の温度を検知する範囲に略定められている。こうすることで、テーブルプレート24の略中央に載置された被加熱物60cの温度を正確に検出する事が可能となる。また赤外線センサ52の回転は、温度の測定範囲が広い方に回転させる方が、茶わん(容器60)に入れられた被加熱物60cの温度を検知するのに良い。
【0062】
このような設定で、茶わん(容器60)をテーブルプレート24の奥側に載置した時は、赤外線センサ52の略下側の検知点bで茶わん内の被加熱物60cの温度を検知可能となり、茶わん(容器60)をテーブルプレート24の左右の一方側に載置したときは、赤外線センサ52は加熱室28の左右横方向の略中央に設けられているため、赤外線センサ52内に設けられている一列に整列した8素子の両側の赤外線センサ52によって被加熱物60cの温度の検出が可能となる。
【0063】
しかしながら、上記した赤外線センサ52では、加熱室28内の被加熱物60cの温度を常に観測できるわけではなく、例えば、テーブルプレート24の前縁左端や前縁右端に生じる死角に置かれた食材や、蓋付容器内に配置され直視できない食材などの温度を観測することができない。そのため、赤外線センサ52が直視できない状態で被加熱物60cが配置された場合には、その被加熱物を適温調理できない場合があった。
【0064】
そこで、以下では、図8から図10を用いて、赤外線センサ52と蒸気センサ81を併用することで上記の問題を解消した本実施例の自動調理制御について説明する。なお、以下では、冷蔵のごはん(被加熱物60c)を茶わん(容器60)に入れて適温に加熱する場合を例に説明する。
【0065】
図8の制御ブロック図に示すように、本実施例の加熱調理器100では、制御部23aの入力側に、操作パネル4、赤外線センサ52、重量センサ25、加熱室温度センサ80、蒸気センサ81が配置されており、出力側にレンジ加熱部330が配置されている。従って、レンジ加熱部330は、操作パネル4、赤外線センサ52、重量センサ25、加熱室温度センサ80、蒸気センサ81の各出力に基づいて制御されるものであるが、以下では、主に赤外線センサ52の出力に基づいてレンジ加熱部330を制御する第一加熱モードと、主に蒸気センサ81の出力に基づいてレンジ加熱部330を制御する第二加熱モードの、2種類のレンジ加熱モードに着目して、本実施例の自動調理制御を説明する。
【0066】
<第一加熱モード>
まず、赤外線センサ52の視野内に被加熱物60cを配置した場合に特に有効な、赤外線センサ52を用いる第一加熱モードについて概説する。第一加熱モードの加熱動作は、図9に示すように、レンジ加熱R1とレンジ加熱R2に大別される。
【0067】
レンジ加熱R1は、赤外線センサ52の検出温度が所定の判定温度Tthに到達するまで被加熱物60cを加熱する、初期加熱用の加熱工程である。この判定温度Tthは、ユーザが設定したメニューの仕上がり温度より低い温度であり、例えば、設定されたメニューがごはん加熱であれば60℃である。赤外線センサ52の検出温度が判定温度Tthに到達するまでに要した時間(以下、「初期加熱時間t1」と称する)が判明すると、初期温度と判定温度Tthの差分を初期加熱時間t1で除算することで昇温速度を算出でき、該昇温速度から被加熱物60cの加熱状況を判定することができる。なお、加熱状況とは、例えば、重量センサ25で測定した全重量から容器重量を除いた被加熱物60cの正味重量や、被加熱物60cの食材種別に依存するレンジ加熱のし易さなどである。
【0068】
レンジ加熱R2は、被加熱物60cの表面温度が設定された仕上がり温度に到達するまで加熱する、追加加熱用の加熱工程である。この加熱工程では、先行するレンジ加熱R1の加熱工程で判定した加熱状況(食材の正味重量、レンジ加熱のし易さ、など)を踏まえ、設定された仕上がり温度に到達するまで被加熱物60cを加熱するために必要な追加加熱時間t2を算出する。そして、追加加熱時間t2が満了するまでレンジ加熱を継続することで、被加熱物60cをユーザ所望の温度に自動調理することができる。
【0069】
<第二加熱モード>
次に、赤外線センサ52の視野外に被加熱物60cを配置した場合に特に有効な、蒸気センサ81を用いる第二加熱モードについて概説する。なお、第二加熱モードは、第一加熱モードと並列して実行される加熱モードであり、第一加熱モードのレンジ加熱R1、R2の何れの期間内であっても、第二加熱モードの終了条件を満した時点で自動調理を終了する加熱モードである。
【0070】
図9の例では、第一加熱モードのレンジ加熱R2の期間内であって、レンジ加熱開始から時間t1’が経過した時点で、蒸気センサ81の検出温度の単位時間当たりの変化量が所定の判定変化量ΔTthに到達している。従って、この時点で、十分に加熱された被加熱物60cから蒸気が発生していると判断することができる。そこで、この時刻から更に所定の時間t2’(例えば、約5秒)だけ追加加熱した後、レンジ加熱を終了することで、被加熱物60cの過加熱を抑制することができる。
【0071】
図9から明らかなように、第一加熱モードによる総加熱時間ta(=t1+t2)は、第二加熱モードによる総加熱時間ta’(=t1’+t2’)より長いため、仮に第一加熱モードの総加熱時間taに到るまでレンジ加熱を継続すると、第二加熱モードの総加熱時間ta’の時点で既に蒸気を発している被加熱物60cを更に加熱することになり、過加熱を惹起することになる。これに対し、第二加熱モードの総加熱時間ta’の時点でレンジ加熱を停止すれば、被加熱物60cが蒸気を発する程度の適温になったときに自動調理を停止することができる。
【0072】
<本実施例のレンジ加熱制御の処理フロー>
以上の第一加熱モードと第二加熱モードを並列して実行する本実施例のレンジ加熱制御を、図10のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0073】
まず、工程S1では、ユーザは、ドア2を開き、茶わん(容器60)をテーブルプレート24に載せてドア2を閉める。その後、ユーザは、操作パネル4を操作して、ごはんメニューを選択する。詳細は後述するが、本フローチャートによれば、茶わん(容器60)を載せた位置が赤外線センサ52の視野内であった場合には、実質的に第一加熱モードが選択されることになり、視野外であった場合には、実質的に第二加熱モードが選択されることになる。
【0074】
次に、工程S2では、ユーザは、操作パネル4を操作して、仕上がり調節から「強」、「やや強」、「中」、「やや弱」、「弱」のいずれかを選択する。仕上がり調節の「中」に設定するとごはんが標準温度で仕上がり、「強」に設定すると標準温度より約5℃高く仕上がり、「弱」に設定すると標準温度より約5℃低く仕上がることになる。
【0075】
工程S3では、ユーザは、スタートボタンを入力する。これにより、制御部23aには、レンジ加熱開始の指令が入力される。
【0076】
工程S4では、制御部23aは、レンジ加熱部330を適当に制御してレンジ加熱を開始する。
【0077】
工程S5では、制御部23aは、蒸気センサ81の出力に基づいて蒸気を検出したかを判定する。具体的には、制御部23aは、蒸気センサ81の単位時間当たりの検出温度変化量が判定変化量ΔTth以上になったかを判定する。そして、要件を満たす場合は工程S6に進み、要件を満たさない場合は工程S7に進む。
【0078】
工程S6では、制御部23aは、食品が既に適温になった結果、蒸気が出ていると判断し、所定の追加加熱時間t2’だけレンジ加熱を継続した後、レンジ加熱を終了する(図9参照)。これにより、赤外線センサ52の視野外に茶わん(容器60)を配置した場合のように、レンジ加熱R1の工程終了を検知できない状況(すなわち、第一加熱モードの終了時間を決定できない状況)であっても、被加熱物60cからの蒸気発生を契機として、過加熱となる前にレンジ加熱を終了させることができる。
【0079】
一方、工程S7では、制御部23aは、赤外線センサ52の出力に基づいて初期加熱(レンジ加熱R1)が終了したかを判定する。具体的には、制御部23aは、赤外線センサ52の検出温度が判定温度Tth以上であるかを判定する。そして、要件を満たす場合は工程S8に進み、要件を満たさない場合は工程S5に戻る。
【0080】
工程S8では、制御部23aは、設定されたメニューと初期加熱時間t1の長さに応じた追加加熱時間t2を設定し、追加加熱(レンジ加熱R2)を継続する。
【0081】
工程S9では、制御部23aは、工程S5と同様の手法を用いて、蒸気センサ81の出力に基づいて蒸気を検出したかを判定する。そして、要件を満たす場合は工程S6に進み、要件を満たさない場合は工程S10に進む。なお、工程S9から工程S6に進むことの意義は、工程S5から工程S6に進むことの意義と次の点で相違する。
【0082】
すなわち、工程S5から工程S6に進む場合は、赤外線センサ52の視野外に被加熱物60cが配置されており、赤外線センサ52では被加熱物60cの温度を検出できない状況であっても、工程S5の要件を満たす限り、工程S6に進むことができる。これに対し、工程S9から工程S6に進む場合は、その前提として、工程S7にて赤外線センサ52の検出温度が所定値を超えると判断することが必須であるから、被加熱物60cは赤外線センサ52の視野内に配置されていなければならない。
【0083】
ただし、工程S7での赤外線センサ52の検出温度が被加熱物60cそのものの温度ではなく、被加熱物60cに被せた蓋等の温度であった場合には、工程S8で設定した追加加熱時間t2が蓋等の温度に基づく不適切なものとなる可能性がある。このような不適切な追加加熱時間t2に従って第一加熱モードのレンジ加熱R2を継続すると、被加熱物60cを過加熱する可能性があるため、工程S9から工程S6に進む経路を用意することで、追加加熱時間t2の適否に拘わらず、過加熱を避けるタイミングでレンジ加熱を終了させることができるようにした。
【0084】
工程S10では、制御部23aは、レンジ加熱R2の継続時間が、工程S8で設定した追加加熱時間t2に到達したかを判定する。そして、要件を満たす場合はレンジ加熱を終了し、要件を満たさない場合は工程S9に戻る。これにより、例えば、被加熱物60cが徳利内の日本酒であり、仕上がり温度が40℃であるときのように、被加熱物60cから十分な蒸気が発生しない場合でも、被加熱物60cの仕上がり温度になったタイミングでレンジ加熱を終了させることができる。
【0085】
以上で説明した本実施例の加熱調理器によれば、被加熱物が赤外線センサの死角に置かれた場合であっても、被加熱物が適温まで温度上昇したときには、適切なタイミングでレンジ加熱を停止することができる。
【符号の説明】
【0086】
100 加熱調理器
1 本体
2 ドア
23a 制御部
24 テーブルプレート
28 加熱室
52 赤外線センサ
81 蒸気センサ
330 レンジ加熱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10