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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003346
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】ヒンジ及びヒンジを備えた電子機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 27/62 20060101AFI20240105BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20240105BHJP
   F16C 11/10 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
G03B27/62
F16C11/04 F
F16C11/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102423
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】592264101
【氏名又は名称】下西技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 眞一
(72)【発明者】
【氏名】本杉 英樹
【テーマコード(参考)】
2H012
3J105
【Fターム(参考)】
2H012CB12
3J105AA04
3J105AB02
3J105AB13
3J105AB23
3J105AC06
3J105DA15
3J105DA23
(57)【要約】
【課題】ヒンジにおいて、ダンパー装置を用いないで第二ウイング部材が第一ウイング部材に対して全閉状態に近い状態において第二ウイング部材の閉じる速度を低減させることができるものを、構成が大型化することを抑制しつつ実現することができるものとする。
【解決手段】ヒンジ100において、回動部材20がケース部材10に対して閉じる動作において、回動部材20の第二カム部24と第二スライダ60の傾斜面63とが回動部材20のケース部材10に対する所定の角度から回動部材20の全閉状態の範囲において当接することによって、回動部材20の全閉状態近傍における閉じる方向に回動する速度を低減させるものであり、第二スライダ60の傾斜面63における回動部材20に当接する部分は、第二スライダ60の移動方向に対して鋭角に傾斜するように構成されるものとする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一連結対象物に第二連結対象物を開閉可能に連結するヒンジであって、
開口部を有する収容室が形成され、第一連結対象物および第二連結対象物の一方に固定される第一ウイング部材と、
前記第一連結対象物および前記第二連結対象物の他方に固定され、前記第一ウイング部材に回動可能に連結される第二ウイング部材と、
前記収容室に収容され、前記開口部から突出する方向および前記収容室の内部に没入する方向に移動可能なスライダと、
前記収容室に収容され、前記スライダを前記開口部から突出する方向に付勢する付勢部材と、
を具備し、
前記第二ウイング部材には、カム部が形成され、
前記スライダには、前記第二ウイング部材の前記カム部に当接する傾斜面が形成され、
前記第二ウイング部材が前記第一ウイング部材に対して閉じる動作において、前記第二ウイング部材の前記カム部と前記スライダの前記傾斜面とは、前記第二ウイング部材の前記第一ウイング部材に対する所定の角度から前記第二ウイング部材の全閉状態の範囲において当接することによって、前記第二ウイング部材の全閉状態近傍における閉じる方向に回動する速度を低減させるものであり、
前記スライダの前記傾斜面における前記カム部に当接する部分は、前記スライダの移動方向に対して鋭角に傾斜するように構成される、
ヒンジ。
【請求項2】
前記スライダの前記傾斜面における前記カム部に当接する部分は、前記スライダの移動方向に対して、前記第二ウイング部材の全閉状態のときの回動角度から全開状態のときの回動角度で成す角度の半分未満の角度で傾斜するように構成される、
請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記スライダの前記傾斜面における前記カム部に当接する部分は、前記スライダの移動方向に対して25°未満の角度で傾斜するように構成される、
請求項2に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記スライダは、前記第二ウイング部材の前記カム部と前記スライダの前記傾斜面とが当接していない状態において、前記第二ウイング部材に当接する部分を備える、
請求項2に記載のヒンジ。
【請求項5】
前記スライダにおける前記第二ウイング部材の前記カム部と前記スライダの前記傾斜面とが当接していない状態において前記第二ウイング部材に当接する部分は曲面状に構成される、
請求項4に記載のヒンジ。
【請求項6】
前記収容室は第一収容室と第二収容室とで構成され、
前記スライダは第一スライダと第二スライダとで構成され、
前記第一スライダは、前記第一収容室に収容され、前記開口部から突出する方向および前記前記第一収容室の内部に没入する方向に移動可能に構成され、
前記第二スライダは、前記第二収容室に収容され、前記開口部から突出する方向および前記前記第二収容室の内部に没入する方向に移動可能に構成され、
前記付勢部材は第一付勢部材と第二付勢部材とで構成され、
前記第一付勢部材は、前記第一収容室に収容され、前記第一スライダを前記開口部から突出する方向に付勢し、
前記第二付勢部材は、前記第二収容室に収容され、前記第二スライダを前記開口部から突出する方向に付勢し、
前記カム部は第一カム部と第二カム部とで構成され、
前記第二ウイング部材が前記第一ウイング部材に対して閉じる動作において、前記第二ウイング部材の前記第一カム部と前記第一スライダとは、前記第二ウイング部材の全開状態から前記第二ウイング部材の全閉状態の範囲において当接するものであり、
前記傾斜面は、前記第二スライダに形成され、前記第二ウイング部材の前記第二カム部に当接するものであり、
前記第二ウイング部材が前記第一ウイング部材に対して閉じる動作において、前記第二ウイング部材の前記第二カム部と前記第二スライダの前記傾斜面とは、前記第二ウイング部材の前記第一ウイング部材に対する所定の角度から前記第二ウイング部材の全閉状態の範囲において当接することによって、前記第二ウイング部材の全閉状態近傍における閉じる方向に回動する速度を低減させるものであり、
前記第二スライダの前記傾斜面における前記第二カム部に当接する部分は、前記第二スライダの移動方向に対して鋭角に傾斜するように構成される、
請求項5に記載のヒンジ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項のヒンジを備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一連結対象物に第二連結対象物を開閉可能に連結するヒンジ及び当該ヒンジを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ、スキャナー等、オフィスや家庭等で使用される事務機器の多くは、その本体の上面に原稿読み取り部(コンタクトガラス)を備えるとともに、当該原稿読み取り部を覆う原稿圧着板を備える。原稿圧着板は、原稿読み取り部に載置された原稿を原稿読み取り部に密着させるとともに原稿読み取り部に対する原稿の位置を保持するものである。
【0003】
事務機器の本体と原稿圧着板とを連結する器具としては、収容室が形成される第一ウイング部材と、第一ウイング部材に回動可能に連結される第二ウイング部材と、収容室に収容されるスライダと、収容室に収容されてスライダを付勢する付勢部材と、ダンパー装置と、を備え、第二ウイング部材にはカム部が形成され、スライダには第二ウイング部材のカム部に当接する当接部が形成されるヒンジが知られている(特許文献1参照)。
前記ヒンジでは、第二ウイング部材の閉じる動作において第二ウイング部材の全閉状態に近い状態の閉じる方向に回動する速度をダンパー装置によって低減させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-247954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記ヒンジでは、ダンパー装置を備えることから部品点数が増加してコストアップとなる。また、第二ウイング部材の全閉状態に近い状態において第二ウイング部材の閉じる速度を低減させる構成をダンパー装置を備えないで実現するにあたって、第一ウイング部材、第二ウイング部材、またはスライダの構成が大型化しひいてはヒンジが大型化するという問題があった。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、ダンパー装置を用いないで第二ウイング部材が全閉状態に近い状態において第二ウイング部材の閉じる速度を低減させることができるものを、ヒンジの構成が大型化することを抑制しつつ実現することができるすることができるヒンジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、第一連結対象物に第二連結対象物を開閉可能に連結するヒンジであって、開口部を有する収容室が形成され、第一連結対象物および第二連結対象物の一方に固定される第一ウイング部材と、前記第一連結対象物および前記第二連結対象物の他方に固定され、前記第一ウイング部材に回動可能に連結される第二ウイング部材と、
前記収容室に収容され、前記開口部から突出する方向および前記収容室の内部に没入する方向に移動可能なスライダと、前記収容室に収容され、前記スライダを前記開口部から突出する方向に付勢する付勢部材と、を具備し、前記第二ウイング部材には、カム部が形成され、前記スライダには、前記第二ウイング部材の前記カム部に当接する傾斜面が形成され、前記第二ウイング部材が前記第一ウイング部材に対して閉じる動作において、前記第二ウイング部材の前記カム部と前記スライダの前記傾斜面とは、前記第二ウイング部材の前記第一ウイング部材に対する所定の角度から前記第二ウイング部材の全閉状態の範囲において当接することによって、前記第二ウイング部材の全閉状態近傍における閉じる方向に回動する速度を低減させるものであり、前記スライダの前記傾斜面における前記カム部に当接する部分は、前記スライダの移動方向に対して鋭角に傾斜するように構成されるものである。
【0009】
請求項2においては、前記スライダの前記傾斜面における前記カム部に当接する部分は、前記スライダの移動方向に対して、前記第二ウイング部材の全閉状態のときの回動角度から全開状態のときの回動角度で成す角度の半分未満の角度で傾斜するように構成されるものである。
【0010】
請求項3においては、前記スライダの前記傾斜面における前記カム部に当接する部分は、前記スライダの移動方向に対して25°未満の角度で傾斜するように構成されるものである。
【0011】
請求項4においては、前記スライダは、前記第二ウイング部材の前記カム部と前記スライダの前記傾斜面とが当接していない状態において、前記第二ウイング部材に当接する部分を備えるものである。
【0012】
請求項5においては、前記スライダにおける前記第二ウイング部材の前記カム部と前記スライダの前記傾斜面とが当接していない状態において前記第二ウイング部材に当接する部分は曲面状に構成されるものである。
【0013】
請求項6においては、前記収容室は第一収容室と第二収容室とで構成され、前記スライダは第一スライダと第二スライダとで構成され、前記第一スライダは、前記第一収容室に収容され、前記開口部から突出する方向および前記前記第一収容室の内部に没入する方向に移動可能に構成され、前記第二スライダは、前記第二収容室に収容され、前記開口部から突出する方向および前記前記第二収容室の内部に没入する方向に移動可能に構成され、前記付勢部材は第一付勢部材と第二付勢部材とで構成され、前記第一付勢部材は、前記第一収容室に収容され、前記第一スライダを前記開口部から突出する方向に付勢し、前記第二付勢部材は、前記第二収容室に収容され、前記第二スライダを前記開口部から突出する方向に付勢し、前記カム部は第一カム部と第二カム部とで構成され、前記第二ウイング部材が前記第一ウイング部材に対して閉じる動作において、前記第二ウイング部材の前記第一カム部と前記第一スライダとは、前記第二ウイング部材の全開状態から前記第二ウイング部材の全閉状態の範囲において当接するものであり、前記傾斜面は、前記第二スライダに形成され、前記第二ウイング部材の前記第二カム部に当接するものであり、前記第二ウイング部材が前記第一ウイング部材に対して閉じる動作において、前記第二ウイング部材の前記第二カム部と前記第二スライダの前記傾斜面とは、前記第二ウイング部材の前記第一ウイング部材に対する所定の角度から前記第二ウイング部材の全閉状態の範囲において当接することによって、前記第二ウイング部材の全閉状態近傍における閉じる方向に回動する速度を低減させるものであり、前記第二スライダの前記傾斜面における前記第二カム部に当接する部分は、前記第二スライダの移動方向に対して鋭角に傾斜するように構成されるものである。
【0014】
請求項7においては、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のヒンジを備えた電子機器とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、ダンパー装置を用いないで第二ウイング部材が全閉状態に近い状態において第二ウイング部材の閉じる速度を低減させることができるものを、ヒンジの構成が大型化することを抑制しつつ実現することができるすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るヒンジを備える複合機を示す側面図。
図2】同じく全開状態のヒンジを示す斜視図。
図3】同じく全開状態のヒンジを示す正面図。
図4】同じく全開状態のヒンジを示す側面図。
図5】同じく全開状態のヒンジを示す側面断面図。
図6】同じく35°開いた状態のヒンジを示す側面断面図。
図7】同じく6°開いた状態のヒンジを示す側面断面図。
図8】同じく全閉状態のヒンジを示す側面断面図。
図9】同じく全開状態のヒンジを示す正面図。
図10】同じく全開状態のヒンジを示す側面図。
図11】同じく全開状態のヒンジを示す側面断面図。
図12】同じく10°開いた状態のヒンジを示す側面断面図。
図13】同じく全閉状態のヒンジを示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では図1を用いて事務機器の実施の一形態である複合機1について説明する。
複合機1は本体2および原稿圧着板3を備える。本実施形態において、複合機1は、本発明の第一実施形態に係るヒンジ100または本体2に対して原稿圧着板3を開閉可能とする開閉装置(以下「開閉装置」と称する)を備える構成とするが、複合機1または開閉装置が後述する他の実施形態に係るヒンジまたは開閉装置を備える構成とすることも可能である。
【0018】
本体2は本発明に係る第一連結対象物の実施の一形態である。本体2は原稿読み取り装置、制御装置、印刷装置、表示装置および入力装置を備える。原稿読み取り装置は本体2の上面に配置される。原稿読み取り装置は本体2の上面に載置された原稿を読み取る(原稿の画像情報を生成する)。制御装置は複合機1の各部の動作、より詳細には原稿読み取り装置、後述する印刷装置および後述するADFの動作を制御する。また、制御装置は原稿読み取り装置が生成した画像情報および本体2に接続された回線(インターネット回線等)を通じて取得した画像情報を記憶することが可能である。印刷装置は原稿読み取り装置の下方に配置される。印刷装置は制御装置が記憶した画像情報に基づいて所定の用紙に画像を印刷する。表示装置は例えば液晶パネルからなり、複合機1の動作状況等に係る情報を表示する。入力装置は例えばボタン、スイッチ等からなり、作業者が複合機1に対する指示等を入力する際に操作する。表示装置および入力装置は本体2の上面前部に配置される。
【0019】
原稿圧着板3は本発明に係る第二連結対象物の実施の一形態である。原稿圧着板3は原稿読み取り装置の上に載置された原稿を原稿読み取り装置に向かって押さえつける(圧着する)ことにより、原稿読み取り装置が原稿を読み取る際に原稿が動く(原稿読み取り装置との相対的な位置が変化する)ことを防止する。原稿圧着板3は読取前原稿収容トレイ、ADF(Auto Document Feeder)および読取後原稿収容トレイを備える。ADFは読取前原稿収容トレイに積層状態で収容された複数枚の原稿を一枚ずつ順に取り出して原稿読み取り装置の上の所定の読取位置に載置する。原稿読み取り装置による原稿の読み取りが終了した後、ADFは読取位置に載置された原稿を読取後原稿収容トレイに搬送する。
【0020】
「事務機器」は、少なくとも原稿を読み取る(原稿の画像情報を取得する)機能を備える装置を指す。事務機器の具体例としては、(a)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報を他の機器(例えば、パーソナルコンピュータ)に送信する機能を備えるスキャナー、(b)原稿を読み取る機能、読み取った原稿に係る画像情報を通信回線を介して他の機器に送信する機能および他の機器から取得した画像情報をプリントアウトする機能を備えるファクス、(c)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報をプリントアウトする機能を備えるコピー機、(d)上記スキャナー、ファクス、およびコピー機としての機能を兼ねる複合機、等が挙げられる。
【0021】
以下で詳述する実施形態に係るヒンジはいずれも複合機1の本体2に原稿圧着板3を開閉可能(回動可能)に連結する用途に用いられるが、本発明に係るヒンジの用途はこれに限定されない。すなわち、本発明に係るヒンジは、「二つの部材のうちの一方の部材(第一連結対象物)に他方の部材(第二連結対象物)を開閉可能に連結する用途」に広く適用可能であり、例えば、スキャナー、ファクス、およびコピー機、若しくは複合機等のOA機器、自動車、便座、または、炊飯器等の各種電子機器等に用いられる。ヒンジが二つの部材のうちの一方の部材に他方の部材を開閉可能に連結するものとして、例えば、プリンタの本体に回動可能に連結される扉部分、複合機の本体に回動可能に連結される原稿圧着装置、スタンドに回動可能に連結されるディスプレイ、便座に回動可能に連結される便座、自動車の車体に回動可能に連結されるボンネット等がある。
【0022】
以下の説明では、原稿圧着板3が全閉状態のとき(原稿圧着板3の下面が本体2の上面に当接しているとき)の原稿圧着板3の回動角度θ(より厳密には、本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θ)を「0°」とし、原稿圧着板3が開く方向に回動した場合に回動角度θが増加する(回動角度θが正になる)ように原稿圧着板3の回動角度θを定義する(図1参照)。
本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θは、後述する第二ウイング部材の第一ウイング部材に対する閉状態からの回動角度とも一致する。このため、本実施形態では双方とも「回動角度θ」と記載する。
また以下では便宜上、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているとき(回動角度θ=0°のとき)の複合機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準として(原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向をそれぞれヒンジ100の上下方向、前後方向および左右方向に対応させて)ヒンジ100を構成する各部材の形状を説明する。
【0023】
次に、図1から図8を用いて本発明に係るヒンジの一実施形態であるヒンジ100について説明する。なお、開閉装置は、本体2に対して原稿圧着板3を開閉可能とする装置としてヒンジ100を用いて構成したものを示す。
図1に示すように、ヒンジ100は複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結する。ヒンジ100は、複合機1の本体2の後部及び原稿圧着板3の後部に配置される。ヒンジ100は、本体2に対して原稿圧着板3が完全に閉じたときである全閉状態と、本体2に対して原稿圧着板3が完全に開いたときである全閉状態と、に亘って原稿圧着板3の本体2に対する回動角度が変遷するように構成される。
図2から図4に示すように、ヒンジ100は、ケース部材10、回動部材20、回動ピン30、第一スライダ40、第一付勢部材51、第二付勢部材52、及び第二スライダ60を備える。
【0024】
ケース部材10は本発明に係る第一ウイング部材の実施の一形態である。ケース部材10は、本体2の上面後端部ボルト等によって固定される。図3図4図5、または図8に示すように、ケース部材10は、樹脂製であり、前面部11、後面部12、左右一対の側面部13・13、底面部14、仕切部15、第一収容室16、及び第二収容室17を備える。
【0025】
図3図4図5、または図8に示すように、前面部11、後面部12、側面部13・13、及び底面部14は、それぞれケース部材10の前面、後面、左右一対の側面、及び底面を構成する。前面部11、後面部12、及び側面部13・13は、上下に長い略四角形の板状にそれぞれ構成され、底面部14は概正方形の板状に構成される。
前面部11と側面部13と底面部14とが連接され、後面部12と側面部13と底面部14とが連接されて、ケース部材10は上面(天井面)が開口した上下に長い概直方体形状の箱状に構成され、ケース部材10の内部には空間が形成される。
側面部13の上端部は、前面部11の上端部および後面部12の上端部よりも上方に突出する。側面部13の上端部かつ後端部となる位置には貫通孔が形成される。
【0026】
図5または図8に示すように、仕切部15は、ケース部材10の内部の空間(前面部11、後面部12、側面部13、及び底面部14で囲まれる空間)に配置される上下方向に長い板状の部分である。仕切部15の両側端部は側面部13の内側の板面(右面)のやや後方寄りとなる位置に連接され、仕切部15の下端部は底面部14の内側の板面(上面)のやや後方寄りとなる位置に連接されて、ケース部材10の内部の空間は、上方に向かって開口するとともに仕切部15により前後に二分割される。
【0027】
図5または図8に示すように、前記仕切部15により前後に二分割されたケース部材10の内部の空間のうち、前側の空間は、第一収容室16として構成される。第一収容室16の上部は開口しており、当該開口している部分が第一開口部16aとして構成される。
前記仕切部15により前後に二分割されたケース部材10の内部の空間のうち、後側の空間は、第二収容室17として構成される。第二収容室17の上部は開口しており、当該開口している部分が第二開口部17aとして構成される。
【0028】
回動部材20は本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態である。回動部材20は、原稿圧着板3の下面後端部にボルト等によって固定される。図3図4図5、または図8に示すように、回動部材20は樹脂製であり、胴体部21、及び取り付け部22を備える。
【0029】
図3図4図5、または図8に示すように、胴体部21は、回動部材20の胴体を成す部分である。胴体部21は、前面の上下中途部から下面を経て後面の下端部までを繋ぐ滑らかな曲面が形成された塊状の部分である。取り付け部22は、胴体部21の上方に位置し、原稿圧着板3に取り付けられる部分として構成される。
【0030】
図3図4図5、または図8に示すように、胴体部21には、第一カム部23、第二カム部24、及びストッパ25が形成される。
胴体部21の左側面の後部から右側面の後部までを貫通する貫通孔が形成される。
第一カム部23は、胴体部21に形成された曲面のうち、下面の下部の前端部から後端部に亘る部分で構成される。
第二カム部24は、第一カム部23の後方且つ回動ピン30の下方に配置される。第二カム部24は、胴体部21に形成された曲面のうち、前端部の上方において後方に突出する部分で構成される。第二カム部24は、第一カム部23の後端部および第二カム部24の前端部が連接される。
【0031】
図5または図8に示すように、ストッパ25は、回動ピン30の後上方に配置され、後上方に突出するように構成される。ストッパ25は、ケース部材10に対する回動部材20の回動が全開状態(回動角度θ=45°)を超えて開く方向に回動しないように回動部材20の回動範囲を規制する。ストッパ25は、ケース部材10に対する回動部材20の回動角度θが45°のときに、ケース部材10の後面部12の上端に当接することよって、前記回動部材20の回動を規制する。
【0032】
図3図4図5、または図8に示すように、回動ピン30は、ケース部材10の側面部13・13のそれぞれの貫通孔に貫装され、回動部材20の貫通孔に貫装される。回動部材20は、回動ピン30を介してケース部材10に回動可能に連結され、ひいては、ヒンジ100により原稿圧着板3(の下面後端部)が本体2(の上面後端部)に回動可能に連結される。
回動部材20が回動ピン30を介してケース部材10に回動可能に連結されたとき、回動部材20の下部(第一カム部23が形成されている部分および第二カム部24が形成されている部分を合わせたもの)はケース部材10に形成された第一収容室16の第一開口部16a、及び第二収容室17の第二開口部17aにそれぞれ対向する。
【0033】
図3図4図5、または図8に示すように、第一スライダ40は、樹脂製であり、略四角柱状に構成される。第一スライダ40は、上部に底部を有し下面に開口部を有する有底筒状に構成される。第一スライダ40の上部の底部は主板部41として構成される。主板部41には当接部42が形成される。当接部42は、主板部41の上面から上方に突出する。当接部42は、主板部41の後部に配置される。
第一スライダ40は、ケース部材10の第一収容室16に収容される。第一スライダ40は、第一収容室16に収容された状態において第一収容室16の内周面に当接する。第一スライダ40は、第一収容室16に収容された第一開口部16aから突出する方向および第一収容室16の内部(奥部)に没入する方向(上下方向)に移動可能に構成される。
【0034】
図3図4図5、または図8に示すように、第一付勢部材51は金属製の巻きバネであり、圧縮バネ(圧縮された状態で使用されるバネ)である。第一付勢部材51はケース部材10の第一収容室16に収容される。第一収容室16に収容された第一付勢部材51の一端部(下端部)は底面部15の上面に当接し、第一付勢部材51の他端部(上端部)は第一スライダ40の主板部41の下面に当接する。第一付勢部材51は第一スライダ40を第一収容室16の第一開口部16aから突出する方向(上方)に付勢し、第一スライダ40の当接部42は回動部材20の第一カム部23に当接する。その結果、第一付勢部材51の付勢力は第一スライダ40を経て回動部材20に伝達されて、回動部材20はケース部材10に対して右側面視で反時計回りに回動する方向に付勢され、原稿圧着板3は本体2に対して開く方向に付勢される(図1参照)。第一スライダ40の当接部42は、ケース部材10に対する回動部材20の回動角度θ=0°から45°に亘って(全閉じ状態から全開状態に亘って)、回動部材20の第一カム部23に当接する。
【0035】
図3図4図5、または図8に示すように、第二スライダ60は、樹脂製であり、略四角柱状に構成される。第二スライダ60は、上部に底部を有し下面に開口部を有する有底筒状に構成される。第二スライダ60の上部の底部は主板部61として構成される。主板部61には当接部62が形成される。当接部62は、主板部61の上面の後端部から上方に突出する。当接部62は、後上前下に傾斜する傾斜面63を有し、傾斜面63の後上端部からさらに上方に突出する突出部64を有するように構成される。
【0036】
図5または図8に示すように、第二スライダ60は、ケース部材10の第二収容室17に収容される。第二スライダ60は、第二収容室17に収容された状態において第二収容室17の内周面に当接する。第二スライダ60は、第二収容室17に収容された第二開口部17aから突出する方向および第二収容室17の内部(奥部)に没入する方向(上下方向)に移動可能に構成される。
【0037】
図5または図8に示すように、第二付勢部材52は金属製の巻きバネであり、圧縮バネ(圧縮された状態で使用されるバネ)である。第二付勢部材52はケース部材10の第二収容室17に収容される。第二収容室17に収容された第二付勢部材52の一端部(下端部)は底面部15の上面に当接し、第二付勢部材52の他端部(上端部)は第二スライダ60の主板部61の下面に当接する。第二付勢部材52は第二スライダ60を第二収容室17の第二開口部17aから突出する方向(上方)に付勢し、第二スライダ60の当接部62の径斜面63は回動部材20の第二カム部24に当接する。その結果、第二付勢部材52の付勢力は第二スライダ60を経て回動部材20に伝達されて、回動部材20はケース部材10に対して右側面視で反時計回りに回動する方向に付勢され、原稿圧着板3は本体2に対して開く方向に付勢される。第二スライダ60の当接部62の径斜面63は、ケース部材10に対する回動部材20の回動角度θ=6°から0°に亘って、回動部材20の第二カム部24に当接する。つまり、ケース部材10に対する回動部材20の回動角度θ=6°から0°の範囲においては第二付勢部材52の付勢力によって原稿圧着板3は本体2に対して開く方向に付勢され、ケース部材10に対する回動部材20の回動角度θ=6°から0°の範囲以外においては第二付勢部材52の付勢力によって原稿圧着板3は本体2に対して開く方向に付勢されない。
【0038】
以下では、図5から図8を用いて原稿圧着板3を閉じるときのヒンジ100の動作について説明する。
図8に示すように、原稿圧着板3が完全に閉じたとき(全閉状態のとき)、すなわち原稿圧着板3の下面が本体12の上面に当接しているときの原稿圧着板3の回動角度θ(本体12に対する原稿圧着板3の回動角度θ)を「0°」とし、原稿圧着板3が開く方向に回動した場合に回動角度θが増加する(回動角度θが正になる)ように原稿圧着板3の回動角度θを定義する。図5に示すように、原稿圧着板3が完全に開いたとき(全開状態のとき)の原稿圧着板3の回動角度θは「45°」である。
【0039】
原稿圧着板3の回動角度θが35°以上45°以下(35°≦θ≦45°)の場合には原稿圧着板3が「跳ね上げ領域」に属する。原稿圧着板3の回動角度θが6°以上35°未満(6°≦θ<35°)の場合には原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属する。原稿圧着板3の回動角度θが0°以上6°未満(0°≦θ<6°)の場合には原稿圧着板3が「落下領域」に属する。
【0040】
原稿圧着板3が属する「跳ね上げ領域」、「フリーストップ領域」、または「落下領域」において、(A)「原稿圧着板3の重量に起因して回動ピン30を中心として回動部材20に作用する回転力(モーメント)」と、(B)「第一付勢部材51及び第二付勢部材52の付勢力に起因して回動ピン30を中心として回動部材20に作用する回転力(モーメント)」と、の関係がそれぞれ異なる。
また、原稿圧着板3が閉じる方向(原稿圧着板3の回動角度θが小さくなる方向)に回動していくと、(A)の回転力は次第に増加していく。これは、原稿圧着板3に作用する重力を半径方向(側面視で原稿圧着板3の前端部と回動ピン30を結ぶ方向)の成分および周方向(側面視で半径方向に垂直な方向)の成分に分解した場合、原稿圧着板3の回動角度θが小さくなるほど周方向の成分、すなわち(A)の回転力が大きくなることによる。原稿圧着板3が開く方向(原稿圧着板3の回動角度θが大きくなる方向)に回動していくと、(A)の回転力は次第に減少する。これは、原稿圧着板3に作用する重力を半径方向(側面視で原稿圧着板3の前端部と回動ピン30を結ぶ方向)の成分および周方向(側面視で半径方向に垂直な方向)の成分に分解した場合、原稿圧着板3の回動角度θが大きくなるほど周方向の成分、すなわち(A)の回転力が小さくなることによる。
【0041】
「跳ね上げ領域」は、(A)の回転力」よりも(B)の回転力」の方が大きくなる領域である。原稿圧着板3が「跳ね上げ領域」に属するときに作業者が原稿圧着板3から手を離した場合、原稿圧着板3は自重に反して(厳密には、(A)の回転力と(B)の回転力との差分)により開く方向に回動する。
【0042】
図5または図6に示すように、原稿圧着板3が「跳ね上げ領域」に属するとき、回動部材20の第一カム部23は第一スライダ40の当接部42に当接する。原稿圧着板3が「跳ね上げ領域」に属するとき、回動部材20の第二カム部24は第二スライダ60から離間している(第二スライダ60に当接しない)。
【0043】
原稿圧着板3が「跳ね上げ領域」に属する状態で原稿圧着板3が閉じる方向(原稿圧着板3の回動角度θが小さくなる方向)に回動した場合、(A)の回転力は増大する。原稿圧着板3が「跳ね上げ領域」に属する状態で原稿圧着板3が閉じる方向に回動した場合、回動部材20がケース部材10に対して右側面視で時計回りに回動し、回動部材20の第一カム部23と第一スライダ40の当接部42との当接部位が変化し、第一スライダ40は押し下げられて下方に移動する。
原稿圧着板3が「跳ね上げ領域」に属する状態で、第一スライダ40が下方に移動することにより、第一付勢部材51は圧縮され(第一付勢部材51の全長は短くなり)、第一付勢部材51の付勢力が増大し、(B)の回転力が増大する。
その結果、原稿圧着板3が「跳ね上げ領域」に属するときに、(A)の回転力よりも(B)の回転力の方が大きいことから、原稿圧着板3は自重に反して開く方向に回動する。
より厳密には、原稿圧着板3が「跳ね上げ領域」に属するときには原稿圧着板3は自重に反して開く方向に回動するように第一カム部23および当接部42の形状が予め設定される。
したがって、原稿圧着板3が「跳ね上げ領域」に属するときに作業者が原稿圧着板3から手を離した場合、原稿圧着板3は自重に反して開く方向に回動する。
【0044】
「フリーストップ領域」は、(A)の回転力と(B)の回転力とが平衡する領域である。原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属するときに作業者が原稿圧着板3から手を離した場合、(A)の回転力と(B)の回転力とが平衡して、原稿圧着板3は回動せずに原稿圧着板3の回動角度θは保持される。
【0045】
図6または図7に示すように、原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属するとき、回動部材20の第一カム部23は第一スライダ40の当接部42に当接する。原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属するとき、回動部材20の第二カム部24は第二スライダ60から離間している(第二スライダ60に当接しない)。
【0046】
原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属する状態で原稿圧着板3が閉じる方向(原稿圧着板3の回動角度θが小さくなる方向)に回動した場合、(A)の回転力は増大する。原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属する状態で原稿圧着板3が閉じる方向に回動した場合、回動部材20がケース部材10に対して右側面視で時計回りに回動し、回動部材20の第一カム部23と第一スライダ40の当接部42との当接部位が変化し、第一スライダ40は押し下げられて下方に移動する。
原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属する状態で、第一スライダ40が下方に移動することにより、第一付勢部材51は圧縮され(第一付勢部材51の全長は短くなり)、第一付勢部材51の付勢力が増大し、(B)の回転力が増大する。その結果、原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属するとき、原稿圧着板3の回動角度θが変化しても(A)の回転力と(B)の回転力とが平衡する。より厳密には、原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属するときには原稿圧着板3の回動角度θが変化しても(A)の回転力と(B)の回転力とが平衡するように第一カム部23および当接部42の形状が予め設定される。
従って、原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属するときに作業者が原稿圧着板3から手を離した場合、原稿圧着板3の回動角度θは保持される。
【0047】
「落下領域」は(A)の回転力が(B)の回転力よりも大きくなる領域である。原稿圧着板3が「落下領域」に属するときに作業者が原稿圧着板3から手を離した場合、原稿圧着板3は自重(厳密には、(A)の回転力と(B)の回転力との差分)により閉じる方向に回動する。
【0048】
図7または図8に示すように、原稿圧着板3が「落下領域」に属するとき、回動部材20の第一カム部23は第一スライダ40の当接部42に当接する。原稿圧着板3が「落下領域」に属するとき、回動部材20の第二カム部24は第二スライダ60の当接部62の傾斜面63に当接する。
【0049】
原稿圧着板3が「落下領域」に属する状態で原稿圧着板3が閉じる方向(原稿圧着板3の回動角度θが小さくなる方向)に回動すると、(A)の回転力はさらに増大する。
原稿圧着板3が「落下領域」に属する状態で原稿圧着板3が閉じる方向に回動した場合、回動部材20がケース部材10に対して右側面視で時計回りに回動し、回動部材20の第一カム部23と第一スライダ40の当接部42との当接部位が変化し、第一スライダ40は押し下げられて下方に移動する。さらにこの場合、回動部材20の第二カム部24と第二スライダ60の当接部62の傾斜面63との当接部位が変化し、第二スライダ60は押し下げられて下方に移動する。
【0050】
原稿圧着板3が「落下領域」に属する状態で第一スライダ40が下方に移動することにより、第一付勢部材51は圧縮され(第一付勢部材51の全長は短くなり)、第一付勢部材51の付勢力が増大する。さらに、原稿圧着板3が「落下領域」に属する状態で第二スライダ60が下方に移動することにより、第二付勢部材52は圧縮され(第二付勢部材52の全長は短くなり)、第二付勢部材52の付勢力が増大する。このため、原稿圧着板3が「落下領域」に属する状態で第一スライダ40が下方に移動することにより、(B)の回転力が増大していき、第二付勢部材52によるダンパー効果が増大していく。
【0051】
その結果、原稿圧着板3が「落下領域」に属するときに原稿圧着板3が閉じる方向に回動すると、(A)の回転力の方が(B)の回転力よりも大きく、さらに(A)の回転力はさらに増大するものの、第一付勢部材51の付勢に加えて第二付勢部材52の付勢力によって(B)の回転力が増大することから、原稿圧着板3が緩やかに閉じる方向に回動することとなる。より厳密には、原稿圧着板3が「落下領域」に属するときには、原稿圧着板3が緩やかに閉じる方向に回動するように第一カム部23及び当接部42の形状、第二カム部24及び傾斜面63の形状が予め設定される。
したがって、原稿圧着板3が「落下領域」に属するときに作業者が原稿圧着板3から手を離した場合、原稿圧着板3は自重により緩やかに閉じる方向に回動する。
【0052】
なお、作業者が原稿圧着板3を手で持って原稿圧着板3を開く方向に回動させた場合、第二スライダ60は、第二付勢部材52の付勢力により上方に移動するので、原稿圧着板3が「落下領域」に属するときには「回動部材20の第二カム部24が第二スライダ60の当接部62の傾斜面63に当接した状態」が保持される。
【0053】
以上のように、回動部材20(第二ウイング部材)がケース部材10(第一ウイング部材)に対して閉じる動作において、回動部材20の第二カム部24(カム部)と第二スライダ60(スライダ)の当接部62の傾斜面63とは、原稿圧着板3が「落下領域」に属するときに(回動部材20のケース部材10に対する所定の角度から回動部材20の全閉状態の範囲において)当接することによって、回動部材20の全閉状態近傍における閉じる方向に回動する速度を低減させる。
さらに、第二スライダ60(スライダ)の当接部62の傾斜面63における回動部材20の第二カム部24(カム部)に当接する部分は、第二スライダ60の移動方向に対して鋭角に傾斜するように構成される。
このように構成することによって、ダンパー装置を用いないで回動部材20の(原稿圧着板3)の全閉状態に比較的近い状態において回動部材20の(原稿圧着板3)の閉じる速度を低減させることができるものを、ヒンジの構成が大型化(前後方向に大型化)することを抑制しつつ実現することができる。
【0054】
第二スライダ60(スライダ)の当接部62の傾斜面63における回動部材20の第二カム部24(カム部)に当接する部分は、第二スライダ60の移動方向に対して、回動部材20の全閉状態のときの回動角度(回動角度θ=0°)から回動部材20の全開状態のときの回動角度(回動角度θ=45°)で成す角度(45°(=回動角度θ=0°+回動角度θ=45°))の半分未満の角度で傾斜するように構成される。
このように構成することによって、ダンパー装置を用いないで回動部材20の(原稿圧着板3)の全閉状態に比較的近い状態において回動部材20の(原稿圧着板3)の閉じる速度を低減させることができるものを、ヒンジの構成が大型化(前後方向に大型化)することを抑制しつつ実現することができる。
さらに、第二スライダ60(スライダ)の当接部62の傾斜面63における回動部材20の第二カム部24(カム部)に当接する部分は、第二スライダ60の移動方向に対して25°未満の角度(25°よりも鋭角な角度)で傾斜するように構成される。第二スライダ60の当接部62の傾斜面63における回動部材20の第二カム部24に当接する部分は、第二スライダ60の移動方向に対して18°で傾斜するように構成される。
このように構成することによって、ダンパー装置を用いないで回動部材20の(原稿圧着板3)の全閉状態に比較的近い状態において回動部材20の(原稿圧着板3)の閉じる速度を低減させることができるものを、ヒンジの構成が大型化(前後方向に大型化)することを抑制しつつ実現することができる。
【0055】
第二スライダ60が第二付勢部材52によって付勢されることによって、第二スライダ60の当接部62の突出部64(突出部64の先端部)は、回動部材20の胴体部21に当接する。第二スライダ60の当接部62の突出部64は、原稿圧着板3が属する「跳ね上げ領域」及び「フリーストップ領域」において、すなわち、第二スライダ60の当接部62の傾斜面63が回動部材20の第二カム部24に当接していない状態において、回動部材20の胴体部21に当接する部分として構成される。第二スライダ60の当接部62の突出部64における回動部材20に当接する部分は、曲面状に構成される。
以上のように、第二スライダ60が第二付勢部材52によって付勢されることによって、第二スライダ60の当接部62の突出部64は、第二スライダ60の当接部62の傾斜面63が回動部材20の第二カム部24に当接していない状態において、回動部材20に当接するものであり、第二スライダ60の当接部62の突出部64における回動部材20に当接する部分は、曲面状に構成される。このため、回動部材20の第二カム部24(カム部)と第二スライダ60(スライダ)の当接部62の傾斜面63とが、原稿圧着板3が「落下領域」に属さないときに当接しない構成で、第二スライダ60が第二付勢部材52によって付勢されることによって、第二スライダ60の当接部62の突出部64が回動部材20に当接するものであっても、第二スライダ60の当接部62の突出部64が回動部材20に当接することによって、回動部材20が損傷することを抑制させることができる。
【0056】
なお、原稿圧着板3が全閉状態のときの原稿圧着板3の回動角度θが「0°」であることに限定されず、また、原稿圧着板3の全開状態のときの原稿圧着板3の回動角度θが「45°」であることに限定されず、仕様に応じて適宜設定することができる。
また、原稿圧着板3が属する「跳ね上げ領域」は、原稿圧着板3の回動角度θが35°以上45°以下(35°≦θ≦45°)の場合であることに限定されず、仕様に応じて適宜設定することができる。原稿圧着板3が属する「フリーストップ領域」は、原稿圧着板3の回動角度θが6°以上35°未満(6°≦θ<35°)の場合であることに限定されず、仕様に応じて適宜設定することができる。原稿圧着板3が属する「落下領域」は、原稿圧着板3の回動角度θが0°以上6°未満(0°≦θ<6°)の場合であることに限定されず、仕様に応じて適宜設定することができる。
また、原稿圧着板3が属する「跳ね上げ領域」または「フリーストップ領域」を有さない構成とすることもできる。
【0057】
次に、図9から図13に記載の本発明に係るヒンジの一実施形態であるヒンジ100について説明する。なお、図1から図8に記載のヒンジ100の説明については、図1から図8に記載のヒンジ100と同様の部分の説明については適宜省略し、図1から図8に記載のヒンジ100と異なる部分を中心に説明する。
【0058】
図9図10図11、または図13に示すように、ヒンジ100は、ケース部材110、回動部材120、回動ピン130、スライダ140、及び付勢部材151を備える。
【0059】
ケース部材110は本発明に係る第一ウイング部材の実施の一形態である。ケース部材110は、本体2の上面後端部ボルト等によって固定される。図9図10図11、または図13に示すように、ケース部材110は、上面(天井面)が開口した上下に長い概直方体形状の箱状に構成され、ケース部材110の内部には空間が形成される。ケース部材110の内部には空間は、収容室116として構成される。
【0060】
回動部材120は本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態である。回動部材120は、原稿圧着板3の下面後端部にボルト等によって固定される。図9図10図11、または図13に示すように、回動部材120は樹脂製であり、胴体部121、及び取り付け部122を備える。
【0061】
図9図10図11、または図13に示すように、胴体部121は、回動部材120の胴体を成す部分である。取り付け部122は、胴体部121の上方に位置し、原稿圧着板3に取り付けられる部分として構成される。
胴体部121には、カム部123及び凹部126が形成される。
カム部123は、胴体部121の前後中途部の下面から下方に突出するように構成される。カム部123は、後下方に湾曲するように形成される。凹部126は、胴体部121におけるカム部123の後方部分が凹状に切り欠かれるよう構成されて、後述するスライダ140の当接部142が配置されるように構成される。
【0062】
図9図10図11、または図13に示すように、スライダ140は、樹脂製であり、略四角柱状に構成される。スライダ140は、上部に底部を有し下面に開口部を有する有底筒状に構成される。スライダ140の上部の底部は主板部141として構成される。主板部141には当接部142が形成される。当接部142は、主板部141の上面から上方に突出する。当接部142は、傾斜面143と、凸面144と、を有する。傾斜面143は、主板部141の上面の後端部に配置され、後上前下に傾斜する。凸面144は、傾斜面143の前下方に位置し、傾斜面143と連続するよう構成される。凸面144は、傾斜面143よりも上前方向に突出するように構成される。
【0063】
図11または図13に示すように、スライダ140は、ケース部材110の収容室116に収容される。スライダ140は、収容室116に収容された状態において収容室116の内周面に当接する。スライダ140は、収容室116に収容された開口部116aから突出する方向および収容室116の内部(奥部)に没入する方向(上下方向)に移動可能に構成される。
【0064】
図11または図13に示すように、付勢部材151は金属製の巻きバネであり、圧縮バネ(圧縮された状態で使用されるバネ)である。付勢部材151はケース部材110の収容室116に収容される。付勢部材151はスライダ140を収容室116の開口部116aから突出する方向(上方)に付勢し、スライダ140の当接部142は回動部材20のカム部123に当接する。その結果、付勢部材151の付勢力はスライダ140を経て回動部材20に伝達されて、回動部材120はケース部材110に対して右側面視で反時計回りに回動する方向に付勢され、原稿圧着板3は本体2に対して開く方向に付勢される(図1参照)。スライダ140の当接部142は、ケース部材110に対する回動部材120の回動角度θ=0°から45°に亘って(全閉じ状態から全開状態に亘って)、回動部材120のカム部123に当接する。
【0065】
以下では、図11から図13に示すように、を用いて原稿圧着板3を閉じるときのヒンジ100の動作について説明する。
【0066】
原稿圧着板3の回動角度θが10°以上45°以下(10°≦θ≦45°)の場合には原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属する。原稿圧着板3の回動角度θが0°以上10°未満(0°≦θ<10°)の場合には原稿圧着板3が「落下領域」に属する。
【0067】
原稿圧着板3が属する「フリーストップ領域」、または「落下領域」において、(A)「原稿圧着板3の重量に起因して回動ピン130を中心として回動部材120に作用する回転力(モーメント)」と、(B)「第一付勢部材151の付勢力に起因して回動ピン130を中心として回動部材120に作用する回転力(モーメント)」と、の関係がそれぞれ異なる。
【0068】
図11または図12に示すように、原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属するとき、回動部材120のカム部123はスライダ140の当接部42の凸面144に当接する。原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属するとき、回動部材120のカム部123はスライダ140の当接部42の傾斜面143に当接していない。
【0069】
「落下領域」は(A)の回転力が(B)の回転力よりも大きくなる領域である。原稿圧着板3が「落下領域」に属するときに作業者が原稿圧着板3から手を離した場合、原稿圧着板3は自重(厳密には、(A)の回転力と(B)の回転力との差分)により閉じる方向に回動する。
図12または図13に示すように、原稿圧着板3が「落下領域」に属するとき、回動部材120のカム部123はスライダ140の当接部142の傾斜面143に当接する。
【0070】
原稿圧着板3が「落下領域」に属する状態で原稿圧着板3が閉じる方向(原稿圧着板3の回動角度θが小さくなる方向)に回動すると、(A)の回転力はさらに増大する。
原稿圧着板3が「落下領域」に属する状態で原稿圧着板3が閉じる方向に回動した場合、回動部材120がケース部材110に対して右側面視で時計回りに回動し、回動部材120のカム部123とスライダ140の当接部142の傾斜面143との当接部位が変化し、スライダ140は押し下げられて下方に移動する。
【0071】
原稿圧着板3が「落下領域」に属する状態でスライダ140が下方に移動することにより、付勢部材151は圧縮され(付勢部材151の全長は短くなり)、付勢部材151の付勢力が増大する。このため、原稿圧着板3が「落下領域」に属する状態でスライダ140が下方に移動することにより、(B)の回転力が増大する。
【0072】
その結果、原稿圧着板3が「落下領域」に属するときに原稿圧着板3が閉じる方向に回動すると、(A)の回転力の方が(B)の回転力よりも大きく、さらに(A)の回転力はさらに増大するものの、付勢部材151の付勢に加えて付勢部材152の付勢力によって(B)の回転力が増大することから、原稿圧着板3が緩やかに閉じる方向に回動することとなる。より厳密には、原稿圧着板3が「落下領域」に属するときには、原稿圧着板3が緩やかに閉じる方向に回動するようにカム部123及び当接部142の傾斜面143の形状が予め設定される。
したがって、原稿圧着板3が「落下領域」に属するときに作業者が原稿圧着板3から手を離した場合、原稿圧着板3は自重により緩やかに閉じる方向に回動する。
【0073】
なお、作業者が原稿圧着板3を手で持って原稿圧着板3を開く方向に回動させた場合、第二スライダ60は、第二付勢部材52の付勢力により上方に移動するので、原稿圧着板3が「落下領域」に属するときには「回動部材120のカム部123がスライダ140の当接部142の傾斜面143に当接した状態」が保持される。
【0074】
スライダ140の当接部142の傾斜面14における回動部材120のカム部123に当接する部分は、スライダ140の移動方向に対して、回動部材120の全閉状態のときの回動角度(回動角度θ=0°)から回動部材120の全開状態のときの回動角度(回動角度θ=45°)で成す角度(45°)の半分未満の角度で傾斜するように構成される。
このように構成することによって、ダンパー装置を用いないで回動部材120の(原稿圧着板3)の全閉状態に比較的近い状態において回動部材120の(原稿圧着板3)の閉じる速度を低減させることができるものを、ヒンジの構成が大型化(前後方向に大型化)することを抑制しつつ実現することができる。
さらに、スライダ140の当接部142の傾斜面143における回動部材120のカム部123に当接する部分は、スライダ140の移動方向に対して25°未満の角度(25°よりも鋭角な角度)で傾斜するように構成される。スライダ140の当接部142の傾斜面143における回動部材120のカム部123に当接する部分は、スライダ140の移動方向に対して15°で傾斜するように構成される。
このように構成することによって、ダンパー装置を用いないで回動部材120の(原稿圧着板3)の全閉状態近傍において回動部材120の(原稿圧着板3)の閉じる速度を低減させることができるものを、ヒンジの構成が大型化(前後方向に大型化)することを抑制しつつ実現することができる。
【0075】
原稿圧着板3の回動角度θが比較的大きいとき(原稿圧着板3が全開状態のときまたは原稿圧着板3が全開状態に比較的近い状態のとき)、回動部材120の凹部126に、後述するスライダ140の当接部142が配置される。このように構成されることから、ダンパー装置を用いないで回動部材120の(原稿圧着板3)の全閉状態に比較的近い状態において回動部材120の(原稿圧着板3)の閉じる速度を低減させることができるものを、ヒンジの構成が大型化(上下方向に大型化)することを抑制しつつ実現することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 複合機
2 本体
3 原稿圧着板
10 下部固定部材
11 前面部
12 後面部
13 側面部
14 底面部
15 仕切部
16 第一収容室
17 第二収容室
20 回動部材
21 胴体部
22 取り付け部
23 第一カム部
24 第二カム部
25 ストッパ
30 回動ピン
40 第一スライダ
41 主板部
42 当接部
51 第一付勢部材
52 第二付勢部材
60 第二スライダ
61 主板部
62 当接部
63 傾斜面
64 突出部
100 ヒンジ
図1
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