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特開2024-33463タイヤ接地形状解析装置およびタイヤ接地形状解析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033463
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】タイヤ接地形状解析装置およびタイヤ接地形状解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20240306BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137047
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 昌志
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131LA22
(57)【要約】
【課題】水しぶきが発生するような高速走行の場合についてタイヤの接地形状を解析する。
【解決手段】湿潤路面における接地面について、評価対象画像およびその前後に連続する時系列の画像である連続画像を取得する。取得した連続画像から、複数の画像を含む第1および第2の画像セットを構築する。構築した第1および第2の画像セットにそれぞれ含まれている複数の画像の輝度を演算処理し、画像セットそれぞれの演算処理結果である第1および第2の結果画像を得る。得られた第1および第2の結果画像について、所定閾値を基準とする二値化処理を行って、第1および第2の二値画像を得る。得られた第1の二値画像と第2の二値画像とを重ね合わせて、接地形状を求める。第1の画像セットは評価対象画像とその前の時系列の画像とからなり、第2の画像セットは評価対象画像とその後の時系列の画像とからなる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤路面におけるタイヤの接地面について、評価対象画像およびその前後に連続する時系列の画像である連続画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部が取得した連続画像から、複数の画像を含む第1および第2の画像セットを構築する画像セット構築部と、
前記画像セット構築部が構築した第1および第2の画像セットにそれぞれ含まれている複数の画像の輝度を演算処理し、前記第1および第2の画像セットそれぞれの演算処理結果である第1および第2の結果画像を得る輝度演算処理部と、
前記輝度演算処理部の演算処理によって得られた第1および第2の結果画像について、それぞれ、所定閾値を基準とする二値化処理を行って、第1および第2の二値画像を得る二値化処理部と、
前記二値化処理部の二値化処理によって得られた第1の二値画像と第2の二値画像とを重ね合わせて、接地形状を求める接地形状算出部と、
を含み、
前記第1の画像セットは、前記評価対象画像とその前の時系列の画像とからなるセットであり、
前記第2の画像セットは、前記評価対象画像とその後の時系列の画像とからなるセットである、タイヤ接地形状解析装置。
【請求項2】
解析対象である前記タイヤが接地する湿潤路面となる路面板と、前記路面板を、前記タイヤに対して相対的に移動するように駆動する路面駆動部と、前記タイヤの接地面を撮影するカメラとを含み、
前記画像取得部は、前記カメラによって前記連続画像を取得する、
請求項1に記載のタイヤ接地形状解析装置。
【請求項3】
前記輝度演算処理部は、
前記第1および第2の画像セットそれぞれに対して、画素位置ごとに最大輝度を採用し、その採用結果を前記第1および第2の結果画像とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ接地形状解析装置。
【請求項4】
前記画像セット構築部は、
前記第1の画像セットおよび前記第2の画像セットについて前記輝度演算処理部による輝度演算処理と同様の輝度演算処理を行い、接地形状が消失するときの画像セットの最小枚数を求めて、最大接地長を式(1)で定義し、
前記評価対象画像の接地中心を基準接地中心、前記評価対象画像以外の画像の接地中心を対比接地中心とし、基準接地中心から対比接地中心までのタイヤ周方向距離をラッピング量と定義し、前記ラッピング量が式(2)を満たすように前記第1および第2の画像セットを定義する請求項3に記載のタイヤ接地形状解析装置。
最大接地長=(タイヤ速度/フレームレート)×(最小枚数-1)…(1)
0<ラッピング量≦(最大接地長/2)…(2)
【請求項5】
前記接地形状算出部は、
前記タイヤが映らない画像を背景画像として採用し、前記二値化処理部の二値化処理によって得られた二値画像の重ね合わせ結果画像から前記背景画像の二値画像を差し引く、請求項1に記載のタイヤ接地形状解析装置。
【請求項6】
湿潤路面におけるタイヤの接地面について、評価対象画像およびその前後に連続する時系列の画像である連続画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにおいて取得した連続画像から、複数の画像を含む第1および第2の画像セットを構築する画像セット構築ステップと、
前記画像セット構築ステップにおいて構築した第1および第2の画像セットにそれぞれ含まれている複数の画像の輝度を演算処理し、前記第1および第2の画像セットそれぞれの演算処理結果である第1および第2の結果画像を得る輝度演算処理ステップと、
前記輝度演算処理ステップの演算処理によって得られた第1および第2の結果画像について、それぞれ、所定閾値を基準とする二値化処理を行って、第1および第2の二値画像を得る二値化処理ステップと、
前記二値化処理ステップの二値化処理によって得られた第1の二値画像と第2の二値画像とを重ね合わせて、接地形状を求める接地形状算出ステップと、
を含み、
前記第1の画像セットは、前記評価対象画像とその前の時系列の画像とからなるセットであり、
前記第2の画像セットは、前記評価対象画像とその後の時系列の画像とからなるセットである、タイヤ接地形状解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ接地形状解析装置およびタイヤ接地形状解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ接地形状解析するために、水膜を有する透明板上を走行している車両のタイヤの接地形状を透明板の下方から撮影する技術が知られている(特許文献1)。また、タイヤ接地形状解析装置の路面板の表面に水膜を設けてウエット路面を再現し、路面板の下方から撮影することによって、タイヤの接地形状を解析する技術が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-208653号公報
【特許文献2】特開2021-081246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、特許文献2のいずれにおいても、低速走行時には、タイヤの接地形状を解析できる。しかしながら、水しぶきが発生するような高速走行の場合については、タイヤの接地形状を解析することが難しい。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、水しぶきが発生するような高速走行の場合についてタイヤの接地形状を解析できるタイヤ接地形状解析装置およびタイヤ接地形状解析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある態様によるタイヤ接地形状解析装置は、湿潤路面におけるタイヤの接地面について、評価対象画像およびその前後に連続する時系列の画像である連続画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部が取得した連続画像から、複数の画像を含む第1および第2の画像セットを構築する画像セット構築部と、前記画像セット構築部が構築した第1および第2の画像セットにそれぞれ含まれている複数の画像の輝度を演算処理し、前記第1および第2の画像セットそれぞれの演算処理結果である第1および第2の結果画像を得る輝度演算処理部と、前記輝度演算処理部の演算処理によって得られた第1および第2の結果画像について、それぞれ、所定閾値を基準とする二値化処理を行って、第1および第2の二値画像を得る二値化処理部と、前記二値化処理部の二値化処理によって得られた第1の二値画像と第2の二値画像とを重ね合わせて、接地形状を求める接地形状算出部と、を含み、前記第1の画像セットは、前記評価対象画像とその前の時系列の画像とからなるセットであり、前記第2の画像セットは、前記評価対象画像とその後の時系列の画像とからなるセットである。
【0007】
また、本発明のある態様によるタイヤ接地形状解析方法は、湿潤路面におけるタイヤの接地面について、評価対象画像およびその前後に連続する時系列の画像である連続画像を取得する画像取得ステップと、前記画像取得ステップにおいて取得した連続画像から、複数の画像を含む第1および第2の画像セットを構築する画像セット構築ステップと、前記画像セット構築ステップにおいて構築した第1および第2の画像セットにそれぞれ含まれている複数の画像の輝度を演算処理し、前記第1および第2の画像セットそれぞれの演算処理結果である第1および第2の結果画像を得る輝度演算処理ステップと、前記輝度演算処理ステップの演算処理によって得られた第1および第2の結果画像について、それぞれ、所定閾値を基準とする二値化処理を行って、第1および第2の二値画像を得る二値化処理ステップと、前記二値化処理ステップの二値化処理によって得られた第1の二値画像と第2の二値画像とを重ね合わせて、接地形状を求める接地形状算出ステップと、を含み、前記第1の画像セットは、前記評価対象画像とその前の時系列の画像とからなるセットであり、前記第2の画像セットは、前記評価対象画像とその後の時系列の画像とからなるセットである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水しぶきが発生するような高速走行の場合についてタイヤの接地形状を解析できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るタイヤ接地形状解析装置を模式的に示す構成図である。
図2図2は、図1に示すタイヤ接地形状解析装置の機能を示すブロック図である。
図3図3は、タイヤ接地形状解析装置1の動作例を示すフロー図である。
図4図4は、タイヤ接地形状解析装置による処理の内容を示す図である。
図5図5は、輝度演算処理部による輝度演算処理を説明する図である。
図6図6は、接地形状算出部による接地形状算出処理を示すフロー図である。
図7図7は、比較例による処理を説明する図である。
図8図8は、本実施形態による処理を模式的に示す図である。
図9図9は、本実施形態による処理によって得られる接地形状の例を示す図である。
図10図10は、他の比較例による処理を模式的に示す図である。
図11図11は、図10の比較例による処理によって得られる接地形状の例を示す図である。
図12図12は、他の比較例による処理を示す図である。
図13図13は、画像セット構築処理において接地形状が消失しない例を示す図である。
図14図14は、画像セット構築処理において接地形状が消失する例を示す図である。
図15図15は、画像セット構築部において画像セットの最小画像枚数を求める処理を示すフロー図である。
図16図16は、ラッピング量の定義を説明する図である。
図17図17は、ラッピング量が最大接地長の半分以内である場合を説明する図である。
図18図18は、ラッピング量が最大接地長の半分を超える場合を説明する図である。
図19図19は、接地形状算出部において背景画像を削除する処理を説明する図である。
図20図20は、比較例と実施形態とを対比して説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明において、他の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。各実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るタイヤ接地形状解析装置1を模式的に示す構成図である。図2は、図1に示すタイヤ接地形状解析装置1の機能を示すブロック図である。これらの図において、図1は、タイヤ接地形状解析装置1の全体構成を模式的に示し、図2は、タイヤ接地形状解析装置1の主たる機能を示している。
【0012】
本実施形態に係るタイヤ接地形状解析装置1は、空気入りタイヤ60の接地面61の画像を取得することにより、接地面61の解析を行うシステムに適用される。タイヤ接地形状解析装置1は、タイヤ試験機2と、撮影装置10と、タイヤ接地面解析装置20とを備える。
【0013】
タイヤ試験機2は、解析対象である空気入りタイヤ60(以下、タイヤ60と呼ぶ)に試験条件を付与する装置である。図1の構成では、タイヤ試験機2は、支持装置3と、駆動装置5と、路面板11とを有する。支持装置3は、タイヤ60を回転可能に支持する装置であり、タイヤ60を装着するリム4を有する。駆動装置5はタイヤ60および路面板11に駆動力を付与する装置である。駆動装置5は、タイヤ60および路面板11を駆動するモータ6と、モータ6を制御するモータ制御装置7とから構成される。
【0014】
駆動装置5は、図示せぬギヤなどを含み、路面板11を水平に駆動する。駆動装置5は、解析対象であるタイヤ60に対して相対的に移動するように路面板11を駆動する。すなわち、駆動装置5は、モータ制御装置7によりモータ6を駆動して路面板11を矢印Y1の方向に移動させる。このとき、タイヤ60とカメラ15とを固定したまま、路面板11を矢印Y1の方向に移動させる。
【0015】
このタイヤ試験機2では、支持装置3がリム4に装着されたタイヤ60を支持し、タイヤ60が路面板11の一主面である上面11Uに押圧されてタイヤ60に荷重を付与する。路面板11は、フラットな路面を再現する。路面板11に押圧されたタイヤ60は、フラットな路面を走行している状態と同様に接地面61が変形する。路面板11を水平に駆動することにより、車両走行時におけるタイヤ60の転動状態が、路面板11の表面を路面として再現され、動的接地特性を解析できる。
【0016】
路面板11は、光を透過する性質を有する光透過板である。路面板11は光を100%透過しなくてもよく、路面板11を介してタイヤ60の表面を撮影することができる光透過率を有していればよい。路面板11は、例えば、アクリル樹脂製の平面板又はガラス製の平面形状の板である。タイヤ60と平面板との接触状態を撮影して画像解析するので、タイヤ60の、より現実に近い接地状態を解析できる。駆動装置5の駆動によって路面板11が移動することにより、路面板11の主面にタイヤ60が接地している状態において、タイヤ60の接地特性を取得できる。なお、路面板11について、板の厚み、屈折角などの仕様の指定はない。
【0017】
ここで、図1中の破線で示すように、路面板11の上面11Uには、液体膜である水膜12が設けられている。水膜12が設けられている路面板11は、タイヤ60が接地する湿潤路面として機能する。路面板11の周囲には壁が設けられており(図示せず)、壁で囲まれた領域内に液体が入っている。例えば、路面板11が矩形であれば、路面板11の四辺に壁を作っておき、壁で囲まれた領域内に液体を入れておく。水膜12の厚みは、路面板11の上面11Uから0.5[mm]以上とする。液体の明度を256階調(最低0、最大255)で表記する場合に、水膜12を構成する液体の明度の数値範囲は、例えば、59以上183以下とする。なお、水膜12の厚みが0.5[mm]未満の場合、接地面画像の非接地領域にタイヤと同程度の階調を有する暗部が発生するため好ましくない。
【0018】
撮影装置10は、タイヤ60を撮影する撮影部であるカメラ15を有する。カメラ15は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラにより構成される。カメラ15は、撮影装置10内に固定されている。カメラ15は、路面板11を介してタイヤ60を撮影することにより、路面板11に押し付けられているタイヤ60の接地面61を撮影する。詳しくは、カメラ15は、路面板11の他主面である下面11D側に、光軸が下面11D側に対して直交する向きで配設され、下面11D側から、路面板11を介してタイヤ60を撮影する。これにより、カメラ15は、少なくとも接地面61を含んでタイヤ60を撮影し、接地面61を含んだタイヤ60のデジタル画像データを生成する。
【0019】
タイヤ接地面解析装置20は、例えば、所定の解析プログラムをインストールしたPC(Personal Computer)であり、撮影装置10から入力されるタイヤ60の画像を処理してタイヤ60の接地面61を解析する処理を行う。タイヤ60の接地面61を解析する処理は、撮影したタイヤ60の画像に基づき、接地面61を算出する処理を含む。タイヤ接地面解析装置20は、接地面61の解析等の演算処理やデータの保存等を行う処理装置30と、オペレータがタイヤ接地面解析装置20への入力操作を行う入力部21と、解析結果や各種情報を表示する表示部22と、を有している。入力部21には、キーボードや、マウス等のポインティングデバイスが用いられており、表示部22には、液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置が用いられている。入力部21と表示部22とは、処理装置30に電気的に接続されており、これによりタイヤ接地面解析装置20は、オペレータが表示部22を視認しながら入力部21で入力操作をすることが可能になっている。また、カメラ15は、タイヤ接地面解析装置20の処理装置30に接続されており、これによりタイヤ接地面解析装置20は、カメラ15で撮影した画像を取得することが可能になっている。
【0020】
タイヤ接地面解析装置20が有する処理装置30は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部31や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部32を備えて構成されている。このように構成される処理部31と記憶部32とは、同一筐体内に設けられていてもよく、異なる筐体内に設けられていてもよく、或いは、複数の記憶部32が双方の形態で設けられていてもよい。
【0021】
処理装置30が有する処理部31は、路面駆動部33と、画像取得部34と、画像セット構築部35と、輝度演算処理部36と、二値化処理部37と、接地形状算出部38と、を機能的に有している。路面駆動部33は、駆動装置5を制御し、路面板11を移動させる。路面駆動部33は、路面板11を、タイヤ60に対して相対的に移動するように駆動する。なお、路面板11の移動速度によってはタイヤ60の回転速度が速くなるため、露光時間を短くする必要がある。露光時間が短いと、撮影画像が暗くなりすぎて、解析精度が低下するおそれがある。そこで、解析精度の低下を防ぐため、接地面61に光を照射するための照明を設けてもよい。この照明は、路面板11の下面11D側に設けることが好ましい。
【0022】
画像取得部34は、湿潤路面における接地面について、連続画像を取得する。連続画像は、カメラ15によって撮影した、時系列的に連続する画像である。連続画像は、評価対象画像およびその前後に連続する時系列の画像である。評価対象画像は、評価の対象として着目している画像である。
【0023】
画像セット構築部35は、画像取得部34が取得した連続画像から、複数の画像を含む第1および第2の画像セットを構築する。第1の画像セットは、評価対象画像とその前の時系列の画像とからなるセットであり、第2の画像セットは、評価対象画像とその後の時系列の画像とからなるセットである。輝度演算処理部36は、画像セット構築部35が構築した第1および第2の画像セットにそれぞれ含まれている複数の画像の輝度を演算処理し、画像セットそれぞれの演算処理結果である第1および第2の結果画像を得る。
【0024】
二値化処理部37は、輝度演算処理部36の演算処理によって得られた第1および第2の結果画像について、それぞれ、所定閾値を基準とする二値化処理を行って、第1および第2の二値画像を得る。接地形状算出部38は、二値化処理部37の二値化処理によって得られた第1の二値画像と第2の二値画像とを重ね合わせて、接地形状を求める。
【0025】
記憶部32には、タイヤ接地面解析装置20で用いられる解析プログラムが、予め記憶されている。タイヤ60の接地面61の接地特性を取得する際には、記憶部32に記憶されているプログラムを処理部31が呼び出し、プログラムに沿った動作を処理部31で実行することにより、各機能を実行する。
【0026】
本実施形態に係るタイヤ接地形状解析装置1は、以上のような構成からなる。以下、タイヤ接地形状解析装置1の作用について説明する。タイヤ接地形状解析装置1によってタイヤ60の接地面61の解析を行う際には、タイヤ60をタイヤ試験機2の支持装置3に装着し、タイヤ60を路面板11に押し付けた状態で回転させながら、カメラ15によって接地面61を撮影する。
【0027】
(タイヤ接地形状解析装置の動作)
図3は、タイヤ接地形状解析装置1の動作例を示すフロー図である。タイヤ接地形状解析装置1は、タイヤ60の解析を行う場合、入力部21への操作が行われると、路面駆動部33によって駆動装置5を制御し、路面板11の駆動を開始する(ステップST11)。タイヤ接地形状解析装置1は、路面板11が移動しているとき、タイヤ60の接地面61をカメラで撮影する(ステップST12)。撮影された連続画像は、画像取得部34により、記憶部32に記憶される。その後、タイヤ接地形状解析装置1は、路面板11の駆動を停止する(ステップST13)。
【0028】
次に、タイヤ接地形状解析装置1は、画像セット構築部35により、記憶部32に記憶されている連続画像から、第1および第2の画像セットを構築する(ステップST14)。タイヤ接地形状解析装置1は、輝度演算処理部36により、画像セット構築部35が構築した第1および第2の画像セットにそれぞれ含まれている複数の画像の輝度を演算処理する(ステップST15)。
【0029】
さらに、タイヤ接地形状解析装置1は、二値化処理部37により、輝度演算処理部36の演算処理によって得られた第1および第2の結果画像について、それぞれ、所定閾値を基準とする二値化処理を行う(ステップST16)。タイヤ接地形状解析装置1は、接地形状算出部38により、二値化処理部37の二値化処理によって得られた第1の二値画像と第2の二値画像とを重ね合わせて、接地形状を求める(ステップST17)。以上の処理により、湿潤路面における接地面のデータを取得することができる。
【0030】
(タイヤ接地形状解析装置による処理)
図4は、タイヤ接地形状解析装置による処理の内容を示す図である。図4に示すように、タイヤ接地形状解析装置による処理は、画像セット構築部35による画像セット構築処理S35と、輝度演算処理部36による輝度演算処理S36と、二値化処理部37による二値化処理S37と、接地形状算出部38による接地形状算出処理S38と、を含む。
【0031】
図4の画像セット構築処理S35において、画像P1、…、P61、…、P121は、画像取得部34が取得した連続画像である。画像P1は、時系列的に最も前に撮影した画像(つまり、古い画像)である。画像P121は、時系列的に最も後に撮影した画像(つまり、新しい画像)である。
【0032】
本例では、この連続画像のうち、画像P61を評価対象画像とする。画像セット構築処理S35においては、評価対象画像P61とその前の時系列の画像からなる第1の画像セットGS1と、評価対象画像P61とその後の時系列の画像からなる第2の画像セットGS2とを構築する。評価対象画像P61は、第1の画像セットGS1に含まれており、かつ、第2の画像セットGS2に含まれている。
【0033】
次に、輝度演算処理S36においては、第1の画像セットGS1および第2の画像セットGS2それぞれに対して、画素位置ごとに最大輝度を採用し、その採用結果を第1および第2の結果画像とする。すなわち、輝度演算処理S36においては、第1の画像セットGS1について画素位置毎に最大輝度を採用し、第1の結果画像RG1とする。また、輝度演算処理S36においては、第2の画像セットGS2について画素位置毎に最大輝度を採用し、第2の結果画像RG2とする。輝度演算処理S36は、図3のステップST15の処理内容に相当する。輝度演算処理S36については、さらに後述する。
【0034】
二値化処理S37において、第1の結果画像RG1、第2の結果画像RG2について、それぞれ、所定閾値を基準とする二値化処理を行う。二値化処理は、例えば、画像を構成する画素を階調0から階調255までの256階調とし、階調0以上階調80以下の画素を黒とし、階調81以上階調255以下の画素を白とする。この二値化処理によって、第1の二値画像G1、第2の二値画像G2が得られる。
【0035】
第1の二値画像G1に着目し、評価対象画像P61と比較すると、破線D1で示すように、接地形状が欠損している。また、第2の二値画像G2に着目し、評価対象画像P61と比較すると、破線D2で示すように、接地形状が欠損している。
【0036】
次に、接地形状算出処理S38において、第1の二値画像G1と、第2の二値画像G2とを重ね合わせて、接地形状画像KGを求める。本例において、接地形状画像KGは、背景画像B1およびB2を含む。そこで、接地形状画像KGから背景画像B1およびB2を削除する。これにより、接地形状画像SKが得られる。接地形状画像SKにおいて、破線H1の範囲は白であるため、水しぶき部分を非接地部分であると正常に判定されている。
【0037】
(輝度演算処理)
図5は、輝度演算処理部36による輝度演算処理S36を説明する図である。図5に示す処理は、図3のステップST15、図4の輝度演算処理S36の処理内容に相当する。
第1および第2の画像セットそれぞれに対して、ある画素に着目する(ステップST21)。着目した画素に関して、全画像について、最も大きい輝度の値を探し、その輝度の値をその画素の輝度とする(ステップST22)。次に、全ての画素について処理を行ったか否かを判定する(ステップST23)。
【0038】
ステップST23の判定の結果、全ての画素について処理が完了していなければ(ステップST23においてNo)、ステップST21に戻り、処理を継続する。一方、ステップST23の判定の結果、全ての画素について処理が完了していれば(ステップST23においてYes)、処理は終了となる。
【0039】
以上のように、輝度演算処理部36による輝度演算処理は、第1および第2の画像セットそれぞれに対して、画素位置ごとに最大輝度を採用し、その採用結果を第1および第2の結果画像とする処理である。
【0040】
なお、他の輝度演算処理として、輝度を全画像で算術平均化し、結果画像として取得する方法も考えられる。例えば、ある画素に着目し、全画像について、輝度を足し合わせた値を全画像の枚数で割った値をその画素の輝度とする。以上の処理を全ての画素について行う方法も考えられる。しかしながら、この算術平均化では、接地形状の精度は十分でない。
【0041】
(接地形状算出処理)
図6は、接地形状算出部38による接地形状算出処理を示すフロー図である。図6において、接地形状算出部38は、第1の二値画像G1および第2の二値画像G2について、同じ位置の画素の値を取り出す(ステップST31)。取り出した画素の値のいずれかが黒であるか否かを判定する(ステップST32)。ステップST32の判定の結果、いずれかが黒である場合(ステップST32においてYes)、その画素を黒とする(ステップST33)。その後、ステップST35に移行する。
【0042】
ステップST32の判定の結果、いずれかが黒でない場合(ステップST32においてNo)、その画素を白とする(ステップST34)。その後、ステップST35に移行する。ステップST35においては、全ての画素について処理を行ったか否かを判定する(ステップST35)。
【0043】
ステップST35の判定の結果、全ての画素について処理が完了していなければ(ステップST35においてNo)、ステップST31に戻り、処理を継続する。一方、ステップST35の判定の結果、全ての画素について処理が完了していれば(ステップST35においてYes)、処理は終了となる。
【0044】
(比較例による処理)
ここで、比較例による処理との差異を説明し、本実施形態によるタイヤ接地形状解析装置による処理が有効な処理であること明らかにする。図7は、比較例による処理を説明する図である。図7に示す比較例においては、第1および第2の画像セットを構築せずに、連続画像をまとめて1組の画像セットGS0とする。すなわち、図7において、画像P1、…、P61、…、P121をまとめて1組の画像セットGS0とする。画像セットGS0について、輝度演算処理を行う。すなわち、全画像の中から、画素位置ごとに最大輝度を採用し、その採用結果を結果画像RG0とする。結果画像RG0について、所定閾値を基準とする二値化処理を行うことにより、接地形状画像KG0が得られる。この接地形状画像KG0は、画像P61とは大きく異なる。このため、図7に示す比較例による処理では、正しい接地形状画像が得られない。
【0045】
(実施形態による処理)
図8は、本実施形態による処理を模式的に示す図である。図9は、本実施形態による処理によって得られる接地形状の例を示す図である。
【0046】
図8に示す矢印は、タイヤの進行方向を示す。図8に示すように、本実施形態では、画像P1から画像P61までを1組目の画像セット(第1の画像セット)GS1とし、画像P61から画像P121までを2組目の画像セット(第2の画像セット)GS2としている。つまり、本実施形態では、評価対象画像P61が1組目の画像セット(第1の画像セット)GS1に含まれ、かつ、評価対象画像P61が2組目の画像セット(第2の画像セット)GS2に含まれる。
【0047】
画像P1は、タイヤの接地形状部分CA1と、それ以外の水膜部分とを含む。接地形状部分CA1は輝度の値が小さく、それ以外の水膜部分は接地形状部分CA1よりも輝度の値が大きい。画像P1以外の他の画像P60、P61、P62、…、P121についても同様であり、接地形状部分CA60、CA61、CA62、…、CA121は輝度の値が小さく、それ以外の水膜部分は各接地形状部分よりも輝度の値が大きい。
【0048】
ここで、1組目の画像セットGS1について輝度演算処理を行って得られる結果画像PAおよび2組目の画像セットGS2について輝度演算処理を行って得られる結果画像PBを、評価対象画像P61と比較する。評価対象画像P61の接地形状部分CA61の端部に沿ったラインL1およびラインL2を想定すると、ラインL1の周辺で接地形状が合っており、かつ、ラインL2の周辺で接地形状が合っている。輝度演算処理S36によって、接地形状部分の破線H3の部分が消えて、評価対象画像P61の破線H2の部分と一致する。このため、結果画像PAおよび結果画像PBについて黒画素領域を重ね合わせた接地形状画像KGは、ラインL1の周辺で接地部分が正しく評価され、破線H4の位置に接地形状部分が生じていない。
【0049】
図9を参照すると、画像セット構築処理S35において、評価対象画像P61が1組目の画像セット(第1の画像セット)GS1に含まれ、かつ、評価対象画像P61が2組目の画像セット(第2の画像セット)GS2に含まれる。このため、接地形状算出処理S38によって得られる接地形状は、正しい接地形状画像となる。特に、破線H5で示すように、接地面積が正しく評価され、実接地面積(Actual Contact Area、以下ACA)は、例えば、171.6cmとなる。
【0050】
(他の比較例による処理)
図10は、他の比較例による処理を模式的に示す図である。図11は、図10の比較例による処理によって得られる接地形状の例を示す図である。
【0051】
図10に示す矢印は、タイヤの進行方向を示す。図10に示すように、比較例では、画像P1から画像P60までを1組目の画像セット(第1の画像セット)GS1bとし、画像P61から画像P121までを2組目の画像セット(第2の画像セット)GS2としている。つまり、本比較例では、評価対象画像P61が1組目の画像セット(第1の画像セット)GS1bに含まれず、評価対象画像P61が2組目の画像セット(第2の画像セット)GS2に含まれる。
【0052】
本比較例において、1組目の画像セットGS1bについて輝度演算処理を行って得られる結果画像PAaおよび2組目の画像セットGS2について輝度演算処理を行って得られる結果画像PBを、評価対象画像P61と比較する。評価対象画像P61の接地形状部分CA61の端部に沿ったラインL1およびラインL2を想定すると、ラインL2の周辺では接地形状が合っている。これに対し、ラインL1の周辺で接地形状が合っていない。輝度演算処理S36によって、接地形状部分の破線H6の部分が消えずに残り、評価対象画像P61の破線H2の部分と一致しない。このため、結果画像PAaおよび結果画像PBについて黒画素領域を重ね合わせた接地形状画像KGaは、ラインL1の周辺で接地部分が正しく評価されず、破線H7の位置に接地形状部分が生じている。
【0053】
図11を参照すると、画像セット構築処理S35において、評価対象画像P61が1組目の画像セット(第1の画像セット)GS1bに含まれておらず、評価対象画像P61が2組目の画像セット(第2の画像セット)GS2に含まれている。このため、接地形状算出処理S38によって得られる接地形状は、正しい接地形状画像にならない。特に、破線H8で示すように、接地面積が過大に評価され、ACAは、例えば、172.5cmとなる。ここで、図9における接地形状画像のACAを指数100(基準)とすると、図11における接地形状画像のACAは指数101となる。
【0054】
図12は、他の比較例による処理を示す図である。図12の画像セット構築処理S35において、評価対象画像P61とその前後の時系列の画像からなる第1の画像セットGS1aと、評価対象画像P61とその後の時系列の画像からなる第2の画像セットGS2とを構築する。評価対象画像P61は、第1の画像セットGS1aに含まれており、かつ、第2の画像セットGS2に含まれている。
【0055】
次に、輝度演算処理S36においては、第1の画像セットGS1aおよび第2の画像セットGS2それぞれに対して、画素位置ごとに最大輝度を採用し、その採用結果を結果画像RG1aおよび結果画像RG2とする。結果画像RG2は、図4の場合と同じである。これに対し、結果画像RG1aは、図4の結果画像RG1とは異なる。この結果、二値化処理S37による、結果画像RG2は図4の場合と同じであるのに対し、結果画像RG1aは図4の場合と異なる。
【0056】
接地形状算出処理S38において、第1の二値画像G1aと、第2の二値画像G2とを重ね合わせて、接地形状画像KGaを求める。本例において、接地形状画像KGaは、背景画像B1およびB2を含む。そこで、接地形状画像KGaから背景画像B1およびB2を削除する。これにより、接地形状画像SKaが得られる。接地形状画像SKaは、破線D3で示すように接地形状が欠損し、正常に判定されていない。
【0057】
(画像セットの最小画像枚数)
画像セット構築部35は、画像セット構築処理S35において第1の画像セットGS1と第2の画像セットGS2とを構築する際、輝度演算処理部36と同じ輝度演算処理を行い、接地形状が消失するときの画像セットの最小枚数を求めることが好ましい。
【0058】
この場合、画像セット構築部35は、評価対象画像とその前の時系列の画像からなるセットおよび前記評価対象画像とその後の時系列の画像からなるセットに対して輝度演算処理を行う。そして、画像セット構築部35は、接地形状が消失するときの画像セットの最小枚数を求め、次の式(1)によって定義された最大接地長を求める。次の式(1)は、画像1枚あたりに移動する接地長に、(最小枚数-1)を乗じることによって最大接地長を求める。
最大接地長[mm]=(タイヤ速度[mm/秒]/フレームレート[枚/秒])×(最小枚数-1)[枚]…(1)
なお、フレームレートは、連続画像の1秒当たりの画像の枚数である。
【0059】
画像セット構築処理S35において接地形状が消失しない場合と消失する場合とについて説明する。図13は、画像セット構築処理S35において接地形状が消失しない例を示す図である。図13において、画像P1および画像P61は、接地面の連続画像の例である。画像P1の接地形状部分CA1、画像P61の接地形状部分CA61の接地中心Ceに着目すると、接地形状部分CA1の接地中心Ceの位置は、接地形状部分CA61の接地長Wrの範囲内である。
【0060】
画像P1および画像P61の2枚の画像による画像セットGSについて輝度演算処理部36と同じ輝度演算処理を行う。すなわち、これらの画像P1および画像P61について、画素位置ごとに最大輝度を採用する処理を行う。輝度演算処理の結果画像PAは、接地形状部分CAを含む。つまり、接地形状が消失しない。
【0061】
一方、図14は、画像セット構築処理S35において接地形状が消失する例を示す図である。図14において、画像P1、画像P30および画像P61は、接地面の連続画像の他の例である。各画像P1、画像P30および画像P61の接地中心Ceに着目すると、接地形状部分CA1、CA30、CA61の位置は、接地長Wrの半分(Wr/2)だけずれている。このため、画像P30の接地形状部分CA30の接地中心Ceの位置は、画像P1の接地形状部分CA1の接地長Wrの範囲内である。しかしながら、画像P61の接地形状部分CA61の接地中心Ceの位置は、画像P1の接地形状部分CA1の接地長Wrの範囲外である。
【0062】
画像P1、画像P30および画像P61の3枚の画像による画像セットGS’について輝度演算処理部36と同じ輝度演算処理を行う。すなわち、これらの画像P1、画像P30および画像P61について、画素位置ごとに最大輝度を採用する処理を行う。輝度演算処理の結果画像PA’は、接地形状部分を含まない。つまり、接地形状が消失する。
【0063】
本例では、3枚の画像による画像セットGS’の場合に接地形状が消失するので、接地形状が消失するときの画像セットの最小枚数は「3」である。そこで、この最小枚数「3」から「1」を減じた枚数「2」に基づき、上記の式(1)によって最大接地長を求める。
【0064】
図13および図14を参照して説明した処理では、画像1枚ごとに接地形状が消失しているか否かを判定し、それを繰り返すことによって、最小画像枚数を求める。図15は、画像セット構築部35において画像セットの最小画像枚数を求める処理を示すフロー図である。図15において、最初に、初期値の枚数を設定する(ステップST41)。
【0065】
設定した初期値の枚数の画像セットについて輝度演算処理部36による輝度演算処理を行う(ステップST42)。輝度演算処理部36による輝度演算処理の結果について、接地形状が消失したか否かを判定する(ステップST43)。
【0066】
ステップST43の判定の結果、接地形状が消失しなかった場合(ステップST43においてNo)、枚数を1枚増加し(ステップST44)、1枚増加した枚数の画像セットについて輝度演算処理部36による輝度演算処理を行う(ステップST42)。以後、同様に枚数を1枚増加しつつ、輝度演算処理を行う。
【0067】
ステップST43の判定の結果、接地形状が消失した場合(ステップST43においてYes)、現在の枚数から1枚を減じた枚数に基づき、上記の式(1)によって最大接地長を決定する(ステップST45)。
【0068】
(ラッピング量)
ここで、画像セットを構築する際の適切なラッピング量について説明する。図16は、ラッピング量の定義を説明する図である。評価対象画像P61の接地形状部分CA61の接地中心を基準接地中心CeSとする。また、評価対象画像P61以外の画像の接地形状部分の接地中心を対比接地中心CeCとする。そして、基準接地中心CeSから対比接地中心CeCまでのタイヤ周方向距離をラッピング量と定義する。図16において、評価対象画像P61と画像P60とのラッピング量はLP1、評価対象画像P61と画像P1とのラッピング量はLP2である。
【0069】
画像セット構築部35は、ラッピング量LP1、LP2が次の式(2)を満たすように、画像セットGS3を構築する。
0[mm]<ラッピング量≦(最大接地長/2)[mm]…(2)
【0070】
上記の式(2)において、ラッピング量が0[mm]である場合は、ワンショットの接地面画像について解析することに相当し、解析の精度を高めることは難しい。また、ラッピング量が(最大接地長/2)、すなわち最大接地長の半分を超える場合は、接地形状の中心部分を非接地と誤判定する。このことについて、図17および図18を参照して説明する。
【0071】
図17は、ラッピング量が最大接地長の半分以内である場合を説明する図である。ラッピング量が最大接地長の半分以内である場合、評価対象画像P61の基準接地中心CeSを中心とすると、タイヤ周方向に接地長Wrの範囲内に、すべての画像の対比接地中心CeCが位置している。このため、第1の画像セットである1組目の画像セットGS1について、全画像の中から画素位置ごとに最大輝度を採用すると、結果画像PAは、最大接地長の半分の接地形状となる。すなわち、少なくとも最大接地長の半分の接地形状を取得できる。また、第2の画像セットである2組目の画像セットGS2について、全画像の中から画素位置ごとに最大輝度を採用すると、結果画像PBは、最大接地長の半分の接地形状となる。すなわち、少なくとも最大接地長の半分の接地形状を取得できる。結果画像PAと結果画像PBとを重ね合わせることによって、適切な正しい接地形状画像KGが得られる。
【0072】
図18は、ラッピング量が最大接地長の半分を超える場合を説明する図である。ラッピング量が最大接地長の半分を超える場合、評価対象画像P61の基準接地中心CeSを中心とすると、画像P1については、タイヤ周方向に接地長Wrの範囲外に、対比接地中心CeCが位置している。基準接地中心CeSと画像P1の対比接地中心CeCとの距離は、最大接地長の半分(Wr/2)に距離α(αは正の実数、以下同じ)を加えた距離である。このため、第1の画像セットである1組目の画像セットGS1について、全画像の中から画素位置ごとに最大輝度を採用すると、結果画像PA’は、接地中心Ceから距離αだけ離れた位置において、最大接地長の半分の接地形状となる。
【0073】
第2の画像セットである2組目の画像セットGS2について、全画像の中から画素位置ごとに最大輝度を採用すると、図17の場合と同様に、結果画像PBは、最大接地長の半分の接地形状となる。すなわち、少なくとも最大接地長の半分の接地形状を取得できる。
【0074】
結果画像PA’と結果画像PBとを重ね合わせることによって得られる接地形状画像KGbは、接地中心を非接地と誤判定され、接地中心Ceから距離αだけ接地形状が消失する。このため、正しい接地形状画像が得られない。したがって、上記の式(2)を満たすラッピング量になるように画像セットを構築する必要がある。
【0075】
上記のラッピング量を画像の枚数に換算すると、次の式(3)のようになる。
1<画像の枚数≦(最大接地長/2)[mm]/(タイヤ速度[mm/秒]/フレームレート[枚/秒])…(3)
【0076】
式(3)によると、画像の枚数が1枚の場合、ワンショットの接地面画像について解析することに相当し、解析の精度を高めることは難しい。また、画像の枚数が式(3)右辺の値を超える場合、接地中心を非接地と誤判定され、解析の精度が低下する。
【0077】
画像の枚数が式(3)の範囲内であれば、水(すなわち明度が高い部分)が非接地領域の所々に流れ込む接地面画像を取得できる。このような画像セットを構築し、輝度演算処理S36、二値化処理S37の順に行うことによって、水しぶきを非接地と確実に判定できる。このため、接地形状の解析精度を高めることができる。
【0078】
(背景画像の削除)
図19は、接地形状算出部38において背景画像を削除する処理を説明する図である。図19に示す接地形状画像KGは、上述したように接地形状算出処理S38において、第1の二値画像G1と、第2の二値画像G2とを重ね合わせて求めた画像である。接地形状画像KGは、背景画像B1およびB2を含む。そこで、以下の処理によって、背景画像B1およびB2を削除する。
【0079】
すなわち、図1において、タイヤが撮影領域を通過する前に路面板11をカメラ15で撮影し、背景画像BG1とする。つまり、タイヤが映らない画像を背景画像BG1として採用する。背景画像BG1について、二値化処理部37による二値化処理S37と同様に二値化処理を行って二値画像BG2を得る。すなわち、この二値化処理においては、画像を構成する画素を階調0から階調255までの256階調とし、階調0以上階調80以下の画素を黒とし、階調81以上階調255以下の画素を白とする。
【0080】
二値画像BG2を接地形状画像KGから差し引くことにより、背景画像B1およびB2に相当する部分を除去する。このとき、ノイズ処理を行うことが好ましい。ノイズ処理とは、黒画素の塊をノイズとして削除する処理である。黒画素の占有面積に閾値を設けておき、その閾値以下の占有面積の黒画素の塊をノイズと判定して削除する。以上により、接地形状画像SKが得られる。
【0081】
(タイヤ接地形状解析装置のまとめ)
図20は、比較例と実施形態とを対比して説明する図である。図20において、比較例では、カメラ15で撮影したワンショットの接地面画像、すなわち連続画像ではなく、1枚の画像P138を解析対象とする。この比較例では、接地形状の蹴出側の破線H10の部分に水しぶきが発生すると、接地形状の算出結果の画像SKaの破線H10の部分において水しぶきが接地部分と判定される。
【0082】
これに対し、実施形態では、画像P1から画像P252までの252枚の画像による連続画像を解析対象とし、連続画像のうち、画像P138を接地形状の評価対象画像とする。実施形態では、接地形状の蹴出側の破線H1の部分に水しぶきが発生しても、接地形状の算出結果の接地形状画像SKの破線H1の部分には何もない。このため、水しぶきは、非接地部分であると正常に判定される。以上のように、実施形態によれば、連続画像を解析対象とすることによって、水しぶきが発生するような高速走行の場合についてタイヤの接地形状を解析できる。
【0083】
(タイヤ接地形状解析方法)
上述したタイヤ接地形状解析装置においては、以下のタイヤ接地形状解析方法を実現できる。すなわち、湿潤路面における接地面について、評価対象画像およびその前後に連続する時系列の画像である連続画像を取得する画像取得ステップと、前記画像取得ステップにおいて取得した連続画像から、複数の画像を含む第1および第2の画像セットを構築する画像セット構築ステップと、前記画像セット構築ステップにおいて構築した第1および第2の画像セットにそれぞれ含まれている複数の画像の輝度を演算処理し、前記画像セットそれぞれの演算処理結果である第1および第2の結果画像を得る輝度演算処理ステップと、前記輝度演算処理ステップの演算処理によって得られた第1および第2の結果画像について、それぞれ、所定閾値を基準とする二値化処理を行って、第1および第2の二値画像を得る二値化処理ステップと、前記二値化処理ステップの二値化処理によって得られた第1の二値画像と第2の二値画像とを重ね合わせて、接地形状を求める接地形状算出ステップと、を含み、前記第1の画像セットは、前記評価対象画像とその前の時系列の画像とからなるセットであり、前記第2の画像セットは、前記評価対象画像とその後の時系列の画像とからなるセットである。このタイヤ接地形状解析方法によれば、水しぶきが発生するような高速走行の場合についてタイヤの接地形状を解析できる。
【0084】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1]
湿潤路面におけるタイヤの接地面について、評価対象画像およびその前後に連続する時系列の画像である連続画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部が取得した連続画像から、複数の画像を含む第1および第2の画像セットを構築する画像セット構築部と、
前記画像セット構築部が構築した第1および第2の画像セットにそれぞれ含まれている複数の画像の輝度を演算処理し、前記第1および第2の画像セットそれぞれの演算処理結果である第1および第2の結果画像を得る輝度演算処理部と、
前記輝度演算処理部の演算処理によって得られた第1および第2の結果画像について、それぞれ、所定閾値を基準とする二値化処理を行って、第1および第2の二値画像を得る二値化処理部と、
前記二値化処理部の二値化処理によって得られた第1の二値画像と第2の二値画像とを重ね合わせて、接地形状を求める接地形状算出部と、
を含み、
前記第1の画像セットは、前記評価対象画像とその前の時系列の画像とからなるセットであり、
前記第2の画像セットは、前記評価対象画像とその後の時系列の画像とからなるセットである、タイヤ接地形状解析装置。
発明[2]
解析対象である前記タイヤが接地する湿潤路面となる路面板と、前記路面板を、前記タイヤに対して相対的に移動するように駆動する路面駆動部と、前記タイヤの接地面を撮影するカメラとを含み、
前記画像取得部は、前記カメラによって前記連続画像を取得する、
発明[1]に記載のタイヤ接地形状解析装置。
発明[3]
前記輝度演算処理部は、
前記第1および第2の画像セットそれぞれに対して、画素位置ごとに最大輝度を採用し、その採用結果を前記第1および第2の結果画像とする発明[1]または発明[2]に記載のタイヤ接地形状解析装置。
発明[4]
前記画像セット構築部は、
前記第1の画像セットおよび前記第2の画像セットについて前記輝度演算処理部による輝度演算処理と同様の輝度演算処理を行い、接地形状が消失するときの画像セットの最小枚数を求めて、最大接地長を式(1)で定義し、
前記評価対象画像の接地中心を基準接地中心、前記評価対象画像以外の画像の接地中心を対比接地中心とし、基準接地中心から対比接地中心までのタイヤ周方向距離をラッピング量と定義し、前記ラッピング量が式(2)を満たすように前記第1および第2の画像セットを定義する発明[1]から発明[3]のいずれか1つに記載のタイヤ接地形状解析装置。
最大接地長=(タイヤ速度/フレームレート)×(最小枚数-1)…(1)
0<ラッピング量≦(最大接地長/2)…(2)
発明[5]
前記接地形状算出部は、
前記タイヤが映らない画像を背景画像として採用し、前記二値化処理部の二値化処理によって得られた二値画像の重ね合わせ結果画像から前記背景画像の二値画像を差し引く、発明[1]から発明[4]のいずれか1つに記載のタイヤ接地形状解析装置。
発明[6]
湿潤路面におけるタイヤの接地面について、評価対象画像およびその前後に連続する時系列の画像である連続画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにおいて取得した連続画像から、複数の画像を含む第1および第2の画像セットを構築する画像セット構築ステップと、
前記画像セット構築ステップにおいて構築した第1および第2の画像セットにそれぞれ含まれている複数の画像の輝度を演算処理し、前記第1および第2の画像セットそれぞれの演算処理結果である第1および第2の結果画像を得る輝度演算処理ステップと、
前記輝度演算処理ステップの演算処理によって得られた第1および第2の結果画像について、それぞれ、所定閾値を基準とする二値化処理を行って、第1および第2の二値画像を得る二値化処理ステップと、
前記二値化処理ステップの二値化処理によって得られた第1の二値画像と第2の二値画像とを重ね合わせて、接地形状を求める接地形状算出ステップと、
を含み、
前記第1の画像セットは、前記評価対象画像とその前の時系列の画像とからなるセットであり、
前記第2の画像セットは、前記評価対象画像とその後の時系列の画像とからなるセットである、タイヤ接地形状解析方法。
【符号の説明】
【0085】
6 モータ
7 モータ制御装置
10 撮影装置
11 路面板
12 水膜
15 カメラ
20 タイヤ接地面解析装置
21 入力部
22 表示部
30 処理装置
31 処理部
32 記憶部
33 路面駆動部
34 画像取得部
35 画像セット構築部
36 輝度演算処理部
37 二値化処理部
38 接地形状算出部
60 タイヤ
61 接地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20