(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033465
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20240306BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20240306BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B25J5/00 A
B25J19/00 Z
B61B13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137050
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八谷 健
(72)【発明者】
【氏名】松原 和志
【テーマコード(参考)】
3C707
3D101
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS06
3C707CS08
3C707HS14
3C707KS13
3C707KT01
3C707KT05
3C707KT15
3C707LT06
3C707MT01
3C707WA16
3C707WL04
3C707WM18
3D101BB36
3D101BB43
(57)【要約】
【課題】ロボット装置と搬送装置との間のドッキング及びその解除を容易に行う。
【解決手段】ロボット装置が搭載されたカートと、前記ロボット装置及び前記カートを搬送する搬送装置とを備える搬送システムであって、前記カートの把持部が前記搬送装置の被把持部を把持することで、前記カートと前記搬送装置とが連結され、前記カートの前記把持部が前記搬送装置の前記被把持部に対する把持を解除することで、前記カートと前記搬送装置との連結が解除される、搬送システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット装置が搭載されたカートと、前記ロボット装置及び前記カートを搬送する搬送装置とを備える搬送システムであって、
前記カートの把持部が前記搬送装置の被把持部を把持することで、前記カートと前記搬送装置とが連結され、
前記カートの前記把持部が前記搬送装置の前記被把持部に対する把持を解除することで、前記カートと前記搬送装置との連結が解除される、
搬送システム。
【請求項2】
前記カートは、前記カートの前記把持部が前記搬送装置の前記被把持部を把持した状態で前記カートの前記把持部を水平方向の軸回りに回転可能にする回転機構を有し、
前記搬送装置は、前記カートの前記把持部が前記搬送装置の前記被把持部を把持した状態で前記搬送装置の前記被把持部を水平方向に対して垂直方向に移動可能にする移動機構を有する、
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記カートの前記把持部は、エアを動力源とする、
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記カートの前記把持部は、電力を動力源とする、
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記カートは、前記ロボット装置が取り付けられたフレームと、前記フレームに設けられた車輪と、前記フレームに設けられ、前記フレームをジャッキアップするジャッキと、を有し、
前記カートと前記搬送装置との連結の解除が行われた後、前記ジャッキによって前記フレームをジャッキアップして前記車輪を路面から離間させることで前記カートを路面に固定する、
請求項1から4の何れか一項に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記ジャッキによって前記フレームを下降して前記車輪を路面に接触させた状態で前記カートと前記搬送装置との連結が行われる、
請求項5に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークを把持するアームと、フロアを移動するモバイルロボットとが一体化されたモバイルマニピュレータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業を行うロボット装置とモバイルロボットなどの搬送装置とが一体である場合、ロボット装置が作業を終えるまで、搬送装置は移動することができず、作業効率が悪くなる。ロボット装置と搬送装置とを別体とし、ロボット装置と搬送装置との間のドッキング及びその解除を容易に行うことが可能な技術が要望されている。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ロボット装置と搬送装置との間のドッキング及びその解除を容易に行うことが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点に係る搬送システムは、ロボット装置が搭載されたカートと、前記ロボット装置及び前記カートを搬送する搬送装置とを備える搬送システムであって、前記カートの把持部が前記搬送装置の被把持部を把持することで、前記カートと前記搬送装置とが連結され、前記カートの前記把持部が前記搬送装置の前記被把持部に対する把持を解除することで、前記カートと前記搬送装置との連結が解除される、搬送システムである。
【0007】
搬送システムによれば、カートの把持部が搬送装置の被把持部を把持することで、カートと搬送装置とが連結されるため、ロボット装置と搬送装置との間のドッキングを容易に行うことができる。また、搬送システムによれば、カートの把持部が搬送装置の被把持部に対する把持を解除することで、カートと搬送装置との連結が解除されるため、ロボット装置と搬送装置との間のドッキングの解除を容易に行うことができる。
【0008】
本発明の一観点に係る搬送システムにおいて、前記カートは、前記カートの前記把持部が前記搬送装置の前記被把持部を把持した状態で前記カートの前記把持部を水平方向の軸回りに回転可能にする回転機構を有し、前記搬送装置は、前記カートの前記把持部が前記搬送装置の前記被把持部を把持した状態で前記搬送装置の前記被把持部を水平方向に対して垂直方向に移動可能にする移動機構を有してもよい。カート及び搬送装置の少なくとも一方が路面の傾斜部分や段差部分を走行する場合に、把持部が回転することにより、カートと搬送装置との連結部分に負荷が加わることが抑制される。カート及び搬送装置の少なくとも一方が路面の傾斜部分や段差部分を走行する場合に、把持部によって把持された被把持部が水平方向に対して垂直方向に移動することで、カートと搬送装置との連結部分に負荷が加わることが抑制される。
【0009】
本発明の一観点に係る搬送システムにおいて、前記カートの前記把持部は、エアを動力
源としてもよい。カートの把持部は、エアを動力源として動作することが可能となる。本発明の一観点に係る搬送システムにおいて、前記カートの前記把持部は、電力を動力源としてもよい。カートの把持部は、電力を動力源として動作することが可能となる。
【0010】
本発明の一観点に係る搬送システムにおいて、前記カートは、前記ロボット装置が取り付けられたフレームと、前記フレームに設けられた車輪と、前記フレームに設けられ、前記フレームをジャッキアップするジャッキと、を有し、前記カートと前記搬送装置との連結の解除が行われた後、前記ジャッキによって前記フレームをジャッキアップして前記車輪を路面から離間させることで前記カートを路面に固定してもよい。カートが路面に固定されているため、カートと搬送装置との連結の解除が行われた後に、ロボット装置及びカートが意図せずに移動してしまうことが抑止される。
【0011】
本発明の一観点に係る搬送システムにおいて、前記ジャッキによって前記フレームを下降して前記車輪を路面に接触させた状態で前記カートと前記搬送装置との連結が行われてもよい。車輪を路面に接触させた状態でカートと搬送装置との連結が行われ、搬送装置が走行を開始し、搬送装置が走行すると共にカートが走行することで、搬送装置によってロボット装置及びカートが搬送される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロボット装置と搬送装置との間のドッキング及びその解除を容易に行うことが可能である
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、搬送システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、カートの連結装置及び搬送装置の被連結装置の拡大図である。
【
図3】
図3は、カートの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適用例及び実施形態について図を参照しながら説明する。以下に示す適用例及び実施形態は、本願の一態様であり、本願の権利範囲を限定するものではない。
【0015】
<適用例>
図1及び
図2を参照して、本発明の適用例の一つについて説明する。
図1は、搬送システム10の構成を示す図である。搬送システム10は、ロボット装置1と、カート2と、搬送装置3とを備える。搬送システム10は、複数のロボット装置1と、複数のカート2と、複数の搬送装置3とを備えてもよい。ロボット装置1は、例えば、工場等の生産現場において、人と協調して作業を行う、協働ロボット等の産業ロボットである。ロボット装置1は、走行可能(移動可能)なカート2に搭載されている。カート2が走行することにより、カート2の上のロボット装置1が移動する。搬送装置3は、例えば、自律走行ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)であるが、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)であってもよい。
【0016】
図1のロボット装置1は、垂直多関節ロボットであり、ベース101と、ベース101に連結されたアーム102とを有する。ロボット装置1は、垂直多関節ロボットに限定されず、水平多関節ロボット等の他の方式を採用したロボットであってもよい。アーム102の先端には、ワークや工具等の対象物を把持するエンドエフェクタ(ハンド)103が取り付けられている。ワークは、例えば、最終製品、中間製品、半製品、部品、材料等である。また、アーム102には、カメラ104が取り付けられている。更に、ロボット装置1は、アーム102を動作させるためのサーボモータを有する。ロボット装置1は、加工機4に設けられたランドマーク401をカメラ104で撮影してランドマーク401の
位置を算出する。ロボット装置1は、ランドマーク401の位置に基づいて、加工機4にワーク等を渡したり、加工機4からワーク等を受け取ったりする。また、ロボット装置1は、ランドマーク401の位置に基づいて、加工機4の工具を交換したり、交換後の工具を受け取ったりする。
【0017】
路面を走行可能なカート2は、金属製のフレーム(シャーシ)201と、複数のキャスター202と、複数のジャッキ203と、複数の連結装置204とを備える。フレーム201にロボット装置1が取り付けられている。フレーム201は、ロボット装置1を支持する支持部材である平板部と、平板部から下方に突出した複数の脚部とを有する。フレーム201の平板部の上面にロボット装置1が配置されている。フレーム201の各脚部の下面にキャスター202が設けられ、フレーム201の各脚部の側面にジャッキ203が設けられている。フレーム201の平板部の下面に連結装置204が設けられている。
図1に示すカート2の構成例では、フレーム201に対して、図示されている3つのキャスター202と、図示されていない1つのキャスター202とが設けられている。4つのキャスター202の少なくとも一つに、サスペンションを設けてもよい。
図1に示すカート2の構成例では、フレーム201に対して、図示されている3つのジャッキ203と、図示されていない1つのジャッキ203とが設けられている。
【0018】
キャスター202は、車輪(タイヤ)と、車軸が設けられた本体部とを有する。キャスター202の車輪が路面に接触し、キャスター202の車輪が回転することで、カート2が路面を走行する。ジャッキ203は、下方に突出するアーム210を鉛直方向(上下方向)に伸縮可能である。ジャッキ203がアーム210を下方に伸ばすことにより、アーム210が下降する。アーム210が下降し、アーム210が路面に接触した状態で更にアーム210が下方に伸びることで、フレーム201が上昇する。このように、ジャッキ203はフレーム201をジャッキアップ(上昇)する。フレーム201が上昇することで、キャスター202の車輪が路面から離間する。ジャッキ203によりフレーム201をジャッキアップし、キャスター202の車輪が路面から離間することで、カート2が路面に固定される。カート2が路面に固定された状態で、ロボット装置1と加工機4との間でワークや工具等の受け渡しが行われる。カート2が路面に固定されているため、ロボット装置1が作業を行っているときにロボット装置1が移動してしまうことが回避される。
【0019】
搬送装置3は、サーバなどの上位装置から移動先の指示(入力)を受け付けて、移動先に移動する。搬送装置3は、車輪301が回転することで、路面を走行する。ロボット装置1は、搬送装置3に設けられたランドマーク302をカメラ104で撮影してランドマーク302の位置を算出する。ロボット装置1は、ランドマーク302の位置に基づいて、搬送装置3にワークや工具等を渡したり、搬送装置3からワークや工具等を受け取ったりする。カート2が路面に固定された状態で、ロボット装置1と搬送装置3との間でワークや工具等の受け渡しが行われる。カート2が路面に固定されているため、ロボット装置1が作業を行っているときにロボット装置1が意図せずに移動してしまうことが回避される。
【0020】
図1に示すように、搬送装置3に対してトレイ303、搬送路304及びストッパ305を設けてもよい。トレイ303には、ワークや工具等が格納される。搬送路304は傾斜しており、搬送路304にトレイ303を載置すると、トレイ303の自重によりトレイ303が自動的に搬送される。ストッパ305は、搬送装置3の内部に引っ込んだり、搬送装置3の外部に飛び出したりする。ストッパ305が搬送装置3の外部に飛び出し、ストッパ305がトレイ303に接触することで、搬送路304上にトレイ303が載置された状態が保持される。ストッパ305が搬送装置3の内部に引っ込むことで、トレイ303が搬送路304から離脱して、トレイ303が他の場所に搬送される。
【0021】
搬送装置3には、搬送装置3の周囲を監視する監視センサや、搬送装置3の走行の状態や位置を検出するための加速度センサやその他の各種センサが設けられている。監視センサは、LiDARなどの距離センサであり、監視センサの計測範囲内に存在する物体までの距離を示すデータ(距離画像)を取得できる。例えば、監視センサによって人が通路に飛び出たことが検知された場合、搬送装置3は、走行の停止や迂回走行を行う。また、搬送装置3は、加速度センサ及び各種センサによって取得されたデータに基づいて、マップにおける搬送装置3の位置を算出する。例えば、搬送装置3は、SLAM(Simultaneous
Localization and Mapping)技術により自己位置を推定することで、マップにおける搬
送装置3の位置を算出してもよい。搬送装置3は、上位装置から指示を受け付けた場合、マップを参照して所定場所に移動してもよい。
【0022】
所定場所にロボット装置1及びカート2が待機している場合、搬送装置3は、所定場所の近傍でロボット装置1及びカート2が待機しているか否かを確認する。例えば、送信機を搬送装置3に設け、受信機をロボット装置1又はカート2に設けることで、ロボット装置1又はカート2と、搬送装置3との間で光通信を行ってもよい。搬送装置3は、光通信が確立できた場合、所定場所にロボット装置1及びカート2が待機していることを認識する。搬送装置3は、所定場所にロボット装置1及びカート2が待機していることを認識した場合、ロボット装置1及びカート2と搬送装置3との間のドッキングを開始する。
【0023】
搬送装置3は、監視センサによりカート2の位置を把握して、カート2のフレーム201の下方に進入する。ロボット装置1が、搬送装置3のランドマーク302の位置を算出することにより、カート2と搬送装置3との相対位置を把握し、ロボット装置1が、搬送装置3にカート2の位置を知らせるようにしてもよい。ロボット装置1と搬送装置3との間で通信を行い、ロボット装置1がカート2の位置を搬送装置3に通知してもよい。また、カート2の位置が上位装置を介して搬送装置3に通知されてもよい。また、ロボット装置1は、カート2と搬送装置3との相対位置に基づき、搬送装置3に移動指示を送ってもよい。搬送装置3は、ロボット装置1から受け取った移動指示に基づいて、カート2のフレーム201の下方に進入してもよい。
【0024】
搬送装置3がフレーム201の下方に進入したことをカート2が検知した場合、ロボット装置1及びカート2と搬送装置3との間のドッキングが開始される。搬送装置3は、カート2のフレーム201の下方に進入したことを示す信号をカート2に送信してもよい。カート2は、搬送装置3からの信号を受信することで、搬送装置3がフレーム201の下方に進入したことを検知してもよい。カート2に近接センサなどの検知センサを設けてもよい。カート2は、検知センサにより搬送装置3がフレーム201の下方に進入したことを検知してもよい。カート2の連結装置204を搬送装置3の被連結装置306に連結することで、カート2と搬送装置3とが連結され、ロボット装置1及びカート2と搬送装置3との間のドッキングが行われる。
【0025】
図2は、カート2の連結装置204及び搬送装置3の被連結装置306の拡大図である。
図2には、カート2に設けられた2つの連結装置204の一方が図示されており、また、搬送装置3に設けられた被連結装置306の一部が図示されている。被連結装置306は、搬送装置3の上面に設けられている。連結装置204は、把持部241と、把持部241に接続された本体部242と、本体部242に接続されたロータリーユニット243と、ロータリーユニット243に接続された支持部244とを有する。連結装置204の支持部244は、フレーム201の平板部の下面に取り付けられる。被連結装置306は、搬送装置3の上面に固定され、搬送装置3の上面に対して垂直方向に立設している柱部361を有する。また、被連結装置306は、柱部361の外周面に設けられたスプリング362、円筒部363及びスプリング364を有する。スプリング362、円筒部363及びスプリング364が、柱部361の下方から上方に向かって順番に配置されている
。すなわち、スプリング362の上方に円筒部363が配置され、円筒部363の上方にスプリング364が配置されている。
【0026】
把持部241は、把持具245、246を有する。把持部241は、把持具245、246を開閉することにより被連結装置306の円筒部363を把持可能なように構成されている。円筒部363は、被把持部の一例である。把持具245、246を本体部242に接続する箇所に軸が設けられている。本体部242と、把持具245、246とを接続する軸を起点に、把持具245、246を水平方向に動かすことで、把持部241の開閉が行われる。
【0027】
カート2の連結装置204と搬送装置3の被連結装置306との連結について説明する。連結装置204の把持部241が開かれた状態で、連結装置204の把持部241に被連結装置306の円筒部363を収容する。すなわち、把持具245の先端と把持具246の先端との間の距離が所定距離以上である状態で、把持具245と把持具246との間に被連結装置306の円筒部363を移動する。連結装置204の把持部241に被連結装置306の円筒部363を収容した状態で、連結装置204の把持部241を閉じる。すなわち、把持具245と把持具246との間に被連結装置306の円筒部363を移動した後、把持具245の先端と把持具246の先端とを接触させる又は把持具245の先端と把持具246の先端とを接近させる。これにより、連結装置204の把持部241が被連結装置306の円筒部363を把持し、連結装置204と被連結装置306とが連結され、カート2と搬送装置3とが連結される。なお、連結装置204の把持部241に被連結装置306の円筒部363が収容されている状態において、把持部241と円筒部363との間に隙間が無くてもよいし、把持部241と円筒部363との間に隙間が発生してもよい。
【0028】
把持具245の先端と把持具246の先端との間の距離が所定距離以上である状態で把持部241に円筒部363を収容した後、把持部241を閉じることで把持部241が円筒部363を把持する。このように、把持部241が水平方向に広がった状態で把持部241に円筒部363を収容するため、カート2と搬送装置3とを連結する際のカート2及び搬送装置3の位置合わせを容易に行うことができる。所定距離は、円筒部363の直径よりも大きい値であり、任意の値を設定することができる。把持具245の先端と把持具246の先端との間の距離が大きいほど、カート2と搬送装置3とを連結する際のカート2及び搬送装置3の位置合わせが容易になる。
【0029】
ジャッキ203がアーム210を縮ませること、アーム210が路面から離間する。アーム210が縮むことでフレーム201が下降し、キャスター202の車輪が路面に接触する。キャスター202の車輪を路面に接触させた状態で、カート2の連結装置204と搬送装置3の被連結装置306とが連結される。すなわち、キャスター202の車輪を路面に接触させた状態で、カート2と搬送装置3との連結が行われる。カート2と搬送装置3との連結が行われた後、搬送装置3が走行を開始する。カート2と搬送装置3とが連結された状態にある場合、搬送装置3が走行することにより、搬送装置3の被連結装置306がカート2の連結装置204を押す又は引っ張る。これにより、搬送装置3が走行すると共にカート2が走行し、搬送装置3によってロボット装置1及びカート2が搬送される。例えば、搬送装置3が、上位装置からの指示によって指定された所定場所に移動し、カート2上のロボット装置1と搬送装置3との間のドッキングが行われ、搬送装置3がロボット装置1及びカート2を搬送する。
【0030】
カート2は搬送装置3に載置されておらず、カート2の荷重の一部が搬送装置3に掛かっている。そのため、搬送装置3は、カート2を押す力又は引く力で、ロボット装置1及びカート2を搬送すること可能となる。例えば、搬送車にロボット装置1を搭載した状態
でロボット装置1を搬送する場合と比較して、搬送装置3の消費電力を抑制することができる。
【0031】
次に、カート2の連結装置204と搬送装置3の被連結装置306との連結解除について説明する。連結装置204の把持部241が開かれた状態で、連結装置204の把持部241から被連結装置306の円筒部363を離脱させる。すなわち、把持具245の先端と把持具246の先端との間の距離が所定距離以上である状態で、把持具245と把持具246との間に位置する被連結装置306の円筒部363を連結装置204の把持部241から離れる方向に移動する。これにより、連結装置204の把持部241が被連結装置306の円筒部363を把持することが解除され、連結装置204と被連結装置306との連結が解除される。このように、連結装置204の把持部241が被連結装置306の円筒部363に対する把持を解除することで、カート2と搬送装置3との連結が解除される。例えば、搬送装置3がロボット装置1及びカート2を搬送先に搬送した後、カート2の連結装置204と搬送装置3の被連結装置306との連結解除が行われる。カート2と搬送装置3との連結が解除された後、搬送装置3は、カート2の下方から離脱し、上位装置からの指示に従って所定場所に移動する。
【0032】
搬送システム10によれば、連結装置204の把持部241が開かれた状態で、連結装置204の把持部241に被連結装置306の円筒部363を収容した後、連結装置204の把持部241を閉じる。これにより、カート2の連結装置204と搬送装置3の被連結装置306との連結が行われ、カート2上のロボット装置1と搬送装置3との間のドッキングが行われる。また、搬送システム10によれば、連結装置204の把持部241に被連結装置306の円筒部363を収容した状態で連結装置204の把持部241が開かれ、連結装置204の把持部241から被連結装置306の円筒部363が離脱する。これにより、カート2の連結装置204と搬送装置3の被連結装置306との連結が解除され、カート2と搬送装置3とが分離し、カート2上のロボット装置1と搬送装置3との間のドッキングが解除される。このように、搬送システム10によれば、カート2上のロボット装置1と搬送装置3との間のドッキング及びその解除を容易に行うことが可能となる。
【0033】
<実施形態>
図3は、カート2の構成を示すブロック図である。カート2は、制御部(コントローラ)21と、エア供給部22と、バッテリ23とを備える。制御部21は、エア供給部22、ジャッキ203及び連結装置204の駆動や動作を制御する。エア供給部22は、ジャッキ203及び連結装置204にエアを供給する。バッテリ23は、制御部21、エア供給部22、ジャッキ203及び連結装置204に電力を供給する。エア供給部22は、エアコンプレッサ24及びエアタンク25を有する。エアコンプレッサ24は、ジャッキ203及び連結装置204に供給されるエアを圧縮する。エアタンク25は、エアコンプレッサ24によって圧縮されたエアを蓄えたり、エアの圧力を平準化したりする。
【0034】
制御部21は、プロセッサやメモリ等の記憶媒体を有するコンピュータである。プロセッサには、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等が含まれる。メモリには、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等が含まれる。制御部21は、メモリ等に記憶されたプログラム等の実行により、周辺機器の制御を行うことで所定の目的に合致した機能を提供する。制御部21は、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、数値演算プロセッサ等を含んでもよい。また、制御部21は、単一のチップ上にプロセッサの演算装置やメモリ等の記憶媒体を集積させて構成されたSoC(System on a Chip)であってもよい。
【0035】
ジャッキ203及び連結装置204は、エア供給部22から供給されたエア(エア圧)を動力源として動作する。ジャッキ203は、エア式ジャッキであり、エア供給部22から供給されたエアを動力源としてアーム210を昇降する。ジャッキ203は、ブレーキ付シリンダ(ロック付シリンダ)を有する。フレーム201をジャッキアップした後、ジャッキ203へのエアの供給を停止することで、エアの消費を抑制することができる。
【0036】
連結装置204は、エア供給部22から供給されたエアを動力源として把持部241の開閉を行う。連結装置204は、ブレーキ付シリンダを有する。把持部241が開かれた後、又は、把持部241が閉じられた後、連結装置204へのエアの供給を停止することで、エアの消費を抑制することができる。搬送装置3によってロボット装置1及びカート2が搬送されている間、エア供給部22から連結装置204にエアは供給されない。エア供給部22から連結装置204にエアが供給されていない場合、把持部241の開閉動作は行われない。例えば、搬送装置3によってロボット装置1及びカート2が搬送されている間に、連結装置204に対する電力の供給が遮断された場合であっても、連結装置204の把持部241が被連結装置306の円筒部363を把持した状態が保持される。そのため、連結装置204と被連結装置306との連結は解除されず、カート2と搬送装置3との連結は解除されない。したがって、ロボット装置1及びカート2の搬送中において、搬送装置3からロボット装置1及びカート2が離脱することが抑止される。
【0037】
図2を参照して、連結装置204のロータリーユニット243について説明する。ロータリーユニット243は、把持部241及び本体部242の回転を許容する回転機構である。ロータリーユニット243は、把持部241が被連結装置306の円筒部363を把持した状態で把持部241及び本体部242を水平方向の軸回りに回転可能にする。把持部241及び本体部242のR1方向の回転角度は、例えば、20度であるが、この角度に限定されない。把持部241及び本体部242のR2方向の回転角度は、例えば、20度であるが、この角度に限定されない。
【0038】
カート2が路面の傾斜部分や段差部分を走行するとき、カート2が搬送装置3に対して斜めに傾く場合がある。また、搬送装置3が路面の傾斜部分や段差部分を走行するとき、搬送装置3がカート2に対して斜めに傾く場合がある。カート2及び搬送装置3の少なくとも一方が路面の傾斜部分や段差部分を走行する場合に、把持部241及び本体部242が回転することにより、連結装置204と被連結装置306との連結部分に負荷が加わることが抑制される。把持部241及び本体部242がR1方向又はR2方向に回転した状態で、連結装置204と被連結装置306との連結が解除された場合、把持部241は初期位置に戻る。把持部241の初期位置は、把持部241の開閉方向が水平方向となる位置である。
【0039】
図2を参照して、被連結装置306について説明する。被連結装置306では、スプリング362及び364によって円筒部363が柱部361の中央部分に保持されている。円筒部363は、搬送装置3の上面に対して垂直方向に移動することが許容されている。すなわち、円筒部363に対して外力が加わったとき、円筒部363は搬送装置3の上面に対して垂直方向に移動する。カート2及び搬送装置3の少なくとも一方が路面の傾斜部分や段差部分を走行する場合に、把持部241によって把持された円筒部363が搬送装置3の上面に対して垂直方向に移動することで、連結装置204と被連結装置306との連結部分に負荷が加わることが抑制される。このように、被連結装置306は、連結装置204の把持部241が円筒部363を把持した状態で円筒部363を水平方向に対して垂直方向に移動可能にする移動機構を有する。円筒部363が搬送装置3の上面に対して垂直方向に移動した状態で、連結装置204と被連結装置306との連結が解除された場合、円筒部363は柱部361の中央部分に戻る。
【0040】
カート2と搬送装置3との連結の解除が行われた後、ジャッキ203によってフレーム201をジャッキアップしてキャスター202の車輪を路面から離間させることでカート2が路面に固定される。したがって、カート2と搬送装置3との連結の解除が行われた後に、ロボット装置1及びカート2が意図せずに移動してしまうことが抑止される。例えば、カート2と搬送装置3との連結の解除が行われた後のロボット装置1の作業中に、ロボット装置1及びカート2が意図せずに移動してしまうことを抑止することができる。搬送システム10によれば、フレーム201をジャッキアップすることにより、カート2を路面に固定するため、カート2上のロボット装置1と搬送装置3との間のドッキング及びその解除を行う場所の自由度が広がる。
【0041】
カート2上のロボット装置1と搬送装置3との間のドッキングが解除された後は、搬送装置3は単独で移動することが可能である。そのため、ロボット装置1が作業を行っている間に、搬送装置3は、任意の場所に移動することが可能である。搬送装置3は、ロボット装置1の作業が終了するのを待つ必要がないため、工場の生産性及び稼働率を向上することができる。
【0042】
制御部21は、複数のジャッキ203の各アーム210の伸縮度が一致するように複数のジャッキ203を制御してもよい。また、制御部21は、複数のジャッキ203の各アーム210の伸縮度を独立して複数のジャッキ203を制御してもよい。例えば、平坦な路面でカート2上のロボット装置1と搬送装置3との間のドッキング及びその解除を行う場合、制御部21は、複数のジャッキ203の各アーム210の伸縮度が一致するように複数のジャッキ203を制御する。例えば、傾斜部分や段差部分を有する路面でカート2上のロボット装置1と搬送装置3との間のドッキング及びその解除を行う場合、制御部21は、複数のジャッキ203の各アーム210の伸縮度を独立して複数のジャッキ203を制御する。これにより、傾斜部分や段差部分を有する路面において、カート2上のロボット装置1と搬送装置3との間のドッキング及びその解除を行うことが可能となる。
【0043】
上記の構成例では、連結装置204の把持部241は、エアを動力源として動作するが、本実施形態は、上記の構成例に限定されない。連結装置204の把持部241が電力を動力源として動作するように、連結装置204が構成されてもよい。例えば、ソレノイド電気錠によって連結装置204の把持部241の開閉動作が行われてもよい。通電時解錠型のソレノイド電気錠を用いてもよい。これにより、連結装置204が通電している間、連結装置204の把持部241の開閉動作が行われる。例えば、搬送装置3によってロボット装置1及びカート2が搬送されている間に、連結装置204に対する電力の供給が遮断された場合であっても、連結装置204の把持部241が被連結装置306の円筒部363を把持した状態が保持される。そのため、連結装置204と被連結装置306との連結は解除されず、カート2と搬送装置3との連結は解除されない。したがって、ロボット装置1及びカート2の搬送中において、搬送装置3からロボット装置1及びカート2が離脱することが抑止される。また、連結装置204の把持部241は、油圧式で動作してもよい。
【0044】
上記の構成例では、カート2の制御部21が、エア供給部22、ジャッキ203及び連結装置204を制御するが、本実施形態は、上記の構成例に限定されない。ロボット装置1のロボットコントローラが、エア供給部22、ジャッキ203及び連結装置204を制御してもよい。ロボット装置1のロボットコントローラは、プロセッサやメモリ等の記憶媒体を有するコンピュータである。
【0045】
ロボット装置1がエアを動力源として動作する場合、エア供給部22からエアをロボット装置1に供給してもよい。エア供給部22からロボット装置1、ジャッキ203及び連結装置204にエアを供給することで、一つの供給源からロボット装置1、ジャッキ20
3及び連結装置204にしてエアを供給することができる。ジャッキ203は、エア式ジャッキに限定されず、電力を駆動源とする電動ジャッキ又は油圧を駆動源とする油圧ジャッキであってもよい。
【0046】
<その他>
上記実施形態は、本発明の構成例を例示的に説明するものに過ぎない。本発明は上記の具体的な形態には限定されることはなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0047】
上記で説明した各処理は、コンピュータが実行する方法として捉えてもよい。また、上記で説明した各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを、ネットワークを通じて、又は、非一時的にデータを保持するコンピュータ読取可能な記録媒体等からコンピュータに提供してもよい。
【0048】
<付記1>
ロボット装置(1)が搭載されたカート(2)と、前記ロボット装置(1)及び前記カート(2)を搬送する搬送装置(3)とを備える搬送システム(10)であって、
前記カート(2)の把持部(241)が前記搬送装置(3)の被把持部(363)を把持することで、前記カート(2)と前記搬送装置(3)とが連結され、
前記カート(2)の前記把持部(241)が前記搬送装置(3)の前記被把持部(363)に対する把持を解除することで、前記カート(2)と前記搬送装置(3)との連結が解除される、
搬送システム(10)。
【符号の説明】
【0049】
1:ロボット装置
2:カート
3:搬送装置
4:加工機
21:制御部
22:エア供給部
23:バッテリ
24:エアコンプレッサ
25:エアタンク
201:フレーム
202:キャスター
203:ジャッキ
204:連結装置
241:把持部
242:本体部
243:ロータリーユニット
244:支持部
306:被連結装置
361:柱部
362、364:スプリング
363:円筒部