(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033471
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ベントダクト
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G10K11/16 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137061
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】杉本 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】笹澤 和也
(72)【発明者】
【氏名】安田 賢司
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061EE04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】室内空間から外部空間に排出される空気の流れを阻害することなく、騒音を低減可能なベントダクトを提供する。
【解決手段】ベントダクト1は、車両の室内空間S1の空気を車両の外部空間S2に排出する接続空間4、それを包囲する周壁2、周壁の第1辺から室内空間へ向かって延びる第1案内部材6及び第1辺と対向する第2辺から室内空間へ向かって延びる第2案内部材8を含む。騒音のうち、第2辺側の周壁付近を進んだ音波N3は、外部空間から第1接続空間41を介して室内空間に向かって伝播し、第2案内部材の第2湾曲部81に衝突して曲がったのち壁部82に沿って、第2方向Vを第1湾曲部61に向かって進み、接続空間を第1方向Hに沿って進んだ音波N4と衝突する。音波N3は、音波N4に比べて少なくとも第2湾曲部の大きさ分だけ長い経路を伝播するため、経路差が2分の1波長と対応する周波数域の音が、互いに逆位相の音となり相殺される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内空間の空気を前記車両の外部空間に排出するベントダクトであって、
前記室内空間と前記外部空間とを接続する接続空間と、
前記接続空間を包囲する周壁と、
前記周壁のうちの一つの辺である第1辺から前記室内空間へ向かって延びる第1案内部材と、
前記周壁のうちの一つの辺であり、前記第1辺と対向する第2辺から前記室内空間へ向かって延びる第2案内部材と、
を備え、
前記第1案内部材は、前記第2辺に向かって湾曲し、前記室内空間側から前記外部空間にむけた方向にみて前記接続空間と重なる位置まで延びる第1湾曲部を有し、
前記第2案内部材は、前記第1辺に向かって湾曲し、前記室内空間側から前記外部空間にむけた方向にみて前記接続空間と重なる位置まで延びる第2湾曲部を有し、
前記第1湾曲部は前記第2湾曲部よりも前記外部空間側に配置され、
前記第2案内部材は、前記室内空間側から前記外部空間にむけた方向にみて、前記第1湾曲部と重なる位置まで延びる、
ベントダクト。
【請求項2】
前記第1湾曲部は、第1曲率半径で湾曲し、
前記第2湾曲部は、第2曲率半径で湾曲し、
前記第1曲率半径は、前記第2曲率半径より小さい、
請求項1に記載のベントダクト。
【請求項3】
前記第2案内部材は、前記第2湾曲部から連続して延びて前記接続空間と対向する壁部と、前記壁部の前記第2湾曲部と反対側の端部から延びて前記室内空間に向かって第3曲率半径で湾曲する第3湾曲部と、を有する、
請求項1に記載のベントダクト。
【請求項4】
前記第2案内部材と前記周壁との間を繋ぐ隔壁をさらに備え、
前記隔壁は、前記車両の前側に配置される、
請求項3に記載のベントダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベントダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音波の一部を湾曲させて、入力された音を相殺して騒音を低減するベントダクトが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のベントダクトは、車両の室内空間側に設けられた複数の案内部材を備える構造を開示している。このベントダクトにおける案内部材は、車両の外部空間から入力された音波の一部を湾曲させる。これにより、湾曲された音波は、入力される音波と相殺することができる。このため、ベントダクトは、車両の外部空間から室内空間に伝達される騒音を低減することができる。
【0005】
一方で、特許文献1のベントダクトは、室内空間側に延びる複数の案内部材が湾曲して延びる。この案内部材は、室内空間からベントダクトを介して外部空間に排出される空気の流れに対して交差する方向に延びる。このため、ベントダクトは、室内空間からベントダクトを介して外部空間に排出される空気の流れを阻害する場合がある。さらに、案内部材の一部は、ベントダクトが延びる方向に沿って室内空間側に開口する。このため、ベントダクトを通過した騒音の一部がそのまま室内空間に伝播する場合がある。
【0006】
本開示の課題は、室内空間から外部空間に排出される空気の流れを阻害することなく、室内空間の騒音を低減可能なベントダクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るベントダクトは、車両の室内空間の空気を前記車両の外部空間に排出し、前記室内空間と前記外部空間とを接続する接続空間と、前記接続空間を包囲する前記周壁と、前記周壁のうちの一つの辺である第1辺から前記室内空間へ向かって延びる第1案内部材と、前記周壁のうちの一つの辺であり、前記第1辺と対向する第2辺から前記室内空間へ向かって延びる第2案内部材と、を備える。前記第1案内部材は、前記第2辺に向かって湾曲し、前記室内空間側から前記外部空間にむけた方向にみて前記接続空間と重なる位置まで延びる第1湾曲部を有する。前記第2案内部材は、前記第1辺に向かって湾曲し、前記室内空間側から前記外部空間にむけた方向にみて前記接続空間と重なる位置まで延びる第2湾曲部を有する。前記第1湾曲部は前記第2湾曲部よりも外部空間側に配置され、前記第2案内部材は、前記室内空間側から前記外部空間にむけた方向にみて、前記第1湾曲部と重なる位置まで延びる。
【0008】
このベントダクトによれば、第1案内部材の第1湾曲部は、外部空間から伝播した音波を湾曲させる。これにより、第1案内部材は、接続空間を通過した音波の一部を相殺する。また、第2案内部材の第2湾曲部もまた、外部空間から伝播した音波を湾曲させる。これにより、第2案内部材は、接続空間を通過した音波の一部を相殺する。この結果、ベントダクトは、外部空間から室内空間に伝わる騒音を低減することができる。
【0009】
一方で、室内空間から外部空間に排出される空気は、第2案内部材と第1案内部材の間を通過して接続空間へと流れる。これにより、ベントダクトは、室内空間から外部空間に向けて流れる空気の経路を遮ることなく、これらの空気を外部空間へすみやかに導くことができる。この結果、ベントダクトは、室内空間から外部空間に排出される空気の流れを阻害することなく、簡易な構造で騒音を低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、室内空間から外部空間に排出される空気の流れを阻害することなく、騒音を低減可能なベントダクトを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態における車両を示す斜視図。
【
図2】本開示の実施形態におけるベントダクトを示す斜視図。
【
図3】本開示の実施形態におけるベントダクトのA-A断面を示す断面図。
【
図4】本開示の実施形態におけるベントダクトを示す斜視図。
【
図5】本開示の実施形態における消音の仕組みを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態について、図を参照しながら説明する。
図1から
図4に示すように、本実施形態では、車両Cのボデーに設けられるベントダクトを例に説明する。また、本実施形態のベントダクト1は、車両Cの右側面かつ、リアホイールハウス後方のアウタパネルに配置される。さらに、ベントダクト1は、外部空間S2側で、アウタパネルと車両Cの後部を覆う樹脂製のリアバンパの間の空間に向けて開口する。このため、以下明細書において、ベントダクト1の室外から室内に向けた第1方向Hは、車幅方向に一致する。さらに、ベントダクト1の高さ方向である第2方向Vは車両Cの上下方向と一致し、ベントダクト1の幅方向である第3方向Wは、車両Cの前後方向と一致する。
【0013】
しかし、ベントダクト1はこれに限らず、車両Cの左側面や後部に配置されてもよい。また、ベントダクト1は、第2方向Vを車両Cの上下方向に対して傾斜させて配置さてもよい。したがって、第1方向Hから第3方向Wは必ずしも車両Cの前後方向、上下方向、および前後方向と一致しなくてもよい。
【0014】
ベントダクト1は、車両Cの室内空間S1と外部空間S2との間を連通し、車両Cの室内空間S1の空気を車両Cの外部空間S2に排出する機能を有する部材である。ベントダクト1は、例えば車両Cのドアの閉操作時に、室内空間S1の空気を外部空間S2に排出する。
【0015】
ベントダクト1は、周壁2と、接続空間4と、第1案内部材6と、第2案内部材8と、隔壁10と、を備える。
【0016】
周壁2は、後述する接続空間4を囲う樹脂部材である。周壁2は、外枠部21と、第1辺22と、第2辺23と、複数のフィン24と、複数のフラップ25と、を有する。本実施形態の周壁2は、ベントダクト1を車両Cへ組付けた状態で、室内空間S1と外部空間S2とを連通する、断面が概ね四角形の筒状部材である。これに限らず、周壁2は、車両Cの開口に固定可能であれば、種々様々な形状に形成されてもよい。
【0017】
外枠部21は、第1方向Hに沿って延びる筒状部材である。外枠部21は、通路面積が概ね一定の、略直方体形状に形成される。本実施形態の外枠部21は、通路面積の一辺の長さが150mm~200mm程度、第1方向Hに沿った長さが100mm~200mm程度の大きさに形成される。さらに、外枠部21の通路面積は、一辺が100mm~250mm程度の大きさに形成されてもよい。また、外枠部21の第1方向Hに沿った長さは、100mmから250mm程度の大きさに形成されてもよい。なお、本実施形態の外枠部21は、所定の肉厚の硬質樹脂で形成される。
【0018】
外枠部21は、第1開口211と、第2開口212と、を含む。第1開口211は、外枠部21の室内空間S1側に向かって開口する。第2開口212は、外部空間S2側に向かって開口する。本実施形態の第1開口211および第2開口212は、外枠部21の断面積と概ね同じ面積である。
【0019】
第1辺22は、周壁2のうちの室内空間S1側の端部の一辺である。本実施形態では、第1辺22は、外枠部21の第1開口211の下縁である。
【0020】
第2辺23は、周壁2のうちの室内空間S1側の端部の一辺であり、第1辺22に対向する辺である。本実施形態では、第2辺23は、外枠部21の第1開口211の上縁である。すなわち、第1辺22と第2辺23は、第3方向Wに沿って延びる、互いに略平行な周壁2の端縁である。
【0021】
フィン24は、外枠部21の内部に設けられる板状部材である。フィン24は、外枠部21の内周面から第1方向Hおよび第3方向Wに沿って延びる。また、フィン24の第1方向Hに沿った長さは、外枠部21の長さより小さい。本実施形態のフィン24は、第1方向Hに沿った長さが10mmから20mm程度である。また、フィン24の第1方向Hに沿った長さは5mmから30mm程度であってもよい。
【0022】
これにより、フィン24は、ベントダクト1の内部の気体の流通を阻害することなく、外枠部21の変形を抑制することができる。本実施形態のフィン24は、第1フィン241と、第2フィン242と、第3フィン243と、第4フィン244と、を含む。第1フィン241から第4フィン244は、第2方向Vに沿って等間隔に配置される。これに限らず、フィン24の形状および個数は、種々様々に変更可能である。
【0023】
フラップ25は、ゴム製または樹脂製のシート部材である。フラップ25は、第3方向Wに沿って延びる軸を介して、外枠部21の内周面またはフィン24に取り付けられる。フラップ25は、軸を中心に回転自在で、後述する接続空間4の内部の空気の流れに応じて、外枠部21とフィン24の間および隣り合うフィン24の間を開閉する。
【0024】
本実施形態のフラップ25は、第1フラップ251と、第2フラップ252と、第3フラップ253と、第4フラップ254と、第5フラップ255と、を含む。
【0025】
第1フラップ251は、外枠部21の内周面と第1フィン241の間に配置される。第2フラップ252は、第1フィン241と第2フィン242の間に配置される。同様に、第3フラップ253は第2フィン242と第3フィン243の間に、第4フラップ254は、第3フィン243と第4フィン244の間に配置される。第5フラップ255は、第4フィン244と外枠部21の内周面の間に配置される。
【0026】
例えば車両Cのドアが閉操作されて、室内空間S1の空気がベントダクト1を介して外部空間S2に排出される場合、フラップ25は、開状態となる。これにより、ベントダクト1は、室内空間S1の空気を速やかに外部空間S2に排出することができる。
【0027】
また、フラップ25は、空気を排出するとき以外は閉状態を維持する。ベントダクト1は、外部空間S2から室内空間S1に水滴や小石などが入り込むことを防止することができる。さらに、フラップ25は、外部空間S2から室内空間S1に伝わる騒音を低減することができる。
【0028】
接続空間4は、周壁2に囲われた中空空間である。接続空間4は、室内空間S1と外部空間S2を繋ぐ空間である。車両Cのドアが閉じられた際に、室内空間S1の空気は、接続空間4を介して外部空間S2に排出される。また、車両Cの外部の騒音は、外部空間S2から接続空間4を介して室内空間S1側に伝播する。
【0029】
接続空間4は、第1接続空間41と、第2接続空間42と、第3接続空間43、と第4接続空間44と、第5接続空間45と、第6接続空間46と、を有する。
【0030】
第1接続空間41は、外枠部21の内周面の一部と第1フィン241によって囲われる。第2接続空間42は、外枠部21の内周面の一部、第1フィン241および第2フィン242によって囲われる。同様に、第3接続空間43は、外枠部21の内周面の一部、第2フィン242および第3フィン243によって、第4接続空間44は、外枠部21の内周面の一部、第3フィン243および第4フィン244によって、囲われる。第5接続空間45は、第4フィン244と外枠部21の内周面の一部によって囲われる。第6接続空間46は、第1接続空間41から第5接続空間45よりも、室内空間S1側に配置され、外枠部21の内周面によって囲われる。
【0031】
第1案内部材6は、周壁2の第1辺22から延びて、室内空間S1側に配置される板状部材である。本実施形態の第1案内部材6は、周壁2と連続して設けられ、第1開口211から室内空間S1側に延長して形成される。
【0032】
第1案内部材6は、第1湾曲部61を有する。第1湾曲部61は、第2辺23に向かって第1曲率半径R1で湾曲する。すなわち、第1湾曲部61は、第1開口211の内側に向かって湾曲する。本実施形態の第1湾曲部61は、第1曲率半径R1が概ね20mm程度となるように湾曲する円弧形状である。さらに、第1湾曲部61の第1曲率半径R1は10mmから30mm程度の大きさであってもよい。
【0033】
さらに、第1湾曲部61は、室内空間S1から外部空間S2に向けた方向である内外方向H1にみて、接続空間4と重なる位置まで延びる。すなわち、第1湾曲部61は、中心角度が90℃程度の円弧形状であり、その端部は第2方向Vに沿って延びる。本実施形態の第1湾曲部61は、内外方向H1にみて、第1開口211の5分の1程度を覆う位置まで延びる。
【0034】
また、第1湾曲部61は、外枠部21の第1開口211の下端から上向きに湾曲する。これにより、第1湾曲部61は、外部空間S2から接続空間4に侵入した雨水などの液体が、室内空間S1側に流入することを防止することができる。
【0035】
第2案内部材8は、周壁2の第2辺23から延びて、室内空間S1側に配置される板状部材である。本実施形態の第2案内部材8は、周壁2と連続して設けられ、第1開口211から室内空間S1側に延長して形成される。
【0036】
第2案内部材8は、第2湾曲部81と、壁部82と、第3湾曲部83と、を有する。
【0037】
第2湾曲部81は、第1辺22に向かって第2曲率半径R2で湾曲する。すなわち、第2湾曲部81は、外枠部21の第1開口211から延びて、第1開口211の中心部に向かって湾曲する。第2湾曲部81の第2曲率半径R2は、第1曲率半径R1より大きく、後述する第3曲率半径R3と概ね同じ大きさである。
【0038】
本実施形態の第2曲率半径R2は、概ね第1曲率半径R1の2倍程度の大きさである。具体的には、第2曲率半径R2が概ね40mm程度となるように湾曲する円弧形状である。さらに、第2湾曲部81の第2曲率半径R2は20mmから50mm程度の大きさであってもよい。
【0039】
さらに、第2湾曲部81は、内外方向H1にみて、接続空間4と重なる位置まで延びる。本実施形態の第2湾曲部81は、第1開口211の上縁から延びて、第1方向Hから第2方向Vに沿って湾曲し、後述する壁部82に接続する。
【0040】
壁部82は、第2湾曲部81の端部から連続して、第2方向Vに沿って延びる板状の部材である。壁部82は、第1方向Hにおいて第2湾曲部81の長さ分の間隔を空けて、第1開口211と対向する位置に配置される。本実施形態の壁部82は、第1方向Hにおいて、第1開口211から30mm程度の間隔を空けて配置される。さらに、壁部82と第1開口211との間の距離は20mmから50mm程度であってもよい。
【0041】
壁部82は、第2方向Vにおいて、周壁2の第1辺22付近まで延びて、後述する第3湾曲部83に接続する。
【0042】
さらに、壁部82は、内外方向H1にみて、第1開口211と略同じ大きさに形成される。本実施形態の壁部82は、内外方向H1にみて、第1開口211を覆うように形成される。
【0043】
第3湾曲部83は、壁部82の端部から連続して延びて、室内空間S1側に向かって第3曲率半径R3で湾曲する。すなわち、第3湾曲部83は、接続空間4から離れる方向に第3曲率半径R3で湾曲する。第3湾曲部83の第3曲率半径R3は、第1曲率半径R1と概ね同じ大きさであり、第2曲率半径R2よりも小さい。
【0044】
本実施形態の第3湾曲部83は、第3曲率半径R3が概ね20mm程度となるように湾曲する円弧形状である。さらに、第3湾曲部83の第3曲率半径R3は10mmから30mm程度の大きさであってもよい。
【0045】
これにより、第3湾曲部83は、第1開口211と室内空間S1との間で空気が流通することができる面積を拡大することができる。さらに、第3湾曲部83は、室内空間S1の空気を、すみやかに壁部82および第2湾曲部81の付近に誘導することができる。このため、室内空間S1の空気は、第1案内部材6付近で流れを阻害されることなく、第1開口211を通過して接続空間4へと進むことができる。この結果、ベントダクト1は、室内空間S1の空気を、すみやかに接続空間4を介して外部空間S2に排出することができる。
【0046】
以上のように、ベントダクト1は、内外方向H1にみて、周壁2の第1辺22から延びる第1案内部材6と、周壁2の第2辺23から延びる第2案内部材8とが重なるように設けられる。本実施形態のベントダクト1は、第1方向Hにおいて、第2案内部材8が第1案内部材6よりも室内空間S1側に配置される。さらに、第1案内部材6の第1湾曲部61は、第2案内部材8の第2湾曲部81よりも外部空間S2側に配置される。
【0047】
また、第1湾曲部61の第1曲率半径R1は、第2湾曲部81の第2曲率半径R2よりも小さい。さらに、第3湾曲部83の第3曲率半径R3は、第1湾曲部61の第1曲率半径R1と概ね等しい。
【0048】
隔壁10は、第1方向Hに沿って延びる板状部材である。隔壁10は、第1開口211と第2案内部材8の第1湾曲部61、壁部82および第3湾曲部83の間を閉鎖する。本実施形態では、隔壁10は、車両Cの前方側に配置され、周壁2と第2案内部材8の間を閉鎖する。
【0049】
これにより、隔壁10は、車両Cの室内空間S1と接続空間4との間に配置される。このため、隔壁10は、ベントダクト1を介して外部空間S2から室内空間S1側の特に前方側に伝わる騒音を低減することができる。
【0050】
以上のように、ベントダクト1は、室内空間S1に向けて、第1出口E1および第2出口E2が開口する。第1出口E1は、第1案内部材6と第2案内部材8の間で、第2方向Vに沿って開口する。第2出口E2は、周壁2と第2案内部材8の間で、第3方向Wに沿って開口する。
【0051】
本実施形態のベントダクト1は、第1出口E1と第2出口E2の面積の合計が、周壁2の第1開口211の面積と概ね同じ大きさになるように形成される。これにより、外部空間S2に向かって排出される室内空間S1の空気を、第1案内部材6、第2案内部材8および隔壁10によって、滞留させることなく、すみやかに接続空間4に流入させることができる。
【0052】
次に
図5を用いて、本実施形態のベントダクト1の消音の仕組みを説明する。
【0053】
外部空間S2の騒音は、ベントダクト1の接続空間4を介して室内空間S1側に伝わる。このとき、騒音は、接続空間4から第1方向Hに沿って振動として伝播する。
【0054】
まず、接続空間4の第1案内部材6側を第1方向Hに沿って伝播した音波の消音について説明する。本実施形態では、騒音は、外部空間S2から、第1接続空間41から第5接続空間45のうちのいずれかを介して室内空間S1に向かって伝播する。
【0055】
騒音のうち、特に第1辺22側の周壁2付近を進んだ音波N1は、外部空間S2から第5接続空間45を介して室内空間S1に向かって伝播する。音波N1は、第5接続空間45を進み第1開口211を通過した後、第1案内部材6の第1湾曲部61に衝突して曲がる。このとき、音波N1は、第1湾曲部61に沿って第1方向Hから第2方向Vに沿って曲がる。
【0056】
第1湾曲部61によって湾曲した音波N1は、第2方向Vに沿って第2湾曲部81に向かって進み、接続空間4を第1方向Hに沿って進んだ音波N2と衝突する。
【0057】
このとき、第1湾曲部61によって湾曲した音波N1は、音波N2に比べて少なくとも第1湾曲部61の大きさ分だけ長い経路を伝播する。このため、音波N1と音波N2に含まれる音のうち、第1湾曲部61による経路差が2分の1波長と対応する周波数域の音は、互いに逆位相の音となり相殺される。これにより、騒音の一部は、第1湾曲部61の端部と第1開口211との間付近で特に低減される。このため、第1案内部材6は、外部空間S2から室内空間S1に伝わる騒音を低減することができる。
【0058】
次に、接続空間4の第2案内部材8側を第1方向Hに沿って伝播した音波の消音について説明する。
【0059】
騒音のうち、特に第2辺23側の周壁2付近を進んだ音波N3は、外部空間S2から第1接続空間41を介して室内空間S1に向かって伝播する。音波N3は、第1開口211を通過した後、第2案内部材8の第2湾曲部81に衝突して曲がったのち壁部82に沿って進む。このとき、音波N3は、第2湾曲部81および壁部82に沿って第1方向Hから第2方向Vに沿って曲がる。
【0060】
第2湾曲部81によって湾曲した音波N3は、第2方向Vに沿って第1湾曲部61に向かって進み、接続空間4を第1方向Hに沿って進んだ音波N4と衝突する。
【0061】
このとき、第2湾曲部81によって湾曲した音波N3は、音波N4に比べて少なくとも第2湾曲部81の大きさ分だけ長い経路を伝播する。このため、音波N3と音波N4に含まれる音のうち、第2湾曲部81による経路差が2分の1波長と対応する周波数域の音は、互いに逆位相の音となり相殺される。これにより、騒音の一部は、第2湾曲部81と壁部82の接続箇所の付近で特に低減される。このため、第2案内部材8は、外部空間S2から室内空間S1に伝わる騒音を低減することができる。
【0062】
以上説明した通り、本開示によれば、室内空間から外部空間に排出される空気の流れを阻害することなく、騒音を低減可能なベントダクトを提供できる。
【0063】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、上記実施形態における接続空間4は、第1接続空間41から第6接続空間46を有したが、本開示はこれに限定されない。すなわち、接続空間4は、第1フィン241から第4フィン244の4つのフィンによって分割されなくてもよい。接続空間4は、単一または複数のフィンによって分割されてもよいし、単に外枠部21の内周面によって囲われた空間であってもよい。
【0065】
例えば、上記実施形態における周壁2の第1辺22は、第1開口211の下縁であったが、本開示はこれに限定されない。すなわち、第1辺22は、第1開口211の上縁やフィン24の室内空間S1側の端部であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態における周壁2の第2辺23は、第1開口211の上縁であったが、本開示はこれに限定されない。すなわち、第2辺23は、第1開口211の下縁やフィン24の室内空間S1側の端部であってもよい。
【0067】
さらに、上記実施形態における第2案内部材8の第2湾曲部81と第3湾曲部83は、概ね同じ曲率半径で湾曲したが本開示はこれに限定されない。すなわち、第2湾曲部81の第2曲率半径R2と第3湾曲部83の第3曲率半径R3は異なる大きさであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 :ベントダクト
2 :周壁
4 :接続空間
6 :第1案内部材
8 :第2案内部材
10 :隔壁
22 :第1辺
23 :第2辺
61 :第1湾曲部
81 :第2湾曲部
82 :壁部
83 :第3湾曲部
R1 :第1曲率半径
R2 :第2曲率半径
R3 :第3曲率半径