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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033492
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】投射型表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20240306BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240306BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 F
H04N5/74 H
H04N5/74 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137100
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】516257981
【氏名又は名称】株式会社ライトショー・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山影 明広
(72)【発明者】
【氏名】梅 雨非
【テーマコード(参考)】
2K203
5C058
【Fターム(参考)】
2K203FA03
2K203FA25
2K203FA32
2K203FA44
2K203FA54
2K203FA62
2K203GA03
2K203GA08
2K203GA12
2K203GA13
2K203GA22
2K203GA25
2K203GA40
2K203HA06
2K203HA08
2K203HA64
2K203HA65
2K203HA67
2K203HA69
2K203HA73
2K203HA74
2K203HA75
2K203HA87
2K203HA93
2K203HB08
2K203HB09
2K203HB10
2K203HB22
2K203MA04
2K203MA23
2K203MA32
5C058BA35
5C058EA05
5C058EA11
5C058EA27
(57)【要約】
【課題】画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置の実現が期待されていた。
【解決手段】複数の半導体レーザが出力するレーザビームをコリメートするコリメートレンズと、コリメートされたレーザビームを集光する集光レンズと、集光されたレーザビームの照射スポットよりも広い面積の光拡散面を備え、光拡散面を移動させることにより、レーザビームに照射される光拡散面の部位を動的に変更することが可能な光拡散素子と、光拡散面で拡散されたレーザビームを重ね合わせて矩形の照射領域を形成するインテグレータ照明系と、インテグレータ照明系により矩形の照射領域が形成される位置よりもインテグレータ照明系に近い位置に配置された偏向素子と、偏向走査される矩形の照射領域を反射型光変調素子に拡大転写する転写光学系とを備える投射型表示装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体レーザと、
前記複数の半導体レーザが出力する複数のレーザビームをコリメートするコリメートレンズと、
前記コリメートレンズによりコリメートされた前記複数のレーザビームを集光する集光レンズと、
前記集光レンズにより集光されたレーザビームの照射スポットよりも広い面積の光拡散面を備え、前記光拡散面を移動させることにより、前記レーザビームに照射される前記光拡散面の部位を動的に変更することが可能な光拡散素子と、
前記光拡散面で拡散された前記複数のレーザビームを重ね合わせて矩形の照射領域を形成するインテグレータ照明系と、
前記インテグレータ照明系により前記矩形の照射領域が形成される位置よりも前記インテグレータ照明系に近い位置に配置された偏向素子と、
前記偏向素子により偏向走査される前記矩形の照射領域を、反射型光変調素子に拡大転写する転写光学系と、
前記反射型光変調素子が出力する映像光を投射する投射レンズと、を備える、
ことを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記光拡散素子は、回転軸を中心とする円周に沿って形成された前記光拡散面を備え、前記光拡散面は前記回転軸を中心に回転可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記光拡散素子は、前記光拡散面が形成された透光性の基板と、前記基板を回転またはジグザグ移動または直線移動させる機構を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記偏向素子は、回転軸を中心に回転可能で、前記回転軸を中心とする円周に沿って形成された光学面を備え、
前記光学面は、前記円周に沿って前記回転軸に対する傾斜角が変化するように構成されており、
前記傾斜角は、前記光学面を一定速度で連続的に回転させると、前記レーザビームを一定方向に一定の偏向速度で再帰的に偏向するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記光拡散素子と前記偏向素子が一体化されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の投射型表示装置。
【請求項6】
前記複数の半導体レーザは、Slow軸の向き及びFast軸の向きが揃うように配置されており、
前記矩形の照射領域の長手方向は前記半導体レーザのSlow軸の方向であり、
前記矩形の照射領域の短手方向は前記半導体レーザのFast軸の方向であり、
前記偏向素子は、前記矩形の照射領域の短手方向に沿って前記レーザビームを偏向走査する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項7】
前記光拡散面を透過したレーザ光をコリメートする第2のコリメートレンズを備え、
前記インテグレータ照明系は、球面のマイクロレンズを2次元に配列したマイクロレンズアレイ、もしくは回折型の光拡散素子、もしくはストライプ状のマイクロレンズを並べたマイクロレンズアレイのいずれかを備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項8】
前記インテグレータ照明系は、前記光拡散素子を透過したレーザ光が入射されるロッドと、前記ロッドの出射面の像を転写するリレーレンズと、を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項9】
前記ロッドは、光学材料から成る角柱か、または内面が反射面である中空の筒である、
ことを特徴とする請求項8に記載の投射型表示装置。
【請求項10】
前記インテグレータ照明系、前記転写光学系のいずれかは、アナモフィックレンズを含む、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項11】
前記転写光学系は、前記矩形の照射領域を拡散板に拡大転写する第1転写光学系と、
前記第1転写光学系により前記拡散板に拡大転写された前記矩形の照射領域を前記反射型光変調素子に拡大転写する第2転写光学系と、を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項12】
前記複数の半導体レーザと、前記コリメートレンズと、前記インテグレータ照明系と、前記偏向素子とを備えた照明ユニットが、異なる色光毎に設けられており、
前記異なる色光の照明ユニットが出力する照明光を合成する光合成部を備え、
前記異なる色光の照明ユニットの各々が出力する前記矩形の照射領域は、互いに重ならないように偏向走査されながら前記反射型光変調素子に拡大転写される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置を備えた投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ光を用いた投射型表示装置が知られている。
特許文献1には、レーザ光源と、レーザ光を映像信号に応じて光変調する光音響変調器と、変調されたレーザ光を水平走査する多角形ミラーと、垂直走査するガルバノミラーと、を備えた投射型表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-180759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された投射型表示装置では、水平走査する多角形ミラーと、垂直走査するガルバノミラーとを併用した光学的な走査手段を備えているが、水平と垂直の両方向を光学的に走査するため、大きな光路空間が必要となり、装置が大型化する問題があった。
【0005】
そこで、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置の実現が期待されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザが出力する複数のレーザビームをコリメートするコリメートレンズと、前記コリメートレンズによりコリメートされた前記複数のレーザビームを集光する集光レンズと、前記集光レンズにより集光されたレーザビームの照射スポットよりも広い面積の光拡散面を備え、前記光拡散面を移動させることにより、前記レーザビームに照射される前記光拡散面の部位を動的に変更することが可能な光拡散素子と、前記光拡散面で拡散された前記複数のレーザビームを重ね合わせて矩形の照射領域を形成するインテグレータ照明系と、前記インテグレータ照明系により前記矩形の照射領域が形成される位置よりも前記インテグレータ照明系に近い位置に配置された偏向素子と、前記偏向素子により偏向走査される前記矩形の照射領域を、反射型光変調素子に拡大転写する転写光学系と、前記反射型光変調素子が出力する映像光を投射する投射レンズと、を備える、ことを特徴とする投射型表示装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図。
図2】(a)レーザモジュールLMに含まれる半導体レーザ11とコリメートレンズ102のペアの1つを示すための模式図。(b)半導体レーザとコリメートレンズ102のペアが、4×2個配列されたレーザモジュールLMを示す模式図。
図3】(a)半導体レーザ11の出力光のNear-Field Patternを例示する図。(b)半導体レーザ11の出力光のFar-Field Patternを例示する図。
図4】(a)平行方向についてのビームの広がりを示す図。(b)直交方向についてのビームの広がりを示す図。
図5】実施形態1に係るインテグレータ照明系を説明するための図。
図6】(a)実施形態1に係るインテグレータ照明系INTを一方向から見た図。(b)実施形態3に係るインテグレータ照明系INTを、(a)と直交する方向から見た図。(c)矩形の照射領域IM1を示す図。
図7】(a)インテクレータ照明系に使われるバルクのロッドを示す図。(b)インテクレータ照明系に使われる中空ロッドを示す図。
図8】(a)偏向器210の一例の外観を示す斜視図。(b)偏向器210の側面図。
図9】(a)偏向器210の反射面の位置と傾斜角を説明するための断面図。(b)偏向器210の反射面の位置と傾斜角を説明するためのグラフ。
図10】(a)偏向器210と矩形の照射領域IM1の位置関係を示す図。(b)反射面のビーム照射位置214近傍の拡大図。(c)青色の矩形の照射領域IM1がDBの方向に偏向走査されることを示す図。
図11】(a)前側転写レンズ201と後側転写レンズ202の作用を説明するための模式図。(b)反射型光変調素子340の画面と、矩形のレーザビームの走査範囲SAの関係を示す図。(c)反射型光変調素子340の画面を矩形のBビーム、Gビーム、Rビームのそれぞれが照射する様子を、横軸を時間軸として示した図。
図12】(a)実施形態1に係る光拡散素子402の側面図。(b)実施形態1に係る光拡散素子402の上面図。
図13】(a)実施形態2に係るインテグレータ照明系INTの基本構成部分を一方向から見た図。(b)実施形態2に係るインテグレータ照明系INTの基本構成部分を、(a)と直交する方向から見た図。(c)マイクロレンズアレイの対を示す図。(d)矩形の照射領域IM1を示す図。
図14】実施形態2に係るインテグレータ照明系INT、偏向器210、および矩形の照射領域IM1の位置関係を示す図。
図15】(a)光拡散素子の拡散面(拡散部)と偏向器の反射面を一体化したユニットの側面図。(b)光拡散素子の拡散面(拡散部)と偏向器の反射面を一体化したユニットの、別の一例の側面図。
図16】実施形態3に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図。
図17】実施形態4に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図。
図18】実施形態5に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の実施形態である投射型表示装置について説明する。
尚、以下に示す実施形態は例示であり、例えば細部の構成については本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当業者が適宜変更して実施をすることができる。尚、以下の実施形態及び説明において参照する図面では、特に但し書きがない限り、同一の参照番号を付して示す要素は、同様の機能を有するものとする。尚、図中の光学要素は模式的に表されているため、実際の形状や構成が必ずしも忠実に表されているとは限らない。例えば、図面では単レンズとして描かれていたとしても、特にただし書きがない限りは複数枚のレンズにより構成されていてもよい。
【0010】
以下の説明において、例えばXプラス方向と記す場合には、図示の座標系におけるX軸矢印が指すのと同じ方向を指し、Xマイナス方向と記す場合には、図示の座標系におけるX軸矢印が指すのと180度反対の方向を指すものとする。また、単にX方向と記す場合には、図示のX軸矢印が指す向きとの異同は関係なく、X軸と平行な方向であることを指すものとする。X以外の方向についても、同様とする。
【0011】
また、以下の説明では、赤色のことを「R」、緑色のことを「G」、青色のことを「B」と記載する場合がある。したがって、例えば、R光は赤色光と、G光源は緑色光源と、Bレーザは青色レーザと、それぞれ同義である。
【0012】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図である。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。
【0013】
[全体構成]
投射型表示装置1000は、B光源400B、G光源400G、R光源400R、B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210R、光合成部220、光路変換ミラー330、TIRプリズム350、反射型光変調素子340、投射レンズ360を備える。また、各色用の偏向器と光合成部220の間には前側転写レンズ201が配置され、光合成部220と光路変換ミラー330の間には後側転写レンズ202が配置されている。光合成部220は、ダイクロイックミラー221とダイクロイックミラー222を備える。投射型表示装置1000は、任意的に投映スクリーン190を備えることができる。
【0014】
B光源400BはB光を発する半導体レーザを、G光源400GはG光を発する半導体レーザを、R光源400RはR光を発する半導体レーザを、それぞれ備えている。光源については、後に詳述する。
【0015】
B用偏向器210Bは、B光源400Bが発するB光をDB方向に偏向する偏向器である。同様に、G用偏向器210Gは、G光源400Gが発するG光をDG方向に偏向する偏向器であり、R用偏向器210Rは、R光源400Rが発するR光をDR方向に偏向する偏向器である。偏向器については、後に詳述する。
【0016】
光合成部220は、ダイクロイックミラー221とダイクロイックミラー222を備える。ダイクロイックミラー221は、G光を透過させ、B光を反射する光学特性を備えている。ダイクロイックミラー222は、G光及びB光を透過させ、R光を反射する光学特性を備えている。ダイクロイックミラー221上において、B光用の前側転写レンズ201の光軸中心と、G光用の前側転写レンズ201の光軸中心とが重なるように、各光学要素は配置されている。また、ダイクロイックミラー222上において、B光用の前側転写レンズ201の光軸中心と、G光用の前側転写レンズ201の光軸中心と、R光用の前側転写レンズ201の光軸中心とが重なるように、各光学要素は配置されている。
【0017】
光合成部220により、B光(点線)、G光(実線)、R光(一点鎖線)の進行方向は全てZプラス方向に揃えられるが、これらの光は、どのタイミングにおいても互いに重なり合わないように合成されている。B光、G光、R光の各々が、互いに反射型光変調素子340の画面上で重ならないように、B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210Rによる偏向走査のタイミング(偏向の位相)を制御しているからである。走査方法については後に詳述する。
光合成部220から出射したB光、G光、R光は、光路変換ミラー330によりXプラス方向に進路を変更され、TIRプリズム350に入射する。
【0018】
TIRプリズム350は、例えば2つのプリズムを組み合わせて構成された内部全反射プリズムであり、照明光(B光、G光、R光)をエアギャップ面で全反射させて、反射型光変調素子340に所定の角度で入射させる。前述したように、B光、G光、R光は、互いに重ならないように、それぞれが反射型光変調素子340の画面の一部を照明する。
【0019】
反射型光変調素子340には、例えばマイクロミラーデバイスをアレイ状に設けたDMDが用いられる。各表示画素に対応するマイクロミラーは、映像信号の輝度レベルに応じて、パルス幅変調により反射方向が変更されるように駆動される。ただし、反射型液晶デバイスのような、別種の反射型光変調デバイスを用いることも可能である。
【0020】
B光で照明されている画面領域の画素は、映像信号のB成分の輝度レベルに応じて駆動され、B映像光をTIRプリズム350に向けて所定角度で反射する。同様に、G光で照明されている画面領域の画素は、映像信号のG成分の輝度レベルに応じて駆動され、G映像光をTIRプリズム350に向けて所定角度で反射する。また、R光で照明されている画面領域の画素は、映像信号のR成分の輝度レベルに応じて駆動され、R映像光をTIRプリズム350に向けて所定角度で反射する。このように、反射型光変調デバイスの変調動作は、B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210Rによる偏向走査と同期して行われる。
【0021】
映像光(B映像光、G映像光、R映像光)は、TIRプリズム350を透過して、投射レンズ360に導かれ、カラー映像として投射される。投射レンズ360は、単数もしくは複数のレンズで構成され、自動焦点調節機能やズーム機能を備えることもできる。
【0022】
投映スクリーン190は、リアプロジェクション型の表示装置を構成する場合に用いられる。また、フロントプロジェクション型の場合にも設置されることが多いが、ユーザが任意の壁面などに投射する場合には、必ずしも設置する必要はない。
【0023】
[光源]
B光源400B、G光源400G、R光源400Rについて説明する。B光源400BはB光を発する半導体レーザとコリメートレンズとを含むレーザモジュールLM-Bを、G光源400GはG光を発する半導体とレーザコリメートレンズとを含むレーザモジュールLM-Gを、R光源400RはR光を発する半導体レーザとコリメートレンズを含むレーザモジュールLM-Rを、それぞれ備えている。半導体レーザの発光波長を別にすれば、各色の光源の基本的な構成は同一であるので、以下では色光毎に区別せずに単に光源400として説明する場合がある。
【0024】
(レーザモジュール)
光源400は、半導体レーザとコリメートレンズのペアが、1次元あるいは2次元にアレイ状に配列されたレーザモジュールLMを備えている。
図2(a)は、レーザモジュールLMに含まれる半導体レーザとコリメートレンズのペアの1つを示すための模式図である。11は半導体レーザ、12は半導体レーザ11の発光部である。尚、図2(a)では、図1のB光源400Bの配置に合わせてXYZ座標系の向きを表示している。図2(a)においては、発光部12の長手方向HをY方向と平行にし、発光部12から出射した光の進行方向をZ方向と平行に図示している。
【0025】
発光部12の長手方向Hとは、典型的には、半導体レーザ11を構成する半導体チップの側面において、P型クラッド層とN型クラッド層に挟まれた活性層が延在している方向である。図2(a)に示すように、以後の説明では、半導体レーザ11の発光部12の長手方向Hと平行な方向を「平行方向」あるいは「Slow軸」と記し、発光部12の長手方向と直交する方向を「直交方向」あるいは「Fast軸」と記す場合がある。半導体レーザ11からは、直線偏光の光が出射し、その電界の振動方向は平行方向(Y方向)である。
【0026】
半導体レーザ11の出力光は、出射方向によって角度特性が異なることが知られているが、図3(a)に出力光のNear-Field Patternを、図3(b)に出力光のFar-Field Patternを例示する。
【0027】
図3(a)に示すように、Near-Field Patternでは、発光部の形状(長手、短手)を反映したビームプロファイルであることが判る。一方、ビームが進行するにつれて、図3(b)のFar-Field Patternに例示するように、ビームは広がってゆく。すなわち、平行方向についてみれば、半導体レーザ11から出射したビームは、広がりが小さく、狭い角度範囲内に強度分布が均一なパターンで進行してゆくことがわかる。一方、直交方向についてみれば、半導体レーザ11から出射したビームは、強度分布が山形になるパターン(ガウシアン)になり、進行するにつれて平行方向よりも広い角度範囲に広がってゆくことがわかる。半導体レーザの活性層は、直交方向の厚さが小さいため、出射する際に回折の影響を大きく受けるためである。Far-Field Patternで見て広がりが小さな平行方向をSlow軸、広がりが大きな直交方向をFast軸と呼ぶこともできる。
【0028】
本実施形態では、図2(a)に示すようにコリメートレンズ102(第1コリメートレンズ)を用いて半導体レーザ11から出射したレーザビームを成形する。すなわち、長手方向の長さがHy1である発光部12から出射した光は、コリメートレンズ102によりコリメートされ、断面が楕円形状のビームとなってZ方向に進行する。尚、楕円形状の長径はX方向と平行で、短径はY方向と平行である。
【0029】
コリメートレンズ102を通過しても、ビームが光軸(Z方向)と完全に平行になるわけではなく、平行方向(発光部の長手方向)と直交方向(発光部の短手方向)ではビームの広がり方が異なったものとなる。図4(a)および図4(b)を参照して、コリメートレンズ102を通過した後のビームの広がり方の違いについて説明する。図4(a)は平行方向についての広がりを示し、図4(b)は直交方向についての広がりを示している。
【0030】
図4(a)に示すように、平行方向についてみれば、ビーム強度のトップはフラットではあるものの、Z方向に進むにつれてビーム径が広がってしまうので、ダイバージェンスが良好であるとは言えない。これに対して、図4(b)に示すように、直交方向についてみれば、コリメートレンズ102からの距離が変化してもビーム強度分布とビーム径の変化が小さいのが判る。すなわち、コリメートレンズ102を透過した後のレーザビームは、直交方向(半導体レーザのFast軸)の方が平行方向(半導体レーザのSlow軸)よりも平行性が高く、ダイバージェンスが良好である。
【0031】
後述するように、本発明では、光源400から出力されるビームのダイバージェンスが直交方向(矩形の短手方向)において優れる(ビームの平行度が高い)という性質を利用して、直交方向に沿ってビームを偏向走査させて光変調素子を照明する。ダイバージェンスが優れる方向に沿ってビームを偏向走査する方が、光変調素子の画面上でB、G、Rの各色照射領域の重なりを防止するのに有利だからである。
【0032】
光源400は、複数の半導体レーザおよびコリメートレンズ102(第1コリメートレンズ)のペアを含んだレーザモジュールLMを備えている。図2(b)は、半導体レーザ11とコリメートレンズ102のペアが、4×2個配列されたレーザモジュールLMを示す模式図である。尚、図2(b)では、図1のB光源100Bに合わせてXYZ座標系の向きを表示している。
【0033】
レーザモジュールLMにおいては、複数の半導体レーザがY方向に沿って等間隔に並ぶように配置されている。また、どの半導体レーザも、発光部12の長手方向がY方向に沿う向きになるように配置されている。4×2素子の半導体レーザを用いる例を示すが、素子の数はこの例に限られるわけではない。レーザモジュールLMは、複数の半導体レーザを1列だけ、あるいは3列以上にわたりY方向に沿って配列する構成にしてもよい。Y方向に沿った半導体レーザの素子列を1列あるいは3列以上備える光源400であっても、出力されるビームは、発光部の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好である。
【0034】
(インテグレータ照明系/光学的重畳手段)
本実施形態の光源400は、レーザモジュールLMから出射される複数のレーザビームを重ね合わせて矩形の照射領域を形成するためのインテグレータ照明系INTを備えている。図5図7(b)を参照して、インテグレータ照明系INTについて説明する。
【0035】
レーザモジュールLMに含まれる半導体レーザ11の各々から出射されるレーザビームは、コリメートレンズ102の作用でおよそ平行となるが、ダイバージェンスについては既に説明したとおりである。本実施形態の光源は、図6(c)に示す矩形の照射領域IM1を形成するため、各半導体レーザから出射されるレーザビームを重ね合わせるインテグレータ照明系INTを備える。
【0036】
図5は、実施形態1に係る光源400、すなわちロッドインテグレータを備えたインテグレータ照明系を説明するための図である。本実施形態に係るインテグレータ照明系は、レーザモジュールLM、集光レンズ401、光拡散素子402、ロッドインテグレータ403、リレーレンズ406を備え、矩形の照射領域IM1を形成する。レーザモジュールLMが備える半導体レーザ、半導体レーザの発光部12、コリメートレンズ102などについては、図2(a)~図4(b)を参照して説明した通りである。
【0037】
レーザモジュールLMに含まれる半導体レーザの各々から出射されるレーザビームは、コリメートレンズ102の作用でおよそ平行となるが、ダイバージェンスについては既に説明した通りである。レーザモジュールLMから出力される略コリメートされたレーザビームは、集光レンズ401により、ロッドインテグレータ403の入射面INPに向けて集光される。図では、集光レンズ401は1枚の凸レンズで示されているが、収差を抑制する等の目的で複数枚のレンズで構成してもよい。
【0038】
ロッドインテグレータ403の入射面INPの近傍には光拡散素子402が配置されており、光拡散素子402により拡散されたレーザビームは入射面INPからロッドインテグレータ403に入射する。レーザモジュールLMから出力されるビームは、矩形の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好であるため、ロッドインテグレータ403の入射面INPでの光の取り込み損失を抑制でき、利用効率を向上することが出来る。ロッドインテグレータ403に入射した光は、側面で全反射を繰り返した後に出射面EXPから出射するが、光拡散素子402の拡散能(拡散角)とロッドインテグレータ403の長さを適宜設定することにより、出射面EXPにおける照度分布を均一化することが出来る。
【0039】
図12(a)に、光拡散素子402の側面図を、図12(b)に、光拡散素子402の上面図を示す。尚、座標系は図5に合わせて表示している。光拡散素子402は、光拡散面DIFが形成された透光性基板SUBと、回転軸CXを中心に透光性基板SUBを回転させるモータ404とを備えている。光拡散面DIFは、透光性基板SUBにレーザ光が入射する側の主面、あるいは透光性基板SUBを透過したレーザ光が出射する側の主面、あるいはその両面に、例えば微細な凹凸形状を付与することにより形成することが出来る。
【0040】
レーザ光のようにコヒーレント性が高い光を、インテグレータ光学系で重ね合わせて用いる際には、幾何光学的な作用だけでなく、波動光学的な作用も合わせて考慮する必要がある。波動光学的な作用を考慮すると、ロッドインテグレータ403に入射したレーザ光が互いに干渉して、矩形の照射領域IM1の中に干渉縞や斑などの明暗パターンを発生させる場合が有り得る。矩形の照射領域IM1の内部に不均一な明暗パターンが固定的に発生すると、表示画像にはユーザが視認可能な画質劣化が生じ得るため、表示用の照明光としては好ましいものではない。
【0041】
そこで、本実施形態で用いられる光拡散素子402は、レーザ光の照射スポット(照射位置)よりも広い面積の光拡散面DIFを備えるとともに、光拡散面DIFを移動させるための移動機構(モータ404)を備えており、レーザ光に照射される光拡散面DIFの部位を動的に変更することができる。言い換えれば、光拡散素子402は、動的な拡散面を備えた光学素子だと言うことができる。
【0042】
本発明では、動的な光拡散面を備えた光拡散素子は、レーザ光源と、インテグレータ光学系の入射面の間に配置される。本実施形態の場合は、図5に示すように、光拡散素子402は、レーザモジュールLMとロッドインテグレータ403の入射面INPの間に配置されている。このような配置にしたうえで、レーザ光が照射する光拡散面DIFの部位を適宜の速度で移動させることにより、インテグレータ光学系に入射させる光の時間的・空間的なコヒーレント性を低減させることが出来る。そうすることにより、インテグレータ光学系にて光が重ね合わされる際に、互いに干渉して干渉縞等の明暗分布が発生するのを抑制することが出来る。適宜の速度で光拡散面を移動させることにより、人間の視覚特性上は、矩形の照射領域IM1内における実効的な照度分布を、極めて均一なものにすることが出来る。
【0043】
本実施形態では、円板状の光拡散板を回転させ、光拡散板内においてレーザ光の照射位置が円周に沿って相対移動するように構成したが、動的な光拡散面を備えた光拡散素子の構成はこれに限られるわけではない。例えば、ピエゾアクチュエータ等の駆動機構を用いて拡散板を直線移動あるいはジグザグ移動で往復させるなどして、光拡散板上におけるレーザ光の照射位置が時間とともに動的に変更される形態とすることもできる。こうした形態によっても、インテグレータ光学系に入射させるレーザ光のコヒーレント性を低減することが出来るため、人間の視覚特性上は、矩形の照射領域IM1内における実効的な照度分布を極めて均一なものにすることが出来る。
【0044】
図5に戻り、ロッドインテグレータ403の出射面EXPから出射される像を、リレーレンズ406で転写することにより、照度の均一性が高い矩形の照射領域IM1を得ることが出来る。リレーレンズの転写倍率を適宜設定することにより、縮小あるいは等倍あるいは拡大した所望のサイズの照射領域IM1を得ることが出来る。尚、図5では、リレーレンズ406は、前側凸レンズ406aと後側凸レンズ406bの2枚で構成されているが、リレーレンズ406の構成はこの例に限られるものではない。
【0045】
図6(a)は、半導体レーザの発光部12の短手方向(X方向)が見える向きでインテグレータ照明系INTを含む光源400を示した図である。図6(b)は、半導体レーザの発光部12の長手方向(Y方向)が見える向きでインテグレータ照明系INTを含む光源400を示した図である。
【0046】
ロッドインテグレータ403は、入射した光をその側面で全反射させ得る光学素子であればよく、例えば図7(a)に示すものや、図7(b)に示すものが用いられ得る。好適には、入射面INPの形状、出射面EXPの形状、およびロッド部分の断面形状が同一となるようにロッドインテグレータ403は構成される。
【0047】
図7(a)に示すロッドインテグレータ403は、例えば光学ガラスや透光性樹脂のような光学材料から成る中実の四角柱状の素子であり、端面である入射面INPおよび出射面EXPの形状は、長辺がH0、短辺がV0の矩形となっている。入射面INPおよび出射面EXPには、反射防止膜(ARコート)を付与しておくのが望ましい。
また、図7(b)に示すロッドインテグレータ403は、中空の四角柱、すなわち筒形状の素子であり、筒の内面には例えばアルミニウム等を材料とする反射面が形成されている。筒の開口部である入射面INPおよび出射面EXPの形状は、長辺がH0、短辺がV0の矩形となっている。例えば、ガラス製や金属性の板状の基板に、アルミニウム膜等の反射膜を蒸着した後に、基板を張り合わせて筒状に組み立てることにより、比較的安価に製造することが出来る。
【0048】
ロッドインテグレータ403の入射面INPおよび出射面EXPの形状は、上述のように長辺がH0、短辺がV0の矩形であるが、リレーレンズ406により、図6(c)に示す長辺がH1、短辺がV1の矩形の照射領域IM1が形成される。矩形の照射領域IM1の長辺が平行方向(半導体レーザのSlow軸方向)に対応し、短辺が直交方向(半導体レーザのFast軸方向)に対応する。例えば、ロッドインテグレータ403の入射面INPおよび出射面EXPの形状を、X方向(短辺V0)が0.33mm、Y方向(長辺H0)が1.67mmの矩形とし、リレーレンズ406の倍率を1.2倍とすれば、V1が0.4mm、H1が2mm程度の矩形の照射領域IM1を得ることができる。
【0049】
(偏向器)
図1に示すように、光源400(B光源400B、G光源400G、R光源400R)と、それぞれが照射する矩形の照射領域IM1の間には、偏向器(B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210R)が配置されている。
B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210Rについて説明する。これらは、異なる色のレーザビームを偏向走査するのに用いられる偏向素子であるが、基本的な構成は同一であるので、以下では特に色を特定せずに偏向器210として説明する場合がある。
【0050】
図8(a)は、偏向器210の一例の外観を示す斜視図であり、図8(b)は、偏向器210の側面図である。
偏向器210は、回転可能な円板状の基体211と、回転軸AXを中心に基体211を回転させるモータ212を備えている。円板状の基体211の主面には、円周に沿って帯状の光学面である反射面213が設けられている。ここで、反射面の位置を特定するため、図8(a)に示すように、回転軸AXを中心として反時計回りに角度座標を設定する。(図では、0°、90°、180°、270°が示されている)。また、図に示す軸BXは、回転軸AXと平行で反射面213を通る軸である。ビーム照射位置214として示すのは、光源400から出力されたビームが、矩形の照射領域IM1に到達する前に反射される際のビーム位置である。
【0051】
帯状の反射面213は、軸BXに対する角度(すなわち回転軸AXに対する角度)が位置によって変化するようにねじれている。図9(a)と図9(b)を参照して、反射面の角度について説明する。図9(a)と図9(b)において、反射面の位置として示されているのは、図8(a)で説明した角度座標により規定される位置である。また、反射面の傾斜角として示されるのは、円板状の基体211の主面(すなわち軸BXと直交する面)を基準とした時の、反射面の傾斜角である。
【0052】
図9(b)に示すように、反射面の位置に対して反射面の傾斜角がリニアに変化するように、反射面213は構成されている。図8(a)、図9(b)に示すように、反射面の位置が0°(360°)において反射面の傾斜角が不連続になるため、説明の便宜上、図9(a)では反射面の位置が1°と359°の場合の傾斜角を示している。
【0053】
モータにより基体211がR方向に回転されると、反射面213も回転軸AXの回りを回転するため、図8(a)に示したビーム照射位置214にてレーザビームが照射される部位の角度座標は、0°→90°→180°→360°(=0°)→90°・・・のように連続的に変化してゆく。
【0054】
反射面が回転してレーザビームに照射される反射面の部位が変化したとしても、図9(a)に示すように、入射ビームは常に軸BXに対してαの角度で反射面213に入射する。一方、反射面の位置に応じて反射面の傾斜角は、-θから+θの範囲で変化する。このため、図9(a)に示すように、反射面213で反射されたレーザビームの方向は、軸BXを基準にすると、(α-2×θ)から(α+2×θ)までの4θの角度範囲内で変化する。つまり、傾斜角は、光学面(反射面)を一定速度で連続的に回転させると、レーザビームを一定方向に一定の偏向速度で再帰的に偏向するように構成されている、
【0055】
言い換えれば、図8(b)に示すように、偏向器210は、出射ビームをRD1(軸BXに対して(α-2×θ))からRD2(軸BXに対して(α+2×θ))までの角度範囲内で偏向走査することができる。図8(a)のR方向に反射面213を連続回転させると、出射ビームは、図8(b)のRD1からRD2に向けて連続的に偏向(走査)されてゆき、RD2に達すると瞬時にRD1に回帰し、再びRD2に向けて偏向(走査)されてゆく。また、もし反射面213をR方向とは逆に回転させるのであれば、出射ビームは、図8(b)のRD2からRD1に向けて連続的に偏向(走査)されてゆき、RD1に達すると瞬時にRD2に回帰し、再びRD1に向けて偏向(走査)されてゆくことになる。
【0056】
このように、偏向器210によれば、回転体を一定速度で連続的に回転させるという簡単な駆動方法で、レーザビームを所定方向に等速度で再帰的に偏向走査することができる。後述するように、反射型光変調素子340の駆動タイミング(あるいは、反射型光変調素子340に入力する画像信号)と同期して回転するようにモータ212を制御することにより、照明光を反射型光変調素子340の画面においてV方向に走査することができる。
【0057】
尚、本発明を実施するにあたり、回転体を備えた偏向器210の代わりに、ガルバノミラーを用いてもよい。ただし、ガルバノミラーを用いた場合には、装置の大型化、振動の発生、コストの増大等が見込まれるため、回転体を備えた偏向器210を用いるのが望ましい。
【0058】
図10(a)に、偏向器210と、偏向器210の先に形成される矩形の照射領域IM1の、位置関係を示す。座標系は、B光源100Bを基準に示している。また、図10(b)に、反射面のビーム照射位置214近傍の拡大図を示す。矩形の照射領域IM1よりも距離Lだけ光源側に、反射面のビーム照射位置214が配置されている。図10(c)に示すように、青色の矩形の照射領域IM1は、偏向器210の回転に応じてDBの方向に偏向走査される。
【0059】
尚、偏向器210の製造方法について付言すると、円周に沿って帯状の反射面213が設けられた円板状の基体211は、例えばプレス押出工法で金属母材を加工することにより低コストで製造することが可能である。図9(a)に例示したように、反射面213の近傍には基体211の主面から突出した部分や凹んだ部分が存在するが、回転バランスを良好にするため、回転軸AXを通る断面で見た時、どの位置の断面であっても断面積が等しい形状にするのが望ましい。また、基体211の主面から突出する最大高さや、主面から凹む最大深さは、風切り音を低減するため、平均板厚の3/4以下にするのが望ましい。具体的には、基体211の平均板厚は、0.7mm以上で2mm以下とするのが望ましく、θは3°以上で6°以下とするのが望ましい。
【0060】
以上説明した偏向器により、B、G、Rのレーザビームにより形成される各色の矩形の照射領域IM1は、図1に示すように、それぞれDB、DG、DRの方向に偏向走査される。
【0061】
(光合成部)
各色のレーザビームは、図1に示す光合成部220により進行方向が揃えられるが、光合成部220の作用については、すでに全体構成の項で説明したとおりである。
【0062】
(転写光学系)
各色のレーザビームにより形成される矩形の照射領域IM1は、各色用の前側転写レンズ201と後側転写レンズ202とで構成される第1転写レンズ200(第1転写光学系)により、反射型光変調素子340の画面に拡大転写される。前側転写レンズ201と後側転写レンズ202は、それぞれ正のパワーをもつ凸レンズである。
【0063】
図11(a)は、前側転写レンズ201と後側転写レンズ202の作用を説明するための模式図である。図示のように、矩形の照射領域IM1は、矩形の2次転写像IM2として拡大転写される。矩形の2次転写像IM2は、図1に示すように反射型光変調素子340の画面位置に設定されている。矩形の照射領域IM1を、矩形の2次転写像IM2に拡大する転写倍率は、例えば6倍(V1:V2=1:6)程度である。
【0064】
図11(b)に、反射型光変調素子340の画面と、矩形のレーザビームの走査範囲SAの関係を示す。反射型光変調素子340の画面サイズをH(水平方向)×V(垂直方向)とすると、矩形のレーザビームの走査範囲SAは、画面サイズよりも大きなH’×V’の領域をカバーする。尚、矩形の照射領域IM1が偏向器210により走査される走査範囲に対して、矩形のレーザビームの走査範囲SAは、上述した転写倍率で拡大されている。
【0065】
図11(c)は、反射型光変調素子340の画面を矩形のBビーム、Gビーム、Rビームのそれぞれが照射する様子を、横軸を時間軸として示した図である。Bビーム、Gビーム、Rビームは、走査方向SDに沿って反射型光変調素子340の画面を垂直走査し、1フレーム時間で1画面の走査を完了する。各色領域の境界部分で混色が生じないように、Bビーム、Gビーム、Rビームは、互いに重複しないように構成されており、必然的に各ビームの垂直方向の幅V2は、V’の1/3以下に構成されている。各ビームの垂直方向の幅は、反射型光変調素子340の画面の垂直方向の幅の1/6以上かつ1/3以下に設定され得る。
【0066】
以上のように、本実施形態の投射型表示装置は、複数の半導体レーザと、コリメートレンズと、インテグレータ照明系と、偏向素子とを備えた照明ユニットが、異なる色光毎に設けられており、異なる色光の照明ユニットが出力する照明光を合成する光合成部を備え、異なる色光の照明ユニットの各々が出力する矩形の照射領域は、互いに重ならないように偏向走査されながら反射型光変調素子に拡大転写される。
【0067】
本実施形態に係る投射型表示装置の照明系においては、動的な拡散面を備えた光拡散素子が、レーザ光源とインテグレータ光学系の入射面の間に配置されている。具体的には、図5に示したように、光拡散素子402が、レーザモジュールLMとロッドインテグレータ403の入射面INPの間に配置されている。このような配置を設定したうえで、レーザ光が照射する光拡散面DIFの部位を適宜の速度で移動させることにより、インテグレータ光学系に入射させるレーザ光の時間的・空間的なコヒーレント性を低減させることが出来る。そうすることにより、インテグレータ光学系にて光が重ね合わされる際に、互いに干渉して干渉縞等の明暗分布が発生するのを抑制することができる。適宜の速度で拡散面を移動させることにより、人間の視覚特性上は、矩形の照射領域IM1内における実効的な照度分布を、極めて均一なものにすることが出来る。このため、本実施形態によれば、照度が均一な矩形の照射領域IM1を転写して、反射型光変調素子の画面を照明することにより、高い画質の投射画像を表示することが出来る。
【0068】
本実施形態によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【0069】
[実施形態2]
実施形態2に係る投射型表示装置について説明する。実施形態1と共通する部分については、説明を簡略化ないし省略する。
本実施形態に係る投射型表示装置は、図1を参照して説明した実施形態1と類似の構成を備えているが、光源部の構成が実施形態1とは異なる。すなわち、実施形態1のB光源400B、G光源400G、R光源400Rは、ロッドインテグレータを用いてレーザ光を重ね合わせる構成であったが、実施形態2の光源部では、ロッドインテグレータではなく、マイクロレンズアレイを用いてイングレータ光学系を構成している。後述するように、本実施形態においても、レーザ光源とインテグレータ光学系の入射面の間に、動的な拡散面を備えた光拡散素子を配置している。
【0070】
まず、図13(a)~図13(d)を参照して、本実施形態に係る光源の基本部分について説明する。尚、これらの図は、マイクロレンズアレイを用いたイングレータ光学系の基本部分を説明するための図であるため、動的な光拡散素子は図示されていない。動的な光拡散素子については、後述する。
【0071】
図13(a)は、半導体レーザの発光部12の短手方向(X方向)が見える向きでインテグレータ照明系INTを含む光源を示した図である。図13(b)は、半導体レーザの発光部12の長手方向(Y方向)が見える向きでインテグレータ照明系INTを含む光源を示した図である。図13(a)、図13(b)に示すように、インテグレータ照明系INTは、マイクロレンズアレイ103、マイクロレンズアレイ104、集光レンズ106を備えている。マイクロレンズアレイ103とマイクロレンズアレイ104は対を成して構成されている。
【0072】
図13(c)に示すように、各マイクロレンズアレイには、レーザビームの進行方向(同図ではZ方向)に沿って見た時、X方向にV0、Y方向にH0のサイズのマイクロレンズが、XY平面に沿って2次元的に配列されている。マイクロレンズアレイ103の各マイクロレンズの入射面およびマイクロレンズアレイ104の各マイクロレンズの出射面は、球面形状である。また、マイクロレンズアレイ103の各マイクロレンズの出射面およびマイクロレンズアレイ104の各マイクロレンズの入射面は、平坦面である。マイクロレンズアレイ103の各マイクロレンズとマイクロレンズアレイ104の各マイクロレンズの焦点距離は、互いに相手方の球面位置に結像できるように設定される。
【0073】
マイクロレンズアレイ103とマイクロレンズアレイ104を通過したレーザビームは、集光レンズ106により集光され、図13(d)に示すように、X方向の長さがV1でY方向の長さがH1の矩形の照射領域IM1を形成する。尚、図13(d)に示す矩形の照射領域IM1は、図6(c)を参照して説明した実施形態1の矩形の照射領域IM1と同様のものである。
【0074】
半導体レーザ11はランプ光源などと比べてダイバージェンスが良好なため、例えばマイクロレンズの配列ピッチを0.05mm以上、0.5mm以下の範囲内とすれば、V1またはH1が1mm~2mm程度の矩形の照射領域IM1を得ることができる。矩形の照射領域IM1の長手方向が平行方向(半導体レーザのSlow軸方向)、短手方向が直交方向(半導体レーザのFast軸方向)に対応する。光源から出力されるビームは、矩形の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好である。本実施形態では、球面と平坦面を備えたマイクロレンズをアレイ状に配列したマイクロレンズアレイの対を採用したが、場合によっては入射側も出射側も曲面のレンズをアレイ状に配列したフライアイレンズの対を用いてもよい。あるいは、光源のダイバージェンスが良好な(NAが小さい)場合には、対ではなく単板のマイクロレンズアレイを用いてもよい。
【0075】
マイクロレンズアレイを用いたイングレータ光学系の基本部分を説明したが、本実施形態においても、レーザ光源とインテグレータ光学系の入射面の間に、動的な拡散面を備えた光拡散素子を配置している。
【0076】
レーザ光のようにコヒーレント性が高い光を、インテグレータ光学系で重ね合わせて用いる際には、幾何光学的な作用だけでなく、波動光学的な作用も合わせて考慮する必要がある。波動光学的な作用を考慮すると、マイクロレンズアレイを備えたインテグレータ光学系に入射したレーザ光が互いに干渉して、矩形の照射領域IM1の中に干渉縞や斑などの明暗パターンを発生させる場合が有り得る。矩形の照射領域IM1の内部に不均一な明暗パターンが固定的に発生すると、表示画像にはユーザが視認可能な画質劣化が生じ得るため、表示用の照明光としては好ましいものではない。
【0077】
そこで、本実施形態においても、図12(a)、図12(b)に示したように、レーザ光の照射スポット(照射位置)よりも広い面積の光拡散面DIFと、光拡散面DIFを移動させるための移動機構(回転軸がCXのモータ404)とを備えた光拡散素子402を用いる。
【0078】
図14に、本実施形態に係る光源100の具体的な構成を示す。尚、図14では、実施形態1の説明で参照した図10(a)と同様に、偏向器210と、偏向器210により反射された矩形の照射領域IM1の位置関係が示されており、座標系は、図1のB光源100Bの配置を基準にして示されている。
【0079】
光源100は、図13(a)、図13(b)を参照して説明したインテグレータ光学系の基本構成に、集光レンズ401、光拡散素子402、コリメータレンズ501を付加したものである。半導体レーザの発光部12から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ102を経て略コリメートされた後、集光レンズ401により光拡散素子402の拡散面近傍に集光される。光拡散素子402には、実施形態1と同様のものが用いられ、レーザ光源とインテグレータ光学系の入射面の間に動的な拡散面を配置することにより、インテグレータ光学系に入射させるレーザ光の時間的・空間的なコヒーレント性を低減させることが出来る。
【0080】
光拡散素子402を透過したレーザ光は、コリメータレンズ501によりコリメートされ、インテグレータ照明系INTのマイクロレンズアレイ103に入射する。インテグレータ照明系INTにより重ね合わされたレーザ光は、偏向器210により反射され、矩形の照射領域IM1が形成される。
【0081】
本実施形態に係る投射型表示装置の照明系においても、動的な拡散面を備えた光拡散素子が、レーザ光源とインテグレータ光学系の入射面の間に配置されている。具体的には、図14に示したように、光拡散素子402が、レーザモジュールLMとインテグレータ照明系INTの入射面であるマイクロレンズアレイ103の間に配置されている。このような配置を設定したうえで、レーザ光が照射する光拡散面DIFの部位を適宜の速度で移動させることにより、インテグレータ光学系に入射させるレーザ光の時間的・空間的なコヒーレント性を低減させることが出来る。そうすることにより、インテグレータ光学系にて光が重ね合わされる際に、互いに干渉して干渉縞等の明暗分布が発生するのを抑制することができる。適宜の速度で拡散面を移動させることにより、人間の視覚特性上は、矩形の照射領域IM1内における実効的な照度分布を、極めて均一なものにすることが出来る。このため、本実施形態によれば、照度が均一な矩形の照射領域IM1を転写して、反射型光変調素子の画面を照明することにより、高い画質の投射画像を表示することが出来る。
【0082】
本実施形態では、円板状の光拡散板を回転させ、光拡散板内においてレーザ光の照射位置が円周に沿って相対移動するように構成したが、動的な光拡散面を備えた光拡散素子の構成はこれに限られるわけではない。例えば、ピエゾアクチュエータ等の駆動機構を用いて拡散板を直線あるいはジグザグに往復移動させるなどして、光拡散板上におけるレーザ光の照射位置が時間とともに動的に変更される形態とすることもできる。こうした形態によっても、インテグレータ光学系に入射させるレーザ光のコヒーレント性を低減することが出来るため、人間の視覚特性上は、矩形の照射領域IM1内における実効的な照度分布を極めて均一なものにすることが出来る。
【0083】
本実施形態によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【0084】
[実施形態3]
実施形態1では、光拡散素子402と偏向器210は、それぞれ回転する可動部を備えているが、モータ等の回転機構は別々に設けられていた。これに対して、本実施形態では、光拡散素子の拡散面(拡散部)と偏向器の反射面を一体化して、単一の回転機構で動作可能な構成とした。
【0085】
図15(a)は、光拡散素子の拡散面(拡散部)と偏向器の反射面を一体化したユニットの側面図である。簡単に言えば、ユニット230aは、図8(a)等を参照して説明した偏向器210の基体211に、図12(a)等を参照して説明した光拡散面DIFが形成された透光性基板SUBを貼り合わせて一体化したものである。基体211と透光性基板SUBは、回転軸を合わせて一体化されており、モータ212で回転することが出来る。
尚、光拡散素子の拡散面(拡散部)と偏向器の反射面を一体化したユニットの構成は、この例に限られるわけではない。例えば、光拡散面DIF(拡散部)と反射面213を別々の基板に形成してから基板を貼り合わせるのではなく、図15(b)に示すように、単一の基板上に光拡散面DIF(拡散部)と反射面213が形成されたユニット230bであってもよい。
【0086】
図16に、係るユニットを備えた実施形態3の投射型表示装置1001の全体構成を示す。図1に示した実施形態1と共通する部分については、説明を簡略化ないし省略する。図示のように、本実施形態では、光拡散素子と偏向器が一体化されたユニット230aが、各色毎に設けられている。
【0087】
レーザモジュールLMから出射されたレーザ光は、ユニット230aの動的な光拡散面DIFの近傍に集光される。ロッドインテグレータを含むインテグレータ照明系の機能は、実施形態1で説明した通りであるが、実施形態1の図5のように光学素子を直線配置してインテグレータ照明系を構成するのではなく、本実施形態では、リレーレンズ406の前側凸レンズ406aと後側凸レンズ406bの間に光路変換ミラー331を配置し、レーザ光の光路を折り曲げて偏向器の反射面に導いている。
【0088】
本実施形態に係る投射型表示装置の照明系においても、動的な拡散面を備えた光拡散素子が、レーザ光源とインテグレータ光学系の入射面の間に配置されており、実施形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態によれば、実施形態1よりも光路空間をコンパクトに構成できるため装置を小型化でき、モータの数を低減することが出来る。
【0089】
[実施形態4]
実施形態2では、光拡散素子402と偏向器210は、それぞれ回転する可動部を備えているが、モータ等の回転機構は別々に設けられていた。これに対して、本実施形態では、光拡散素子の拡散面(拡散部)と偏向器の反射面を一体化して、単一の回転機構で動作可能な構成とした。光拡散素子の拡散面(拡散部)と偏向器の反射面を一体化したユニットについては、図15(a)あるいは図15(b)を参照して説明した実施形態2のユニットと同様のものを用いる。
【0090】
図17に、係るユニットを備えた実施形態4の投射型表示装置1002の全体構成を示す。実施形態2と共通する部分については、説明を簡略化ないし省略する。図示のように、本実施形態では、光拡散素子と偏向器が一体化されたユニット230aが、各色毎に設けられている。
【0091】
レーザモジュールLMから出射されたレーザ光は、ユニット230aの動的な光拡散面DIFの近傍に集光される。マイクロレンズアレイを含むインテグレータ照明系の機能は、実施形態2で説明した通りであるが、実施形態2の図14のように光学素子を直線配置してインテグレータ照明系を構成するのではなく、本実施形態では、コリメータレンズ501とマイクロレンズアレイ103の間に光路変換ミラー331を配置し、レーザ光の光路を折り曲げて偏向器の反射面に導いている。
【0092】
本実施形態に係る投射型表示装置の照明系においても、動的な拡散面を備えた光拡散素子が、レーザ光源とインテグレータ光学系の入射面の間に配置されており、実施形態2と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態によれば、実施形態2よりも光路空間をコンパクトに構成できるため装置を小型化でき、モータの数を低減することが出来る。
【0093】
[実施形態5]
実施形態1~実施形態4は、各色のレーザビームにより形成される矩形の照射領域IM1は、各色用の前側転写レンズ201と後側転写レンズ202とで構成される第1転写レンズ200(第1転写光学系)により、反射型光変調素子340の画面に拡大転写される構成であった。
【0094】
図18に示す本実施形態の投射型表示装置1003は、B光源100B、G光源100G、R光源100R、B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210R、前側転写レンズ201と後側転写レンズ202とで構成される第1転写レンズ200、光合成部220、光路変換ミラー330、TIRプリズム350、反射型光変調素子340、投射レンズ360を備える点は、実施形態1~実施形態4と共通している。
【0095】
本実施形態は、さらに、後側転写レンズ202と光路変換ミラー331の間に配置された拡散板310aと、光路変換ミラー331を挟んで配置された前側転写レンズ321と後側転写レンズ322とで構成される第2転写光学系320と、を備えている。
【0096】
実施形態1~実施形態4の第1転写レンズ200は、矩形の照射領域IM1を反射型光変調素子340の画面に拡大転写したが、本実施形態の第1転写レンズ200(第1転写光学系)は、拡散板310aの位置に2次転写像IM2を形成する。そして、拡散板310aにより散乱された2次転写像IM2は、第2転写光学系320(第2転写光学系)により反射型光変調素子340の画面に3次転写像IM3として拡大転写される。各像の大きさは、典型的には下記の関係に設定される。
IM1:IM2:IM3=1:2:6
係る構成を有する本実施形態によれば、反射型光変調素子340を照明する照明光のFナンバーの制御が容易になる。
【0097】
尚、図18では、拡散板310aは定位置に固定する形態としたが、例えば拡散板を回転させたり直線往復運動させるなどして、拡散板上におけるレーザ光の照射位置が時間とともに移動する形態とすることもできる。こうした形態によれば、レーザによる照明光のシンチレーションを抑制することができる。
【0098】
本実施形態に係る投射型表示装置の照明系においても、動的な拡散面を備えた光拡散素子が、レーザ光源とインテグレータ光学系の入射面の間に配置されており、実施形態1~実施形態4と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態によれば、反射型光変調素子340を照明する照明光のFナンバーの制御が容易になる。
【0099】
[他の実施形態]
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
【0100】
例えば、実施形態2で説明したインテグレータ照明系INTにおいて、対をなすマイクロレンズアレイ103とマイクロレンズアレイ104の代わりに、回折型の光拡散素子(所謂トップハット素子)を配置してもよい。X方向とY方向で異なる拡散角を有するトップハット素子であれば、必ずしも2枚設ける必要は無く、1枚で構成することも可能である。
【0101】
あるいは、球面形状を有するマイクロレンズを2次元に配列形成したマイクロレンズアレイ103とマイクロレンズアレイ104の代わりに、X方向のストライプ状マイクロレンズ(シリンドリカルレンズ)のアレイと、Y方向のストライプ状マイクロレンズ(シリンドリカルレンズ)のアレイを、独立して設けてもよい。係る構成にすれば、ストライプのピッチに関係なく焦点距離とアレイの間隔を設定できるため、アレイ分割数の不足による取り込みの不安定を抑制することができるとともに、より細長くて均一な矩形スポットを生成しやすくなる。
【0102】
また、実施形態1で説明したロッドインテグレータ403は、入射面INPの形状、出射面EXPの形状、およびロッド部分の断面形状が同一となる構成を例に挙げたが、いわゆるテーパロッドのように入射面INPの形状と出射面EXPの形状が異なるロッドを用いてもよい。
【0103】
また、像を転写するのに用いられる転写光学系、すなわち、第1転写レンズ200(第1転写光学系)、第2転写光学系320、リレーレンズ406は、両側がテレセントリックとなるように構成されることが望ましいが、それ以外でもよい。これらの転写光学系の中の1つ以上には、例えば、光軸周りの2つの断面で異なる光学特性を有する所謂アナモフィック光学系(アナモフィックレンズ)を採用してもよい。第1転写レンズ200(第1転写光学系)、第2転写光学系320、リレーレンズ406などの転写光学系をアナモフィックな光学系にすれば、一方向の倍率のみを縮小したり拡大できるので、NAや転写像のアスペクトを調整することが可能となり、より光の利用効率を向上させることが出来る。
【0104】
また、照明用光源の色光は、R、G、Bの3色に限られるわけではなく、異なる波長の光源を用いてもよいし、例えば黄色光源を追加して4色としてもよい。また、各色光で用いるインテグレータ照明系は、必ずしも同一のものでなくてもよく、ある色光についてはロッドを用いたインテグレータ照明系を用い、他の色光についてはマイクロレンズアレイを用いたインテグレータ照明系を用いてもよい。
【0105】
本明細書による開示は、以下の構成を含んでいる。
[構成1]
複数の半導体レーザと、
前記複数の半導体レーザが出力する複数のレーザビームをコリメートするコリメートレンズと、
前記コリメートレンズによりコリメートされた前記複数のレーザビームを集光する集光レンズと、
前記集光レンズにより集光されたレーザビームの照射スポットよりも広い面積の光拡散面を備え、前記光拡散面を移動させることにより、前記レーザビームに照射される前記光拡散面の部位を動的に変更することが可能な光拡散素子と、
前記光拡散面で拡散された前記複数のレーザビームを重ね合わせて矩形の照射領域を形成するインテグレータ照明系と、
前記インテグレータ照明系により前記矩形の照射領域が形成される位置よりも前記インテグレータ照明系に近い位置に配置された偏向素子と、
前記偏向素子により偏向走査される前記矩形の照射領域を、反射型光変調素子に拡大転写する転写光学系と、
前記反射型光変調素子が出力する映像光を投射する投射レンズと、を備える、
ことを特徴とする投射型表示装置。
[構成2]
前記光拡散素子は、回転軸を中心とする円周に沿って形成された前記光拡散面を備え、前記光拡散面は前記回転軸を中心に回転可能である、
ことを特徴とする構成1に記載の投射型表示装置。
[構成3]
前記光拡散素子は、前記光拡散面が形成された透光性の基板と、前記基板を回転またはジグザグ移動または直線移動させる機構を備える、
ことを特徴とする構成1に記載の投射型表示装置。
[構成4]
前記偏向素子は、回転軸を中心に回転可能で、前記回転軸を中心とする円周に沿って形成された光学面を備え、
前記光学面は、前記円周に沿って前記回転軸に対する傾斜角が変化するように構成されており、
前記傾斜角は、前記光学面を一定速度で連続的に回転させると、前記レーザビームを一定方向に一定の偏向速度で再帰的に偏向するように構成されている、
ことを特徴とする構成1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
[構成5]
前記光拡散素子と前記偏向素子が一体化されている、
ことを特徴とする構成4に記載の投射型表示装置。
[構成6]
前記複数の半導体レーザは、Slow軸の向き及びFast軸の向きが揃うように配置されており、
前記矩形の照射領域の長手方向は前記半導体レーザのSlow軸の方向であり、
前記矩形の照射領域の短手方向は前記半導体レーザのFast軸の方向であり、
前記偏向素子は、前記矩形の照射領域の短手方向に沿って前記レーザビームを偏向走査する、
ことを特徴とする構成1乃至5のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
[構成7]
前記光拡散面を透過したレーザ光をコリメートする第2のコリメートレンズを備え、
前記インテグレータ照明系は、球面のマイクロレンズを2次元に配列したマイクロレンズアレイ、もしくは回折型の光拡散素子、もしくはストライプ状のマイクロレンズを並べたマイクロレンズアレイのいずれかを備える、
ことを特徴とする構成1乃至6のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
[構成8]
前記インテグレータ照明系は、前記光拡散素子を透過したレーザ光が入射されるロッドと、前記ロッドの出射面の像を転写するリレーレンズと、を備える、
ことを特徴とする構成1乃至6のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
[構成9]
前記ロッドは、光学材料から成る角柱か、または内面が反射面である中空の筒である、
ことを特徴とする構成8に記載の投射型表示装置。
[構成10]
前記インテグレータ照明系、前記転写光学系のいずれかは、アナモフィックレンズを含む、
ことを特徴とする構成1乃至9のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
[構成11]
前記転写光学系は、前記矩形の照射領域を拡散板に拡大転写する第1転写光学系と、
前記第1転写光学系により前記拡散板に拡大転写された前記矩形の照射領域を前記反射型光変調素子に拡大転写する第2転写光学系と、を備える、
ことを特徴とする構成1乃至10のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
[構成12]
前記複数の半導体レーザと、前記コリメートレンズと、前記インテグレータ照明系と、前記偏向素子とを備えた照明ユニットが、異なる色光毎に設けられており、
前記異なる色光の照明ユニットが出力する照明光を合成する光合成部を備え、
前記異なる色光の照明ユニットの各々が出力する前記矩形の照射領域は、互いに重ならないように偏向走査されながら前記反射型光変調素子に拡大転写される、
ことを特徴とする構成1乃至11のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【符号の説明】
【0106】
11・・・半導体レーザ/12・・・発光部/100B・・・B光源/100G・・・G光源/100R・・・R光源/102・・・コリメートレンズ/103、104・・・マイクロレンズアレイ/106・・・集光レンズ/190・・・投映スクリーン/200・・・第1転写レンズ/201・・・前側転写レンズ/202・・・後側転写レンズ/210・・・偏向器/210B・・・B用偏向器/210G・・・G用偏向器/210R・・・R用偏向器/211・・・基体/212・・・モータ/213・・・反射面/214・・・ビーム照射位置/220・・・光合成部/221、222・・・ダイクロイックミラー/310a・・・拡散板/320・・・第2転写光学系/321・・・前側転写レンズ/322・・・後側転写レンズ/330・・・光路変換ミラー/331・・・光路変換ミラー/340・・・反射型光変調素子/350・・・TIRプリズム/360・・・投射レンズ/400・・・光源/400B・・・B光源/400G・・・G光源/400R・・・R光源/401・・・集光レンズ/402・・・光拡散素子/403・・・ロッドインテグレータ/404・・・モータ/406・・・リレーレンズ/406a・・・前側凸レンズ/406b・・・後側凸レンズ/1000、1001、1002、1003・・・投射型表示装置/DIF・・・光拡散面/INT・・・インテグレータ照明系/SUB・・・透光性基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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