(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033499
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】雪環境試験装置及び雪環境試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137109
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】榎 浩之
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 治樹
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA03
2G050BA20
2G050EA01
2G050EA04
(57)【要約】
【課題】温度条件によって決まってしまう雪環境だけでなく、所望の雪の状態の雪環境を作り出せるようにする。
【解決手段】雪環境試験装置10は、水粒子を噴射する第1ノズル13と、第1ノズル13よりも粒径の小さな水粒子を噴射する第2ノズル14と、試験室1内の温度を設定された温度に調整するための空調機12と、降らせる雪の状態を設定する状態選定部と、雪環境が得られる温度として設定された温度の下で状態選定部で設定された雪の状態が得られるように、第1ノズル13及び第2ノズル14への供給水量比率を調整する流量調整バルブ28,30と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験室内に雪環境を作り出すための雪環境試験装置であって、
水粒子を噴射する第1ノズルと、
前記第1ノズルよりも粒径の小さな水粒子を噴射する第2ノズルと、
前記試験室内の温度を設定された温度に調整するための空調機と、
降らせる雪の状態を設定する状態選定部と、
雪環境が得られる温度として前記設定された温度の下で前記状態選定部で設定された雪の状態が得られるように、前記第1ノズル及び前記第2ノズルへの供給水量比率を調整する流量調整部と、を備えている雪環境試験装置。
【請求項2】
前記流量調整部は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルへのトータルの供給水流量を一定としつつ、前記第1ノズル及び前記第2ノズルへの供給水量比率を調整する請求項1に記載の雪環境試験装置。
【請求項3】
前記流量調整部は、前記設定された温度が第1温度よりも低い第2温度のときには、前記第1温度の下での前記第1ノズルへの供給水量比率に比べて前記第1ノズルへの供給水量比率が高くなるように、前記第1ノズル及び前記第2ノズルへの供給水量比率を調整する請求項1に記載の雪環境試験装置。
【請求項4】
前記流量調整部は、前記設定された温度が第1温度よりも高い第2温度のときには、前記第1温度の下での前記第2ノズルへの供給水量比率に比べて前記第2ノズルへの供給水量比率が高くなるように、前記第1ノズル及び前記第2ノズルへの供給水量比率を調整する請求項1に記載の雪環境試験装置。
【請求項5】
少なくとも前記第2ノズルが二流体ノズルによって構成されており、
前記状態選定部において、雪と雨が共存するみぞれが前記雪の状態として設定された場合に、みぞれを降らせる雪環境を作り出すように、前記第2ノズルに供給する空気の圧力を調整する圧力調整部をさらに備える請求項1に記載の雪環境試験装置。
【請求項6】
少なくとも前記第2ノズルが二流体ノズルによって構成されており、
前記第2ノズルに供給する空気の圧力を調整する圧力調整部をさらに備え、
前記状態選定部において、雪と雨が共存するみぞれが前記雪の状態として設定された場合に、前記圧力調整部は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルに供給されるトータルの水流量が大きいときほど、前記第2ノズルに供給する空気の圧力を上げる請求項1に記載の雪環境試験装置。
【請求項7】
少なくとも前記第2ノズルが二流体ノズルによって構成されており、
雪の質が変わるように、前記第2ノズルに供給する空気の圧力を調整する圧力調整部をさらに備える請求項1に記載の雪環境試験装置。
【請求項8】
試験室内に雪環境を作り出すための雪環境試験方法であって、
前記試験室内の温度を設定し、
状態選定部において、降らせる雪の状態を設定し、
雪環境が得られる温度として前記設定された温度の下で前記設定された雪の状態が得られるように、第1ノズル及び第2ノズルへの供給水量比率を設定し、
空調機により、前記試験室内を前記設定された温度に調整し、
前記設定された供給水量比率で前記第1ノズル及び前記第2ノズルに水を供給し、前記第1ノズルから水粒子を噴射するとともに、前記第1ノズルよりも粒径の小さな水粒子を前記第2ノズルから噴射し、前記雪環境を作り出す雪環境試験方法。
【請求項9】
前記第1ノズル及び前記第2ノズルへのトータルの供給水流量を一定とする請求項8に記載の雪環境試験方法。
【請求項10】
前記設定された温度が第1温度よりも低い第2温度のときには、前記第1温度の下での前記第1ノズルへの供給水量比率に比べて前記第1ノズルへの供給水量比率が高くなるように、前記第1ノズル及び前記第2ノズルへの供給水量比率を設定する請求項8に記載の雪環境試験方法。
【請求項11】
前記設定された温度が第1温度よりも高い第2温度のときには、前記第1温度の下での前記第1ノズルへの供給水量比率に比べて前記第2ノズルへの供給水量比率が高くなるように、前記第2ノズル及び前記第2ノズルへの供給水量比率を設定する請求項8に記載の雪環境試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪環境試験装置及び雪環境試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、室内において雪環境を再現する人工造雪装置が知られている。特許文献1に記載された人工造雪装置では、ノズルから噴射された水の微粒子を氷結させることにより、降雪現象を再現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された人工造雪装置では、ノズルから噴射される水の微粒子の粒径が決まっているため、室内の温度に応じて、雪の状態が決まってしまう。このため、所定の温度環境下においては、この温度に応じて決まる雪を降らせる雪環境しか得られない。このため、この温度条件で、これとは異なる雪環境を作り出したいという要望には応えられない。例えば、自然界においては、地表又は地表付近がある温度であっても上空の温度によっては雪になることもあれば、雪と雨が共存するみぞれになることもある。一方、環境試験装置では、ある温度条件であっても、異なる雪環境を作り出したいという要望があるが、特許文献1に記載された人工造雪装置ではこのような要望に応えられない。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、温度条件によって決まってしまう雪環境だけでなく、所望の雪の状態の雪環境、特にみぞれ環境を作り出せるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る雪環境試験装置は、試験室内に雪環境を作り出すための雪環境試験装置であって、水粒子を噴射する第1ノズルと、前記第1ノズルよりも粒径の小さな水粒子を噴射する第2ノズルと、前記試験室内の温度を設定された温度に調整するための空調機と、降らせる雪の状態を設定する状態選定部と、雪環境が得られる温度として前記設定された温度の下で前記状態選定部で設定された雪の状態が得られるように、前記第1ノズル及び前記第2ノズルへの供給水量比率を調整する流量調整部と、を備えている。
【0007】
本発明に係る雪環境試験装置では、空調機によって設定温度に調整された温度環境下において、流量調整部によって調整された比率で第1ノズル及び第2ノズルに水が供給され、第1ノズル及び第2ノズルから水粒子を噴射する。このとき、第1ノズルから噴射される水粒子の粒径と第2ノズルから噴射される水粒子の粒径とが異なるため、第1ノズルからは主として雨が、第2ノズルからは主として雪が作り出される。第1ノズル及び第2ノズルへの供給水量比率を調整することにより、みぞれ及び雪の少なくとも一方を降らせる雪環境のうち、状態選定部で設定された雪の状態の雪環境を得ることができる。すなわち、流量調整部により、第1ノズル及び第2ノズルへの供給水量比率が調整されるため、設定された温度に応じて決まる雪の状態だけでなく、これとは異なる雪の状態であって所望の雪の状態の雪環境を作り出すことができる。なお、設定された雪の状態によっては、第1ノズル及び第2ノズルの一方に水が供給されないこともあり得る。
【0008】
前記流量調整部は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルへのトータルの供給水流量を一定としつつ、前記第1ノズル及び前記第2ノズルへの供給水量比率を調整してもよい。
【0009】
この態様では、第1ノズル及び前記第2ノズルへのトータルの供給水流量を一定とした条件の下で所望の雪環境を作り出すため、再現性を確認したい場合等に容易に対処できる。また、降雪量が変化しない実際の気象環境を再現した試験に有効である。
【0010】
前記流量調整部は、前記設定された温度が第1温度よりも低い第2温度のときには、前記第1温度の下での前記第1ノズルへの供給水量比率に比べて前記第1ノズルへの供給水量比率が高くなるように、前記第1ノズル及び前記第2ノズルへの供給水量比率を調整してもよい。
【0011】
この態様では、試験室温度として設定された温度が、第1温度よりも低い第2温度のときには、第1温度のときの第1ノズルへの供給水量比率よりも、第1ノズルへの供給水量比率が高くなるため、粒径のより大きな水粒子がより多く試験室内に供給される。したがって、温度がより低い第2温度であって雪になりやすい温度のときに、雪だけでなくみぞれを得やすくできる。
【0012】
前記流量調整部は、前記設定された温度が第1温度よりも高い第2温度のときには、前記第1温度の下での前記第2ノズルへの供給水量比率に比べて前記第2ノズルへの供給水量比率が高くなるように、前記第1ノズル及び前記第2ノズルへの供給水量比率を調整してもよい。
【0013】
この態様では、試験室温度として設定された温度が、第1温度よりも高い第2温度のときには、第1温度のときの第2ノズルへの供給水量比率よりも、第2ノズルへの供給水量比率が高くなるため、粒径のより小さな水粒子がより多く試験室内に供給される。したがって、温度がより高い第2温度であって雪になりにくい温度のときに、雪を得やすくできる。
【0014】
少なくとも前記第2ノズルが二流体ノズルによって構成されていてもよく、この場合において、前記雪環境試験装置は、前記状態選定部において、雪と雨が共存するみぞれが前記雪の状態として設定された場合に、みぞれを降らせる雪環境を作り出すように、前記第2ノズルに供給する空気の圧力を調整する圧力調整部をさらに備えてもよい。
【0015】
この態様では、圧力調整部によって、第2ノズルに供給する空気の圧力を調整することにより、前記設定された温度下において、雪と雨が共存するみぞれ環境を作り出すことができる。
【0016】
少なくとも前記第2ノズルが二流体ノズルによって構成されていてもよく、この場合において、前記雪環境試験装置は、前記第2ノズルに供給する空気の圧力を調整する圧力調整部をさらに備えてもよい。前記状態選定部において、雪と雨が共存するみぞれが前記雪の状態として設定された場合に、前記圧力調整部は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルに供給される水温が一定の条件の下で、前記第1ノズル及び前記第2ノズルに供給されるトータルの水流量が大きいときほど、前記第2ノズルに供給する空気の圧力を上げてもよい。
【0017】
この態様では、第1ノズル及び第2ノズルに供給するトータルの水流量を大きくして降雪量を増やすことができる。しかも、第2ノズルに供給する空気の圧力を上げることにより、みぞれ環境を維持しつつ降雪量を増やすことができる。また、圧力調整部により、第2ノズルから噴射された水粒子が完全に雪になるように空気の圧力を調整することにより、みぞれの質(つまり、雪と雨の比率)をより正確に調整することができる。
【0018】
少なくとも前記第2ノズルが二流体ノズルによって構成されていてもよく、この場合において、前記雪環境試験装置は、雪の質が変わるように、前記第2ノズルに供給する空気の圧力を調整する圧力調整部をさらに備えてもよい。
【0019】
この態様では、二流体ノズルによって構成される第2ノズルに供給する空気の圧力が圧力調整部によって調整されるため、第2ノズルから噴射される水粒子の粒子径が変わることにより、雪環境として作り出される雪の質を変えることができる。なお、雪の質の一形態としては乾雪と湿雪が含まれる。
【0020】
本発明に係る雪環境試験方法は、試験室内に雪環境を作り出すための雪環境試験方法であって、前記試験室内の温度を設定し、状態選定部において、降らせる雪の状態を設定し、雪環境が得られる温度として前記設定された温度の下で前記設定された雪の状態が得られるように、第1ノズル及び第2ノズルへの供給水量比率を設定し、空調機により、前記試験室内を前記設定された温度に調整し、前記設定された供給水量比率で前記第1ノズル及び前記第2ノズルに水を供給し、前記第1ノズルから水粒子を噴射するとともに、前記第1ノズルよりも粒径の小さな水粒子を前記第2ノズルから噴射し、前記雪環境を作り出す。
【0021】
前記雪環境試験方法において、前記第1ノズル及び前記第2ノズルへのトータルの供給水流量を一定としてもよい。
【0022】
前記雪環境試験方法において、前記設定された温度が第1温度よりも低い第2温度のときには、前記第1温度の下での前記第1ノズルへの供給水量比率に比べて前記第1ノズルへの供給水量比率が高くなるように、前記第1ノズル及び前記第2ノズルへの供給水量比率を設定してもよい。
【0023】
前記雪環境試験方法において、前記設定された温度が第1温度よりも高い第2温度のときには、前記第1温度の下での前記第2ノズルへの供給水量比率に比べて前記第2ノズルへの供給水量比率が高くなるように、前記第1ノズル及び前記第2ノズルへの供給水量比率を設定してもよい。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、温度条件によって決まってしまう雪環境だけでなく、所望の雪の状態の雪環境を作り出せるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る雪環境試験装置を概略的に示す図である。
【
図2】コントローラの機能を説明するための図である。
【
図3】関連情報記憶部に記憶された情報を説明するための図である。
【
図4】変形例における関連情報記憶部に記憶された情報を説明するための図である。
【
図5】変形例における関連情報記憶部に記憶された情報を説明するための図である。
【
図6】実施形態に係る雪環境試験方法を説明するための図である。
【
図7】実施形態に係る雪環境試験方法の一例を説明するための図である。
【
図8】その他の実施形態における関連情報記憶部に記憶された情報を説明するための図である。
【
図9】その他の実施形態に係る雪環境試験装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る雪環境試験装置10は、試験室1内において所望の雪の状態の雪環境を作り出し、試験室1内に配置された供試体を当該雪環境にさらすための試験を行う装置である。ここで、雪の状態とは、雪又はみぞれの何れであるのかを表す、雪等の性状を意味している。すなわち、本実施形態の雪環境試験装置10では、雪を降らせる雪環境だけでなく、雪と雨が共存した状態のみぞれを降らせる雪環境をも作り出すことができる。さらに、本実施形態の雪環境試験装置10は、これらの雪環境だけでなく、雨を降らせる雨環境をも作り出すことができるように構成されている。
【0028】
雪環境試験装置10は、試験室1内を冷却するように構成された空調機12と、第1ノズル13と、第1ノズル13よりも粒径の小さな水粒子を噴射する第2ノズル14と、第2ノズル14に空気を供給する空気供給部16と、第1ノズル13及び第2ノズル14に水を供給する水供給部18と、を備えている。
【0029】
空調機12は、試験室1内の空気を冷却できるように、低温空気を生成するように構成されており、空調機12を制御することにより、試験室1内を少なくとも0℃未満の所定の温度に調整できる。すなわち、空調機12は、第2ノズル14から噴射された微細な水粒子が凍る温度になるように、試験室1内の空気の温度を調整する。空調機12は、試験室1内の温度を例えば0℃~-30℃の範囲に調整することができる。なお、雨環境を作り出すときには、空調機12は、0℃を超える温度、例えば、0~20℃の温度に調整してもよい。
【0030】
試験室1内の温度は、室温センサ20によって検出される。
【0031】
第1ノズル13は、一流体ノズルによって構成されており、水供給部18から供給された水を微細な水粒子にして噴射するように構成されている。第1ノズル13から噴射される水粒子の粒径は、第2ノズル14から噴射される水粒子の粒径よりも大きく、試験室1内の温度によって凍らないか凍りにくい粒径である。
【0032】
第2ノズル14は、二流体ノズルによって構成されており、微細な水粒子と空気とが混ざった状態の流体を噴射可能に構成されている。すなわち、第2ノズル14は、水供給部18から供給された水と、空気供給部16から供給された空気とを合わせて噴射する。このとき、噴射された水が噴射された空気によって粉砕されるため、第2ノズル14から、微細な水粒子と空気とが噴射される。第2ノズル14から噴射される水粒子の粒径は、第1ノズル13から噴射される水粒子の粒径よりも小さい。
【0033】
空気供給部16は、第2ノズル14に接続された空気管16aと、空気管16a内において第2ノズル14に向けて空気を流れさせるための圧縮機16bと、を備えている。空気管16aには、空気管16aを流れる空気の圧力を検出する圧力センサ16cと、空気管16aを流れる空気の圧力を調整可能な圧力調整バルブ16dと、が設けられている。空気管16aを流れる空気の圧力が圧力調整バルブ16dによって調整されることにより、第2ノズル14に導入される空気の圧力が調整される。なお、供給する空気圧力が安定しているのであれば、圧力センサ16c、圧力調整バルブ16dを省略することができる。
【0034】
また、空気管16aには、空気管16aを流れる空気を加熱又は冷却するための加熱冷却器16eが設けられている。加熱冷却器16eは、第2ノズル14に供給する空気温度を一定にするように駆動されてもよく、この場合、第2ノズル14に供給される空気の温度変化によって、第2ノズル14からの水粒子が雪になる度合いがばらつかないようにすることができる。なお、加熱冷却器16eは、省略することができる。
【0035】
水供給部18は、水管22と、水管22内において水を流れさせるためのポンプ23と、を備えている。水管22は、ポンプ23に接続された主管22aと、主管22aに接続されるとともに第1ノズル13に接続された第1枝管22bと、主管22aに接続されるとともに第2ノズル14に接続された第2枝管22cと、を有する。
【0036】
水管22の主管22aには、加熱冷却器25が設けられており、この加熱冷却器25(水温調整器)により冷却されて所定の温度となった水が第1ノズル13及び第2ノズル14に導入される。また水管22の第1枝管22bには、第1枝管22bを流れる水の流量を検出するための流量計(第1流量計27)と、第1枝管22bを流れる水の流量を調整可能な流量調整バルブ(第1流量調整バルブ28)と、が設けられている。また、水管22の第2枝管22cには、第2枝管22cを流れる水の流量を検出するための流量計(第2流量計29)と、第2枝管22cを流れる水の流量を調整可能な流量調整バルブ(第2流量調整バルブ30)と、が設けられている。なお、供給する水の温度が安定しているのであれば、加熱冷却器25を省略することが可能である。加熱冷却器25はコントローラ40によって能力制御されるのではなく、独立して能力制御するものでもよく、あるいは、一定の能力を発揮するように構成されていてもよい。
【0037】
室温センサ20、圧力センサ16c、圧力調整バルブ16d、加熱冷却器25、第1流量計27、第1流量調整バルブ28、第2流量計29及び第2流量調整バルブ30は、コントローラ40と信号を授受可能に接続されている。コントローラ40は、雪環境試験装置10の各種動作を制御するためのコンピュータであり、演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)、処理プログラムやデータなどを記憶するROM、及び、データを一時的に記憶するRAMを備えたマイクロコンピュータなどで構成されており、入力装置41が接続されている。コントローラ40に格納された処理プログラムを実行することにより、
図2に示すように、コントローラ40を、温度設定部40a、試験時間設定部40b、状態選定部40c、水流量設定部40d、流量比率設定部40e、流量制御部40f、温度制御部40g、関連情報記憶部40h、水温決定部40i、水温制御部40j、圧力決定部40k及び圧力制御部40mとして機能させることができる。
【0038】
温度設定部40aは、試験室1内の温度を設定するための機能部であり、例えば試験者が入力装置41を通して入力した温度を示す情報が記憶される。
【0039】
試験時間設定部40bは、作り出された雪環境を継続する試験時間を設定するための機能部であり、例えば試験者が入力装置41を通して入力した試験時間を示す情報が記憶される。
【0040】
状態選定部40cは、雪の状態(又は雨の状態)を設定するための機能部であり、雪、みぞれ、雨の何れかを選択的に記憶可能に構成されている。状態選定部40cは、雪の状態として、みぞれの度合い、すなわち雨と雪との割合を設定可能としてもよい。雪、みぞれ及び雨は、入力装置41を通して選択可能となっており、状態選定部40cは、雪、みぞれ又は雨が選択されたことを示す情報を記憶する。また、状態選定部40cは、雪の質を設定可能としてもよく、この場合には乾雪、湿雪をも設定可能に構成されてもよい。入力装置41を通して例えば乾雪、湿雪を選択可能な場合において、乾雪が選択された場合には、状態選定部40cには、乾雪が選択されたことを示す情報が記憶される。
【0041】
状態選定部40cは、雪、みぞれ、雨の何れか1つのみを設定できるように構成されていてもよいが、本実施形態では、複数を設定可能に構成されているものとする。つまり、雪、みぞれ、雨のうちの複数が設定された場合に、設定された何れかの雪環境(又は雨環境)を形成した後、設定された他の雪環境(又は雨環境)に変化させる試験も可能となっている。例えば、第1試験として雪を設定し、第2試験としてみぞれを設定することもできる。この場合、雪環境試験装置10は、まず雪を所定時間降らせ、その後、みぞれを所定時間降らせる。
【0042】
なお、選択肢として用意される雪の状態は、雪、みぞれ、雨に限られるものではなく、例えば雪及びみぞれが選択肢として用意されてもよい。この場合には、雨が選択肢として用意されなくてもよい。また、選択肢の雪に代えて、乾湿及び湿雪が選択肢として用意されていてもよい。
【0043】
温度制御部40gは、室温センサ20によって検出された温度が、温度設定部40aによって設定された温度になるように空調機12を制御するように構成されている。
【0044】
水流量設定部40dは、第1ノズル13及び第2ノズル14に供給されるトータルの水流量を設定するための機能部であり、例えば試験者が入力装置41を通して入力した水流量を示す情報が記憶される。
【0045】
流量比率設定部40eは、第1ノズル13に供給される水と第2ノズル14に供給される水との流量比率を設定するための制御部であり、状態選定部40cにおいて設定された雪の状態に応じて、流量比率を設定するように構成されている。例えば、状態選定部40cにおいてみぞれが設定された場合には、第1ノズル13の水流量と第2ノズル14の水流量との比率が50%対50%になるように流量比率を設定する。この場合、水流量設定部40dで設定されたトータルの水流量のうちの50%が第1ノズル13に供給され、残りの50%が第2ノズル14に供給される。また、状態選定部40cにみぞれの度合いが設定される場合には、流量比率設定部40eは、その割合に基づき両ノズル13,14の流量比率を設定する。例えば、状態選定部40cにみぞれの度合いとして雨30%及び雪70%が設定された場合には、流量比率設定部40eは、第1ノズル13の水流量と第2ノズル14の水流量との比率が30%対70%となるように流量比率を設定する。また、雨が選択された場合には、第1ノズル13及び第2ノズル14の比率を100%対0%に設定し、雪が選択された場合には、0%対100%に設定する。
【0046】
なお、湿雪及び乾雪を選択可能に構成される場合において、湿雪及び乾雪の作り分けは、水供給部18によって供給する水の温度を調整することによって行ってもよく、あるいは、試験室1内の温度を調整することによって行ってもよく、あるいは、空気供給部16によって供給する空気の圧力を調整することによって行ってもよく、あるいは、空気供給部16によって供給する空気の温度を調整することによって行ってもよい。例えば、乾雪が選択された場合には、後述の水温決定部40iにより水温をある温度に設定し、湿雪が選択された場合には、水温をそれよりも高い温度に設定してもよい。また、乾雪が選択された場合には、後述の圧力決定部40kにより空気圧力をある圧力に設定し、湿雪が選択された場合には、空気圧力をそれよりも低い圧力に設定してもよい。また、乾雪が選択された場合には、空気の温度をある温度に設定し、湿雪が選択された場合には、空気の温度をそれよりも高い温度に設定してもよい。
【0047】
流量制御部40fは、流量比率設定部40eによって設定された第1ノズル13及び第2ノズル14への水の供給流量比率に基づいて、第1枝管22bの第1流量調整バルブ28及び第2枝管22cの第2流量調整バルブ30を制御するように構成されている。すなわち、流量制御部40f、第1流量調整バルブ28及び第2流量調整バルブ30は、第1ノズル13及び第2ノズル14への供給水量比率を調整する流量調整部として機能する。
【0048】
例えば、ある試験温度において、第2ノズル14から噴射される水粒子が雪になる場合には、第1ノズル13の水流量と第2ノズル14の水流量との比率を変えるだけで、みぞれをつくることができ、または所望のみぞれ度合いに作り変えることができる。すなわち、第2ノズル14から噴射される水粒子によって得られる雪の状態に基づいて、流量比率設定部40eが、第1ノズル13及び第2ノズル14の流量比率を調整するように構成されていてもよい。
【0049】
関連情報記憶部40hは、試験室1内の温度と、第2ノズル14に供給する水の流量と、第2ノズル14から噴射される水粒子の状態に関する情報(第2ノズル14から噴射された水粒子が雪になるのか、みぞれになるのか、雨になるのかを示す情報)と、を関連付けた情報が記憶された機能部である。また、関連情報記憶部40hは、試験室1内の温度と、第1ノズル13に供給する水の流量と、第1ノズル13から噴射される水粒子の状態に関する情報(第1ノズル13から噴射された水粒子が雪になるのか、みぞれになるのか、雨になるのかを示す情報)と、を関連付けた情報が記憶されていてもよい。なお、第2ノズル14から噴射される水粒子の状態に関する情報は、雪、みぞれ又は雨のいずれかを表す情報に限られるものではなく、例えば、どの程度の水粒子が雪になるかを表す情報であってもよい。また、第1ノズル13から噴射される水粒子の状態に関する情報も、雪、みぞれ又は雨のいずれかを表す情報に限られるものではなく、どの程度の水粒子が雪になるかを表す情報であってもよい。
【0050】
図3に示すように、関連情報記憶部40hには、例えば、試験温度(試験室1の温度)と、第2ノズル14に供給する水の流量と、第2ノズル14から噴射される水粒子の状態に関する情報(第2ノズル14からの水粒子が、雪になるのか、みぞれになるのか、雨になるのかを示す情報)と、を関連付けるマップ43が含まれていてもよい。また、
図3のマップ43と同様に構成され、試験室1内の温度と、第1ノズル13に供給する水の流量と、第1ノズル13から噴射される水粒子の状態に関する情報(第1ノズル13からの水粒子が、雪になるのか、みぞれになるのか、雨になるのかを示す情報)と、を関連付けるマップ(図示省略)が、関連情報記憶部40hに含まれてもよい。なお、関連情報記憶部40hにおいて、試験室1内の温度と、第1ノズル13に供給する水の流量と、第1ノズル13から噴射される水粒子の状態に関する情報と、を関連付けた情報は省略されてもよい。
【0051】
なお、湿雪及び乾雪を選択可能に構成される場合においては、関連情報記憶部40hにおいては、試験室1内の温度と、第2ノズル14に供給する水の流量と、第2ノズル14に供給する空気の圧力と、第2ノズル14から噴射される水粒子の状態に関する情報(第2ノズル14から噴射された水粒子が、乾雪になるのか、湿雪になるのか、みぞれになるのか、雨になるのかを示す情報)と、を関連付けた情報が記憶されていれてもよい。この場合、例えば
図4に示すように、関連情報記憶部40hには、試験温度(試験室1の温度)と、第2ノズル14に供給する水の流量と、第2ノズル14に供給する空気の圧力と、第2ノズル14から噴射される水粒子の状態に関する情報(第2ノズル14からの水粒子が、乾雪になるのか、湿雪になるのか、みぞれになるのか、雨になるのかを示す情報)と、を関連付けるマップ43が含まれていてもよい。また、湿雪及び乾雪を選択可能に構成される場合においても、関連情報記憶部40hには、試験室1内の温度と、第1ノズル13に供給する水の流量と、第1ノズル13から噴射される水粒子の状態に関する情報(雨、みぞれ及び雪のいずれかを表す情報)と、を関連付けた情報が記憶されてもよい。
【0052】
また、湿雪及び乾雪を選択可能に構成される場合においても、関連情報記憶部40hにおいては、試験室1内の温度と、第2ノズル14に供給する水の流量と、第2ノズル14に供給する水の温度と、第2ノズル14から噴射される水粒子の状態に関する情報(第2ノズル14から噴射された水粒子が、乾雪になるのか、湿雪になるのか、みぞれになるのか、雨になるのかを示す情報)と、を関連付けた情報が記憶されていれてもよい。この場合、例えば
図5に示すように、関連情報記憶部40hには、試験温度(試験室1の温度)と、第2ノズル14に供給する水の流量と、第2ノズル14に供給する水の温度と、第2ノズル14から噴射される水粒子の状態に関する情報(第2ノズル14から噴射された水粒子が、乾雪になるのか、湿雪になるのか、みぞれになるのか、雨になるのかを示す情報)と、を関連付けるマップ43が含まれていてもよい。また、この場合においても、関連情報記憶部40hには、試験室1内の温度と、第1ノズル13に供給する水の流量と、第1ノズル13から噴射される水粒子の状態(雨、みぞれ及び雪のいずれか)と、を関連付けた情報が記憶されてもよい。
【0053】
関連情報記憶部40hに記憶された情報を用いることにより、各試験温度において、ある水流量(トータル水流量のうちの何%の流量を第2ノズル14に供給するか)の場合に、どの雪の状態が得られるかを導出することができる。また、各試験温度において、ある雪の状態を得たい場合に、第2ノズル14に供給する水の流量を毎分何リットルに設定すればいいかを導出することができる。なお、関連情報記憶部40hに記憶される情報は、試験室温度、水流量、水温及び空気圧力を調整した上で雪を降らせて雪の状態を確認するという予備試験によって得ることができる。
【0054】
なお、状態選定部40cに記憶される雪の状態(又は雨の状態)として、雪、みぞれ及び雨が記憶されているが、みぞれの度合い(雨と雪との割合)が記憶されるものであってもよい。また、状態選定部40cに記憶される雪の質として乾雪及び湿雪が記憶されるものであってもよい。また、関連情報記憶部40hに記憶される情報は、関係式で表された情報、一覧表形式の情報等であってもよい。また、用意されている試験温度は3つに限られるものではなく、もっと多くの試験温度の場合の情報が用意されていてもよい。また、関連情報記憶部40hに記憶される情報には、第2ノズル14に供給する水の流量が含まれているが、これに代えて、第1ノズル13及び第2ノズル14に供給するトータルの水流量が含まれてもよい。すなわち、雪の状態に応じて流量比率設定部40eが第1ノズル13及び第2ノズル14への水の供給流量比率を決めるため、トータルの水流量から第2ノズル14への供給水流量を導出できる。
【0055】
水温決定部40iは、水供給部18によって供給する水の温度を決定するための制御部であり、温度設定部40aに設定された試験室1の温度、水流量設定部40dに設定された水流量、状態選定部40cに設定された雪の質(乾雪及び湿雪)、および、関連情報記憶部40hに記憶された情報を参照して、水の温度を決定するように構成されている。
【0056】
水温制御部40jは、水供給部18が供給する水の温度が、水温決定部40iによって決定された水温になるように加熱冷却器25を制御するように構成されている。なお、雪の質(乾雪及び湿雪)についての選択が可能となっていない場合には、水温決定部40i及び水温制御部40jを省略することが可能である。
【0057】
圧力決定部40kは、温度設定部40aに設定された試験室1の温度、水流量設定部40dに設定された水流量、水温決定部40iによって決定された水温、状態選定部40cに設定された雪の質、および、関連情報記憶部40hに記憶された情報を用いて、第2ノズル14に供給される空気の圧力を決定するように構成されている。
【0058】
圧力制御部40mは、圧力決定部40kによって決定された圧力になるように圧力調整バルブ16dを制御するように構成されている。すなわち、圧力決定部40k、圧力制御部40m及び圧力調整バルブ16dは、第2ノズル14に供給される空気の圧力を、関連情報記憶部40hに記憶された情報を用いて得られた圧力に調整する圧力調整部として機能する。第2ノズル14に供給される空気の圧力が調整されることにより、雪の質を例えば湿雪から乾雪に変えることができる。また、第2ノズル14に供給される空気の圧力を調整することにより、第2ノズル14による水粒子の一部が凍らないようにすることによって雪からみぞれに変えることもできる。なお、雪の質(乾雪及び湿雪)についての選択が可能となっていない場合には、圧力決定部40k及び圧力制御部40mを省略することが可能である。
【0059】
ここで、
図6を参照しつつ、雪環境試験装置10を用いて雪環境試験を行う方法について説明する。なお、ここでは、試験方法の一例として、
図7に示すように、降雨(第1試験)、みぞれ(第2試験)、湿雪(第3試験)の順に試験を行う場合であって、みぞれの度合い(雨と雪との割合)を設定しない場合の例について説明する。
【0060】
雪環境試験方法では、まず、供試体を試験室1内に配置した上で、入力装置41を通して試験室1内の温度を入力するとともに、入力装置41を通して試験時間を入力する。このとき、第1試験、第2試験、第3試験のそれぞれに対して、試験室温度及び試験時間を入力する。これにより、温度設定部40aに試験室温度が設定されるとともに、試験時間設定部40bに試験時間が設定される(ステップST11,ST12)。
【0061】
また、水供給部18によって供給する水流量を入力装置41を通して入力する。これにより、水流量設定部40dに水流量が設定される(ステップST13)。また、入力装置41を通して雪の状態を選択する。このとき、例えば、第1試験として雨、第2試験としてみぞれ、第3試験として湿雪を選択する。これにより、状態選定部40cにおいて雪の状態が設定される(ステップST14)。なお、水流量としては、第1~第3試験を通して一定としてもよく、あるいは、第1試験、第2試験及び第3試験のそれぞれについて水流量を設定できるようにしてもよい。試験温度は、第2試験においては、試験温度を次第に低下させてもよいが、第2試験においても一定温度に維持するようにしてもよい。
【0062】
第1試験に対しては雨が選択されているため、第1ノズル13に供給される水と第2ノズル14に供給される水との流量比率が流量比率設定部40eによって100%対0%に設定される。また第2試験に対してはみぞれが選択されているため、流量比率設定部40eによって流量比率が50%対50%に設定される。また第3試験に対しては湿雪(雪)が選択されているため、流量比率設定部40eによって流量比率が0%対100%に設定される(ステップST15)。
【0063】
続いて、空調機12を作動させ、室温センサ20で検出された試験室1内の温度が、温度設定部40aに設定された温度になるように、温度制御部40gによって空調機12を制御する(ステップST16)。そして、試験室1内の温度が設定された温度に到達すると試験を開始する(ステップST17)。このとき、まず第1試験から始めるため、試験室1内の温度が、この第1試験の温度として設定された温度になるように空調機12を制御する。そして、流量比率設定部40eによって設定された第1ノズル13及び第2ノズル14への水の供給流量比率に基づいて、第1流量調整バルブ28及び第2流量調整バルブ30が制御される(ステップST18)。このとき、第1試験では雨が選択されているので、水供給部18の第2流量調整バルブ30及び空気供給部16の圧力調整バルブ16dが閉じられている。このため、水供給部18は、第2ノズル14には水を供給せず、水管22の第1枝管22bを通して第1ノズル13に水を供給する。これにより、第1ノズル13から水滴から噴射され、雨を降らせることができる。このとき、圧力調整バルブ16dが閉じられているため、空気供給部16による第2ノズル14への空気の供給はなされない。
【0064】
この状態で、設定された試験時間が経過すると、第2試験に移行する(ステップST19)。第2試験では、第2試験用に設定された試験室温度になるように空調機12が制御される。また、第2試験では、みぞれが選択されているため、第1ノズル13及び第2ノズル14の流量比率が50%対50%に設定される。これにより、水流量設定部40dによって設定された水流量及び設定された流量比率に応じて、第2ノズル14に供給する水流量が設定されるとともに第1流量調整バルブ28及び第2流量調整バルブ30が制御される(ステップST20)。つまり、第1ノズル13及び第2ノズル14へのトータルの供給水流量を一定としつつ、第1ノズル13及び第2ノズル14への供給流量比率が調整される。このとき、関連情報記憶部40hに記憶された試験温度及び第2ノズル14への水流量から導出される第2ノズル14からの水粒子の状態が、みぞれになるか否かを判断し、みぞれが得られるのであれば、設定された水流量がそのまま採用される。一方で、みぞれが得られないと判断される場合には、みぞれが得られるような水流量が導出され、この導出された水流量に応じて第1流量調整バルブ28及び第2流量調整バルブ30が制御される(ステップST20)。これにより、みぞれを降らせる雪環境が得られる。そして、設定された試験時間だけみぞれ試験が継続される。
【0065】
この状態で、設定された試験時間が経過すると、第3試験に移行する(ステップST21)。第3試験では、第3試験用に設定された試験室温度になるように空調機12が制御される。また、第3試験では、湿雪が設定されているため、第1ノズル13及び第2ノズル14の流量比率が0%対100%に設定される。これにより、設定された流量比率に応じて、第2ノズル14に供給する水流量が設定され、この設定された水流量が得られるように第1流量調整バルブ28及び第2流量調整バルブ30が制御される(ステップST22)。
【0066】
第3試験では、水供給部18により供給する水の温度が、水温決定部40iによって決定された温度に設定され(ステップST23)、また、第2ノズル14に供給する空気の圧力が、関連情報記憶部40hに記憶された情報を用いて圧力決定部40kによって導出されて(ステップST24)、圧力調整バルブ16dが制御される(ステップST25)。これにより、湿雪を降らせる雪環境が作り出される。そして、設定された時間が経過すると第3試験を終了する。
【0067】
なお、第3試験においては、水温を設定するステップST23、空気圧力を調整するステップST25の何れか一方のみを実行してもよい。また、第3試験において、雪質を設定せずに、単に雪を選択する場合には、ステップST23~ステップST25を省略することができる。
【0068】
図6を用いて説明した雪環境試験方法は、第2試験において、みぞれの度合いを調整しない場合の方法であるが、みぞれの度合いを調整できるようにしてもよい。例えば、所定のみぞれの度合い(水50%:雪50%)を得たい場合であっても、試験室温度又は水供給部18により供給される水の温度に応じて、みぞれの度合いが変わってしまい、所定の度合いのみぞれが得られないことがある。すなわち、温度が第1温度(例えば試験室温度が-15℃)のときには、第2ノズル14から噴出した水粒子の全てが凍ることにより、水50%:雪50%のみぞれが得られるとしても、第1温度よりも高い第2温度(例えば試験室温度が-5℃)の場合には、第2ノズル14から噴射される水粒子の一部が凍らずに水のままとなることがある。この場合、試験室1内では、第1ノズル13から噴射された水粒子に加えて第2ノズル14から噴出された水粒子の一部が雨となるため、各ノズル13,14の流量比率を50%:50%に設定したとしても、水の割合が相対的に多いみぞれが得られることがある(例えば、水60%:雪40%になる)。そこで、第1温度よりも高温の第2温度の場合には、第2ノズル14の流量比率を、第1温度の場合に比べて相対的に高くすることにより、雪の割合が減ってしまうことを抑制し、所望のみぞれ(水50%:雪50%)を得ることができるようにする。すなわち、第2ノズル14から噴射された水粒子によって生成される雪の状態(例えば、第2ノズル14から噴射された水粒子のうちどの程度の水粒子が雪になるかについての情報)に基づいて、第1ノズル13と第2ノズル14の流量比率を調整してもよい。この場合、関連情報記憶部40hに記憶された、試験室1の温度と、第2ノズル14からの水粒子による雪の状態と、の関係に基づいて、第1ノズル13と第2ノズル14の流量比率を調整することになる。
【0069】
一方、温度が第1温度(例えば試験室温度が-15℃)よりも低い第2温度(例えば-30℃)の場合には、第2ノズル14から噴射される水粒子は全て雪になるが、第1ノズル13から噴射される水粒子の一部が凍り、雪となる。つまり、第1ノズル13からの水粒子のみによってみぞれが生ずる状態となる。このため、両ノズル13,14の流量比率を50%:50%とした場合には、所定の度合い(水50%:雪50%)のみぞれに対して、雪の割合が多くなってしまう。そこで、温度が第1温度よりも低い第2温度の場合には、第2ノズル14の流量比率を、第1温度の場合に比べて相対的に低くすることにより、雪の割合が高くなってしまうことを抑制し、所望の度合いのみぞれ(水50%:雪50%)を得ることができるようにする。すなわち、第1ノズル13から噴射された水粒子によって生成される雪の状態に基づいて、第1ノズル13と第2ノズル14の流量比率を調整してもよい。この場合、関連情報記憶部40hに記憶された、試験室1の温度と、第1ノズル13からの水粒子による雪の状態(例えば、第1ノズル13から噴射された水粒子のうちどの程度の水粒子が雪になるかについての情報)と、の関係に基づいて、第1ノズル13と第2ノズル14の流量比率を調整することになる。
【0070】
第1ノズル13と第2ノズル14の流量比率を調整することによって、みぞれの度合いを調整する方法に代え、或いはこの方法とともに、関連情報記憶部40hに記憶された情報に基づいて、水供給部18による供給水温度、第2ノズル14への供給空気圧力及び第2ノズル14への供給空気温度の少なくとも一つを調整することによって、みぞれの度合いの微調整を行ってもよい。この場合には、まず、関連情報記憶部40hに記憶された情報を用いて、第1ノズル13からの水粒子が全て雨になるとともに第2ノズル14からの水粒子が全て雪になるように、水供給部18による供給水温度、第2ノズル14への供給空気圧力及び第2ノズル14への供給空気温度が調整される。このとき、第1ノズル13と第2ノズル14の流量比率=みぞれの度合い(雨:雪)の関係となる。そして、この状態からみぞれの度合いの微調整を行いたいとき、例えば、みぞれのうちの雪の割合が増えるように微調整を行いたいときには、供給水温度を下げること、供給空気圧力を上げること、供給空気温度を下げることの少なくとも一つを行う。一方、みぞれのうちの雪の割合が減るように微調整を行いたいときには、供給水温度を上げること、供給空気圧力を下げること、供給空気温度を上げることの少なくとも一つを行う。これにより、みぞれの度合いの微調整を行うことができる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態では、空調機12によって設定温度に調整された温度環境下において、第1流量調整バルブ28及び第2流量調整バルブ30によって調整された比率で第1ノズル13及び第2ノズル14に水が供給され、第1ノズル13及び第2ノズル14から水粒子を噴射する。このとき、第1ノズル13から噴射される水粒子の粒径と第2ノズル14から噴射される水粒子の粒径とが異なるため、第1ノズル13及び第2ノズル14への供給水量比率を調整することにより、みぞれ及び雪の少なくとも一方を降らせる雪環境のうち、状態選定部40cで選定された雪の状態の雪環境を得ることができる。すなわち、第1流量調整バルブ28及び第2流量調整バルブ30により、第1ノズル13及び第2ノズル14への供給水量比率が調整されるため、設定された温度に応じて決まる雪の状態だけでなく、これとは異なる雪の状態であって所望の雪の状態の雪環境を作り出すことができる。
【0072】
また、本実施形態では、第1ノズル13及び第2ノズル14へのトータルの供給水流量を一定にしつつ、第1ノズル13及び第2ノズル14への供給水量比率を調整して、第1ノズル13及び第2ノズル14へのトータルの供給水流量を一定とした条件の下で所望の雪環境を作り出す。このため、再現性を確認したい場合等に容易に対処できる。また、降雪量が変化しない実際の気象環境を再現した試験に有効である。
【0073】
なお、本実施形態では、第1試験~第3試験を行う場合について説明したが、3つの試験を行うように設定された構成に限られない。雪環境を1つのみ作り出すように構成されていてもよく、或いは、複数の雪環境を順次作り出すように構成されていてもよい。
【0074】
(その他の実施形態)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、第1試験~第3試験の何れにおいても、水供給部18が第1ノズル13及び第2ノズル14に一定流量の水を供給するように構成されているが、これに限られない。水供給部18は、水の供給流量を変更可能に構成されていてもよい。こうすることにより、降雪量を増やすことができる。この場合、圧力決定部40kは、水供給部18によって供給される水の温度が一定の条件の下では、第1ノズル13及び第2ノズル14に供給されるトータルの水流量が大きいときほど、第2ノズル14に供給する空気の圧力が高くなるように、当該圧力を決定するのが好ましい。これにより、みぞれが選択された場合には、みぞれ環境を維持しつつ降雪量を増やすことができる。
【0075】
前記実施形態では、第1ノズル13及び第2ノズル14が設けられているが、これに加えて、第3のノズルが設けられていてもよい。第3のノズルは、第1ノズル13よりもさらに粒径の大きな水粒子を噴射するか、第2ノズル14よりもさらに粒径の小さな水粒子を噴射するか、第1ノズル13による水粒子の粒径と第2ノズル14による水粒子の粒径との間の大きさの粒径の水粒子を噴射するように構成される。
【0076】
前記実施形態では、第1ノズル13が一流体ノズルによって構成され、第2ノズル14が二流体ノズルによって構成されているが、これに限られない。例えば、第1ノズル13及び第2ノズル14が何れも二流体ノズルによって構成されるとともに、第1ノズル13によって噴射される水粒子の粒径が第2ノズル14によって噴射される水粒子の粒径よりも大きくなるように、第1ノズル13及び第2ノズル14が構成されていてもよい。この場合、空気供給部16は、第1ノズル13にも空気を供給するように構成される。
【0077】
前記実施形態では、コントローラ40が流量比率設定部40eとして機能し、水供給部18によるトータルの水流量を第1ノズル13及び第2ノズル14にどのように配分するかの比率を設定するように構成されているが、この構成に限られない。流量比率設定部40eは、第1ノズル13への流量の絶対値及び第2ノズル14への流量の絶対値を設定してもよい。この場合でも、第1ノズル13及び第2ノズル14への供給水流量のトータルが、水流量設定部40dに設定された流量になるように、第1ノズル13及び第2ノズル14への水流量が設定される。
【0078】
前記実施形態では、関連情報記憶部40hに含まれるマップ43において、試験温度(試験室1の温度)と、第2ノズル14に供給する水の流量と、雪の状態と、が関連付けられているが、この構成に限られない。第2ノズル14に供給する水の流量に代えて、第1ノズル13及び第2ノズル14の流量比率が用いられてもよい。この場合、
図8に示すように、横軸として、水流量に代えて、トータル水流量に対する第2ノズル14への供給水流量の比率である流量比率が用いられてもよい。この場合、関連情報記憶部40hに含まれる情報には、第1ノズル13及び第2ノズル14に供給するトータルの水流量に関する情報も含まれることになる。
【0079】
前記実施形態では、コントローラ40が圧力決定部40k及び圧力制御部40mとしても機能するが、これに限られない。例えば、雪質(乾雪、湿雪)の選択を行わないのであれば、コントローラ40が圧力決定部40k及び圧力制御部40mとしても機能する必要はなく、流量比率設定部40e及び流量制御部40fにより、第1ノズル13及び第2ノズル14への供給水量比率を調整すれば足りる。
【0080】
雪環境試験装置10には、
図9に示すように、試験室1内に気流を生じさせる送風機47が設けられてもよい。送風機47によって気流が生ずることにより、第2ノズル14からの水粒子による雪が供試体に到達するまでの時間を変えることができる。入力装置41を通して入力された信号に基づいて、送風機47の回転数を増減可能であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 :試験室
10 :雪環境試験装置
12 :空調機
13 :第1ノズル
14 :第2ノズル
28 :第1流量調整バルブ
30 :第2流量調整バルブ
40c :状態選定部