(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033500
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】雪環境試験装置及び雪環境試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137110
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】榎 浩之
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 治樹
(72)【発明者】
【氏名】ニンガラディ ヘマント スバハス
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA03
2G050CA10
2G050EA01
2G050EA04
(57)【要約】
【課題】所望の雪質の雪を降らせる雪環境を再現するための手間を軽減する。
【解決手段】雪環境試験装置は、二流体ノズルによって構成された噴射器14と、室内温度を設定する温度設定部30aと、試験室内を冷却する空調機12と、空調機12を制御する温度制御部30eと、噴射器14への供給水の流量を設定する水流量設定部30bと、噴射器14に所定温度の水を供給する水供給部18と、雪質を選定する雪質選定部30dと、試験室内の温度、噴射器14への供給水の流量、噴射器14に供給する空気圧力及び雪質を関連付けた情報が記憶された関連情報記憶部30fと、噴射器14に供給される空気圧力を、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて得られた圧力に調整する圧力調整部30gと、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験室内に雪環境を作り出すための雪環境試験装置であって、
二流体ノズルによって構成され、水及び空気を噴射するように構成された噴射器と、
前記試験室内の温度を設定する温度設定部と、
前記試験室内を冷却するための空調機と、
前記試験室内の温度が前記温度設定部で設定された温度になるように前記空調機を制御する温度制御部と、
前記噴射器に供給される水の流量を設定する水流量設定部と、
前記噴射器に所定の温度の水であって前記水流量設定部によって設定された流量の水を供給する水供給部と、
雪質を選定する雪質選定部と、
前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する空気の圧力と、雪質と、を関連付けた情報が記憶された関連情報記憶部と、
前記雪質選定部で選定された雪質となるように、前記噴射器に供給される空気の圧力を、前記関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた圧力に調整する圧力調整部と、
を備えている雪環境試験装置。
【請求項2】
試験室内に雪環境を作り出すための雪環境試験装置であって、
二流体ノズルによって構成され、水及び空気を噴射するように構成された噴射器と、
前記試験室内の温度を設定する温度設定部と、
前記試験室内を冷却するための空調機と、
前記試験室内の温度が前記温度設定部で設定された温度になるように前記空調機を制御する温度制御部と、
前記噴射器に供給される水の流量を設定する水流量設定部と、
前記水流量設定部によって設定された流量の水を供給する水供給部と、
前記噴射器に所定の圧力の空気を供給する空気供給部と、
雪質を選定する雪質選定部と、
前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する水の温度と、雪質と、を関連付けた情報が記憶された関連情報記憶部と、
前記雪質選定部で選定された雪質となるように、前記噴射器に供給される水の温度を、前記関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた温度に調整する水温調整部と、
を備えている雪環境試験装置。
【請求項3】
試験室内に雪環境を作り出すための雪環境試験装置であって、
二流体ノズルによって構成され、水及び空気を噴射するように構成された噴射器と、
前記試験室内の温度を設定する温度設定部と、
前記試験室内を冷却するための空調機と、
前記試験室内の温度が前記温度設定部で設定された温度になるように前記空調機を制御する温度制御部と、
前記噴射器に供給される水の流量を設定する水流量設定部と、
雪質を選定する雪質選定部と、
前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する水の温度と、前記噴射器に供給する空気の圧力と、雪質と、を関連付けた情報が記憶された関連情報記憶部と、
前記雪質選定部で選定された雪質となるように、前記噴射器に供給される空気の圧力を、前記関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた圧力に調整する圧力調整部と、
前記雪質選定部で選定された雪質となるように、前記噴射器に供給される水の温度を、前記関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた温度に調整する水温調整部と、
を備えている雪環境試験装置。
【請求項4】
試験室内に雪環境を作り出すための雪環境試験装置であって、
二流体ノズルによって構成され、水及び空気を噴射するように構成された噴射器と、
前記試験室内の温度を設定する温度設定部と、
前記試験室内を冷却するための空調機と、
前記試験室内の温度が前記温度設定部で設定された温度になるように前記空調機を制御する温度制御部と、
前記噴射器に供給される水の流量を設定する水流量設定部と、
前記水流量設定部によって設定された流量の水を供給する水供給部と、
前記噴射器に所定の圧力の空気を供給する空気供給部と、
雪質を選定する雪質選定部と、
前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する空気の温度と、雪質と、を関連付けた情報が記憶された関連情報記憶部と、
前記雪質選定部で選定された雪質となるように、前記噴射器に供給される空気の温度を、前記関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた温度に調整する空気温度調整部と、
を備えている雪環境試験装置。
【請求項5】
前記試験室内に気流を生じさせる送風機と、
前記送風機を制御する送風制御部と、を備えている請求項1から4の何れか1項に記載の雪環境試験装置。
【請求項6】
試験室内に雪環境を作り出す雪環境試験方法であって、
前記試験室内の温度を設定し、
雪質選定部により雪質を選定し、
二流体ノズルによって構成された噴射器に供給される水の流量を水流量設定部により設定し、
前記試験室内の温度が前記設定された温度になるように空調機を制御し、
前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する空気の圧力と、雪質と、を関連付けており関連情報記憶部に記憶された情報を用いて、選定された雪質となるような前記噴射器に供給する空気の圧力を導出し、
所定の温度の水であって前記水流量設定部によって設定された流量の水を前記噴射器に供給するとともに、導出された圧力を有する空気を前記噴射器に供給し、前記噴射器から水及び空気を噴射する、雪環境試験方法。
【請求項7】
試験室内に雪環境を作り出す雪環境試験方法であって、
前記試験室内の温度を設定し、
雪質選定部により雪質を選定し、
二流体ノズルによって構成された噴射器に供給される水の流量を水流量設定部により設定し、
前記試験室内の温度が前記設定された温度になるように空調機を制御し、
前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する水の温度と、雪質と、を関連付けており関連情報記憶部に記憶された情報を用いて、選定された雪質となるような前記噴射器に供給する水の温度を導出し、
導出された温度を有し且つ前記水流量設定部によって設定された流量の水を前記噴射器に供給するとともに、所定の圧力を有する空気を前記噴射器に供給し、前記噴射器から水及び空気を噴射する、雪環境試験方法。
【請求項8】
試験室内に雪環境を作り出す雪環境試験方法であって、
前記試験室内の温度を設定し、
雪質選定部により雪質を選定し、
二流体ノズルによって構成された噴射器に供給される水の流量を水流量設定部により設定し、
前記試験室内の温度が前記設定された温度になるように空調機を制御し、
前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する水の温度と、前記噴射器に供給する空気の圧力と、雪質と、を関連付けており関連情報記憶部に記憶された情報を用いて、選定された雪質となるような前記噴射器に供給する空気の圧力を導出するととともに選定された雪質となるような前記噴射器に供給する水の温度を導出し、
導出された温度を有し且つ前記水流量設定部によって設定された流量の水を前記噴射器に供給するとともに、導出された圧力を有する空気を前記噴射器に供給し、前記噴射器から水及び空気を噴射する、雪環境試験方法。
【請求項9】
試験室内に雪環境を作り出す雪環境試験方法であって、
前記試験室内の温度を設定し、
雪質選定部により雪質を選定し、
二流体ノズルによって構成された噴射器に供給される水の流量を水流量設定部により設定し、
前記試験室内の温度が前記設定された温度になるように空調機を制御し、
前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する空気の温度と、雪質と、を関連付けており関連情報記憶部に記憶された情報を用いて、選定された雪質となるような前記噴射器に供給する空気の温度を導出し、
所定の温度を有し且つ前記水流量設定部によって設定された流量の水を前記噴射器に供給するとともに、所定の圧力を有し且つ導出された温度を有する空気を前記噴射器に供給し、前記噴射器から水及び空気を噴射する、雪環境試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪環境試験装置及び雪環境試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、試験室内において雪環境を再現する雪環境試験装置が知られている。この雪環境試験装置では、水及び空気を噴射する二流体ノズルが用いられており、二流体ノズルでは、微細な水滴を噴射できることから、粉雪を作ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
雪環境を再現するには、試験室内を0℃以下の温度環境に調整する必要があるが、雪質は試験室内の温度等の影響を受けるため、所望の雪質を得るには、試験室内において実際にある程度の量の雪を降らせてみて、雪質を確認しつつ試験室内の温度を変化させる等の調整が必要になる。このため、所望の雪質の雪を降らせる雪環境を再現するには、条件の調整に手間がかかる。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所望の雪質の雪を降らせる雪環境を再現するための手間を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る雪環境試験装置は、試験室内に雪環境を作り出すための雪環境試験装置であって、二流体ノズルによって構成され、水及び空気を噴射するように構成された噴射器と、前記試験室内の温度を設定する温度設定部と、前記試験室内を冷却するための空調機と、前記試験室内の温度が前記温度設定部で設定された温度になるように前記空調機を制御する温度制御部と、前記噴射器に供給される水の流量を設定する水流量設定部と、前記噴射器に所定の温度の水であって前記水流量設定部によって設定された流量の水を供給する水供給部と、雪質を選定する雪質選定部と、前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する空気の圧力と、雪質と、を関連付けた情報が記憶された関連情報記憶部と、前記雪質選定部で選定された雪質となるように、前記噴射器に供給される空気の圧力を、前記関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた圧力に調整する圧力調整部と、を備えている。
【0007】
本発明の雪環境試験装置では、試験室内の温度が設定された温度になるように温度制御部が空調機を制御する。圧力調整部は、噴射器に供給される空気の圧力を、雪質選定部によって選定された雪質と関連情報記憶部に記憶された情報とを用いて得られた圧力に調整する。これにより、調整された圧力を有する空気が噴射器に供給されるとともに、水流量設定部によって設定された流量の所定温度の水が噴射器に供給される。したがって、雪質選定部によって選定された雪質の雪環境を得ることができ、そのような雪環境に供試体を晒すことができる。
【0008】
すなわち、雪質(例えば、乾雪、湿雪、みぞれの何れであるのかを表す)は、試験室内の温度、二流体ノズルからなる噴射器に供給される水流量及び噴射器に供給される空気の圧力の影響を受けて変わるため、所望の雪質が得られるかどうかは、雪を実際に降らせてみないと分からない。これに対し、本発明では、3つの条件と雪質とを関連付けた情報が記憶された関連情報記憶部が設けられており、この情報を用いて、設定された試験室温度下で且つ所定温度の設定された水流量下において、噴射器に供給する空気の圧力を調整するため、所望の雪質の雪環境を得ることができる。したがって、所望の雪質を得るための手間を軽減することができる。なお、関連情報記憶部に記憶された情報は、これら3つの条件を調整した上で雪を降らせて雪質を確認するという予備試験によって得ることができる。
【0009】
また、本発明に係る雪環境試験装置は、試験室内に雪環境を作り出すための雪環境試験装置であって、二流体ノズルによって構成され、水及び空気を噴射するように構成された噴射器と、前記試験室内の温度を設定する温度設定部と、前記試験室内を冷却するための空調機と、前記試験室内の温度が前記温度設定部で設定された温度になるように前記空調機を制御する温度制御部と、前記噴射器に供給される水の流量を設定する水流量設定部と、前記水流量設定部によって設定された流量の水を供給する水供給部と、前記噴射器に所定の圧力の空気を供給する空気供給部と、雪質を選定する雪質選定部と、前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する水の温度と、雪質と、を関連付けた情報が記憶された関連情報記憶部と、前記雪質選定部で選定された雪質となるように、前記噴射器に供給される水の温度を、前記関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた温度に調整する水温調整部と、を備えている。
【0010】
本発明の雪環境試験装置では、試験室内の温度が設定された温度になるように温度制御部が空調機を制御する。水温調整部は、噴射器に供給される水の温度を、雪質選定部によって選定された雪質と関連情報記憶部に記憶された情報とを用いて得られた水温に調整する。これにより、調整された温度を有し水流量設定部で設定された流量の水と、所定圧力の空気とが噴射器に供給される。したがって、雪質選定部によって選定された雪質の雪環境を得ることができ、そのような雪環境に供試体を晒すことができる。
【0011】
すなわち、雪質(例えば、乾雪、湿雪、みぞれの何れであるのかを表す)は、試験室内の温度、二流体ノズルからなる噴射器に供給される水流量及び水温の影響を受けて変わるため、所望の雪質が得られるかどうかは、雪を実際に降らせてみないと分からない。これに対し、本発明では、3つの条件と雪質とを関連付けた情報が記憶された関連情報記憶部が設けられており、この情報を用いて、設定された試験室温度下で且つ所定圧力の空気圧下で且つ設定された水流量の下において、噴射器に供給する水の温度が調整されるため、所望の雪質の雪環境を得ることができる。したがって、所望の雪質を得るための手間を軽減することができる。なお、関連情報記憶部に記憶された情報は、これら3つの条件を調整した上で雪を降らせて雪質を確認するという予備試験によって得ることができる。
【0012】
また、本発明に係る雪環境試験装置は、試験室内に雪環境を作り出すための雪環境試験装置であって、二流体ノズルによって構成され、水及び空気を噴射するように構成された噴射器と、前記試験室内の温度を設定する温度設定部と、前記試験室内を冷却するための空調機と、前記試験室内の温度が前記温度設定部で設定された温度になるように前記空調機を制御する温度制御部と、前記噴射器に供給される水の流量を設定する水流量設定部と、雪質を選定する雪質選定部と、前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する水の温度と、前記噴射器に供給する空気の圧力と、雪質と、を関連付けた情報が記憶された関連情報記憶部と、前記雪質選定部で選定された雪質となるように、前記噴射器に供給される空気の圧力を、前記関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた圧力に調整する圧力調整部と、前記雪質選定部で選定された雪質となるように、前記噴射器に供給される水の温度を、前記関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた温度に調整する水温調整部と、を備えている雪環境試験装置。
【0013】
本発明の雪環境試験装置では、試験室内の温度が設定された温度になるように温度制御部が空調機を制御する。圧力調整部は、噴射器に供給される空気の圧力を、雪質選定部によって選定された雪質と関連情報記憶部に記憶された情報とを用いて得られた圧力に調整し、水温調整部は、噴射器に供給される水の温度を、雪質選定部によって選定された雪質と関連情報記憶部に記憶された情報とを用いて得られた水温に調整する。これにより、調整された圧力を有する空気が噴射器に供給されるとともに、調整された温度を有し且つ水流量設定部で設定された流量の水が噴射器に供給される。したがって、雪質選定部で選定された雪質の雪環境を得ることができ、そのような雪環境に供試体を晒すことができる。
【0014】
すなわち、雪質(例えば、乾雪、湿雪、みぞれの何れであるのかを表す)は、試験室内の温度、二流体ノズルからなる噴射器に供給される水流量、噴射器に供給される水温及び噴射器に供給される空気の圧力の影響を受けて変わるため、所望の雪質が得られるかどうかは、雪を実際に降らせてみないと分からない。これに対し、本発明では、4つの条件と雪質とを関連付けた情報が記憶された関連情報記憶部が設けられており、この情報を用いて、設定された試験室温度下で且つ設定された水流量の下で、噴射器に供給する空気の圧力及び噴射器に供給する水の温度を調整するため、所望の雪質の雪環境を得ることができる。したがって、所望の雪質を得るための手間を軽減することができる。なお、関連情報記憶部に記憶された情報は、これら4つの条件を調整した上で雪を降らせて雪質を確認するという予備試験によって得ることができる。
【0015】
また、本発明に係る雪環境試験装置は、試験室内に雪環境を作り出すための雪環境試験装置であって、二流体ノズルによって構成され、水及び空気を噴射するように構成された噴射器と、前記試験室内の温度を設定する温度設定部と、前記試験室内を冷却するための空調機と、前記試験室内の温度が前記温度設定部で設定された温度になるように前記空調機を制御する温度制御部と、前記噴射器に供給される水の流量を設定する水流量設定部と、前記水流量設定部によって設定された流量の水を供給する水供給部と、前記噴射器に所定の圧力の空気を供給する空気供給部と、雪質を選定する雪質選定部と、前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する空気の温度と、雪質と、を関連付けた情報が記憶された関連情報記憶部と、前記雪質選定部で選定された雪質となるように、前記噴射器に供給される空気の温度を、前記関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた温度に調整する空気温度調整部と、を備えている。
【0016】
本発明の雪環境試験装置では、試験室内の温度が設定された温度になるように温度制御部が空調機を制御する。空気温度調整部は、噴射器に供給される空気の温度を、雪質選定部によって選定された雪質と関連情報記憶部に記憶された情報とを用いて得られた温度に調整する。これにより、水流量設定部で設定された流量の水と、調整された圧力の空気とが噴射器に供給される。したがって、雪質選定部によって選定された雪質の雪環境を得ることができ、そのような雪環境に供試体を晒すことができる。
【0017】
すなわち、雪質(例えば、乾雪、湿雪、みぞれの何れであるのかを表す)は、試験室内の温度、二流体ノズルからなる噴射器に供給される水の流量及び空気の温度の影響を受けて変わるため、所望の雪質が得られるかどうかは、雪を実際に降らせてみないと分からない。これに対し、本発明では、3つの条件と雪質とを関連付けた情報が記憶された関連情報記憶部が設けられており、この情報を用いて、設定された試験室温度下で且つ所定圧力の空気圧下で且つ設定された水流量の下において、噴射器に供給する空気の温度が調整されるため、所望の雪質の雪環境を得ることができる。したがって、所望の雪質を得るための手間を軽減することができる。なお、関連情報記憶部に記憶された情報は、これら3つの条件を調整した上で雪を降らせて雪質を確認するという予備試験によって得ることができる。
【0018】
前記雪環境試験装置は、前記試験室内に気流を生じさせる送風機と、前記送風機を制御する送風制御部と、を備えていてもよい。
【0019】
この態様では、試験室内において生ずる気流の流速が変更可能なため、噴射器から噴射された水滴が供試体に到達するまでの時間を変更することができる。このため、供試体に到達するときの雪質を、さらに空気の流速によっても調整可能となる。したがって、供試体への着雪量や付着する雪質の変更が可能である。
【0020】
また、本発明に係る雪環境試験方法は、試験室内に雪環境を作り出す雪環境試験方法であって、前記試験室内の温度を設定し、雪質選定部により雪質を選定し、二流体ノズルによって構成された噴射器に供給される水の流量を水流量設定部により設定し、前記試験室内の温度が前記設定された温度になるように空調機を制御し、前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する空気の圧力と、雪質と、を関連付けており関連情報記憶部に記憶された情報を用いて、選定された雪質となるような前記噴射器に供給する空気の圧力を導出し、所定の温度の水であって前記水流量設定部によって設定された流量の水を前記噴射器に供給するとともに、導出された圧力を有する空気を前記噴射器に供給し、前記噴射器から水及び空気を噴射する。
【0021】
本発明の雪環境試験方法では、雪質選定部により雪質が選定されるとともに、噴射器に供給される水の流量が設定され、さらに、試験室内の温度が設定された温度になるように空調機が制御される。そして、関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた圧力を有する空気が噴射器に供給されるとともに、水流量設定部によって設定された流量の所定温度の水が噴射器に供給される。したがって、雪質選定部によって選定された雪質の雪環境を得ることができ、そのような雪環境に供試体を晒すことができる。
【0022】
また、本発明に係る雪環境試験方法は、試験室内に雪環境を作り出す雪環境試験方法であって、前記試験室内の温度を設定し、雪質選定部により雪質を選定し、二流体ノズルによって構成された噴射器に供給される水の流量を水流量設定部により設定し、前記試験室内の温度が前記設定された温度になるように空調機を制御し、前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する水の温度と、雪質と、を関連付けており関連情報記憶部に記憶された情報を用いて、選定された雪質となるような前記噴射器に供給する水の温度を導出し、導出された温度を有し且つ前記水流量設定部によって設定された流量の水を前記噴射器に供給するとともに、所定の圧力を有する空気を前記噴射器に供給し、前記噴射器から水及び空気を噴射する。
【0023】
本発明の雪環境試験方法では、雪質選定部により雪質が選定されるとともに、噴射器に供給される水の流量が設定され、さらに、試験室内の温度が設定された温度になるように空調機が制御される。そして、関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた温度を有し且つ水流量設定部によって設定された流量の水が噴射器に供給されるとともに、所定の圧力を有する空気が噴射器に供給される。したがって、雪質選定部によって選定された雪質の雪環境を得ることができ、そのような雪環境に供試体を晒すことができる。
【0024】
また、本発明に係る雪環境試験方法は、試験室内に雪環境を作り出す雪環境試験方法であって、前記試験室内の温度を設定し、雪質選定部により雪質を選定し、二流体ノズルによって構成された噴射器に供給される水の流量を水流量設定部により設定し、前記試験室内の温度が前記設定された温度になるように空調機を制御し、前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する水の温度と、前記噴射器に供給する空気の圧力と、雪質と、を関連付けており関連情報記憶部に記憶された情報を用いて、選定された雪質となるような前記噴射器に供給する空気の圧力を導出するととともに選定された雪質となるような前記噴射器に供給する水の温度を導出し、導出された温度を有し且つ前記水流量設定部によって設定された流量の水を前記噴射器に供給するとともに、導出された圧力を有する空気を前記噴射器に供給し、前記噴射器から水及び空気を噴射する。
【0025】
本発明の雪環境試験方法では、雪質選定部により雪質が選定されるとともに、噴射器に供給される水の流量が設定され、さらに、試験室内の温度が設定された温度になるように空調機が制御される。そして、関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた圧力を有する空気が噴射器に供給されるとともに、関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた温度を有し且つ水流量設定部によって設定された流量の水が噴射器に供給される。したがって、雪質選定部によって選定された雪質の雪環境を得ることができ、そのような雪環境に供試体を晒すことができる。
【0026】
また、本発明に係る雪環境試験方法は、試験室内に雪環境を作り出す雪環境試験方法であって、前記試験室内の温度を設定し、雪質選定部により雪質を選定し、二流体ノズルによって構成された噴射器に供給される水の流量を水流量設定部により設定し、前記試験室内の温度が前記設定された温度になるように空調機を制御し、前記試験室内の温度と、前記噴射器に供給する水の流量と、前記噴射器に供給する空気の温度と、雪質と、を関連付けており関連情報記憶部に記憶された情報を用いて、選定された雪質となるような前記噴射器に供給する空気の温度を導出し、所定の温度を有し且つ前記水流量設定部によって設定された流量の水を前記噴射器に供給するとともに、所定の圧力を有し且つ導出された温度を有する空気を前記噴射器に供給し、前記噴射器から水及び空気を噴射する。
【0027】
本発明の雪環境試験方法では、雪質選定部により雪質が選定されるとともに、噴射器に供給される水の流量が設定され、さらに、試験室内の温度が設定された温度になるように空調機が制御される。そして、関連情報記憶部に記憶された情報を用いて得られた温度を有し所定の圧力を有する空気が噴射器に供給されるとともに、水流量設定部によって設定された流量の水が噴射器に供給される。したがって、雪質選定部によって選定された雪質の雪環境を得ることができ、そのような雪環境に供試体を晒すことができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、所望の雪質の雪を降らせる雪環境を再現するための手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態に係る雪環境試験装置を概略的に示す図である。
【
図2】コントローラの機能を説明するための図である。
【
図3】関連情報記憶部に記憶された情報を説明するための図である。
【
図4】第1実施形態に係る雪環境試験方法を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態に係る雪環境試験方法の一例を説明するための図である。
【
図6】第2実施形態に係る雪環境試験装置でのコントローラの機能を説明するための図である。
【
図7】関連情報記憶部に記憶された情報を説明するための図である。
【
図8】第2実施形態に係る雪環境試験方法における水温調整を説明するための図である。
【
図9】第3実施形態に係る雪環境試験装置でのコントローラの機能を説明するための図である。
【
図10】第3実施形態に係る雪環境試験方法における空気圧及び水温の調整を説明するための図である。
【
図11】第4実施形態に係る雪環境試験装置でのコントローラの機能を説明するための図である。
【
図12】関連情報記憶部に記憶された情報を説明するための図である。
【
図13】第4実施形態に係る雪環境試験方法における水温調整を説明するための図である。
【
図14】第5実施形態に係る雪環境試験装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係る雪環境試験装置10は、試験室1内において所望の雪質の雪環境を作り出し、試験室1内に配置された供試体を当該雪環境にさらすための試験を行う装置である。ここで、雪質とは、乾雪、湿雪及びみぞれの何れであるのかを表す、雪等の性状を意味している。なお、本実施形態の雪環境試験装置10は、所望の雪質の雪環境に加え、雨環境をも作り出すことが可能となっているため、ここでいう雪質には雨も含まれる。雪質は、含水率などの雪等の性状を含んでも良い。本実施形態の雪環境試験装置10では、雪を降らせる雪環境だけでなく、雪と雨が混ざり合ったみぞれを降らせる雪環境をも作り出すことができる。さらに、本実施形態の雪環境試験装置10は、これらの雪環境だけでなく、雨環境をも作り出すことができるように構成されている。
【0032】
雪環境試験装置10は、試験室1内を冷却するように構成された空調機12と、試験室1内に空気及び水を噴射するように構成された噴射器14と、噴射器14に空気を供給する空気供給部16と、噴射器14に水を供給する水供給部18と、を備えている。
【0033】
空調機12は、試験室1内の空気を冷却できるように、低温空気を生成するように構成されており、空調機12を制御することにより、試験室1内を少なくとも0℃未満の所定の温度に調整できる。すなわち、空調機12は、噴射器14から噴射された微細な水滴が凍る温度になるように、試験室1内の空気の温度を調整する。空調機12は、試験室1内の温度を例えば0℃~-30℃の範囲に調整することができる。なお、雨環境を作り出すときには、空調機12は、0℃を超える温度、例えば、0~20℃の温度に調整してもよい。
【0034】
試験室1内の温度は、室温センサ20によって検出される。
【0035】
噴射器14は、二流体ノズルによって構成されており、微細な水滴と空気とが混ざった状態の流体を噴射可能に構成されている。すなわち、二流体ノズルは、水供給部18から供給された水と、空気供給部16から供給された空気とを合わせて噴射する。このとき、噴射された水が噴射された空気によって粉砕されるため、二流体ノズルから、微細な水滴と空気とが噴射される。
【0036】
空気供給部16は、噴射器14に接続された空気管16aと、空気管16a内において噴射器14に向けて空気を流れさせるための圧縮機16bと、を備えている。空気管16aには、空気管16aを流れる空気の圧力を検出する圧力センサ16cと、空気管16aを流れる空気の圧力を調整可能な圧力調整バルブ16dと、が設けられている。空気管16aを流れる空気の圧力が圧力調整バルブ16dによって調整されることにより、噴射器14に導入される空気の圧力が調整される。また、空気管16aには、空気管16aを流れる空気を加熱又は冷却するための加熱冷却器16eが設けられている。加熱冷却器16eは、噴射器14に供給する空気温度を一定にするように駆動されてもよく、この場合、噴射器14に供給される空気によって雪質がばらつかないようにすることができる。なお、加熱冷却器16eは、省略することができる。
【0037】
水供給部18は、噴射器14に接続された水管18aと、水管18a内において噴射器14に向けて水を流れさせるためのポンプ18bと、を備えている。水管18aには、加熱冷却器18cが設けられており、この加熱冷却器18c(水温調整器)により加熱又は冷却されて所定の温度となった水が噴射器14に導入される。また水管18aには、水管18aを流れる水の流量を検出するための流量計18dと、水管18aを流れる水の流量を調整可能な流量調整バルブ18eと、が設けられている。水管18aを流れる水の流量が流量調整バルブ18eによって調整されることにより、噴射器14に導入される水の流量が調整される。なお、加熱冷却器18cは後述するコントローラ30とは接続されていても接続されていなくてもよい。加熱冷却器18cは、噴射器14に供給される水の温度を所定の温度に維持するために設けられているが、ポンプ18bから吐出される水の温度が安定しているのであれば、加熱冷却器18cを省略することも可能である。
【0038】
室温センサ20、圧力センサ16c、圧力調整バルブ16d、加熱冷却器18c、流量計18d及び流量調整バルブ18eは、コントローラ30と信号を授受可能に接続されている。コントローラ30は、雪環境試験装置10の各種動作を制御するためのコンピュータであり、演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)、処理プログラムやデータなどを記憶するROM、及び、データを一時的に記憶するRAMを備えたマイクロコンピュータなどで構成されており、入力装置31が接続されている。コントローラ30に格納された処理プログラムを実行することにより、
図2に示すように、コントローラ30を、温度設定部30a、水流量設定部30b、試験時間設定部30c、雪質選定部30d、温度制御部30e、関連情報記憶部30f及び圧力制御部30gとして機能させることができる。
【0039】
温度設定部30aは、試験室1内の温度を設定するための機能部であり、例えば試験者が入力装置31を通して入力した温度を示す情報が記憶される。
【0040】
温度制御部30eは、室温センサ20によって検出された温度が、温度設定部30aによって設定された温度になるように空調機12を制御するように構成されている。
【0041】
水流量設定部30bは、噴射器14に供給される水の流量を設定するための機能部であり、例えば試験者が入力装置31を通して入力した水の流量を示す情報が記憶される。
【0042】
試験時間設定部30cは、作り出された雪環境を継続する試験時間を設定するための機能部であり、例えば試験者が入力装置31を通して入力した試験時間を示す情報が記憶される。
【0043】
雪質選定部30dは、雪質を選定するための機能部であり、乾雪、湿雪、みぞれ、雨の何れかを選択可能に構成されている。雪質選定部30dは、みぞれの度合いや含水率を選択又は設定可能に構成されていてもよい。乾雪、湿雪、みぞれ、雨は、入力装置31を通して選択される。入力装置31を通して例えば乾雪が選択された場合には、雪質選定部30dには、乾雪が選択されたことを示す情報が記憶される。また、雪質選定部30dは、乾雪、湿雪、みぞれ、雨の何れか1つのみを選択できるように構成されていてもよいが、本実施形態では、複数を選択可能に構成されているものとする。つまり、乾雪、湿雪、みぞれ、雨の内の複数を選択した場合に、選択された何れかの雪環境(又は雨環境)を形成した後、選択された他の雪環境(又は雨環境)に変化させる試験も可能となっている。例えば、第1試験として乾雪を選択し、第2試験として湿雪を選択することもできる。この場合、雪環境試験装置10は、まず乾雪を所定時間降らせ、その後、湿雪を所定時間降らせる。
【0044】
なお、選択肢として用意される雪質は、乾雪、湿雪、みぞれ及び雨に限られるものではなく、例えば雪及びみぞれが選択肢として用意される一方で、雨が除外されていてもよく、あるいは乾湿及び湿雪のみが選択肢として用意されていてもよい。
【0045】
関連情報記憶部30fは、試験室1内の温度と、噴射器14に供給する水の流量と、噴射器14に供給する空気の圧力と、雪質と、を関連付けた情報が記憶された機能部である。
図3に示すように、関連情報記憶部30fには、例えば、第1の試験温度(例えば、-5℃)において水の流量と空気圧力と雪質とを関連付ける第1のマップ32aと、第2の試験温度(例えば、-10℃)において水の流量と空気圧力と雪質とを関連付ける第2のマップ32bと、第3の試験温度(例えば、-15℃)において水の流量と空気圧力と雪質とを関連付ける第3のマップ32cと、が含まれていてもよい。すなわち、記憶された情報を用いることにより、各試験温度において、ある空気圧力の場合で且つある水流量の場合に、どの雪質が得られるかを導出することができる。また、各試験温度において、ある雪質を得たい場合に、ある水流量の下で、空気圧力を何MPaに設定すればいいかを導出することができる。第1~第3のマップ32a~32cに記憶される情報は、試験室温度、水流量及び空気圧力を調整した上で雪を降らせて雪質を確認するという予備試験によって得ることができる。
【0046】
なお、雪質として、乾雪、湿雪、みぞれ及び雨が記憶されているが、これに代えて、或いはこれとともに、みぞれの度合い又は含水率が記憶されてもよい。また、関連情報記憶部30fに記憶される情報は、関係式で表された情報、一覧表形式の情報等であってもよい。また、用意されている試験温度は3つに限られるものではなく、1つ又は2つや、もっと多くの試験温度の場合の情報が用意されていてもよい。複数の試験温度の場合の情報が記憶されている場合、線形補間等の補間によって、温度設定部30aに設定された試験室1の温度に対応する新たな試験温度のマップを得ることができる。
【0047】
圧力制御部30gは、温度設定部30aに設定された試験室1の温度、水流量設定部30bに設定された水流量、雪質選定部30dに設定された雪質、および、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて、噴射器14に供給する空気の圧力を導出する。例えば、関連情報記憶部30fに、
図3に示す情報が記憶されている場合、圧力制御部30gは、温度設定部30aに設定された試験室1の温度と一致又は類似する試験温度のマップを参照する。そして、参照したマップにおいて、水流量設定部30bに設定された水流量と雪質選定部30dで設定された雪質とに対応する空気圧を導出する。圧力制御部30gは、噴射器14に供給される空気の圧力が、温度設定部30aに設定された試験室1の温度、水流量設定部30bに設定された水流量、雪質選定部30dに設定された雪質、および、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて導出された圧力になるように圧力調整バルブ16dを制御するように構成されている。すなわち、圧力制御部30g及び圧力調整バルブ16dは、噴射器14に供給される空気の圧力を、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて得られた圧力に調整する圧力調整部として機能する。
【0048】
ここで、
図4を参照しつつ、雪環境試験装置10を用いて雪環境試験を行う方法について説明する。なお、ここでは、試験方法の一例として、
図5に示すように、降雨(第1試験)、みぞれ(第2試験)、湿雪(第3試験)の順に試験を行う場合の例について説明する。噴射器14が二流体ノズルによって構成されているため、降雨試験を行う場合、水滴が比較的小さな霧雨のような雨となる。
【0049】
雪環境試験方法では、まず、供試体を試験室1内に配置した上で、入力装置31を通して試験温度を入力するとともに、入力装置31を通して試験時間を入力する。このとき、第1試験、第2試験、第3試験のそれぞれに対して、試験温度及び試験時間を入力する。これにより、温度設定部30aに試験温度が設定されるとともに、試験時間設定部30cに試験時間が設定される(ステップST11,ST12)。
【0050】
また、噴射器14から噴射する水流量を入力装置31を通して入力する。このとき、例えば、第1~第3試験において同一の水流量を入力する。これにより、水流量設定部30bに水流量が設定される(ステップST13)。また、入力装置31を通して雪質を選択する。このとき、例えば、第1試験として雨、第2試験としてみぞれ、第3試験として湿雪を選択する。これにより、雪質選定部30dにおいて雪質が選定される(ステップST14)。なお、水流量は、第1~第3試験において一定としてもよく、あるいは、第1試験に比べ、第2試験及び第3試験の水流量を小さく又は大きくしてもよい。試験温度は、第2試験においては、試験温度を次第に低下させてもよいが、第2試験においても一定温度に維持するようにしてもよい。
【0051】
続いて、空調機12を作動させ、室温センサ20で検出された試験室1内の温度が温度設定部30aに設定された温度になるように、温度制御部30eによって空調機12を制御する(ステップST15)。そして、試験室1内の温度が設定された温度に到達すると試験を開始する(ステップST16)。このとき、まず第1試験から始めるため、試験室1内の温度が、この第1試験の温度として設定された温度になるように、空調機12を制御する。また、空気供給部16が、空気管16aを通して噴射器14に空気を供給するとともに、水供給部18が、水管18aを通して噴射器14に水を供給する。これにより、微細な水滴と空気とが混ざった状態の流体が噴射器14から噴射される。
【0052】
試験中において、圧力制御部30gは、温度設定部30aに設定された試験室1内の温度、水流量設定部30bに設定された水流量、雪質選定部30dに設定された雪質、および、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて、噴射器14に供給する空気の圧力を導出するとともに(ステップST17)、この導出された圧力に応じて、圧力調整バルブ16dを制御する。これにより、試験中は、噴射器14に供給される空気の圧力が、導出された圧力になるように調整される(ステップST18)。一方で、噴射器14に供給される水は、加熱冷却器18cにより温度が所定の温度に調整されており、また流量計18dで計測された流量が水流量設定部30bに設定された水流量になるように、流量調整バルブ18eが制御されて流量が調整されている。この状態で降雨試験が継続される。
【0053】
この状態で、設定された試験時間が経過すると、第2試験に移行する(ステップST19)。第2試験では、第2試験用に設定された試験室温度になるように空調機12が制御され、設定された水流量であって、加熱冷却器18cにより冷却された水温の水が、噴射器14に供給される。また、第2試験においても、設定された試験室1内の温度、設定された水流量、設定された雪質、および、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて、噴射器14に供給する空気の圧力が導出されるとともに(ステップST20)、この導出された圧力に応じて、圧力調整バルブ16dが制御される(ステップST21)。これにより、みぞれ試験が継続される。
【0054】
この状態で、設定された試験時間が経過すると、第3試験に移行する(ステップST22)。第3試験では、第3試験用に設定された試験室温度になるように空調機12が制御され、設定された水流量であって、加熱冷却器18cにより冷却された水温の水が、噴射器14に供給される。また、第3試験においても、同様に、設定された試験室1内の温度、設定された水流量、設定された雪質、および、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて、噴射器14に供給する空気の圧力が導出されるとともに(ステップST23)、この導出された圧力に応じて、圧力調整バルブ16dが制御される(ステップST24)。具体的には、第2試験のみぞれから第3試験の湿雪となるように、噴射器14に供給する空気の圧力が大きくなるように調整される。これにより、湿雪試験が継続される。そして、設定された時間が経過すると第3試験を終了する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態では、試験室1内の温度が設定された温度になるように温度制御部30eが空調機12を制御する。圧力調整バルブ16dは、噴射器14に供給される空気の圧力を、雪質選定部30dによって選定された雪質と関連情報記憶部30fに記憶された情報とを用いて得られた圧力に調整する。これにより、調整された圧力を有する空気が噴射器14に供給されるとともに、水流量設定部30bによって設定された流量の所定温度の水が噴射器14に供給される。したがって、雪質選定部30dによって選定された雪質の雪環境を得ることができ、そのような雪環境に供試体を晒すことができる。しかも、噴射器14に供給する空気の圧力を調整することによって雪質を変更するため、雪質の変更を素早く行うことができる。例えばみぞれを降らせる第2試験から湿雪を降らせる第3試験に移行する際に、みぞれから湿雪にスムーズに移行することができる。
【0056】
また、3つの条件(試験室1内の温度、噴射器14に供給される水流量、噴射器14に供給される空気圧力)と雪質とを関連付けた情報が記憶された関連情報記憶部30fが設けられており、この情報を用いて、所定の試験室温度下で且つ所定温度の所定水流量下において、噴射器14に供給する空気の圧力を調整するため、所望の雪質の雪環境を得ることができる。したがって、所望の雪質を得るための手間を軽減することができる。なお、関連情報記憶部30fに記憶された情報は、これら3つの条件を調整した上で雪を降らせて雪質を確認するという予備試験によって得ることができる。
【0057】
(第2実施形態)
図6に示すように、第2実施形態では、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて、噴射器14に供給する水の温度を調整すべく、コントローラ30は、水温制御部30hとしても機能する。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0058】
第2実施形態では、第1実施形態と異なり、圧力制御部30gは省略されている。このため、空気管16aに圧力調整バルブ16dが設けられているが、この圧力調整バルブ16dはコントローラ30とは接続されていなくてもよい。圧力調整バルブ16dは、噴射器14に供給される空気の圧力を所定の圧力に維持するために設けられているが、圧縮機16bから吐出される空気の圧力が安定しているのであれば、圧力調整バルブ16dを省略することも可能である。
【0059】
関連情報記憶部30fは、試験室1内の温度と、噴射器14に供給する水の流量と、噴射器14に供給する水の温度と、雪質と、を関連付けた情報が記憶された機能部である。
図7に示すように、関連情報記憶部30fには、例えば、第1の試験温度(例えば、-5℃)において、水流量と水温と雪質とを関連付ける第1のマップ34aと、第2の試験温度(例えば、-10℃)において、水流量と水温と雪質とを関連付ける第2のマップ34bと、第3の試験温度(例えば、-15℃)において、水流量と水温と雪質とを関連付ける第3のマップ34cと、が含まれていてもよい。すなわち、記憶された情報を用いることにより、各試験温度において、ある水温の場合で且つある水流量の場合に、どの雪質が得られるかを導出することができる。また、各試験温度において、ある雪質を得たい場合に、ある水流量の下で、水温を何℃に設定すればいいかを導出することができる。なお、雪質として、乾雪、湿雪、みぞれ及び雨が記憶されているが、これに代えて、或いはこれとともに、みぞれの度合い又は含水率が記憶されてもよい。また、関連情報記憶部30fに記憶される情報は、関係式で表された情報、一覧表形式の情報等であってもよい。また、用意されている試験温度は3つに限られるものではなく、1つ又は2つや、もっと多くの試験温度の場合の情報が用意されてもよい。
【0060】
水温制御部30hは、温度設定部30aに設定された試験室1内の温度、水流量設定部30bに設定された水流量、雪質選定部30dに設定された雪質、および、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて、噴射器14に供給する水の温度を導出する。例えば、関連情報記憶部30fに、
図7に示す情報が記憶されている場合、水温制御部30hは、温度設定部30aに設定された試験室1内の温度と一致又は類似する試験温度のマップを参照する。そして、参照したマップにおいて、水流量設定部30bに設定された水流量と雪質選定部30dで設定された雪質とに対応する水温を導出する。水温制御部30hは、噴射器14に供給される水の温度が、温度設定部30aに設定された試験室1内の温度、水流量設定部30bに設定された水流量、雪質選定部30dに設定された雪質、および、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて導出された温度になるように加熱冷却器18cを制御するように構成されている。すなわち、水温制御部30h及び加熱冷却器18cは、噴射器14に供給される水の温度を、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて得られた温度に調整する水温調整部として機能する。
【0061】
ここで、第1実施形態と同様に、
図5に示す試験を行う場合の例について説明する。第2実施形態では、
図8に示すように、第1試験~第3試験のそれぞれにおいて、水温制御部30hは、温度設定部30aに設定された試験室1内の温度、水流量設定部30bに設定された水の流量、雪質選定部30dに設定された雪質、および、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて、噴射器14に供給する水の温度を導出するとともに(ステップST31)、この導出された温度に応じて、加熱冷却器18cを制御する。これにより、試験中は、噴射器14に供給される水の温度が、導出された温度になるように調整される(ステップST32)。具体的には、第2試験のみぞれから第3試験の湿雪となるように、噴射器14に供給する水の温度が低くなるように調整される。このとき、水の流量は水流量設定部30bで設定された水の流量に調整されている。一方で、噴射器14に供給される空気は、圧力調整バルブ16dによって圧力が所定の圧力になるように調整されている。つまり、第2実施形態では、第1実施形態と異なり、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて空気圧力を導出するステップ(ステップST17,ST20,ST23)と、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて空気圧力を調整するステップ(ST18,ST21,ST24)とは、含まれていない。
【0062】
したがって、本実施形態では、試験室1内の温度が設定された温度になるように温度制御部30eが空調機12を制御する。加熱冷却器18cは、噴射器14に供給される水の温度を、雪質選定部30dによって選定された雪質と関連情報記憶部30fに記憶された情報とを用いて得られた水温に調整する。これにより、調整された温度を有し水流量設定部30bで設定された流量の水と、所定圧力の空気とが、噴射器14に供給される。したがって、雪質選定部30dによって選定された雪質の雪環境を得ることができ、そのような雪環境に供試体を晒すことができる。また、第2実施形態のように、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて水温を調整する構成では、第1実施形態のように空気圧力を調整する構成に比べて、雪質の調整幅を大きくすることができる。
【0063】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0064】
(第3実施形態)
図9に示すように、第3実施形態では、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて、噴射器14に供給する空気の圧力及び水の温度を調整すべく、コントローラ30は、圧力制御部30g及び水温制御部30hとしても機能する。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0065】
第3実施形態では、第1実施形態と同様に、コントローラ30が圧力制御部30gとしても機能し、また、第2実施形態と同様に、コントローラ30が水温制御部30hとしても機能する。
【0066】
圧力制御部30gは、噴射器14に供給される空気の圧力が、温度設定部30aに設定された試験室1内の温度、水流量設定部30bに設定された水の流量、雪質選定部30dに設定された雪質、および、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて導出された圧力になるように圧力調整バルブ16dを制御するように構成されている。すなわち、圧力制御部30g及び圧力調整バルブ16dは、噴射器14に供給される空気の圧力を、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて得られた圧力に調整する圧力調整部として機能する。
【0067】
水温制御部30hは、噴射器14に供給される水の温度が、温度設定部30aに設定された試験室1内の温度、水流量設定部30bに設定された水の流量、雪質選定部30dに設定された雪質、および、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて導出された温度になるように、加熱冷却器18cを制御するように構成されている。すなわち、水温制御部30h及び加熱冷却器18cは、噴射器14に供給される水の温度を、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて得られた温度に調整する水温調整部として機能する。
【0068】
関連情報記憶部30fは、試験室1内の温度と、噴射器14に供給する水の流量と、噴射器14に供給する水の温度と、噴射器14に供給する空気の圧力と、雪質と、を関連付けた情報が記憶された機能部である。関連情報記憶部30fには、例えば、第1の試験温度(例えば、-5℃)において、水流量と水温と空気圧力と雪質とを関連付ける第1のマップと、第2の試験温度(例えば、-10℃)において、水流量と水温と空気圧力と雪質とを関連付ける第2のマップと、第3の試験温度(例えば、-15℃)において、水流量と水温と空気圧力と雪質とを関連付ける第3のマップと、が含まれていてもよい。すなわち、記憶された情報を用いることにより、各試験温度において、ある水温で且つある水流量の場合であって、ある空気圧力の場合に、どの雪質が得られるかを導出することができる。また、各試験温度において、ある雪質を得たい場合に、ある水流量の下で、水温を何℃に設定し、空気圧力を何MPaにすればいいかを導出することができる。なお、雪質として、乾雪、湿雪、みぞれ及び雨が記憶されているが、これに代えて、或いはこれとともに、みぞれの度合い又は含水率が記憶されてもよい。また、関連情報記憶部30fに記憶される情報は、関係式で表された情報、一覧表形式の情報等であってもよい。また、用意されている試験温度は3つに限られるものではなく、1つ又は2つや、もっと多くの試験温度の場合の情報が用意されていてもよい。
【0069】
ここで、第1実施形態と同様に、
図5に示す試験を行う場合の例について説明する。第3実施形態では、
図10に示すように、第1試験~第3試験のそれぞれにおいて、圧力制御部30g及び水温制御部30hは、温度設定部30aに設定された試験室1内の温度、水流量設定部30bに設定された水の流量、雪質選定部30dに設定された雪質、および、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて、噴射器14に供給する空気の圧力を導出するとともに噴射器14に供給する水の温度を導出する(ステップST41)。そして、導出された圧力に応じて圧力調整バルブ16dを制御するとともに、導出された温度に応じて加熱冷却器18cを制御する。これにより、試験中は、噴射器14に供給される空気の圧力が、導出された圧力になるように調整されるとともに、噴射器14に供給される水の温度が、導出された温度になるように調整される(ステップST42)。このとき、水量は水流量設定部30bで設定された水の流量に調整されている。
【0070】
したがって、本実施形態では、試験室1内の温度が設定された温度になるように温度制御部30eが空調機12を制御する。圧力調整バルブ16dは、噴射器14に供給される空気の圧力を、雪質選定部30dによって選定された雪質と関連情報記憶部30fに記憶された情報とを用いて得られた圧力に調整し、加熱冷却器18cは、噴射器14に供給される水の温度を、雪質選定部30dによって選定された雪質と関連情報記憶部30fに記憶された情報とを用いて得られた水温に調整する。これにより、調整された圧力を有する空気が噴射器14に供給されるとともに、調整された温度を有し且つ水流量設定部30bで設定された流量の水が噴射器14に供給される。したがって、雪質選定部30dで選定された雪質の雪環境を得ることができ、そのような雪環境に供試体を晒すことができる。
【0071】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1及び第2実施形態の説明を第3実施形態に援用することができる。
【0072】
(第4実施形態)
図11に示すように、第4実施形態では、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて、噴射器14に供給する空気の温度を調整すべく、コントローラ30は、空気温度制御部30jとしても機能する。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
第4実施形態では、第1実施形態と異なり、圧力制御部30gは省略されている。このため、空気管16aに圧力調整バルブ16dが設けられているが、この圧力調整バルブ16dはコントローラ30とは接続されていなくてもよい。圧力調整バルブ16dは、噴射器14に供給される空気の圧力を所定の圧力に維持するために設けられているが、圧縮機16bから吐出される空気の圧力が安定しているのであれば、圧力調整バルブ16dを省略することも可能である。
【0074】
関連情報記憶部30fは、試験室1内の温度と、噴射器14に供給する水の流量と、噴射器14に供給する空気の温度と、雪質と、を関連付けた情報が記憶された機能部である。
図12に示すように、関連情報記憶部30fには、例えば、第1の試験温度(例えば、-5℃)において、水流量と空気温度と雪質とを関連付ける第1のマップ36aと、第2の試験温度(例えば、-10℃)において、水流量と空気温度と雪質とを関連付ける第2のマップ36bと、第3の試験温度(例えば、-15℃)において、水流量と空気温度と雪質とを関連付ける第3のマップ36cと、が含まれていてもよい。すなわち、記憶された情報を用いることにより、各試験温度において、ある空気温度の場合で且つある水流量の場合に、どの雪質が得られるかを導出することができる。また、各試験温度において、ある雪質を得たい場合に、ある水流量の下で、空気温度を何℃に設定すればいいかを導出することができる。なお、雪質として、乾雪、湿雪、みぞれ及び雨が記憶されているが、これに代えて、或いはこれとともに、みぞれの度合い又は含水率が記憶されてもよい。また、関連情報記憶部30fに記憶される情報は、関係式で表された情報、一覧表形式の情報等であってもよい。また、用意されている試験温度は3つに限られるものではなく、1つ又は2つや、もっと多くの試験温度の場合の情報が用意されてもよい。
【0075】
空気温度制御部30jは、温度設定部30aに設定された試験室1内の温度、水流量設定部30bに設定された水流量、雪質選定部30dに設定された雪質、および、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて、噴射器14に供給する空気温度を導出する。例えば、関連情報記憶部30fに、
図12に示す情報が記憶されている場合において、空気温制御部30jは、温度設定部30aに設定された試験室1内の温度と一致又は類似する試験温度のマップを参照する。そして、参照したマップにおいて、水流量設定部30bに設定された水流量と雪質選定部30dで設定された雪質とに対応する空気温度を導出する。空気温度制御部30jは、噴射器14に供給される空気の温度が、温度設定部30aに設定された試験室1内の温度、水流量設定部30bに設定された水流量、雪質選定部30dに設定された雪質、および、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて導出された温度になるように、加熱冷却器16eを制御するように構成されている。すなわち、空気温度制御部30j及び加熱冷却器16eは、噴射器14に供給される空気の温度を、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて得られた温度に調整する空気温度調整部として機能する。
【0076】
ここで、第1実施形態と同様に、
図5に示す試験を行う場合の例について説明する。第4実施形態では、
図13に示すように、第1試験~第3試験のそれぞれにおいて、空気温度制御部30jは、温度設定部30aに設定された試験室1内の温度、水流量設定部30bに設定された水の流量、雪質選定部30dに設定された雪質、および、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて、噴射器14に供給する空気の温度を導出するとともに(ステップST41)、この導出された温度に応じて、加熱冷却器16eを制御する。これにより、試験中は、噴射器14に供給される空気の温度が、導出された温度になるように調整される(ステップST42)。具体的には、第2試験のみぞれから第3試験の湿雪となるように、噴射器14に供給する空気の温度が低くなるように調整される。このとき、水の流量は水流量設定部30bで設定された水の流量に調整されている。一方で、噴射器14に供給される空気は、圧力調整バルブ16dによって圧力が所定の圧力になるように調整されている。つまり、第4実施形態では、第1実施形態と異なり、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて空気圧力を導出するステップ(ステップST17,ST20,ST23)と、関連情報記憶部30fに記憶された情報を用いて空気圧力を調整するステップ(ST18,ST21,ST24)とは、含まれていない。
【0077】
したがって、本実施形態では、試験室1内の温度が設定された温度になるように温度制御部30eが空調機12を制御する。加熱冷却器16eは、噴射器14に供給される空気の温度を、雪質選定部30dによって選定された雪質と関連情報記憶部30fに記憶された情報とを用いて得られた温度に調整する。これにより、所定の温度で且つ水流量設定部30bで設定された流量の水と、所定の圧力で且つ調整された温度の空気とが噴射器14に供給される。したがって、雪質選定部30dによって選定された雪質の雪環境を得ることができ、そのような雪環境に供試体を晒すことができる。
【0078】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1~第3実施形態の説明を第4実施形態に援用することができる。
【0079】
(第5実施形態)
図14は第5実施形態を示す。尚、ここでは第1~第3実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0080】
この第5実施形態では、試験室1内に気流を生じさせる送風機41が設けられ、コントローラ30は、送風制御部30iとしても機能する。なお、
図14は、コントローラ30が圧力制御部30gとしても機能する場合を示しているが、これに代え、或いはこれとともに、コントローラ30が水温制御部30hとしても機能してもよい。
【0081】
送風制御部30iは、送風機41を制御するための機能部であり、入力装置31を通して入力された信号に基づいて、送風機41の回転数を増減可能となっている。例えば、供試体に付着する雪質が想定よりも乾いているときには、試験者は入力装置31を通して送風機41の回転数を上げるための操作をする。これにより、噴射器14から噴射された微細な水滴が完全に凍結する前に供試体に到達することになり、供試体に付着する雪の含水率を上げることができる。また例えば、供試体への着雪量が想定よりも少ないときには、試験者は入力装置31を通して送風機41の回転数を上げる。これにより、供試体に到達する雪の含水率が僅かに高くなるため、供試体に雪が付着しやすくなる。
【0082】
したがって、本実施形態では、試験室1内において生ずる気流の流速が変更可能なため、噴射器14から噴射された水滴が供試体に到達するまでの時間を変更することができる。このため、供試体に到達するときの雪質を、さらに空気の流速によっても調整可能となる。したがって、供試体への着雪量や付着する雪質の変更が可能である。
【0083】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1~第4実施形態の説明を第5実施形態に援用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 :試験室
10 :雪環境試験装置
12 :空調機
14 :噴射器
16 :空気供給部
16d :圧力調整バルブ
16e :加熱冷却器
18 :水供給部
18c :加熱冷却器
30a :温度設定部
30b :水流量設定部
30d :雪質選定部
30e :温度制御部
30f :関連情報記憶部
30g :圧力制御部
30h :水温制御部
30i :送風制御部
30j :空気温度制御部
41 :送風機