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  • 特開-ノイズ計測装置及びノイズ計測方法 図1
  • 特開-ノイズ計測装置及びノイズ計測方法 図2
  • 特開-ノイズ計測装置及びノイズ計測方法 図3
  • 特開-ノイズ計測装置及びノイズ計測方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033503
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ノイズ計測装置及びノイズ計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/02 20060101AFI20240306BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G01R29/02 Z
G01R29/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137113
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】久保田 喜士
(72)【発明者】
【氏名】牧野 利明
(57)【要約】
【課題】オシロスコープ等の計測器を使用することなくノイズの影響箇所を簡易に計測でき、かつ、任意の計測箇所を対象として、広範囲のノイズ影響を効率良く計測することが可能な、ノイズ計測装置を得る。
【解決手段】ノイズ計測装置は、ノイズの計測対象に配置される通信配線と、前記通信配線に所定のディジタル信号を送信する送信部と、前記通信配線から前記ディジタル信号を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記ディジタル信号に発生している符号誤りを検出する検出部と、前記検出部が検出した前記符号誤りに関する情報を出力する出力部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズの計測対象に配置される通信配線と、
前記通信配線に所定のディジタル信号を送信する送信部と、
前記通信配線から前記ディジタル信号を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記ディジタル信号に発生している符号誤りを検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記符号誤りに関する情報を出力する出力部と、
を備えるノイズ計測装置。
【請求項2】
前記通信配線と前記送信部との間に接続された抵抗素子をさらに備える、請求項1に記載のノイズ計測装置。
【請求項3】
前記抵抗素子の抵抗値は可変である、請求項2に記載のノイズ計測装置。
【請求項4】
前記通信配線と前記受信部との間に接続された絶縁回路をさらに備える、請求項1に記載のノイズ計測装置。
【請求項5】
前記送信部が送信する前記ディジタル信号の周波数を可変に設定する制御部をさらに備える、請求項1に記載のノイズ計測装置。
【請求項6】
ノイズの計測対象に配置された通信配線に所定のディジタル信号を送信し、
前記通信配線から前記ディジタル信号を受信し、
受信した前記ディジタル信号に発生している符号誤りを検出し、
検出した前記符号誤りに関する情報を出力する、
ノイズ計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ計測装置及びノイズ計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術に係る環境試験用の恒温恒湿装置が、例えば特許文献1に開示されている。当該恒温恒湿装置は、試験室内の環境を調整するための電気機器として、冷凍装置、加熱装置、除湿装置、及び加湿装置を備えている。
【0003】
また、背景技術に係るオシロスコープが、例えば特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-66593号公報
【特許文献2】特許第2817179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
恒温恒湿装置等の環境形成装置において、出荷前に性能試験を行う場合又は出荷後に故障が発生した場合等には、作業者がオシロスコープ又はノイズデータロガー等の計測器を使用することによって、不具合の原因となり得るノイズの影響箇所を特定する作業を行っている。
【0006】
しかし、これらの計測器を取り扱うには専門知識が必要であるため、使用できる作業者が限定される。
【0007】
また、これらの計測器のプローブを計測対象に設置するためには基板の改造又は配線変更等が必要となるため、完成品の故障解析等において計測可能箇所が限定される場合がある。
【0008】
さらに、これらの計測器では局所的な測定しかできないため、広範囲のノイズ影響を効率良く計測することができない。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、オシロスコープ等の計測器を使用することなくノイズの影響箇所を簡易に計測でき、かつ、任意の計測箇所を対象として、広範囲のノイズ影響を効率良く計測することが可能な、ノイズ計測装置及びノイズ計測方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係るノイズ計測装置は、ノイズの計測対象に配置される通信配線と、前記通信配線に所定のディジタル信号を送信する送信部と、前記通信配線から前記ディジタル信号を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記ディジタル信号に発生している符号誤りを検出する検出部と、前記検出部が検出した前記符号誤りに関する情報を出力する出力部と、を備える。
【0011】
本態様によれば、検出部は、受信部が受信したディジタル信号に発生している符号誤りを検出し、出力部は、検出部が検出した符号誤りに関する情報を出力する。従って、オシロスコープ等の計測器を使用することなくノイズの影響箇所を簡易に計測でき、かつ、任意の計測箇所を対象として、広範囲のノイズ影響を効率良く計測することが可能となる。
【0012】
本発明の第2の態様に係るノイズ計測装置は、第1の態様に係るノイズ計測装置において、前記通信配線と前記送信部との間に接続された抵抗素子をさらに備える。
【0013】
本態様によれば、通信配線と送信部との間に抵抗素子を接続することによって、ディジタル信号の振幅を抑制でき、その結果、リンギング等が軽減されたディジタル信号を通信配線に送信でき、計測精度を向上することが可能となる。
【0014】
本発明の第3の態様に係るノイズ計測装置は、第2の態様に係るノイズ計測装置において、前記抵抗素子の抵抗値は可変である。
【0015】
本態様によれば、抵抗素子の抵抗値は可変であるため、所望の計測感度に応じてディジタル信号の振幅を調整することが可能となる。
【0016】
本発明の第4の態様に係るノイズ計測装置は、第1~第3のいずれか一つの態様に係るノイズ計測装置において、前記通信配線と前記受信部との間に接続された絶縁素子をさらに備える。
【0017】
本態様によれば、通信配線と受信部との間に絶縁素子が接続されているため、計測対象から受信部へのノイズの伝搬を回避することが可能となる。
【0018】
本発明の第5の態様に係るノイズ計測装置は、第1~第4のいずれか一つの態様に係るノイズ計測装置において、前記送信部が送信する前記ディジタル信号の周波数を可変に設定可能な設定部をさらに備える。
【0019】
本態様によれば、送信部が送信するディジタル信号の周波数は可変であるため、所望の計測感度に応じてディジタル信号の振幅を調整することが可能となる。
【0020】
本発明の第6の態様に係るノイズ計測方法は、ノイズの計測対象に配置された通信配線に所定のディジタル信号を送信し、前記通信配線から前記ディジタル信号を受信し、受信した前記ディジタル信号に発生している符号誤りを検出し、検出した前記符号誤りに関する情報を出力する。
【0021】
本態様によれば、受信したディジタル信号に発生している符号誤りを検出し、検出した符号誤りに関する情報を出力する。従って、オシロスコープ等の計測器を使用することなくノイズの影響箇所を簡易に計測でき、かつ、任意の計測箇所を対象として、広範囲のノイズ影響を効率良く計測することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、オシロスコープ等の計測器を使用することなくノイズの影響箇所を簡易に計測でき、かつ、任意の計測箇所を対象として、広範囲のノイズ影響を効率良く計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るノイズ計測装置の全体構成を簡略化して示す図である。
図2】通信部の構成を簡略化して示す図である。
図3】ノイズの計測対象に通信配線が配置される状況を示す図である。
図4】ディジタル信号の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係るノイズ計測装置1の全体構成を簡略化して示す図である。ノイズ計測装置1は、計測基板11、表示部12、記憶部13、通信部14、コネクタ15、及び通信配線16を備えている。ノイズ計測装置1は、通信部14、コネクタ15、及び通信配線16の組を、一組のみ備えていても良いし、複数組備えていても良い。複数組備えられる場合は、各組の通信規格は同一であっても良いし、下記の例のように異なっていても良い。
【0026】
計測基板11は、CPU等のプロセッサを用いて構成される。計測基板11は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み出したプログラムをプロセッサが実行することによって実現される機能として、表示制御部21、取得部22、制御部23、検出部24、及び出力部25を有する。各処理部の処理内容については後述する。
【0027】
表示部12は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等を用いて構成される。なお、表示部12がタッチパネル式ディスプレイとして構成されることにより、ユーザが設定情報等を入力するための入力部を表示部12が兼用しても良い。
【0028】
記憶部13は、HDD、SSD、又は半導体メモリ等を用いて構成される。なお、記憶部13は、SDカード等の着脱自在な記録媒体を用いて構成されても良い。
【0029】
通信部14は、所定の通信規格に対応した通信モジュールを用いて構成される。本実施形態の例では、ノイズ計測装置1は複数(この例では3個)の通信部14A~14Cを有する。例えば、通信部14AはRS-232Cの通信規格に対応しており、通信部14BはRS-485の通信規格に対応しており、通信部14CはUARTの通信規格に対応している。従って、ノイズ計測装置1を用いたノイズ計測処理において使用する通信規格を、通信部14A~14Cの選択によって切り替えることができる。
【0030】
通信部14Aはコネクタ15Aに接続されており、コネクタ15Aは通信配線16Aに接続されている。通信配線16Aは、通信部14Aの通信規格(例えばRS-232C)に対応した通信ケーブルである。
【0031】
通信部14Bはコネクタ15Bに接続されており、コネクタ15Bは通信配線16Bに接続されている。通信配線16Bは、例えば、通信部14Bの通信規格(例えばRS-485)に対応した通信ケーブルである。なお、RS-232CはRS-485よりもノイズの影響を受けやすいため、通信配線16Aを用いたノイズ計測は、通信配線16Bを用いたノイズ計測よりも計測感度が高い。
【0032】
通信部14Cはコネクタ15Cに接続されており、コネクタ15Cは通信配線16Cに接続されている。通信配線16Cは、例えば、通信部14Cの通信規格(例えばUART)に対応した通信回路であり、回路基板30上に形成されている。回路基板30にはノイズの計測対象である回路31が形成されており、通信配線16Cは回路31の周囲を取り囲んで形成されている。
【0033】
図2は、通信部14の構成を簡略化して示す図である。通信部14は、送信部41、受信部42、絶縁回路43、及び抵抗素子44を備えている。送信部41は、絶縁回路43、抵抗素子44、及びコネクタ15を介して、通信配線16に所定のディジタル信号を送信する。受信部42は、通信配線16からコネクタ15及び絶縁回路43を介して前記ディジタル信号を受信する。つまり、通信配線16は通信部14と環状に接続されており、送信部41が送信したディジタル信号は通信配線16を介して受信部42によって受信される。ディジタル信号は、例えば、二値論理の0と1とが所定バイト数だけ交互に繰り返されるパルス列である。抵抗素子44は、ディジタルによって抵抗値を変更可能な可変抵抗である。絶縁回路43は、例えばフォトカプラを用いて構成されており、通信配線16と送信部41及び受信部42との間を電気的に絶縁する。
【0034】
図3は、ノイズの計測対象50に通信配線16が配置される状況を示す図である。計測対象50は、ノイズの計測対象である電気機器のうち、ノイズの影響を受けていると思われる計測箇所である。電気機器は、例えば、環境試験装置又は熱処理装置等の環境形成装置の構成部品である。電気機器は、様々なノイズの影響を受け得る。ノイズは、環境形成装置の故障又は不具合の原因となり得る。ノイズには、電波として外来する高周波ノイズ、電源ライン等から混入する低周波ノイズ、又は静電気に起因して発生する単発ノイズ等が含まれる。通信配線16は、数メートル程度の長さを有しており、作業者によって、計測対象50の延在方向に沿って計測対象50である例えば電源ラインに並装又は巻装される。なお、通信配線16は、電源ライン等の配線以外にも、スイッチング電源又はインバータ等の機器に並装又は巻装されても良い。
【0035】
ノイズ計測装置1を用いたノイズ計測処理は、例えば環境試験装置による対象物に対する環境試験の実行中に行われる。
【0036】
図1を参照して説明する。取得部22は、ノイズ計測装置1の外部からLANポート等のディジタル通信ポート(図略)を介して計測基板11に入力される各種の情報を取得する。取得部22が取得する情報には、環境試験装置の稼働状況を示す稼働情報が含まれる。稼働情報には、例えば、環境試験装置を構成する複数の電気機器の各々の駆動状況(例えばオン又はオフ)を示す情報が含まれる。また、稼働情報には、環境試験装置が備える複数の計測機器(温度センサ、湿度センサ、又は圧力センサ等)の各々の駆動状況を示す情報、又は、複数の計測機器の各々の計測結果(例えば温度値、湿度値、又は圧力値)を示す情報が含まれる。なお、取得部22は、上記のディジタル通信ポートに代えてノイズ計測装置1のアナログ通信ポート(図略)を介して入力される各種の情報を取得しても良い。
【0037】
検出部24は、受信部42が受信したディジタル信号に発生している符号誤りを検出する。検出部24は、例えば、符号誤りの瞬時値及び累積値を検出し、ノイズ検出結果として出力する。送信部41が送信するディジタル信号のデータ内容(つまりビット構成)は既知であるため、検出部24は、既知のデータ内容との比較によって符号誤りを検出することができる。符号誤りの検出方式としては、パリティビット方式、チェックサム方式、又はCRC方式等の周知の誤り検出方式を使用することができる。
【0038】
制御部23は、通信部14及び記憶部13を制御し、また、ノイズ計測に関する各種の情報を設定する。制御部23は、取得部22が取得した稼働情報、及び、検出部24によるノイズ検出結果を、互いに関連付けて記憶部13に記憶する。制御部23は、作業者によって入力されたノイズ計測箇所等のノイズ計測条件を示す情報を、上記稼働情報にさらに関連付けて記憶部13に記憶しても良い。また、制御部23は、送信部41が送信するディジタル信号の周波数、当該ディジタル信号の振幅、及び、抵抗素子44の抵抗値の少なくとも一つを、作業者によって入力される計測感度の所望値に応じて設定する。
【0039】
図4は、送信部41が送信するディジタル信号の一部を示す図である。制御部23は、送信部41が送信するディジタル信号の周波数(換言すれば周期P)、及び/又は、当該ディジタル信号の振幅Aを設定する。制御部23は、その設定情報を送信部41に入力することによって、上記ディジタル信号の周期P及び/又は振幅Aを調整する。周期Pが短いほど計測感度は高く、また、振幅Aが小さいほど計測感度は高い。また、制御部23は、抵抗素子44の抵抗値を設定し、その設定情報を抵抗素子44に入力することによって、抵抗素子44の抵抗値を調整する。抵抗素子44の抵抗値が高いほど、通信配線16に送信されるディジタル信号の振幅Aが小さくなるため、計測感度は高い。
【0040】
出力部25は、検出部24が検出したノイズ計測結果を示す情報を出力する。この情報は出力部25から表示制御部21に入力される。表示制御部21は、ノイズ計測結果を示す画像データを生成し、その画像データを表示部12に入力する。これにより、ノイズ計測結果を示す画像が表示部12に表示される。
【0041】
本実施形態によれば、オシロスコープを用いたノイズ計測のように計測対象50に対して局所的にプローブが当接されるのではなく、通信配線16が計測対象50の延在方向に沿って広範囲に並装又は巻装される。そして、検出部24は、受信部42が受信したディジタル信号に発生している符号誤りを検出し、出力部25は、検出部24が検出した符号誤りに関する情報(ノイズ計測結果)を出力する。従って、オシロスコープ等の計測器を使用することなくノイズの影響箇所を簡易に計測でき、かつ、任意の計測箇所を対象として、広範囲のノイズ影響を効率良く計測することが可能となる。また、通信配線16を計測対象50に並装又は巻装するだけで良く、オシロスコープ等のようにプローブを計測対象50に当接するための基板の改造又は配線の変更等が不要となるため、ノイズ計測作業を簡易化することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態によれば、通信配線16と送信部41との間に抵抗素子44を接続することによって、ディジタル信号の振幅を抑制できる。その結果、リンギング等が軽減されたディジタル信号を通信配線16に送信でき、計測精度を向上することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態によれば、抵抗素子44の抵抗値は可変であるため、所望の計測感度に応じてディジタル信号の振幅を調整することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態によれば、通信配線16と受信部42との間に絶縁回路43が接続されているため、計測対象から受信部42へのノイズの伝搬を回避することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態によれば、送信部41が送信するディジタル信号の周波数は可変であるため、所望の計測感度に応じてディジタル信号の振幅を調整することが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 ノイズ計測装置
14 通信部
16 通信配線
23 制御部
24 検出部
25 出力部
41 送信部
42 受信部
43 絶縁回路
44 抵抗素子
図1
図2
図3
図4