(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033515
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】感光性ペースト、配線パターンの形成方法、電子部品の製造方法および電子部品
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240306BHJP
C07C 39/08 20060101ALI20240306BHJP
C07C 43/23 20060101ALI20240306BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G03F7/004 502
G03F7/004 501
C07C39/08
C07C43/23 Z
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137134
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】三宅 敢
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4H006
【Fターム(参考)】
2H197CA02
2H197CA03
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H225AN21P
2H225AN22P
2H225AN23P
2H225AN51P
2H225AN82P
2H225AN87P
2H225AP06P
2H225BA09P
2H225CA11
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4H006AA03
4H006AB80
4H006AB83
(57)【要約】
【課題】所望の形状を高精度で形成することのできる感光性ペースト提供すること、および、上記の感光性ペーストを用いた配線パターンの形成方法および電子部品の製造方法、ならびに電子部品を提供することを目的とする。
【解決手段】光重合開始剤と、光重合性モノマーと、アルカリ可溶性ポリマーと、無機粉末と、ラジカル捕捉剤と、を含む感光性ペースト。導電性を有する上記の感光性ペーストを絶縁シート上に塗布して、感光性ペースト膜を形成する工程と、前記感光性ペースト膜の一部に活性エネルギー線を照射する工程と、前記感光性ペースト膜の未硬化の部分を除去して配線パターンを形成する工程と、を備える、配線パターンの形成方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合開始剤と、
光重合性モノマーと、
アルカリ可溶性ポリマーと、
無機粉末と、
ラジカル捕捉剤と、を含む、感光性ペースト。
【請求項2】
前記無機粉末は、導電性を有する、請求項1に記載の感光性ペースト。
【請求項3】
前記ラジカル捕捉剤は、フェノール構造を有する、請求項1または2に記載の感光性ペースト。
【請求項4】
前記フェノール構造を有するラジカル捕捉剤は、さらに、前記フェノール構造を構成するベンゼン環に結合するtert-ブチル基またはアルコキシ基の少なくとも1つを有する、請求項3に記載の感光性ペースト。
【請求項5】
前記ラジカル捕捉剤は、ベンゾトリアゾール構造を有する、請求項1または2に記載の感光性ペースト。
【請求項6】
前記ベンゾトリアゾール構造を有するラジカル捕捉剤は、さらに、前記ベンゾトリアゾール構造を構成する窒素原子に結合するフェノール基を有する、請求項5に記載の感光性ペースト。
【請求項7】
前記ラジカル捕捉剤は、ヒンダードアミン構造を有する、請求項1または2に記載の感光性ペースト。
【請求項8】
前記ヒンダードアミン構造を有するラジカル捕捉剤は、前記ヒンダードアミン構造を構成する窒素原子に結合するOR1基(R1は、炭化水素基を表わす。)を有する、請求項7に記載の感光性ペースト。
【請求項9】
前記ヒンダードアミン構造を有するラジカル捕捉剤は、前記ヒンダードアミン構造を構成する窒素原子に結合するCOR2基(R2は、炭化水素基を表わす。)を有する、請求項7に記載の感光性ペースト。
【請求項10】
前記ヒンダードアミン構造を有するラジカル捕捉剤は、前記ヒンダードアミン構造を構成する窒素原子に結合するR3基(R3は、窒素原子に直接結合しているアルキル基を表わす。)を有する、請求項7に記載の感光性ペースト。
【請求項11】
配線パターンの形成に用いられる、請求項2に記載の感光性ペースト。
【請求項12】
請求項2に記載の感光性ペーストを絶縁シート上に塗布して、感光性ペースト膜を形成する工程と、
前記感光性ペースト膜の一部に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記感光性ペースト膜の未硬化の部分を除去して配線パターンを形成する工程と、を備える、配線パターンの形成方法。
【請求項13】
請求項2に記載の感光性ペーストを絶縁シート上に塗布して、感光性ペースト膜を形成する工程と、
前記感光性ペースト膜の一部に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記感光性ペースト膜の未硬化の部分を除去して、配線パターンを形成する工程と、
前記配線パターン上に絶縁シートを積層する工程と、
前記配線パターンおよび前記絶縁シートを焼成して、複数の前記絶縁シートの焼結体としての複数の絶縁層、および、前記配線パターンの焼結体としての内部配線を得る工程と、を備える、電子部品の製造方法。
【請求項14】
複数の絶縁層を含む素体と、
前記素体の内部に設けられ、硬化した請求項2に記載の感光性ペーストの焼結体としての内部配線と、を備える、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性ペースト、配線パターンの形成方法、電子部品の製造方法および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性ペーストは、通常、光重合性モノマーと光重合開始剤とを含んでいる(例えば、特許文献1)。感光性ペーストに活性エネルギー線が照射されると、光重合開始剤がラジカルを生成する。ラジカルは速やかに光重合性モノマーに付加して、モノマーラジカルを生成させる。これにより、重合反応が開始される。モノマーラジカルは連続的に生成し、やがて、光重合性モノマー由来のポリマー(硬化物)が形成される。
【0003】
感光性ペーストを用いて配線パターンを形成する場合、絶縁層に感光性ペーストを塗布した後、その一部に活性エネルギー線が照射される。露光した部分の感光性ペーストに含まれる光重合性モノマーは、重合して、硬化する。続いて、未硬化のままの感光性ペーストの残部を除去する。これにより、絶縁層上に所定の配線パターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2018/016480号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モノマーラジカルは、活性エネルギー線が照射された部分以外にも広がって生成し、重合反応が進行し得る。この場合、所望よりも太い配線パターンが形成されてしまう。
【0006】
本開示は、所望の形状を高精度で形成することのできる感光性ペーストを提供することを目的とする。本開示はさらに、上記の感光性ペーストを用いた配線パターンの形成方法および電子部品の製造方法、ならびに電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本開示の一態様である感光性ペーストは、
光重合開始剤と、
光重合性モノマーと、
アルカリ可溶性ポリマーと、
無機粉末と、
ラジカル捕捉剤と、を含む。
【0008】
前記実施形態によれば、感光性ペーストを用いてパターニングする際、感光性ペーストの塗布面の面内方向へのモノマーラジカルの拡散が抑制されるため、所望の形状を高精度で形成することができる。
【0009】
本開示の一態様である配線パターンの形成方法は、
導電性を有する上記の感光性ペーストを絶縁シート上に塗布して、感光性ペースト膜を形成する工程と、
前記感光性ペースト膜の一部に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記感光性ペースト膜の未硬化の部分を除去して配線パターンを形成する工程と、を備える。
【0010】
前記実施形態によれば、所望の形状を有する配線パターンが得られる。
【0011】
本開示の一態様である電子部品の製造方法は、
導電性を有する上記の感光性ペーストを絶縁シート上に塗布して、感光性ペースト膜を形成する工程と、
前記感光性ペースト膜の一部に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記感光性ペースト膜の未硬化の部分を除去して、配線パターンを形成する工程と、
前記配線パターン上に絶縁シートを積層する工程と、
前記配線パターンおよび前記絶縁シートを焼成して、複数の前記絶縁シートの焼結体としての複数の絶縁層、および、前記配線パターンの焼結体としての内部配線を得る工程と、を備える。
【0012】
前記実施形態によれば、高精度の内部配線を有する電子部品が得られる。
【0013】
本開示の一態様である電子部品は、
複数の絶縁層を含む素体と、
前記素体の内部に設けられ、硬化した請求項2に記載の感光性ペーストの焼結体としての内部配線と、を備える。
【0014】
前記実施形態によれば、性能および信頼性に優れる電子部品が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の感光性ペーストによれば、所望の形状を高精度で形成することができる。さらに、本発明の感光性ペーストを用いて得られる電子部品は、性能および信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の一態様である感光性導電ペースト、配線パターンの形成方法、電子部品の製造方法および電子部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0018】
[第1実施形態]
(電子部品)
図1は、電子部品を模式的に示す透視斜視図である。
図2は、電子部品を模式的に示す分解斜視図である。
図1では、素体は、構造を容易に理解できるよう、透明に描かれているが、半透明や不透明であってもよい。
図1では、構造を容易に理解できるよう、コイルの記載を省略している。
図2では、見易さを考慮して、外部電極の記載を省略している。
【0019】
以下では、電子部品として積層型コイル部品を例にとって説明するが、本開示の電子部品はこれに限定されず、コンデンサ部品、LC複合部品等の種々の電子部品に適用することが可能である。
【0020】
図1および
図2に示すように、積層型コイル部品10は、素体4と、素体4内に設けられたコイル5と、素体4に設けられた第1外部電極6aおよび第2外部電極6bと、を備える。
【0021】
素体4の形状は特に限定されず、この実施形態では略直方体状である。素体4の外面は、第1端面41と、第1端面41に対向する第2端面42と、第1端面41と第2端面42とを接続する第1側面43と、第1側面43に対向する第2側面44と、第1端面41と第2端面42と第1側面43と第2側面44とを接続する底面45と、底面45に対向し、第1端面41と第2端面42と第1側面43と第2側面44とに接続する天面46と、を有する。第1端面41から第2端面42に向かう方向をX方向とし、第1側面43から第2側面44に向かう方向をY方向とし、底面45から天面46に向かう方向をZ方向とする。本明細書において、Z方向を上側という場合がある。
【0022】
素体4は、複数の絶縁層40を積層して構成される。絶縁層40は、特許請求の範囲に記載の「絶縁シート」の焼結体の一例に相当する。絶縁シートの材料は、特に限定されず、例えば、ホウケイ酸ガラスと無機粉末とを含む。絶縁層40の積層方向は、Z方向に平行である。すなわち、絶縁層40は、XY平面に広がった層状である。「平行」とは、厳密な平行関係に限定されず、現実的なばらつきの範囲を考慮し、実質的な平行関係も含む。焼成などにより、素体4における複数の絶縁層40同士の界面は、明確となっていない場合がある。
【0023】
コイル5は、軸方向に沿って積層された複数のコイル配線2と、軸方向に沿って延在して軸方向に隣り合うコイル配線2を接続する図示しないビア配線と、を有する。複数のコイル配線2は、それぞれが平面に沿って巻回され、軸方向に並んで配置され、電気的に直列に接続されながら螺旋を構成している。コイル配線2は、導電性の感光性ペースト(感光性導電ペースト)を用いて形成される。コイル配線2は、特許請求の範囲に記載の「内部配線」の一例に相当する。コイル配線2および「内部配線」は、特許請求の範囲に記載の「配線パターン」あるいは、硬化した導電性を有する「感光性ペースト」の焼結体の一例に相当する。
【0024】
コイル5は、軸方向から見て、矩形状に形成されているが、この形状に限定されない。コイル5の形状は、例えば、円形、楕円形、長方形、その他の多角形などであってもよい。また、コイル5は、軸方向がZ方向と平行であり、軸方向に沿って巻回されている。コイル5の軸は、コイル5の螺旋形状の中心軸を意味する。
【0025】
コイル5は、絶縁層40の積層方向に沿って、螺旋状に巻き回されている。コイル5の第1端5aは、素体4の第1端面41から露出して、第1外部電極6aに接続されている。コイル5の第2端5bは、素体4の第2端面42から露出して、第2外部電極6bに接続されている。
【0026】
コイル配線2は、軸方向に直交する絶縁層40の主面(XY平面)上に巻回されて形成される。コイル配線2の巻回数は、1周未満であるが、1周以上であってもよい。ビア配線は、絶縁層40のビアホール3内に設けられ、絶縁層40を厚み方向(Z方向)に貫通する。そして、積層方向に隣り合うコイル配線2は、ビア配線を介して、電気的に直列に接続される。
【0027】
隣り合うコイル配線2の間に位置する絶縁層40には、隣り合うコイル配線2が接続される位置にビアホール3が設けられている。ビアホール3は、絶縁層40を厚み方向(Z方向)に貫通する。
【0028】
素体4と、素体4内に設けられたコイル5とを備える積層型コイル部品10は、感光性ペーストを用いたフォトリソグラフィ法により配線パターンを形成することを含む方法により得られる。まず、感光性導電ペーストを絶縁シート上に塗布して、感光性ペースト膜を形成する。感光性ペースト膜の一部に活性エネルギー線を照射した後、感光性ペースト膜の未硬化の部分を除去(現像)して、配線パターンを形成する。配線パターン上に、再度、絶縁シートを積層する。このように、絶縁シートと、感光性導電ペーストによる配線パターンと、を交互に複数層積層して、積層構造体を得る。最後に、積層構造体を焼成することにより、絶縁シートの焼結体としての複数の絶縁層40を含む素体4、および、素体4の内部に設けられ、配線パターンの焼結体としての複数のコイル配線2を含むコイル5が得られる。
【0029】
第1外部電極6aおよび第2外部電極6bは、例えば、Ag、Cu、Auやこれらを主成分とする合金などの導電性材料から構成される。この実施形態では、第1外部電極6aは、素体4の第1端面41の全面と、第1側面43の第1端面41側の端部と、第2側面44の第1端面41側の端部と、底面45の第1端面41側の端部と、天面46の第1端面41側の端部と、に連続して設けられている。また、第2外部電極6bは、素体4の第2端面42の全面と、第1側面43の第2端面42側の端部と、第2側面44の第2端面42側の端部と、底面45の第2端面42側の端部と、天面46の第2端面42側の端部と、に連続して設けられている。要するに、第1外部電極6aおよび第2外部電極6bの各々は、5面電極である。しかしこれに限定されず、第1外部電極6aは、例えば、第1端面41の一部と底面45の一部とに連続して設けられたL字電極であってもよい。同様に、第2外部電極6bは、例えば、第2端面42の一部と底面45の一部とに連続して設けられたL字電極であってもよい。
【0030】
(感光性ペースト)
次に、コイル5の形成に用いられる感光性導電ペーストの詳細構成について説明する。感光性導電ペーストは、導電性を有する感光性ペーストを意味する。本開示に係る感光性ペーストは、導電性に限られず、非導電性であってよい。
【0031】
本開示に係る感光性ペーストは、光重合開始剤と、光重合性モノマーと、アルカリ可溶性ポリマーと、無機粉末と、ラジカル捕捉剤と、を含む。本開示に係る感光性ペーストは、活性エネルギー線によって重合するモノマーを含む、ネガ型である。以下、感光性ペーストから無機粉末およびラジカル捕捉剤を除いた成分を、感光性樹脂組成物と称する場合がある。
【0032】
絶縁シート上にフォトリソグラフィ法により配線パターンを形成する際、ラジカル捕捉剤によって、モノマーラジカルの生成が、特に絶縁シートの主面方向に沿って過度に拡散することが抑制される。これにより、所望の配線パターンが高精度で形成され、これを焼成して得られるコイル配線2もまた高精度に形成される。以下、フォトリソグラフィ法によって所望の形状が高精度で形成されることを、解像性に優れると称する場合がある。
【0033】
以下、「炭化水素基」は、炭素および水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでよい。炭化水素基として、代表的には、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、不飽和シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、不飽和ヘテロシクリル基が挙げられる。
【0034】
炭化水素基は、末端あるいは分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド結合、カルボニル構造(-C(=O)-)、カルボニルオキシ構造(-O-C(=O)-)を有してよい。
【0035】
炭化水素基の1つまたはそれ以上の水素は、置換基により置換されていてよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボキシ基、アミノ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数3~10の不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、炭素数3~10のアリール基および5~10員のヘテロアリール基が挙げられる。置換基は、炭化水素基の側鎖にあってよく、末端にあってよい。
【0036】
ハロゲン原子としては、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、アスタチン(At)が挙げられる。
【0037】
炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、3-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基が挙げられる。
【0038】
炭素数1~6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、およびこれらの異性体等が挙げられる。
【0039】
アミノ基は、1級(-NH2)であってよく、2級(-NHRN)であってよく、3級(-NRNRN’)であってよい。NNおよびNN’は、例えば、それぞれ独立して炭素数1~6のアルキル基である。
【0040】
<ラジカル捕捉剤>
ラジカル捕捉剤は、活性エネルギー線の照射によって生じるアルキルラジカル(R・)やパーオキシラジカル(ROO・)を効率よくトラップする。ラジカル捕捉剤は、重合禁止剤や光安定剤、酸化防止剤とも称される。
【0041】
ラジカル捕捉剤の含有量は、感光性ペーストの0.01質量%以上であってよく、0.1質量%以上であってよい。ラジカル捕捉剤の含有量は、感光性ペーストの5質量%以下であってよく、1質量%以下であってよい。一態様において、ラジカル捕捉剤の含有量は、感光性ペーストの0.01質量%以上5質量%以下である。
【0042】
ラジカル捕捉剤は、ラジカルをトラップできる化合物であれば、特に限定されない。ラジカル捕捉剤としては、例えば、フェノール構造を有するラジカル捕捉剤、ベンゾトリアゾール構造を有するラジカル捕捉剤およびヒンダードアミン構造を有するラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0043】
本実施形態において、ラジカル捕捉剤はフェノール構造を有する。フェノール構造を有するラジカル捕捉剤(以下、フェノール系ラジカル捕捉剤と称す。)により、現像の際、無機粉末が未硬化の光重合性モノマーなどとともに除去され易くなる。
【0044】
≪フェノール系ラジカル捕捉剤≫
フェノール構造は、ベンゼン環と、ベンゼン環に結合する少なくとも1つの水酸基と、を有する。フェノール構造は、1分子内に1以上あればよく、2以上あってもよい。複数のフェノール構造は、同じであってよく異なっていてよい。
【0045】
フェノール系ラジカル捕捉剤は、例えば、下記一般式:
【化1】
(式中、R
aは、ベンゼン環に結合する1個以上5個以下の基であって、独立して、水素原子、水酸基、炭化水素基、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子を表わす。)
で表される。
【0046】
Raは、ベンゼン環に1個以上結合しており、2個以上結合していてよい。Raは、ベンゼン環に5個以下結合しており、4個以下結合していてよい。複数のRaは、同種であってよく異種であってよい。
【0047】
少なくとも1つのRaは、水酸基であってよい。すなわち、フェノール系ラジカル捕捉剤は、ベンゼン環に結合する2以上の水酸基を有していてよい。
【0048】
Raは、アルキルエステル基(-C(=O)O-Ra1)を有していてよい。Ra1は、例えば、炭素数1~20のアルキル基である。アルキルエステル基は、ベンゼン環に直接結合していてよく、例えば炭素数1~6のアルキル基を介して、ベンゼン環に結合していてよい。
【0049】
Raは、チオアルキル基(-SRa2)を有していてよい。Ra2は、例えば、炭素数1~20のアルキル基である。チオアルキル基は、ベンゼン環に直接結合していてよく、例えば炭素数1~6のアルキル基を介して、ベンゼン環に結合していてよい。
【0050】
少なくとも1つのRaは、炭化水素基であってよい。少なくとも1つのRaは、アルコキシ基であってよく、炭素数1~6のアルコキシ基であってよく、メトキシ基であってよい。少なくとも1つのRaは、アルキル基であってよく、炭素数1~6のアルキル基であってよく、tert-ブチル基であってよい。少なくとも1つのtert-ブチル基を有するフェノール系ラジカル捕捉剤は、ヒンダードフェノールとも称される。
【0051】
ヒンダードフェノールは、例えば、下記一般式:
【化2】
(式中、R
aは上記と同意義である。)
で表される。
【0052】
フェノール系ラジカル捕捉剤としては、例えば、フェノール、カテコール、ピロガロール、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、フロログルシノール、レゾルシノール、ホモカテコール、p-クレゾール、2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールが挙げられる。
【0053】
アルコキシ基を有するフェノール系ラジカル捕捉剤としては、例えば、2-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2,6-ジメトキシフェノールが挙げられる。
【0054】
ヒンダードフェノールとしては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン-1,4-ジオール、tert-ブチルヒドロキシアニソール、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン2-イルアミノ]フェノールが挙げられる。
【0055】
<光重合開始剤>
光重合開始剤は、活性エネルギー線により反応性の高いラジカルを生成する。ラジカルは光重合性モノマーに付加して、光重合性モノマーの開始反応を引き起こす。ラジカルは連鎖的に生成し、やがて光重合性モノマー由来のポリマーが生成する。
【0056】
光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の1質量%以上であってよく、2質量%以上であってよい。光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。一態様において、光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の1質量%以上10質量%以下である。
【0057】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインまたはベンゾインエーテル系化合物、アルキルフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、α-ケトエステル系化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0058】
ベンゾインまたはベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、ベンジルジメチルケタールが挙げられる。
【0059】
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物が挙げられる。
α-アミノアルキルフェノン系化合物として、具体的には、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-2-モルフォリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オンが挙げられる。
α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物として、具体的には、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、ジエトキシアセトフェノン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、1,1’-(オキシビス(4,1-フェニレン))ビス(2-ヒドロキシ)-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン}、4-(2-アクリロイル-オキシエトキシ)フェニル-2-ヒドロキシ-2-プロピルケトンが挙げられる。
【0060】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2-n-ブトキシ-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-ジメチルアミノエチルベンゾエート、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、(1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン、4-(4-メチルフェニチオ)ベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系、ミヒラーケトン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体ポリマーが挙げられる。
【0061】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0062】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィネートが挙げられる。
【0063】
α-ケトエステル系光重合開始剤としては、例えば、メチルベンゾイルフォルメート、オキシフェニル酢酸の2-(2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステルおよびオキシフェニル酢酸の2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルが挙げられる。
【0064】
光重合開始剤は、アルキルフェノン系化合物であってよく、α-アミノアルキルフェノン系化合物であってよく、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンであってよい。
【0065】
<光重合性モノマー>
光重合性モノマーは、光重合開始剤と反応してモノマーラジカルを生成する。モノマーラジカルは重合して、ポリマーを生成する。
【0066】
光重合性モノマーの含有量は、感光性樹脂組成物の5質量%以上であってよく、10質量%以上であってよい。光重合性モノマーの含有量は、感光性樹脂組成物の35質量%以下であってよく、25質量%以下であってよい。一態様において、光重合性モノマーの含有量は、感光性樹脂組成物の5質量%以上35質量%以下である。
【0067】
光重合性モノマーは、ラジカル反応する反応基を少なくとも1つ有している限り限定されない。ラジカル反応基としては、例えば、アクリルアミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、スチリル基およびメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。光重合性モノマーは、ラジカル反応基として、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有していてよい。「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を表わす。
【0068】
(メタ)アクリロイル基を有する光重合性モノマーとしては、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレートモノマー;トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどの2官能(メタ)アクリレートモノマー;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールトリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの3官能(メタ)アクリレートモノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能(メタ)アクリレートモノマー;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能(メタ)アクリレートモノマー;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能(メタ)アクリレートモノマー;トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートなどの7官能以上の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0069】
光重合性モノマーは、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーであってよく、4官能以上の(メタ)アクリレートモノマーであってよく、5官能以上の(メタ)アクリレートモノマーであってよい。光重合性モノマーは、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレートであってよい。
【0070】
<アルカリ可溶ポリマー>
アルカリ可溶ポリマーは、塩基性化合物で中和されて、可溶化する。アルカリ可溶ポリマーは、例えば、アルカリ性の薬剤を用いた現像処理の際に、未硬化の光重合性モノマーおよび無機粉末などとともに除去される。一方、活性エネルギー線によって光重合性モノマーが重合する場合、その近傍に存在しているアルカリ可溶ポリマーは、光重合性モノマーの重合物と共に膜を形成し、配線パターンの一部を形成する。これにより、配線パターンの絶縁シートに対する密着性が向上し得る。
【0071】
アルカリ可溶ポリマーの含有量は、感光性樹脂組成物の0.5質量%以上であってよく、2質量%以上であってよい。アルカリ可溶ポリマーの含有量は、感光性樹脂組成物の50質量%以下であってよく、40質量%以下であってよい。一態様において、アルカリ可溶ポリマーの含有量は、感光性樹脂組成物の0.5質量%以上50質量%以下である。
【0072】
アルカリ可溶ポリマーは、側鎖に少なくとも1つの酸基を有する。酸基として、典型的にはカルボキシ基が挙げられる。アルカリ可溶ポリマーは、主鎖として、例えば、炭素-炭素結合、エーテル結合、ウレア結合、エステル結合、ウレタン結合の少なくとも1つを有するポリマー鎖を含む。透明性の観点から、アルカリ可溶ポリマーの主鎖は、炭素-炭素結合を有するポリマー鎖を含んでいてよい。
【0073】
側鎖に少なくとも1つのカルボキシ基を有し、主鎖として炭素-炭素結合を有するポリマー鎖を含むアルカリ可溶ポリマーは、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物との共重合により得られる。アルカリ可溶ポリマーとして、典型的には、カルボキシ基含有アクリル系重合体が挙げられる。
【0074】
エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ビニル酢酸、およびこれらの二量体や無水物が挙げられる。
【0075】
エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸イソボロニル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸イソボロニル等のメタクリル酸エステル;フマル酸モノエチル等のフマル酸エステル;スチレンが挙げられる。
【0076】
アルカリ可溶ポリマーのカルボキシ基は、主鎖が形成された後に導入されてもよい。アルカリ可溶ポリマーのカルボキシ基は、例えば、側鎖にエポキシ基を有し、上記のポリマー鎖を有する化合物に不飽和モノカルボン酸を反応させた後、さらに飽和あるいは不飽和多価カルボン酸無水物を反応させることにより、導入されてよい。
【0077】
アルカリ可溶ポリマーは、不飽和結合を有していてよい。この場合、アルカリ可溶ポリマーも重合成分として機能するため、配線パターンの絶縁シートに対する密着性がさらに向上し得る。アルカリ可溶ポリマーの不飽和結合は、例えば、側鎖にあるカルボキシル基に、これと反応可能であって、重合性の官能基(典型的には、エポキシ基)を有するモノマーを付加することにより、導入されてよい。
【0078】
アルカリ可溶ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、10000以上50000以下であってよい。アルカリ可溶ポリマーの酸価は、30以上150以下であってよい。
【0079】
<無機粉末>
無機粉末は、活性エネルギー線の照射工程、さらには焼成工程における配線パターンの収縮を抑制する。無機粉末はさらに、感光性ペーストに種々の機能を付与することができる。例えば、コイル5の形成に用いられる感光性導電ペーストには、導電性の無機粉末(典型的には、後述する金属粉末)が配合されており、これにより感光性ペーストは導電性を示す。
【0080】
無機粉末の含有量は、感光性ペーストの68質量%以上であってよく、72質量%以上であってよい。無機粉末の含有量は、感光性ペーストの88質量%以下であってよく、85質量%以下であってよい。一態様において、無機粉末の含有量は、感光性ペーストの68質量%以上88質量%以下である。
【0081】
無機粉末の平均粒径は特に限定されない。微細な配線が形成できる点で、無機粉末の平均粒径は、5.0μm以下であってよい。無機粉末の平均粒径は、1.0μm以上であってよい。
【0082】
無機粉末の平均粒径は、粒子径分布測定装置(例えば、ベル・マイクロトラック社製、MT3300-EX)を用いて、レーザ回折・散乱法で得られた0.02μm以上1400μm以下の範囲の粒子径分布から、体積基準の中央値(D50)として得られる。
【0083】
無機粉末は、「炭素原子(C)を含まない粒子」と言い換えることができる。無機粉末は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。無機粉末としては、例えば、金属粉末、ガラス粉末およびセラミックス粉末よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0084】
金属粉末の材料としては、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、鉛(Pd)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、金属粉末は、Ag粉末であってよく、Cu粉末であってよい。
【0085】
ガラス粉末の材料としては、例えば、ホウ珪酸系ガラスなどの公知のガラスが挙げられる。ガラス粉末の材料として、具体的には、SiO2-PbO系、SiO2-ZnO系、SiO2-Bi2O3系、SiO2-K2O系、SiO2-Na2O系、SiO2-PbO-B2O3系、SiO2-ZnO-B2O3系、SiO2-Bi2O3-B2O3系、SiO2-K2O-B2O3系、SiO2-Na2O-B2O3系のガラスが挙げられる。
【0086】
セラミック粉末の材料としては、例えば、金属の酸化物、ホウ化物、窒化物、珪化物が挙げられる。金属としては、金属粉末の材料として例示されたものが挙げられる。セラミック粉末は、2種以上の金属酸化物が複合したフェライト粉末であってよく、ガラスとの複合系であってよい。
【0087】
<金属レジネート>
本開示に係る感光性ペーストは、金属レジネートを含んでよい。金属レジネートは、金属と有機物との反応により得られる。金属レジネートによって、焼成工程における配線パターンと絶縁シートとの間の剥離(デラミネーション)が抑制され得る。
【0088】
金属レジネートの含有量は、感光性樹脂組成物の0.01質量%以上であってよく、0.1質量%以上であってよい。金属レジネートの含有量は、感光性樹脂組成物の10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。一態様において、金属レジネートの含有量は、感光性樹脂組成物の0.01質量%以上10質量%以下である。
【0089】
金属レジネートに含まれる金属は、無機粉末よりも高い融点を有していてよい。金属レジネートに含まれる金属としては、例えば、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)、Cu、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)が挙げられる。
【0090】
金属レジネートとして、具体的には、上記金属のオクチル酸塩、ナフテン酸塩、2-エチルヘキサン塩、スルホン酸塩、メルカプチド、アルコキシドが挙げられる。
【0091】
<溶剤>
本開示に係る感光性ペーストは、溶剤を含んでよい。溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール系有機溶剤が挙げられる。
【0092】
<その他>
本開示に係る感光性ペーストは、種々の添加剤を含んでよい。添加剤としては、例えば、増感剤、消泡剤、分散剤、沈降防止剤が挙げられる。
【0093】
(配線パターンの形成方法)
次に、配線パターンの形成方法を説明する。
配線パターンは、上記の感光性導電ペーストを絶縁シート上に塗布して、感光性ペースト膜を形成する工程と、感光性導電ペースト膜の一部に活性エネルギー線を照射する工程と、感光性導電ペースト膜の未硬化の部分を除去して配線パターンを形成する工程と、を備える方法により形成される。
【0094】
(1)絶縁シートの作製
まず、絶縁シートを準備する。絶縁シートは、例えば以下のようにして作製される。絶縁性のペースト(以下、絶縁ペーストと称する。)をPETフィルム等の支持フィルム上の全面にスクリーン印刷し、乾燥する。必要に応じて、この印刷および乾燥のサイクルを数回繰り返す。このようにして、所定の厚み(例えば、約100μm)を有する絶縁シートが得られる。
【0095】
絶縁ペーストは、通常、絶縁性の無機粉末を含有する。絶縁性の無機粉末として、典型的には、ガラス粉末やセラミックス粉末が挙げられる。絶縁ペーストに含有されるガラス粉末は、SiO2、K2OおよびB2O3を所定の割合で含む、SiO2-K2O-B2O3系ガラスであってよい。2種以上のガラス粉末が用いられてもよい。ガラス粉末の平均粒径は特に限定されず、例えば、0.8μm以上1.3μm以下である。
【0096】
絶縁ペーストに含有されるセラミック粉末は、金属酸化物であってよく、酸化アルミニウムであってよい。2種以上のセラミックス粉末が用いられてもよい。セラミックス粉末の平均粒径は特に限定されず、例えば、0.1μm以上5.0μm以下であってよい。
【0097】
絶縁シートは、予めシート状に成形されたグリーンシートを積層することによって作製されてもよい。
【0098】
(2)感光性ペースト膜の形成
絶縁シート上に、本開示の感光性導電ペーストをスクリーン印刷し、乾燥する。これにより、感光性ペースト膜が得られる。感光性ペースト膜の厚みは特に限定されず、例えば、5μm以上10μm以下であってよい。
【0099】
(3)活性エネルギー線の照射
感光性ペースト膜の一部に活性エネルギー線を照射する。このとき、開口部を有するマスクが使用される。マスクによって、活性エネルギー線が部分的に遮断される。活性エネルギー線としては、例えば、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線、電子線が挙げられる。なかでも、紫外線であってよく、350nmから420nmの間にピーク波長を有する紫外線であってよい。
【0100】
活性エネルギー線の積算光量は、光重合性モノマーおよび光重合開始剤の種類や量、感光性ペースト膜の厚み等に応じて適宜設定される。活性エネルギー線の積算光量は、例えば、100mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下であってよい。
【0101】
(4)感光性ペースト膜の未硬化の部分の除去
最後に、感光性ペースト膜の未硬化の部分を除去する。これにより、硬化した感光性導電ペーストからなる配線パターンが形成される。本開示に係る感光性導電ペーストにより形成される配線パターンは、解像性に優れる。
【0102】
感光性ペースト膜の未硬化部分の除去には、アルカリ性の薬剤が用いられる。これにより、アルカリ可溶ポリマーが可溶化して、他の成分(未硬化の光重合性モノマー、重合開始剤、無機粉末等)とともに、絶縁シート上から除去される。
【0103】
(電子部品の製造方法)
次に、積層型コイル部品10の製造方法を説明する。
積層型コイル部品10は、上記の感光性導電ペーストを絶縁シート上に塗布して、感光性ペースト膜を形成する工程と、感光性ペースト膜の一部に活性エネルギー線を照射する工程と、感光性ペースト膜の未硬化の部分を除去して、配線パターンを形成する工程と、配線パターン上に絶縁シートを積層する工程と、配線パターンおよび絶縁シートを焼成して、複数の絶縁シートの焼結体としての複数の絶縁層40、および、配線パターン(硬化した感光性導電ペースト)の焼結体としてのコイル配線2を得る工程と、を備える方法により製造される。
【0104】
配線パターンの形成までの工程は、上記した(1)絶縁シートの作製、(2)感光性ペースト膜の形成、(3)活性エネルギー線の照射、および(4)感光性ペースト膜の未硬化の部分の除去と同様にして行われる。積層型コイル部品10の製造方法において、この配線パターンを形成するまでの一連の工程(1)~(4)は、複数サイクル行われる。
【0105】
2サイクル目において、支持フィルム上ではなく、1サイクル目で形成された配線パターン上に、上記のようにして(1)絶縁シートの作製が行われる。これにより2層目の絶縁シートが積層される。この2層目の絶縁シートの所定の箇所に、レーザ光照射によりビアホール3が形成される。
【0106】
次いで、再び、(2)感光性ペースト膜の形成、(3)活性エネルギー線の照射、および(4)感光性ペースト膜の未硬化の部分の除去が行われて、2層目の配線パターンが形成される。
【0107】
(1)絶縁シートの作製、ビアホール3の形成、(2)感光性ペースト膜の形成、(3)活性エネルギー線の照射、および(4)感光性ペースト膜の未硬化の部分の除去は、所望の層数が得られるまで繰り返される。
【0108】
最後に、(1)絶縁シートの作製が必要回数繰り返されて、最上層の配線パターン上に絶縁シートが形成される。これにより、複数層の絶縁シートと配線パターンとを備え、配線パターン同士がビアホール3を介して層間接続された、積層構造体が得られる。
【0109】
得られた積層構造体は、ダイサーによりチップ形状に分割される。その後、1層目の絶縁シートの作製に用いられた支持フィルムが剥離される。
【0110】
(5)焼成
続いて、チップ状の積層構造体を焼成する。この焼成により、複数の配線パターンが焼結されて、複数のコイル配線2が形成され、同時にこれら複数のコイル配線2が電気的に接続されたコイル5が形成される。また、複数の絶縁シートが焼結されて、複数の絶縁層40を含む素体4が形成される。焼成温度は特に限定されず、使用する材料の種類等を考慮して、適宜設定すればよい。
【0111】
焼成後、素体4の外部に第1外部電極6aおよび第2外部電極6bを形成する。以上により、
図1に示す積層型コイル部品10が得られる。
【0112】
さらに、電解めっき法や無電解めっき法等によって、第1外部電極6aおよび第2外部電極6bの外面に単層あるいは積層構造を有するめっき層を設けてもよい。
【0113】
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態とは、感光性ペーストに含まれるラジカル捕捉剤の種類が相違する。この相違する構成を以下に説明する。第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。第2実施形態において、電子部品の構成、配線パターンの形成方法、電子部品の製造方法は第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0114】
本実施形態において、ラジカル捕捉剤はベンゾトリアゾール構造を有する。ベンゾトリアゾール構造を有するラジカル捕捉剤(以下、ベンゾトリアゾール系ラジカル捕捉剤と称す。)により、感光性ペーストが均一に塗布され易くなる。
【0115】
≪ベンゾトリアゾール系ラジカル捕捉剤≫
ベンゾトリアゾール構造は、3つの窒素原子を含む5員環と、ベンゼン環とを有する。ベンゾトリアゾール構造は、1分子内に1以上あればよく、2以上あってもよい。複数のベンゾトリアゾール構造は、同じであってよく異なっていてよい。
【0116】
ベンゾトリアゾール系ラジカル捕捉剤は、例えば、下記一般式:
【化3】
(式中、R
bは、ベンゼン環に結合する1個以上4個以下の基であって、独立して、水素原子、水酸基、炭化水素基、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子を表わす。Xは、窒素原子に結合する基であって、水素原子、水酸基、炭化水素基、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子を表わす。)
で表される。
【0117】
Rbは、ベンゼン環に1個以上結合しており、2個以上結合していてよい。Rbは、ベンゼン環に4個以下結合しており、3個以下結合していてよい。複数のRbは、同種であってよく異種であってよい。Rbは、水素原子であってよい。
【0118】
Xは、典型的には、フェノール基を有する。フェノール基は、例えば、下記一般式:
【化4】
(式中、R
xは、ベンゼン環に結合する1個以上4個以下の基であって、独立して、水素原子、水酸基、炭化水素基、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子を表わす。)
で表される。
【0119】
Rxは、ベンゼン環に1以上結合しており、2以上結合していてよい。Rxは、ベンゼン環に4個以下結合しており、3個以下結合していてよい。複数のRxは、同種であってよく異種であってよい。
【0120】
少なくとも1つのRxは、アルキル基であってよく、炭素数1以上10以下のアルキル基であってよく、炭素数1以上8以下のアルキル基であってよい。
【0121】
Rxは、アルキルエステル基(-C(=O)O-Rx1)を有していてよい。Rx1は、例えば、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐しているアルキル基である。アルキルエステル基は、ベンゼン環に直接結合していてよく、例えば炭素数1以上6以下のアルキル基を介して、ベンゼン環に結合していてよい。
【0122】
フェノール基のベンゼン環は、ベンゾトリアゾール構造を構成する窒素原子に直接結合していてよい。これにより、感光性ペーストの光硬化性の経時変化が抑制され得る。ベンゾトリアゾール構造とフェノール基とを有するラジカル捕捉剤は、ベンゾトリアゾール系ラジカル捕捉剤とみなすことができる。
【0123】
フェノール基は、1分子内に1以上あればよく、2以上あってもよい。複数のフェノール基の置換基(Rx)の数および種類は、同じであってよく異なっていてよい。
【0124】
フェノール基を有するベンゾトリアゾール系ラジカル捕捉剤は、例えば、下記一般式:
【化5】
(式中、R
bおよびR
xは上記と同意義である。)
で表される。
【0125】
ベンゾトリアゾール系ラジカル捕捉剤としては、1,2,3-ベンゾトリアゾール、4-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、カルボキシメチルベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2′-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノールが挙げられる。
【0126】
フェノール構造を有するベンゾトリアゾール系ラジカル捕捉剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル-3-〔3-tert-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物、ビス{β-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール300との縮合物、イソオクチル-3-〔3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネート、2-(3-ドデシル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール〕、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、6,6’-ビス(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,4’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,2’-メチレンジフェノールが挙げられる。
【0127】
[第3実施形態]
第3実施形態は、第1実施形態とは、感光性ペーストに含まれるラジカル捕捉剤の種類が相違する。この相違する構成を以下に説明する。第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。第3実施形態において、電子部品の構成、配線パターンの形成方法、電子部品の製造方法は第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0128】
本実施形態において、ラジカル捕捉剤はヒンダードアミン構造を有する。ヒンダードアミン構造を有するラジカル捕捉剤(以下、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤と称す。)により、感光性ペーストの粘度変化が抑制され得る。
【0129】
≪ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤≫
ヒンダードアミン構造は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを基本骨格として有する。
【0130】
ヒンダードアミン構造は、1分子内に1以上あればよく、2以上あってもよい。複数のヒンダードアミン構造は、同じであってよく異なっていてよい。
【0131】
ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤は、例えば、下記一般式:
【化6】
(式中、R
cは、ピペリジン環に結合する1個以上3個以下の基であって、独立して、水素原子、水酸基、炭化水素基、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子を表わし、Yは、窒素原子に結合する基であって、水素原子、水酸基、炭化水素基、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子を表わす。)
で表される。
【0132】
Rcは、ピペリジン環に1以上結合しており、2以上結合していてよい。Rcは、ピペリジン環に3個以下結合している。複数のRcは、同種であってよく異種であってよい。
【0133】
少なくとも1つのRcは、炭化水素基であってよく、カルボニルオキシ構造を有する炭化水素基であってよい。少なくとも1つのRcは、アミノ基であってよく、3級アミノ基であってよい。
【0134】
Yは、典型的には、炭化水素基である。本実施形態において、YはOR1基(R1は、炭化水素基を表わす。)で表される。R1は、炭素数1~20のアルキル基であってよく、炭素数5~15のアルキル基であってよい。R1は直鎖状であってよい。R1は、飽和していてよい。
【0135】
YとしてOR1基を有するヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤は、N-OR型ヒンダードアミンとも称される。N-OR型ヒンダードアミンであるラジカル捕捉剤により、感光性ペーストにおいて、無機粉末の分散性が向上する。
【0136】
N-OR型ヒンダードアミンは、例えば、下記一般式:
【化7】
(式中、R
cは、上記と同意義であり、R
1は、炭化水素基を表わす。)
で表される。
【0137】
N-OR型ヒンダードアミンとして、具体的には、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)=デカンジオアートと2-ヒドロペルオキシ-2-メチルプロパンとオクタンとの反応生成物、ビス[2,2,6,6-テトラメチル-1-(ウンデシルオキシ)ピペリジン-4-イル]=カルボナート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジック-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
【0138】
(変形例1)
本実施形態の変形例において、YはCOR2基(R2は、炭化水素基を表わす。)で表される。R2は、炭素数1~6のアルキル基であってよく、炭素数1~3のアルキル基であってよく、メチル基であってよい。
【0139】
YとしてCOR2基を有するヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤は、N-COR型ヒンダードアミンとも称される。N-COR型ヒンダードアミンであるラジカル捕捉剤により、感光性ペーストの基板への濡れ性が向上する。
【0140】
N-COR型ヒンダードアミンは、例えば、下記一般式:
【化8】
(式中、R
cは、上記と同意義であり、R
2は、炭化水素基を表わす。)
で表される。
【0141】
N-COR型ヒンダードアミンとして、具体的には、1-(1-アセチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-3-ドデシルピロリジン-2,5-ジオンが挙げられる。
【0142】
(変形例2)
本実施形態の他の変形例において、YはR3基(R3は、窒素原子に直接結合しているアルキル基を表わす。)で表される。R3は、炭素数1~6のアルキル基であってよく、炭素数1~3のアルキル基であってよく、メチル基であってよい。
【0143】
YとしてR3基を有するヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤は、N-R型ヒンダードアミンとも称される。N-R型ヒンダードアミンであるラジカル捕捉剤により、現像時間の設定の自由度が向上する。
【0144】
N-R型ヒンダードアミンは、例えば、下記一般式:
【化9】
(式中、R
cは、上記と同意義であり、R
3は、窒素原子に直接結合しているアルキル基を表わす。)
で表される。
【0145】
R
3がメチル基であるN-R型ヒンダードアミンは、例えば、下記一般式:
【化10】
(式中、R
cは、上記と同意義である。)
で表される。
【0146】
N-R型ヒンダードアミンとして、具体的には、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル-セバケートの混合物が挙げられる。
【実施例0147】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0148】
[実施例1]
(1)感光性導電ペーストの調製
表1に示す各原料を下記の割合で配合し、充分に混合して、感光性樹脂組成物を得た。
【0149】
【0150】
感光性樹脂組成物22.7部と、無機粉末(平均粒径1.5μmのAg粉末)77.0部と、ラジカル捕捉剤A(2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン-1,4-ジオール)0.3部とを配合し、3本ロールで充分に混合して、感光性導電ペーストを得た。
【0151】
実施例1で使用されたラジカル捕捉剤A(2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン-1,4-ジオール)の構造式を以下に示す。
【化11】
【0152】
(2)配線パターンの作製
得られた感光性導電ペーストを絶縁層(厚さ1mmのアルミナ基板)上にスクリーン印刷し、60℃で30分間乾燥して、膜厚8μmの感光性導電ペースト膜を形成した。
【0153】
直線パターンを有するフォトマスク(直線状開口部の幅15μm、開口部同士の間隔45μm)を準備した。得られた感光性導電ペースト膜に、活性エネルギー線(波長350nmから420nmの間にピーク波長を有する紫外線)を、上記のフォトマスクを介して積算光量1500mJ/cm2の条件で照射した。
【0154】
最後に、トリエタノールアミン水溶液を用いて感光性導電ペースト膜の未硬化の部分を除去し、配線パターンを得た。
【0155】
[実施例2]
ラジカル捕捉剤Aに替えて、下記構造式で表されるラジカル捕捉剤B(4-メトキシフェノール)を使用したこと以外、実施例1と同様にして、感光性導電ペーストを調製し、配線パターンを得た。
【化12】
【0156】
[実施例3]
ラジカル捕捉剤Aに替えて、下記構造式で表されるラジカル捕捉剤C(1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン)を使用したこと以外、実施例1と同様にして、感光性導電ペーストを調製し、配線パターンを得た。
【化13】
【0157】
[実施例4]
ラジカル捕捉剤Aに替えて、下記構造式で表されるラジカル捕捉剤D(1,2,3-ベンゾトリアゾール)を使用したこと以外、実施例1と同様にして、感光性導電ペーストを調製し、配線パターンを得た。
【化14】
【0158】
[実施例5]
ラジカル捕捉剤Aに替えて、下記構造式で表されるラジカル捕捉剤E(2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール)を使用したこと以外、実施例1と同様にして、感光性導電ペーストを調製し、配線パターンを得た。
【化15】
【0159】
[実施例6]
ラジカル捕捉剤Aに替えて、下記構造式で表されるラジカル捕捉剤F(2-[2-ヒドロキシ-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル]ベンゾトリアゾール)を使用したこと以外、実施例1と同様にして、感光性導電ペーストを調製し、配線パターンを得た。
【化16】
【0160】
[実施例7]
ラジカル捕捉剤Aに替えて、下記構造式で表されるラジカル捕捉剤G(ビス[2,2,6,6-テトラメチル-1-(ウンデシルオキシ)ピペリジン-4-イル]=カルボナート)を使用したこと以外、実施例1と同様にして、感光性導電ペーストを調製し、配線パターンを得た。
【化17】
【0161】
[実施例8]
ラジカル捕捉剤Aに替えて、下記構造式で表されるラジカル捕捉剤H(ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)=デカンジオアートと2-ヒドロペルオキシ-2-メチルプロパンとオクタンとの反応生成物)を使用したこと以外、実施例1と同様にして、感光性導電ペーストを調製し、配線パターンを得た。
【化18】
【0162】
[実施例9]
ラジカル捕捉剤Aに替えて、下記構造式で表されるラジカル捕捉剤I(1-(1-アセチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-3-ドデシルピロリジン-2,5-ジオン)を使用したこと以外、実施例1と同様にして、感光性導電ペーストを調製し、配線パターンを得た。
【化19】
【0163】
[実施例10]
ラジカル捕捉剤Aに替えて、下記構造式で表されるラジカル捕捉剤J(ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート)を使用したこと以外、実施例1と同様にして、感光性導電ペーストを調製し、配線パターンを得た。
【化20】
【0164】
[比較例1]
ラジカル捕捉剤Aを配合しなかったこと以外、実施例1と同様にして、感光性導電ペーストを調製し、配線パターンを得た。
【0165】
[解像性の評価]
得られた配線パターンをコンフォーカル顕微鏡(レーザーテック社製、Optelics)で観察し、任意の5カ所の直線部分の幅を測定し、平均値X(μm)を算出した。評価結果を表2に示す。線幅の平均値Xと直線状開口部の幅15μmとの差が小さいほど、解像性に優れている。
【0166】
【0167】
実施例の感光性導電ペーストで作製された配線パターンの幅とマスクの開口部の幅との差(X-15)は、いずれも当該開口部の幅(15mm)よりも小さく、解像性に優れている。一方、比較例の感光性導電ペーストで作製された配線パターンの幅とマスクの開口部の幅との差(X-15)は、当該開口部の幅(15mm)以上であって、解像性に劣る。
【0168】
本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第3実施形態のそれぞれで使用されたラジカル捕捉剤を様々に組み合わせてもよい。
【0169】
第1から第3実施形態では、感光性ペーストが導電性を有しているが、本開示に係る感光性ペーストは非導電性であってよい。非導電性の感光性ペーストは、例えば、電子部品の絶縁膜の形成に用いられる。
【0170】
第1から第3実施形態では、電子部品が複数のコイル配線を備えているが、コイル配線は1つであってよい。
【0171】
第1から第3実施形態では、本開示に係る導電性の感光性ペーストを用いてコイル部品を作製したが、導電性の感光性ペーストの用途はこれに限定されない。
本開示に係る導電性の感光性ペーストは、多層セラミック基板などの回路基板や、能動部品、コイル部品以外の受動部品などの電子部品の作製に用いられる。能動部品とは、供給された電力を増幅、整流あるいは変換等する部品をいう。能動部品としては、例えば、トランジスタ、各種センサが挙げられる。受動部品とは、供給された電力を消費、蓄積または放出する部品であって、増幅および整流などの能動動作を行わない部品をいう。受動部品としては、コイル部品の他、例えば、抵抗器、コンデンサおよびサーミスタが挙げられる。
【0172】
本開示は以下の態様を含む。
<1>
光重合開始剤と、
光重合性モノマーと、
アルカリ可溶性ポリマーと、
無機粉末と、
ラジカル捕捉剤と、を含む、感光性ペースト。
<2>
前記無機粉末は、導電性を有する、<1>に記載の感光性ペースト。
<3>
前記ラジカル捕捉剤は、フェノール構造を有する、<1>または<2>に記載の感光性ペースト。
<4>
前記フェノール構造を有するラジカル捕捉剤は、さらに、前記フェノール構造を構成するベンゼン環に結合するtert-ブチル基またはアルコキシ基の少なくとも1つを有する、<3>に記載の感光性ペースト。
<5>
前記ラジカル捕捉剤は、ベンゾトリアゾール構造を有する、<1>または<2>に記載の感光性ペースト。
<6>
前記ベンゾトリアゾール構造を有するラジカル捕捉剤は、さらに、前記ベンゾトリアゾール構造を構成する窒素原子に結合するフェノール基を有する、<5>に記載の感光性ペースト。
<7>
前記ラジカル捕捉剤は、ヒンダードアミン構造を有する、<1>または<2>に記載の感光性ペースト。
<8>
前記ヒンダードアミン構造を有するラジカル捕捉剤は、前記ヒンダードアミン構造を構成する窒素原子に結合するOR1基(R1は、炭化水素基を表わす。)を有する、<7>に記載の感光性ペースト。
<9>
前記ヒンダードアミン構造を有するラジカル捕捉剤は、前記ヒンダードアミン構造を構成する窒素原子に結合するCOR2基(R2は、炭化水素基を表わす。)を有する、<7>に記載の感光性ペースト。
<10>
前記ヒンダードアミン構造を有するラジカル捕捉剤は、前記ヒンダードアミン構造を構成する窒素原子に結合するR3基(R3は、窒素原子に直接結合しているアルキル基を表わす。)を有する、<7>に記載の感光性ペースト。
<11>
配線パターンの形成に用いられる、<2>および、<2>に従属する<3>から<10>のいずれか1つに記載の感光性ペースト。
<12>
<2>および、<2>に従属する<3>から<10>のいずれか1つに記載の感光性ペーストを絶縁シート上に塗布して、感光性ペースト膜を形成する工程と、
前記感光性ペースト膜の一部に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記感光性ペースト膜の未硬化の部分を除去して配線パターンを形成する工程と、を備える、配線パターンの形成方法。
<13>
<2>および、<2>に従属する<3>から<10>のいずれか1つに記載の感光性ペーストを絶縁シート上に塗布して、感光性ペースト膜を形成する工程と、
前記感光性ペースト膜の一部に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記感光性ペースト膜の未硬化の部分を除去して、配線パターンを形成する工程と、
前記配線パターン上に絶縁シートを積層する工程と
前記配線パターンおよび前記絶縁シートを焼成して、複数の前記絶縁シートの焼結体としての複数の絶縁層、および、前記配線パターンの焼結体としての内部配線を得る工程と、を備える、電子部品の製造方法。
<14>
複数の絶縁層を含む素体と、
前記素体の内部に設けられ、硬化した<2>および、<2>に従属する<3>から<10>のいずれか1つに記載の感光性ペーストの焼結体としての内部配線と、を備える、電子部品。