(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033543
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】窒素含有廃水の処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20240306BHJP
C02F 1/72 20230101ALI20240306BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20240306BHJP
C02F 1/70 20230101ALI20240306BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20240306BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240306BHJP
C02F 9/00 20230101ALI20240306BHJP
【FI】
C02F1/461 101A
C02F1/72 B
C02F1/28 D
C02F1/70 Z
B01D53/18 150
B01D53/14 210
C02F9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137177
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D020
4D050
4D061
4D624
【Fターム(参考)】
4D020AA09
4D020BA01
4D020BA07
4D020BA19
4D020BA23
4D020BB03
4D020CB26
4D020CC21
4D050AA12
4D050AB35
4D050AB37
4D050BA04
4D050BA06
4D050BA07
4D050BB06
4D050BB09
4D050CA06
4D050CA10
4D061DA08
4D061DB19
4D061DC15
4D061EA03
4D061EB14
4D061EB31
4D061FA06
4D061FA16
4D061FA17
4D624AA04
4D624AB13
4D624AB14
4D624BA02
4D624DB09
4D624DB22
4D624DB23
(57)【要約】
【課題】硝酸とアンモニアを含む窒素含有排水の物理化学的な処理方法を提供しようとするもの。
【解決手段】硝酸とアンモニアを含有する排水について、前記アンモニアを低減させる工程と、アンモニアが低減した状態で硝酸を還元性助剤で低減する工程とを有する。前記アンモニアを低減させる工程で電気分解するようにしてもよい。前記アンモニアを低減させる工程で酸化剤を添加するようにしてもよい。前記アンモニアを含む揮発ガスGをスクラバー槽Sで脱臭する工程を有し、前記スクラバー槽S内でスクラバー水Wを霧状に噴霧して揮発ガスGを取り組むようにし、スクラバー水Wの噴霧は拡散手段1を高速で回転駆動するしてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸とアンモニアを含有する排水について、前記アンモニアを低減させる工程と、アンモニアが低減した状態で硝酸を還元性助剤で低減する工程とを有することを特徴とする窒素含有排水の処理方法。
【請求項2】
前記アンモニアを低減させる工程で電気分解するようにした請求項1記載の窒素含有排水の処理方法。
【請求項3】
前記アンモニアを低減させる工程で酸化剤を添加するようにした請求項1又は2記載の窒素含有排水の処理方法。
【請求項4】
前記アンモニアが低減した状態で硝酸を還元性助剤で低減する工程の処理水について活性炭処理する工程を具備し、前記活性炭処理工程の濾過水の一部をフィードバックし、前記処理水に合流して活性炭処理するようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の窒素含有排水の処理方法。
【請求項5】
前記アンモニアを含む揮発ガス(G)をスクラバー槽(S)で脱臭する工程を有し、前記スクラバー槽(S)内でスクラバー水(W)を霧状に噴霧して揮発ガス(G)を取り組むようにし、スクラバー水(W)の噴霧は拡散手段(1)を高速で回転駆動するようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の窒素含有排水の処理方法。
【請求項6】
前記スクラバー水(W)内に微細気泡(B)を共存させるようにした請求項5記載の窒素含有排水の処理方法。
【請求項7】
前記スクラバー水(W)中にオゾンを圧入し電気分解するようにした請求項5又は6記載の窒素含有排水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、硝酸とアンモニアを含む窒素含有排水の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アンモニア性窒素を含有する廃水を浄化する廃水処理方法、及び廃水処理システムに関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、近年、アンモニア性窒素が含まれる廃水の処理方法として、アナモックス反応を利用した方法について、研究開発が進められている。
アナモックス反応は、嫌気性アンモニア酸化細菌の働きによりアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とから、廃水中の窒素を除去する脱窒反応であり、予め廃水中の一部のアンモニア性窒素を亜硝酸化処理によって亜硝酸性窒素に変換した後に、アンモニアが電子供与体、亜硝酸が電子受容体として、1NH4
++1.32NO2
-+0.066HCO3
-+0.13H+→1.02N2+0.26NO3
-+0.066CH2O0.5N0.15+2.03H2Oの反応式により脱窒する。
アナモックス反応を利用した脱窒方法は、従来のアンモニアから亜硝酸、硝酸へと変換して脱窒する方法に対し、大量の酸素供給や電子供与体である有機物の添加を必要としないため、新たな汚泥の発生も抑えられ、経済的かつ効率的な窒素除去方法である、というものである。
これに対し、硝酸とアンモニアを含む窒素含有排水の物理化学的な処理方法についての要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、硝酸とアンモニアを含む窒素含有排水の物理化学的な処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の窒素含有排水の処理方法は、硝酸とアンモニアを含有する排水について、前記アンモニアを低減させる工程と、アンモニアが低減した状態で硝酸を還元性助剤で低減する工程とを有することを特徴とする。
この窒素含有排水の処理方法は、硝酸(態窒素)とアンモニア(態窒素)を含有する排水について、前記アンモニアを低減させる工程と、アンモニアが低減した状態で硝酸を還元性助剤で低減する工程とを有するので、アンモニアが低減しほぼ定着した状態で硝酸を還元性助剤により低減することができる。
還元性助剤として、重亜硫酸ソーダ、苛性ソーダ、チオ硫酸ナトリウムなどを例示することができ、このうちチオ硫酸ナトリウムがアンモニアの低減度合いの面で好ましい。
【0006】
(2)前記アンモニアを低減させる工程で電気分解するようにしてもよい。
このように、アンモニア(態窒素)を低減させる工程で電気分解するようにすると、アンモニアを陽極酸化で硝酸や窒素に変化させることによりアンモニアが低減することとなる。
電気分解は無隔膜電極で行うことができ、また電極としてセラミック電極を好適に用いることができる。
【0007】
(3)前記アンモニアを低減させる工程で酸化剤を添加するようにしてもよい。
このように、アンモニア(態窒素)を低減させる工程で酸化剤を添加するようにすると、アンモニアを硝酸や窒素に変化させて低減することができる。酸化剤として、過酸化水素、次亜塩素酸ソーダなどを用いることができる。
酸化剤として、電解次亜塩素酸(例えば残留塩素濃度 約1,000ppmの次亜塩素酸を電気分解したもの)を注入・添加することもできる。
また、アンモニアや硝酸を活性炭により低減することもできる。
【0008】
(4)前記アンモニアが低減した状態で硝酸を還元性助剤で低減する工程の処理水について活性炭処理する工程を具備し、前記活性炭処理工程の濾過水の一部をフィードバックし、前記処理水に合流して活性炭処理するようにしてもよい。
このように、アンモニア(態窒素)が低減した状態で硝酸を還元性助剤で低減する工程の処理水について活性炭処理する工程を具備し、前記活性炭処理工程の濾過水の一部をフィードバックし、前記処理水に合流して活性炭処理するようにすると、該処理水をフィードバック濾過水で希薄化した状態で活性炭処理することによりアンモニアと硝酸のより低減化を図ることができる。
【0009】
(5)前記アンモニアを含む揮発ガスをスクラバー槽で脱臭する工程を有し、前記スクラバー槽内でスクラバー水を霧状に噴霧して揮発ガスを取り組むようにし、スクラバー水の噴霧は拡散手段を高速で回転駆動するようにしてもよい。
このように、前記アンモニアを含む揮発ガスをスクラバー槽で脱臭する工程を有し、スクラバー槽内でスクラバー水を霧状に噴霧して揮発ガスを取り組むようにすると、スクラバー槽ではスクラバー水を上方から微細な霧状に噴霧して循環し、アンモニアを含む揮発ガスをスクラバー水中に取り込むことができる。
【0010】
そして、スクラバー水の噴霧は拡散手段を高速で回転駆動するようにすると、例えばスクラバー水の噴霧を略メガホン状の拡散手段を高速で回転駆動(例えば1,800rpm)し、前記拡散手段の内周面に沿わせて遠心力により離散させることにより、前記拡散手段の端縁からスクラバー槽中へと霧状に発散させることができる。
【0011】
(6)前記スクラバー水内に微細気泡を共存させるようにしてもよい。
このように、スクラバー水内に微細気泡を共存(例えば循環ライン中に圧入する)させるようにすると、前記微細気泡(例えばマイクロバブル)の破裂・破断時の衝撃エネルギーによりスクラバー水中に攪拌効果を及ぼすことができる。
【0012】
(7)前記スクラバー水中にオゾンを圧入し電気分解するようにしてもよい。
このように、スクラバー水中にオゾン(O3)を圧入し電気分解するようにすると、オゾン(O3)から酸素ラジカル(・O)を発生させることができる。
オゾン(O3)含有水を電気分解すると3つの酸素ラジカル(・O)が生成するが、オゾンの酸化電位は2.07Vであるのに対し酸素ラジカル1つの酸化電位は2.42Vであり、酸素ラジカル3つでは2.42V×3=7.26Vとなり、もともとのオゾンの酸化電位2.07Vの3.5倍(7.26V÷2.07V=3.5)となる。
また、スクラバー水中に次亜塩素酸ソーダ水を注入して電気分解するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
アンモニアが低減しほぼ定着した状態で硝酸を還元性助剤により低減することができるので、硝酸とアンモニアを含む窒素含有排水の物理化学的な処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の窒素含有排水の処理方法の実施形態を説明するスクラバー槽の構造図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
この実施形態の窒素含有排水の処理方法は、硝酸とアンモニアを含有する排水について、前記アンモニアを低減させる工程と、アンモニアが低減した状態で硝酸を還元性助剤で低減する工程とを有する。還元性助剤として30%チオ硫酸ナトリウムを用いた。
【0016】
また、アンモニアを低減させる工程で電気分解するようにしており、アンモニアを陽極酸化で硝酸や窒素に変化させることによりアンモニアが低減した。電気分解は無隔膜電極で行い、電極としてセラミック電極を用いた。
【0017】
さらに、アンモニアを低減させる工程で酸化剤を添加しており、アンモニアを硝酸や窒素に変化させて低減することができる。酸化剤として、35%過酸化水素水、12%次亜塩素酸ソーダを用いた。また、アンモニアや硝酸を活性炭により低減するようにした。
【0018】
図1に示すように、アンモニアを含む揮発ガスGをダクトDを介してスクラバー槽Sで脱臭する工程を有し、前記スクラバー槽S内でスクラバー水Wを霧状に噴霧して揮発ガスGを取り組むようにした。
スクラバー水Wの噴霧は、略メガホン状の拡散手段1をモータMにより高速で回転駆動(約1,800rpm)し、前記拡散手段1の内周面に沿わせて遠心力により離散させることにより、前記拡散手段1の端縁からスクラバー槽S中へと霧状に発散させるようにした。
【0019】
そして、スクラバー槽Sではスクラバー水Wを上方から微細な霧状に噴霧して循環し、アンモニアを含む揮発ガスGをスクラバー水中に取り込むようにした。
また、前記スクラバー水内に微細気泡(マイクロバブル)Bを循環ライン中に圧入することにより共存させ、前記微細気泡の破裂・破断時の衝撃エネルギーによりスクラバー水W中に攪拌効果を及ぼすようにした。
【0020】
さらに、前記スクラバー水Wの循環ラインL中にオゾン(O3)を圧入し電解機構Eで電気分解するようにしており、オゾン(O3)から酸素ラジカル(・O)を発生させるようにした。
また、スクラバー水Wの循環ラインL中に次亜塩素酸ソーダ(12% NaOCl)水を注入して電気分解して電解塩素を発生させるようにした(スクラバー水の残留塩素濃度 約200ppm)。
【0021】
次に、この実施形態の窒素含有排水の処理方法の使用状態を説明する。
この窒素含有排水の処理方法は、硝酸とアンモニアを含有する排水について、前記アンモニアを低減させる工程と、アンモニアが低減した状態で硝酸を還元性助剤で低減する工程とを有するので、アンモニアが低減しほぼ定着した状態で硝酸を還元性助剤(30%チオ硫酸ナトリウム)により低減することができ、硝酸とアンモニアを含む窒素含有排水の物理化学的に処理することができた。
【0022】
そして、微細気泡を有するオゾン水の電解水を利用したので、微細気泡が破裂した際に発生する衝撃エネルギー(衝撃波)と、オゾン含有水の電気分解により酸素ラジカル(・O)が生成した高い酸化力の相乗効果によって浄化することができ、アンモニア臭がする揮発ガスを高度に脱臭処理することができた。
【0023】
〔実施例1〕
硝酸とアンモニアを含有する排水は、硝酸7,400ppm、亜硝酸1.6ppm、アンモニア4,128ppmであった。この排水に35%過酸化水素水(酸化剤)を添加(2%)し、電気分解(4-5A/dm2)し、活性炭1に通すと、硝酸3,575ppm、亜硝酸ND、アンモニア1,903ppmであった。続いて活性炭2に通すと、硝酸3,300ppm、亜硝酸ND、アンモニア1,306ppmであった。
そして、30%チオ硫酸ナトリウム(還元性助剤)を添加(3%)すると、硝酸10ppm、亜硝酸ND、アンモニア1,336ppmに低減していた。
【0024】
〔比較例1〕
硝酸とアンモニアを含有する排水は、硝酸7,400ppm、亜硝酸1.6ppm、アンモニア4,128ppmであった。この排水に35%過酸化水素水(酸化剤)を添加(2%)し、電気分解(4-5A/dm2)し、活性炭1に通すと、硝酸3,575ppm、亜硝酸ND、アンモニア1,903ppmであった。続いて活性炭2に通すと、硝酸3,300ppm、亜硝酸ND、アンモニア1,306ppmであった。
【0025】
〔実施例2〕
硝酸とアンモニアを含有する排水は、硝酸7,400ppm、亜硝酸1.6ppm、アンモニア4,128ppmであった。この排水に35%過酸化水素水(酸化剤)を添加(2%)し、電気分解(4-5A/dm2)し、活性炭1に通すと、硝酸4,525ppm、亜硝酸ND、アンモニア1,909ppmであった。続いて活性炭2に通すと、硝酸1,250ppm、亜硝酸ND、アンモニア2,661ppmであった。次いで、12%次亜塩素酸ソーダを添加(3%)し、活性炭3、活性炭4に通した。
そして、30%チオ硫酸ナトリウム(還元性助剤)を添加(3%)すると、硝酸17ppm、亜硝酸ND、アンモニア581ppmに低減していた。
【0026】
〔比較例2〕
硝酸とアンモニアを含有する排水は、硝酸7,400ppm、亜硝酸1.6ppm、アンモニア4,128ppmであった。この排水に35%過酸化水素水(酸化剤)を添加(2%)し、電気分解(4-5A/dm2)し、活性炭1に通すと、硝酸4,525ppm、亜硝酸ND、アンモニア1,909ppmであった。続いて活性炭2に通すと、硝酸1,250ppm、亜硝酸ND、アンモニア2,661ppmであった。次いで、12%次亜塩素酸ソーダを添加(3%)し、活性炭3、活性炭4に通した。
【産業上の利用可能性】
【0027】
硝酸とアンモニアを含む窒素含有排水を物理化学的に処理することができるることによって、種々の窒素含有排水の処理方法の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 拡散手段
G 揮発ガス
S スクラバー槽
W スクラバー水