(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033551
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】光ファイバの製造装置
(51)【国際特許分類】
C03C 25/104 20180101AFI20240306BHJP
C03C 25/12 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C03C25/104
C03C25/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137189
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】岡本 潤
(72)【発明者】
【氏名】山城 健司
【テーマコード(参考)】
4G060
【Fターム(参考)】
4G060AA01
4G060AD51
4G060AD59
(57)【要約】
【課題】 被覆層を安定して形成し得る光ファイバの製造装置を提供する。
【解決手段】 光ファイバ裸線1Nと、光ファイバ裸線1Nの外周面を被覆する被覆層20とを有する光ファイバの製造装置100は、光ファイバ裸線1Nに被覆層20となる液状樹脂LRを塗布し、塗布された液状樹脂LRを硬化して被覆層20を形成する被覆層形成部40と、液状樹脂LRを貯留するタンク62a,62bを有し被覆層形成部40にタンク62a,62bに貯留される液状樹脂LRを供給する供給部60と、液状樹脂LRを貯留する補給タンク71及び脱気部72を有し、脱気部72を介して、補給タンク71に貯留される液状樹脂LRをタンク62a,62bに供給する補給部70と、を備え、脱気部72は、上下方向に延在し液状樹脂LRが流れる流路FP、及び流路FPの上部と外部とを連通する排出路を有する本体部73と、流路を加熱する加熱部77とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ裸線と、前記光ファイバ裸線の外周面を被覆する被覆層とを有する光ファイバの製造装置であって、
前記光ファイバ裸線に前記被覆層となる液状樹脂を塗布し、塗布された前記液状樹脂を硬化して前記被覆層を形成する被覆層形成部と、
タンクを有し、前記タンクに貯留される前記液状樹脂を前記被覆層形成部に供給する供給部と、
前記液状樹脂を貯留する補給タンク及び脱気部を有し、前記脱気部を介して、前記補給タンクに貯留される前記液状樹脂を前記タンクに供給する補給部と、
を備え、
前記脱気部は、上下方向に延在し前記液状樹脂が流れる流路、及び前記流路の上部と外部とを連通する排出路を有する本体部と、前記流路を加熱する加熱部とを有する
ことを特徴とする光ファイバの製造装置。
【請求項2】
前記流路は前記タンクより上方に位置し、
前記補給タンクは前記流路より上方に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの製造装置。
【請求項3】
前記排出路に設けられるバルブと、前記排出路の前記バルブより前記流路側の区間または前記流路における前記液状樹脂の液面が所定位置より下方に位置するか否かを判定する液面判定部と、バルブ制御部と、を更に備え、
前記バルブ制御部は、前記液面判定部によって前記液状樹脂の液面が前記所定位置より下方に位置すると判定された場合に、前記バルブを開くように制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバの製造装置。
【請求項4】
異常判定部を更に備え、
前記異常判定部は、前記バルブが開いてから所定期間経過後において前記液状樹脂の液面が前記所定位置より下方に位置すると前記液面判定部が判定する場合、所定の信号を出力する
ことを特徴とする請求項3に記載の光ファイバの製造装置。
【請求項5】
供給制御部を更に備え、
前記供給制御部は、前記タンクに貯留される前記液状樹脂の重量に基づいて、前記補給部から前記タンクへ供給される前記液状樹脂の単位時間当たりの供給量が変化するように前記補給部を制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバの製造装置。
【請求項6】
前記供給制御部は、前記タンクに貯留される前記液状樹脂の重量が第1閾値以下となる場合に、前記補給部から前記タンクへの前記液状樹脂の供給が開始されるように、前記補給部を制御する
ことを特徴とする請求項5に記載の光ファイバの製造装置。
【請求項7】
前記供給制御部は、前記タンクに貯留される前記液状樹脂の重量が前記第1閾値より重い第2閾値以上となる場合に、前記補給部から前記タンクへの前記液状樹脂の供給が停止されるように、前記補給部を制御する
ことを特徴とする請求項6に記載の光ファイバの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ用母材から線引きされる光ファイバ裸線の外周面が被覆層によって被覆される光ファイバが知られており、下記特許文献1には、このような光ファイバの製造装置が開示されている。
【0003】
下記特許文献1の光ファイバの製造装置は、被覆層形成部と、供給部と、補給部と、を備えている。被覆層形成部は、光ファイバ用母材から線引きされる光ファイバ裸線の外周面に液状樹脂を塗布し、塗布した液状樹脂を硬化させて被覆層を形成する。供給部は、タンクに貯留される液状樹脂を被覆層形成部に供給し、補給部は、補給タンクに貯留される液状樹脂を供給部のタンクに供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような光ファイバの製造装置では、被覆層形成部に供給される液状樹脂に気泡が含まれていると、被覆層に気泡が形成される等の不良が生じて、被覆層を安定して形成できない場合がある。上記特許文献1では、タンクに液状樹脂が流入する際の気泡の発生については考慮されているが、液状樹脂に含まれる気泡の除去についてはされていない。このため、液状樹脂に含まれる気泡を除去して、被覆層を安定して形成したいとの要望がある。
【0006】
そこで、本発明は、被覆層を安定して形成し得る光ファイバの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様1は、光ファイバ裸線と、前記光ファイバ裸線の外周面を被覆する被覆層とを有する光ファイバの製造装置であって、前記光ファイバ裸線に前記被覆層となる液状樹脂を塗布し、塗布された前記液状樹脂を硬化して前記被覆層を形成する被覆層形成部と、タンクを有し、前記タンクに貯留される前記液状樹脂を前記被覆層形成部に供給する供給部と、補給タンク及び脱気部を有し、前記脱気部を介して、前記補給タンクに貯留される前記液状樹脂を前記タンクに供給する補給部と、を備え、前記脱気部は、上下方向に延在し前記液状樹脂が流れる流路、及び前記流路の上部と外部とを連通する排出路を有する本体部と、前記流路を加熱する加熱部とを有することを特徴とするものである。
【0008】
態様1によれば、補給タンクに貯留される液状樹脂が脱気部を介してタンクに供給される。上記のように、脱気部の本体部は、上下方向に延在し液状樹脂が流れる流路、及び流路の上部と外部とを連通する排出路を有し、本体部の流路が加熱部によって加熱される。このため、この流路における液状樹脂が加熱されて液状樹脂の粘性が低下し、液状樹脂に含まれる気泡が上昇し、当該気泡の空気を排出路から外部に排出し得る。従って、態様1によれば、液状樹脂に含まれる気泡を除去し得、被覆層を安定して形成し得る。
【0009】
本発明の態様2は、態様1の光ファイバの製造装置において、前記流路は前記タンクより上方に位置し、前記補給タンクは前記流路より上方に位置することを特徴とする。
【0010】
態様2によれば、液状樹脂を、当該液状樹脂の自重によって、補給タンクから脱気部を介してタンクに供給し得る。このため、ポンプ等が不要となる分、安価な光ファイバの製造装置を実現し得る。
【0011】
本発明の態様3は、態様1または態様2の光ファイバの製造装置において、前記排出路に設けられるバルブと、前記排出路の前記バルブより前記流路側の区間または前記流路における前記液状樹脂の液面が所定位置より下方に位置するか否かを判定する液面判定部と、バルブ制御部と、を更に備え、前記バルブ制御部は、前記液面判定部によって前記液状樹脂の液面が前記所定位置より下方に位置すると判定された場合に、前記バルブを開くように制御する。
【0012】
態様3によれば、気泡の除去を自動で行うことができ、その結果、気泡の除去を容易にし得る。
【0013】
本発明の態様4は、態様3の光ファイバの製造装置において、異常判定部を更に備え、前記異常判定部は、前記バルブが開いてから所定期間経過後において前記液状樹脂の液面が前記所定位置より下方に位置すると前記液面判定部が判定する場合、所定の信号を出力することを特徴とする。
【0014】
補給タンクから本体部への液状樹脂の単位時間当たりの供給量が少なかったり、当該供給が停止していたりすると、バルブを開いても空気が排出された排出路内の空間に液状樹脂が溜まらずに、液状樹脂の液面が上昇しないことがある。態様4によれば、このような異常状態を検知し得る。
【0015】
本発明の態様5は、態様1から態様4のいずれか一つの光ファイバの製造装置において、供給制御部を更に備え、前記供給制御部は、前記タンクに貯留される前記液状樹脂の重量に基づいて、前記補給部から前記タンクへ供給される前記液状樹脂の単位時間当たりの供給量が変化するように前記補給部を制御することを特徴とする。
【0016】
態様5によれば、例えば、補給タンクからタンクへの液状樹脂の供給の開始や供給の停止を自動で行う事ができ得、その結果、補給タンクからタンクへの液状樹脂の供給を容易にし得る。
【0017】
本発明の態様6は、態様5の光ファイバの製造装置において、前記供給制御部は、前記タンクに貯留される前記液状樹脂の重量が第1閾値以下となる場合に、前記補給部から前記タンクへの前記液状樹脂の供給が開始されるように、前記補給部を制御することを特徴とする。
【0018】
態様6によれば、補給タンクからタンクへの液状樹脂の供給の開始を自動で行うことができ、その結果、補給タンクからタンクへの液状樹脂の供給を容易にし得る。
【0019】
本発明の態様7は、態様5または態様6の光ファイバの製造装置において、前記供給制御部は、前記タンクに貯留される前記液状樹脂の重量が第1閾値より重い第2閾値以上となる場合に、前記補給部から前記タンクへの前記液状樹脂の供給が停止されるように、前記補給部を制御することを特徴とする。
【0020】
態様7によれば、補給タンクからタンクへの液状樹脂の供給の停止を自動で行うことができ、その結果、補給タンクからタンクへの液状樹脂の供給を容易にし得る。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、被覆層を安定して形成し得る光ファイバの製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る光ファイバの長手方向に垂直な断面の様子を概略的に示す図である。
【
図2】
図1に示す光ファイバを製造するための光ファイバ用母材の長手方向に垂直な断面の様子を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る光ファイバの製造装置を概略的に示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る光ファイバの製造方法の工程を示すフローチャートである。
【
図5】変形例における脱気部を概略的に示す図である。
【
図6】別の変形例における脱気部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る光ファイバの製造装置を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、本明細書では、理解を容易にするために、各部材の寸法が誇張して示されている場合がある。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバの長手方向に垂直な断面の様子を概略的に示す図である。
図1に示すように、本実施形態の光ファイバ1は、光ファイバ裸線1Nと、光ファイバ裸線1Nの外周面を被覆する被覆層20と、を主な構成として備える。本実施形態の光ファイバ裸線1Nは、コア10、及び当該コア10の外周面を囲むクラッド11から成る。当該断面におけるコア10及びクラッド11の外形は円形とされ、コア10はクラッド11の中心に配置されている。光ファイバ裸線1Nの直径は、特に制限されないが、例えば、125μmである。
【0025】
コア10の屈折率はクラッド11の屈折率よりも高くされる。本実施形態では、コア10はゲルマニウム(Ge)等の屈折率が高くなるドーパントが添加されたシリカガラスからなり、クラッド11は何ら添加物の無いシリカガラスからなる。なお、コア10が何ら添加物の無いシリカガラスからなり、クラッド11がフッ素(F)等の屈折率が低くなるドーパントが添加されたシリカガラスからなっていてもよい。また、コア10が屈折率を高くするドーパントが添加されたシリカガラスからなり、クラッド11が屈折率を低くするドーパントが添加されたシリカガラスからなっていてもよい。また、屈折率を高くするドーパント及び屈折率を低くするドーパントは特に制限されるものではない。
【0026】
被覆層20は、樹脂から成り、被覆層20によって光ファイバ裸線1Nが保護される。被覆層20を構成する樹脂として、例えば紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0027】
図2は、
図1に示す光ファイバ1を製造するための光ファイバ用母材の長手方向に垂直な断面の様子を概略的に示す図である。
図2に示すように、光ファイバ用母材1Pは、コア10となるロッド状のコアガラス体10Pと、コアガラス体10Pの外周面を囲みクラッド11となるクラッドガラス体11Pとから構成される。本実施形態では、当該断面におけるコアガラス体10P及びクラッドガラス体11Pの外形は円形であり、コアガラス体10Pはクラッドガラス体11Pの中心に配置されている。
【0028】
図3は、本実施形態に係る光ファイバの製造装置を概略的に示す図である。
図3に示すように、光ファイバの製造装置100は、紡糸炉30と、冷却部35と、被覆層形成部40と、ターンプーリ50と、引取部51と、巻取部52と、通知部55と、供給部60と、補給部70と、制御部COと、メモリMEと、を主な構成として備える。
【0029】
制御部COは、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置から成る。また、制御部COは、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。
【0030】
メモリMEは、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体記録媒体が好適であるが、光学式記録媒体や磁気記録媒体等の任意の形式の記録媒体を包含し得る。本実施形態では、メモリMEには、各種処理を実行するためのプログラム、及び情報が記憶される。制御部COは、メモリMEからプログラム及び情報を読み出し、この状態において供給制御部C1、バルブ制御部C2、液面判定部C3、及び異常判定部C4を備える。以下に説明するように、光ファイバの製造装置100の幾つかの構成が供給制御部C1及びバルブ制御部C2によって制御される。液面判定部C3、及び異常判定部C4については、後述する。
【0031】
紡糸炉30は、加熱部31によって光ファイバ用母材1Pを下端側から加熱する炉である。後に再び説明するが、この加熱によって光ファイバ用母材1Pの下端部が溶融状態となり、光ファイバ裸線1Nが線引きされる。
【0032】
冷却部35は、紡糸炉30の下方に配置され、光ファイバ裸線1Nを冷却する。冷却部35の構成として、例えば、冷却用ガスを用いて光ファイバ裸線1Nを冷却する構成が挙げられ、冷却用ガスとして、例えば、ヘリウムと窒素との混合ガス等が挙げられる。
【0033】
被覆層形成部40は、冷却部35の下方に配置され、塗布部41と硬化部45とを有し、光ファイバ裸線1Nに被覆層20を形成する。本実施形態の塗布部41は、被覆層20となる液状樹脂LRが貯留されるポッドから成り、当該塗布部41を通過する光ファイバ裸線1Nの外周面に液状樹脂LRを塗布する。硬化部45は、塗布部41の下方に配置され、塗布部41で塗布された液状樹脂LRを硬化し、被覆層20が形成されて、光ファイバ裸線1Nが光ファイバ1となる。
【0034】
本実施形態では、液状樹脂LRは、紫外線硬化性樹脂であり、硬化部45は、塗布された液状樹脂LRに紫外線を照射する構成とされる。なお、被覆層20を構成する樹脂が熱硬化性樹脂である場合、硬化部45は塗布された液状樹脂に熱を加える構成とされる。
【0035】
引取部51は、被覆層形成部40の下方に配置されるターンプーリ50によって方向が変換された光ファイバ1を引き取る。被覆層20によって光ファイバ裸線1Nを被覆したものが光ファイバ1であるため、この速度は、光ファイバ裸線1Nの線引き速度でもあると理解できる。巻取部52は、引取部51を通過した光ファイバ1を巻き取る。
【0036】
供給部60は、被覆層形成部40の塗布部41に被覆層20となる液状樹脂LRを供給する。本実施形態では、供給部60は、第1供給ユニット60aと、第2供給ユニット60bと、切替部66と、を主な構成として備える。本実施形態では、第1供給ユニット60a及び第2供給ユニット60bは、同様の構成とされる。第1供給ユニット60a及び第2供給ユニット60bのそれぞれは、ケース61a,61bと、ケース61a,61bに収容され可撓性を有するタンク62a,62bと、ケース61a,61bの内部の圧力を調節する加圧部63a,63bと、配管64a,64aと、重量計65a,65bと、を主な構成として備える。
【0037】
本実施形態のタンク62a,62bは樹脂製とされるが、タンク62a,62bを構成する材料は制限されない。タンク62a,62bには、液状樹脂LRが貯留される。配管64a,64bの一端がタンク62a,62aに接続され、他端が切替部66に接続される。切替部66には、一端が塗布部41に接続される配管67の他端が接続される。本実施形態では、タンク62aの容量とタンク62bの容量とは同じとされるが、異なっていてもよい。
【0038】
加圧部63a,63bによってケース61a,61bの内部が加圧されることでタンク62a,62bが収縮し、それぞれのタンク62a,62bから液状樹脂LRが切替部66に送られる。加圧部63a,63bは、供給制御部C1からの制御信号により、ケース61a,61bの内部の圧力を調節して、液状樹脂LRの単位時間当たりの供給量を調節する。
【0039】
切替部66は、供給制御部C1からの制御信号により、第1供給ユニット60aのタンク62aからの液状樹脂LRを塗布部41に供給する第1供給状態と、第2供給ユニット60bのタンク62bからの液状樹脂LRを塗布部41に供給する第2供給状態とを切り替える。つまり、供給部60では、切替部66が第1供給状態である場合、第1供給ユニット60aが塗布部41に液状樹脂LRを供給し、切替部66が第2供給状態である場合、第2供給ユニット60bが塗布部41に液状樹脂LRを供給する。切替部66として、例えば電磁弁が挙げられる。
【0040】
重量計65a,65bは、タンク62a,62bに貯留される液状樹脂LRの重量を測定し、測定した重量の値を示す信号を制御部COに出力する。本実施形態では、重量計65a,65bは、ケース61a,61b、タンク62a,62b、及び加圧部63a,63bの合計の重量を測定し、予め設定されるタンク62a,62bが空の状態におけるこの合計の重量を測定した合計の重量から減じることで、液状樹脂LRの重量を測定する。なお、液状樹脂LRの重量の測定方法は制限されるものではない。
【0041】
本実施形態の補給部70は、液状樹脂LRを貯留する補給タンク71と、脱気部72と、切替部80と、を主な構成として備え、脱気部72を介して、補給タンク71に貯留される液状樹脂LRを供給部60のタンク62a,62bに供給する。補給タンク71の液状樹脂LRの容量は、供給部60のタンク62a,62aの容量の合計より多いが、制限されるものではない。補給タンク71の下部には配管81の一端が接続され、補給タンク71の上部には補給タンク71の内部の圧力を調節する加圧部71aが取り付けられている。加圧部71aは、供給制御部C1からの制御信号により、補給タンク71の内部の圧力を調節して、配管81に送られる液状樹脂LRの単位時間当たりの供給量を調節する。補給タンク71として、例えば、液状樹脂LRを購入する際に貯留されるドラム缶が挙げられる。
【0042】
本実施形態の脱気部72は、本体部73と、樹脂センサ部75と、加熱部77と、を主な構成として備える。本実施形態の本体部73は、メイン部74と排出管76とを有する。メイン部74は上下方向に延在する筒状の側壁74sと、側壁74sの上側の開口を塞ぐ上蓋74uと、側壁74sの下側の開口を塞ぐ下蓋74dとから成る。側壁74sの上部には、一端が補給タンク71に接続される配管81の他端が接続され、側壁74sの下部には、配管82の一端が接続され、配管82の他端が切替部80に接続される。このようなメイン部74の内部空間には、補給タンク71に貯留される液状樹脂LRが配管81から流入し、流入した液状樹脂LRは下方に流れて配管82に流出し、液状樹脂LRが切替部80に送られる。このため、メイン部74の内部空間は、上下方向に延在し液状樹脂LRが流れる流路FPであると理解できる。なお、流路LFの延在方向である上下方向には、鉛直方向と共に鉛直方向に対して斜めに傾斜する方向も含まれる。光ファイバの製造装置100の高さ方向は、一般的に鉛直方向である。このため、流路LFの延在方向は、光ファイバの製造装置100の高さ方向であってもよく、当該高さ方向に対して斜めに傾斜する方向であってもよいと理解できる。なお、流路LFの延在方向の鉛直方向に対する傾きは45°以下であることが好ましい。メイン部74の内部空間の容積は、供給部60のタンク62a,62aのそれぞれの容量より小さい。また、メイン部74の内部空間の水平方向の幅は、配管81,82の直径より広い。また、内部空間の水平方向の幅は、上下方向の幅より狭く、内部空間は縦長である。
【0043】
排出管76の一端はメイン部74の上部に接続され、排出管76の他端は開放されている。このため、排出管76は、流路FPとしてのメイン部74の内部空間の上部と外部とを連通する排出路であると理解できる。本実施形態では、排出管76は上下方向に延在し、排出管76の一端はメイン部74の上蓋74uに接続され、排出管76とメイン部74との接続部は、上記の所定位置PTより上方に位置している。また、排出管76には、バルブ78が設けられており、バルブ78は、バルブ制御部C2からの制御信号により、開閉する。バルブ78として、例えば電磁弁が挙げられる。
【0044】
樹脂センサ部75は、排出路である排出管76のバルブ78よりメイン部74側の区間または流路FPであるメイン部74の内部空間における上下方向の所定位置PTに液状樹脂LRがあるか否か検出し、検出結果を示す信号を制御部COに出力する。
図3では、所定位置PTが点線で示されている。本実施形態では、樹脂センサ部75はメイン部74に取り付けられ、所定位置PTは、配管81とメイン部74との接続部及び配管82とメイン部74との接続部より上方の位置である。つまり、所定位置PTは、配管81からメイン部74の内部空間に流入する液状樹脂LRの流入口、及びメイン部74の内部空間から配管82に流出する液状樹脂LRの流出口より上方の位置である。なお、樹脂センサ部75は排出管76におけるバルブ78よりメイン部74側の区間に取り付けられてもよく、この場合、所定位置PTは当該区間に位置する。
【0045】
本実施形態の樹脂センサ部75は、非接触型のセンサである静電容量型近接センサであるが制限されるものではない。樹脂センサ部75は、例えば、接触型のセンサであってもよく、メイン部74の内部空間における液状樹脂LRの液面の上下方向の位置を検出するレベルセンサであってもよく、当該レベルセンサは接触型でも非接触型もよい。なお、液状樹脂LRが紫外線硬化性樹脂の場合、液状樹脂LRの硬化を抑制する観点では、樹脂センサ部75は、光を用いないセンサであることが好ましい。
【0046】
加熱部77は、メイン部74を加熱することで、液状樹脂LRの流路FPであるメイン部74の内部空間を加熱し、当該空間を流れる液状樹脂LRが加熱される。本実施形態の加熱部77は、メイン部74の側壁74sの外周面に巻き付けられるリボンヒータであるが、制限されるものではなく、例えば、熱媒体として温水を用いる加熱装置であってもよい。
【0047】
本実施形態の切替部80には、一端が第1供給ユニット60aのタンク62aに接続される配管83aと、一端が第2供給ユニット60bのタンク62bに接続される配管83bとが接続される。そして、切替部80は、供給制御部C1からの制御信号により、配管82からの液状樹脂LRを配管83aからタンク62aに供給する第1補給状態と、配管82からの液状樹脂LRを配管83bからタンク62bに供給する第2補給状態と、配管82からの液状樹脂LRをタンク62a及びタンク62bに非供給とする非補給状態とを切り替える。つまり、補給部70は、切替部80が第1補給状態である場合、本体部73を介して補給タンク71に貯留される液状樹脂LRをタンク62aに供給し、切替部80が第2補給状態である場合、本体部73を介して補給タンク71に貯留される液状樹脂LRをタンク62bに供給し、切替部80が非補給状態である場合、液状樹脂LRをタンク62a及びタンク62bに非供給とする。切替部80として、例えば電磁弁が挙げられる。
【0048】
本実施形態の補給部70では、本体部73のメイン部74の内部空間は、タンク62a,62bより上方に位置し、補給タンク71はメイン部74の内部空間より上方に位置する。このため、補給部70は、補給タンク71の内部の圧力を加圧部71aによって上昇させなくても、液状樹脂LRの自重によって、補給タンク71から脱気部72を介してタンク62a,62bに供給し得る。このため、本実施形態の補給部70は、補給タンク71の内部の圧力が高くなることを抑制し得、補給タンク71において液状樹脂LRに気泡が含まれ難くし得る。なお、メイン部74、タンク62a,62b、及び補給タンク71の上下方向の位置関係は制限されるものではない。
【0049】
次に、制御部COの液面判定部C3及び異常判定部C4について説明する。本実施形態の液面判定部C3は、樹脂センサ部75からの信号に基づいて、排出路である排出管76のバルブ78よりメイン部74側の区間または流路FPであるメイン部74の内部空間における液状樹脂LRの液面が所定位置PTより下方に位置するか否かを判定する。具体的には、液面判定部C3は、樹脂センサ部75から所定位置PTに液状樹脂LRがあることを示す信号が入力する場合、液面が所定位置PTより下方に位置しないと判定し、判定結果を示す信号を供給制御部C1に出力する。また、液面判定部C3は、樹脂センサ部75から所定位置PTに液状樹脂LRが無いことを示す信号が入力する場合、液面が所定位置PTより下方に位置すると判定し、判定結果を示す信号を出力する。このため、液面判定部C3の判定とは、樹脂センサ部75からの信号に応じて、出力する信号を変化させることである。
【0050】
本実施形態の異常判定部C4は、バルブ78が開いてから所定期間経過後において液状樹脂LRの液面が所定位置PTより下方に位置すると液面判定部C3が判定する場合、所定の信号を通知部55に出力する。
【0051】
通知部55は、異常判定部C4から上記の所定の信号が入力する場合、所定の通知を行う。通知部55として、例えば、ディスプレイ及びスピーカーの少なくとも一方を有する構成が挙げられる。
【0052】
次に、光ファイバの製造装置100を用いて光ファイバ1を製造する方法について説明する。
【0053】
図4は、本実施形態に係る光ファイバ1の製造方法の工程を示すフローチャートである。
図4に示すように、この製造方法は、線引工程P1と、被覆層形成工程P2と、樹脂補給工程P3とを含んでいる。
【0054】
<線引工程P1>
まず、本工程を行う準備段階として、
図2に示される光ファイバ用母材1Pを購入等によって準備し、光ファイバの製造装置100の紡糸炉30内に設置し、加熱部31によって光ファイバ用母材1Pの下端部を加熱する。光ファイバ用母材1Pの下端部は、溶融状態となり、その結果、当該下端部から光ファイバ裸線1Nが引き出され、この光ファイバ裸線1Nは冷却部35を通過することで冷却される。本実施形態では、光ファイバ裸線1Nの外径が目標値となるように、紡糸炉30の温度及び光ファイバ裸線1Nの線引き速度を調節する。
【0055】
<被覆層形成工程P2>
本工程は、光ファイバ裸線1Nに、液状樹脂LRを塗布し、塗布された液状樹脂LRを硬化させて被覆層20を形成する工程である。本実施形態では、冷却部35で冷却された光ファイバ裸線1Nを塗布部41を通過させることで、光ファイバ裸線1Nの外周面に液状樹脂LRを塗布し、塗布された液状樹脂LRを硬化部45によって硬化することで、被覆層20が形成され、光ファイバ裸線1Nが光ファイバ1となる。
【0056】
<樹脂補給工程P3>
本工程は、塗布部41に液状樹脂LRを供給する供給部60のタンク62a,62bに液状樹脂LRを供給する工程である。本実施形態では、光ファイバ裸線1Nの線引きを開始する際、タンク62a,62b及び補給タンク71に液状樹脂LRが貯留され、バルブ78が閉じた状態とされる。そして、供給制御部C1は、切替部66が第1供給状態となり、切替部80が非補給状態となるように、切替部66及び切替部80を制御し、タンク62aの液状樹脂LRを塗布部41へ供給させる。また、供給制御部C1は、タンク62aから塗布部41への単位時間当たりの液状樹脂LRの供給量が第1所定量となるように、加圧部63aを制御する。つまり、供給制御部C1は、このようになるように供給部60及び補給部70を制御する。第1所定量は、例えば被覆層20の厚さによって決まり、本実施形態では、実験等によって予め設定される。
【0057】
次に、供給制御部C1は、タンク62aに貯留される液状樹脂LRの重量が減少し当該重量が第1閾値以下となる場合に、切替部66が第2供給状態となり、切替部80が第1補給状態となるように、切替部66及び切替部80を制御し、タンク62bの液状樹脂LRを塗布部41へ供給させると共に、本体部73を介して補給タンク71に貯留される液状樹脂LRをタンク62aに供給させる。本体部73は加熱部77よって加熱されているため、補給タンク71に貯留される液状樹脂LRは、本体部73を通ることで加熱され、加熱された液状樹脂LRがタンク62aに供給される。また、供給制御部C1は、タンク62bから塗布部41への単位時間当たりの液状樹脂LRの供給量が上記の第1所定量となり、補給タンク71からタンク62aへの単位時間当たりの液状樹脂LRの供給量が上記の第1所定量より多い第2所定量となるように、加圧部63b及び加圧部71aを制御する。つまり、供給制御部C1は、このようになるように供給部60及び補給部70を制御する。このため、本実施形態によれば、補給タンク71からタンク62aへの液状樹脂LRの供給の開始を自動で行うことができ、その結果、補給タンク71からタンク62aへの液状樹脂LRの供給を容易にし得る。なお、上記の第2所定量は、例えば、実験等よって予め設定される。
【0058】
次に、供給制御部C1は、タンク62aに貯留される液状樹脂LRの重量が増加し当該重量が第1閾値より重い第2閾値以上となる場合に、切替部80が非供給状態となるように、切替部80を制御し、補給タンク71からタンク62aへの液状樹脂LRの供給が停止される。つまり、供給制御部C1は、このようになるように補給部70を制御する。このため、本実施形態によれば、補給タンク71からタンク62aへの液状樹脂LRの供給の停止を自動で行うことができ、その結果、補給タンク71からタンク62bへの液状樹脂LRの供給を容易にし得る。
【0059】
本実施形態では、タンク62aの容量とタンク62bの容量は同じとされ、第2所定量は、第1所定量より多い。このため、タンク62bに貯留される液状樹脂LRの重量が第1閾値以下となる前に、タンク62aに貯留される液状樹脂LRの重量が上記の第2閾値以上となる。なお、第2所定量は第1所定量以下であってもよい。
【0060】
次に、供給制御部C1は、タンク62bに貯留される液状樹脂LRの重量が減少し当該重量が上記の第1閾値以下となる場合に、切替部66が第1供給状態となり、切替部80が第2補給状態となるように、切替部66及び切替部80を制御し、タンク62aの液状樹脂LRを塗布部41へ供給させると共に、本体部73を介して補給タンク71に貯留される液状樹脂LRをタンク62bに供給させる。補給タンク71に貯留される液状樹脂LRは、本体部73で加熱され、加熱された液状樹脂LRがタンク62bに供給される。また、供給制御部C1は、タンク62aから塗布部41への単位時間当たりの液状樹脂LRの供給量が上記の第1所定量となり、補給タンク71からタンク62bへの単位時間当たりの液状樹脂LRの供給量が上記の第2所定量となるように、加圧部63a及び加圧部71aを制御する。つまり、供給制御部C1は、このようになるように供給部60及び補給部70を制御する。このため、本実施形態によれば、補給タンク71からタンク62bへの液状樹脂LRの供給の開始を自動で行うことができ、その結果、補給タンク71からタンク62bへの液状樹脂LRの供給を容易にし得る。なお、補給タンク71からタンク62bへ供給する際の第2所定量は、補給タンク71からタンク62aへ供給する際の第2所定量と異なっていてもよい。
【0061】
次に、供給制御部C1は、タンク62bに貯留される液状樹脂LRの重量が増加し当該重量が上記の第2閾値以上となる場合に、切替部80が非供給状態となるように、切替部80を制御し、補給タンク71からタンク62bへの液状樹脂LRの供給が停止される。つまり、供給制御部C1は、このようになるように補給部70を制御する。このため、本実施形態によれば、補給タンク71からタンク62bへの液状樹脂LRの供給の停止を自動で行うことができ、その結果、補給タンク71からタンク62bへの液状樹脂LRの供給を容易にし得る。なお、補給タンク71からタンク62bへ供給を止める際の第2閾値は、補給タンク71からタンク62aへ供給を止める際の第2閾値と異なっていてもよい。
【0062】
このように、供給制御部C1は、液状樹脂LRのタンク62aから塗布部41への供給及び補給タンク71からタンク62bへの供給と、液状樹脂LRのタンク62bから塗布部41への供給及び補給タンク71からタンク62aへの供給とが交互に繰り替えされるように、供給部60及び補給部70を制御する。また、このような供給制御部C1は、タンク62a,62bに貯留される液状樹脂LRの重量に基づいて、補給部70からタンク62a,62bへ供給される液状樹脂LRの単位時間当たりの供給量が、ゼロまたは第2所定量に変化するように補給部70を制御していると理解できる。
【0063】
また、供給制御部C1は、液面判定部C3からの信号に基づいて、脱気部72のバルブ78も制御する。上記のように、本体部73におけるメイン部74の内部空間は上下方向に延在し液状樹脂LRが流れる流路FPであり、液状樹脂LRはこの内部空間を通ることで加熱される。このため、液状樹脂LRの粘性が低下し、液状樹脂LRに含まれる気泡が上昇し、排出管76のバルブ78よりメイン部74側の区間及びメイン部74の内部空間から成る部位の上部に空気が溜まる。このようにして、液状樹脂LRに含まれる気泡が除去され、液状樹脂LRの液面が下がる。そして、バルブ制御部C2は、液面判定部C3によって液状樹脂LRの液面が所定位置PTより下方に位置すると判定された場合に、バルブ78を開くように制御する。バルブ78が開くことで、液状樹脂LRの液面が上がり、空気が排出管76から外部に排出される。このため、本実施形態によれば、気泡の除去を自動で行うことができる。
【0064】
また、このように液状樹脂LRの液面が上がり、液面判定部C3によって液状樹脂LRの液面が所定位置PTより下方に位置しないと判定された場合、バルブ制御部C2は、バルブ78を閉じるように制御する。バルブ78が閉じられることで空気の排出が停止される。このため、液状樹脂LRが排出管76から外部に流出することが抑制されると共に、排出管76から塵や埃等が液状樹脂LRに含まれることが抑制される。
【0065】
ところで、補給タンク71から本体部73への液状樹脂LRの単位時間当たりの供給量が少なかったり、当該供給が停止していたりすると、バルブ78を開いても空気が排出された排出管76内の空間に液状樹脂LRが溜まらずに、液状樹脂LRの液面が上昇しないことがある。本実施形態では、異常判定部C4は、バルブ78が開いてから所定期間経過後において液状樹脂LRの液面が所定位置PTより下方に位置すると液面判定部C3が判定する場合、所定の信号を通知部55に出力する。このため、本実施形態によれば、このような異常状態を検知し得る。上記の所定期間は、例えば、実験等によって予め設定される。なお、光ファイバの製造装置100は、通知部55を備えなくてもよく、この場合、制御部COは異常判定部C4を備えなくてもよい。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバの製造装置100は、被覆層形成部40と、供給部60と、補給部70と、を備える。供給部60は、被覆層形成部40にタンク62a,62bに貯留される液状樹脂LRを供給する。補給部70は、脱気部72を介して補給タンク71に貯留される液状樹脂LRをタンク62a,62bに供給する。脱気部72は、本体部73と、加熱部77とを有する。本体部73は、上下方向に延在し液状樹脂LRが流れる流路FPである内部空間を有するメイン部74と、この内部空間の上部と外部とを連通する排出路である排出管76とを有する。加熱部77は、流路FPであるメイン部74の内部空間を加熱する。このため、前述のように、本体部73の内部空間における液状樹脂LRが加熱されて液状樹脂LRの粘性が低下し、液状樹脂LRに含まれる気泡が上昇し、当該気泡の空気を排出管76から外部に排出し得る。従って、本実施形態によれば、液状樹脂LRに含まれる気泡を除去し得、被覆層20を安定して形成し得る。
【0067】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
例えば、上記実施形態では、コア10とクラッド11とを有する光ファイバ裸線1Nを例に説明したが、光ファイバ用母材1Pから線引きされる光ファイバ裸線1Nは制限されるものではない。例えば、コア10の数は複数であってもよく、光ファイバ裸線1Nはマーカーを有していてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、1つの樹脂層から成り光ファイバ裸線1Nを保護する被覆層20を例に説明したが、被覆層20は制限されるものではない。例えば、被覆層20は複数の樹脂層から成る多層構造であってもよい。被覆層20が多層構造である場合、被覆層20のうち最も光ファイバ裸線1N側に位置する樹脂層は、屈折率がクラッド11の屈折率よりも低い外側クラッドとされてもよい。なお、被覆層20が多層構造である場合、塗布部41は、例えば、それぞれの樹脂層となる液状樹脂を貯留する複数のポッドを有し、光ファイバ裸線1Nがこれらポッドを順次通過する構成とされる。また、この場合、光ファイバの製造装置100は、例えば、それぞれのポッドに液状樹脂を供給する複数の供給部60と、それぞれの供給部60に液状樹脂を供給する複数の補給部70とを備える構成とされる。
【0070】
また、上記実施形態では、加圧部71aを備える補給部70を例に説明した。しかし、補給部70は液状樹脂LRを供給部60に供給可能であればよい。例えば、液状樹脂LRを当該液状樹脂LRの自重によって供給部60に供給可能な場合、補給部70は加圧部71aを備えなくてもよい。このような構成によれば、ポンプ等が不要となる分、安価な光ファイバの製造装置を実現し得る。また、ポンプ等によって液状樹脂LRを圧送して供給する場合と比べて、液状樹脂LRに気泡が生じ難くし得る。また、補給部70は、加圧部71aに替わって液状樹脂LRを圧送するポンプ等を備えていてもよい。また、補給部70は複数の補給タンク71を備えていてもよく、この場合、補給部70はそれぞれの補給タンク71に対応する脱気部72を備えていてもよく、それぞれの補給タンク71に貯留される液状樹脂LRを一つの脱気部72を介して供給してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、二つの供給ユニット60a,60bを備える供給部60を例に説明した。しかし、供給ユニットの数は三つ以上であってもよく、一つであってもよい。供給ユニットの数が一つの場合、補給部70は、例えば、液状樹脂LRを圧送するポンプを備え、供給ユニットが被覆層形成部40に液状樹脂LRを供給している際に液状樹脂LRを供給ユニットに供給する。
【0072】
また、上記実施形態では、タンク62a,62bに貯留される液状樹脂LRの重量に基づいて、補給部70からタンク62a,62bへ供給される液状樹脂LRの単位時間当たりの供給量が、ゼロまたは第2所定量に変化するように補給部70を制御する供給制御部C1を例に説明した。しかし、第2所定量は、タンク62a,62bに貯留される液状樹脂LRの重量に基づいて、変化されてもよい。例えば、補給部70からタンク62aへ液状樹脂LRを供給する際の第2所定量は、タンク62aに貯留される液状樹脂LRの重量が少ないほど多くされもよく、補給部70からタンク62bへ液状樹脂LRを供給する際の第2所定量は、タンク62bに貯留される液状樹脂LRの重量が少ないほど多くされもよい。つまり、供給制御部C1は、このようになるように、タンク62a,62bに貯留される液状樹脂LRの重量に基づいて、補給部70からタンク62a,62bへ供給される液状樹脂LRの単位時間当たりの供給量が変化するように補給部70を制御してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、液状樹脂LRの液面が所定位置PTより下方に位置するか否かを判定する液面判定部C3を例に説明した。しかし、液面判定部C3は、液面が所定位置PTより高い別の所定位置より上方に位置するか否かを更に判定してもよい。この場合、例えば、別の所定位置に液状樹脂LRがあるか否か検出する別の樹脂センサ部がメイン部74に取り付けられ、液面判定部C3は、樹脂センサ部75及び別の樹脂センサ部からの信号に基づいて判定を行う。そして、バルブ制御部C2は、液面判定部C3によって別の所定位置より上方に位置すると判定される場合に、バルブ78を閉じるように制御してもよい。また、バルブ制御部C2は、液面判定部C3によって液状樹脂LR液面が所定位置PTより下方に位置すると判定された場合に、バルブ78を予め定められる特定期間だけ開けるように制御してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、バルブ78が設けられた排出管76及びメイン部74を有する本体部73と、加熱部77を備える脱気部72を例に説明した。しかし、脱気部72は、上下方向に延在し液状樹脂LRが流れる流路FP、及び当該流路FPの上部と外部とを連通する排出路を有する本体部と、本体部の流路FPを加熱する加熱部とを有していればよい。例えば、上記実施形態において補給部70が加圧部71aを備えない場合、脱気部72は、バルブ78を備えなくてもよい。この場合、例えば、開放されている排出管76の他端を補給タンク71より上方にさせる。このような構成にすることで、液状樹脂LRが排出管76から外部に流出することを抑制し得る。また、
図5に示すように、本体部73の一部は、液状樹脂LRを供給部60のタンク62a,62bに供給する配管の一部とされてもよい。
【0075】
図5は、変形例における脱気部72を概略的に示す図である。本変形例では、本体部73は、上下方向に延在する配管から成り、本体部73の下方側の端には、一端が切替部80に接続される配管82の他端が接続され、本体部73の上側の端は開放されている。また、本体部73の途中には、一端が補給タンク71に接続される配管81の他端が接続される。本体部73における配管81が接続される部位より上側の区間73uにはバルブ78が設けられ、当該部位より下側の区間73dには加熱部77が設けられる。本変形例では、上下方向に延在し液状樹脂LRが流れる流路FPが本体部73の区間73dであり、この流路FPの上部と外部とを連通する排出路が本体部73の区間73uである。そして、区間73dの液状樹脂LRが加熱されて液状樹脂LRの粘性が低下し、液状樹脂LRに含まれる気泡が上昇し、区間73uのバルブ78より区間73d側及び区間73dから成る部位の上部に空気が溜まり、当該空気を区間73uから外部に排出し得る。
【0076】
また、脱気部72は、
図6に示すような構成であってもよい。
図6は、別の変形例における脱気部72を概略的に示す図である。本変形例では、本体部73は、上方に向かって凸状に湾曲する配管731と、上下方向に延在し上側の端が配管731の一端に接続され配管732と、一端が配管731における最も上方に位置する部位に接続される配管733とから成る。配管731の配管732側と反対側の端には、一端が補給タンク71に接続される配管81の他端が接続され、配管732の下側の端には、一端が切替部80に接続される配管82の他端が接続され、配管733の上側の端は開放されている。配管733にはバルブ78が設けられ、配管732には加熱部77が設けられる。本変形例では、上下方向に延在し液状樹脂LRが流れる流路FPが配管731における配管733が接続される部位より配管732側の区間及び配管732であり、この流路FPの上部と外部とを連通する排出路が配管733である。そして、配管732の液状樹脂LRが加熱されて液状樹脂LRの粘性が低下し、液状樹脂LRに含まれる気泡が上昇する。そして、配管733のバルブ78より配管731側、配管731における配管733が接続される部位より配管732側の区間、及び配管732から成る部位の上部に空気が溜まり、当該空気を配管733から外部に排出し得る。なお、配管731の配管732側と反対側の端に配管82が接続され、配管732の下側の端に配管81が接続されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、被覆層を安定して形成し得る光ファイバの製造装置が提供され、光ファイバに関連する種々の分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1・・・光ファイバ
1N・・・光ファイバ裸線
20・・・被覆層
LR・・・液状樹脂
40・・・被覆層形成部
41・・・塗布部
45・・・硬化部
60・・・供給部
62a,62b・・・タンク
70・・・補給部
71・・・補給タンク
72・・・脱気部
73・・・本体部
74・・・メイン部
76・・・排出管
77・・・加熱部
78・・・バルブ
CO・・・制御部
C1・・・供給制御部
C2・・・バルブ制御部
C3・・・液面判定部
C4・・・異常判定部