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特開2024-33557水田耕作地における除草装置及び本装置を用いる除草方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033557
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】水田耕作地における除草装置及び本装置を用いる除草方法
(51)【国際特許分類】
A01B 39/18 20060101AFI20240306BHJP
A01B 39/28 20060101ALI20240306BHJP
A01M 21/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A01B39/18 Z
A01B39/28
A01M21/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137199
(22)【出願日】2022-08-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】522345940
【氏名又は名称】本間 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100092107
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 達也
(72)【発明者】
【氏名】本間 茂雄
【テーマコード(参考)】
2B034
2B121
【Fターム(参考)】
2B034AA07
2B034BA10
2B034BB01
2B034BC04
2B121AA19
2B121BB22
2B121EA26
2B121FA15
2B121FA16
(57)【要約】
【課題】 本発明は、空気を水田地表面に吹き付けることにより、地面表層の発生初期の雑草を吹き飛ばし、撹拌作用により雑草を水面に浮かばせ、全面除草する。さらに濁らせた水により光を遮断、雑草の成長を抑制する除草装置、及び除草方法を提供する。
【解決手段】 舟体1は枠部や補強材からなる正立方体の底面をウレタン発泡ソフトボードで形成し、空気を貯留できる空洞部5を有し、舟体1上部の進行方向前方にブロアー3を設け、進行方向後方に推進装置4を設け、舟体1の底部から水底の土壌に向かって、空気を噴射する空気噴射ホース7を備え、空気噴射ホース7は1列に複数個設け、2列目以降は、2cmずつずらして複数列設け、舟体1両側には、噴射空気が拡散しないように板状ガイドボード6を設け、空気噴射ホース7から空気によって田面の雑草を吹き飛ばし、さらに表層土と水を撹拌することで雑草を除去する水田耕作地における除草装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田耕作地での有機栽培による稲作における雑草の除草装置であって、水田耕作地を航行するための舟体を有し、該舟体は正立方体の形状で、空気を貯留できる空洞部を有し、該舟体上部の進行方向前方にブロアーを設け、進行方向後方に推進装置が設けられて、該舟体の底部から水底の土壌に向かってブロアーから送られる空気を噴射する空気噴射ホースからなるノズルを備え、1列が10cm間隔で複数個、これを複数列、2列目から順に数cmずつずらして舟体の底面全体の範囲を除草できるように上記ノズルを設けたことを特徴とする水田耕作地における除草装置。
【請求項2】
田面の上に水を張り、作物を育成する水田耕作地での有機栽培による稲作における雑草の除草装置であって、水田耕作地を航行するための舟体を有し、該舟体は軽量金属材で縦180cm×横180cm×高さ10cmになるように枠材及び補強材で舟体を形成し、該枠体からなる正立方体の底面をウレタン発泡ソフトボードで形成し、その他の面は、アルミ複合板やソフトボードで形成し、空気を貯留できる空洞部を設け、該舟体上部の進行方向前方にブロアーを設け、進行方向後方には推進装置が設けられて、該舟体の底部から水底の土壌に向かって、空気を噴射する空気噴射ホースからなるノズルを備え、該空気の噴射用ホースは1列に10cm間隔で複数個設け、10cm間隔で複数個設けた1列目の空気噴射ホースと同様のものを2列目以降に、2cmずつずらして複数列設け、舟体両側には、噴射空気が拡散しないように板状ガイドボードを設け、当該空気噴射ホースからなるノズルから噴射された空気によって田面の雑草を吹き飛ばし、さらに表層土と水を撹拌することで雑草を除去することを特徴とする水田耕作地における除草装置。
【請求項3】
前記空気噴射ホースからなるノズルから、4m/s以上~9m/s以下の風速で空気を噴射する除草用空気供給手段であるブロアーと、舟体の空洞部を介して接続され、当該空気噴射ホースからなるノズルは、前記田面表面に近づけ、土壌から5mm以下入り込む位置になるように設けたことを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の水田耕作地における除草装置。
【請求項4】
田面の上に水を張り、前記田面に根を張らせる有機栽培による稲作における雑草を除去する除草方法であって、水田耕作地で代掻き後2日~3日で稲を作付けした後、4日~5日が1回目の除草作業で、その後1週間に1回程度、中干時期まで行うもので、請求項1または請求項2に記載の除草装置を航行させて、水田耕作地の雑草を除去することを特徴とする水田耕作地における除草方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田耕作地での有機栽培による稲作における雑草の除草装置、及び本装置を用いる除草方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から泥質培地の上に水を張り、泥質培地に根を張らせることで稲を育成する水田用耕作地における雑草を除去する装置は存在している。
例えば、水田様耕作地を航行する為の航行装置を備えた移動体と、当該移動体から水底の土壌に向かって気体を噴射する気体噴射ノズルとを備え、当該気体噴射ノズルから噴射された気体によって泥質培地を撹拌することで雑草を除去することを特徴とする水田様耕作地における除草装置で、ボートの推進機構とは別の空気流を出力する除草用気体供給手段を設けた除草装置が開示されている。しかし、除草用気体供給手段は、ボートの進行方向後方に左右それぞれ7個を略等間隔にノズルが1列だけ設けられている。また、ボートを浮揚移動させるために、機体噴射ノズルからの噴射に使用される気体を1つのファンによって供給する構成のものか、除草装置の噴射ノズルとは別に移動推進用の航行装置としての推進機構を有するもの(例えば、特許文献1参照)が知られている。
これに対して、本発明の場合は、正立方体、例えば縦180cm×横180cm×高さ13cmの舟形のボートに空洞部を設け、ブロアーから送り込まれる空気を貯める空調スペースを設け、ボート本体上部前方にブロアーを設置し、該ブロアーでボート本体内に空気を送り込めるように構成し、ボート本体上部後方にはエンジンにより動くプロペラを設け、さらに舵取り用羽根を設置し、ラジコンにより推進スピードと旋回をコントロールできるようにした水田耕作地における除草装置を利用して、有機栽培による稲作における雑草の除草対策を除草剤等の農薬を使用せずに行うことを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-185895号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び
図1~
図7を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機栽培による稲作の最大課題は雑草対策である。稲と雑草を比較してみると、雑草は生命力が旺盛で、成長スピード、繁殖力、栄養の吸収力が優れている。
そのため、そのまま放置すれば、水田全面に雑草が広がり、稲の成長を妨げ、結果的に大幅な収穫量減と病害虫の多発により重大な品質低下につながる。
そこで、除草剤を使用せずに雑草を抑え込むことが可能であれば、有機栽培による稲作の普及が進み、自然環境の保全、食の安全性、農家の労働力、経済性に寄与できることから、本発明は、空気を水田地表面に吹き付けることにより、地面表層の発生初期の雑草を吹き飛ばし、撹拌作用により雑草を水面に浮かばせ、全面除草する。さらに加えて濁らせた水により光を遮断することで、雑草の成長を抑制する効果がある除草装置、及び除草方法を発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成することができる本発明の第1発明は、請求項1に記載された通りの水田耕作地における除草装置であり、次のようなものである。
水田耕作地での有機栽培による稲作における雑草の除草装置であって、水田耕作地を航行するための舟体を有し、該舟体は正立方体の形状で、空気を貯留できる空洞部を有し、該舟体上部の進行方向前方にブロアーを設け、進行方向後方に推進装置が設けられて、該舟体の底部から水底の土壌に向かってブロアーから送られる空気を噴射する空気噴射ホースからなるノズルを備え、1列が10cm間隔で複数個、これを複数列、2列目から順に数cmずつずらして舟体の底面全体の範囲を除草できるように上記ノズルを設ける構成である。
【0006】
上記の目的を達成することができる本発明の第2発明は、請求項2に記載された通りの水田耕作地における除草装置であり、次のようなものである。
田面の上に水を張り、作物を育成する水田耕作地での有機栽培による稲作における雑草の除草装置であって、水田耕作地を航行するための舟体を有し、該舟体は軽量金属材で縦180cm×横180cm×高さ10cmになるように枠材及び補強材で舟体を形成し、該枠体からなる正立方体の底面をウレタン発泡ソフトボードで形成し、その他の面は、アルミ複合板やソフトボードで形成し、空気を貯留できる空洞部を設け、該舟体上部の進行方向前方にブロアーを設け、進行方向後方には推進装置が設けられて、該舟体の底部から水底の土壌に向かって、空気を噴射する空気噴射ホースからなるノズルを備え、該空気の噴射用ホースは1列に10cm間隔で複数個設け、10cm間隔で複数個設けた1列目の噴射用ホースと同様のものを2列目以降に、2cmずつずらして複数列設け、舟体両側には、噴射空気が拡散しないように板状ガイドボードを設け、当該空気噴射ホースからなるノズルから噴射された空気によって田面の雑草を吹き飛ばし、さらに表層土と水を撹拌することで雑草を除去する構成である。
【0007】
上記の目的を達成することができる本発明の第3発明は、請求項3に記載された通りの水田耕作地における除草装置であり、次のようなものである。
請求項1、または請求項2に記載の発明に加えて、前記空気噴射ホースからなるノズルから、4m/s以上~9m/s以下の風速で空気を噴射する除草用空気供給手段であるブロアーと、舟体の空洞部を介して接続され、当該空気噴射ホースからなるノズルは、前記田面表面に近づけ、土壌から5mm以下入り込む位置になるように設ける構成である。
【0008】
上記の目的を達成することができる本発明の第4発明は、請求項4に記載された通りの水田耕作地における除草方法であり、次のようなものである。
田面の上に水を張り、前記田面に根を張らせる有機栽培による稲作における雑草を除去する除草方法であって、水田耕作地で代掻き後2日~3日で稲を作付けした後、4日~5日が1回目の除草作業で、その後1週間に1回程度、中干時期まで行うもので、請求項1または請求項2に記載の除草装置を航行させて、水田耕作地の雑草を除去する方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る水田耕作地における除草装置及び本装置を用いる除草方法は、上記発明のような構成を有するので、以下に記載する効果を奏する。
(1)除草剤を使用せず、空気の吹き付けにより、田面に発生した初期雑草のほとんどが水面に浮かび上がり、除草が可能である。
(2)除草剤を使用しないので、有機栽培による稲作が可能であり、自然環境の保全、食の安全性、農家の労働力の軽減ができ、経済性にも寄与する。
(3)空気による除草なので、苗抜け、苗痛みが少ないものである。
(4)本発明品を使用することにより、結果として、空気による表層土と水の撹拌により、水の濁りが大きく、雑草の生育抑制効果が顕著である。
(5)運転時、ボート両サイドから発生する噴射空気により吹き飛ばされた土が、水しぶきと一緒に飛散してエンジントラブルにつながるのを防止するため、舟体の両サイドより下方に向けて板状ガイドボードを設置することで、水しぶきを推進用エンジン及び空気の送風用ブロアーに掛からないように防止できる。
(6)舟体は正立方体なので、運転時に畦ぎわに接触して前進できないことを防止するように、舟体四角辺を面取りするように円形にすることで停止することを防止できる。
(7)空気送出口であるシリコンホース製のノズルを1列目に複数本(一実施例として180cm×180cmの舟体に対して15本を10cm間隔で設ける)、さらに複数列を1列目のシリコンホースの10cm間隔で設置されているものに対して、2cmずつずらして15本を10cm間隔で、さらに40cm間隔で計5列設置することで、水田の除草したい範囲の略全面を隙間なく除草できるものである。
(8)舟体は規格品である軽量資材等を採用して形成することで、安価に入手し易い資材を利用し、さらに重量約84kgのため、水田と陸上間の相互移動にトラクター、及びトラクターダンプ等、水田耕作を行う農家等で使用する農業機械で十分可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例に係る除草装置を示す説明概略正面図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る除草装置の
図1の一部を拡大して示す説明概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る除草装置の空気送出用の空気噴射ホースの配置状態を示す
図1におけるA-A矢視における舟体の底板のみによって説明する概略底面図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る除草装置の枠体及び補強材を示す概略上面図である。
【
図5】本発明の一実施例に係る除草装置で最前列の空気噴射ホースだけを示した
図1における概略左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
水田耕作地での有機栽培による稲作における雑草の除草装置であって、水田耕作地を航行するための舟体を有し、該舟体は正立方体の形状で、空気を貯留できる空洞部を有し、該舟体上部の進行方向前方にブロアーを設け、進行方向後方に推進装置が設けられて、該舟体の底部から水底の土壌に向かってブロアーから送られる空気を噴射する空気噴射ホースからなるノズルを備え、1列が10cm間隔で複数個、これを複数列、2列目から順に数cmずつずらして舟体の底面全体の範囲を除草できるように上記ノズルを設けたことを特徴とする水田耕作地における除草装置、また田面の上に水を張り、作物を育成する水田耕作地での有機栽培による稲作における雑草の除草装置であって、水田耕作地を航行するための舟体を有し、該舟体は軽量金属材で縦180cm×横180cm×高さ10cmになるように枠材及び補強材で舟体を形成し、該枠体からなる正立方体の底面をウレタン発泡ソフトボードで形成し、その他の面は、アルミ複合板やソフトボードで形成し、空気を貯留できる空洞部を設け、該舟体上部の進行方向前方にブロアーを形成し、進行方向後方には推進装置が設けられて、該舟体の底部から水底の土壌に向かって、空気を噴射する空気噴射ホースからなるノズルを備え、該空気の噴射用ホースは1列に10cm間隔で複数個設け、10cm間隔で複数個設けた1列目の噴射ホースと同様のものを2列目以降に、2cmずつずらして複数列設け、舟体両側には、噴射空気が拡散しないように板状ガイドボードを設け、当該空気噴射ホースからなるノズルから噴射された空気によって田面の雑草を吹き飛ばし、さらに表層土と水を撹拌することで雑草を除去する水田耕作地における除草装置である。
【実施例0012】
以下、本発明の水田耕作地における除草装置及び本装置を用いる除草方法について説明する。
本発明は、前記従来技術では、なし得なかった水田の全面の雑草を除草できるように改良し、しかも舟体の空洞部に空気を送入して、浮力を得られるようにしたり、舟体の上部に設置したブロアーや推進機構に風等による水しぶきが掛からないように舟体の両サイドにソフトボードからなる板状ガイドボードを設ける等して従来の問題点を様々見直し、改良したものである。
本発明において、舟体(以下、ボートという)の形状は、コーナー2を円形にした正立方体形で、各種材料により形成したもので、例えば
図4に示すように規格品のアルミ製のアングルや角パイプで枠部や補強部9を形成し、180cm×180cmで高さ略10cmの舟体に底面をウレタン発泡ソフトボードで形成し、その他の面は、アルミ複合板やソフトボードで形成し、空洞構造になっている。尚、特にブロアーとエンジン付きプロペラを支えられるようにアルミ製補強材8が設けられていることは言うまでもない。また、ボート底面で除草作業と撹拌作業面積を広く取るために180cm×180cmと正立方体を採用したが、形状、大きさは水田の形状に合わせて種々選択できるものである。
【0013】
具体的実施例として、
図1~
図5に示す通り、ボートの浮力を得るために底面にはウレタン発泡ソフトボード、例えば縦180cm×横180cm×厚さ3cmボードを採用した。このウレタン発泡ソフトボードは、浮力があり衝撃に耐え、丈夫で、風化し難く、稲にやさしく、柔らかさがあるので、採用したものである。
前記一実施例のボート1を水中に置くと、水面下3cm位になる。
尚、舟体を水田の水中に置く場合、トラクター後部に装着して使用する運搬用の農業機械であるトラクターダンプに本発明の除草装置を載置し、トラクターをぬかるんだ水田ギリギリまで後進させ、トラクターダンプは上下動可能であるので、下げ、水田の水中に沈めることにより、トラクターダンプに乗っている除草装置(舟体)を水中に浮かべることが可能なので、一人での作業で簡単に積み降ろしができるものである。
本発明の除草装置は、ボート1上面進行方向前方にブロアー3と、同じく後方にボート推進装置4、例えば既存の方向旋回をコントロールできるエンジン付きプロペラが設置され、ブロアー3は、水中にボート1を置く前から起動させ、エンジン付きプロペラのコントロールには、操作装置、例えばラジコンで操作するものである。
ボート1(重量約84kg)を水田の水中に置くと、水面下3cmとなる。
しかし、ブロアー3を全開始動してあるので、ボート1の空洞部5に空気を送入されているので、浮力によりボート1は3cm浮上する。従って、除草作業時、ボート1の水田内での位置は水面となることを確認できた。
また、ボート1底面両サイドには、ブロアー3からの空気がボート1底面両サイドから漏れるので、これを防止するために、
図5に示す通り、例えば長さ180cm、高さ3cm、幅5cmのソフトな板状ガイドボード6を設けることにより、ボート1サイド両側に逃げる空気がボート1底面に収まっていることを確認できた。
さらに、ボート両サイド側から発生する空気による水しぶきを防止でき、エンジン内に水が浸入する等のエンジントラブルを防止できた。しかも、ボート1の直進性が向上することも確認できた。
但し、旋回性に若干の問題があるが、この点については、改良を図らないとならない。
また、
図3に示すように、ボート1のコーナー2である4隅の角部を丸くしたことにより、畦の引っ掛かりが防止できるものである。
【0014】
ボート1上面前方に設けたブロアー3からの空気は、水、土、雑草より軽く、しかも水田の水中で除草作業をするので、強力な空気供給能力(風速、風量、風圧)機能をもつブロアー3を採用することはいうまでもない。
ボート1の空洞部5は、ブロアー3で供給された空気を貯め込むスペースになり、ブロアー3で供給される空気量より空気噴射ホース7(例えばシリコンホース)から出る量を少なく設定することで、ボート1の空洞部5内の空気が加圧圧縮される。
具体的には、ブロアー3からの空気出口面積94.985m2に対し、空気噴射ホース7の出口総面積58.875m2にすることで、強力な空気の力を水中の土壌表層に伝えることができる。
【0015】
次に、
図3に示す通り、ボート1の空洞内底部には、水田の水中内に空気を届けるための空気噴射ホース7(シリコンホースの先端にノズルを別付けすることも考えられる。)を75本が効率的に配置されている。
それは、ブロアー3から供給される空気量と空気噴射ホース7から排出される空気量のバランスを考慮し、75本にしたものである。
空気噴射ホース7に加圧された空気を送り、水中土壌の変化を確認しながら、幅2.5cm×深さ1cmの土が吹き飛んで、除草作業が行われる。
すなわち、作業幅2.5cm×シリコンホース75本=187.5cmになり、ボート1幅180cmなので、ボート1の全幅をカバーした作業が可能なものである。
【0016】
さらに、本実施例では空気噴射ホース7の配列を5列にした。それは、配列を1列にした場合、設置幅が狭くなり、水、土、雑草、作業残渣の抵抗がおおきくなり、1列ではボート1底面面積での作業効果が得られないことが判り、配列間隔は、ボート1の長さ180cmのところ、前後10cmずつ間隔を開け、40cm間隔で5列配列したものである。
しかも、各列の1列には、15本の空気噴射ホース7を10cmの間隔で設置し、列ごとに2cmずつずらして、1列15本×5列で計75本を設置する。空気噴射ホース7の長さは、ボート1底面より10cmの長さとした。これは、有機栽培による稲作の水管理は、深水10cmの場合が多い。これは深水の深さに応じて、調整することは言うまでもない。それは空気噴射ホース7の長さが短過ぎては地面に届かず、長過ぎては空気噴射ホース7内の空気により空気噴射ホース7先端が浮き、地面を捉えられないことになる。
前記ブロアー3が作動(エンジン全開)されていても、下方面へ吹き出ず、空気の力でボート1が水中から3cm程浮き上がる。その時のボート1底面の位置は、ほぼ水面と同じ高さになるように設計されている。
【0017】
さらに、空気噴射ホース7の設置角度は、ボート1後方45度にすると、ボート1底面の空気噴射ホース7設置場所から土面までの距離8cmとして、設置角度を考慮して、プラス2cmで長さ10cmとしたものである。
このボート1の進行方向に対して後方へ空気噴射ホース7の設置角度を45度にしたので、ボート1後方への空気放出により、ボート1底面で水流が後方に向かい、雑草、稲切わら等、作業残渣の排出が容易になるものである。この角度を付けることにより、水、土の抵抗軽減となるので、その設置角度は使用する水田の条件に合わせて、30度~60度の範囲で選択することになる。
また、空気噴射ホース7の泥詰まり防止のために、シリコンホース8先端は、地表面を平らに捉えるように斜めにカットするものである。
ボート1上面後方には、ボート推進装置4であるエンジンプロペラ方向羽根を設置してあるので、そのボート1の推進スピード、方向旋回をコントロール装置、例えばラジコンでコントロールできるもので、田んぼに人が入ることなく雑草の除草が可能となり、重労働の軽減につながるものである。
【0018】
以上のように、ボート1のように構成されていて、空気で除草できるもので、その仕組みはブロアー3でボート1の空洞部5内へ空気を送り、ボート1の空洞部5内の空気は、入る量より空気噴射ホース7から出る量が少なくなるように設定してある。従って、空気噴射ホース7から送出される空気は、加圧圧縮され、その空気はボート1の空洞部5内底部に全面作業可能となるように各列毎少しずつ位置をずらして配置された5列の空気噴射ホース7を通して作業部の前面に噴き出されるように構成されている。
このボート1の空洞部5内底面に配置した空気噴射ホース7から噴出される空気により、水、土、雑草が撹拌され、雑草に付着した土が分離し、雑草自らの浮力により、雑草は水面上に現れる。
このように稲の難敵雑草(ヒエ、コナギ等)を対象とするので、これらの雑草は土壌表面1cm以内の種子しか発生しないので、稲は除かれず、雑草のみ除くことができる。
この上記雑草は、土中の種子埋没の深さ、環境変化等により時間の経過で次々と発生するので、発生のタイミングを見計らって複数回の除草作業が必要となる。
1列だけの空気噴射ホース7では、その空気噴射ホース7の本数は、多くして間隔を狭めると、除草した雑草同士が絡まって空気の噴出の妨げになってしまう。また、空気噴射ホース7の本数を少なくして間隔を広げると、除草されないムラが出てしまうので、雑草の取り残しが多く発生し、その雑草は急速に地中深く根を張り、その後空気での除草が不可能になる。
たとえ空気で土ごと吹き飛ばしたとしても雑草の根茎などには、土が付着しているので、水面下に沈む可能性が高い。従って、それらの雑草は生き返るものである。
これに対して、本発明の除草装置では、雑草を土から吹き飛ばし、水、土、雑草の撹拌によって、土と雑草を分離し、雑草を水面上に浮かせ死滅させることができるものである。
【0019】
本発明の空気による除草は、空気そのものが軽いので、稲の生体に、除草作業による障害が生じないものである。田植えの翌日の除草作業が可能であり、ボート1が1ヶ所に留まり、空気を吹き続けても稲の成長に害がないことも確認できた。
ボート1底面の水中では、空気により水、土、雑草が撹拌される。空気で吹き飛ばされた雑草が、水中で根等に付着している土から分離され、雑草自らの浮力で、水面上に浮き、枯死する。この土が付着していない雑草が沢山浮くので、撹拌により作業後の水田表面は、代掻き後に近い状態になっている。しかも、ボート1底面全面積での撹拌作用により、水の濁りが大きく、水中の光を遮断し、雑草の光合成を低下させるものである。
田んぼの5cm~8cmの水位で、空気噴射ホース7の先端が土壌表層を捉え、除草作業をする。
田んぼは均平でないので、均平に捉えられるように、前もって代掻き作業を行う必要がある。
作業時間は、通常30分/10アールで行ったが、進行スピードを落として作業した方が効果はある。
作業タイミングは、代掻き後2~3日に田植えを行い、その後4~5日が1回目の作業で、その後は1週間に1回程度を中干時期まで行うことで、雑草の除草ができることを確認した。
但し、地域、田んぼによって違いはあると考えられるが、それぞれの条件に合わせて種々調整することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、水稲を栽培する水田に限らず、泥質培地に水を張って作物を育成する水田様の耕作地にも適用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1・・・・舟体(ボート)
2・・・・コーナー
3・・・・ブロアー
4・・・・ボート推進装置
5・・・・空洞部
6・・・・板状ガイドボード
7・・・・空気噴射ホース
8・・・・枠部や補強部
【手続補正書】
【提出日】2023-10-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田耕作地での有機栽培による稲作における雑草の除草装置であって、水田耕作地を航行するための舟体を有し、該舟体は直方体の形状で、空気を貯留できる空洞部を有し、該舟体上部の進行方向前方にブロアーを設け、進行方向後方に推進装置が設けられて、該舟体の底部から水底の土壌に向かってブロアーから送られる空気を噴射する空気噴射ホースからなるノズルを備え、1列が10cm間隔で複数個、これを複数列、2列目から順に数cmずつずらして舟体の底面全体の範囲を除草できるように上記ノズルを設けたことを特徴とする水田耕作地における除草装置。
【請求項2】
田面の上に水を張り、作物を育成する水田耕作地での有機栽培による稲作における雑草の除草装置であって、水田耕作地を航行するための舟体を有し、該舟体は軽量金属材で縦180cm×横180cm×高さ10cmになるように枠材及び補強材で舟体を形成し、該舟体からなる直方体の底面をウレタン発泡ソフトボードで形成し、その他の面は、アルミ複合板やソフトボードで形成し、空気を貯留できる空洞部を設け、該舟体上部の進行方向前方にブロアーを設け、進行方向後方には推進装置が設けられて、該舟体の底部から水底の土壌に向かって、空気を噴射する空気噴射ホースからなるノズルを備え、該空気の噴射用ホースは1列に10cm間隔で複数個設け、10cm間隔で複数個設けた1列目の空気噴射ホースと同様のものを2列目以降に、2cmずつずらして複数列設け、舟体両側には、噴射空気が拡散しないように板状ガイドボードを設け、当該空気噴射ホースからなるノズルから噴射された空気によって田面の雑草を吹き飛ばし、さらに表層土と水を撹拌することで雑草を除去することを特徴とする水田耕作地における除草装置。
【請求項3】
前記空気噴射ホースからなるノズルから、4m/s以上~9m/s以下の風速で空気を噴射する除草用空気供給手段であるブロアーと、舟体の空洞部を介して接続され、当該空気噴射ホースからなるノズルは、前記田面表面に近づけ、土壌から5mm以下入り込む位置になるように設けたことを特徴とする請求項2に記載の水田耕作地における除草装置。
【請求項4】
田面の上に水を張り、前記田面に根を張らせる有機栽培による稲作における雑草を除去する除草方法であって、水田耕作地で代掻き後2日~3日で稲を作付けした後、4日~5日が1回目の除草作業で、その後1週間に1回程度、中干時期まで行うもので、請求項1または請求項2に記載の除草装置を航行させて、水田耕作地の雑草を除去することを特徴とする水田耕作地における除草方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田耕作地での有機栽培による稲作における雑草の除草装置、及び本装置を用いる除草方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から泥質培地の上に水を張り、泥質培地に根を張らせることで稲を育成する水田用耕作地における雑草を除去する装置は存在している。
例えば、水田様耕作地を航行する為の航行装置を備えた移動体と、当該移動体から水底の土壌に向かって気体を噴射する気体噴射ノズルとを備え、当該気体噴射ノズルから噴射された気体によって泥質培地を撹拌することで雑草を除去することを特徴とする水田様耕作地における除草装置で、ボートの推進機構とは別の空気流を出力する除草用気体供給手段を設けた除草装置が開示されている。しかし、除草用気体供給手段は、ボートの進行方向後方に左右それぞれ7個を略等間隔にノズルが1列だけ設けられている。また、ボートを浮揚移動させるために、機体噴射ノズルからの噴射に使用される気体を1つのファンによって供給する構成のものか、除草装置の噴射ノズルとは別に移動推進用の航行装置としての推進機構を有するもの(例えば、特許文献1参照)が知られている。
これに対して、本発明の場合は、直方体、例えば縦180cm×横180cm×高さ13cmの舟形のボートに空洞部を設け、ブロアーから送り込まれる空気を貯める空調スペースを設け、ボート本体上部前方にブロアーを設置し、該ブロアーでボート本体内に空気を送り込めるように構成し、ボート本体上部後方にはエンジンにより動くプロペラを設け、さらに舵取り用羽根を設置し、ラジコンにより推進スピードと旋回をコントロールできるようにした水田耕作地における除草装置を利用して、有機栽培による稲作における雑草の除草対策を除草剤等の農薬を使用せずに行うことを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-185895号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び
図1~
図7を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機栽培による稲作の最大課題は雑草対策である。稲と雑草を比較してみると、雑草は生命力が旺盛で、成長スピード、繁殖力、栄養の吸収力が優れている。
そのため、そのまま放置すれば、水田全面に雑草が広がり、稲の成長を妨げ、結果的に大幅な収穫量減と病害虫の多発により重大な品質低下につながる。
そこで、除草剤を使用せずに雑草を抑え込むことが可能であれば、有機栽培による稲作の普及が進み、自然環境の保全、食の安全性、農家の労働力、経済性に寄与できることから、本発明は、空気を水田地表面に吹き付けることにより、地面表層の発生初期の雑草を吹き飛ばし、撹拌作用により雑草を水面に浮かばせ、全面除草する。さらに加えて濁らせた水により光を遮断することで、雑草の成長を抑制する効果がある除草装置、及び除草方法を発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成することができる本発明の第1発明は、請求項1に記載された通りの水田耕作地における除草装置であり、次のようなものである。
水田耕作地での有機栽培による稲作における雑草の除草装置であって、水田耕作地を航行するための舟体を有し、該舟体は直方体の形状で、空気を貯留できる空洞部を有し、該舟体上部の進行方向前方にブロアーを設け、進行方向後方に推進装置が設けられて、該舟体の底部から水底の土壌に向かってブロアーから送られる空気を噴射する空気噴射ホースからなるノズルを備え、1列が10cm間隔で複数個、これを複数列、2列目から順に数cmずつずらして舟体の底面全体の範囲を除草できるように上記ノズルを設ける構成である。
【0006】
上記の目的を達成することができる本発明の第2発明は、請求項2に記載された通りの水田耕作地における除草装置であり、次のようなものである。
田面の上に水を張り、作物を育成する水田耕作地での有機栽培による稲作における雑草の除草装置であって、水田耕作地を航行するための舟体を有し、該舟体は軽量金属材で縦180cm×横180cm×高さ10cmになるように枠材及び補強材で舟体を形成し、該舟体からなる直方体の底面をウレタン発泡ソフトボードで形成し、その他の面は、アルミ複合板やソフトボードで形成し、空気を貯留できる空洞部を設け、該舟体上部の進行方向前方にブロアーを設け、進行方向後方には推進装置が設けられて、該舟体の底部から水底の土壌に向かって、空気を噴射する空気噴射ホースからなるノズルを備え、該空気の噴射用ホースは1列に10cm間隔で複数個設け、10cm間隔で複数個設けた1列目の噴射用ホースと同様のものを2列目以降に、2cmずつずらして複数列設け、舟体両側には、噴射空気が拡散しないように板状ガイドボードを設け、当該空気噴射ホースからなるノズルから噴射された空気によって田面の雑草を吹き飛ばし、さらに表層土と水を撹拌することで雑草を除去する構成である。
【0007】
上記の目的を達成することができる本発明の第3発明は、請求項3に記載された通りの水田耕作地における除草装置であり、次のようなものである。
請求項2に記載の発明に加えて、前記空気噴射ホースからなるノズルから、4m/s以上~9m/s以下の風速で空気を噴射する除草用空気供給手段であるブロアーと、舟体の空洞部を介して接続され、当該空気噴射ホースからなるノズルは、前記田面表面に近づけ、土壌から5mm以下入り込む位置になるように設ける構成である。
【0008】
上記の目的を達成することができる本発明の第4発明は、請求項4に記載された通りの水田耕作地における除草方法であり、次のようなものである。
田面の上に水を張り、前記田面に根を張らせる有機栽培による稲作における雑草を除去する除草方法であって、水田耕作地で代掻き後2日~3日で稲を作付けした後、4日~5日が1回目の除草作業で、その後1週間に1回程度、中干時期まで行うもので、請求項1または請求項2に記載の除草装置を航行させて、水田耕作地の雑草を除去する方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る水田耕作地における除草装置及び本装置を用いる除草方法は、上記発明のような構成を有するので、以下に記載する効果を奏する。
(1)除草剤を使用せず、空気の吹き付けにより、田面に発生した初期雑草のほとんどが水面に浮かび上がり、除草が可能である。
(2)除草剤を使用しないので、有機栽培による稲作が可能であり、自然環境の保全、食の安全性、農家の労働力の軽減ができ、経済性にも寄与する。
(3)空気による除草なので、苗抜け、苗痛みが少ないものである。
(4)本発明品を使用することにより、結果として、空気による表層土と水の撹拌により、水の濁りが大きく、雑草の生育抑制効果が顕著である。
(5)運転時、ボート両サイドから発生する噴射空気により吹き飛ばされた土が、水しぶきと一緒に飛散してエンジントラブルにつながるのを防止するため、舟体の両サイドより下方に向けて板状ガイドボードを設置することで、水しぶきを推進用エンジン及び空気の送風用ブロアーに掛からないように防止できる。
(6)舟体は直方体なので、運転時に畦ぎわに接触して前進できないことを防止するように、舟体四角辺を面取りするように円形にすることで停止することを防止できる。
(7)空気送出口であるシリコンホース製のノズルを1列目に複数本(一実施例として180cm×180cmの舟体に対して15本を10cm間隔で設ける)、さらに複数列を1列目のシリコンホースの10cm間隔で設置されているものに対して、2cmずつずらして15本を10cm間隔で、さらに40cm間隔で計5列設置することで、水田の除草したい範囲の略全面を隙間なく除草できるものである。
(8)舟体は規格品である軽量資材等を採用して形成することで、安価に入手し易い資材を利用し、さらに重量約84kgのため、水田と陸上間の相互移動にトラクター、及びトラクターダンプ等、水田耕作を行う農家等で使用する農業機械で十分可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例に係る除草装置を示す説明概略正面図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る除草装置の
図1の一部を拡大して示す説明概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る除草装置の空気送出用の空気噴射ホースの配置状態を示す
図1におけるA-A矢視における舟体の底板のみによって説明する概略底面図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る除草装置の枠体及び補強材を示す概略上面図である。
【
図5】本発明の一実施例に係る除草装置で最前列の空気噴射ホースだけを示した
図1における概略左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
水田耕作地での有機栽培による稲作における雑草の除草装置であって、水田耕作地を航行するための舟体を有し、該舟体は直方体の形状で、空気を貯留できる空洞部を有し、該舟体上部の進行方向前方にブロアーを設け、進行方向後方に推進装置が設けられて、該舟体の底部から水底の土壌に向かってブロアーから送られる空気を噴射する空気噴射ホースからなるノズルを備え、1列が10cm間隔で複数個、これを複数列、2列目から順に数cmずつずらして舟体の底面全体の範囲を除草できるように上記ノズルを設けたことを特徴とする水田耕作地における除草装置、また田面の上に水を張り、作物を育成する水田耕作地での有機栽培による稲作における雑草の除草装置であって、水田耕作地を航行するための舟体を有し、該舟体は軽量金属材で縦180cm×横180cm×高さ10cmになるように枠材及び補強材で舟体を形成し、該舟体からなる直方体の底面をウレタン発泡ソフトボードで形成し、その他の面は、アルミ複合板やソフトボードで形成し、空気を貯留できる空洞部を設け、該舟体上部の進行方向前方にブロアーを形成し、進行方向後方には推進装置が設けられて、該舟体の底部から水底の土壌に向かって、空気を噴射する空気噴射ホースからなるノズルを備え、該空気の噴射用ホースは1列に10cm間隔で複数個設け、10cm間隔で複数個設けた1列目の噴射ホースと同様のものを2列目以降に、2cmずつずらして複数列設け、舟体両側には、噴射空気が拡散しないように板状ガイドボードを設け、当該空気噴射ホースからなるノズルから噴射された空気によって田面の雑草を吹き飛ばし、さらに表層土と水を撹拌することで雑草を除去する水田耕作地における除草装置である。
【実施例0012】
以下、本発明の水田耕作地における除草装置及び本装置を用いる除草方法について説明する。
本発明は、前記従来技術では、なし得なかった水田の全面の雑草を除草できるように改良し、しかも舟体の空洞部に空気を送入して、浮力を得られるようにしたり、舟体の上部に設置したブロアーや推進機構に風等による水しぶきが掛からないように舟体の両サイドにソフトボードからなる板状ガイドボードを設ける等して従来の問題点を様々見直し、改良したものである。
本発明において、舟体(以下、ボートという)の形状は、コーナー2を円形にした
直方体形で、各種材料により形成したもので、例えば
図4に示すように規格品のアルミ製のアングルや角パイプで枠部や補強部9を形成し、180cm×180cmで高さ略10cmの舟体に底面をウレタン発泡ソフトボードで形成し、その他の面は、アルミ複合板やソフトボードで形成し、空洞構造になっている。尚、特にブロアーとエンジン付きプロペラを支えられるようにアルミ製補強材8が設けられていることは言うまでもない。また、ボート底面で除草作業と撹拌作業面積を広く取るために180cm×180cmと
直方体を採用したが、形状、大きさは水田の形状に合わせて種々選択できるものである。
【0013】
具体的実施例として、
図1~
図5に示す通り、ボートの浮力を得るために底面にはウレタン発泡ソフトボード、例えば縦180cm×横180cm×厚さ3cmボードを採用した。このウレタン発泡ソフトボードは、浮力があり衝撃に耐え、丈夫で、風化し難く、稲にやさしく、柔らかさがあるので、採用したものである。
前記一実施例のボート1を水中に置くと、水面下3cm位になる。
尚、舟体を水田の水中に置く場合、トラクター後部に装着して使用する運搬用の農業機械であるトラクターダンプに本発明の除草装置を載置し、トラクターをぬかるんだ水田ギリギリまで後進させ、トラクターダンプは上下動可能であるので、下げ、水田の水中に沈めることにより、トラクターダンプに乗っている除草装置(舟体)を水中に浮かべることが可能なので、一人での作業で簡単に積み降ろしができるものである。
本発明の除草装置は、ボート1上面進行方向前方にブロアー3と、同じく後方にボート推進装置4、例えば既存の方向旋回をコントロールできるエンジン付きプロペラが設置され、ブロアー3は、水中にボート1を置く前から起動させ、エンジン付きプロペラのコントロールには、操作装置、例えばラジコンで操作するものである。
ボート1(重量約84kg)を水田の水中に置くと、水面下3cmとなる。
しかし、ブロアー3を全開始動してあるので、ボート1の空洞部5に空気を送入されているので、浮力によりボート1は3cm浮上する。従って、除草作業時、ボート1の水田内での位置は水面となることを確認できた。
また、ボート1底面両サイドには、ブロアー3からの空気がボート1底面両サイドから漏れるので、これを防止するために、
図5に示す通り、例えば長さ180cm、高さ3cm、幅5cmのソフトな板状ガイドボード6を設けることにより、ボート1サイド両側に逃げる空気がボート1底面に収まっていることを確認できた。
さらに、ボート両サイド側から発生する空気による水しぶきを防止でき、エンジン内に水が浸入する等のエンジントラブルを防止できた。しかも、ボート1の直進性が向上することも確認できた。
但し、旋回性に若干の問題があるが、この点については、改良を図らないとならない。
また、
図3に示すように、ボート1のコーナー2である4隅の角部を丸くしたことにより、畦の引っ掛かりが防止できるものである。
【0014】
ボート1上面前方に設けたブロアー3からの空気は、水、土、雑草より軽く、しかも水田の水中で除草作業をするので、強力な空気供給能力(風速、風量、風圧)機能をもつブロアー3を採用することはいうまでもない。
ボート1の空洞部5は、ブロアー3で供給された空気を貯め込むスペースになり、ブロアー3で供給される空気量より空気噴射ホース7(例えばシリコンホース)から出る量を少なく設定することで、ボート1の空洞部5内の空気が加圧圧縮される。
具体的には、ブロアー3からの空気出口面積94.985m2に対し、空気噴射ホース7の出口総面積58.875m2にすることで、強力な空気の力を水中の土壌表層に伝えることができる。
【0015】
次に、
図3に示す通り、ボート1の空洞内底部には、水田の水中内に空気を届けるための空気噴射ホース7(シリコンホースの先端にノズルを別付けすることも考えられる。)を75本が効率的に配置されている。
それは、ブロアー3から供給される空気量と空気噴射ホース7から排出される空気量のバランスを考慮し、75本にしたものである。
空気噴射ホース7に加圧された空気を送り、水中土壌の変化を確認しながら、幅2.5cm×深さ1cmの土が吹き飛んで、除草作業が行われる。
すなわち、作業幅2.5cm×シリコンホース75本=187.5cmになり、ボート1幅180cmなので、ボート1の全幅をカバーした作業が可能なものである。
【0016】
さらに、本実施例では空気噴射ホース7の配列を5列にした。それは、配列を1列にした場合、設置幅が狭くなり、水、土、雑草、作業残渣の抵抗がおおきくなり、1列ではボート1底面面積での作業効果が得られないことが判り、配列間隔は、ボート1の長さ180cmのところ、前後10cmずつ間隔を開け、40cm間隔で5列配列したものである。
しかも、各列の1列には、15本の空気噴射ホース7を10cmの間隔で設置し、列ごとに2cmずつずらして、1列15本×5列で計75本を設置する。空気噴射ホース7の長さは、ボート1底面より10cmの長さとした。これは、有機栽培による稲作の水管理は、深水10cmの場合が多い。これは深水の深さに応じて、調整することは言うまでもない。それは空気噴射ホース7の長さが短過ぎては地面に届かず、長過ぎては空気噴射ホース7内の空気により空気噴射ホース7先端が浮き、地面を捉えられないことになる。
前記ブロアー3が作動(エンジン全開)されていても、下方面へ吹き出ず、空気の力でボート1が水中から3cm程浮き上がる。その時のボート1底面の位置は、ほぼ水面と同じ高さになるように設計されている。
【0017】
さらに、空気噴射ホース7の設置角度は、ボート1後方45度にすると、ボート1底面の空気噴射ホース7設置場所から土面までの距離8cmとして、設置角度を考慮して、プラス2cmで長さ10cmとしたものである。
このボート1の進行方向に対して後方へ空気噴射ホース7の設置角度を45度にしたので、ボート1後方への空気放出により、ボート1底面で水流が後方に向かい、雑草、稲切わら等、作業残渣の排出が容易になるものである。この角度を付けることにより、水、土の抵抗軽減となるので、その設置角度は使用する水田の条件に合わせて、30度~60度の範囲で選択することになる。
また、空気噴射ホース7の泥詰まり防止のために、シリコンホース8先端は、地表面を平らに捉えるように斜めにカットするものである。
ボート1上面後方には、ボート推進装置4であるエンジンプロペラ方向羽根を設置してあるので、そのボート1の推進スピード、方向旋回をコントロール装置、例えばラジコンでコントロールできるもので、田んぼに人が入ることなく雑草の除草が可能となり、重労働の軽減につながるものである。
【0018】
以上のように、ボート1のように構成されていて、空気で除草できるもので、その仕組みはブロアー3でボート1の空洞部5内へ空気を送り、ボート1の空洞部5内の空気は、入る量より空気噴射ホース7から出る量が少なくなるように設定してある。従って、空気噴射ホース7から送出される空気は、加圧圧縮され、その空気はボート1の空洞部5内底部に全面作業可能となるように各列毎少しずつ位置をずらして配置された5列の空気噴射ホース7を通して作業部の前面に噴き出されるように構成されている。
このボート1の空洞部5内底面に配置した空気噴射ホース7から噴出される空気により、水、土、雑草が撹拌され、雑草に付着した土が分離し、雑草自らの浮力により、雑草は水面上に現れる。
このように稲の難敵雑草(ヒエ、コナギ等)を対象とするので、これらの雑草は土壌表面1cm以内の種子しか発生しないので、稲は除かれず、雑草のみ除くことができる。
この上記雑草は、土中の種子埋没の深さ、環境変化等により時間の経過で次々と発生するので、発生のタイミングを見計らって複数回の除草作業が必要となる。
1列だけの空気噴射ホース7では、その空気噴射ホース7の本数は、多くして間隔を狭めると、除草した雑草同士が絡まって空気の噴出の妨げになってしまう。また、空気噴射ホース7の本数を少なくして間隔を広げると、除草されないムラが出てしまうので、雑草の取り残しが多く発生し、その雑草は急速に地中深く根を張り、その後空気での除草が不可能になる。
たとえ空気で土ごと吹き飛ばしたとしても雑草の根茎などには、土が付着しているので、水面下に沈む可能性が高い。従って、それらの雑草は生き返るものである。
これに対して、本発明の除草装置では、雑草を土から吹き飛ばし、水、土、雑草の撹拌によって、土と雑草を分離し、雑草を水面上に浮かせ死滅させることができるものである。
【0019】
本発明の空気による除草は、空気そのものが軽いので、稲の生体に、除草作業による障害が生じないものである。田植えの翌日の除草作業が可能であり、ボート1が1ヶ所に留まり、空気を吹き続けても稲の成長に害がないことも確認できた。
ボート1底面の水中では、空気により水、土、雑草が撹拌される。空気で吹き飛ばされた雑草が、水中で根等に付着している土から分離され、雑草自らの浮力で、水面上に浮き、枯死する。この土が付着していない雑草が沢山浮くので、撹拌により作業後の水田表面は、代掻き後に近い状態になっている。しかも、ボート1底面全面積での撹拌作用により、水の濁りが大きく、水中の光を遮断し、雑草の光合成を低下させるものである。
田んぼの5cm~8cmの水位で、空気噴射ホース7の先端が土壌表層を捉え、除草作業をする。
田んぼは均平でないので、均平に捉えられるように、前もって代掻き作業を行う必要がある。
作業時間は、通常30分/10アールで行ったが、進行スピードを落として作業した方が効果はある。
作業タイミングは、代掻き後2~3日に田植えを行い、その後4~5日が1回目の作業で、その後は1週間に1回程度を中干時期まで行うことで、雑草の除草ができることを確認した。
但し、地域、田んぼによって違いはあると考えられるが、それぞれの条件に合わせて種々調整することは言うまでもない。