(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033559
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックス、二酸化炭素分離膜用組成物、二酸化炭素分離膜、及び二酸化炭素分離膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 36/04 20060101AFI20240306BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240306BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20240306BHJP
C08L 33/20 20060101ALI20240306BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240306BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20240306BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20240306BHJP
B01D 71/30 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08F36/04
C08K3/22
C08K3/20
C08L33/20
C08L9/00
B01D53/22
B01D71/26
B01D71/30
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137202
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100218855
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 政輝
(72)【発明者】
【氏名】松山 貴志
【テーマコード(参考)】
4D006
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006MA31
4D006MB03
4D006MB04
4D006MB20
4D006MC22X
4D006MC24
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4D006MC36
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4D006MC38
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4D006NA05
4D006NA10
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4D006PB17
4D006PB64
4D006PC73
4J002AC071
4J002BG101
4J002DE106
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4J002GT00
4J002HA07
4J100AB02Q
4J100AJ02S
4J100AJ08T
4J100AJ09T
4J100AL03R
4J100AL08R
4J100AL66R
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4J100AS02P
4J100BA02R
4J100BA03R
4J100CA03
4J100EA07
4J100FA03
4J100FA20
4J100JA15
(57)【要約】
【課題】優れた二酸化炭素選択透過性及び十分な二酸化炭素透過性を有し、且つ、優れた強度及び柔軟性を有する二酸化炭素分離膜を提供すること。二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックス、二酸化炭素分離膜用組成物、及び、二酸化炭素分離膜の製造方法を提供すること。
【解決手段】脂肪族共役ジエン系単量体単位を有する共重合体を含有し、共重合体における脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が10~80質量%である、二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックス。当該共重合体を含有する、二酸化炭素分離膜。二酸化炭素分離膜の製造方法であって、二酸化炭素分離膜用組成物を塩凝固法により凝固させる工程を備え、二酸化炭素分離膜用組成物が、当該共重合体を含有する、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族共役ジエン系単量体単位を有する共重合体を含有し、
前記共重合体における前記脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が10~80質量%である、二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックス。
【請求項2】
前記共重合体が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位を更に有し、
前記共重合体における前記エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が0.1~10質量%である、請求項1に記載の二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックスを含有する、二酸化炭素分離膜用組成物。
【請求項4】
酸化亜鉛を更に含有する、請求項3に記載の二酸化炭素分離膜用組成物。
【請求項5】
脂肪族共役ジエン系単量体単位を有する共重合体を含有し、
前記共重合体における前記脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が10~80質量%である、二酸化炭素分離膜。
【請求項6】
二酸化炭素分離膜の製造方法であって、
二酸化炭素分離膜用組成物を塩凝固法により凝固させる工程を備え、
前記二酸化炭素分離膜用組成物が、脂肪族共役ジエン系単量体単位を有する共重合体を含有し、
前記共重合体における前記脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が10~80質量%である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックス、二酸化炭素分離膜用組成物、二酸化炭素分離膜、及び二酸化炭素分離膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスの排出量を削減することを目的に、温室効果ガスを分離、回収する方法が検討されている。
【0003】
代表的な温室効果ガスの1つである二酸化炭素を分離、回収する方法としては、例えば、分離膜による分離、吸着体により分離が検討されている。より具体的には、特許文献1では、ポリイミド樹脂及びイオン液体を含有する樹脂組成物からなる樹脂膜により二酸化炭素を分離することが検討されており、特許文献2では、特定の構造を有するポリマーを主成分とし、複数の空孔を有する吸収体により二酸化炭素を吸収・脱離することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-84155号公報
【特許文献2】特開2015-77561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の特許文献1に記載の分離膜の他、種々の二酸化炭素分離膜が検討されているが、引き続き二酸化炭素選択透過性に優れた二酸化炭素分離膜が求められている。また、二酸化炭素分離膜には、優れた強度及び柔軟性を有することが求められている。
【0006】
本発明は、優れた二酸化炭素選択透過性及び十分な二酸化炭素透過性を有し、且つ、優れた強度及び柔軟性を有する二酸化炭素分離膜を提供することを目的とする。また、本発明は、二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックス、二酸化炭素分離膜用組成物、及び二酸化炭素分離膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、脂肪族共役ジエン系単量体単位を特定の含有量で有する共重合体ラテックスを含有する組成物から形成される二酸化炭素分離膜が、優れた二酸化炭素選択透過性及び十分な二酸化炭素透過性を有し、且つ、優れた膜強度及び柔軟性を有することを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]を提供する。
[1]脂肪族共役ジエン系単量体単位を有する共重合体を含有し、
前記共重合体における前記脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が10~80質量%である、二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックス。
[2]前記共重合体が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位を更に有し、
前記共重合体における前記エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が0.1~10質量%である、[1]に記載の二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックス。
[3][1]又は[2]に記載の二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックスを含有する、二酸化炭素分離膜用組成物。
[4]酸化亜鉛を更に含有する、[3]に記載の二酸化炭素分離膜用組成物。
[5]脂肪族共役ジエン系単量体単位を有する共重合体を含有し、
前記共重合体における前記脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が10~80質量%である、二酸化炭素分離膜。
[6]二酸化炭素分離膜の製造方法であって、
二酸化炭素分離膜用組成物を塩凝固法により凝固させる工程を備え、
前記二酸化炭素分離膜用組成物が、脂肪族共役ジエン系単量体単位を有する共重合体を含有し、
前記共重合体における前記脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が10~80質量%である、方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた二酸化炭素選択透過性及び十分な二酸化炭素透過性を有し、且つ、優れた強度及び柔軟性を有する二酸化炭素分離膜を提供することができる。また、本発明によれば、二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックス、二酸化炭素分離膜用組成物、及び二酸化炭素分離膜の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
[二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックス]
本発明の一実施形態に係る二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックス(以下、単に「共重合体ラテックス」ともいう)は、脂肪族共役ジエン系単量体単位を有する共重合体を含有する。共重合体における脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量は、10~80質量%である。以下、この共重合体を「共重合体A」ともいう。
【0012】
脂肪族共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、ペンタジエン類(例えば、置換直鎖共役ペンタジエン類)、及びヘキサジエン類(例えば、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類)が挙げられる。共重合体Aは、1種又は2種以上の脂肪族共役ジエン系単量体単位を有していてもよい。共重合体Aは、得られる二酸化炭素分離膜の強度及び柔軟性がより優れる観点から、脂肪族共役ジエン系単量体単位として1,3-ブタジエンに由来する構造単位を有することが好ましい。
【0013】
共重合体Aにおける脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量は、10~80質量%である。脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が10質量%以上であることにより、共重合体Aを含む組成物を成膜することが可能となり、二酸化炭素分離膜を作製することができる。脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が80質量%以下であることにより、優れた二酸化炭素選択透過性、十分な二酸化炭素透過性、強度、及び柔軟性を実現することができる。共重合体Aにおける脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量は、得られる二酸化炭素分離膜の二酸化炭素透過性がより優れる観点から、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。共重合体Aにおける脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量は、得られる二酸化炭素分離膜の強度及び柔軟性がより優れる観点から、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。これらの観点から、共重合体Aにおける脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量は、20~75質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましい。
【0014】
共重合体Aは、脂肪族共役ジエン系単量体単位に加えて、シアン化ビニル系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体単位、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体単位、エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位、不飽和カルボン酸アミド系単量体単位、不飽和二重結合を2つ以上含有する多官能エチレン系不飽和単量体単位等を有していてもよい。共重合体Aは、二酸化炭素分離膜の強度及び柔軟性がより優れる観点から、エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位を有していてもよい。共重合体Aは、これらの単量体単位を1種又は2種以上を有していてもよい。
【0015】
シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、及びα-エチルアクリロニトリルが挙げられる。共重合体Aは、1種又は2種以上のシアン化ビニル系単量体単位を有していてもよい。共重合体Aは、シアン化ビニル系単量体単位としてアクリロニトリルに由来する構造単位を有していてもよい。
【0016】
共重合体Aにおけるシアン化ビニル系単量体単位の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。共重合体Aにおけるシアン化ビニル系単量体単位の含有量は、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってもよい。
【0017】
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、メチル-α-メチルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼンが挙げられる。共重合体Aは、1種又は2種以上の芳香族ビニル系単量体単位を有していてもよい。共重合体Aは、芳香族ビニル系単量体単位としてスチレンに由来する構造単位を有していてもよい。
【0018】
共重合体Aにおける芳香族ビニル系単量体単位の含有量は、80質量%以下、70質量%以下、又は65質量%以下であってよく、20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上であってもよい。
【0019】
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。共重合体Aは、1種又は2種以上の不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体単位を有していてもよい。共重合体Aは、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体単位としてメチルメタクリレートに由来する構造単位を有していてもよい。
【0020】
共重合体Aにおける不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体単位の含有量は、80質量%以下、70質量%以下、又は60質量%以下であってよく、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってもよい。
【0021】
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ-(エチレングリコール)マレエート、ジ-(エチレングリコール)イタコネート、2-ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2-ヒドロキシエチル)マレエート、及び2-ヒドロキシエチルメチルフマレートが挙げられる。共重合体Aは、1種又は2種以上のヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体単位を有していてもよい。共重合体Aは、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体単位としてβ-ヒドロキシエチルアクリレートに由来する構造単位を有していてもよい。
【0022】
共重合体Aにおけるヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体単位の含有量は、10質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下であってよく、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってもよい。
【0023】
不飽和カルボン酸アミド系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、及びN,N-ジメチルアクリルアミドが挙げられる。共重合体Aは、1種又は2種以上の不飽和カルボン酸アミド系単量体単位を有していてもよい。共重合体Aは、不飽和カルボン酸アミド系単量体単位としてアクリルアミドに由来する構造単位を有していてもよい。
【0024】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸;及びマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸を挙げることができる。共重合体Aは、1種又は2種以上のエチレン系不飽和カルボン酸単量体単位を有していてもよい。共重合体Aは、エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及びフマル酸からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位を有していてもよい。
【0025】
共重合体Aにおけるエチレン系不飽和カルボン酸単量体単位の含有量は、0.1~10質量%であることが好ましい。エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が0.1質量%以上であることにより、共重合体Aを安定して重合することができるため、凝集物の生成を抑制することができ、得られる二酸化炭素分離膜の強度及び柔軟性がより優れる。エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が10質量%以下であることにより、共重合体Aの合成時の粘度が高くなりすぎることを抑制できるため、十分に撹拌することができ、共重合体Aを安定して重合することができる。さらに、得られる共重合体Aを成膜しやすい傾向がある。共重合体Aにおけるエチレン系不飽和カルボン酸単量体単位の含有量は、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましい。共重合体Aにおけるエチレン系不飽和カルボン酸単量体単位の含有量は、8質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが更に好ましい。共重合体Aにおけるエチレン系不飽和カルボン酸単量体単位の含有量は、0.5~8質量%であることがより好ましく、1~7質量%であることが更に好ましい。
【0026】
不飽和二重結合を2つ以上含有する多官能エチレン系不飽和単量体としては、例えば、アリルメタクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;及びジビニルベンゼン等のジビニル化合物が挙げられる。共重合体Aは、1種又は2種以上の多官能エチレン系不飽和単量体単位を有していてもよい。共重合体Aは、多官能エチレン系不飽和単量体としてアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、及びジビニルベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位を有していてもよい。
【0027】
共重合体Aは、上述した単量体に加えて、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の乳化重合において通常使用される任意の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。
【0028】
共重合体Aの重合には、公知の乳化剤、界面活性剤を使用することができる。界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩(例えば、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、デヒドロアビエチン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、アルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤を使用することができる。乳化剤、界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
共重合体Aの重合には、公知の連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えば、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン化合物;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;α-ベンジルオキシスチレン、α-ベンジルオキシアクリロニトリル、α-ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル;トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノレン、及びα-メチルスチレンダイマー等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
共重合体Aの重合には、公知の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、例えば、過硫酸リチウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤;クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t-ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性重合開始剤が挙げられる。重合開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、クメンハイドロパーオキサイド、及びt-ブチルハイドロパーオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。重合開始剤の使用量は特に制限されず、単量体の組成、重合反応系のpH、他の添加剤との組み合わせを考慮して適宜調整することができる。
【0031】
共重合体Aの重合には、公知の還元剤を使用することができる。還元剤としては、例えば、デキストロース、サッカロース等の還元糖類;ジメチルアニリン、トリエタノールアミン等のアミン類;L-アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸等のカルボン酸類及びその塩;亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、及びベンズアルデヒドスルホン酸塩が挙げられる。還元剤は、L-アスコルビン酸又はエリソルビン酸であることが好ましい。還元剤の使用量は、単量体の組成、重合反応系のpH、他の添加剤との組み合わせを考慮して適宜調整することができる。
【0032】
共重合体Aの重合には、水及び公知の有機溶媒を使用することができる。有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素;ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4-メチルシクロヘキセン、1-メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素化合物を使用することができる。有機溶媒は、沸点が適度に低く、重合終了後に水蒸気蒸留等によって回収、再利用しやすく、環境保全の観点から、シクロヘキセン又はトルエンであることが好ましい。
【0033】
共重合体Aの重合には、必要に応じて酸素捕捉剤、キレート剤、分散剤、消泡剤、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤等の公知の添加剤を用いることができる。これら添加剤は、種類、使用量ともに特に限定されず、適宜使用することができる。
【0034】
共重合体Aの重合時において、上述した単量体成分及び添加剤等の単量体成分以外の成分を反応系に添加する方法としては、例えば、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、及びパワーフィード方法が挙げられる。
【0035】
共重合体Aは、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の公知の重合方法により上述した単量体を重合させることにより得ることができる。
【0036】
重合反応の温度は、用いる単量体成分の種類等によって異なるが、例えば、40~150℃であってもよい。重合反応の反応時間は、例えば、5~15時間であってもよい。
【0037】
共重合体Aの重合は、反応系に添加した単量体成分の重合反応の終了時におけるポリマー転化率が97%を超えたことを確認して反応を終了させることが好ましい。すなわち、共重合体Aの重合反応の終了時におけるポリマー転化率は、97%超であることが好ましい。ポリマー転化率は、反応系の固形分の質量、又は重合反応器の槽内を冷却した熱量から算出することができる。
【0038】
重合反応を終了させるために、重合停止剤を用いてもよい。重合反応の終了後、蒸留等により未反応の単量体成分等を除去してもよい。
【0039】
共重合体ラテックスのガラス転移温度、ゲル含有率、及び数平均粒子径は、特に限定されないが、共重合体ラテックスの重合安定性等の観点から、以下の範囲であることが好ましい。共重合体ラテックスのガラス転移温度は、-40~60℃であることが好ましく、-35~30℃であることがより好ましい。共重合体ラテックスの数平均粒子径は、50~300nmであることが好ましく、70~250nmであることがより好ましい。共重合体ラテックスのゲル含有率は、20~95質量%であることが好ましい。共重合体ラテックスのガラス転移温度、ゲル含有率、及び数平均粒子径は、共重合体ラテックスの重合時に使用する乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤等の種類、使用量、及び添加方法、並びに、水の割合等を適宜調整することにより調整することができる。共重合体ラテックスのガラス転移温度、ゲル含有率、及び数平均粒子径は、それぞれ後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0040】
共重合体ラテックスは、加熱減圧蒸留、水蒸気蒸留等の方法により、未反応の単量体成分及び他の低沸点成分が除去されていることが好ましい。
【0041】
共重合体ラテックスは、分散安定性及び活物質への被覆性の観点から、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のpH調整剤を添加することにより、pHを調整してもよい。共重合体ラテックスのpHは、5~9であることが好ましく、5.5~8.5であることがより好ましい。
【0042】
[二酸化炭素分離膜用組成物]
上述した共重合体ラテックスは、二酸化炭素分離膜用組成物(以下、「組成物B」ともいう)として用いることができる。すなわち、本発明の他の一実施形態は、上述した共重合体ラテックスを含有する二酸化炭素分離膜用組成物である。組成物Bは、共重合体Aを少なくとも含有する。組成物Bにおける共重合体Aの含有量は、例えば、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、93質量%以上、又は95質量%以上であってもよい。
【0043】
組成物Bは、共重合体ラテックスに加えて、酸化亜鉛を更に含むことが好ましい。組成物Bが酸化亜鉛を更に含むことにより、優れた二酸化炭素選択透過性、十分な二酸化炭素透過性、及び強度を有する二酸化炭素分離膜を得やすくなる。
【0044】
酸化亜鉛の含有量は、共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、0.8質量部以上、又は1質量部以上であってもよい。酸化亜鉛の含有量は、共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に対して、3質量部以下であることが好ましく、5質量部以下、4質量部以下、3質量部以下、2.5質量部以下、2質量部以下、1.8質量部以下、又は1.5質量部以下であってもよい。
【0045】
組成物Bは、天然ゴムラテックス、イソプレンゴムラテックス等のゴムラテックスを更に含有してもよい。すなわち、上述した共重合体ラテックスは、その使用目的に応じて他のラテックスと混合して用いてもよい。
【0046】
組成物Bは、pH調整剤(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア水等)、加硫剤(コロイド硫黄、チウラムジスルフィド等)、加硫促進剤(ジアルキルジチオカルバミン酸塩、キサントゲン酸塩等)、加硫促進助剤(リサージ(PbO)、鉛丹(Pb3O4)、酸化マグネシウム等)、老化防止剤(スチレン化フェノール、イミダゾール類、パラフェニレンジアミン等)、着色剤(二酸化チタン、ファーストイエロー、フタロシアンブルー、群青等)などを更に含有してもよい。
【0047】
[二酸化炭素分離膜]
上述した二酸化炭素分離膜用組成物から二酸化炭素分離膜を形成することができる。二酸化炭素分離膜は、少なくとも共重合体Aを含有する。すなわち、本発明の他の一実施形態は、脂肪族共役ジエン系単量体単位を有する共重合体を含有し、共重合体における脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が10~80質量%である、二酸化炭素分離膜である。
【0048】
二酸化炭素分離膜は、共重合体Aに加えて、組成物Bが含有し得る成分(例えば、酸化亜鉛、上述した共重合体ラテックス以外のラテックス)を含有してもよい。二酸化炭素分離膜は、酸化亜鉛を含有することにより、より優れた二酸化炭素選択透過性、二酸化炭素透過性、及び強度を実現しやすくなる。
【0049】
二酸化炭素分離膜の二酸化炭素透過率は、二酸化炭素透過性がより優れる観点から、10×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以上、30×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以上、60×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以上、100×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以上、150×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以上、200×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以上、250×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以上、又は300×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以上であってもよい。二酸化炭素分離膜の二酸化炭素透過率は、例えば、500×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以下であってもよい。二酸化炭素分離膜の二酸化炭素透過率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0050】
二酸化炭素分離膜の窒素透過率は、例えば、12×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以下、9×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以下、6×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以下、3×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以下、又は1.5×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以下であってもよい。二酸化炭素分離膜の窒素透過率は、例えば、0.1×1011cm3・cm/cm2・s・cmHg以上であってもよい。二酸化炭素分離膜の窒素透過率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0051】
二酸化炭素分離膜の二酸化炭素選択透過率(二酸化炭素透過率/窒素透過率)は、二酸化炭素選択透過性がより優れる観点から、25以上、30以上、又は34以上であってもよい。二酸化炭素分離膜の二酸化炭素選択透過率(二酸化炭素透過率/窒素透過率)は、例えば、50以下であってもよい。
【0052】
二酸化炭素分離膜の100%伸び時応力は、柔軟性がより優れる観点から、10MPa以下、8MPa以下、5MPa以下、又は3MPa以下であってもよい。二酸化炭素分離膜の100%伸び時応力は、例えば、1.0MPa以上であってもよい。二酸化炭素分離膜の100%伸び時応力は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0053】
二酸化炭素分離膜の破断時応力は、強度がより優れる観点から、5MPa以上、10MPa以上、15MPa以上、20MPa以上、又は25MPa以上であってもよい。二酸化炭素分離膜の破断時応力は、例えば、50MPa以下であってもよい。二酸化炭素分離膜の破断時応力は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0054】
二酸化炭素分離膜の厚さは、例えば、5μm以上、50μm以上、又は100μm以上であってもよく、1000μm以下、500μm以下、又は300μm以下であってもよい。
【0055】
二酸化炭素分離膜は、例えば、上述した二酸化炭素分離膜用組成物を塩凝固法により凝固させる工程を含む方法により製造することができる。すなわち、本発明の他の一実施形態は、二酸化炭素分離膜用組成物を塩凝固法により凝固させる工程を備え、二酸化炭素分離膜用組成物が、脂肪族共役ジエン系単量体単位を有する共重合体を含有し、共重合体における脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が10~80質量%である、二酸化炭素分離膜の製造方法である。
【0056】
組成物Bを塩凝固法により凝固させる方法ついて説明する。まず、基材の表面に凝固液を塗布する。凝固液は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム等のカルシウム塩;塩化マグネシウム等のマグネシウム塩などの金属塩(凝固剤)を水、又はアルコール、ケトン等の親水性有機溶媒に溶解させたものである。凝固液中の金属塩の濃度は、5~50質量%であってよく、好ましくは10~30質量%である。凝固液は、必要に応じてノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等の界面活性剤;炭酸カルシウム、タルク、シリカゲル等の充填材を含有してもよい。
【0057】
凝固液を基材に塗布した後、乾燥させることにより基材の表面に凝固剤を含む塗膜を形成する。次いで、凝固剤を含む塗膜に二酸化炭素分離膜用組成物を塗布する。このとき、凝固剤と共重合体ラテックスが反応して、基材の表面に被膜が形成される。凝固剤と反応しなかった過剰な二酸化炭素分離膜用組成物を除去した後、基材の表面に形成された被膜を水洗、乾燥させて、基材の表面から被膜を剥離することにより二酸化炭素分離膜が得られる。
【0058】
二酸化炭素分離膜は、例えば、上述した二酸化炭素分離膜用組成物を乾燥させる工程を含む方法により製造することができる。すなわち、本発明の他の一実施形態は、二酸化炭素分離膜用組成物を乾燥させる工程を備え、二酸化炭素分離膜用組成物が、脂肪族共役ジエン系単量体単位を有する共重合体を含有し、共重合体における脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が10~80質量%である、二酸化炭素分離膜の製造方法である。
【0059】
二酸化炭素分離膜用組成物を乾燥させる方法としては、例えば、二酸化炭素分離膜用組成物を基材(例えば、ガラス基材)に塗布した後、室温(20~25℃において、24時間以上放置する方法が挙げられる。乾燥時間を短くする観点から、二酸化炭素分離膜を加熱して、乾燥させてもよい。乾燥後、基材に形成された被膜を剥離することにより、二酸化炭素分離膜を得ることができる。
【実施例0060】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
<共重合体ラテックス1(重合例1)の調製>
耐圧性の重合反応器に、溶媒として純水90質量部、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6質量部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.6質量部を加えて撹拌した。次いで、重合反応器に、表1に示した単量体成分(単位:質量部)とその他の化合物(単位:質量部)を加えて、70℃(重合温度)に昇温後、8時間(重合時間)重合を行った。添加した単量体成分のポリマー転化率が97%を超えたことを確認した後、重合停止剤を添加して重合を終了し、重合反応器の槽内の温度を35℃以下になるまで冷却した。次いで、pH調整剤として水酸化ナトリウム水溶液0.4質量部(固形分量)を添加して、30分間保持した後、加熱減圧蒸留により未反応の単量体成分等を除去して、共重合体ラテックス1(重合例1)を得た。
【0062】
<共重合体ラテックス2~13(重合例2~13)の調製>
重合に用いた各成分(単位:質量部)及び重合条件を表1に示す条件に変更したこと以外は、共重合体ラテックス1(重合例1)と同様にして共重合体ラテックスを得た。
【0063】
【0064】
<ガラス転移温度の測定>
調製した各共重合体ラテックスをガラス板に約0.5g塗り、70℃で4時間乾燥させてフィルムを作製した。フィルムをDSC試験用のアルミニウムパンにセットし、示差走査熱量計(DSC6200、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて測定温度-100~100℃、昇温速度10℃/分でDSC曲線を得た。得られたDSC曲線のピークから相変化の吸熱の開始点を読み取り、共重合体ラテックスのガラス転移温度(℃)を求めた。相変化が2つ以上確認された場合は、最も温度が低い吸熱の開始点をガラス転移温度とした。測定結果を表1に示す。
【0065】
<ゲル含有量(トルエン不溶分)の測定>
調製した各共重合体ラテックスを用いて、温度80℃、湿度85%の雰囲気にてフィルムを作製した。作製したフィルムを約1g秤量し(秤量値:X(g))、これを400mLのトルエンに入れて、48時間放置し、膨潤溶解させた。その後、300メッシュの金網で濾過し、金網に捕捉されたトルエン不溶分を乾燥させた後、秤量した(秤量値:Y(g))。作製したフィルムの秤量値Xに対する、トルエン不溶分の秤量値Yの百分率からゲル含有量を算出した。測定結果を表1に示す。
ゲル含有量(質量%)=(Y/X)×100
【0066】
<数平均粒子径の測定>
調製した各共重合体ラテックスの数平均粒子径(μm)を光子相関法による動的光散乱法により測定した。数平均粒子径の測定は、FPAR-1000(大塚電子製)を用いて行った。測定結果を表1に示す。
【0067】
<二酸化炭素分離膜用組成物の調製>
(実施例1~10、比較例1~2)
調製した各共重合体ラテックスに下記の成分を加えて、二酸化炭素分離膜用組成物(固形分濃度:32質量%)を得た。
<二酸化炭素分離膜用組成物> (固形分量)
共重合体ラテックス 100.0質量部
酸化亜鉛 1.5質量部
コロイド硫黄 0.6質量部
ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛 0.6質量部
二酸化チタン 1.5質量部
水酸化カリウム 0.7質量部
【0068】
(実施例11~14)
用いた共重合体ラテックスの種類、及び共重合体ラテックス100質量部に対する酸化亜鉛の配合量を表2に示す条件に変更したこと以外は、実施例1~10と同様に二酸化炭素分離膜用組成物を得た。
【0069】
<二酸化炭素分離膜の作製(塩凝固法)>
(実施例1~14、比較例1~2)
凝固液として濃度15質量%の硝酸カルシウム水溶液を用意し、Wirebar#12を用いて塗工板紙(基材)の表面に塗布して、120℃の熱風循環式乾燥機中で1分間乾燥させた。基材の凝固液を塗布した面が内側となるようにして、箱状の基材を成形した。この箱状の基材に、十分な量の二酸化炭素分離膜用組成物を流延して、30秒間静置した。凝固していない組成物を除去した後、さらに40秒間静置して、箱状の基材の凝固液を塗布した面側に被膜を形成した。次いで、被膜が形成された箱状の基材に、十分な量の45℃の温水を流延して、60秒間温水洗浄した。箱状の基材に形成された被膜を、室温で2時間乾燥させた後、120℃で15分間加熱処理した。次いで、乾燥後の被膜を基材から剥離し、厚みが約100μmの二酸化炭素分離膜を得た。
【0070】
<二酸化炭素分離膜の作製(乾燥法)>
(実施例15~20)
二酸化炭素分離膜用組成物100質量部に2質量%カルボキシメチルセルロース(セロゲンEP、第一工業製薬株式会社製)水溶液を固形分量が2質量部となるように添加して塗布液を得た。得られた塗布液をクリアランスが500μmのアプリケータを用いてガラス板上に塗布し、室温で24時間乾燥した後、120℃で15分間加熱処理した。次いで、乾燥後の被膜をガラス板から剥離し、厚みが約100μmの二酸化炭素分離膜を得た。
【0071】
<ガス透過率の測定>
作製した各二酸化炭素分離膜の二酸化炭素の単独ガス及び窒素の単独ガスのガス透過率を以下の測定条件でそれぞれ測定した。測定結果を表2に示す。
測定機器:ガス透過率測定装置 GTR-10XACT(GTRテック株式会社製)
検出器:ガスクロマトグラフ G2700(ヤナコテクニカルサイエンス株式会社製)
測定温度:22℃
測定面積:15.2cm2
サンプルガス圧力:76cmHg
【0072】
<二酸化炭素選択透過率の算出>
上述のガス透過率の測定結果を用いて、下記式から二酸化炭素選択透過率を算出した。測定結果を表2に示す。
二酸化炭素選択透過率=(二酸化炭素のガス透過率)/(窒素のガス透過率)
【0073】
<強度及び柔軟性の評価>
JIS K6251に従って、作製した各二酸化炭素分離膜に対して引張試験を行い、100%伸び時の応力と、破断時応力を測定した。測定結果を表2に示す。
【0074】
上記のとおり、脂肪族共役ジエン系単量体単位を有する共重合体を含有し、共重合体における脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が10~80質量%である、二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックスを用いることにより、優れた二酸化炭素選択透過性及び十分な二酸化炭素透過性を有し、且つ、優れた強度及び柔軟性を有する二酸化炭素分離膜を得ることができる。
上述した二酸化炭素分離膜は、例えば、空調(換気)システムで好適に用いることができる。二酸化炭素分離膜を適用した空調(換気)システムが設置される場所としては、一般家庭、オフィスビル等の建築物;自動車、鉄道、航空機、船舶等の輸送機器などが挙げられる。本発明の一実施形態に係る二酸化炭素分離膜は、優れた強度及び柔軟性を有するため、複雑な形状であっても形成することが可能である。また、本発明の一実施形態に係る二酸化炭素分離膜は、優れた二酸化炭素選択透過性及び十分な二酸化炭素透過性を有するため、狭い空間(例えば、自動車等の輸送機器)に設置される空調(換気)システムに対しても好適に用いることができる。
また、人は呼吸によって空気中の酸素を取り込み、二酸化炭素を多く含む呼気を吐き出しているため、閉鎖された空間では二酸化炭素濃度が上昇する。特に、空間が狭くなるほど、人の密度が高くなるほど二酸化炭素濃度は顕著に上昇しやすい。二酸化炭素濃度が上昇すると、疲労感の増大、注意力の低下、眠気の誘発等のように人体に影響を及ぼすことが知られている。二酸化炭素濃度は、換気によって外気を導入することで低下させることができるが、冷房、暖房をしている場合、換気により快適な室温を維持できなくなるため、快適な室温に戻すために多くのエネルギーを消費する必要が生じ、エネルギー効率が低くなる。一方、本発明の一実施形態に係る二酸化炭素分離膜を適用した空調(換気)システムによれば、室内に外気を導入せずに二酸化炭素濃度を低減することができるため、冷房、暖房のエネルギー消費を抑制することができ、エネルギー効率を向上させることができる。
脂肪族共役ジエン系単量体単位と、シアン化ビニル系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体単位、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体単位、エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位、不飽和カルボン酸アミド系単量体単位、及び不飽和二重結合を2つ以上含有する多官能エチレン系不飽和単量体単位からなる群より選ばれる少なくとも一種と、のみからなる共重合体(但し、スチレンとブタジエンとの共重合体、ABS樹脂、及び臭素化スチレン-ブタジエンコポリマーを除く)を含有し、
前記共重合体における前記脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が10~80質量%である、二酸化炭素分離膜用共重合体ラテックス。
脂肪族共役ジエン系単量体単位と、シアン化ビニル系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体単位、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体単位、エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位、不飽和カルボン酸アミド系単量体単位、及び不飽和二重結合を2つ以上含有する多官能エチレン系不飽和単量体単位からなる群より選ばれる少なくとも一種と、のみからなる共重合体(但し、スチレンとブタジエンとの共重合体、ABS樹脂、及び臭素化スチレン-ブタジエンコポリマーを除く)を含有し、
前記共重合体における前記脂肪族共役ジエン系単量体単位の含有量が10~80質量%である、二酸化炭素分離膜。