(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003356
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】三次元造形用ステージ、および、三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/245 20170101AFI20240105BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240105BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20240105BHJP
【FI】
B29C64/245
B33Y30/00
B29C64/295
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102438
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大毅
(72)【発明者】
【氏名】合津 昌幸
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP06
4F213AP11
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL73
(57)【要約】
【課題】ヒーターの平面度が造形ステージの平面度に影響することによって造形精度に影響を与える可能性を低くできる三次元造形用ステージを提供する。
【解決手段】三次元造形用ステージは、開口を有し、平面度を調整した基準面を有する載置部と、開口を覆うように基準面の上に載置され、造形層が積層される造形面を有する造形ステージと、造形ステージの下方に配置され、造形ステージを加熱する加熱部と、開口を介して、加熱部を造形ステージに押し付ける押し付け部と、造形ステージを基準面に相対的に押さえる押さえ部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有し、平面度を調整した基準面を有する載置部と、
前記開口を覆うように前記基準面の上に載置され、造形層が積層される造形面を有する造形ステージと、
前記造形ステージの下方に配置され、前記造形ステージを加熱する加熱部と、
前記開口を介して、前記加熱部を前記造形ステージに押し付ける押し付け部と、
前記造形ステージを前記基準面に相対的に押さえる押さえ部と、を備える、
三次元造形用ステージ。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形用ステージであって、
前記造形ステージの側面は、下方側の端部が上方側の端部よりも前記造形面から水平方向に離れるように傾斜した、第1傾斜面を有し、
前記押さえ部は、前記第1傾斜面に対向する第2傾斜面を有する、
三次元造形用ステージ。
【請求項3】
請求項2に記載の三次元造形用ステージであって、
前記造形面と前記第1傾斜面の成す角度は、前記造形ステージの内部側において95°以上135°以下である、
三次元造形用ステージ。
【請求項4】
請求項2に記載の三次元造形用ステージであって、
前記造形ステージを前記押さえ部に向かって付勢する付勢部を備える、
三次元造形用ステージ。
【請求項5】
請求項1に記載の三次元造形用ステージであって、
前記押さえ部は、前記造形面に沿った方向の前記造形ステージの位置を調整する位置調整機構を有する、
三次元造形用ステージ。
【請求項6】
請求項1に記載の三次元造形用ステージであって、
前記加熱部は、
前記造形面に垂直な方向から見て、ラバーヒーターを有さない第1領域と、
前記造形面に垂直な方向から見て、前記第1領域を取り囲み、前記ラバーヒーターを有する第2領域と、を有する、
三次元造形用ステージ。
【請求項7】
請求項1に記載の三次元造形用ステージであって、
前記基準面と前記加熱部は互いに離間し、
前記造形ステージは、
前記基準面と接する部分であって、取っ手が形成された第1部分と、
前記基準面と接する部分であって、前記取っ手が形成されていない第2部分と、を有し、
前記第1部分と前記基準面との接触面積は、前記第2部分と前記基準面との接触面積より小さい、
三次元造形用ステージ。
【請求項8】
請求項1に記載の三次元造形用ステージであって、
前記造形面には、予め定められた間隔を空けて複数の溝が形成されている、
三次元造形用ステージ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の三次元造形用ステージと、
造形材料を前記造形面に吐出するノズルと、を備える、
三次元造形装置。
【請求項10】
請求項9に記載の三次元造形装置であって、
センサーを有し、
前記センサーは、前記載置部の側面に沿う方向に前記三次元造形用ステージに対して相対的に移動しつつ、前記センサーと前記造形ステージとの距離を複数点測定する、
三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形用ステージ、および、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、造形ステージを加熱する複数の面状ヒーターが造形ステージに設けられた造形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒーターの上に造形ステージを載置する場合、ヒーターの平面度が造形ステージの平面度に影響することがあり、造形精度に影響を与える可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、三次元造形用ステージが提供される。この三次元造形用ステージは、開口を有し、平面度を調整した基準面を有する載置部と、前記開口を覆うように前記基準面の上に載置され、造形層が積層される造形面を有する造形ステージと、前記造形ステージの下方に配置され、前記造形ステージを加熱する加熱部と、前記開口を介して、前記加熱部を前記造形ステージに押し付ける押し付け部と、前記造形ステージを前記基準面に相対的に押さえる押さえ部と、を備える。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、前記三次元造形用ステージと、造形材料を前記造形面に吐出するノズルと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】フラットスクリューの概略構成を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示した、Y方向に垂直な断面であるVI-VI断面の断面図である。
【
図8】第2押さえ部およびその近傍の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、三次元造形装置10の概略構成を示す説明図である。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を表す矢印が示されている。X方向およびY方向は、水平面に平行な方向である。Z方向は、鉛直方向に平行な方向である。
図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を指し示している。向きを特定する場合には、矢印の指し示す方向である正の方向を「+」、矢印の指し示す方向とは反対の方向である負の方向を「-」として、方向表記に正負の符号を併用する。以下では、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。
【0009】
三次元造形装置10は、造形部100と、三次元造形用ステージ200と、位置変更部300と、センサー400と、制御部500と、を備える。
【0010】
制御部500は、三次元造形装置10全体の動作を制御する制御装置である。制御部500は、1つ、または、複数のプロセッサーと、メモリーと、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成される。制御部500は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、三次元造形物を造形するための造形処理を実行する機能等、種々の機能を発揮する。なお、制御部500は、コンピューターによって構成される代わりに、各機能の少なくとも一部を実現するための複数の回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0011】
造形部100は、制御部500の制御下において、固体状態の材料を可塑化させてペースト状にした造形材料を、三次元造形物の基台となる三次元造形用ステージ200上に吐出する。造形部100は、材料供給部20と、可塑化部30と、吐出部60と、を備える。
【0012】
材料供給部20は、造形材料を生成するための材料を可塑化部30に供給する。材料供給部20は、例えば、ホッパーによって構成される。材料供給部20には、ペレット状や粉末状の材料が収容されている。材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)などの熱可塑性樹脂が用いられる。材料供給部20の下方には、材料供給部20と可塑化部30を接続する連通路21が設けられている。材料供給部20は、連通路21を介して、可塑化部30に材料を供給する。
【0013】
可塑化部30は、材料供給部20から供給された材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の造形材料を生成し、吐出部60へと導く。ここで、「可塑化」とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。可塑化部30は、フラットスクリュー40と、スクリューケース31と、駆動モーター32と、バレル50と、を備える。
【0014】
フラットスクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。フラットスクリュー40の上面側は、駆動モーター32に連結されている。フラットスクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内で回転する。フラットスクリュー40の回転軸RXの軸線方向は、Z方向に沿う方向である。フラットスクリュー40の回転速度は、制御部500が駆動モーター32の回転速度を制御することによって制御される。なお、フラットスクリュー40は、減速機を介して駆動モーター32によって駆動されてもよい。フラットスクリュー40は、ローター、あるいは、スクリューとも呼ばれる。
【0015】
バレル50は、フラットスクリュー40の-Z方向側に設置されている。バレル50の上面であるバレル上面51は、フラットスクリュー40の下面であるフラットスクリュー下面41に対向している。バレル50の中心には、吐出部60の流路62に連通する連通孔52が形成されている。バレル50の内部には、可塑化ヒーター53が設けられている。可塑化ヒーター53の温度は、制御部500によって制御される。
【0016】
図2は、フラットスクリュー40の概略構成を示す斜視図である。フラットスクリュー40は、回転軸RXに沿った方向における長さが回転軸RXに垂直な方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。フラットスクリュー下面41には、中央部42を中心に、渦状の溝部43が形成されている。溝部43は、フラットスクリュー40の側面に形成された材料投入口44に連通している。材料供給部20から供給される材料は、材料投入口44を通じて溝部43に供給される。溝部43は、凸条部45によって隔てられることにより形成されている。
図2には、溝部43が3本形成されている例を示しているが、溝部43の数は、1本でもよいし、2本以上であってもよい。なお、溝部43は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部42から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0017】
図3は、バレル50の概略平面図である。バレル上面51における連通孔52の回りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、その一端が連通孔52に接続され、連通孔52からバレル上面51の外周に向かって渦状に延びている。なお、案内溝54の一端は連通孔52に接続されていなくてもよい。また、バレル50には案内溝54が形成されていなくてもよい。
【0018】
フラットスクリュー40の溝部43に供給された材料は、フラットスクリュー40の回転と可塑化ヒーター53の加熱によって、溝部43内において可塑化されながら、溝部43に沿って流動し、造形材料としてフラットスクリュー40の中央部42へ導かれる。中央部42に流入した流動性を発現しているペースト状の造形材料は、連通孔52を介して吐出部60に供給される。なお、可塑化部30では、造形材料を構成する全ての種類の物質が可塑化していなくてもよい。造形材料は、造形材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が可塑化することによって、全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0019】
図1に示す吐出部60は、造形材料を吐出する。吐出部60は、ノズル61と、流路62と、流量調整部63と、吸引部64と、を備える。
【0020】
ノズル61は、流路62を通じて、バレル50の連通孔52に接続されている。ノズル61は、可塑化部30において生成された造形材料を、ノズル61の先端の吐出口65から三次元造形用ステージ200に向かって吐出する。ノズル61の周囲には、三次元造形用ステージ200上に吐出された造形材料の温度低下を抑制するヒーターが配置されてもよい。
【0021】
流量調整部63は、流路62内で回転することにより流路62の開度を変化させる。流量調整部63は、バタフライバルブによって構成されている。流量調整部63は、制御部500の制御下において、第1駆動部66によって駆動される。第1駆動部66は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。制御部500は、第1駆動部66を用いて、バタフライバルブの回転角度を制御することによって、可塑化部30からノズル61に流れる造形材料の流量、つまり、ノズル61から吐出される造形材料の流量を調整する。流量調整部63は、造形材料の流量を調整するとともに、造形材料の流出のオン/オフを制御する。
【0022】
吸引部64は、流路62において流量調整部63と吐出口65の間に接続されている。吸引部64は、ノズル61からの造形材料の吐出停止時に、流路62内の造形材料を一時的に吸引することによって、造形材料が吐出口65から糸を引くように垂れる尾引き現象を抑制する。吸引部64は、プランジャーにより構成されている。吸引部64は、制御部500の制御下において、第2駆動部67によって駆動される。第2駆動部67は、例えば、ステッピングモーターや、ステッピングモーターの回転力をプランジャーの並進運動に変換するラックアンドピニオン機構等によって構成される。
【0023】
制御部500は、ノズル61からの造形材料の吐出を停止させる場合は、まず、流量調整部63を制御して造形材料の流出をオフにし、その後、吸引部64を制御して造形材料を吸引する。ノズル61からの造形材料の吐出を再開させる場合は、吸引部64によって吸引した造形材料を、吸引部64を制御して送出した後に、流量調整部63を制御して造形材料の流出をオンにする。
【0024】
三次元造形用ステージ200は、ノズル61の吐出口65に対向する位置に配置されている。三次元造形装置10は、吐出部60から三次元造形用ステージ200の造形面121に向けて造形材料を吐出させて造形層を積層することによって三次元造形物を造形する。三次元造形用ステージ200の詳細については後述する。
【0025】
位置変更部300は、ノズル61と三次元造形用ステージ200との相対的な位置を変更する。位置変更部300は、ノズル61に対して三次元造形用ステージ200を移動させる。三次元造形用ステージ200に対するノズル61の相対的な位置の変化を、単に、ノズル61の移動とも呼ぶ。位置変更部300は、3つのモーターの駆動力によって、ステージをX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。各モーターは、制御部500の制御下にて駆動する。なお、位置変更部300は、三次元造形用ステージ200を移動させる構成ではなく、三次元造形用ステージ200を移動させずにノズル61を移動させる構成であってもよい。また、位置変更部300は、三次元造形用ステージ200とノズル61の両方を移動させる構成であってもよい。
【0026】
以下では、三次元造形用ステージ200について説明する。
図4は、三次元造形用ステージ200の斜視図である。
図5は、三次元造形用ステージ200の上面図である。
図6は、
図5に示した、Y方向に垂直な断面であるVI-VI断面の断面図である。三次元造形用ステージ200は、載置部110と、造形ステージ120と、加熱部130と、押し付け部140と、押さえ部150と、付勢部160と、を備える。
【0027】
図5に示すように、載置部110は、開口111と、凸部112と、基準面113と、を備える。載置部110の形状は、Z方向から見て枠状である。開口111は、載置部110の枠の内部である。凸部112は、載置部110において、その周辺よりも上面のZ方向の高さが高い部分である。基準面113は、凸部112の上面である。
図5では、基準面113を分かりやすく示すため、基準面113にハッチングが施されている。基準面113は、その平面度が小さくなるように、Z方向の高さが調整されている。基準面113の平面度は、例えば、100μm以下であることが好ましい。
【0028】
図6に示すように、載置部110および加熱部130の下方には、支持部170が設けられている。載置部110は、その上面がX方向およびY方向に平行となるように、支持部170の上面に固定された柱171の上に固定されている。柱171は、例えばインバー等の、加熱によって変形しにくい素材から形成されている。
【0029】
造形ステージ120は、開口111を覆うように基準面113の上に載置されている。
図5に示すように、造形ステージ120は、基準面113の一部と接している。
図4に示すように、造形ステージ120は、造形面121と、第1部分122と、第2部分123と、を有する。
【0030】
造形面121は、ノズル61から吐出された造形材料が積層される面である。造形面121には、予め定められた間隔を空けて複数の溝124が形成されている。本実施形態では、溝124は、Y方向に沿った方向に形成されている。なお、造形ステージ120には、溝124が形成されていなくてもよい。
【0031】
第1部分122は、造形ステージ120が基準面113と接する部分であって、取っ手が形成された部分である。第1部分122は、造形ステージ120の+X方向側の端部と、-X方向側の端部に設けられている。第2部分123は、造形ステージ120が基準面113と接する部分であって、取っ手が形成されていない部分である。第2部分123は、造形ステージ120の+Y方向側の端部と、-Y方向側の端部に設けられている。
図5に示すように、載置部110の+X方向側の端部および-X方向側の端部における基準面113の面積は、載置部110の+Y方向側の端部および-Y方向側の端部における基準面113の面積より小さい。そのため、第1部分122と基準面113との接触面積は、第2部分123と基準面113との接触面積より小さい。
【0032】
図7は、加熱部130の分解斜視図である。加熱部130は、第1アルミ板131と、ラバーヒーター132と、第2アルミ板133と、を備える。第1アルミ板131および第2アルミ板133の形状は、板状である。本実施形態では、ラバーヒーター132の形状は、中央に四角い穴が設けられた板状である。加熱部130は、第1領域134と、第2領域135を有する。第1領域134は、造形面121に垂直な方向、すなわちZ方向から見て、ラバーヒーター132を有さない領域である。第2領域135は、造形面121に垂直な方向、すなわちZ方向から見て、第1領域134を取り囲み、ラバーヒーター132を有する領域である。第1アルミ板131と、ラバーヒーター132と、第2アルミ板133は、-Z方向から+Z方向に、第2アルミ板133、ラバーヒーター132、第1アルミ板131の順に重ねられている。
【0033】
加熱部130は、造形ステージ120を加熱する。
図6に示すように、加熱部130は、造形ステージ120の下方に配置されており、載置部110と接触しないように、載置部110の開口111に設けられている。加熱部130と基準面113は、互いに離間している。加熱部130の下方には、加熱部130の熱が下方に伝わることを抑制するための断熱材136と、断熱材136を支持する断熱材受け137が設けられている。
【0034】
押し付け部140は、加熱部130の下方に設けられている。押し付け部140は、開口111を介して、加熱部130を造形ステージ120に下方から押し付ける。押し付け部140は、位置決めネジ141と、支柱142と、スペーサー143と、バネ144と、を備える。位置決めネジ141は、第1アルミ板131に固定されている。支柱142は、第2アルミ板133の下方に設けられている。支柱142は、その上面に設けられたねじ穴に位置決めネジ141がねじ込まれることによって加熱部130に固定される。支柱142は、その一部が支持部170に設けられた穴172の内部に位置している。スペーサー143は、支柱142と支持部170の隙間を埋めるように、支持部170の穴172に設けられている。バネ144は、支柱142の外周のうち、第2アルミ板133とスペーサー143の間に設けられている。加熱部130は、バネ144の弾性力によって上方向に付勢され、造形ステージ120に下方から押し付けられる。なお、押し付け部140は、一つではなく、加熱部130の下方に複数設けられていてもよい。
【0035】
図4に示す押さえ部150は、造形ステージ120を基準面113に相対的に押さえる。押さえ部150は、第1押さえ部151と、第2押さえ部152と、を備える。第1押さえ部151は、載置部110の-X方向側の端部に設けられている。第2押さえ部152は、載置部110の+Y方向側の端部に設けられている。第1押さえ部151および第2押さえ部152は、偏芯ピン153から構成されている。各偏芯ピン153は、ピン回転軸AXを有する。ピン回転軸AXの軸線方向は、Z軸に沿う方向である。ピン回転軸AXは、偏芯ピン153の中心からずれた位置に設けられている。偏芯ピン153は、ピン回転軸AXを回転軸として回転可能に設けられている。
【0036】
図8は、第2押さえ部152およびその近傍の斜視図である。造形ステージ120の側面は、下方側の端部が上方側の端部よりも造形面121から水平方向に離れるように傾斜した、第1傾斜面126を有する。造形面121と第1傾斜面126の成す角度Dは、造形ステージ120の内部側において95°以上135°以下であることが好ましい。押さえ部150は、造形ステージ120の第1傾斜面126に対向する第2傾斜面156を有する。押さえ部150の第2傾斜面156が造形ステージ120の第1傾斜面126に接触することで、造形ステージ120が基準面113に相対的に押さえられる。
【0037】
押さえ部150は、造形面121に沿った方向の造形ステージ120の位置を調整する位置調整機構157を有する。造形面121に沿った方向の造形ステージ120の位置は、ユーザーが偏芯ピン153をピン回転軸AX回りに回転させることによって調整される。ピン回転軸AXは偏芯ピン153の中心からずれた位置に設けられているため、偏芯ピン153がピン回転軸AX回りに回転されることにより、ピン回転軸AXと、第2傾斜面156の第1傾斜面126と接触する部分との距離が変化する。よって、偏芯ピン153がピン回転軸AX回りに回転されることにより、造形面121に沿った方向の造形ステージ120の位置が変化する。造形ステージ120の-X方向側の端部の位置は、ユーザーが第1押さえ部151の偏芯ピン153をピン回転軸AX回りに回転させることによって調整される。造形ステージ120の+Y方向側の端部の位置は、ユーザーが第2押さえ部152の偏芯ピン153をピン回転軸AX回りに回転させることによって調整される。押さえ部150は、造形ステージ120の溝124の方向と、載置部110のX方向に沿う側面との成す角度が、90°に近い角度となるように、造形面121に沿った方向の造形ステージ120の位置を調整する。
【0038】
図9は、付勢部160およびその近傍の斜視図である。付勢部160は、造形ステージ120を押さえ部150に向かって付勢する。付勢部160は、三次元造形用ステージ200の+X方向側の端部に設けられている。造形ステージ120の+X方向側の側面には、第1傾斜面126aが設けられている。造形面121と第1傾斜面126aの成す角度は、造形ステージ120の内部側において95°以上135°以下であることが好ましい。付勢部160は、第1傾斜面126aに対向する第3傾斜面161を有する。付勢部160は、第3傾斜面161を第1傾斜面126aに接触させることで、造形ステージ120を押さえ部150に向かって付勢する。なお、三次元造形用ステージ200は、付勢部160を備えていなくてもよい。
【0039】
図1に示すセンサー400は、載置部110の側面に沿う方向に三次元造形用ステージ200に対して相対的に移動しつつ、センサー400と造形ステージ120との距離を複数点測定する。センサー400は、例えば、レーザー変位計である。本実施形態では、センサー400は、載置部110の側面に沿う方向に移動可能に設けられている。本実施形態では、センサー400は、X方向に沿う方向またはY方向に沿う方向に移動可能に設けられている。センサー400は、三次元造形装置10が三次元造形物を造形する前に、制御部500の制御下において載置部110の側面に沿う方向に移動しつつ、センサー400から造形ステージ120の側面までの距離を測定する。センサー400がX方向に沿う方向に移動する場合、センサー400は、センサー400から造形ステージ120のX方向に沿う側面までの距離を測定する。センサー400がY方向に沿う方向に移動する場合、センサー400は、センサー400から造形ステージ120のY方向に沿う側面までの距離を測定する。センサー400が載置部110の一つの側面に沿う方向に移動しつつ造形ステージ120の側面までの距離を測定する際に、造形ステージ120の側面までの距離が予め定められた閾値を超えて変化した場合、制御部500は、制御部500に接続された表示部510に警告文を表示する。
【0040】
以上で説明した第1実施形態における三次元造形装置10によれば、造形ステージ120は、平面度が調整された基準面113の上に載置され、押し付け部140によって下方から加熱部130が押し付けられ、押さえ部150によって基準面113に相対的に押さえられている。造形ステージ120は、加熱部130の上に載置されていないため、加熱部130の平面度が造形ステージ120の平面度に及ぼす影響を小さくすることができ、結果として、加熱部130の平面度が造形精度に影響を及ぼす可能性を低くできる。
【0041】
また、造形ステージ120の第1部分122は、取っ手が形成されているため、取っ手からの放熱によって、第2部分123よりも温度が下がりやすい。本実施形態では、第1部分122と基準面113との接触面積は、第2部分123と基準面113との接触面積より小さいため、第1部分122から載置部110に移動する熱量を、第2部分123から載置部110に移動する熱量より少なくできる。そのため、造形ステージ120の温度分布をより均一にできる。
【0042】
また、本実施形態では、加熱部130は、造形面121に垂直な方向から見て、ラバーヒーター132を有さない第1領域134を有するため、加熱部130の中心部の温度を下げることができる。これにより、加熱部130の中心部の温度が高くなることを抑制でき、造形ステージ120の温度分布をより均一にできる。
【0043】
また、本実施形態では、造形ステージ120の側面は、第1傾斜面126を有し、造形面121と第1傾斜面126の成す角度Dは、造形ステージ120の内部側において95°以上135°以下であることが好ましい。そのため、造形面121と第1傾斜面126の成す角度Dが造形ステージ120の内部側において135°より大きい場合と比べて、造形ステージ120が加熱部130によって加熱された場合に、造形ステージ120が押さえ部150に食い込み、造形ステージ120と押さえ部150が分離できなくなることを抑制できる。
【0044】
また、本実施形態では、押さえ部150は、造形ステージ120の第1傾斜面126に対向する第2傾斜面156を有するため、造形ステージ120が+Z方向に浮き上がることを抑制できる。
【0045】
また、本実施形態では、押さえ部150が位置調整機構157を有するため、造形面121に沿った方向の造形ステージ120の位置をユーザーが調整できる。さらに、本実施形態では、三次元造形装置10は、載置部110の側面に沿う方向に移動しつつ、センサー400と造形ステージ120との距離を測定するセンサー400を備え、センサー400が載置部110の一つの側面に沿う方向に移動しつつ造形ステージ120の側面までの距離を測定する際に、造形ステージ120の側面までの距離が予め定められた閾値を超えて変化した場合、制御部500が表示部510に警告文を表示する。そのため、ユーザーは、載置部110の側面と造形ステージ120の側面が平行でないこと、すなわち、造形ステージ120の溝124の方向と、載置部110のX方向に沿う側面との成す角度が90°付近でないことを知ることができる。また、センサー400によって測定された造形ステージ120の側面までの距離に基づいて、ユーザーが押さえ部150を調整することにより、造形ステージ120の溝124の方向と、載置部110のX方向に沿う側面との成す角度が、90°に近い角度となるように、造形面121に沿った方向の造形ステージ120の位置を調整できる。この結果、溝124に対して造形材料を精度良く配置できる。
【0046】
B.他の実施形態:
(B-1)上記実施形態において、センサー400は載置部110の側面に沿う方向に移動可能に設けられている。これに対して、センサー400の位置が固定され、三次元造形用ステージ200が載置部110の側面に沿う方向に移動可能に設けられていてもよい。
【0047】
(B-2)上記実施形態において、造形ステージ120の側面は第1傾斜面126を有さなくてもよく、押さえ部150は第2傾斜面156を有さなくてもよい。
【0048】
(B-3)上記実施形態において、押さえ部150は、位置調整機構157を有さなくてもよい。
【0049】
(B-4)上記実施形態において、加熱部130は、第1領域134および第2領域135を有さなくてもよい。
【0050】
(B-5)上記実施形態において、造形ステージ120は、第1部分122と基準面113との接触面積が、第2部分123と基準面113との接触面積より小さくなくてもよい。
【0051】
(B-6)上記実施形態において、三次元造形装置10は、造形部100と、位置変更部300と、センサー400と、制御部500の一部または全部を備えていなくてもよい。
【0052】
C.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0053】
(1)本開示の一形態によれば、三次元造形用ステージが提供される。この三次元造形用ステージは、開口を有し、平面度を調整した基準面を有する載置部と、前記開口を覆うように前記基準面の上に載置され、造形層が積層される造形面を有する造形ステージと、前記造形ステージの下方に配置され、前記造形ステージを加熱する加熱部と、前記開口を介して、前記加熱部を前記造形ステージに押し付ける押し付け部と、前記造形ステージを前記基準面に相対的に押さえる押さえ部と、を備える。このような形態によれば、造形ステージが加熱部の上に載置されていないため、加熱部の平面度が造形ステージの平面度に及ぼす影響を小さくすることができる。したがって、加熱部の平面度が造形精度に影響を及ぼす可能性を低くできる。
【0054】
(2)上記形態において、前記造形ステージの側面は、下方側の端部が上方側の端部よりも前記造形面から水平方向に離れるように傾斜した、第1傾斜面を有し、前記押さえ部は、前記第1傾斜面に対向する第2傾斜面を有してもよい。このような形態によれば、造形ステージが+Z方向に浮き上がることを抑制できる。
【0055】
(3)上記形態において、前記造形面と前記第1傾斜面の成す角度は、造形ステージの内部側において95°以上135°以下であってもよい。このような形態によれば、造形ステージが加熱部によって加熱された場合に、造形ステージが押さえ部に食い込み、造形ステージと押さえ部が分離できなくなることを抑制できる。
【0056】
(4)上記形態において、前記造形ステージを前記押さえ部に向かって付勢する付勢部を備えてもよい。このような形態によれば、造形ステージが基準面の上で移動することを抑制できる。
【0057】
(5)上記形態において、前記押さえ部は、前記造形面に沿った方向の前記造形ステージの位置を調整する位置調整機構を有してもよい。このような形態によれば、造形面に沿った方向の造形ステージの位置をユーザーが調整できる。
【0058】
(6)上記形態において、前記加熱部は、前記造形面に垂直な方向から見て、ラバーヒーターを有さない第1領域と、前記造形面に垂直な方向から見て、前記第1領域を取り囲み、前記ラバーヒーターを有する第2領域と、を有してもよい。このような形態によれば、造形ステージの温度分布をより均一にできる。
【0059】
(7)上記形態において、前記基準面と前記加熱部は互いに離間し、前記造形ステージは、前記基準面と接する部分であって、取っ手が形成された第1部分と、前記基準面と接する部分であって、取っ手が形成されていない第2部分と、を有し、前記第1部分と前記基準面との接触面積は、前記第2部分と前記基準面との接触面積より小さくてもよい。このような形態によれば、第1部分から載置部に移動する熱量を、第2部分から載置部に移動する熱量より少なくできる。そのため、造形ステージの温度分布をより均一にできる。
【0060】
(8)上記形態において、前記造形面には、予め定められた間隔を空けて複数の溝が形成されていてもよい。このような形態によれば、溝に造形材料が注入されるため、造形面に吐出された造形材料を造形面上で固定しやすくできる。
【0061】
(9)本開示の第2の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、前記三次元造形用ステージと、造形材料を前記造形面に吐出するノズルと、を備える。
【0062】
(10)上記形態において、センサーを有し、前記センサーは、前記載置部の側面に沿う方向に前記三次元造形用ステージに対して相対的に移動しつつ、前記センサーと前記造形ステージとの距離を複数点測定してもよい。このような形態によれば、センサーによって測定された距離に基づいて、載置部の側面と造形ステージの側面が平行になるように、造形ステージの位置をユーザーが調整できる。
【符号の説明】
【0063】
10…三次元造形装置、20…材料供給部、21…連通路、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、41…フラットスクリュー下面、42…中央部、43…溝部、44…材料投入口、45…凸条部、50…バレル、51…バレル上面、52…連通孔、53…可塑化ヒーター、54…案内溝、60…吐出部、61…ノズル、62…流路、63…流量調整部、64…吸引部、65…吐出口、66…第1駆動部、67…第2駆動部、100…造形部、110…載置部、111…開口、112…凸部、113…基準面、120…造形ステージ、121…造形面、122…第1部分、123…第2部分、124…溝、126…第1傾斜面、130…加熱部、131…第1アルミ板、132…ラバーヒーター、133…第2アルミ板、134…第1領域、135…第2領域、136…断熱材、137…断熱材受け、140…押し付け部、141…ネジ、142…支柱、143…スペーサー、144…バネ、150…押さえ部、151…第1押さえ部、152…第2押さえ部、153…偏芯ピン、156…第2傾斜面、157…位置調整機構、160…付勢部、161…第3傾斜面、170…支持部、171…柱、172…穴、200…三次元造形用ステージ、300…位置変更部、400…センサー、500…制御部、510…表示部、AX…ピン回転軸、RX…フラットスクリューの回転軸