(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033566
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】回転子及び回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20240306BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137216
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】上栗 伸仁
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA04
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA14
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP03
(57)【要約】
【課題】回転子に埋め込まれた永久磁石の温度上昇を抑える構造を改善する。
【解決手段】回転子は、中心軸に沿って延びるシャフトと、前記シャフトが固定された鉄心と、前記鉄心の周方向に磁極を形成する磁石と、を有し、前記磁石は、前記鉄心の径方向位置を異ならせた複数層のそれぞれに配置され、前記磁石は、前記鉄心を軸方向に貫通して軸方向で複数に分割され、周辺環境に応じて軸方向での分割数が異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って延びるシャフトと、
前記シャフトが固定された鉄心と、
前記鉄心の周方向に磁極を形成する磁石と、
を有し、
前記磁石は、前記鉄心の径方向位置を異ならせた複数層のそれぞれに配置され、
前記磁石は、前記鉄心を軸方向に貫通して軸方向で複数に分割され、周辺環境に応じて軸方向での分割数が異なる、
ことを特徴とする回転子。
【請求項2】
前記周辺環境は、放熱のしやすさ、損失密度、及び減磁のしやすさのうちの少なくとも一つである、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
前記周辺環境が放熱のしやすさである場合に、前記磁石は、放熱しやすい箇所では分割数が少なく、放熱しにくい箇所では分割数が多い、
ことを特徴とする請求項2に記載の回転子。
【請求項4】
前記磁石は、軸方向端部では分割数が少なく、軸方向中央では分割数が多い、
ことを特徴とする請求項3に記載の回転子。
【請求項5】
前記周辺環境が損失密度である場合に、損失密度が高い前記磁石は分割数が多く、損失密度が低い前記磁石は分割数が少ない、
ことを特徴とする請求項2に記載の回転子。
【請求項6】
前記周辺環境が損失密度である場合に、径方向位置が異なる層のうち損失密度が高い層に配置された前記磁石は分割数が多く、損失密度が低い層に配置された前記磁石は分割数が少ない、
ことを特徴とする請求項5に記載の回転子。
【請求項7】
前記周辺環境が減磁のしやすさである場合に、減磁しやすい前記磁石は分割数が多く、減磁しやすい前記磁石同士の間に配置された前記磁石は分割数が少ない、
ことを特徴とする請求項2に記載の回転子。
【請求項8】
両端に空隙を有する前記磁石は分割数が多く、両端に空隙を有する前記磁石同士の間に配置された前記磁石は分割数が少ない、
ことを特徴とする請求項2に記載の回転子。
【請求項9】
請求項1に記載のロータと、
前記ロータの径方向外側にエアギャップを介して配置されるステータと、
を有する、
ことを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばEV、HEV、PHEV等の電動車両で用いられるモータにおいて、モータの過熱は性能や信頼性の低下を招くため、発熱の低減は重要な課題である。従来、モータの発熱を低減する技術が検討されている。
【0003】
電動車両で用いられるモータとしては、例えば、永久磁石を埋め込んで配置した埋込磁石形回転子を採用したモータが用いられる。このようなモータでは、駆動中に永久磁石内に発生する渦電流に起因して発熱することが知られている。特許文献1には、永久磁石を回転子の回転軸に沿った方向(以下、軸方向という)に分割することで、磁石の渦電流損を下げ、減磁作用を引き起こす磁石温度の増大を防ぐ発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、永久磁石を軸方向に分割する際には、永久磁石の温度が所望の最大磁石温度以下になるように、一定寸法で分割された磁石を配置することが考えられる。軸方向両端部に配置された磁石は、冷却効率が良いため平均磁石温度よりも低い傾向にあり、軸方向中央部に配置された磁石は、冷却効率が悪いため平均磁石温度よりも高い傾向にある。このため、軸方向中央部が最大磁石温度となり、軸方向中央部に最適な分割数が決定される。しかしながら、分割数を増やすほど生産工程が増えるためコストの肥大化につながる。
【0006】
また、複数個の磁石によって構成される回転子については、回転軸の径方向で内径側に配置される磁石よりも外径側に配置される磁石の方が反磁界の影響を受けやすく、減磁作用を引き起こしやすい。
【0007】
従来、例えば径方向に複数の磁石を配置する構成において、温度を抑えながらも分割数を増やしすぎることのない構造については検討されておらず、永久磁石の温度上昇を抑える構造に改善の余地があった。
【0008】
本発明は、回転子に埋め込まれた永久磁石の温度上昇を抑える構造を改善した回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る回転子は、中心軸に沿って延びるシャフトと、前記シャフトが固定された鉄心と、前記鉄心の周方向に磁極を形成する磁石と、を有し、前記磁石は、前記鉄心の径方向位置を異ならせた複数層のそれぞれに配置され、前記磁石は、前記鉄心を軸方向に貫通して軸方向で複数に分割され、周辺環境に応じて軸方向での分割数が異なる。
【0010】
上記の一態様の回転子において、前記周辺環境は、放熱のしやすさ、損失密度、及び減磁のしやすさのうちの少なくとも一つである。
【0011】
上記の一態様の回転子において、前記周辺環境が放熱のしやすさである場合に、前記磁石は、放熱しやすい箇所では分割数が少なく、放熱しにくい箇所では分割数が多い。
【0012】
上記の一態様の回転子において、前記磁石は、軸方向端部では分割数が少なく、軸方向中央では分割数が多い。
【0013】
上記の一態様の回転子において、前記周辺環境が損失密度である場合に、損失密度が高い前記磁石は分割数が多く、損失密度が低い前記磁石は分割数が少ない。
【0014】
上記の一態様の回転子において、前記周辺環境が損失密度である場合に、径方向位置が異なる層のうち損失密度が高い層に配置された前記磁石は分割数が多く、損失密度が低い層に配置された前記磁石は分割数が少ない。
【0015】
上記の一態様の回転子において、前記周辺環境が減磁のしやすさである場合に、減磁しやすい前記磁石は分割数が多く、減磁しやすい前記磁石同士の間に配置された前記磁石は分割数が少ない。
【0016】
上記の一態様の回転子において、両端に空隙を有する前記磁石は分割数が多く、両端に空隙を有する前記磁石同士の間に配置された前記磁石は分割数が少ない。
【0017】
本発明の一態様に係る回転電機は、前記ロータと、前記ロータの径方向外側にエアギャップを介して配置されるステータと、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、回転子に埋め込まれた永久磁石の温度上昇を抑える構造を改善した回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るモータの横断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るモータにおいて、
図1に示した横断面図の一部を拡大して示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る永久磁石6の分割パターンの一例を示す概略側断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る永久磁石6の分割パターンの一例を示す概略側断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る永久磁石6の分割パターンの一例を示す概略側断面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態に係る永久磁石6の分割パターンの一例を示す概略側断面図である。
【
図8】本発明の第5実施形態に係るモータにおいて、
図1に示した横断面図の一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るモータの横断面図である。第1実施形態のモータ1は、回転電機の一例である。モータ1は、インナーロータ型モータである。
図1は、モータ1の回転軸Axに直交する方向の横断面を示している。
図1において、モータ1の回転軸Axの延びる方向は紙面垂直方向である。
【0022】
特に断りのない限り、回転軸Axの延びる方向に沿った方向、すなわち回転軸Axに平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。また、回転軸Axを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。また、回転軸Axを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。軸方向において、後述の
図3における軸方向を示す矢印が指す側を軸方向一方側と呼び、逆側を軸方向他方側と呼ぶ。呼径方向において回転軸Axに近づく側を「径方向内側」と呼び、回転軸Axから遠ざかる側を「径方向外側」と呼ぶ。
【0023】
モータ1は、ロータ2とステータ3とを有する。ロータ2は、鉄心4とシャフト5と永久磁石6とを有する。シャフト5は、回転軸Axと同軸であり、軸方向に延びる。ロータ2は、円柱形状であり、回転軸Axと同軸である。ロータ2は、永久磁石6が埋め込まれて配置された埋込磁石形の回転子の一例である。ステータ3は固定子の一例である。
【0024】
ステータ3は、円筒形状であり、回転軸Axと同軸である。ステータ3は、径方向打つ側の空間部分にロータ2を収容する。ステータ3は、ロータ2の径方向外側にギャップを介して配置される。ステータ3の内周側には、それぞれ回転軸Axに向けて径方向内側に突出するティース3aが周方向に等間隔をおいて複数並んで設けられている。隣り合うティース3a同士の間の空間は、それぞれスロット3bを形成する。スロット3bには、ステータコイルが収容される。
【0025】
モータ1は、ステータコイルに流れる電流を制御することによりステータ3の磁界を順番に切り替え、ロータ2に配置された永久磁石6の磁界との吸引力又は反発力により、回転軸Axを中心としてロータ2を回転させる。
【0026】
ロータ2の鉄心4は、例えば、打ち抜き加工された珪素鋼板を軸方向に積層して形成される円筒状の部材である。鉄心4を構成する個々の珪素鋼板の間には絶縁性接着剤が介在しており、個々の珪素鋼板は互いに絶縁状態にある。鉄心4は、回転軸Axと同軸である。鉄心4の軸心部には、回転軸Axに沿ってシャフト5が固定されている。シャフト5は、例えば、鉄心4に嵌入されることで、固定される。ャフト5は、軸受により回転自在に支持される。
【0027】
第1実施形態のロータ2は8極ロータであり、ロータ2の鉄心4には、周方向に沿って等間隔に8つの主磁極が構成されるように所定の配列で複数の永久磁石6が配置される。なお、ロータ2において周方向に隣り合う主磁極は、それぞれ逆の極性となるように永久磁石6が配置される。
【0028】
図2は、
図1に示した横断面図の一部を拡大して示す図である。
図2は、8つの主磁極のうちの一つを示している。その他の磁極は、
図2と同様であるので図示および重複説明はいずれも省略する。
図3は、
図2に示した部分の斜視図である。
【0029】
本実施形態の鉄心4は、永久磁石6を収容する貫通孔7a、7b、7c及び7dを有する。貫通孔7a、7b、7c及び7dは、鉄心4を軸方向に貫通する。貫通孔7aは、永久磁石6のうち永久磁石6aを収容する。貫通孔7bは、永久磁石6のうち永久磁石6bを収容する。貫通孔7cは、永久磁石6のうち永久磁石6cを収容する。貫通孔7dは、永久磁石6のうち永久磁石6dを収容する。
【0030】
貫通孔7a、7b、7c及び7dのそれぞれは、向きや大きさは異なるが、形状は類似しているので、形状については代表して貫通孔7aについて説明し、貫通孔7b、7c及び7dの説明は省略する。
【0031】
貫通孔7aは、径方向と平行な向きに対して、径方向外側が周方向で反時計回りに90度以内の角度でずれた向きで配置されている。貫通孔7aの断面形状は、この向きに延びる形状である。
【0032】
貫通孔7bは、貫通孔7aに対し周方向で時計回りにずれた位置に配置されている。貫通孔7bは、径方向と平行な向きに対して、径方向外側が周方向で時計回りに90度以内の角度でずれた向きで配置されている。貫通孔7bの断面形状は、この向きに延びる形状である。
【0033】
貫通孔7cは、貫通孔7aよりも径方向外側に配置されている。貫通孔7cは、径方向と平行な向きに対して、径方向外側が周方向で反時計回りに90度以内の角度でずれた向きで配置されている。貫通孔7cの断面形状は、この向きに延びる形状である。
【0034】
貫通孔7dは、貫通孔7bよりも径方向外側に配置されている。貫通孔7dは、貫通孔7cに対し周方向で時計回りにずれた位置に配置されている。貫通孔7dは、径方向と平行な向きに対して、径方向外側が周方向で時計回りに90度以内の角度でずれた向きで配置されている。貫通孔7aの断面形状は、この向きに延びる形状である。
【0035】
本実施形態では、永久磁石6a及び永久磁石6bは径方向位置がほぼ同一であって第1層と呼び、永久磁石6c及び永久磁石6dは径方向位置がほぼ同一であって第2層と呼ぶ。永久磁石6a及び永久磁石6aは、永久磁石6c及び永久磁石6dよりも径方向内側に配置される。このように、本実施形態では、磁石が2つの層に配置された2層配置であるが、本発明はこれに限られるものではなく、磁石が1つの層に配置された1層配置でもよいし、磁石が2つ以上の層に配置された複数層配置でもよい。
【0036】
貫通孔7aは、永久磁石6aが埋め込まれる中央部7a1を有する。貫通孔7aは、中央部7a1の径方向外側に端部7a2を有する。貫通孔7aは、中央部7a1の径方向内側に端部7a3を有する。端部7a2と端部7a3とを結ぶ直線と直交する方向での中央部7a1の幅は、端部7a2の幅や端部7a3の幅よりも短い。貫通孔7aの中央部7a1に嵌まった永久磁石6aは、端部7a2や端部7a3まで達していない。端部7a2や端部7a3は、フラックスバリアとしての機能を果たす。
【0037】
永久磁石6a、6b、6c及び6dそれぞれの軸方向長さは、貫通孔7a、7b、7c及び7dそれぞれの軸方向長さとほぼ等しい。永久磁石6a、6b、6c及び6dそれぞれは鉄心4を軸方向に貫通する。代表して永久磁石6aについて説明すると、永久磁石6aの軸方向両端は、鉄心4の両端に達し、鉄心4の外部に近いので放熱しやすく、永久磁石6aの軸方向中央に比べて温度が上がりにくい。
【0038】
永久磁石6a、6b、6c及び6dそれぞれは、軸方向に分割されている。永久磁石6a、6b、6c及び6dそれぞれは、直方体の磁石を軸方向に複数並べた構造である。永久磁石6a、6b、6c及び6dそれぞれの形状は、直方体に限られるものではない。本実施形態では、永久磁石6a、6b、6c及び6dそれぞれの分割のパターンを、軸方向中央から軸方向一方側にかけて第1パターンとし、軸方向中央から軸方向他方側にかけて第2パターンとする。
【0039】
図4は、本発明の第1実施形態に係る永久磁石6の分割パターンの一例を示す概略側断面図である。本実施形態において、永久磁石6a及び6bは内周側磁石の一例であり、永久磁石6c及び6dは外周側磁石の一例である。
図4では、内周側磁石として永久磁石6aを挙げ、外周側磁石として永久磁石6cを挙げている。本実施形態では、第1パターンと第2パターンとで、軸方向中央から軸方向端部に向けての磁石の分割パターンを同一にしているが、本発明はこれに限られるものではなく、第1パターンと第2パターンとで異なる分割パターンにしてもよい。
【0040】
図4において、永久磁石6a及び6cに記載のa、b、c及びdは、分割された磁石のそれぞれを示す。永久磁石6aは、軸方向一方側端部から軸方向他方側に向けて、順に、磁石a、磁石b、磁石c、磁石d、磁石d、磁石c、磁石b及び磁石aに分割されている。軸方向一方側端部の磁石aと軸方向他方側端部の磁石aのように、同じ名称の磁石同士は軸方向長さが等しい。磁石bの軸方向長さは、磁石aの軸方向長さよりも短い。磁石cの軸方向長さは、磁石bの軸方向長さよりも短い。磁石dの軸方向長さは、磁石cの軸方向長さよりも短い。本実施形態では、永久磁石6cも、軸方向一方側端部から軸方向他方側に向けて、順に、磁石a、磁石b、磁石c、磁石d、磁石d、磁石c、磁石b及び磁石aに分割されている。
図4に示す磁石の分割数は、一例であって、本発明はこれに限られるものではない。
【0041】
本実施形態では、軸方向中央を境とし、軸方向端部に向かって磁石分割数を少なくする。すなわち、永久磁石6a及び6cは、軸方向中央の方が、軸方向端部よりも細かく分割されて分割数が多い。
【0042】
図4の例では、磁石を軸方向に分割したときの分割寸法を、軸方向中央の磁石の軸方向長さ<軸方向端部の磁石の軸方向長さとしている。磁石の軸方向長さが長いということは、磁石の軸方向での分割数が少ないということである。
【0043】
本実施形態によれば、径方向に複数の磁石を配置する構成において、永久磁石6a及び6cを、軸方向中央の方が、軸方向端部よりも細かく分割することで、ロータ2に埋め込まれた永久磁石の温度上昇を抑えることができる。また、本実施形態によれば、効果的に磁石の軸方向の分割総数を減少することができ、製造コストを下げることができる。
【0044】
本実施形態では、放熱のしやすさという周辺環境に応じて磁石の軸方向での分割数を異ならせている。すなわち、放熱しやすい箇所では分割数を少なくし、放熱しにくい箇所では分割数を多くすることで、温度上昇を防ぎながら、磁石の軸方向の分割総数を減少して、製造コストを下げることができる。
【0045】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係る永久磁石6の分割パターンの一例を示す概略側断面図である。第2実施形態においても、
図1、
図2及び
図3の構造は第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0046】
図5において、永久磁石6aは、軸方向一方側端部から軸方向他方側に向けて、順に、磁石a、磁石b、磁石c、磁石d、磁石d、磁石d、磁石d、磁石c、磁石b及び磁石aに分割されている。本実施形態では、永久磁石6cも、軸方向一方側端部から軸方向他方側に向けて、順に、磁石a、磁石b、磁石c、磁石d、磁石d、磁石d、磁石d、磁石c、磁石b及び磁石aに分割されている。
図5に示す磁石の分割数は、一例であって、本発明はこれに限られるものではない。本実施形態では、軸方向中央において、軸方向長さが最も短い磁石dを4つ並べて配置することで、軸方向中央における磁石の分割数を多くしている。なお、軸方向長さが等しい磁石を、軸方向で隣接して複数配置してもよい。
【0047】
図5の例では、磁石を軸方向に分割したときの分割寸法を、軸方向中央の磁石の軸方向長さ≦軸方向端部の磁石の軸方向長さとしている。ただし、外周側磁石と内周側磁石の分割数が同じ場合には、軸方向最中央の磁石の軸方向長さ<軸方向最端部の磁石の軸方向長さとするのが望ましい。
【0048】
本実施形態によれば、径方向に複数の磁石を配置する構成において、永久磁石6a及び6cを、軸方向中央で、より細かく分割することで、ロータ2に埋め込まれた永久磁石の温度上昇を抑えることができる。また、本実施形態によれば、効果的に磁石の軸方向の分割総数を減少することができ、製造コストを下げることができる。
【0049】
<第3実施形態>
図6は、本発明の第3実施形態に係る永久磁石6の分割パターンの一例を示す概略側断面図である。第3実施形態においても、
図1、
図2及び
図3の構造は第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0050】
図6において、永久磁石6aは、すべて軸方向長さが等しい6個の磁石bに分割されている。本実施形態では、永久磁石6cは、すべて軸方向長さが等しい22個の磁石aに分割されている。本実施形態では、磁石aの軸方向長さは、磁石bの軸方向長さよりも短い。
【0051】
図6の例では、外周側磁石の損失密度>内周側磁石の損失密度であることから、外周側磁石の軸方向の分割数>内周側磁石の軸方向の分割数としている。ただし、モータ1の運転領域によっては外周側磁石損失密度<内周側磁石損失密度となるため、外周側磁石の軸方向の分割数<内周側磁石の軸方向の分割数としてもよい。
【0052】
本実施形態によれば、径方向に複数の磁石を配置する構成において、内周側磁石よりも外周側磁石をより細かく分割することで、ロータ2に埋め込まれた永久磁石の温度上昇を抑えることができる。また、本実施形態によれば、効果的に磁石の軸方向の分割総数を減少することができ、製造コストを下げることができる。また、本実施形態によれば、軸方向長さが等しく分割することで、製造コストを下げることができる。
【0053】
本実施形態では、損失密度という周辺環境に応じて磁石の軸方向での分割数を異ならせている。すなわち、損失密度が高い磁石では分割数を多くし、損失密度が低い磁石では分割数を少なくすることで、温度上昇を防ぎながら、磁石の軸方向の分割総数を減少して、製造コストを下げることができる。
【0054】
<第4実施形態>
図7は、本発明の第4実施形態に係る永久磁石6の分割パターンの一例を示す概略側断面図である。第4実施形態においても、
図1、
図2及び
図3の構造は第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0055】
図7において、永久磁石6aは、軸方向一方側端部から軸方向他方側に向けて、順に、磁石a、磁石b、磁石c、磁石d、磁石d、磁石d、磁石d、磁石c、磁石b及び磁石aに分割されている。本実施形態では、永久磁石6cは、軸方向一方側端部から軸方向他方側に向けて、順に、磁石e、磁石f、磁石f及び磁石eに分割されている。磁石fの軸方向長さは、磁石eの軸方向長さよりも短い。
図7に示す磁石の分割数は、一例であって、本発明はこれに限られるものではない。
図7の例では、
図4、5及び6に示した分割手法を組み合わせて用いている。
【0056】
本実施形態によれば、径方向に複数の磁石を配置する構成において、永久磁石6a及び6cを、軸方向中央の方が、軸方向端部よりも細かく分割することで、ロータ2に埋め込まれた永久磁石の温度上昇を抑えることができる。また本実施形態によれば、径方向に複数の磁石を配置する構成において、内周側磁石よりも外周側磁石をより細かく分割することで、ロータ2に埋め込まれた永久磁石の温度上昇を抑えることができる。また、本実施形態によれば、効果的に磁石の軸方向の分割総数を減少することができ、製造コストを下げることができる。
【0057】
<第5実施形態>
図8は、本発明の第5実施形態に係るモータにおいて、
図1に示した横断面図の一部を拡大して示す図である。本実施例では、軸方向と直交する面における磁石の配置について、
図2とは別の例を示す。
【0058】
本実施形態は、永久磁石6として、永久磁石16a、16b、16c、16d、16e及び16fを有する。鉄心4は、永久磁石16a、16b、16c、16d、16e及び16fを収容する貫通孔を有する。
【0059】
永久磁石16aは、径方向と平行な向きに対して、径方向外側が周方向で反時計回りに90度以内の角度でずれた向きで配置されている。永久磁石16bは、永久磁石16aに対し周方向で時計回りにずれた位置に配置されている。永久磁石16bは、径方向と平行な向きに対して、径方向外側が周方向で時計回りに90度以内の角度でずれた向きで配置されている。永久磁石16cは、周方向位置で永久磁石16aと永久磁石16bとの間であって、径方向位置で永久磁石16a及び永久磁石16bの径方向内側と同じ位置に配置されている。
【0060】
永久磁石16dは、永久磁石16aよりも径方向外側に配置されている。永久磁石16eは、永久磁石16bよりも径方向外側に配置されている。永久磁石16fは、永久磁石16cよりも径方向外側に配置されている。
【0061】
永久磁石16dは、径方向と平行な向きに対して、径方向外側が周方向で反時計回りに90度以内の角度でずれた向きで配置されている。永久磁石16eは、永久磁石16dに対し周方向で時計回りにずれた位置に配置されている。永久磁石16eは、径方向と平行な向きに対して、径方向外側が周方向で時計回りに90度以内の角度でずれた向きで配置されている。永久磁石16fは、周方向位置で永久磁石16dと永久磁石16eとの間であって、径方向位置で永久磁石16d及び永久磁石16eの径方向内側と同じ位置に配置されている。
【0062】
永久磁石16a、16b、16d及び16eは、それぞれの両端にフラックスバリアとして機能する空隙を有する。永久磁石16c及び16efは、両端に空隙を有する磁石同士の間に配置されている。磁石両端に空隙を有する2つの磁石は減磁しやすくなっている。本実施形態では、磁石両端に空隙を有する2つの減磁しやすい磁石の軸方向分割数を、両端に空隙を有する磁石同士の間に配置されている磁石の軸方向分割数よりも多くするようにしている。両端に空隙を有する磁石同士の間に配置されている磁石は、
図8の例では、例えば永久磁石16aと16bとの間に永久磁石16cが一つであるが、永久磁石16aと16bとの間に複数の磁石を配置してもよい。
【0063】
本実施形態によれば、永久磁石16a及び16bを、永久磁石16cよりも細かく分割することで、鉄心4に埋め込まれた永久磁石の温度上昇を抑えることができる。また、本実施形態によれば、効果的に磁石の軸方向の分割総数を減少することができ、製造コストを下げることができる。
【0064】
本実施形態では、減磁のしやすさという周辺環境に応じて磁石の軸方向での分割数を異ならせている。すなわち、減磁しやすい磁石では分割数を多くし、減磁しやすい磁石同士の間に配置された磁石では分割数を少なくすることで、温度上昇を防ぎながら、磁石の軸方向の分割総数を減少して、製造コストを下げることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、永久磁石16a、永久磁石16b及び永久磁石16cを第1層とし、永久磁石16d、永久磁石16e及び永久磁石6fを第2層として、
図4から
図7に示した磁石の軸方向における分割パターンを適用した分割を行ってもよい。
【0066】
以上説明した本発明によれば、放熱性が悪く磁石温度が高くなる軸方向中央の磁石の軸方向での分割数を多くし、放熱性が良く磁石温度が低くなる軸方向端部では磁石の軸方向での分割数を少なくすることによって、平均磁石温度を低減しながら、分割総数を減少させることができる。
【0067】
また本発明によれば、高調波電流の影響を受けやすい外周側磁石の軸方向での分割数を多くし、高調波電流の影響を受けにくい内周側磁石の軸方向での分割数を少なくすることで分割総数を減少させることができる。なお、モータの運転領域によっては、外周側磁石損失密度が内周側磁石損失密度よりも小さくなる場合があり、この場合は、外周側磁石の軸方向での分割数を内周側磁石の軸方向での分割数よりも小さくしてもよい。磁石損失は高調波電流によって生じる渦電流損であり、磁石を分割し磁石間を絶縁することで渦電流を小さくし損失を低減することができる。したがって軸方向中央における磁石の軸方向での分割数、外周側磁石又は内周側磁石のうち損失密度が大きい方の磁石の軸方向での分割数を多くすることで損失が低減し熱の発生を抑えることができる。
【0068】
また本発明によれば、磁石両端に空隙を有する2つの磁石の分割数を多くし、それらの間に配置される1つ以上の磁石の分割数を少なくすることによって、反磁界減磁の影響を軽減しながら、分割総数を減少させることができる。
【0069】
本発明は、周辺環境としての放熱のしやすさ、損失密度、及び減磁のしやすさの組み合わせに応じて、磁石の軸方向での分割数を決定してもよい。
【0070】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。また本発明は、各実施形態の組み合わせを含む。加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1…モータ、2…ロータ、3…ステータ、4…鉄心、5…シャフト、6…永久磁石