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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033574
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】映像監視装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20240306BHJP
   B66B 1/36 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B66B3/00 P
B66B1/36 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137229
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小浜 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】小平 法美
【テーマコード(参考)】
3F303
3F502
【Fターム(参考)】
3F303BA01
3F303CA07
3F303CB04
3F303CB24
3F303CB31
3F303CB45
3F502HB02
3F502JB04
3F502JB06
3F502KA03
(57)【要約】
【課題】乗りかごに設けられた監視カメラの映像データを、エレベーター特有の異常状態の特定及び/又は解消に活用する。
【解決手段】映像監視装置が、エレベーターの乗りかごに設けられた監視カメラの映像データから、エレベーターの乗客の動作を検出し、複数の乗客動作と当該複数の乗客動作の各々について推定されるエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御とを表すデータから、検出された乗客動作に対応するエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御を特定する。検出された乗客動作は、乗りかごに乗客が乗車する時の躓き又は屈伸、又は、乗りかごから乗客が降車する時の躓き又は屈伸である。特定されたエレベーター異常状態は、乗りかごが正しい位置よりも低い又は高い位置にある状態である。特定されたエレベーター制御は、乗りかごを正しい位置に合わせるために乗りかごを上げる又は下げる制御である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの乗りかごに設けられた監視カメラの映像データを受信する受信部と、
前記エレベーターの乗客の動作を前記映像データから検出し、複数の乗客動作と当該複数の乗客動作の各々について推定されるエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御とを表すデータである異常特定データから、前記検出された乗客動作に対応するエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御を特定する解析部と、
前記特定されたエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御を表す通知及び/又は指令を出力する出力部と
を備え、
前記検出された乗客動作は、前記乗りかごに前記乗客が乗車する時の躓き又は屈伸、又は、前記乗りかごから前記乗客が降車する時の躓き又は屈伸であり、
前記特定されたエレベーター異常状態は、前記乗りかごが正しい位置よりも低い又は高い位置にある状態であり、
前記特定されたエレベーター制御は、前記乗りかごを正しい位置に合わせるために前記乗りかごを上げる又は下げる制御である、
映像監視装置。
【請求項2】
下記(x1)且つ(x2)の場合に、前記特定されたエレベーター異常状態が、前記乗りかごが正しい位置よりも低い位置にある状態であり、及び/又は、前記特定されたエレベーター制御が、前記乗りかごを正しい位置に合わせるために前記乗りかごを上げる制御である、
(x1)前記解析部が、前記乗りかごの映像データから、乗場敷居を検出した、
(x2)前記検出された乗客動作が、前記乗りかごに前記乗客が乗車する時の屈伸、又は、前記乗りかごから前記乗客が降車する時の躓きである、
請求項1に記載の映像監視装置。
【請求項3】
下記(y1)且つ(y2)の場合に、前記特定されたエレベーター異常状態が、前記乗りかごが正しい位置よりも高い位置にある状態であり、及び/又は、前記特定されたエレベーター制御が、前記乗りかごを正しい位置に合わせるために前記乗りかごを下げる制御である、
(y1)前記解析部が、前記乗りかごの映像データから、乗場敷居を検出しなかった、
(y2)前記検出された乗客動作が、前記乗りかごに前記乗客が乗車する時の躓き、又は、前記乗りかごから前記乗客が降車する時の屈伸である、
請求項1に記載の映像監視装置。
【請求項4】
前記解析部は、前記エレベーターの運転開始前に、前記監視カメラの映像データから、前記乗りかご内のボタンを含む一つ又は複数の要素の位置を検出し、当該一つ又は複数の要素と当該一つ又は複数の要素の各々について検出された位置とを表すデータである要素配置データを格納し、
前記異常特定データが表す一部の乗客動作は、前記要素配置データを基に特定された第1の要素を見ていること、及び/又は、前記要素配置データを基に特定された第2の要素に触れていることであり、
前記一部の乗客動作に対応したエレベーター制御は、作業員の手動又は点検計画の作成というエレベーター関連制御である、
請求項1に記載の映像監視装置。
【請求項5】
コンピュータが、エレベーターの乗りかごに設けられた監視カメラの映像データを受信し、
コンピュータが、前記エレベーターの乗客の動作を前記映像データから検出し、
コンピュータが、複数の乗客動作と当該複数の乗客動作の各々について推定されるエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御とを表すデータである異常特定データから、前記検出された乗客動作に対応するエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御を特定し、
コンピュータが、前記特定されたエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御を表す通知及び/又は指令を出力し、
前記検出された乗客動作は、前記乗りかごに前記乗客が乗車する時の躓き又は屈伸、又は、前記乗りかごから前記乗客が降車する時の躓き又は屈伸であり、
前記特定されたエレベーター異常状態は、前記乗りかごが正しい位置よりも低い又は高い位置にある状態であり、
前記特定されたエレベーター制御は、前記乗りかごを正しい位置に合わせるために前記乗りかごを上げる又は下げる制御である、
映像監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、エレベーターのカメラ映像の解析に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターは機械構造物であり、エレベーターの異常を監視する技術が提供されている。
【0003】
一方、エレベーターの設備として、監視カメラ(典型的には防犯カメラ)が乗りかご内に取付けられることが一般的となっている。また様々な分野でカメラ映像により、被撮影者の動作から特定の異常状態を検出する技術が発明されている。特許文献1によれば、自動取引装置(ATM)に設けられたカメラの映像から、ATM利用者の目線が係員呼出し釦へ向けられている時間が所定以上となった場合に、呼出し釦が故障し呼出せない状況を検出し、係員へ呼出通知される制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-072877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術をエレベーターに適用することができれば、かご内行先階ボタンの異常検出の見込みがある。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術をエレベーターに適用することができたとしても、エレベーターに特有の異常状態を検出することはできない。
【0007】
本発明は、乗りかごに設けられた監視カメラの映像データを、エレベーター特有の異常状態の特定に活用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
映像監視装置が、エレベーターの乗りかごに設けられた監視カメラの映像データを受信し、エレベーターの乗客の動作を映像データから検出する。映像監視装置が、複数の乗客動作と当該複数の乗客動作の各々について推定されるエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御とを表すデータである異常特定データから、検出された乗客動作に対応するエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御を特定し、特定されたエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御を表す通知及び/又は指令を出力する。検出された乗客動作は、乗りかごに乗客が乗車する時の躓き又は屈伸、又は、乗りかごから乗客が降車する時の躓き又は屈伸である。特定されたエレベーター異常状態は、乗りかごが正しい位置よりも低い又は高い位置にある状態である。特定されたエレベーター制御は、乗りかごを正しい位置に合わせるために乗りかごを上げる又は下げる制御である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乗りかごに設けられた監視カメラの映像データを、エレベーター特有の異常状態の特定及び/又は解消に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る映像監視装置を含むシステム全体の概要説明図である。
図2】第1の実施形態に係る映像監視装置の構成例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る処理の流れの例を示すフローチャートである。
図4】第1の実施形態に係る異常特定DBの構成例を示す図である。
図5A】第2の実施形態に係る映像監視装置を含むシステム全体の構成例を示すブロック図である。
図5B】第3の実施形態に係る映像監視装置を含むシステム全体の構成例を示すブロック図である。
図6】第4の実施形態に係る異常特定DBの構成例を示す図である。
図7】第5の実施形態に係るカメラ位置の幾つかの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、「インターフェース装置」は、一つ以上の通信インターフェースデバイスでよい。一つ以上の通信インターフェースデバイスは、一つ以上の同種の通信インターフェースデバイスであってもよいし二つ以上の異種の通信インターフェースデバイスであってもよい。
【0012】
また、以下の説明では、「メモリ」は、一つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリにおける少なくとも一つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスであってもよいし不揮発性メモリデバイスであってもよい。
【0013】
また、以下の説明では、「永続記憶装置」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上の永続記憶デバイスでよい。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば補助記憶デバイス)でよく、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、NVME(Non-Volatile Memory Express)ドライブ、又は、SCM(Storage Class Memory)でよい。
【0014】
また、以下の説明では、「記憶装置」は、メモリと永続記憶装置の少なくとも永続記憶装置でよい。
【0015】
また、以下の説明では、「プロセッサ」は、一つ以上のプロセッサデバイスでよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスでよいが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、処理の一部又は全部を行うハードウェア記述言語によりゲートアレイの集合体である回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでもよい。
【0016】
また、以下の説明では、「yyy部」の表現にて機能を説明することがあるが、機能は、一つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよいし、一つ以上のハードウェア回路(例えばFPGA又はASIC)によって実現されてもよいし、それらの組合せによって実現されてもよい。プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置及び/又はインターフェース装置等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配付計算機又は計算機が読み取り可能な記憶媒体(例えば非一時的な記憶媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0017】
また、以下の説明では、「xxxDB」といった表現にて、入力に対して出力が得られるデータを説明することがあるが(「DB」はデータベースの略)、当該データは、どのような構造のデータでもよいし(例えば、構造化データでもよいし非構造化データでもよいし)、入力に対する出力を発生するニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズムやランダムフォレストに代表されるような学習モデルでもよい。従って、「xxxDB」を「xxxデータ」と言うことができる。また、以下の説明において、DBの構成は一例であり、一つのDBは、二つ以上のDBに分割されてもよいし、二つ以上のDBの全部又は一部が一つのDBであってもよい。
【0018】
以下、図面を用いて、本発明の幾つかの実施形態を詳述する。
[第1の実施形態]
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る映像監視装置を含むシステム全体の概要説明図である。
【0020】
乗りかご1に防犯カメラ2と映像監視装置3とが備えられる。
【0021】
防犯カメラ2は乗りかご1内に設けられ、乗りかご1に乗車する乗客4を撮影している。なお、本明細書において、「乗客」には、乗りかご1に乗っている利用者だけでなく、乗りかご1に乗る利用者も、乗りかご1から降りる利用者も該当する。
【0022】
映像監視装置3は、防犯カメラ2で撮影した映像の映像データを解析することにより乗客4の動作(動作パターンと呼ばれてもよい)を検出する機能を有している。動作の検出方法は、例えば公知の技術である人物の輪郭を検出して各部の動作量を測定し判定する方法や、深層学習(Deep Learning)を用いて動作を学習させて判定する方法などでよい。
【0023】
乗りかご1はエレベーター制御盤5により昇降動作を制御されており、映像監視装置3はエレベーター制御盤5と接続されている。
【0024】
エレベーター制御盤5は、乗りかご1の昇降制御を行うほか、各種安全装置のセンサー、又はスイッチの状態を電気的に取得することができる。エレベーター制御盤5に接続された遠隔監視装置6は、エレベーター制御盤5より各種センサー、又はスイッチの状態を電気的に取得し、遠隔監視網7(例えば、電話回線やインターネット回線)を経由して、外部の監視センター8に接続されている。遠隔監視装置6は、エレベーターが異常状態であることを各種センサー、又はスイッチ等で判定した際は、監視センター8へその異常内容を通知し、保守作業者の緊急出動指示、又は点検計画を実施させる。
【0025】
映像監視装置3は、乗客4の特定の動作を検出した場合は、当該動作に対応するエレベーターの異常状態を特定し、特定のエレベーター制御や外部の監視センター8へ異常通知等を行う機能を有する。エレベーター制御や異常通知等を行うにあたり、映像監視装置3はエレベーター制御盤5へと接続されている。
【0026】
以上の構成により、乗客4の特定の動作と紐づけられたエレベーターの異常状態により、映像監視装置3は、エレベーター制御盤5に異常状態の通知と乗りかご1のエレベーター制御を指令する。また、合わせて、映像監視装置3は、エレベーター制御盤5を経由して遠隔監視装置6に監視センターへの通知を指令する。これにより、エレベーターの異常状態に合わせたエレベーター制御や緊急出動指示及び/又は点検計画を促すことにより、早期の対処が可能となる。本図では、乗客4が乗りかご1から降車し乗場9へ出る際に、乗りかご1が乗場9より床面が低く段差が発生しており、乗客4が躓いている状態である。この例では、映像監視装置3は、乗客4の降車時の躓き動作を検出し、乗りかご1が低い状態での段差が発生している異常状態を特定し、エレベーター制御盤5は、上昇方向に乗りかご1の床合わせ運転を実施する。また、遠隔監視装置6は、監視センター8へ段差発生の異常内容を通知し、監視センター8にて緊急出動指示あるいは点検計画を行う。乗客4の他の動作及びエレベーター異常状態については、図3を参照して後述する。
【0027】
映像監視装置3は、本実施形態では、インターフェース装置、記憶装置及びそれらに接続されたプロセッサを備えた装置であるが、当該装置で実現された機能でもよい。
【0028】
図2は、第1の実施形態に係る映像監視装置3の構成例を示すブロック図である。
【0029】
本図によれば、映像監視装置3は、インターフェース装置201、記憶装置202及びそれらに接続されたプロセッサ203を有する。
【0030】
インターフェース装置201を介して、防犯カメラ2から映像データが受信され、当該映像データの解析の結果に基づく通知及び/又は指令が出力される。
【0031】
記憶装置202が、データやプログラムを記憶する。データとして、例えば、異常特定DB32や要素配置DB39がある。異常特定DB32は、異常特定データの一例であり、複数の乗客動作と当該複数の乗客動作の各々について推定されるエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御とを表すDBである。要素配置DB39は、乗りかご1内のボタンを含む一つ又は複数の要素の位置を検出し、当該一つ又は複数の要素と当該一つ又は複数の要素の各々について検出された位置とを表すDBである。
【0032】
プロセッサ203がプログラムを実行することにより映像解析部31が実現される。映像解析部31は、防犯カメラ2の映像データを解析し、乗客4の動作を検出し、異常特定DB32から、その動作に紐づくエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御を特定し、異常通知及び/又は指令をエレベーター制御盤5及び遠隔監視装置6に送信する。映像解析部31は、受信部251、解析部252及び出力部253を備える。これらの機能251~253については後述する。
【0033】
図3は、第1の実施形態に係る処理の流れの例を示すフローチャートである。この処理は定期的に行われてよい。
【0034】
受信部251は、防犯カメラ2の映像データを受信する。解析部252が、当該映像データがエレベーターの運転開始前(例えば、映像監視装置3の起動後初めての)の映像データであるか否かの判定(要素配置DB39があるか否かの判定の一例)を行う(ステップS1)。ステップS1の判定結果が真の場合(ステップS1:YES)、解析部252が、当該映像データから、乗りかご1内のボタンを含む一つ又は複数の要素の位置を検出し、当該一つ又は複数の要素と当該一つ又は複数の要素の各々について検出された位置とを表す要素配置DB39を構築し、要素配置DB39を記憶装置202に格納する。なお、要素配置DB39が予め用意されている実施形態、又は、要素配置DB39が不要な実施形態では、ステップS1及びステップS2は無くてもよい。別の言い方をすれば、ステップS1及びステップS2は、後述の第4の実施形態で採用されてよく、第1の実施形態では無くてもよい。
【0035】
エレベーターの運転開始後、受信部251が、防犯カメラ2から乗りかご1内の状況を撮影した映像データを受信し、解析部252が、乗客4の動作を映像データにて監視する(ステップS3)。具体的には、解析部252が、乗客4が乗車するときから降車したときまでの間の乗客4の動作を映像データの解析により検出し(ステップS31)、検出された動作が異常特定DB32により表されるいずれかの乗客動作に該当するか判定する(ステップS32)。ステップS3の監視は、映像データに映っている各乗客について実施される。
【0036】
異常特定DB32により表されるいずれかの乗客動作に該当する乗客動作が検出された場合(ステップS32:YES)、解析部252が、検出された乗客動作に紐づくエレベーター異常状態及びエレベーター制御を特定し、出力部253が、特定されたエレベーター異常状態を関連付けたエレベーター制御指令をエレベーター制御盤5に送信する(ステップS5)。この指令に応答して、エレベーター制御盤5により、乗りかご1の制御が実施される。図1に示した例では、制御は、乗りかご1の上昇方向に床合わせ運転制御である。また合わせて、エレベーターの異常状態が、エレベーター制御盤5から遠隔監視装置6を通じて監視センター8へ通知され、必要に応じて、緊急出動あるいは点検計画の通知が実施されてよい。
【0037】
図4は、第1の実施形態に係る異常特定DB32の構成例を示す図である。
【0038】
異常特定DB32は、複数の乗客動作と当該複数の乗客動作の各々について推定されるエレベーター異常状態及びエレベーター制御とを表す。本実施形態では、各乗客動作について、エレベーター異常状態及びエレベーター制御の両方が紐づけられているが、少なくとも一つの乗客動作について、エレベーター異常状態及びエレベーター制御の一方が紐づけられていてもよい。
【0039】
以上の説明と、特に図4を参照することにより、下記の説明ができる。また、下記の説明は、上述の説明の補足説明や、変形例の説明を含んでもよい。
【0040】
映像監視装置3は、受信部251、解析部252及び出力部253を備える。受信部251は、エレベーターの乗りかご1に設けられた防犯カメラ2(監視カメラの一例)の映像データを受信する。解析部252は、エレベーターの乗客4の動作を映像データから検出し、複数の乗客動作と当該複数の乗客動作の各々について推定されるエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御とを表す異常特定DB32(異常特定データの一例)から、検出された乗客動作に対応するエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御を特定する。出力部253は、特定されたエレベーター異常状態及び/又はエレベーター制御を表す通知及び/又は指令を出力する。乗客動作に紐づけられているエレベーター制御は、乗客動作に紐づけられている(乗客動作から推定される)エレベーター異常状態を解消するための制御である。
【0041】
検出された乗客動作は、乗りかご1に乗客4が乗車する時の躓き又は屈伸、又は、乗りかご1から乗客4が降車する時の躓き又は屈伸である。特定されたエレベーター異常状態は、乗りかご1が正しい位置よりも低い又は高い位置にあるいわゆるレベル狂いの状態(典型的には、乗りかご1の床面が乗場9の床面よりも低い又は高い位置にある状態)である。特定されたエレベーター制御は、乗りかご1を正しい位置に合わせるために乗りかご1を上げる又は下げる制御である。
【0042】
例えば、検出された乗客動作が、乗客4が乗車時に躓く動作の他、降車時にガクッと屈伸する動作の場合には、解析部252が、乗りかご1の床面が乗場9の床面より高いと判定する。つまり、この乗客動作に、エレベーターの乗りかご1が高い方向で段差ができているエレベーター異常状態が紐づけられている。乗りかご1の床面が乗場9の床面より高いため、エレベーター制御は、下降方向の床合わせ運転である。
【0043】
また、例えば、検出された乗客動作が、乗客4が降車時に躓く動作の他、乗車時にガクッと屈伸する動作の場合には、解析部252が、乗りかご1の床面が乗場9の床面より低いと判定する。つまり、この乗客動作に、エレベーターの乗りかご1が低い方向で段差ができているエレベーター異常状態が紐づけられている。乗りかご1の床面が乗場9の床面より低いため、エレベーター制御は、上昇方向の床合わせ運転である。
【0044】
また、例えば、検出された乗客動作が、乗客4の乗車時又は降車時の動作であって振り返る動作の場合には、解析部252が、乗りかご1にいずれかの段差が発生していると判定する。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、乗車時及び/又は降車時の躓き及び/又は屈伸といったエレベーター特有の乗客動作といわゆるレベル狂いというエレベーター特有の異常状態(及び/又は、その異常状態を解消するためのエレベーター制御)とが紐づけられていて、乗りかご1に設けられている防犯カメラ2の映像データを活用して、エレベーター異常状態を特定及び/又は解消することができる。
【0046】
解析部252は、例えばステップS31において、乗りかご1が低いか高いかは、乗客動作の他、例えばその際の乗場9の敷居(乗場9側のドア設置位置の床面、シルなど)が映像データに映っているかも判断材料に、判定されてよい。例えば防犯カメラ2が乗りかご1の後方上部に設けられている場合、解析部252は、乗場9の敷居が映像データに映っていれば、乗りかご1の床面より乗場9の床面が高く、乗場9の敷居が映像データに映っていなければ、乗りかご1の床面より乗場9の床面が低いと判定してよい。つまり、ここでどちらが高いかを判定し、エレベーター制御にて上昇、あるいは下降方向に床合わせ運転が実施されてよい。すなわち、下記(X)及び(Y)のいずれも採用可能である。これにより、エレベーター異常状態の特定精度の向上が期待される(なお、乗場9の敷居が映像データに映っているか否かの判定に使用される映像データは、かごドア開時の映像データでよい)。
(X)下記(x1)且つ(x2)の場合に、特定されたエレベーター異常状態が、乗りかごが正しい位置よりも低い位置にある状態であり、及び/又は、特定されたエレベーター制御が、乗りかごを正しい位置に合わせるために前記乗りかごを上げる制御である。
(x1)解析部252が、乗りかご1の映像データから、乗場9の敷居を検出した。
(x2)検出された乗客動作が、乗りかご1に乗客4が乗車する時の屈伸、又は、乗りかご1から乗客4が降車する時の躓きである。
(Y)下記(y1)且つ(y2)の場合に、特定されたエレベーター異常状態が、乗りかごが正しい位置よりも高い位置にある状態であり、及び/又は、特定されたエレベーター制御が、乗りかごを正しい位置に合わせるために乗りかごを下げる制御である。
(y1)解析部252が、乗りかご1の映像データから、乗場9の敷居を検出しなかった(例えば、乗りかご1の床に乗場9の敷居が隠れていることを検出した)。
(y2)検出された乗客動作が、乗りかご1に乗客4が乗車する時の躓き、又は、乗りかご1から乗客4が降車する時の屈伸である。
【0047】
以上の様に、異常特定DB32は乗客4の動作(動作パターン)とエレベーターの異常状態、その対処(解消)に必要なエレベーター制御とを紐づけたデータベースであり、紐づけられたデータはこの限りではない。
【0048】
また、図示はしていないが、必ずしも防犯カメラ2による映像データのみで乗客の動作を検出する必要はない。例えば、本実施形態の乗客4の降車時の躓きについては、乗りかご1の荷重センサーの荷重値変動が用いられてもよい。このように、防犯カメラ2の映像データとセンサーデータを組み合わせて乗客4の動作が検出されてもよい。これにより、乗客動作の検出精度の向上が期待される。
[第2の実施形態]
【0049】
第2の実施形態を説明する。その際、第1の実施形態との相違点を主に説明し、第1の実施形態との共通点については説明を省略又は簡略する(これは、第3及び第4及び第5の実施形態についても同様である)。
【0050】
図5Aは、第2の実施形態に係る映像監視装置(遠隔監視装置に統合された映像監視装置)を含むシステム全体の構成例を示すブロック図である。
【0051】
第1の実施形態では、映像監視装置3は防犯カメラ2とエレベーター制御盤5の中間に位置していたが、その限りではなく、またさらに他の装置と統合してもよい。例えば図示の様に、映像監視装置3は遠隔監視装置6と統合し、映像監視装置33とされてもよい。映像監視装置33は、インターフェース装置501、記憶装置502及びそれらに接続されたプロセッサ503を有してよい。インターフェース装置501を介して、エレベーター制御盤5や監視センター8と通信されてよい。記憶装置502に、プログラムやデータ(例えば、異常特定DB32及び要素配置DB39)が格納されてよい。プログラムがプロセッサ503に実行されることで、遠隔監視部36及び映像解析部31が実現されてよい。遠隔監視部36は、第1の実施形態における遠隔監視装置6の機能を有したものである。また、映像解析部31及び異常特定DB32(及び要素配置DB39)は第1の実施形態の通りでよい(要素配置DB39は無くてもよい)。
【0052】
乗りかご1に設置された防犯カメラ2及びエレベーター制御盤5は、エレベーター所有者の資産でよく、映像監視装置3や遠隔監視装置6はエレベーターの保守会社の資産であることが主でよい。このため、本実施形態によれば、エレベーター所有者の資産範囲の構成を不要に変更することなく、保守会社の資産を接続し、第1の実施形態と同様の実施が可能となる。
[第3の実施形態]
【0053】
図5Bは、第3の実施形態に係る映像監視装置(ネットワーク接続先に移設された映像監視装置)を含むシステム全体の構成例を示すブロック図である。
【0054】
映像監視装置3は必ずしも映像監視するエレベーターの付近に装置として設置する必要はなく、遠隔監視装置6により接続された遠隔監視網7のネットワーク上(たとえばクラウド上)にその機能を移設した映像監視装置34とされてもよい。映像データのみを遠隔監視装置6にて遠隔監視網7を介して映像監視装置34に送信し、映像監視装置34が、映像の解析結果としてエレベーターの異常内容と制御指令を遠隔監視装置6経由でエレベーター制御盤5に返送する。
【0055】
本実施形態によれば、エレベーターの設置された各建物に映像監視装置3の装置を設置する必要はなく、ネットワーク上に他建物と共通使用する映像監視装置34のみ装置の設置や維持費用が発生するため、全体コストの低減が可能となる。
【0056】
なお、映像監視装置3のシステム構成は、図5A図5Bにて示して実施形態だけでなく、例えば監視センターにその機能を有すなど、図示した内容の限りではない。
[第4の実施形態]
【0057】
図6は、第4の実施形態に係る異常特定DB32の構成例を示す図である。
【0058】
第1の実施形態では、乗客4の動作に応じたエレベーターの異常内容に紐づき、エレベーターの制御(床合わせ運転)を示したが、エレベーター制御は、作業員の緊急出動指示あるいは点検計画のみといった広義の制御(エレベーター関連制御)でもよい。例えば図6のNo.4によれば、乗客4が側板を触っているという乗客動作が検出され、側板の傷又はへこみというエレベーター異常状態が特定されても、エレベーターの運転制御により直ちに対処し改善することは困難である。よって、エレベーター制御をエレベーター関連制御とし(又は制御は不要とされ)、監視センター8への異常通知、作業員の緊急出動指示あるいは点検計画のみが実施されてよい。
【0059】
なお、本図で示すエレベーター制御を実施しないエレベーターの異常状態について、エレベーター制御を実施してはいけないということはなく、何らかの制御を実施しても構わない。
【0060】
本実施形態では、解析部252は、エレベーターの運転開始前に、防犯カメラ2の映像データから、乗りかご1内のボタンを含む一つ又は複数の要素の位置を検出し、当該一つ又は複数の要素と当該一つ又は複数の要素の各々について検出された位置とを表す要素配置DB39(要素配置データの一例)を構築して格納してよい。異常特定DB32が表す一部の乗客動作は、要素配置DB39を基に特定された第1の要素(例えば天井)を見ていること(例えば一定時間以上見ていること)、及び/又は、要素配置DB39を基に特定された第2の要素(例えばボタンや側板)に触れていること(例えば一定時間以上触れていること)でよい。このようにして、防犯カメラ2の映像データを、エレベーター異常状態の特定及び/又は解消に加えて、エレベーター制御(典型的にはエレベーターの運転制御)を必要としないエレベーター異常状態の特定(乗客4が見ている又は触れている要素の特定)のために参照される要素配置DB39の構築に活用することができる。例えば、ボタンは点灯するため、解析部252は、映像に映っている点灯した要素をボタンとして検出することができる。このように、要素の検出精度を高めるために、検出対象の要素毎に、映像上での特徴を表す参考データを用意しておき、解析部252は、映像データと参考データを基に、要素配置DB39を構築してよい。
[第5の実施形態]
【0061】
図7は、第5の実施形態に係るカメラ位置の幾つかの例を示す図である。
【0062】
第1の実施形態では、乗りかご1の後方上部に防犯カメラ2を設置し、ドア方向に撮像範囲を向けていた。これは乗客4の降車時の動作を捉えるために、最適な防犯カメラ2の設置位置例として図示したものである。
【0063】
第5の実施形態では、防犯カメラ2の設置位置は乗りかご1の後方上部の限りではない。例えば、図7のNo.1によれば、乗客4が押しボタンを見つめている動作を検出することで、押しボタンのセリやボタン内のランプ不灯の異常状態を検出するものである。この乗客4の動作を検出するには、乗客4の目線を捉える必要があるため、防犯カメラ2は乗りかご1前方の押しボタン側から乗客4の正面を撮像範囲として捉える様に設置することが最適位置である。
【0064】
上記の様に、本発明では、防犯カメラ2は設置位置を乗りかご1後方上部に限定せず、あらゆる位置で設置した防犯カメラ2に適用される。
【0065】
以上、幾つかの実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。例えば、エレベーター異常状態に紐づけられた躓きや屈伸は、映像データから、乗客4の所定の一つ又は複数の部位の位置が一定時間内に特定の方向に変化したことが検出されたことでよい。
【符号の説明】
【0066】
1・・乗りかご、2・・防犯カメラ、3・・映像監視装置、4・・乗客
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7