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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033585
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】判定装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240306BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G06T7/00 300F
H04N7/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137247
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 裕大
(72)【発明者】
【氏名】川崎 栄嗣
(72)【発明者】
【氏名】石毛 隆晴
(72)【発明者】
【氏名】北川 朝靖
【テーマコード(参考)】
5C054
5L096
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054FC01
5C054FC03
5C054FC12
5C054FC14
5L096DA02
5L096DA04
5L096FA33
5L096GA19
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】移動しながら撮影された画像を用いる場合に比べて、汚れの検出の精度を向上させる。
【解決手段】指示部111は、撮影条件表121に示す撮影時間帯になると、接続されているカメラ2に、清掃対象である床の一部である代表箇所Eを撮影するよう指示する。分割部112は、カメラ2から取得した撮影画像を決められたサイズの分割タイルに分割する。算出部113は、分割タイルごとに汚れの統計量を算出する。また、算出部113は、算出した統計量と基準値との差を算出し、その最大値を特定する。判定部114は、算出部113が算出した統計量等に基づいて、清掃対象が要清掃であるか否かを判定する。提示部115は、清掃対象が要清掃である、と判定する場合に、その旨をユーザに提示する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の少なくとも一部を撮影した画像を複数の区画に分割し、各区画にそれぞれ対応する基準値と該区画の値との差の最大値、及び該区画の値のばらつきを示す指標を用いて前記対象の清掃の要否を判定する判定装置。
【請求項2】
前記差の大きさの総和に応じた量が決められた下限未満の場合に前記最大値及び前記指標に関わらず前記清掃を要しないと判定する
請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記最大値及び前記指標のいずれもがそれぞれの閾値を超えた場合に前記清掃を要すると判定する
請求項1に記載の判定装置。
【請求項4】
前記最大値及び前記指標を用いた関係式を満たす場合に前記清掃を要すると判定する
請求項1に記載の判定装置。
【請求項5】
前記関係式は、前記指標の減少関数の関数値と、前記最大値との不等式で表される
請求項4に記載の判定装置。
【請求項6】
前記清掃を要すると判定する場合に該清掃を要する程度を提示する
請求項3又は4に記載の判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃のタイミングを予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
駅構内・商業施設等は、一般に毎日の清掃(日常清掃という)と、月に1、2回の大規模清掃(定期清掃という)とが行われている。日常清掃・定期清掃ともに、汚れ度合いに関係なく、一定の周期で清掃作業を実施しているが、汚れ度合いに応じて清掃作業タイミングを決定する方が効率的である。
【0003】
装置によって客観的に汚れを判定する技術には、カメラで清掃対象を撮影した画像を解析するものがある。例えば、特許文献1は、清掃対象となる清掃エリアのうち少なくとも未清掃エリアのゴミ量の多少を把握するためのゴミ量情報を取得し、そのゴミ量情報に基づきゴミ量が多いときほど清掃のオーバラップ量を大きくするようにゴミ量の多少に応じて走行経路を決定して、その走行経路で走行するように走行駆動部を制御する清掃ロボットを開示する。
【0004】
また、特許文献2は、第1ロボットから画像情報を取得し、取得した画像情報を分析して、その分析結果から、連携すべき第2ロボットおよびその作業内容を決定して、その第2ロボットに対して、その作業内容を指示する情報処理装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-353014号公報
【特許文献2】WO2019/171917号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、汚れ度合いに応じて清掃のタイミングを事前予測するためには、土砂汚れ等、徐々に蓄積する汚れによる僅かな変化を検出する必要がある。従来手法は、移動する清掃ロボット等によって床画像と位置情報とを取得し、同じ位置で過去に取得した床画像と比較することで、現在の汚れの定量化を行っている。
【0007】
この手法は、ロボットが移動して床画像を撮影するため、広範囲のデータを網羅的に取得することが可能である。しかし、この手法は、ロボットが移動するため、撮影角度の僅かな違いによる照度条件の変化、位置情報の誤差等が生じている場合があり、過去と現在とを正確に比較することが困難である。つまり、この従来手法は、徐々に蓄積する汚れを検出することが難しい。
【0008】
本発明の目的の一つは、汚れの度合いに応じて清掃の要否を判定する技術において、移動しながら撮影された画像を用いる場合に比べて、汚れの検出の精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、対象の少なくとも一部を撮影した画像を複数の区画に分割し、各区画にそれぞれ対応する基準値と該区画の値との差の最大値、及び該区画の値のばらつきを示す指標を用いて前記対象の清掃の要否を判定する判定装置、を第1の態様として提供する。
【0010】
第1の態様の判定装置によれば、汚れの度合いに応じて清掃の要否を判定する技術において、移動しながら撮影された画像を用いる場合に比べて、汚れの検出の精度を向上させることができる。
【0011】
第1の態様の判定装置において、前記差の大きさの総和に応じた量が決められた下限未満の場合に前記最大値及び前記指標に関わらず前記清掃を要しないと判定する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0012】
第2の態様の判定装置によれば、基準値と区画の値との差の大きさの総和に応じた量に応じて、清掃を要しないと判定することができる。
【0013】
第1の態様の判定装置において、前記最大値及び前記指標のいずれもがそれぞれの閾値を超えた場合に前記清掃を要すると判定する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0014】
第3の態様の判定装置によれば、基準値と区画の値との差の最大値と閾値とを比較し、かつ、区画の値のばらつきを示す指標と閾値とを比較するだけで、清掃の要否を判定することができる。
【0015】
第1の態様の判定装置において、前記最大値及び前記指標を用いた関係式を満たす場合に前記清掃を要すると判定する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0016】
第4の態様の判定装置によれば、清掃の要否の判定基準を、関係式によって表すことができる。
【0017】
第4の態様の判定装置において、前記関係式は、前記指標の減少関数の関数値と、前記最大値との不等式で表される、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0018】
第5の態様の判定装置によれば、区画の値のばらつきを示す指標の減少関数の関数値を、基準値と区画の値との差の最大値と比較する閾値とすることができる。
【0019】
第3又は第4の態様の判定装置において、前記清掃を要すると判定する場合に該清掃を要する程度を提示する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0020】
第6の態様の判定装置によれば、要清掃の程度をユーザに提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る清掃支援システム9の構成を示すブロック図。
図2】カメラ2の配置の例を示す平面図。
図3】カメラ2が代表箇所Eを撮影する様子を示す図。
図4】判定装置1の構成の例を示す図。
図5】撮影条件表121の構成の例を示す図。
図6】判定基準表122の構成の例を示す図。
図7】要清掃判定の基準の例を示す図。
図8】要清掃判定の基準の別の例を示す図。
図9】判定装置1の機能的構成の例を示す図。
図10】判定装置1の撮影指示の動作の流れの例を示すフロー図。
図11】判定装置1の判定の動作の流れの例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態>
<清掃支援システムの構成>
図1は、本発明の実施形態に係る清掃支援システム9の構成を示すブロック図である。図1に示す清掃支援システム9は、判定装置1、及びカメラ2を有する。この判定装置1は、カメラ2と有線又は無線により通信可能に接続されている。清掃支援システム9において、判定装置1、及びカメラ2の数は、いずれも1つでもよいし、複数でもよい。図1に示す例において、清掃支援システム9は、1つの判定装置1と、2以上のカメラ2とを有する。
【0023】
図2は、カメラ2の配置の例を示す平面図である。実施形態に係るこの清掃支援システム9は、駅構内のショッピングモール等の商業施設の床を清掃の対象とする。図2には、清掃の対象の例である床を上から見た形状が示されている。この床は、4つの清掃範囲Ra、Rb、Rc、Rd(以下、これらを区別しない場合、単に「清掃範囲R」という)に区画されている。
【0024】
4つの清掃範囲Ra、Rb、Rc、Rdは、それぞれ、その汚れの度合いを観察する標本となる箇所として代表箇所Ea、Eb、Ec、Ed(以下、これらを区別しない場合、単に「代表箇所E」という)が定められている。
【0025】
代表箇所Ea、Eb、Ec、Edは、それぞれ、天井、壁、柱等、上記商業施設に設置された構造物に固定されたカメラ2a、2b、2c、2d(以下、これらを区別しない場合、単に「カメラ2」という)によって撮影される。
【0026】
図3は、カメラ2が代表箇所Eを撮影する様子を示す図である。図3に示すカメラ2は、商業施設の壁のうち、天井に近い部分に設置されている。このカメラ2は、清掃範囲Rのうち、代表箇所Eが撮影可能なようにレンズの方向が調整されている。つまり、これらのカメラ2は固定されているため、その視野も固定されている。
【0027】
代表箇所Eは、清掃範囲Rの一部であるため、これのみを撮影するカメラ2から得られる画像には、清掃範囲Rの他の箇所が含まれない。しかし、代表箇所Eを撮影した画像を汚れの経時変化の傾向を示すトレンドデータとして利用することで、判定装置1は、清掃範囲Rの全体の汚れの進度を把握することができる。
【0028】
<判定装置の構成>
図4は、判定装置1の構成の例を示す図である。判定装置1は、プロセッサ11、メモリ12、インタフェース13、及び表示部15を有する。これらは、バスにより相互に通信可能に接続されている。
【0029】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有し、コンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を記憶する。
【0030】
また、図4に示すメモリ12は、撮影条件表121、及び判定基準表122を記憶する。これらはプロセッサ11が処理を実行する際に用いられる。
【0031】
プロセッサ11は、メモリ12からプログラムを読出して実行することにより判定装置1を制御する。また、プロセッサ11は、インタフェース13を介してカメラ2を制御する。プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。また、プロセッサ11は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよいし、FPGAを含んでもよい。また、このプロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は他のプログラマブル論理デバイスを有し、これらによって制御を行ってもよい。
【0032】
インタフェース13は、有線又は無線により判定装置1を、カメラ2に通信可能に接続する通信回路である。このインタフェース13は、カメラ2の他に、各種の外部装置と通信可能に接続してもよい。
【0033】
表示部15は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有しており、プロセッサ11の制御の下、画像を表示する。なお、判定装置1は、キーボード、タッチパネル、マウス等の操作子を含んだ、ユーザの操作を受付ける操作部を有してもよい。
【0034】
<撮影条件表の構成>
図5は、撮影条件表121の構成の例を示す図である。この撮影条件表121は、カメラ2による代表箇所Eの撮影に用いる各種の設定値を記述した表である。図5に示す撮影条件表121は、項目として「シャッター速度」、「絞り値」、「ISO感度」、「ホワイトバランス」、「露出補正」、及び「撮影時間帯」を記憶し、そのそれぞれに対応する値を記憶している。
【0035】
撮影条件表121のうち「撮影時間帯」は、照明環境が一定となる、歩行者数が決められた水準未満になる、等の条件を満たす時間帯に設定される。「撮影時間帯」には、一日のうちの1以上の時間帯が記述されてもよく、また、撮影を予定している1以上の時刻が記述されてもよい。また、「撮影時間帯」には、設定された時間帯ごとに、その時間帯で撮影する画像の枚数が対応付けて記述されてもよい。
【0036】
「シャッター速度」、「絞り値」等、他の項目は、カメラ2の設定項目を含む。これらのカメラ2の設定項目は、カメラ2ごとに定められてもよく、「撮影時間帯」に示す時間帯ごとに定められてもよい。
【0037】
また、この撮影条件表121は、対象(この場合は床)までの距離、撮影した画像を複数の区画(分割タイルともいう)分割する際の、各区画のサイズ、等の項目を有してもよい。分割タイルのサイズは、例えば、人の目視による感知能力に準じて定められる。このサイズは、各種の実験、人の眼球、視力、等の知見に基づいて決められてもよい。
【0038】
例えば、平均的な身長の人の目の位置は1.3メートル以上、1.6メートル未満の高さであるとする。また、平均的な身長の人の視力は1.0である、とする。この場合、或る研究によると、上記の高さから床を見た場合、周囲とのコントラストが低くても、人が識別できるサイズの範囲は、一辺が10ミリメートル以上、15ミリメートル未満の正方形とされている。したがって、カメラ2で撮影された画像は、例えば、10ミリメートル四方の正方形に相当する画素に分割される。
【0039】
<判定基準表の構成>
図6は、判定基準表122の構成の例を示す図である。この判定基準表122は、汚れの統計量と、その統計量を分類する閾値と、汚れの種別との対応関係を記憶する表である。また、この判定基準表122は、汚れの種別ごとに、それぞれ要清掃判定の基準を記憶する。「要清掃判定の基準」とは、対象の状態が、清掃を必要とする状態(「要清掃」という)である、と判定する基準である。
【0040】
この判定基準表122は、汚れの統計量として、「全体の標準偏差」、「全体の輝度平均の差」、「分割タイルの輝度平均の差の最大値」を登録する。これらのそれぞれの統計量に対応する「閾値」は、統計量と比較してその統計量を「大」、「中」、「小」のいずれかに分類するための閾値である。例えば、「全体の標準偏差」が「小」、「全体の輝度平均の差」が「大」、「分割タイルの輝度平均の差の最大値」が「大」と分類された場合、汚れの種別は「全体汚れ」に決まる。
【0041】
ここで「全体の標準偏差」は、例えば、撮影された画像に含まれる画素ごとの輝度を用いて算出される標準偏差であり、各画素の輝度がその平均値からのばらつきを示す指標の例である。なお、ばらつきを示す指標は標準偏差に限らず、例えば、分散、絶対偏差(平均偏差)、偏差値等であってもよい。この「全体の標準偏差」は、過去において取得された画像に示される基準に依存しない。
【0042】
「全体の輝度平均の差」は、撮影された画像に含まれる画素ごとの輝度を相加平均し、この平均値と、過去に取得された基準となる画像(基準画像ともいう)における画素ごとの輝度の平均値との差の絶対値を算出することにより得られる。この「全体の輝度平均の差」は、現時点で撮影された画像の輝度平均が、基準画像における輝度平均からどれだけ離れているかを示す指標の例である。
【0043】
「分割タイルの輝度平均の差の最大値」は、撮影された画像と、基準画像とで、それぞれ、分割タイルごとの輝度を相加平均し、これら平均値の差の絶対値をそれぞれ算出して、その中の最大値を特定することにより得られる。この「分割タイルの輝度平均の差の最大値」は、基準から最も離れた、つまり、基準の時から最も汚れてしまった分割タイルの輝度平均と、その基準値との差を示す。つまり、これは基準と比較して最も汚れた分割タイルの汚れ度合いを意味する。他の表現によれば、この「分割タイルの輝度平均の差の最大値」は、画像を分割した各区画にそれぞれ対応する基準値とこの区画の値との差の最大値の例である。
【0044】
なお、判定基準表122は、上述した「全体の標準偏差」に代えて、又は加えて、汚れの統計量として、「分割タイルの輝度平均の標準偏差」を記憶してもよい。この「分割タイルの輝度平均の標準偏差」は、例えば、撮影された画像を分割した分割タイルごとの輝度を用いて算出される標準偏差であり、各分割タイルの輝度平均について、その画像全体における平均値からのばらつきを示す指標の例である。つまり、この「分割タイルの輝度平均の標準偏差」は、画像を分割した各区画の値のばらつきを示す指標の例である。
【0045】
この判定基準表122における「要清掃判定の基準」は、汚れの種別ごとに、清掃対象が要清掃であるか否かを判定する基準を定める。例えば、汚れの種別が「全体汚れ」の場合、「全体の輝度平均の差」が決められた範囲内であるか否かによって、対象が要清掃であるか否かが判定される。また、例えば、汚れの種別が「まだら汚れ」の場合、「分割タイルの輝度平均の差の最大値」が決められた範囲内であるか否かによって、対象が要清掃であるか否かが判定される。なお、例えば、汚れの種別が「一部汚れ」の場合、対象が要清掃ではないと判定するため、この基準を設けなくてもよい。
【0046】
上述した通り、この判定基準表122は、カメラ2で撮影された代表箇所Eを示す画像(撮影画像ともいう)における輝度と基準画像における輝度との差を統計量の算出に用いるので、もともと床面の模様に濃淡がある場合でも、基準から外れてまだら模様に汚れている場合には、この汚れの種別を「まだら汚れ」として検出することが可能である。
【0047】
図7は、要清掃判定の基準の例を示す図である。図7には、撮影画像が示す汚れを、「汚れの度合い」及び「汚れのサイズ」という二要素の組合せで分類する態様が示されている。この図7に示す要清掃領域Cは、要清掃と判定される分類の領域を示している。すなわち、汚れの度合いが三段階中最も「汚い」と評価されたもののうち、汚れのサイズが三段階で最も「小さい」と評価されなかった汚れは、図7に示す要清掃領域Cに該当し、要清掃と判定される。
【0048】
図8は、要清掃判定の基準の別の例を示す図である。図8には、撮影画像が示す汚れを、その汚れの「標準偏差」及び「最大汚れ」の二軸で示される平面上にプロットし、この平面上の関係式との位置関係によって、分類する態様が示されている。
【0049】
上述した関係式は、例えば、区画の値のばらつきを示す指標の例である「標準偏差」を変数xで、区画にそれぞれ対応する基準値とその区画の値との差の最大値の例である「最大汚れ」を変数yで表した場合、定数a、b、cを用いた次の式(1)及び式(2)で表される。
【0050】
[数1]
y=a×e-x+b …(1)
【0051】
[数2]
y=a×e-x+c …(2)
【0052】
式(1)は、「要清掃」と「警告」との境界を示す関係式である。また、式(2)は、「警告」と「清掃不要」との境界を示す関係式である。式(1)、及び式(2)は、いずれも、変数xの指数関数によって変数yを表した式である。図8に示す関係式はいずれも、変数xの増加に伴って変数yが減少する減少関数である。したがって、例えば「要清掃」と判定される範囲を示す関係式は、撮影画像が示す「最大汚れ」を変数zで表すと、次の式(3)で表される。
【0053】
[数3]
z≧a×e-x+b …(3)
【0054】
すなわち、式(3)は、区画の値のばらつきを示す指標の減少関数の関数値と、基準値と区画の値との差の最大値との不等式で表される関係式の例である。
【0055】
そして、式(3)に示す関係式を満たす場合に、清掃対象が要清掃であると判定するこの判定装置1は、基準値と区画の値との差の最大値及び区画の値のばらつきを示す指標を用いた関係式を満たす場合に対象の清掃を要すると判定する判定装置の例である。
【0056】
<判定装置の機能的構成>
図9は、判定装置1の機能的構成の例を示す図である。判定装置1のプロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより、指示部111、分割部112、算出部113、判定部114、及び提示部115として機能する。なお、図9において、インタフェース13は図示されていない。
【0057】
指示部111は、撮影条件表121に示す撮影時間帯になると、接続されているカメラ2に、清掃対象である床の一部である代表箇所Eを撮影するよう指示する。
【0058】
分割部112は、カメラ2から取得した撮影画像を決められたサイズの分割タイルに分割する。
【0059】
算出部113は、分割された区画、つまり、分割タイルごとに汚れの統計量を算出する。また、算出部113は、算出した統計量と基準値との差を算出し、その最大値を特定する。
【0060】
判定部114は、算出部113が算出した統計量等に基づいて、清掃対象が要清掃であるか否かを判定する。
【0061】
提示部115は、清掃対象が要清掃である、と判定する場合に、その旨をユーザに提示する。この提示は、例えば、文字、画像等の表示部15への表示によって行われる。
【0062】
また、提示部115は、清掃対象が要清掃である、と判定する場合に、その清掃対象が清掃を要する程度を特定し、これを提示してもよい。清掃対象が清掃を要する程度は、例えば、上述した不等式の左辺と右辺との差の絶対値等により求められる。この場合、この提示部115として機能するプロセッサ11を有する判定装置1は、清掃を要すると判定する場合に清掃を要する程度を提示する判定装置の例である。
【0063】
<表示装置の動作>
図10は、判定装置1の撮影指示の動作の流れの例を示すフロー図である。また、図11は、判定装置1の判定の動作の流れの例を示すフロー図である。判定装置1のプロセッサ11は、ステップS101からステップS102までの撮影指示の処理と、ステップS201からステップS209までの判定の処理と、を並行して実行してもよい。
【0064】
<撮影指示の処理>
図10に示す通り、判定装置1のプロセッサ11は、撮影条件表121を参照して撮影条件を充足したか否かを判定する(ステップS101)。この撮影条件は、例えば、撮影条件表121に示す撮影時間帯になったこと、カメラ2の各種設定が撮影条件表121に示す撮影のための設定項目の値に設定されたこと等である。撮影条件を充足していない、と判定する間(ステップS101;NO)、プロセッサ11は、この判定を続ける。
【0065】
一方、撮影条件を充足した、と判定すると(ステップS101;YES)、プロセッサ11は、カメラ2に対して清掃対象の撮影を指示する(ステップS102)。
【0066】
<判定の処理>
図11に示す通り、プロセッサ11は、カメラ2から撮影画像を取得したか否かを判定する(ステップS201)。カメラ2から撮影画像を取得していない、と判定する間(ステップS201;NO)、プロセッサ11は、この判定を続ける。
【0067】
一方、カメラ2から撮影画像を取得した、と判定すると(ステップS201;YES)、プロセッサ11は、取得した撮影画像を予め決められた複数の区画に分割する(ステップS202)。
【0068】
プロセッサ11は、撮影画像を複数の区画に分割すると、その区画ごとに汚れのばらつきを示す指標を算出する(ステップS203)。なお、ここでの区画は、画像の最小単位である画素でもよい。
【0069】
また、プロセッサ11は、撮影画像を複数の区画に分割すると、その区画ごとに汚れの基準値との差を求め、この差の最大値を算出する(ステップS204)。なお、ステップS203、及びステップS204の処理の順序は逆でもよい。
【0070】
そして、プロセッサ11は、柔術した算出結果にもとづいて、撮影画像が示す清掃対象の状態が「要清掃」であるか否かを判定する(ステップS205)。
【0071】
清掃対象の状態が「要清掃」でない、と判定する場合(ステップS205;NO)、プロセッサ11は、例えば表示部15を用いて、清掃が不要である旨をユーザに提示する(ステップS206)。
【0072】
一方、清掃対象の状態が「要清掃」である、と判定する場合(ステップS205;YES)、プロセッサ11は、清掃を要する旨をユーザに提示する(ステップS207)。
【0073】
そして、プロセッサ11は、清掃を要する程度を特定し(ステップS208)、この程度をユーザに提示する(ステップS209)。なお、ステップS207の処理、及びステップS208からステップS209までの処理の順序は逆でもよい。
【0074】
以上、説明した処理を実行することにより、清掃支援システム9は、清掃範囲Rごとに代表箇所Eを定め、その代表箇所Eを共通の設定をした固定のカメラ2で撮影するので、移動しながら撮影された画像を用いる場合に比べて、代表箇所Eに生じた汚れの検出を高精度で行うことができる。
【0075】
また、この清掃支援システム9における判定装置1は、汚れのばらつきを示す指標を用いて清掃の要否を判定するので、人の感覚に似た判定をすることができる。
【0076】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0077】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0078】
<1>
上述した実施形態において、清掃範囲Rには、その一部であって標本として観察される代表箇所Eが定められていたが、カメラ2は、清掃範囲Rの全体を撮影してもよい。要するに、判定装置1は、対象の少なくとも一部を撮影した画像を複数の区画に分割し、各区画にそれぞれ対応する基準値と区画の値との差の最大値、及び区画の値のばらつきを示す指標を用いて対象の清掃の要否を判定すればよい。
【0079】
<2>
判定装置1は、基準画像、及び撮影画像のそれぞれにおける区画の輝度の差の大きさの総和に応じた量が、決められた下限未満の場合に、上述した差の最大値及び指標に関わらず、清掃対象が清掃不要であると判定してもよい。ここで「区画の輝度の差の大きさの総和に応じた量」とは、基準との差の絶対値の合計、相加平均等である。この判定装置1は、分割タイルごとに求めた基準値からの差の総和が、一定の水準に満たない場合、清掃対象の清掃が不要であると判定する。
【0080】
したがって、この変形例に示す判定装置1は、基準値と区画の値との差の大きさの総和に応じた量が決められた下限未満の場合に、上述した差の最大値及び区画の値のばらつきを示す指標に関わらず清掃を要しないと判定する判定装置の例である。
【0081】
<3>
上述した実施形態において、判定装置1は、撮影画像が示す汚れを、その汚れの「標準偏差」及び「最大汚れ」の二軸で示される平面上にプロットし、この平面上の関係式との位置関係によって、分類していたが、上述した二軸にそれぞれ定められた閾値との比較によって、これを分類してもよい。例えば、判定装置1は、「標準偏差」及び「最大汚れ」のそれぞれが、それぞれに定めた閾値を超えた場合に、要清掃と判定してもよい。
【0082】
この変形例における判定装置1は、各区画にそれぞれ対応する基準値と区画の値との差の最大値及び区画の値のばらつきを示す指標のいずれもがそれぞれの閾値を超えた場合に対象の清掃を要すると判定する判定装置の例である。
【0083】
<4>
カメラ2は、プロセッサとメモリとを有してもよい。この場合、上述した実施形態において判定装置1のプロセッサ11、及びメモリ12による実現する機能の少なくとも一部を、カメラ2が備えるプロセッサ、又はメモリが実現してもよい。また、判定装置1のプロセッサ11、及びメモリ12による実現する機能の少なくとも一部は、カメラ2を制御する判定装置1ではない装置に備えられたプロセッサ、又はメモリが実現してもよい。例えば、上述した処理のうち、撮影指示の動作に関する処理は、判定装置1ではない装置によって行われてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…判定装置、11…プロセッサ、111…指示部、112…分割部、113…算出部、114…判定部、115…提示部、12…メモリ、121…撮影条件表、122…判定基準表、13…インタフェース、15…表示部、2…カメラ、9…清掃支援システム、C…要清掃領域、E…代表箇所、R…清掃範囲。
図1
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図11