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特開2024-33596状態計測装置、センシング軸受、状態計測システム、状態計測方法、および状態計測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033596
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】状態計測装置、センシング軸受、状態計測システム、状態計測方法、および状態計測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20240306BHJP
   F16C 41/00 20060101ALI20240306BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20240306BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G01L5/00 K
F16C41/00
F16C19/06
F16C33/66 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137260
(22)【出願日】2022-08-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・研究集会名 関西大学システム理工学部機械工学科特別研究発表会(卒業論文発表会) 開催場所 学校法人 関西大学 千里山キャンパス第4学舎2号館R2302 開催日 令和4年2月16日 ・研究集会名 関西大学理工学研究科機械工学分野修士論文発表会 開催場所 学校法人 関西大学 千里山キャンパス第4学舎2号館R2301 開催日 令和4年2月18日 ・ウェブサイトのURL https://www.jsme.or.jp/msd/html/99/program_participants_only.pdf 掲載日 令和4年3月4日 ・研究集会名 日本機械学会情報知能精密部門 講演会2022(IIP2022) 開催場所 オンライン開催 開催日 令和4年3月7日 ・ウェブサイトのURL https://confit.atlas.jp/guide/event/ksconf2022/top 掲載日 令和4年3月8日 ・研究集会名 日本機械学会関西支部関西学生会 2021年度学生員卒業研究発表講演会 開催場所 第13室(オンライン) 開催日 令和4年3月15日 ・ウェブサイトのURL https://www.nagoya-mipe2022.org/program 掲載日 令和4年8月28日 ・研究集会名 2022 JSME-IIP/ASME-ISPS Joint International Conference on Micromechatronics for Information and Precision Equipment 開催場所 国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 東山キャンパス 豊田講堂 オンデマンドでビデオ配信 開催日 令和4年8月28日
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】谷 弘詞
【テーマコード(参考)】
2F051
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
2F051AB06
2F051BA07
3J217JA02
3J217JA14
3J217JA24
3J217JA38
3J217JB17
3J217JB37
3J217JB87
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA77
3J701EA63
3J701FA26
3J701XE22
3J701XE40
(57)【要約】
【課題】軸受のサイズが規格に適合し、かつ軸受の状態を推定する、軸受の状態計測装置を実現する。
【解決手段】第1電極(33a)および第2電極(33b)と、第1電極および第2電極に対して対向し、第1電極および第2電極に対して相対的に回転することによって、回転方向に沿って一様ではない電荷分布を形成する対向層(38)と、が設けられた軸受(20)の状態を計測する状態計測装置(10)は、第1電極および第2電極の間の電圧を示す情報を取得する電圧取得部(11)と、情報が示す電圧における、軸受けの回転の周波数を含んだ第1周波数帯の第1電圧に基づいて、軸受に加わる荷重を推定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受の状態を計測する状態計測装置であって、
前記軸受には、
第1電極、および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極に対向する対向層と、が設けられており、
前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されており、
前記状態計測装置は、
前記第1電極および前記第2電極の間の電圧を示す情報を取得する電圧取得部と、
前記情報が示す電圧における、前記軸受の回転の周波数を含んだ第1周波数帯の第1電圧に基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定する推定部と、を備える、状態計測装置。
【請求項2】
前記軸受は、
前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層との間に、帯電層が設けられており、
前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記帯電層は帯電するように構成される、請求項1に記載の状態計測装置。
【請求項3】
前記第1電極および前記第2電極の対は回転方向に沿ってN個形成されており、Nは2以上であり、
前記推定部は、前記情報が示す電圧における、前記軸受の回転の周波数のN倍の周波数を含んだ第2周波数帯の第2電圧と、前記第1電圧とに基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定する、請求項1に記載の状態計測装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記第2電圧に対する前記第1電圧の比に基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定する、請求項3に記載の状態計測装置。
【請求項5】
前記対向層は、第3電極を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の状態計測装置。
【請求項6】
前記軸受は、
前記第1電極および前記第2電極とは異なる回転半径の回転角度における一部分のみに第4電極を有し、
前記対向層は、回転角度における一部分のみに、前記第4電極と対向し得る第5電極を含み、
前記第4電極と前記対向層とが相対的に回転することによって、前記第4電極は帯電するように構成されており、
前記状態計測装置は、
前記第4電極と前記対向層との回転により発生する前記第4電極の電圧の情報に基づき、前記軸受の回転角度を検出する回転角度検出部をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の状態計測装置。
【請求項7】
前記推定部は、フーリエ変換を行う、請求項1から4のいずれか一項に記載の状態計測装置。
【請求項8】
前記推定部は、周波数フィルタによって前記第1周波数帯の前記第1電圧を特定する、請求項1から4のいずれか一項に記載の状態計測装置。
【請求項9】
相対的に回転する軸受と、
前記軸受の回転軸方向における一方側に配置された検出部と、を備え、
前記検出部は、
第1電極、および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極に対向する対向層と、を備え、
前記第1電極および前記第2電極上には、前記対向層との間に、帯電フィルムが設けられておらず、
前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されている、センシング軸受。
【請求項10】
相対的に回転する軸受と、
前記軸受の回転軸方向における一方側に配置された検出部と、を備え、
前記検出部は、
第1電極、および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極に対向する帯電層と、
前記帯電層に対し前記第1電極および前記第2電極の反対側に位置する、対向層と、を備え、
前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記帯電層は帯電し、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されている、センシング軸受。
【請求項11】
相対的に回転する軸受と、
前記軸受の回転軸方向における一方側に配置された検出部と、を備え、
前記検出部は、
第1電極、および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極を覆う第1帯電層と、
前記第1帯電層に対向する第2帯電層と、
前記第2帯電層に対し前記第1帯電層の反対側に位置し、前記第2帯電層によって覆われる対向層と、を備え、
前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記第1帯電層および前記第2帯電層は帯電し、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されている、センシング軸受。
【請求項12】
前記軸受の潤滑をする第1グリスと、
前記検出部に充填された第2グリスと、をさらに備え、
前記第2グリスはフッ素を含む、請求項9から11のいずれか1項に記載のセンシング軸受。
【請求項13】
相対的に回転するステータおよびロータを有する軸受と、
前記軸受の回転軸方向における一方側に配置された第1検出部と、他方側に配置された第2検出部との対とを備え、
前記第1検出部および前記第2検出部は、それぞれ、
前記ステータまたは前記ロータの一方に固定された第1電極、および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極に対向し、前記ステータまたは前記ロータの他方に固定された対向層と、を備え、
前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されている、センシング軸受。
【請求項14】
前記第1検出部における前記第1電極および前記第2電極の間の電圧を示す第1情報、ならびに前記第2検出部における前記第1電極および前記第2電極の間の電圧を示す第2情報、を取得する電圧取得部と、
前記第1情報が示す第1情報電圧、および前記第2情報が示す第2情報電圧に基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定する推定部と、をさらに備える、請求項13に記載のセンシング軸受。
【請求項15】
前記軸受の潤滑をする第1グリスと、
前記第1検出部および前記第2検出部に充填された第2グリスと、をさらに備え、
前記第2グリスはフッ素を含む、請求項13または14に記載のセンシング軸受。
【請求項16】
相対的に回転する軸受と、前記軸受の少なくとも一方の側面に設けられた検出部と、前記軸受の状態を計測する状態計測装置とを含む、状態計測システムであって、
前記検出部は、
第1電極、および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極に対向する対向層と、を備え、
前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されており、
前記状態計測装置は、
前記第1電極および前記第2電極の間の電圧を示す情報を取得する電圧取得部と、
前記情報が示す電圧における、前記軸受の回転の周波数を含んだ第1周波数帯の第1電圧に基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定する推定部と、を備える、状態計測システム。
【請求項17】
軸受の状態を計測する状態計測方法であって、
前記軸受には、
第1電極、および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極に対向する対向層と、が設けられており、
前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されており、
前記第1電極および前記第2電極の間の電圧を示す情報を取得する電圧取得ステップと、
前記情報が示す電圧における、前記軸受の回転の周波数を含んだ第1周波数帯の第1電圧に基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定する推定ステップと、を含む、状態計測方法。
【請求項18】
請求項1に記載の状態計測装置としてコンピュータを機能させるための状態計測プログラムであって、前記電圧取得部、および前記推定部としてコンピュータを機能させるための状態計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軸受の状態計測装置、センシング軸受、状態計測システム、状態計測方法、および状態計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
軸受には、軸方向に対して垂直方向にラジアル荷重(図19符号191参照)が、軸方向にスラスト荷重(アキシャル荷重)(図19符号192参照)などが加わる。特許文献1には、ラジアル荷重を計測する歪みゲージを組み込んだ軸受が開示されている。また、特許文献2には、摩擦帯電センサを組み込んだ軸受が開示されており、当該摩擦帯電センサによって、軸受における回転速度、温度、または振動を計測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-211723号公報
【特許文献2】特開2019-152565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る軸受では、歪みゲージを組み込むために、軸受のサイズが一般的な規格のものと異なることになり、センサに合わせた専用設計を、当該軸受を設ける装置に求めることになる。また、歪みゲージを配置するために、軸受自体の構造も複雑になり、大量生産には向かない欠点もある。また、特許文献2に係る軸受では、荷重または荷重に起因する軸受の状態を計測できない。
【0005】
本発明の一態様は、歪みゲージを用いること無く、軸受に加わる荷重または荷重に起因する状態を計測できる、軸受の状態計測装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る状態計測装置は、軸受の状態を計測する状態計測装置であって、前記軸受には、第1電極、および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に対向する対向層と、が設けられており、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されており、前記状態計測装置は、前記第1電極および前記第2電極の間の電圧を示す情報を取得する電圧取得部と、前記情報が示す電圧における、前記軸受の回転の周波数を含んだ第1周波数帯の第1電圧に基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定する推定部と、を備える。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンシング軸受は、相対的に回転する軸受と、前記軸受の回転軸方向における一方側に配置された検出部と、を備え、前記検出部は、第1電極、および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に対向する対向層と、を備え、前記第1電極および前記第2電極上には、前記対向層との間に、帯電フィルムが設けられておらず、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されている。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンシング軸受は、相対的に回転する軸受と、前記軸受の回転軸方向における一方側に配置された検出部と、を備え、前記検出部は、第1電極、および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に対向する帯電層と、前記帯電層に対し前記第1電極および前記第2電極の反対側に位置する、対向層と、を備え、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記帯電層は帯電し、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されている。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンシング軸受は、相対的に回転する軸受と、前記軸受の回転軸方向における一方側に配置された検出部と、を備え、前記検出部は、第1電極、および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極を覆う第1帯電層と、前記第1帯電層に対向する第2帯電層と、前記第2帯電層に対し前記第1帯電層の反対側に位置し、前記第2帯電層によって覆われる対向層と、を備え、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記第1帯電層および前記第2帯電層は帯電し、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されている。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンシング軸受は、相対的に回転するステータおよびロータを有する軸受と、前記軸受の回転軸方向における一方側に配置された第1検出部と、他方側に配置された第2検出部との対とを備え、前記第1検出部および前記第2検出部は、それぞれ、前記ステータまたは前記ロータの一方に固定された第1電極、および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に対向し、前記ステータまたは前記ロータの他方に固定された対向層と、を備え、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されている。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る状態計測システムは、相対的に回転する軸受と、前記軸受の少なくとも一方の側面に設けられた検出部と、前記軸受の状態を計測する状態計測装置とを含む、状態計測システムであって、前記検出部は、第1電極、および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に対向する対向層と、を備え、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されており、前記状態計測装置は、前記第1電極および前記第2電極の間の電圧を示す情報を取得する電圧取得部と、前記情報が示す電圧における、前記軸受の回転の周波数を含んだ第1周波数帯の第1電圧に基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定する推定部と、を備える。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る状態計測方法は、軸受の状態を計測する状態計測方法であって、前記軸受には、第1電極、および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に対向する対向層と、が設けられており、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されており、前記第1電極および前記第2電極の間の電圧を示す情報を取得する電圧取得ステップと、前記情報が示す電圧における、前記軸受の回転の周波数を含んだ第1周波数帯の第1電圧に基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定する推定ステップと、を含む。
【0013】
本発明の各態様に係る状態計測装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記状態計測装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記状態計測装置をコンピュータにて実現させる状態計測装置のプログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、歪みゲージを用いること無く、かつ軸受に加わる荷重または荷重に起因する状態を計測できる、軸受の状態計測装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1に係るセンシング軸受の構成を示す部分断面図である。
図2】検出部の要部の構成を示す断面図である。
図3】実施形態1に係るステータ電極の要部の構成を示す平面図である。
図4】実施形態1に係る対向層の要部の構成を示す平面図である。
図5】実施形態1に係る検出部と状態計測装置との要部の構成を示すブロック図である。
図6】軸受が500rpmで回転している際に、ラジアル荷重100Nが加わった際の電圧を示す図である。
図7】軸受が500rpmで回転している際に、ラジアル荷重1000Nが加わった際の電圧を示す図である。
図8】軸受にラジアル荷重が加わった際に、ステータ側検出部の中心およびロータ側検出部の中心がうねる現象を示す概念図である。
図9図6および図7の電圧の情報に対してFFT(高速フーリエ変換)を適用した図である。
図10】ラジアル荷重を変化させながら、規格化うねり成分電圧を測定した結果を示す図である。
図11】実施形態2に係るステータ電極の要部の構成を示す平面図である。
図12】実施形態2に係る対向層の要部の構成を示す平面図である。
図13】実施形態2に係る検出部と状態計測装置との要部の構成を示すブロック図である。
図14】実施形態3に係るセンシング軸受の構成を示す部分断面図である。
図15】スラスト荷重を変化させながら、主ピーク電圧比を測定した結果を示す図である。
図16】実施形態4の一例に係る検出部の要部の構成を示す断面図である。
図17】実施形態4の別の例に係る検出部の要部の構成を示す断面図である。
図18】実施形態4のさらに別の例に係る検出部の要部の構成を示す断面図である。
図19】ラジアル荷重およびスラスト荷重を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
(状態計測システムの構成)
状態計測システムは、軸受と、検出部と、状態計測装置とを備える。状態計測システムは、回転体を支持する軸受の状態を計測する。すなわち、状態計測システムは、軸受に組み込まれた検出部によって、軸受に加わる荷重に関わる物理量を計測し、状態計測装置によって、当該物理量を荷重に換算する。
【0018】
(軸受20の構成)
図1は、実施形態1に係るセンシング軸受200の構成を示す部分断面図である。センシング軸受200は、軸受20と検出部30とを備える。
【0019】
軸受20は、一般的な軸受であり、例えば転がり軸受(球軸受またはコロ軸受等)である。以降はラジアル球軸受の前提で記載するが、本発明はこれに限定されない。軸受20は、外輪21と、内輪22と、転動体23と、保持器24と、シールド25と、を備える。また、後述する検出部30を防護するためのシールド26をも、軸受20は備える。
【0020】
本実施形態では、外輪21がステータ(静止輪)であり、内輪22がロータ(回転輪)である場合に関して記載するがこれに限定されない。すなわち、外輪21がロータであり、内輪22がステータであってもよい。
【0021】
外輪21は静止側の部品に固定されており、内輪22が回転側の部品に固定されている。内輪22は、外輪21に対して回転する。この際、転動体23によって、外輪21と内輪22との間隔は一定に保たれる。すなわち、外輪21と内輪22は同軸となる。
【0022】
また、転動体23は、内輪22の回転に合わせて回転することになる。保持器24は、複数の転動体23の相対的な位置を保持する。
【0023】
また、シールド25およびシールド26によって、転動体23が回転する空間への塵埃の侵入を防いでいる。シールド25およびシールド26は、金属薄板、または樹脂基板などにより形成されている。
【0024】
さらに、軸受20は、第1グリス27を備えてもよい。第1グリス27は、転動体23の摺動、すなわち軸受20としての潤滑を促進するための潤滑油である。第1グリス27としては、炭化水素系のグリスを用いることが多い。第1グリス27は、シールド25同士の間に充填されている。
【0025】
(検出部30の構成)
図2は、検出部30の要部の構成を示す断面図である。軸受20の一方の側面側には、検出部30が設けられている。検出部30は、ステータ側検出部31と、ロータ側検出部36とに分かれており、ステータ側検出部31は外輪21にシールド25を介して固定されており、ロータ側検出部36は内輪22にシールド26を介して固定されている。つまり、ステータ側検出部31に対して、ロータ側検出部36は回転することになる。なお、ステータ側検出部31と、ロータ側検出部36とは、いずれが内側(転動体23側)に配置されていてもよい。
【0026】
ステータ側検出部31は、基板32と、ステータ電極33と、帯電層34と、を備える。これら部材は、シールド25の上にこの順に積層されている。
【0027】
基板32は、電極を支持するための基板である。基板32は、ポリイミドフィルムなどの絶縁材料で構成される。
【0028】
ステータ電極33は、基板32に形成される電極である。ステータ電極33の詳細は後述する。
【0029】
帯電層34は、絶縁材料製のフィルムであり、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、およびポリアミド(PA)膜であるが、これらに限定されない。
【0030】
ロータ側検出部36は、基板37と、対向層38と、を備える。これら部材はシールド26の上にこの順に積層されている。
【0031】
基板37は、電極を支持するための基板である。基板37は、ポリイミドフィルムなどの絶縁材料で構成される。
【0032】
対向層38は、帯電層34に対向するよう、基板37に形成されている。対向層38の詳細は後述する。
【0033】
検出部30は、さらにステータ側検出部31とロータ側検出部36との間の空間(ギャップg)に充填された第2グリス39を備える。シールド25からシールド26の間の空間が、第2グリス39で満たされている。第2グリス39は、帯電層34を摩擦帯電させるために用いられる。帯電層34と、第2グリス39とは、帯電列において互いに離れた材質であることが好ましい。
【0034】
帯電層34と対向層38との相対的な回転に伴い、帯電層34と第2グリス39との間に摩擦が生じ、帯電層34と第2グリス39とは、摩擦帯電する。対向層38は回転方向に沿って電荷分布を形成する。
【0035】
第2グリス39としては、フッ素を含んだグリス、例えばフッ化水素系のグリスを用いることができる。第2グリス39として、フッ素を含んだグリスを用いることによって、外部からの水分の侵入を防ぐ効果もある。そのため、検出部30の劣化を防ぐことができる。また、軸受20内部への水分の侵入を防ぐことによって、第1グリス27の劣化を防ぎ、軸受20の寿命を長くする効果もある。
【0036】
ステータ側検出部31とロータ側検出部36との間には、ギャップgが空いている。ギャップgの間隔は、20~30μm以上、200μm以下が望ましく、50μm以上100μm以下が好適である。
【0037】
なお、ステータ側検出部31とロータ側検出部36とは、回転するのに支障がない範囲で互いに接触していてもよい。また、ステータ側検出部31とロータ側検出部36とが接触している場合、第2グリス39は、充填されていても、充填されていなくてもよい。
【0038】
(ステータ電極33の構成)
図3は、実施形態1に係るステータ電極33の要部の構成を示す平面図である。ステータ電極33は、複数の第1電極33aと、複数の第2電極33bと、第1出力配線33cと、第2出力配線33dと、を備える。
【0039】
第1電極33aおよび第2電極33bは、円周上に互い違いに形成された、扇形状(2つの円弧と2つの半径とに囲まれた形状)の電極である。各扇形状の大きさは一定であるため、一定ピッチおきに各電極が円周上に配置されていることになる。また、必ずしも各扇形状が一定ピッチである必要はなく、離散して配置されていればよい。第1電極33aおよび第2電極33bの形状は、これに限らない。複数の第1電極33aは、互いに電気的に接続されている。複数の第2電極33bは、互いに電気的に接続されている。
【0040】
第1電極33aおよび第2電極33bの対は、回転方向に沿って、N個形成されている。Nは2以上であればよい。すなわち、円周上を少なくとも4分割した電極が形成されていればよい。
【0041】
また、第1電極33aは、第1出力配線33cに、第2電極33bは、第2出力配線33dに接続されている。第1出力配線33cおよび第2出力配線33dは、基板32に形成された電極に対し接続された電線である。
【0042】
なお、帯電層34は、複数の第1電極33aおよび複数の第2電極33bを覆う。
【0043】
(対向層38の構成)
図4は、実施形態1に係る対向層38の要部の構成を示す平面図である。対向層38は、少なくとも1つの第3電極38aを含む。第3電極38aは、円周上に形成された、扇形状の電極である。第3電極38aが、複数形成されている場合、複数の第3電極38aは、回転方向に沿って離散的に配置され、一定ピッチおきに配置されることが好ましい。複数の第3電極38aのピッチと、複数の第1電極33aのピッチとは同じである。第3電極38aの形状は、これに限らない。また、各扇形状は互いに電気的に接続されていてもよい。複数の第3電極38aは、複数の第1電極33aおよび複数の第2電極33bと対向し得る半径位置に配置されている。なお、対向層38は、第3電極38aの代わりに、第3電極38aと同様の形状の誘電体を含んでもよい。
【0044】
そのため、ステータ電極33に対して対向層38が相対的に回転すると、複数の第3電極38aは、複数の第1電極33aに対向する位置と、複数の第2電極33bに対向する位置とを交互に通過する。また、第1電極33aおよび第2電極33bのそれぞれは、基板37上に第3電極38aが形成された領域と、基板37上に第3電極38aが形成されていない領域とに、交互に対向する。
【0045】
(回転による摩擦帯電)
外輪21に対して内輪22が回転することで、ステータ側検出部31に対して、ロータ側検出部36が回転する。これにより、第2グリス39も帯電層34に対して移動する。そのため、帯電層34と第2グリス39との間に摩擦が生じる。
【0046】
その結果として、帯電層34および第2グリス39は、摩擦によって互いに逆極性に帯電(摩擦帯電)する。第3電極38aは、表面に近接する帯電した第2グリス39の影響で分極し得る。この際、対向層38には、第3電極38aが形成された領域と、第3電極38aが形成されておらず帯電した第2グリス39が満たされた領域とが存在する。対向層38の構造が回転方向に一様ではないために、対向層38における電荷分布は一様ではなくなる。それゆえ、複数の第1電極33aに第3電極38aが対向するときと、複数の第1電極33aに第3電極38aではなく第2グリス39が対向するときとで、複数の第1電極33aの電位が変化する。同様に、複数の第2電極33bに第3電極38aが対向するときと、複数の第2電極33bに第3電極38aではなく第2グリス39が対向するときとで、複数の第2電極33bの電位が変化する。第1電極33aおよび第2電極33bの一方に第3電極38aが対向しているとき、他方に第2グリス39が対向している。第3電極38aが対向する電極は交互に入れ替わるため、複数の第1電極33aと複数の第2電極33bとの間の電圧は周期的に変化する。
【0047】
すなわち、第1出力配線33cおよび第2出力配線33d間の電圧を計測することによって、第1電極33aと第2電極33bとの間の電圧を計測することができる。
【0048】
対向層38に、第3電極38aを備えることで、第3電極38a内において電荷が一様になることによって、第1電極33aおよび第2電極33bの間において発生する電圧変化を急峻とすることができる。そのため、検出部30の応答性を高めることができ、高周波数の信号処理を可能とする。
【0049】
(状態計測装置10の構成)
図5は、実施形態1に係る検出部30と状態計測装置10との要部の構成を示すブロック図である。検出部30については一部の断面を模式的に示している。検出部30に対して、第1出力配線33cおよび第2出力配線33dに接続され、第1電極33aと第2電極33bとの間の電圧を測定する、電圧計11aが設けられている。例えば、電圧計11aは、軸受20の外輪21(ステータ側)に設けられている。状態計測装置10は、電圧取得部11と、周波数取得部12と、推定部13と、出力部14と、を備える。
【0050】
電圧取得部11は、電圧計11aが計測した第1電極33aおよび第2電極33bの間の時系列の電圧を示す情報を取得する。電圧取得部11は、当該情報を、周波数取得部12と推定部13とに出力する。
【0051】
なお、ここでは電圧計11aは第1電極33aと第2電極33bとの間の電圧を計測したが、これに限定されない。例えば、電圧計11aは、第1電極33aとアースとの間の電圧を計測してもよいし、第2電極33bとアースとの間の電圧を計測してもよい。なお、第1電極33aとアースとの間の電圧を計測する場合は、第2電極がなくてもよい。第2電極33bとアースとの間の電圧を計測する場合も同様である。
【0052】
なお電圧計11aによって電圧を計測する代わりに、電流計によって第1電極33aと第2電極33bとの間を流れる電流を計測してもよい。当該電流を計測することによって、第1電極33aおよび第2電極33bに帯電した電荷量を計測することができる。計測される電流(電荷)は、電圧と同様の振る舞いを示す。それゆえ、電流を示す情報を取得するのは電圧を示す情報を取得するのと同義である。
【0053】
周波数取得部12は、当該情報を解析し、軸受20の回転の周波数を特定する。この回転の周波数を特定する方法の詳細に関しては後述する。周波数取得部12は、特定した周波数を推定部13に出力する。
【0054】
なお、周波数取得部12は、情報を解析して、軸受20の回転の周波数を特定せずに、外部の制御装置40からモーターの回転指令における回転の周波数設定値を取得してもよい。すなわち、周波数取得部12は、何等かの手段によって、回転の周波数を特定または取得すればよい。
【0055】
推定部13は、入力された情報が示す電圧(第1電極33aと第2電極33bとの間の電圧)における、入力された軸受20の回転の周波数を含んだ第1周波数帯の第1電圧に基づいて、軸受20の状態を推定する。この際に、推定部13は、電圧の時系列データ(電圧波形)に対してフーリエ変換、例えばFFT(高速フーリエ変換)を行う。この処理の詳細に関しては後述する。推定部13は、推定した軸受20の状態を出力部14に出力する。
【0056】
出力部14は、推定部13が推定した軸受20の状態を外部の装置、例えば表示装置(図示せず)または制御装置40に出力する。
【0057】
(ラジアル荷重による状態の変化)
図6は、軸受20が500rpmで回転している際に、ラジアル荷重100Nが加わった際の第1電極33aと第2電極33bの間の電圧の例を示す図である。図7は、軸受20が500rpmで回転している際に、ラジアル荷重1000Nが加わった際の第1電極33aと第2電極33bの間の電圧を示す図である。図6図7において、横軸は時間、縦軸は電圧の例を表す。なお、第1電極33aおよび第2電極33bそれぞれの電極分割数は60とした。
【0058】
図6では、ほぼ一定の振幅で振動する電圧波形(電圧を示す情報)が得られていることがわかる。対して、図7では、一定の周期で電圧波形がうねった振動をしていることがわかる。
【0059】
図8は、軸受20にラジアル荷重が加わった際に、ステータ側検出部31の中心およびロータ側検出部36の中心がずれる現象を示す概念図である。ステータ側検出部31の中心およびロータ側検出部36の中心はともに、軸受20の回転中心(回転軸)と一致することを目指して組み立てられるが、実際のところは完全に精確に組み立てられるわけではない。そのため、ステータ側検出部31の中心(円形のステータ電極33の軸)およびロータ側検出部36の中心(円形の対向層38の軸)のそれぞれは、回転軸に対して偏心することになる。つまり、ステータ側検出部31の軸とロータ側検出部36の軸とは、軸受20の回転軸に対して偏心しているし、両者の軸同士も偏心していることになる。
【0060】
図8の符号81は回転角度が0°の状態を示す。図8の符号82は、符号81に対して時計回りにロータ側検出部36が90°回転した状態を示す。ここで、符号36aは、回転角度が0°の時点において、ロータ側検出部36が存在していた位置を示す。同様に、図8の符号83は、符号82に対して時計回りにロータ側検出部36がさらに90°回転した状態を示す。図8の符号84は、符号83に対して時計回りにロータ側検出部36がさらに90°回転した状態を示す。さらに、図8の符号81は、符号84に対して時計回りにロータ側検出部36がさらに90°回転した状態をも示す。
【0061】
図8に示すように、ステータ側検出部31の中心とロータ側検出部36の中心とが偏心していることから、回転に伴って互いが対向する位置関係が変化する。なお、ステータ側検出部31の中心と回転軸とが一致している場合は、互いが対向する(重なる)面積は変化しない。そのため、無負荷時では、ステータ電極33に対向する対向層38(第3電極38a)の面積は一定のため、電圧の振幅は変化しない。
【0062】
回転軸に対する偏心は、外輪21に対するステータ側検出部31の組立精度、および内輪22に対するロータ側検出部36の組立精度によって発生する。また、軸受20にラジアル荷重が加わることによって、外輪21(ステータ)の中心と内輪22(ロータ)の中心(回転軸)との間に偏心が発生する。元々回転軸に対して偏心して組み立てられたロータ側検出部36は、外輪21の中心から偏心した回転軸を中心にして回転する。それゆえ、軸受20にラジアル荷重が加わった場合、ロータ側検出部36が1回転する間に、ステータ側検出部31に対向する(重なる)ロータ側検出部36の面積は変化する。この重なる面積の変化の周期は軸受20の回転の周期と同じである。
【0063】
このように、ステータ側検出部31およびロータ側検出部36が対向する面積は回転角度に応じて変化することになる。そのため、ステータ電極33に対向する(重なる)対向層38(第3電極38a)の面積は変化する。結果として、第1電極33aおよび第2電極33bの電位のピーク(最大、最小)は、回転角度に応じて変化することになり、図7に示すような周期的なうねりが発生することになる。
【0064】
ここで、荷重に応じた偏心量は次式で表せる。
【数1】
【数2】
ここで、Qmaxは最大転動体荷重であり、Frはラジアル荷重であり、Zは軸受内転動体数であり、δrはラジアル方向変位であり、Daは転動体直径である。このように、δr分だけラジアル荷重の方向に変位が生まれ、すなわちステータ側検出部31の中心と回転軸とは偏心する。また、ラジアル荷重が増加することによって、ラジアル方向変位δr(偏心量)が増加する。
【0065】
(FFTによる軸受20の回転の周波数の特定)
図9は、図6および図7の電圧の時系列データに対してFFTを適用した図である。図9において横軸は周波数、縦軸は電圧を表す。図9では、黒色線はラジアル荷重100Nが加わっている場合であり、灰色線はラジアル荷重1000Nが加わっている場合を示す。
【0066】
第1電極33aおよび第2電極33bのそれぞれの電極分割数が60であるため、500rpmで回転している際の、電極ごとによる波形の周波数は、
500[rpm]*60[pulse]/60[sec]=500[Hz]
となる。この周波数は、ラジアル荷重に応じて変化しない。この周波数と、図9における最大ピークは一致している。すなわち、図9における最大ピークは、第3電極38aに対向する第1電極33aおよび第2電極33bの交替の周波数に対応している。
【0067】
また、第1電極33aおよび第2電極33bの交替の周波数(軸受の回転の周波数のN倍)と、電極分割数から、軸受20の回転の周波数は、
500[Hz]/60[pulse]=8.33[Hz]
となる。図9における2番目のピークは、軸受20の回転の周波数に対応している。計測された電圧の軸受20の回転の周波数に対応する成分は、ラジアル荷重が大きい場合、より大きくなっている(ラジアル荷重が1000Nの場合の方が、100Nの場合よりも電圧が大きい)。一方で、計測された電圧の第1電極33aおよび第2電極33bの交替の周波数に対応する成分は、ラジアル荷重によってほとんど変化しない。
【0068】
ここで、軸受20の回転の周波数を含む帯域の周波数帯を第1周波数帯と称し、軸受の回転の周波数のN倍(Nは第1電極33aおよび第2電極33bの対の数)の周波数を含む帯域の周波数帯を第2周波数帯と称する。また、図9における、第1周波数帯の電圧(平均電圧または最大電圧等)を第1電圧と称し、第2周波数帯の電圧(平均電圧または最大電圧等)を第2電圧と称する。第1電圧はうねり電圧とも称し、第2電圧は主ピーク電圧とも称する。第1周波数帯は、軸受20の回転の周波数の1点でもよいし、軸受20の回転の周波数を含む周波数帯でもよい。第2周波数帯は、軸受の回転の周波数のN倍の周波数の1点でもよいし、軸受の回転の周波数のN倍の周波数を含む周波数帯でもよい。
【0069】
なお、周波数取得部12は、計測された電圧における、最大ピークから、第2周波数帯を特定し、さらに電極分割数を考慮することによって、第1周波数帯を特定するプロセスによって、軸受20の回転の周波数(帯)を特定してもよい。
【0070】
(FFTによるラジアル荷重の推定)
第2電圧に対する第1電圧の比(第1電圧/第2電圧)を規格化うねり成分電圧と呼称する。図10は、ラジアル荷重を変化させながら、規格化うねり成分電圧を測定した結果を示す図である。ただし、ここでは回転数を2000rpmとした。回転数に応じて、第1電圧および第2電圧は同程度変化するため、第1電圧を第2電圧で除することにより規格化している。そのため、規格化うねり成分電圧は、回転数によってはほとんど変化しない。
【0071】
図10に示すように、規格化うねり成分電圧と、ラジアル荷重との間には、線形関係があると考えられる。そのため、推定部13は、予め、当該線形関係の数式またはテーブルを記憶しておき、規格化うねり成分電圧から、軸受20の状態、特に軸受20に加わっているラジアル荷重を推定する。すなわち、摩擦帯電により生じる電圧を時系列で計測し、第1電圧および第2電圧を計測することによって、規格化うねり成分電圧を求め、これによってラジアル荷重を推定することができる。なお、推定部13は、規格化うねり成分電圧が上限閾値を超えた場合、軸受20が異常な状態(過度のラジアル荷重が加わった状態)であると推定してもよい。
【0072】
ここでは、推定部13は、規格化うねり成分電圧に基づいて状態を推定したが、第1電圧に基づいて状態を推定してもよい。推定部13は、回転数とラジアル荷重とに対応する第1電圧のテーブルを予め記憶していてもよい。推定部13は、回転数と第1電圧とに基づいて軸受20に加わっているラジアル荷重を推定してもよい。また、推定部13は、所定の回転数における第1電圧に基づいて軸受20に加わっているラジアル荷重を推定してもよい。
【0073】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0074】
(基準角度の検出)
図11は、実施形態2に係るステータ電極51の要部の構成を示す平面図である。図12は、実施形態2に係る対向層52の要部の構成を示す平面図である。図13は、実施形態2に係る検出部30aと状態計測装置10aとの要部の構成を示すブロック図である。実施形態2では、実施形態1とは異なり、ステータ電極33に代えてステータ電極51を、対向層38に代えて対向層52を用いる。また、実施形態2では、実施形態1とは異なり、状態計測装置10に代えて状態計測装置10aを、検出部30に代えて検出部30aを用いる。
【0075】
ステータ電極51は、第1電極33aおよび第2電極33bに加えて、第4電極51aを含む。つまり、第4電極51aは、帯電層34に覆われている。第4電極51aは、円周上に扇形状の電極として、回転角度における一部分のみに1つだけ形成されている。また、第4電極51aは、第3出力配線51bに接続されている。第3出力配線51bは、基板32に形成された第4電極51aに対し接続された電線である。第4電極51aは、第1電極33aおよび第2電極33bと同心円状に形成されるが、第1電極33aおよび第2電極33bの半径とは異なる半径に形成される。
【0076】
対向層52は、第3電極38aに加えて、第5電極52aを含む。第5電極52aは、円周上に扇形状の電極として、回転角度における一部分のみに1つだけ形成されている。第5電極52aは、第3電極38aと同心円状に形成されるが、第3電極38aの半径とは異なる半径、かつ、第4電極51aと対向し得る位置に形成される。
【0077】
ステータ電極51および対向層52の相対的な回転に伴い生じる摩擦によって、第4電極51aも摩擦帯電し、第4電極51aには1回転1パルスだけの電圧が発生する。
【0078】
状態計測装置10aは、状態計測装置10の各部に加えて、回転角度検出部15を更に備える。回転角度検出部15は、電圧計15aの計測値を取得する。電圧計15aは、第3出力配線51bに接続されており、第4電極51aと、アースとの間の電圧を計測する。
【0079】
回転角度検出部15は、第4電極51aにおける1回転1パルスだけの電圧の情報によって、軸受20の基準角度を検出することができる。また、回転角度検出部15は、パルスの間隔から回転の周期Tを特定することができる。回転角度検出部15は、検出した基準角度の情報および回転の周期Tを推定部13に出力する。
【0080】
(ラジアル荷重の方向の特定)
推定部13は、基準角度に対する第1電圧の位相を特定することによって、ステータ電極51に対する軸受20の状態の角度依存性、特にラジアル荷重の角度を特定することができる。すなわち、ステータ電極51は外輪21に固定されているため、推定部13は、外輪21に対するラジアル荷重の角度を特定することができる。具体的には、推定部13は、図7に示す電圧波形のピーク(最大または最小)のタイミングと、第5電極52aが基準角度に位置するタイミングとの差に基づいて、基準角度と、ラジアル荷重が加わる方向との角度差を推定する。例えば、第4電極51aからパルスのタイミングから電圧波形の最大ピークまでの時間間隔Twとする。推定部13は、Tw/T×360[°]を、基準角度と、ラジアル荷重が加わる方向との角度差と推定する。
【0081】
なお、第4電極51aおよび第5電極52aは、第1電極33aおよび第2電極33bより内側(回転軸側)に配置されていてもよい。
【0082】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0083】
(スラスト荷重の推定)
図14は、実施形態3に係るセンシング軸受200bの構成を示す部分断面図である。実施形態3では、実施形態1に代えて、センシング軸受200ではなくセンシング軸受200bを用いる。センシング軸受200bは、軸受20bと、第1検出部30mと、第2検出部30sとを備える。センシング軸受200bでは、第1検出部30mが軸受20bの回転軸方向における一方側に配置され、第2検出部30sが軸受20bの回転軸方向における他方側に配置される。つまり、センシング軸受200bは、軸受20bの両サイドに一対の第1検出部30mおよび第2検出部30sを備える。
【0084】
センシング軸受200bには、第1検出部30mが設けられている方向から、第2検出部30sが設けられている方向に向けて、スラスト荷重(アキシャル荷重)Fsが加わっている。スラスト荷重Fsは、軸受20bに対する与圧を含む。
【0085】
スラスト荷重Fsが加わることによって、第1検出部30mにおけるステータ側検出部31mおよびロータ側検出部36mとのギャップが狭くなる方向に作用する。対して、スラスト荷重Fsが加わることによって、第2検出部30sにおけるステータ側検出部31sおよびロータ側検出部36sとのギャップが広くなる方向に作用する。規定の与圧が加わった状態で、第1検出部30mのギャップと第2検出部30sのギャップは等しくてもよいし、等しくなくてもよい。
【0086】
スラスト荷重Fsが大きくなることによって、この傾向はより強くなる。そのため、スラスト荷重の大小によって、ギャップが変化するため、第1検出部30mおよび第2検出部30sにおける第1電極33aと第3電極38aとの距離、および第2電極33bと第3電極38aとの距離が変化する。それゆえ、それぞれの第1電極33aの電位および第2電極33bの電位が変化する。これにより、第1検出部30mおよび第2検出部30sが計測する電圧は増減する。
【0087】
実施形態1と同様にフーリエ変換を行い、第1検出部30mにおける第2電圧(第1情報電圧)をVmとし、第2検出部30sにおける第2電圧(第2情報電圧)をVsとした場合に、主ピーク電圧比γは次式となる。
【0088】
【数3】
図15は、スラスト荷重Fsを変化させながら、主ピーク電圧比を測定した結果である。ただし、ここでは回転数を1800rpmとした。
【0089】
図15に示すように、スラスト荷重Fsと主ピーク電圧比には、相関関係があることがわかる。そのため、予め当該相関関係を計測し、較正式を決定することによって、主ピーク電圧比から、スラスト荷重Fsを推定することができる。
【0090】
なお、図15に示した相関関係は、内輪22に加わる与圧の方向と内輪22に加わるスラスト荷重Fsの方向とが一致する場合のものである。内輪22に加わるスラスト荷重Fsの方向が内輪22に加わる与圧の方向とは逆方向である場合の相関関係を、予め計測して、較正式を別途決定しておいてもよい。本実施形態によれば、ラジアル荷重のみならず、スラスト荷重も推定できる。
【0091】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0092】
(ロータ側検出部が帯電層を備える場合)
図16は、実施形態4の一例に係る検出部30cの要部の構成を示す断面図である。実施形態1から3では、帯電層34はステータ側検出部に含まれるものとして説明したが、これに限定されない。ロータ側検出部36cが帯電層34を備え、帯電層34は、第3電極38aに対し重畳していてもよい。すなわち、ステータ側検出部31cは、基板32と、ステータ電極33と、を備える。ロータ側検出部36cは、基板37と、対向層38と、帯電層34と、を備える。
【0093】
この場合でも、第1電極33aおよび第2電極33bと、対向層38と、が相対的に回転する。つまり、第1電極33aおよび第2電極33bと、帯電層34との相対的な回転に伴い、帯電層34と第2グリス39との間に摩擦が生じ、帯電層34と第2グリス39とは摩擦帯電する。その結果、対向層38は回転方向に沿って電荷分布を形成する。第1電極33aおよび第2電極33bは、第3電極38aに対向するか否かによって、電荷が変化し、その結果として第1電極33aと第2電極33bとの間に電圧が発生する。当該電圧を計測することによって、同様の処理を行い、ラジアル荷重を計測することができる。
【0094】
(ステータ側検出部およびロータ側検出部がともに帯電層を備える場合)
図17は、実施形態4の別の例に係る検出部30dの要部の構成を示す断面図である。検出部30dでは、ステータ側検出部31dが帯電層34a(第1帯電層)を、ロータ側検出部36dが帯電層34b(第2帯電層)をそれぞれ備える。帯電層34aおよび帯電層34bは、帯電層34と同様の機能を有し、同一の材質であってもよいし、互いに異なる材質であってもよい。すなわち、ステータ側検出部31cは、基板32と、ステータ電極33と、帯電層34aと、を備える。ロータ側検出部36cは、基板37と、対向層38と、帯電層34bと、を備える。
【0095】
この場合でも、第1電極33aおよび第2電極33bと、対向層38と、が相対的に回転する。つまり、帯電層34aと帯電層34bとの相対的な回転に伴い、帯電層34aおよび第2グリス39の間に摩擦が生じ、さらに第2グリス39および帯電層34bの間に摩擦が生じ、帯電層34aと帯電層34bと第2グリス39とは摩擦帯電する。その結果、対向層38は回転方向に沿って電荷分布を形成する。第1電極33aおよび第2電極33bは、第3電極38aに対向するか否かによって、電荷が変化し、その結果として第1電極33aと第2電極33bとの間の電圧が発生する。当該電圧を計測することによって、同様の処理を行い、ラジアル荷重を計測することができる。
【0096】
また、ステータ側検出部31dおよびロータ側検出部36dともに、帯電層を有することで、帯電する電荷が大きくなるために、出力電圧が大きくなり高精度な計測が可能になる。
【0097】
(帯電層を備えない場合)
図18は、実施形態4のさらに別の例に係る検出部30eの要部の構成を示す断面図である。図18に示すように、検出部30eは、帯電層34を有さない。すなわち、ステータ側検出部31eは、基板32と、ステータ電極33と、を備える。ロータ側検出部36eは、基板37と、対向層38と、を備える。
【0098】
この場合、第1電極33aおよび第2電極33bと、第2グリス39とは、帯電列において互いに離れた材質であることが好ましい。摩擦によって第2グリス39は帯電し、第1電極33aおよび第2電極33bでは、第2グリス39と逆極性に帯電する。この際、第1電極33aおよび第2電極33bにおける帯電の程度は、対向層38の構造が回転方向に一様ではないために、互いに異なり得る。そのため、第1電極33aおよび第2電極33bの間には電位差が生じ得る。したがって、帯電層34を有さない検出部30でも摩擦帯電するため、ラジアル荷重を計測することができる。
【0099】
また、帯電層34がないため、製造時の工数が減少する。さらに、狭いギャップgでステータ側検出部31eとロータ側検出部36eとを対向させる必要がある条件において、帯電層34を接着する必要がないことから、製造バラツキを低減して精度良く狭いギャップgを実現することができる。
【0100】
〔変形例〕
(周波数フィルタによる周波数帯域抽出)
なお、推定部13におけるラジアル荷重の推定はフーリエ変換を行うことに限定されない。例えば、周波数取得部12が制御装置40から軸受20の回転の周波数を取得していた場合、推定部13は、これを用いて第1周波数帯および第2周波数帯をそれぞれ抽出する周波数フィルタを、計測された電圧に適用することで、第1電圧および第2電圧を特定してもよい。その結果得られる第1電圧および第2電圧に対して、規格化うねり成分電圧を求めてもよい。周波数フィルタとしては、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、およびバンドパスフィルタなどが挙げられる。
【0101】
この場合、フーリエ変換を行わないで済むため、処理が簡便になり、状態計測装置10を簡易なユニットで済ませることができるようになる。その結果、軸受20の内部に状態計測装置10を内蔵させることが容易になる。
【0102】
また、計測した軸受20の状態は内蔵された無線機器等で送信してもよい。無線通信に用いる電力は、摩擦帯電によって発電した電力を用いてもよい。
【0103】
(電圧によるスラスト荷重の推定)
実施形態3では、検出部を軸受の両側面に配置し、第2電圧の比でもってスラスト荷重を推定した。本変形例では、単体の検出部30を設けた軸受20でもってスラスト荷重を推定する場合に関して示す。
【0104】
与圧およびスラスト荷重に応じて、検出部30におけるステータ電極33と対向層38との間のギャップは変化する。そのため、スラスト荷重に応じて第2電圧は増減する。検出部30の第2電圧と、軸受20に加わるスラスト荷重との相関関係を予め計測しておくことによって、推定部13は、単体の検出部30における第2電圧によって、スラスト荷重を推定してもよい。また、回転数毎の第2電圧とスラスト荷重との相関関係を予め計測しておくことによって、推定部13は、回転数と第2電圧とに基づいて、スラスト荷重を推定してもよい。
【0105】
(スラスト軸受に対する適応)
実施形態1から4においては、ラジアル軸受を対象に記載したが、これに制限されない。例えば、スラスト軸受であってもよい。スラスト軸受の場合、外輪21に代えてハウジング軌道盤(ステータ)を、内輪22に代えて軸軌道盤(ロータ)を設け、ステータにステータ側検出部31を、ロータにロータ側検出部36を設けてもよい。また、ステータ側検出部31およびロータ側検出部36を取り付ける対象(ステータ・ロータ)は、逆であってもよい。
【0106】
スラスト軸受であっても、実施形態1から4および変形例と同様の方法によって、軸受の状態を推定することができる。
【0107】
(3相による回転方向の考慮)
実施形態1から4では、第1電極33aおよび第2電極33bによった2相における摩擦帯電によって状態を推定した。また、実施形態2における、第4電極によって回転角度を検出できることを示した。しかしながら、これら方法では、回転方向を検出することができないため、正逆回転する対象では、回転角度を求めることができない。
【0108】
そこで、回転方向に沿って配置される電極(ステータ電極)を3相とし、3相の電極の間をデルタ配線で接続し、互いの電極間の電圧を計測してもよい。電圧の位相差から、回転方向を検出できるようにし、正逆回転する際でも、回転角度を求めることができるようにしてもよい。この場合、産業用途などで用いられる軸受へと適用範囲を広げることが容易になる。
【0109】
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る状態計測装置は、軸受の状態を計測する状態計測装置であって、前記軸受には、第1電極、および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に対向する対向層と、が設けられており、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されており、前記状態計測装置は、前記第1電極および前記第2電極の間の電圧を示す情報を取得する電圧取得部と、前記情報が示す電圧における、前記軸受の回転の周波数を含んだ第1周波数帯の第1電圧に基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定する推定部と、を備える。
【0110】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る状態計測方法は、軸受の状態を計測する状態計測方法であって、前記軸受には、第1電極、および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に対向する対向層と、が設けられており、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されており、前記第1電極および前記第2電極の間の電圧を示す情報を取得する電圧取得ステップと、前記情報が示す電圧における、前記軸受の回転の周波数を含んだ第1周波数帯の第1電圧に基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定する推定ステップと、を含む。
【0111】
上記の構成によれば、軸受の回転に伴う、帯電層の帯電量の変化によって発生する電圧が示す情報における、第1電圧に基づいて、軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定することができる。
【0112】
前記軸受は、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層との間に、帯電層が設けられており、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記帯電層は帯電するように構成されてもよい。
【0113】
上記の構成によれば、軸受は帯電層を備えることで、効率的に帯電することができ、摩擦帯電が容易に行える。また、帯電層によって、耐久性も向上する。
【0114】
前記第1電極および前記第2電極の対は回転方向に沿ってN個形成されており、Nは2以上であり、前記推定部は、前記情報が示す電圧における、前記軸受の回転の周波数のN倍の周波数を含んだ第2周波数帯の第2電圧に基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定してもよい。
【0115】
上記の構成によれば、第1電極および第2電極の回転に伴う第2電圧を用いることによって、軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定することができる。
【0116】
前記推定部は、前記第2電圧に対する前記第1電圧の比に基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定してもよい。
【0117】
第2電圧に対する第1電圧の比に基づいて、軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定することができる。また、比を用いることによって、回転数変化ごとに異なる校正をする必要がなく、容易に軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定することができる。
【0118】
前記対向層は、第3電極を含んでもよい。
【0119】
上記の構成によれば、対向層に第3電極を含むことによって、第1電極および第2電極において発生する電圧が高周波に対応することができるようになる。
【0120】
前記軸受は、前記第1電極および前記第2電極とは異なる回転半径の回転角度における一部分のみに第4電極を有し、前記対向層は、回転角度における一部分のみに、前記第4電極と対向し得る第5電極を含み、前記第4電極と前記対向層とが相対的に回転することによって、前記第4電極は帯電するように構成されており、前記状態計測装置は、前記第4電極と前記対向層との回転により発生する前記第4電極の電圧の情報に基づき、前記軸受の回転角度を検出する回転角度検出部をさらに備えてもよい。
【0121】
上記の構成によれば、第4電極の電圧に基づき、軸受に加わる荷重の角度依存性を調べることができる。
【0122】
前記推定部は、フーリエ変換を行ってもよい。
【0123】
上記の構成によれば、第1電極および第2電極の電圧の情報を、周波数帯ごとの電圧に整理することができ、容易に軸受の状態を推定することができる。
【0124】
前記推定部は、周波数フィルタによって前記第1周波数帯の前記第1電圧を特定してもよい。
【0125】
上記の構成によれば、第1電極および第2電極の電圧の情報を、容易に処理することができる。そのため、状態計測装置を軸受に内蔵することができる。
【0126】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンシング軸受は、相対的に回転する軸受と、前記軸受の回転軸方向における一方側に配置された検出部と、を備え、前記検出部は、第1電極、および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に対向する対向層と、を備え、前記第1電極および前記第2電極上には、前記対向層との間に、帯電フィルムが設けられておらず、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されている。
【0127】
上記の構成によれば、軸受に加わる荷重を計測することができる検出部を備えたセンシング軸受を構成することができる。
【0128】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンシング軸受は、相対的に回転する軸受と、前記軸受の回転軸方向における一方側に配置された検出部と、を備え、前記検出部は、第1電極、および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に対向する帯電層と、前記帯電層に対し前記第1電極および前記第2電極の反対側に位置する、対向層と、を備え、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記帯電層は帯電し、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されている。
【0129】
上記の構成によれば、軸受に加わる荷重を計測することができる検出部を備えたセンシング軸受を構成することができる。
【0130】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンシング軸受は、相対的に回転する軸受と、前記軸受の回転軸方向における一方側に配置された検出部と、を備え、前記検出部は、第1電極、および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極を覆う第1帯電層と、前記第1帯電層に対向する第2帯電層と、前記第2帯電層に対し前記第1帯電層の反対側に位置し、前記第2帯電層によって覆われる対向層と、を備え、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記第1帯電層および前記第2帯電層は帯電し、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されている。
【0131】
上記の構成によれば、軸受に加わる荷重を計測することができる検出部を備えたセンシング軸受を構成することができる。
【0132】
前記軸受の潤滑をする第1グリスと、前記検出部に充填された第2グリスと、をさらに備え、前記第2グリスはフッ素を含んでもよい。
【0133】
上記の構成によれば、第2グリスがフッ素を含むために、軸受内部に対する水分の侵入を防ぐことができる。そのため、グリスの劣化を防ぐことができる。
【0134】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンシング軸受は、相対的に回転するステータおよびロータを有する軸受と、前記軸受の回転軸方向における一方側に配置された第1検出部と、他方側に配置された第2検出部との対とを備え、前記第1検出部および前記第2検出部は、それぞれ、前記ステータまたは前記ロータの一方に固定された第1電極、および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に対向し、前記ステータまたは前記ロータの他方に固定された対向層と、を備え、前記第1電極および前記第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されている。
【0135】
上記の構成によれば、第1検出部における第1電極および第2電極の電圧、ならびに第2検出部における第1電極および第2電極の電圧、を個別に発生させることができる。
【0136】
前記第1検出部における前記第1電極および前記第2電極の間の電圧を示す第1情報、ならびに前記第2検出部における前記第1電極および前記第2電極の間の電圧を示す第2情報、を取得する電圧取得部と、前記第1情報が示す第1情報電圧、および前記第2情報が示す第2情報電圧に基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定する推定部と、をさらに備えてもよい。
【0137】
上記の構成によれば、第1電圧および第2電圧の関係に基づいて、軸受の状態を推定することができる。
【0138】
前記軸受の潤滑をする第1グリスと、前記第1検出部および前記第2検出部に充填された第2グリスと、をさらに備え、前記第2グリスはフッ素を含んでもよい。
【0139】
上記の構成によれば、第2グリスがフッ素を含むために、軸受内部に対する水分の侵入を防ぐことができる。そのため、グリスの劣化を防ぐことができる。
【0140】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る状態計測システムは、相対的に回転する軸受と、前記軸受の少なくとも一方の側面に設けられた検出部と、前記軸受の状態を計測する状態計測装置とを含む、状態計測システムであって、前記検出部は、第1電極、および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に対向する対向層と、を備え、前記第1電極および第2電極と、前記対向層と、が相対的に回転することによって、前記対向層は回転方向に沿って電荷分布を形成し、前記第1電極および前記第2電極は帯電するように構成されており、前記状態計測装置は、前記第1電極および前記第2電極の間の電圧を示す情報を取得する電圧取得部と、前記情報が示す電圧における、前記軸受の回転の周波数を含んだ第1周波数帯の第1電圧に基づいて、前記軸受に加わる荷重または前記軸受の状態を推定する推定部と、を備える。
【0141】
〔ソフトウェアによる実現例〕
状態計測装置10、10a(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0142】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0143】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0144】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0145】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0146】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0147】
本発明の一態様によれば、ラジアル荷重またはスラスト荷重などの荷重、および荷重に起因する状態を計測できる状態計測装置を簡易な構成で実現できる。そのため、軸受のサイズを規格品のサイズから殆ど変えることなく、荷重を計測できるセンシング軸受を実現できる。また、本発明の一態様の状態計測装置は小型化が可能なため、ドローン、空飛ぶ車、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などのエアモビリティにも用いることができる。本発明の一態様をエアモビリティに用い、軸受の運転状態(荷重状態)をモニタリングすることにより、故障診断などが可能となる。
【符号の説明】
【0148】
10、10a 状態計測装置
11 電圧取得部
11a、15a 電圧計
12 周波数取得部
13 推定部
14 出力部
15 回転角度検出部
20、20b 軸受
21 外輪
22 内輪
23 転動体
24 保持器
25、26 シールド
27 第1グリス
30、30a、30c、30d、30e 検出部
30m 第1検出部
30s 第2検出部
31、31c、31d、31e、31m、31s ステータ側検出部
32、37 基板
33、51 ステータ電極
33a 第1電極
33b 第2電極
33c 第1出力配線
33d 第2出力配線
34、34a、34b 帯電層
36、36c、36d、36e、36m、36s ロータ側検出部
38、52 対向層
38a 第3電極
39 第2グリス
40 制御装置
51a 第4電極
51b 第3出力配線
52a 第5電極
200、200b センシング軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19