(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033597
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】砥面判定装置、学習器、判定プログラムおよび砥面判定方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/18 20060101AFI20240306BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240306BHJP
G06V 10/764 20220101ALI20240306BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240306BHJP
B24B 53/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B24B49/18
G06T7/00 350B
G06V10/764
B24B49/12
B24B53/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137261
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 幸泰
(72)【発明者】
【氏名】板津 武志
(72)【発明者】
【氏名】井村 諒介
(72)【発明者】
【氏名】川下 智幸
(72)【発明者】
【氏名】坂口 彰浩
【テーマコード(参考)】
3C034
3C047
5L096
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB93
3C034CA09
3C034CA22
3C034CB13
3C034DD20
3C047AA02
3C047AA08
3C047AA16
5L096BA02
5L096CA02
5L096JA22
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】砥面の使用状態を短い時間、且つ高い精度で判定する。
【解決手段】砥面判定装置30は、記憶部44、出力部60、クラス特定部61、判定部62を有する。記憶部44は、砥石の砥面を撮像した画像を判定画像50として記憶し、複数種類の使用状態の砥面を各別に撮像した画像からなる教師データ53によって学習された学習済みの学習器51を記憶する。出力部60は、判定画像50を入力データとして、学習器51から、複数種類の使用状態に対応する複数の分類クラスの各々について判定画像50が属する確率を出力する。クラス特定部61は、この確率に応じて、複数の分類クラスのうちの確率が最も高い1つの分類クラスを、または当該1つの分類クラスを含む2つ以上の分類クラスを、特定分類クラスとして特定する。判定部62は、この特定分類クラスに基づいて、判定対象の砥石の状態を判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥石における砥面の状態を判定する砥面判定装置において、
判定対象の砥石の砥面を撮像した画像を判定画像として記憶する入力部と、
複数種類の使用状態の砥面を各別に撮像した画像からなる教師データによって学習された学習済みの学習器を記憶する記憶部と、
前記判定画像を入力データとして、前記学習済みの学習器から、前記複数種類の使用状態に対応する複数の分類クラスの各々についての前記分類クラスに前記判定画像が属する確率を出力する出力部と、
前記出力部により出力される前記確率に応じて、前記複数の分類クラスのうちの前記確率が最も高い1つの分類クラスを、または当該1つの分類クラスを含む2つ以上の分類クラスを、前記判定画像に対応する特定分類クラスとして特定するクラス特定部と、
前記クラス特定部によって特定された前記特定分類クラスに基づいて、前記判定対象の砥石の状態を判定する判定部と、
を備える砥面判定装置。
【請求項2】
前記砥石は、複数の砥粒が結合剤によって固着された構造をなすものであり、
前記複数種類の使用状態は、前記砥面のドレッシングが適正に実行された直後における当該砥面の状態である第1状態と、前記砥面が研削加工に適した状態である第2状態と、前記砥面の最外面に前記結合剤が露出した状態である第3状態と、を含む
請求項1に記載の砥面判定装置。
【請求項3】
前記砥面判定装置は、前記出力部による前記確率の出力と前記クラス特定部による前記特定分類クラスの特定とを、前記砥面の各部を撮像した画像である複数の前記判定画像について各別に実行するものであり、
前記判定部は、同一の判定時期に撮像された前記複数の前記判定画像について各別に特定された前記特定分類クラスのうち、前記1つの分類クラスであって、且つ前記第1状態に対応する分類クラスのみが特定された前記特定分類クラスの占める第1割合が、予め定められた第1所定値以上である場合に、前記判定対象の砥石におけるドレッシングが適正に実行されたと判定する
請求項2に記載の砥面判定装置。
【請求項4】
前記第2状態は、前記砥面における切り屑の付着量が少ない少量付着状態と、前記砥面における切り屑の付着量が多い多量付着状態と、を含む
請求項2または3に記載の砥面判定装置。
【請求項5】
前記砥面判定装置は、前記出力部による前記確率の出力と前記クラス特定部による前記特定分類クラスの特定とを、同一の判定時期において前記砥面の各部を撮像した画像である複数の前記判定画像について各別に実行するとともに、異なる判定時期において各別に前記砥面を撮像した画像を前記判定画像として利用することで繰り返し実行するものであり、
前記判定部は、
前記同一の判定時期において撮像された前記複数の前記判定画像について各別に特定された前記特定分類クラスのうち、前記1つの分類クラスが前記多量付着状態に対応する分類クラスになっている前記特定分類クラスの占める第2割合を、連続する複数の判定時期において各別に算出するものであり、且つ、
前記複数の判定時期についての前記第2割合の分布幅が、予め定められた第2所定値以下である場合に、前記砥面が研削加工に適した状態に保たれていると判定するものである請求項4に記載の砥面判定装置。
【請求項6】
前記クラス特定部は、前記1つの分類クラスについての前記確率が予め定められた第3所定値以上の場合には、前記1つの分類クラスをメイン特定クラスとして特定する一方、前記1つの分類クラスについての前記確率が前記第3所定値未満の場合には、前記1つの分類クラスを前記メイン特定クラスとして特定することに加えて、前記複数の分類クラスのうちの前記確率が2番目に高い分類クラスをサブ特定クラスとして特定する
請求項1~3のいずれか一項に記載の砥面判定装置。
【請求項7】
前記砥面判定装置は、前記出力部による前記確率の出力と前記クラス特定部による前記特定分類クラスの特定とを、前記判定対象の砥石の砥面の各部を撮像した画像である複数の前記判定画像について各別に実行するものであり、
前記クラス特定部は、前記1つの分類クラスについての前記確率が予め定められた第3所定値以上の場合には、前記1つの分類クラスをメイン特定クラスとして特定する一方、前記1つの分類クラスについての前記確率が前記第3所定値未満の場合には、前記1つの分類クラスを前記メイン特定クラスとして特定することに加えて、前記複数の分類クラスのうちの前記確率が2番目に高い分類クラスをサブ特定クラスとして特定するものであり、
前記判定部は、前記複数の前記判定画像について各別に特定された前記特定分類クラスのうち、前記1つの分類クラスであって且つ前記第3状態に対応する分類クラスが前記メイン特定クラスになっている前記特定分類クラスの占める第3割合が、予め定められた第4所定値以上である場合に、前記判定対象の砥石のドレッシングを実行するべき時期であると判定する
請求項2または3に記載の砥面判定装置。
【請求項8】
請求項1に記載の砥面判定装置が備える前記学習済みの学習器。
【請求項9】
請求項1に記載の砥面判定装置が具備する前記入力部、前記出力部、前記クラス特定部、および前記判定部の処理を、前記砥面判定装置が備える電子制御装置に実行させる判定プログラム。
【請求項10】
砥石における砥面の状態を判定する砥面判定方法であって、
判定対象の砥石の砥面を撮像した画像を判定画像として砥面判定装置の入力部に記憶させる入力工程と、
複数種類の使用状態の砥面を各別に撮像した画像を取得し、該取得した画像からなる教師データによって学習器を学習させた後に、同学習器を前記砥面判定装置の記憶部に記憶させる記憶工程と、
前記判定画像を入力データとして、前記記憶部に記憶された学習済みの学習器から、前記複数種類の使用状態に対応する複数の分類クラスの各々についての前記分類クラスに前記判定画像が属する確率を出力する出力工程と、
前記学習済みの学習器から出力される前記確率に応じて、前記複数の分類クラスのうちの前記確率が最も高い1つの分類クラスを、または当該1つの分類クラスを含む2つ以上の分類クラスを、前記判定画像に対応する特定分類クラスとして特定するクラス特定工程と、
前記特定された前記特定分類クラスに基づいて、前記判定対象の砥石の状態を判定する判定工程と、
を備える砥面判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石の砥面を判定する砥面判定装置、同装置で使用される学習器、同装置で使用される判定プログラム、および砥石の砥面を判定する砥面判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研削装置における研削加工では、研削工具としての砥石の加工面(いわゆる砥面)の状態によって、ワークの加工面の仕上げ品質が左右される。
従来、砥石の砥面の状態を把握するために、同砥面の状態(具体的には、砥粒の突出量)を測定する装置が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の装置では、カメラを装着した金属顕微鏡を用いて砥面が撮像されるとともに、その撮像データをもとに砥面の状態が測定される。
【0003】
また、機械学習モデルを用いて、砥石の砥面の状態を判定する砥面判定装置等も提案されている。この装置では、先ず、カメラによって砥面が撮像されるとともに、その撮像画像を教師データとして用いて学習器が学習される。そして、砥面の状態を判定する際には、判定対象の砥石の砥面が撮像されるとともに、その撮像画像を入力データとして、学習済みの学習器から出力データが取得される。上記装置では、この出力データをもとに、判定対象の砥石の砥面の状態が判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、砥石の砥面は長尺状をなしている。例えば回転砥石の加工面は、同回転砥石の回転方向に延びる長尺状をなしている。したがって、上記砥面判定装置において、長尺状の砥面の全体を判定するためには、砥面の移動方向において区切られた撮像範囲毎にカメラによって同砥面を撮像するなどして、多数の撮像画像を取得する必要がある。この場合には、多数の撮像画像をもとに砥面の判定を行うこととなるため、その判定に時間がかかってしまう。
【0006】
カメラの撮像範囲を広くすることにより、撮像画像の数を減らすことはできる。ただし、この場合には、カメラの撮像範囲が広くなる分だけ撮像画像が粗いデータになることで、同撮像画像に現れる「砥面における特徴的な状態の部分」を見つけにくくなるため、判定精度の低下が懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための砥面判定装置は、砥石における砥面の状態を判定する砥面判定装置において、判定対象の砥石の砥面を撮像した画像を判定画像として記憶する入力部と、複数種類の使用状態の砥面を各別に撮像した画像からなる教師データによって学習された学習済みの学習器を記憶する記憶部と、前記判定画像を入力データとして、前記学習済みの学習器から、前記複数種類の使用状態に対応する複数の分類クラスの各々についての前記分類クラスに前記判定画像が属する確率を出力する出力部と、前記出力部により出力される前記確率に応じて、前記複数の分類クラスのうちの前記確率が最も高い1つの分類クラスを、または当該1つの分類クラスを含む2つ以上の分類クラスを、前記判定画像
に対応する特定分類クラスとして特定するクラス特定部と、前記クラス特定部によって特定された前記特定分類クラスに基づいて、前記判定対象の砥石の状態を判定する判定部と、を備える。
【0008】
上記課題を解決するための学習器は、上記砥面判定装置が備える前記学習済みの学習器である。
上記課題を解決するための判定プログラムは、上記砥面判定装置が具備する前記入力部、前記出力部、前記クラス特定部、および前記判定部の処理を、前記砥面判定装置が備える電子制御装置に実行させる判定プログラムである。
【0009】
上記課題を解決するための砥面判定方法は、砥石における砥面の状態を判定する砥面判定方法であって、判定対象の砥石の砥面を撮像した画像を判定画像として砥面判定装置の入力部に記憶させる入力工程と、複数種類の使用状態の砥面を各別に撮像した画像を取得し、該取得した画像からなる教師データによって学習器を学習させた後に、同学習器を前記砥面判定装置の記憶部に記憶させる記憶工程と、前記判定画像を入力データとして、前記記憶部に記憶された学習済みの学習器から、前記複数種類の使用状態に対応する複数の分類クラスの各々についての前記分類クラスに前記判定画像が属する確率を出力する出力工程と、前記学習済みの学習器から出力される前記確率に応じて、前記複数の分類クラスのうちの前記確率が最も高い1つの分類クラスを、または当該1つの分類クラスを含む2つ以上の分類クラスを、前記判定画像に対応する特定分類クラスとして特定するクラス特定工程と、前記特定された前記特定分類クラスに基づいて、前記判定対象の砥石の状態を判定する判定工程と、を備える。
【0010】
上記砥面判定装置、学習器、判定プログラム、および砥面判定方法によれば、砥面における1枚の判定画像に対応する部分の使用状態を、複数の分類クラスのうちの1つに分類することに限らず、1つの分類クラスの中でも他の分類クラスに近い部類に分類したりするなど、細かく分類することができる。これにより、1枚の判定画像に対して1つの分類クラスのみを特定する場合と比較して、砥面における1枚の判定画像に対応する部分の使用状態を細かく判定することができる。したがって、判定画像の撮像範囲を広くしたとしても、判定対象の砥石の状態についての判定を高い精度で実行することができる。そのため、比較的少ない枚数の判定画像に基づいて、砥面の使用状態を短い時間、且つ高い精度で判定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、砥面の使用状態を短い時間、且つ高い精度で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態の砥面判定装置が適用される自動研削装置の概略構成を示す略図である。
【
図2】開状態の砥石カバーおよびその周辺の構造を示す断面図である。
【
図3】砥面判定装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】撮像処理の実行手順を示すフローチャートである。
【
図5】統計データのデータ構造を概念的に示す略図である。
【
図6】統計データに含まれる割合を特定クラス毎にまとめたグラフである。
【
図7】(A)~(C)は、統計データに含まれる割合を特定分類クラス毎にまとめたグラフである。
【
図8】判定処理の実行手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、砥面判定装置、学習器、判定プログラム、砥面判定方法の一実施形態について説
明する。
図1に示すように、本実施形態の砥面判定装置30は、数値制御(NC)式の自動研削装置20に適用される。
【0014】
自動研削装置20は、研削工具として、略円板状の砥石21を有している。砥石21は、基材の外周面に多数の砥粒が分散した状態で結合剤によって固着された構造をなすものである。砥石21は、回転可能な状態で支持されている。砥石21には、例えばサーボモータを有する回転駆動部22が接続されている。回転駆動部22は、砥石21の回転位置を検出するための位置センサ221を有している。自動研削装置20は、砥石21とワークとを相対移動させることが可能になっている。自動研削装置20では、砥石21を回転駆動しつつ同砥石21とワークとを相対移動させて、砥石21をワークに接触させることにより、砥石21の砥面23によって同ワークの上面が研削加工される。
【0015】
自動研削装置20は、砥石21のドレッシングを行うためのドレッサ24を有している。自動研削装置20では、任意のタイミングでドレッサ24による砥石21のドレッシングが実行される。このドレッシングにより、砥石21の砥面23が良好な状態に保たれている。
【0016】
図1および
図2に示すように、自動研削装置20は砥石カバー25を有している。砥石カバー25は、下方が開口する四角箱状をなしている。砥石21は、同砥石21の下部のみが外部に露出する状態で砥石カバー25の内部に収容されている。
【0017】
砥石カバー25における上方の壁部をなす上壁部26には、同砥石カバー25の内外を連通する開口部27が設けられている。砥石カバー25には、開口部27を開閉する板状のシャッター部28と、同シャッター部28を往復移動させるためのアクチュエータ(以下、シャッター操作部29)とが設けられている。シャッター操作部29の作動制御を通じて、シャッター部28を一方向に移動させることにより、砥石カバー25の開口部27がシャッター部28によって塞がれた閉状態(
図1に示す状態)になる。一方、シャッター操作部29の作動制御を通じて、シャッター部28を他方向に移動させることにより、シャッター部28が砥石カバー25の開口部27から退避した開状態(
図2に示す状態)になる。本実施形態では、シャッター操作部29の作動制御を通じて、砥石カバー25の開口部27が閉じられた閉状態と開かれた開状態とを切り替え可能になっている。
【0018】
砥石カバー25には、カメラ31が取り付けられている。カメラ31は、砥石カバー25の開口部27を介して、同砥石カバー25の内部に収容された砥石21の砥面23を撮像可能な態様で取り付けられている。カメラ31としては、エリアスキャンカメラが採用されている。本実施形態では、カメラ31によって砥石21の砥面23が所定の倍率で撮像されるとともに、撮像された画像(詳しくは、画像データ)が後述する電子制御装置40に出力されるようになっている。なお本実施形態では、カメラ31による撮像に際して砥石21の砥面23を照らすための照明器(図示略)が同カメラ31に一体に設けられている。
【0019】
カメラ31は、X軸駆動部32、Y軸駆動部33、Z軸駆動部34を介して砥石カバー25に取り付けられている。これらX軸駆動部32、Y軸駆動部33およびZ軸駆動部34は、スライド機構と同スライド機構を作動させるアクチュエータ(本実施形態ではサーボモータ)とを有している。本実施形態では、X軸駆動部32の作動制御を通じて、カメラ31を砥石カバー25に対してX方向(
図1の左右方向)に相対移動させることが可能になっている。またY軸駆動部33の作動制御を通じて、カメラ31を砥石カバー25に対してY方向(
図1の上下方向)に相対移動させることが可能になっている。さらにはZ軸駆動部34の作動制御を通じて、カメラ31を砥石カバー25に対してZ方向(
図1に
おける紙面の奥行き方向)に相対移動させることが可能になっている。
【0020】
自動研削装置20は電子制御装置40を有している。
図3に示すように、電子制御装置40はCPU41と、ROM42と、RAM43と、各種のプログラムやデータを記憶する記憶部44とを有している。記憶部44は、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等の随時書き込み読み出しが可能な不揮発性メモリによって構成されている。電子制御装置40は、各種のプログラムやデータに基づいて各種の演算処理を実行するように構成されている。電子制御装置40は、その演算結果をもとに、研削加工についての数値制御や、砥石21のドレッシングにかかる各種制御、砥石21の砥面23の使用状態の判定にかかる各駆動部22,32,33,34の作動制御およびカメラ31の作動制御を実行する。
【0021】
自動研削装置20は表示装置35を有している。この表示装置35は電子制御装置40に接続されている。表示装置35には、砥石21の砥面23の使用状態を判定した判定結果が表示されるようになっている。
【0022】
ここで、本実施形態の砥面判定装置30は、砥石21の砥面23を撮像した画像(判定画像50)を入力データとして、学習済みの学習器51から、砥面23の使用状態を判定する装置である。
【0023】
電子制御装置40の記憶部44は、各種の実行プログラム52を記憶する記憶領域や、学習器51の機械学習に利用される教師データ53を記憶する記憶領域を有している。記憶部44は、学習済みの学習器51(詳しくは、機械学習の実行を通じて作成された学習データ)を記憶する記憶領域を有している。また記憶部44は、判定対象の砥面23を撮像した画像(判定画像50)を記憶する入力部としての記憶領域や、砥面23の状態を判定した結果を示す判定結果データ54を記憶する記憶領域を有している。
【0024】
実行プログラム52は、学習器51の機械学習を実行させるとともに同機械学習の実行結果を示すデータである学習データを生成させるためのプログラムを含んでいる。また実行プログラム52は、砥石21の砥面23の使用状態の判定にかかる処理(判定処理)を実行させるとともに同判定処理の実行結果を示す判定結果データ54を生成させるための判定プログラムを含んでいる。
【0025】
教師データ53は、砥面23の使用状態を判定する能力を獲得するように、学習器51の機械学習を行うためのデータである。本実施形態では、教師データ53や判定画像50の取得のために、カメラ31によって砥石21の砥面23を撮像する撮像処理が実行される。
【0026】
(撮像処理)
以下、撮像処理の実行手順について
図4を参照しつつ説明する。なお
図4は、撮像処理の実行手順を概念的に示している。同
図4のフローチャートに示される一連の処理は電子制御装置40により実行される。
【0027】
図4に示すように、この処理では先ず、シャッター操作部29の作動制御を通じてシャッター部28が開状態にされる(ステップS11)。
その後、砥面23の撮像に適した態様で砥石21を回転駆動しつつ、カメラ31による砥面23の撮像が実行される(ステップS12)。なお本実施形態では、砥石21の回転駆動パターン、カメラ31の位置制御パターン、同カメラ31の撮像パターンとして、カメラ31によって砥面23の全面を効率良く撮像することが可能になる各パターンが予め求められて電子制御装置40に記憶されている。上記各パターンを記憶部44に記憶させ
る手法としては、以下の(手法A)や(手法B)などが想定される。(手法A)自動研削装置20のユーザーが実際に利用する砥石21を取り付けた後に、自動研削装置20を作動させることで同砥石21に適した上記各パターンを求めて電子制御装置40に記憶させる。(手法B)自動研削装置20の製造メーカーは、各種の実験やシミュレーションの結果をもとに、砥石21の砥面23の全面を効率良く撮像することが可能になる上記各パターンを予め求めている。そして、それらパターンにかかるデータを、出荷前の自動研削装置20、あるいはユーザーの工場に設置された自動研削装置20に記憶させる。
【0028】
ステップS12の処理では、そうした砥石21の回転駆動パターンに基づいて回転駆動部22の作動制御が実行されるとともに、カメラ31の位置制御パターンに基づいてX軸駆動部32、Y軸駆動部33、Z軸駆動部34の作動制御が実行される。また、カメラ31の撮像パターンに基づいて同カメラ31による砥面23の撮像が実行される。そして、電子制御装置40は、カメラ31によって撮像された砥面23の画像データを取り込んで記憶部44に記憶する。
【0029】
本実施形態では、砥面23を砥石21の周方向および回転軸方向(Z方向)において格子状に区切ることで、同砥面23の全体が複数(例えば、5684箇所)の撮像領域に区画されている。そして、撮像領域毎に、カメラ31による砥面23の撮像が実行される。このようにして撮像された画像は、判定画像50または教師データ53として、記憶部44に記憶される。なお、判定画像50は、砥面23における位置(詳しくは、周方向位置および軸方向位置)の情報とともに、記憶部44に記憶されている。
【0030】
ここで、砥石21のドレッシングが適正になされた直後においては、砥面23の最外周面は砥粒の突端面のみによって構成されている。そして、砥石21による研削加工が実行されて、砥面23の使用状態が変化すると、砥石21の最外周面に、砥粒以外の部分(主に、結合剤によって構成される部分)が現れる。このように、砥面23の使用状態の変化の度合いは、砥面23の最外周面に現れる。
【0031】
本実施形態では、判定画像50や教師データ53を構成する画像データとして、砥面23を撮像した画像が用いられる。そのため、判定画像50や、教師データ53を構成する画像データには、砥面23の最外周面に関する情報、詳しくは砥面23における特徴的な状態の部分に関する情報が、同砥面23の使用状態を表す情報として含まれていると云える。したがって本実施形態では、学習器51の機械学習に際して、そうした砥面23の最外周面の状態を特徴量として抽出させることができ、この特徴量に基づいて学習器51の機械学習を進めることができる。
【0032】
撮像処理において、カメラ31による砥面23の撮像が完了すると、シャッター操作部29の作動制御を通じて、シャッター部28が閉状態にされる(ステップS13)。
図4に示す撮像処理は、砥石21によるワークの研削加工や砥石21のドレッシングが実行されていないことを条件に実行される。なお撮像処理を実行する際には、その実行に先立ち、撮像対象の砥面23にエアーを吹き付けることで同砥面23表面の切削オイルを除去する作業が必要に応じて実行される。
【0033】
本実施形態では、前記学習器51として、畳込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)が用いられる。具体的には、学習器51は、入力層、中間層、全結合層および出力層を有している。中間層は、畳み込み層とプーリング層とが交互に並ぶ態様で複数配置された構造をなしている。
【0034】
本実施形態では、記憶部44に記憶された教師データ53をもとに学習器51の機械学習が実行される。詳しくは、教師データ53を構成する複数の画像データの1つを抽出す
るとともに同画像データを入力データとして学習器51を機械学習させるといった学習処理が、教師データ53を構成する画像データ毎に繰り返し実行される。そして、機械学習の実行を通じて作成された学習データが記憶部44に記憶される。本実施形態では、こうした学習器51の機械学習にかかる一連の処理が自動的に実行されるように、実行プログラム52が構築されて記憶部44に記憶されている。本実施形態では、このようにして学習器51の機械学習を実行する工程が記憶工程に相当する。
【0035】
(教師データ)
本実施形態では、教師データ53として、以下の「ドレス直後」、「加工初期」、「加工中期」、および「ドレスタイミング」といった4種類の砥面23の使用状態に対応する撮像画像が用意される。
【0036】
「ドレス直後」としては、砥面23のドレッシングが適正に実行された直後における同砥面23の状態が定められている。本実施形態では、「ドレス直後」が第1状態に相当する。
【0037】
「ドレス直後」に対応する画像データは、例えば、次のように取得される。先ず、最適なドレッシングが実行された状態の砥石21[A]が用意されるとともに、同砥石21[A]が自動研削装置20に取り付けられる。そして、その状態で電子制御装置40による撮像処理が実行される。この撮像処理によって取得された画像データは、学習器51の機械学習に用いる教師データ53として記憶部44に記憶される。「ドレス直後」に対応する画像データは、学習器51の分類クラスのうちの「クラス0」に対応する画像データである。
【0038】
本実施形態では、砥石21[A]としては、最適なドレッシングが実行された状態になっていることが熟練工などの作業者によって判断されたものが採用される。その他、砥石21[A]としては、解析装置によって砥面23を解析した結果、最適なドレッシングが実行された状態になっていると判断されたものを採用すること等も可能である。
【0039】
本実施形態では、上記砥石21[A]に基づく上記撮像処理によって取得された画像データの全てが教師データ53として採用される。その他、上記砥石21[A]に基づく撮像処理によって取得された画像データの中から適当なものを選んで教師データ53として採用すること等も可能である。
【0040】
「加工初期」としては、研削加工に適した砥面23の状態であって、且つ、切り屑がさほど付着していない砥面23の状態が定められている。「加工初期」としては、具体的には、ドレッシングの実行完了後における研削加工の延べ実行期間が比較的短いときにおける砥面23の状態が定められている。本実施形態では、「加工初期」が、砥面23が研削加工に適した状態である第2状態、および、砥面23における切り屑の付着量が少ない状態である少量付着状態に相当する。
【0041】
「加工初期」に対応する画像データは、例えば、次のように取得される。先ず、ドレッシングの実行完了後に所定期間TBにわたり研削加工が実行された状態の砥石21[B]が用意されるとともに、同砥石21[B]が自動研削装置20に取り付けられる。そして、その状態で電子制御装置40による撮像処理が実行される。この撮像処理によって取得された画像データは、学習器51の機械学習に用いる教師データ53として記憶部44に記憶される。「加工初期」に対応する画像データは、学習器51の分類クラスのうちの「クラス1」に対応する画像データである。
【0042】
本実施形態では、上記砥石21[B]に基づく撮像処理によって取得された画像データ
の全てが教師データ53として採用される。その他、上記砥石21[B]に基づく撮像処理によって取得された画像データの中から適当なものを選んで教師データ53として採用すること等も可能である。
【0043】
「加工中期」としては、研削加工に適した砥面23の状態であって、且つ、切り屑の付着量が比較的多くなっている砥面23の状態が定められている。
「加工中期」としては、具体的には、ドレッシングの実行完了後における研削加工の延べ実行期間が比較的長くなったときにおける砥面23の状態が定められている。本実施形態では、「加工中期」が、砥面23が研削加工に適した状態である第2状態に相当し、且つ、砥面23における切り屑の付着量が多い状態である多量付着状態に相当する。
【0044】
「加工中期」に対応する画像データは、例えば、次のように取得される。先ず、ドレッシングの実行完了後に所定期間TC(ただし、TC>前記所定期間TB)にわたり研削加工が実行された状態の砥石21[C]が用意されるとともに、同砥石21[C]が自動研削装置20に取り付けられる。そして、その状態で電子制御装置40による撮像処理が実行される。この撮像処理によって取得された画像データは、学習器51の機械学習に用いる教師データ53として記憶部44に記憶される。「加工中期」に対応する画像データは、学習器51の分類クラスのうちの「クラス2」に対応する画像データである。
【0045】
本実施形態では、上記砥石21[C]に基づく撮像処理によって取得された画像データの全てが教師データ53として採用される。その他、上記砥石21[C]に基づく撮像処理によって取得された画像データの中から適当なものを選んで教師データ53として採用すること等も可能である。
【0046】
「ドレスタイミング」としては、砥面23の最外面に結合剤が露出している同砥面23の状態が定められている。本実施形態では、「ドレスタイミング」が第3状態に相当する。
【0047】
「ドレスタイミング」に対応する画像データは、例えば、次のように取得される。先ず、ドレッシングの実行開始に最も適した状態の砥石21[D]が用意されるとともに、同砥石21[D]が自動研削装置20に取り付けられる。そして、その状態で電子制御装置40による撮像処理が実行される。この撮像処理によって取得された画像データは、学習器51の機械学習に用いる教師データ53として記憶部44に記憶される。「ドレスタイミング」に対応する画像データは、学習器51の分類クラスのうちの「クラス3」に対応する画像データである。
【0048】
本実施形態では、砥石21[D]としては、ドレッシングの実行開始に最も適した状態になっていると熟練工などの作業者が判断したものが採用される。なお砥石21[D]としては、解析装置によって砥面23を解析した結果、ドレッシングの実行開始に最も適した状態になっていると判断されたものを採用すること等も可能である。
【0049】
本実施形態では、上記砥石21[D]に基づく撮像処理によって取得された画像データの全てが教師データ53として採用される。その他、上記砥石21[D]に基づく撮像処理によって取得された画像データの中から適当なものを選んで教師データ53として採用すること等も可能である。
【0050】
(判定画像)
本実施形態では、砥面23の使用状態の判定に用いられる画像(判定画像50)は、以下のように取得される。
【0051】
すなわち、砥石21のドレッシングが完了してから同砥石21による研削加工が開始されるまでの間に、撮像処理が実行される。そして、この撮像処理によって取得された画像データは、判定画像50として記憶部44に記憶される。また、砥石21による研削加工が開始された後においては、研削加工の延べ実行期間が所定期間に達する度に、研削加工の実行が停止されていることを条件に、撮像処理が実行される。所定期間としては、予め定められた所定時間や、前回の撮像処理の実行タイミングからの延べ研削量が所定量(例えば、1500立方センチメートル)に到達するまでの期間などが定められる。そして、撮像処理が実行される度に、同撮像処理によって取得された画像データが、判定画像50として記憶部44に記憶される。
【0052】
(学習器による分類)
本実施形態では、CNNによって構成された学習器51が、上記「ドレス直後」、「加工初期」、「加工中期」、および「ドレスタイミング」といった4種類の砥面23の使用状態に対応する教師データ53を利用して学習される。これにより、教師データ53によって学習された学習済みの学習器51は、入力データとしての判定画像50を4つの分類クラス(クラス0,1,2,3)に分類した結果を出力するようになっている。本実施形態では、基本的には、判定画像50が「ドレス直後」に対応する画像データである場合には、同判定画像50は「クラス0」に分類される。また、判定画像50が「加工初期」に対応する画像データである場合には、同判定画像50は「クラス1」に分類される。さらに判定画像50が「加工中期」に対応する画像データである場合には、同判定画像50は「クラス2」に分類される。また、判定画像50が「ドレスタイミング」に対応する画像データである場合には、同判定画像50は「クラス3」に分類される。本実施形態の上記学習器51は、具体的には、1枚の判定画像50について同判定画像50が分類クラスに属する確率を、4つの分類クラスの各々について出力する。すなわち、上記学習器51は、1枚の判定画像50について「クラス0」に属する確率P0と、「クラス1」に属する確率P1と、「クラス2」に属する確率P2と、「クラス3」に属する確率P3とを出力する。
【0053】
本実施形態の砥面判定装置30は、上記学習器51から出力される各分類クラスの確率P0,P1,P2,P3に基づいて、砥石21における砥面23の状態を判定する。本実施形態の砥面判定装置30(具体的には、電子制御装置40)は、機能部として、出力部60、クラス特定部61、判定部62を有している。
【0054】
(出力部)
出力部60は、判定画像50を入力データとして、記憶部44に記憶されている学習済みの学習器51から、判定画像50が上記分類クラス(クラス0~クラス3)に属する確率(P0~P3)を、4つの分類クラスの各々について出力する。出力部60は、各分類クラスについての確率P0~P3と判定画像50の砥面23における位置情報とを、データファイル(例えば、CSVファイル)として出力する。なお、判定画像50の砥面23における位置情報は、位置センサ221によって検出される砥石21の回転位置とZ軸駆動部34により制御されるカメラ31のZ方向位置とによって特定される。
【0055】
(クラス特定部)
クラス特定部61は、出力部60により出力される確率P0~P3に応じて、4つの分類クラスのうちの1つ、あるいは2つを、判定画像50に対応する特定分類クラスCとして特定する。
【0056】
具体的には、出力部60により出力される確率P0~P3のうちの最も高い値が第3所定値J3(例えば、80%)以上である場合には、上記確率が最も高い値である1つの分類クラスが特定分類クラスCとして特定される。詳しくは、主となる特定分類クラス(以
下、メイン特定クラスMC)、および副となる特定分類クラス(以下、サブ特定クラスSC)として、上記確率が最も高い値である1つの分類クラスが定められる。例えば、各分類クラスについての確率P0~P3のうち、クラス0の確率P0が最も高く、且つ同確率P0が第3所定値J3以上である場合には、メイン特定クラスMCおよびサブ特定クラスSCとして「クラス0」が定められる。
【0057】
一方、出力部60により出力される確率P0~P3のうちの最も高い値が前記第3所定値J3未満である場合には、上記確率が最も高い分類クラスと同確率が二番目に高い分類クラスとが特定分類クラスCとして定められる。詳しくは、メイン特定クラスMCとして上記確率が最も高い分類クラスが定められるとともに、サブ特定クラスSCとして上記確率が二番目に高い分類クラスが定められる。例えば、クラス1の確率P1が最も高く、且つ、同確率P1が第3所定値J3未満であり、且つ、クラス2の確率P2が二番目に高い場合には、メイン特定クラスMCとして「クラス1」が定められるとともに、サブ特定クラスSCとして「クラス2」が定められる。
【0058】
本実施形態では、このようにして4つの分類クラスのうちの1つ、あるいは2つが、1枚の判定画像50に対応する特定分類クラスCとして特定される。そのため、砥面23における1枚の判定画像50に対応する部分の使用状態を、複数の分類クラスのうちの1つに分類することに限らず、1つの分類クラスの中でも他の分類クラスに近い部類に分類したりするなど、細かく分類することができる。したがって、1枚の判定画像50に対して1つの分類クラスのみを特定する場合と比較して、砥面23における1枚の判定画像50に対応する部分の使用状態を細かく判定することができる。
【0059】
(判定部)
判定部62は、クラス特定部61によって特定された特定分類クラスC(メイン特定クラスMC、およびサブ特定クラスSC)に基づいて、判定対象の砥石21の状態を判定する。
【0060】
判定部62は、先ず、同一の判定時期において撮像された複数の判定画像50であって、且つ、砥面23に設定された複数(例えば、5684箇所)の撮像領域を撮像した判定画像50に対応して各別に特定された特定分類クラスCについての統計処理を実行する。
【0061】
この統計処理では、特定分類クラスCの種類毎に、複数の判定画像50について各別に特定された全ての特定分類クラスCに対して同一種類の特定分類クラスCの占める割合Rが算出される。
図5に示すように、上記統計処理においては、具体的には、以下の(イ)~(ネ)に記載する値が算出される。
【0062】
(イ)1枚の判定画像50において特定される全て(本実施形態では、5684個)の特定分類クラスCに対して、メイン特定クラスMCが「クラス0」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[0])の占める割合R[0]。
【0063】
(ロ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[0]のうちのサブ特定クラスSCが「クラス0」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[0-0])の占める割合R[0-0]。
【0064】
(ハ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[0]のうちのサブ特定クラスSCが「クラス1」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[0-1])の占める割合R[0-1]。
【0065】
(ニ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[0]のうちのサブ特定ク
ラスSCが「クラス2」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[0-2])の占める割合R[0-2]。
【0066】
(ホ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[0]のうちのサブ特定クラスSCが「クラス3」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[0-3])の占める割合R[0-3]。
【0067】
(ヘ)全ての特定分類クラスCに対して、メイン特定クラスMCが「クラス1」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[1])の占める割合R[1]。
(ト)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[1]のうちのサブ特定クラスSCが「クラス0」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[1-0])の占める割合R[1-0]。
【0068】
(チ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[1]のうちのサブ特定クラスSCが「クラス1」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[1-1])の占める割合R[1-1]。
【0069】
(リ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[1]のうちのサブ特定クラスSCが「クラス2」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[1-2])の占める割合R[1-2]。
【0070】
(ヌ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[1]のうちのサブ特定クラスSCが「クラス3」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[1-3])の占める割合R[1-3]。
【0071】
(ル)全ての特定分類クラスCに対して、メイン特定クラスMCが「クラス2」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[2])の占める割合R[2]。
(ヲ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[2]のうちのサブ特定クラスSCが「クラス0」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[2-0])の占める割合R[2-0]。
【0072】
(ワ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[2]のうちのサブ特定クラスSCが「クラス1」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[2-1])の占める割合R[2-1]。
【0073】
(カ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[2]のうちのサブ特定クラスSCが「クラス2」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[2-2])の占める割合R[2-2]。
【0074】
(ヨ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[2]のうちのサブ特定クラスSCが「クラス3」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[2-3])の占める割合R[2-3]。
【0075】
(タ)全ての特定分類クラスCに対して、メイン特定クラスMCが「クラス3」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[3])の占める割合R[3]。
(レ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[3]のうちのサブ特定クラスSCが「クラス0」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[3-0])の占める割合R[3-0]。
【0076】
(ソ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[3]のうちのサブ特定ク
ラスSCが「クラス1」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[3-1])の占める割合R[2-1]。
【0077】
(ツ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[3]のうちのサブ特定クラスSCが「クラス2」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[3-2])の占める割合R[3-2]。
【0078】
(ネ)全ての特定分類クラスCに対して、特定分類クラスC[3]のうちのサブ特定クラスSCが「クラス3」である特定分類クラス(以下、特定分類クラスC[3-3])の占める割合R[3-3]。
【0079】
判定部62は、上記(イ)~(ネ)に記載の各特定分類クラスCの割合Rに基づいて、砥石21の砥面23の使用状態を判定するための判定処理として、ドレス良否判定処理、ドレスタイミング判定処理、および研削良否判定処理を実行する。なお本実施形態では、こうした判定処理が自動的に実行されるように、実行プログラムが構築されて記憶部44に記憶されている。
【0080】
(ドレス良否判定処理)
ドレス良否判定処理は、ドレッシングの良否を判定するための判定処理である。このドレス良否判定処理では、以下の(判定条件A)が満たされる場合に、判定対象の砥石21におけるドレッシングが適正に実行されたと判定される。
【0081】
(判定条件A)特定分類クラスC[0-0]の割合R[0-0]が、予め定められた第1所定値J1(例えば、90%)以上であること。
なお、第1所定値J1としては、「ドレッシングが適正に実行された」ことを精度良く判定することが可能になる値が、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに予め求められて、記憶部44に記憶されている。本実施形態では、上記割合R[0-0]が、第1割合に相当する。
【0082】
図6は、(判定条件A)が満たされる場合に統計処理によって生成された統計データのデータ構造の一例を示す。
図6に示すように、上記(判定条件A)が満たされる場合には、砥面23の各部の使用状態が同砥面23の略全体にわたって特定分類クラスC[0-0]に対応する状態になる。本実施形態のドレス良否判定処理では、そうした状態になった場合に、判定対象の砥石21におけるドレッシングが適正に実行されたと判定される。なお、上記第1所定値J1としては、砥面23の各部の使用状態が同砥面23の所定範囲にわたって特定分類クラスC[0-0]に対応する状態であることを判断できるのであれば、任意の値を設定することができる。
【0083】
一方、ドレス良否判定処理において、上記(判定条件A)が満たされない場合には、判定対象の砥石21におけるドレッシングが適正に実行されたと判定することなく、ドレス良否判定処理は終了される。
【0084】
(ドレスタイミング判定処理)
ドレスタイミング判定処理は、ドレッシングを実行する時期であることを判定するための判定処理である。
【0085】
ドレスタイミング判定処理では、以下の(判定条件B)および(判定条件C)が共に満たされる場合に、判定対象の砥石21についてのドレッシングを実行するべき時期であると判定される。
【0086】
(判定条件B)特定分類クラスC[3]の割合R[3]が、予め定められた第4所定値J4(例えば、20%)以上であること。
(判定条件C)砥面23における特定分類クラスC[3]に対応する部分が、同砥面23の全体に分散した状態になっていること。
【0087】
上記(判定条件B)が満たされることで、砥面23において特定分類クラスC[3]に対応する部分が一定量含まれた状態であることが分かる。なお、第4所定値J4としては、「ドレッシングを実行するべき時期である」ことを精度良く判定することが可能になる値が、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに予め求められて、記憶部44に記憶されている。本実施形態では、上記割合R[3]が、第3割合に相当する。
【0088】
また上記(判定条件C)が満たされることで、そうした砥面23における特定分類クラスC[3]に対応する部分が、砥面23の一部に集中することなく、同砥面23の全体に分散した状態であることが分かる。なおドレスタイミング判定処理では、各判定画像50に関連付けられた位置情報を利用して特定分類クラスC[3]に対応する部分の分布を把握するとともに、同分布をもとに(判定条件C)が満たされるか否かが判断される。
【0089】
本実施形態のドレスタイミング判定処理では、そうした状態になったことを(判定条件B)および(判定条件C)をもとに判断することで、判定対象の砥石21についてのドレッシングを実行するべき時期であると判定される。
【0090】
一方、ドレスタイミング判定処理において、(判定条件B)および(判定条件C)の少なくとも一方が満たされない場合には、判定対象の砥石21についてのドレッシングを実行するべき時期であると判定することなく、ドレスタイミング判定処理は終了される。
【0091】
本実施形態では、連続する複数の判定時期において各別に実行された統計処理を通じて生成された統計データが表示装置35に表示されるようになっている。そうした統計データの一例を
図7(A)~
図7(C)に示す。なお
図7(A)は(N-2)回目の判定時期における統計データを示し、
図7(B)は(N-1)回目の判定時期における統計データを示し、
図7(C)はN回目の判定時期における統計データを示す。
【0092】
図7(A)~
図7(C)から明らかなように、各判定時期の統計データを参照することで、特定分類クラスC[2]のうちの特定分類クラスC[3]に近いもの(特定分類クラスC[2-3])の割合R[2-3]を把握することができる。この特定分類クラスC[2-3]は、次回の判定時期において、特定分類クラスC[3]になる可能性が高い。
【0093】
ユーザーは、連続する複数の判定時期の統計データを参照する際に、こうした特定分類クラスC[2-3]に着目することで、次回の判定時期における特定分類クラスC[3]の割合R[3]を推測することができる。これにより、ユーザーは、判定対象の砥石21についてのドレッシングを実行するべき時期についても推定することが可能になる。
【0094】
(研削良否判定処理)
研削良否判定処理は、砥石21による研削加工の良否を判定するための判定処理である。研削良否判定処理では、以下の(判定条件D)が満たされる場合に、砥石21による研削加工が適正に実行されていると判定される。
【0095】
(判定条件D)連続する複数の判定時期の各々において特定された特定分類クラスC[2]の割合R[2]の分布幅が、予め定められた第2所定値J2以下であること。
一方、研削良否判定処理において、上記(判定条件D)が満たされない場合には、砥石
21による研削加工が適正に実行されていると判定することなく、研削良否判定処理は終了される。
【0096】
砥面判定装置30では、砥面23の使用状態が研削加工に適した状態(前記第2状態)になると、砥面23への「切り屑」の付着と同砥面23からの「切り屑」の脱落とが繰り返される。こうした砥面判定装置30において、砥石21による研削加工を適正に実行するうえでは、砥面23への「切り屑」の付着と同砥面23からの「切り屑」の脱落とのバランスが取れていることが好ましい。本実施形態の砥面判定装置30では、「切り屑」の付着と脱落とのバランスが取れた状態になった場合において特定分類クラスC[2]の割合R[2]が略一定に保たれた状態になるように、前述した4種類の砥面23の使用状態が定められている。
【0097】
図7(A)および
図7(B)は、「切り屑」の付着と脱落とのバランスが取れた状態になった場合における統計データの一例を示している。
図7(A)および
図7(B)から明らかなように、砥面判定装置30では、「切り屑」の付着と脱落とのバランスが取れた状態になると、特定分類クラスC[2]の割合R[2]が略一定に保たれた状態になる。
【0098】
なお、第2所定値J2としては、「切り屑」の付着と脱落とのバランスが取れた状態であることを精度良く判定することの可能な値が、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに予め求められて、記憶部44に記憶されている。本実施形態では、上記割合R[2]が、第2割合に相当する。
【0099】
研削良否判定処理では、上記(判定条件D)が満たされることで、砥面23の全体において特定分類クラスC[2]に対応する状態(前記加工中期)になっている部分の占める割合R[2]が略一定に保たれていると判断することができる。なお
図7(A)および
図7(B)に示す例では、
図7(A)における割合R[2]と
図7(B)における割合R[2]との差が第2所定値J2以下になるため、上記(判定条件D)が満たされる。研削良否判定処理において、連続する3回以上の判定時期に特定された特定分類クラスC[2]の割合R[2]を利用する場合には、それら割合R[2]の最大値と最小値との差が第2所定値J2以下であることをもって(判定条件D)を満たすと判断すればよい。
【0100】
そして、研削良否判定処理では、この判断をもとに、砥面23への「切り屑」の付着が適度の量に抑えられていること、ひいては砥面23の使用状態が研削加工に適した状態で維持されていることを判定できる。
【0101】
本実施形態では、砥面23の使用状態として、少量付着状態に相当する「加工初期」と多量付着状態に相当する「加工中期」とが定められている。これにより、砥面23における判定画像50に対応する部分の使用状態を、切り屑の付着量が少ない少量付着状態に対応する「クラス1」や、切り屑の付着量が多い多量付着状態に対応する「クラス2」に分類することができる。そのため、その分類結果をもとに、そのときどきにおける砥面23への「切り屑」の付着量が、適度な量に抑えられていることを判定することができる。これにより、砥面23の使用状態が研削加工に適した状態で維持されていることを判定することができる。
【0102】
以下、判定対象の砥石21の砥面23の使用状態を判定するための判定処理について具体的に説明する。
図8は判定処理の実行手順を示している。同
図8のフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の処理として、電子制御装置40により実行される。
【0103】
図8に示すように、この処理では先ず、自動研削装置20に取り付けられている砥石21の砥面23の各部を撮像した複数の画像データ(判定画像50)が取得される(ステッ
プS21)。具体的には、前記撮像処理(
図4)が実行されるとともに、同撮像処理によって取得された複数の画像データが判定画像50として記憶部44に記憶される。本実施形態では、ステップS21の処理が入力工程に相当する。
【0104】
その後、記憶部44に記憶された判定画像50を入力データとして、同記憶部44に記憶されている学習済みの学習器51から、判定画像50が分類クラスに属する確率(P0~P3)が出力される(ステップS22)。確率(P0~P3)は、詳しくは、4つの分類クラス(クラス0~クラス3)について各別に出力されるとともに、同一の砥面23の各部を撮像した複数の判定画像50について各別に出力される。そして、学習器51から出力される確率(P0~P3)は、判定画像50の砥面23における位置情報に関連付けられた状態で記憶部44に記憶される。本実施形態では、ステップS22の処理が出力工程に相当する。
【0105】
その後、上記確率P0~P3に応じて、4つの分類クラスのうちの1つ、あるいは2つが、判定画像50に対応する特定分類クラスCとして特定される(ステップS23)。なお、特定分類クラスCを特定する処理は、同一の砥面23の各部を撮像した複数の判定画像50について各別に実行される。上記特定分類クラスCは、判定画像50の砥面23における位置情報に関連付けられた状態で記憶部44に記憶される。本実施形態では、ステップS23の処理がクラス特定工程に相当する。
【0106】
その後、複数の判定画像50に対応して各別に特定された特定分類クラスCについての統計処理が実行される(ステップS24)。詳しくは、特定分類クラスCの種類毎に、複数の判定画像50について各別に特定された全ての特定分類クラスCに対して同一種類の特定分類クラスCの占める割合Rが算出される。
【0107】
その後、ドレス良否判定処理が実行される(ステップS25)。ドレス良否判定処理による判定結果は、判定結果データ54として記憶部44に記憶されるとともに、表示装置35に表示される。ユーザーは、記憶部44に記憶されている判定結果データ54や、表示装置35に表示される判定結果をもとに、ドレッシングが適正に実行されていることを把握することができる。
【0108】
また、ドレスタイミング判定処理が実行される(ステップS26)。ドレスタイミング判定処理による判定結果は、判定結果データ54として記憶部44に記憶されるとともに、表示装置35に表示される。ユーザーは、記憶部44に記憶されている判定結果データ54や、表示装置35に表示される判定結果をもとに、ドレッシングを実行するべき時期であることを把握することができる。
【0109】
さらに、研削良否判定処理が実行される(ステップS27)。研削良否判定処理による判定結果は、判定結果データ54として記憶部44に記憶されるとともに、表示装置35に表示される。ユーザーは、記憶部44に記憶されている判定結果データ54や、表示装置35に表示される判定結果をもとに、砥石21による研削加工が適正に実行されていることを把握することができる。なお本実施形態では、ステップS24の処理、ステップS25の処理、ステップS26の処理、およびステップS27の処理が判定工程に相当する。
【0110】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)本実施形態の砥面判定装置30では、4つの分類クラスのうちの1つ、あるいは2つが、1枚の判定画像50に対応する特定分類クラスCとして特定される。そのため、砥面23における1枚の判定画像50に対応する部分の使用状態を、複数の分類クラスの
うちの1つに分類することに限らず、1つの分類クラスの中でも他の分類クラスに近い部類に分類したりするなど、細かく分類することができる。したがって、1枚の判定画像50に対して1つの分類クラスのみを特定する場合と比較して、砥面23における1枚の判定画像50に対応する部分の使用状態を細かく判定することができる。これにより、判定画像50の撮像範囲を広くしたとしても、判定対象の砥石21の状態についての判定を高い精度で実行することができる。そのため、判定の精度を高く維持しながら、砥面23の判定に利用する判定画像50の枚数を少なくすることができる。本実施形態によれば、このようにして砥面23の使用状態を短い時間、且つ高い精度で判定することができる。
【0111】
(2)砥面23の使用状態として、ドレッシングが適正に実行された直後における砥面23の状態である「ドレス直後」、砥面23が研削加工に適した状態である「第2状態」、砥面23の最外面に結合剤が露出した状態である「ドレスタイミング」が定められる。これにより、CNNによって構成された学習器51は、上記「ドレス直後」、「第2状態」、および「ドレスタイミング」といった砥面23の使用状態に対応する教師データ53を利用して学習されるようになる。そのため、この教師データ53によって学習された学習済みの学習器51は、入力データとしての判定画像50を上記「ドレス直後」、「第2状態」、および「ドレスタイミング」に対応する分類クラスに分類した結果を出力するようになる。本実施形態によれば、そうした学習器51による分類結果に基づいて、砥面23のドレッシングが実行された直後から同砥面23の最外面に結合剤が露出した状態になるまでの期間において、砥面23の使用状態を精度良く判定することができる。
【0112】
(3)判定部62は、特定分類クラスC[0-0]の割合R[0-0]が第1所定値J1以上である場合に、判定対象の砥石21におけるドレッシングが適正に実行されたと判定する。本実施形態によれば、砥面23の各部の使用状態が同砥面23の略全体にわたって特定分類クラスC[0-0]に対応する状態、すなわちドレッシングが適正に実行された直後における砥面23の状態になっていると判断することができる。そして、この判断をもとに、判定対象の砥石21のドレッシングが適正に実行されたことを判定することができる。
【0113】
(4)砥面23の使用状態としての「第2状態」は、少量付着状態に相当する「加工初期」と多量付着状態に相当する「加工中期」とを含む。本実施形態によれば、砥面23における判定画像50に対応する部分の使用状態を、切り屑の付着量が少ない少量付着状態に対応する「クラス1」や、切り屑の付着量が多い多量付着状態に対応する「クラス2」に分類することができる。そのため、その分類結果をもとに、そのときどきにおける砥面23への「切り屑」の付着量が、適度な量に抑えられていることを判定することができる。これにより、砥面23の使用状態が研削加工に適した状態で維持されていることを判定することができる。
【0114】
(5)研削良否判定処理において、(判定条件D)が満たされる場合に、砥石21による研削加工が適正に実行されていると判定される。本実施形態によれば、(判定条件D)が満たされることで、砥面23の全体において特定分類クラスC[2]に対応する状態(加工中期)になっている部分の占める割合R[2]が略一定に保たれていると判断することができる。そして、この判断をもとに、砥面23への「切り屑」の付着が適度の量に抑えられていること、ひいては砥面23の使用状態が研削加工に適した状態で維持されていることを判定できる。
【0115】
(6)出力部60により出力される確率P0~P3のうちの最も高い値が第3所定値J3以上である場合には、上記確率が最も高い値である1つの分類クラスが特定分類クラスC(詳しくは、メイン特定クラスMCおよびサブ特定クラスSC)として特定される。出力部60により出力される確率P0~P3のうちの最も高い値が第3所定値J3未満であ
る場合には、メイン特定クラスMCとして上記確率が最も高い分類クラスが定められるとともに、サブ特定クラスSCとして上記確率が二番目に高い分類クラスが定められる。本実施形態によれば、メイン特定クラスMCによって砥面23の使用状態を大まかに把握することができる。加えて、サブ特定クラスSCによって砥面23の使用状態を細かく把握することができる。このように本実施形態によれば、砥面23の使用状態を詳細に判定することができる。
【0116】
(7)ドレスタイミング判定処理では、(判定条件B)および(判定条件C)が共に満たされる場合に、判定対象の砥石21についてのドレッシングを実行するべき時期であると判定される。上記(判定条件B)が満たされることで、砥面23において特定分類クラスC[3]に対応する部分が一定量含まれた状態であることが分かる。また上記(判定条件C)が満たされることで、そうした砥面23における特定分類クラスC[3]に対応する部分が、砥面23の一部に集中することなく、同砥面23の全体に分散した状態であることが分かる。本実施形態によれば、そうした状態になったことを(判定条件B)および(判定条件C)をもとに判断することで、判定対象の砥石21についてのドレッシングを実行するべき時期であると判定することができる。
【0117】
(変更例)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0118】
・ドレスタイミング判定処理における(判定条件C)を省略することができる。この構成では、(判定条件B)が満たされる場合に、判定対象の砥石21についてのドレッシングを実行するべき時期であると判定すればよい。
【0119】
・ドレスタイミング判定処理において、以下の(判定条件E)が満たされる場合に、判定対象の砥石21についてのドレッシングを実行するべき時期であると判定するようにしてもよい。
【0120】
(判定条件E)砥面23における特定分類クラスC[3]に対応する部分が、同砥面23における所定の範囲内に、所定の割合で含まれた状態になっていること。
なお、(判定条件E)における各値(所定の範囲、所定の割合)としては、上記特定分類クラスC[3]に対応する部分が砥面23の一部に集中したアンバランスな状態になっていることを判断することの可能な値を予め定めておけばよい。具体的には、上記各値として、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに適正な値を予め求めて記憶部44に記憶させておけばよい。上記構成によれば、特定分類クラスC[3]に対応する部分が砥面23の一部に集中したアンバランスな状態になっていることを判断することで、判定対象の砥石21についてのドレッシングを実行するべき時期であると判定することができる。
【0121】
・ドレス判定処理、ドレスタイミング判定処理、および砥面良否判定処理のうちの1つを省略したり、2つを省略したりすることができる。
・各判定処理の判定結果を表示装置35に表示する構成を省略することができる。
【0122】
・各判定処理の判定結果を表示装置35に表示することに限らず、判定結果に応じて警告ブザーを吹聴したりスピーカーから音声情報を発したりするようにしてもよい。
・砥面23の複数種類の使用状態は、「ドレス直後」、「加工初期」、「加工中期」、および「ドレスタイミング」の4種類の使用状態を設定することに限らず、任意に変更することができる。例えば、「加工初期」および「加工中期」の一方を省略することができ
る。また、「加工初期」および「加工中期」に代えて、砥面23が研削加工に適した状態である「第2状態」を1つのみ設定することができる。「加工初期」および「加工中期」の両方を省略することができる。砥面23の複数種類の使用状態として、5種類以上の使用状態を定めることも可能である。
【0123】
・複数の分類クラスのうちの3つ以上を、1枚の判定画像50に対応する特定分類クラスCとして特定するようにしてもよい。例えば、前記確率が最も高い1つの分類クラスと、前記確率が2番目に高い分類クラスと、前記確率が3番目に高い分類クラスの3つの分類クラスとを、特定分類クラスとして特定することができる。
【0124】
・学習済みの学習器51を電子制御装置40に記憶させるための作業は、以下の(作業A)~(作業C)のように、任意の態様で実行することができる。
(作業A)判定対象の砥石21が設けられる自動研削装置20を利用して、教師データ53を取得するとともに、同教師データ53によって学習器51を機械学習させる。
【0125】
(作業B)実際に使用する砥石21に対応する教師データ53を、自動研削装置20の製造メーカー、あるいは砥石21の製造メーカーに提供してもらう。そして、教師データ53をユーザーが使用する砥面判定装置30の電子制御装置40に記憶させることで、学習器51を機械学習させる。
【0126】
(作業C)自動研削装置20の製造時において、学習済みの学習器51を電子制御装置40に記憶させる。
・カメラ31を、自動研削装置20における砥石カバー25以外の部分に取り付けるようにしてもよい。
【0127】
・カメラ31を有する撮像ユニットを、自動研削装置20と別体に構成してもよい。この場合、砥面23の使用状態を判定する際に撮像ユニットを自動研削装置20に一時的に取り付けるとともに同撮像ユニットによって砥面23を撮像することで、判定対象の砥石21の砥面23を撮像した画像(判定画像50)を取得することができる。
【0128】
・判定対象の砥石21が設けられた自動研削装置20以外の装置(専用の撮像装置や他の自動研削装置など)に搭載されたカメラによって撮像した画像を、電子制御装置40に記憶させて、教師データ53として用いるようにしてもよい。
【0129】
・学習器51としては、畳み込みニューラルネットワークを採用することに限らず、多層構造を有する一般的な順伝播型ニューラルネットワークや、サポートベクターマシンなどを採用することができる。
【0130】
・上記実施形態にかかる砥面判定装置は、円柱状の基材の底面に多数の砥粒が結合剤によって固着された構造をなす砥石にも適用することができる。
・上記実施形態にかかる砥面判定装置は、自動研削装置と別体の装置として構成することができる。同構成では、砥面の使用状態を判定する際には、判定対象の砥石が自動研削装置から取り外されるとともに砥面判定装置に取り付けられる。その後、砥面判定装置によって砥面の使用状態が判定される。
【0131】
(付記)
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
[付記1]砥石における砥面の状態を判定する砥面判定装置において、判定対象の砥石の砥面を撮像した画像を判定画像として記憶する入力部と、複数種類の使用状態の砥面を各別に撮像した画像からなる教師データによって学習された学習済みの学習器を記憶する
記憶部と、前記判定画像を入力データとして、前記学習済みの学習器から、前記複数種類の使用状態に対応する複数の分類クラスの各々についての前記分類クラスに前記判定画像が属する確率を出力する出力部と、前記出力部により出力される前記確率に応じて、前記複数の分類クラスのうちの前記確率が最も高い1つの分類クラスを、または当該1つの分類クラスを含む2つ以上の分類クラスを、前記判定画像に対応する特定分類クラスとして特定するクラス特定部と、前記クラス特定部によって特定された前記特定分類クラスに基づいて、前記判定対象の砥石の状態を判定する判定部と、を備える砥面判定装置。
【0132】
[付記2]前記砥石は、複数の砥粒が結合剤によって固着された構造をなすものであり、前記複数種類の使用状態は、前記砥面のドレッシングが適正に実行された直後における当該砥面の状態である第1状態と、前記砥面が研削加工に適した状態である第2状態と、前記砥面の最外面に前記結合剤が露出した状態である第3状態と、を含む[付記1]に記載の砥面判定装置。
【0133】
[付記3]前記砥面判定装置は、前記出力部による前記確率の出力と前記クラス特定部による前記特定分類クラスの特定とを、前記砥面の各部を撮像した画像である複数の前記判定画像について各別に実行するものであり、前記判定部は、同一の判定時期に撮像された前記複数の前記判定画像について各別に特定された前記特定分類クラスのうち、前記1つの分類クラスであって、且つ前記第1状態に対応する分類クラスのみが特定された前記特定分類クラスの占める第1割合が、予め定められた第1所定値以上である場合に、前記判定対象の砥石におけるドレッシングが適正に実行されたと判定する[付記2]に記載の砥面判定装置。
【0134】
[付記4]前記第2状態は、前記砥面における切り屑の付着量が少ない少量付着状態と、前記砥面における切り屑の付着量が多い多量付着状態と、を含む[付記2]または[付記3]に記載の砥面判定装置。
【0135】
[付記5]前記砥面判定装置は、前記出力部による前記確率の出力と前記クラス特定部による前記特定分類クラスの特定とを、同一の判定時期において前記砥面の各部を撮像した画像である複数の前記判定画像について各別に実行するとともに、異なる判定時期において各別に前記砥面を撮像した画像を前記判定画像として利用することで繰り返し実行するものであり、前記判定部は、前記同一の判定時期において撮像された前記複数の前記判定画像について各別に特定された前記特定分類クラスのうち、前記1つの分類クラスが前記多量付着状態に対応する分類クラスになっている前記特定分類クラスの占める第2割合を、連続する複数の判定時期において各別に算出するものであり、且つ、前記複数の判定時期についての前記第2割合の分布幅が、予め定められた第2所定値以下である場合に、前記砥面が研削加工に適した状態に保たれていると判定するものである[付記4]に記載の砥面判定装置。
【0136】
[付記6]前記クラス特定部は、前記1つの分類クラスについての前記確率が予め定められた第3所定値以上の場合には、前記1つの分類クラスをメイン特定クラスとして特定する一方、前記1つの分類クラスについての前記確率が前記第3所定値未満の場合には、前記1つの分類クラスを前記メイン特定クラスとして特定することに加えて、前記複数の分類クラスのうちの前記確率が2番目に高い分類クラスをサブ特定クラスとして特定する[付記1]~[付記5]のいずれか一項に記載の砥面判定装置。
【0137】
[付記7]前記砥面判定装置は、前記出力部による前記確率の出力と前記クラス特定部による前記特定分類クラスの特定とを、前記判定対象の砥石の砥面の各部を撮像した画像である複数の前記判定画像について各別に実行するものであり、前記クラス特定部は、前記1つの分類クラスについての前記確率が予め定められた第3所定値以上の場合には、前
記1つの分類クラスをメイン特定クラスとして特定する一方、前記1つの分類クラスについての前記確率が前記第3所定値未満の場合には、前記1つの分類クラスを前記メイン特定クラスとして特定することに加えて、前記複数の分類クラスのうちの前記確率が2番目に高い分類クラスをサブ特定クラスとして特定するものであり、前記判定部は、前記複数の前記判定画像について各別に特定された前記特定分類クラスのうち、前記1つの分類クラスであって且つ前記第3状態に対応する分類クラスが前記メイン特定クラスになっている前記特定分類クラスの占める第3割合が、予め定められた第4所定値以上である場合に、前記判定対象の砥石のドレッシングを実行するべき時期であると判定する[付記2]~[付記5]のいずれか一項に記載の砥面判定装置。
【0138】
[付記8]前記[付記1]~[付記7]のいずれか一項に記載の砥面判定装置が備える前記学習済みの学習器。
[付記9]前記[付記1]~[付記7]のいずれか一項に記載の砥面判定装置が具備する前記入力部、前記出力部、前記クラス特定部、および前記判定部の処理を、前記砥面判定装置が備える電子制御装置に実行させる判定プログラム。
【符号の説明】
【0139】
20 自動研削装置
21 砥石
22 回転駆動部
221 位置センサ
23 砥面
24 ドレッサ
30 …砥面判定装置
31 …カメラ
35 表示装置
40 電子制御装置
41 CPU
42 ROM
43 RAM
44 記憶部
50 判定画像
51 学習器
52 実行プログラム
53 教師データ
54 判定結果データ
60 出力部
61 クラス特定部
62 判定部
P 確率
C 特定分類クラス
R 割合