(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033606
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】施術用クッションマット及び施術用クッションマットの使用方法
(51)【国際特許分類】
A61G 13/00 20060101AFI20240306BHJP
A61F 5/445 20060101ALI20240306BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20240306BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61G13/00 A
A61F5/445
A47C27/00 D
A47C27/00 K
A47C27/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137275
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】507307628
【氏名又は名称】若井 克治
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】若井 克治
【テーマコード(参考)】
3B096
4C098
4C341
【Fターム(参考)】
3B096AA02
3B096AB02
3B096AD07
4C098AA09
4C098CC31
4C098CD01
4C098CE11
4C341MM20
4C341MN16
4C341MS30
(57)【要約】
【課題】背部に対する施術を行う際に、ストーマ装具の装着位置に関わらず、ストーマ装具が被施術者とクッションマットとによって押し潰されることを抑制できる。
【解決手段】クッションマット1は、腹部Aにストーマ装具Sが装着されている被施術者Pをうつぶせ寝にさせた状態で被施術者Pの背部に対して施術を行う際に用いられる。クッションマット1は、少なくとも被施術者Pの胸部Cを下方から支持する第1マット10と、少なくとも被施術者Pの大腿部Fを下方から支持する第2マット20と、第1マット10と第2マット20との間に配置され、被施術者Pの腹部Aを下方から支持する第3マット30及び第4マット40と、を備える。第3マット30及び第4マット40は、被施術者Pの幅方向Wにおいてストーマ装具Sを挟むように互いに間隔をあけて配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹部にストーマ装具が装着されている被施術者をうつぶせ寝にさせた状態で前記被施術者の背部に対して施術を行う際に用いられる施術用クッションマットであって、
少なくとも前記被施術者の胸部を下方から支持する第1マットと、
少なくとも前記被施術者の大腿部を下方から支持する第2マットと、
前記第1マットと前記第2マットとの間に配置され、前記被施術者の腹部を下方から支持する第3マット及び第4マットと、を備え、
前記第3マット及び前記第4マットは、前記被施術者の幅方向において前記ストーマ装具を挟むように互いに間隔をあけて配置される、
施術用クッションマット。
【請求項2】
前記第1マット及び前記第2マットは、対向するとともに互いに平行な第1対向面及び第2対向面をそれぞれ有しており、
前記第3マットは、前記第1対向面及び前記第2対向面にそれぞれ対向するとともに互いに平行な一対の側面を有しており、
前記第4マットは、前記第1対向面及び前記第2対向面にそれぞれ対向するとともに互いに平行な一対の側面を有している、
請求項1に記載の施術用クッションマット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のクッションマットを使用する方法であって、
前記幅方向における前記被施術者の前記ストーマ装具の装着位置に応じて、前記幅方向における前記第3マット及び前記第4マットの位置を調節する、
施術用クッションマットの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施術用クッションマット及び施術用クッションマットの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マッサージや整体、鍼灸治療、柔道整復術、及び整形外科治療などの背部に対する施術時に被施術者の上半身の下面側に敷かれるクッションマットが開示されている。
【0003】
このクッションマットは、厚みが中程度の中肉部と、厚みが厚い厚肉部と、厚みが薄い薄肉部とが長手方向に沿って順に連なって形成されている。中肉部、厚肉部、及び薄肉部の各々の上面は、滑らかな湾曲線で結ばれている。中肉部及び厚肉部の上面には、幅方向に沿って複数本の溝が形成されている。クッションマットは、低反発弾性ポリウレタンフォームにより構成されている。
【0004】
ところで、手術などによって腹壁に排泄口(以下、ストーマと称する)を造設することが知られている。こうしたストーマとしては、人工肛門などの消化器ストーマと、人工膀胱などの尿路ストーマがある。ストーマは、腸や尿管などの管を腹壁の外に引き出し、引き出された管の先端部を外側に折り返すことで形成される。
【0005】
消化管ストーマの代表例としては、人工肛門がある。直腸がんの手術において直腸及び肛門を切除する場合、あるいは大腸が閉塞している場合には、大腸や回腸(小腸)を用いて便のストーマが造設される。
【0006】
尿路ストーマの代表例である人工膀胱は、膀胱がんの手術において膀胱及び尿道の一部を切除する必要がある場合に、小腸を用いた回腸導管や、尿管を用いた尿管皮膚瘻を用いて尿のストーマが造設される。
【0007】
人間の肛門や尿道には括約筋という筋肉があるので、人間は当該筋肉を制御することで自分の意思によって排泄物を出したり、我慢したりすることができる。
これに対して、ストーマには括約筋のような筋肉がないので、人間はストーマを通じた排泄を自分の意志で制御することができない。
【0008】
そこで、ストーマを通じた排泄物を溜めるために腹部に装着されるストーマ装具が開発されている。ストーマ装具は、ストーマ袋(パウチとも称される)と、ストーマ袋を取り付ける土台(面板とも称される)とからなる。なお、ストーマ袋に溜まった排泄物は、トイレで捨てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
腹部にストーマ装具が装着されている被施術者をうつぶせ寝にさせた状態で被施術者の背部に対して施術を行う際には、以下の不都合がある。すなわち、被施術者とクッションマットとによりストーマ装置が挟まれた状態で、施術者が被施術者の背中や腰などをクッションマットに向けて押圧すると、ストーマ装置が押し潰されるおそれがある。そのため、ストーマを有する人、いわゆるオストメイトにあっては、背部に対する施術を受けることが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための施術用クッションマット及び施術用クッションマットの使用方法の各態様を記載する。
[態様1]
腹部にストーマ装具が装着されている被施術者をうつぶせ寝にさせた状態で前記被施術者の背部に対して施術を行う際に用いられる施術用クッションマットであって、少なくとも前記被施術者の胸部を下方から支持する第1マットと、少なくとも前記被施術者の大腿部を下方から支持する第2マットと、前記第1マットと前記第2マットとの間に配置され、前記被施術者の腹部を下方から支持する第3マット及び第4マットと、を備え、前記第3マット及び前記第4マットは、前記被施術者の幅方向において前記ストーマ装具を挟むように互いに間隔をあけて配置される、施術用クッションマット。
【0012】
同構成によれば、第1マットによって少なくとも被施術者の胸部が下方から支持され、第2マットによって少なくとも被施術者の大腿部が下方から支持される。ここで、第3マット及び第4マットが被施術者の幅方向においてストーマ装具を挟むように互いに間隔をあけて配置される。これにより、第3マット及び第4マットによって被施術者の腹部が下方から支持されるとともに、第3マットと第4マットとの間の隙間によってストーマ装具が逃がされる。
【0013】
また、上記構成によれば、幅方向における被施術者のストーマ装具の装着位置に応じて、幅方向における第3マット及び第4マットの位置を調節することができる。
したがって、背部に対する施術を行う際に、ストーマ装具の装着位置に関わらず、ストーマ装具が被施術者とクッションマットとによって押し潰されることを抑制できる。
【0014】
[態様2]
前記第3マットは、互いに平行な一対の平行面を有しており、前記第4マットは、互いに平行な一対の平行面を有しており、前記第1マットは、前記第3マットの一方の前記平行面及び前記第4マットの一方の前記平行面の双方と当接する平面状の第1当接面を有しており、前記第2マットは、前記第3マットの前記一方とは反対側の前記平行面及び前記第4マットの前記一方とは反対側の前記平行面の双方と当接する平面状の第2当接面を有している、態様1に記載の施術用クッションマット
同構成によれば、第1マットの第1対向面と第2マットの第2対向面とが平行であり、第3マット及び第4マットの双方が互いに平行な一対の側面をそれぞれ有している。このため、第3マット及び第4マットを幅方向においてスライドさせることにより、幅方向における第3マット及び第4マットの位置を容易に調節することができる。
【0015】
また、上記構成によれば、第1対向面に対して第3マット及び第4マットの一方の側面全体を当接させるとともに、第2対向面に対して第3マット及び第4マットの他方の側面全体を当接させることができる。このため、互いに独立した4つのマットを有しながらも、各マットが施術の際の外力によって移動しにくくなる。したがって、施術の際の各マットの位置ずれを好適に抑制できる。
【0016】
[態様3]
態様1または態様2に記載の施術用クッションマットを使用する方法であって、前記幅方向における前記被施術者の前記ストーマ装具の装着位置に応じて、前記幅方向における前記第3マット及び前記第4マットの位置を調節する、施術用クッションマットの使用方法。
【0017】
同方法によれば、態様1の作用効果と同様な作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、背部に対する施術を行う際に、ストーマ装具の装着位置に関わらず、ストーマ装具が被施術者とクッションマットとによって押し潰されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、施術用クッションマットの一実施形態について、クッションマットの上に被施術者がうつぶせ寝している様子を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1のクッションマットの作用を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1~
図3を参照して、施術用クッションマット及び施術用クッションマットの使用方法の一実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、施術用クッションマット(以下、クッションマット1)は、腹部Aにストーマ装具Sが装着されている被施術者Pをうつぶせ寝にさせた状態で被施術者Pに対してマッサージなどの背部に対する施術を行う際に用いられる。なお、
図2に示すように、クッションマット1は、ベッドBの上に配置されて用いられることが好ましい。
【0021】
クッションマット1は、第1マット10、第2マット20、第3マット30、及び第4マット40を備えている。各マット10,20,30,40は、例えば低反発の弾性部材により形成されていることが好ましい。こうした弾性部材としては例えばポリウレンタンフォームが挙げられる。
【0022】
<第1マット10,第2マット20>
図1及び
図2に示すように、第1マット10は、少なくとも被施術者Pの胸部Cを下方から支持する。第1マット10は、被施術者Pの胸部Cから頭部Hにわたる部位を下方から支持するように設けられている。
【0023】
第2マット20は、少なくとも被施術者Pの大腿部Fを下方から支持する。第2マット20は、被施術者Pの大腿部Fから下腿部にわたる下肢を下方から支持するように設けられている。
【0024】
第1マット10及び第2マット20は、対向するとともに互いに平行な第1対向面11及び第2対向面21をそれぞれ有していることが好ましい。
<第3マット30,第4マット40>
図1に示すように、第3マット30及び第4マット40は、第1マット10と第2マット20との間に配置され、被施術者Pの腹部Aを下方から支持する。
【0025】
第3マット30は、第1対向面11及び第2対向面21にそれぞれ対向するとともに互いに平行な一対の側面31,32を有している。
第4マット40は、第1対向面11及び第2対向面21にそれぞれ対向するとともに互いに平行な一対の側面41,42を有している。
【0026】
第3マット30及び第4マット40は、被施術者Pの幅方向Wにおいてストーマ装具Sを挟むように互いに間隔をあけて配置される。
本実施形態の第3マット30及び第4マット40は、同一の形状及び大きさを有している。
【0027】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図1及び
図2に示すように、第1マット10によって少なくとも被施術者Pの胸部Cが下方から支持され、第2マット20によって少なくとも被施術者Pの大腿部Fが下方から支持される。
【0028】
ここで、第3マット30及び第4マット40が被施術者Pの幅方向Wにおいてストーマ装具Sを挟むように互いに間隔をあけて配置されるように、幅方向Wにおける被施術者Pのストーマ装具Sの装着位置に応じて、幅方向Wにおける第3マット30及び第4マット40の位置を調節する。
【0029】
例えば、
図1に示すように、被施術者Pのストーマ装具Sの装着位置が右側である場合には、第3マット30と第4マット40との間の隙間Gが右側に形成されるように、幅方向Wにおける第3マット30及び第4マット40の位置を調節する。
【0030】
また、
図3に示すように、被施術者Pのストーマ装具Sの装着位置が左側である場合には、第3マット30と第4マット40との間の隙間Gが左側に形成されるように、幅方向Wにおける第3マット30及び第4マット40の位置を調節する。
【0031】
これにより、第3マット30及び第4マット40によって被施術者Pの腹部Aが下方から支持されるとともに、第3マット30と第4マット40との間の隙間Gによってストーマ装具Sが逃がされる。
【0032】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)クッションマット1は、第1マット10と、第2マット20と、第1マット10と第2マット20との間に配置され、被施術者Pの腹部Aを下方から支持する第3マット30及び第4マット40とを備える。
【0033】
こうした構成によれば、上述した作用を奏するので、マッサージなどの背部に対する施術を行う際に、ストーマ装具Sの装着位置に関わらず、ストーマ装具Sが被施術者Pとクッションマット1とによって押し潰されることを抑制できる。
【0034】
(2)第1マット10の第1対向面11と第2マット20の第2対向面21とが平行である。また、第3マット30が互いに平行な一対の側面31,32を有しており、第4マット40が互いに平行な一対の側面41,42を有している。このため、第3マット30及び第4マット40を幅方向Wにおいてスライドさせることにより、幅方向Wにおける第3マット30及び第4マット40の位置を容易に調節することができる。
【0035】
また、第1対向面11に対して第3マット30及び第4マット40の一方の側面31,41全体を当接させることができる。また、第2対向面21に対して第3マット30及び第4マット40の他方の側面32,42全体を当接させることができる。このため、互いに独立した4つのマット10,20,30,40を有しながらも、各マット10,20,30,40が施術の際の外力によって移動しにくくなる。したがって、施術の際の各マット10,20,30,40の位置ずれを好適に抑制できる。
【0036】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0037】
・第1マット10は、被施術者Pの頭部Hを下方から支持する部位を有するものに限定されず、第1マット10とは別体のマットによって頭部Hを下方から支持するようにしてもよい。
【0038】
・第2マット20は、被施術者Pの下腿部を下方から支持する部位を有していなくてもよい。
・第3マット30は互いに平行な一対の側面31,32を有していなくてもよい。また、第4マット40についても同様である。
【0039】
・第3マット30及び第4マット40の幅方向Wの長さを互いに異ならせることもできる。これにより、第3マット30及び第4マット40の双方が、幅方向Wにおいて第1マット10及び第2マット20よりも外側に突出しないようにすることもできる。
【0040】
・本発明に係る施術用クッションマットは、マッサージに限らず、被施術者Pの背部に対する施術であれば、整体、鍼灸治療、柔道整復術、及び整形外科治療などの他の施術に対しても用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…クッションマット
10…第1マット
11…第1対向面
20…第2マット
21…第2対向面
30…第3マット
31,32…側面
40…第4マット
41,42…側面
A…腹部
B…ベッド
C…胸部
F…大腿部
G…隙間
H…頭部
P…被施術者
S…ストーマ装具