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特開2024-33610既設管にライニングされた更生管の内面検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033610
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】既設管にライニングされた更生管の内面検査方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20240306BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
E03F7/00
E03F3/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137281
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北山 康
(72)【発明者】
【氏名】垣根 伸次
(72)【発明者】
【氏名】北岡 豊
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063BA01
2D063BA37
2D063EA03
2D063EA06
(57)【要約】
【課題】既設管にライニングされた更生管の内面を簡単な作業で安定して観察することができるようにする。
【解決手段】
既設管1の内側をライニングする合成樹脂製の更生管2の管頂部の外面に沿い管軸方向に連続的に延びる磁性材からなる軌条3を予め設置しておく。走行車5は、ビデオカメラ等の観察機器7を搭載したボデイ6と、駆動輪10と、マグネット車輪20とを有している。軌条3とマグネット車輪20との間に働く磁力により、走行車5を支持するとともに軌条3に沿って案内し、観察機器7により更生管2の内面を観察する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管の内側をライニングする合成樹脂製の更生管の内面を検査する方法において、
予め、前記更生管の上部の外面に沿い管軸方向に連続的に延びる磁性材からなる軌条を設置しておき、
観察機器を搭載したボデイと、前記ボデイに設けられたマグネット手段とを備えた走行車を用意し、
前記軌条と前記マグネット手段との間に働く磁力により、前記走行車を支持するとともに前記軌条に沿って走行させながら、前記観察機器により前記更生管の内面を観察することを特徴とする更生管内面の検査方法。
【請求項2】
前記マグネット手段は、前記走行車の前記ボデイに回転可能に支持され磁界を発生させる少なくとも1つのマグネット車輪を含み、前記マグネット車輪が前記更生管の内面に転動可能に接することを特徴とする請求項1に記載の更生管内面の検査方法。
【請求項3】
前記軌条が前記更生管の管頂部に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の更生管内面の検査方法。
【請求項4】
前記既設管が下水道の既設管であることを特徴とする請求項3に記載の機器移動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管にライニングされた更生管の内面を検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水管等の老朽化した既設管を更生するために、更生管を既設管の内側にライニングすることは公知である。更生管をライニングした後、ビデオカメラ等の観察機器を用いて更生管の内面を定期点検する。
【0003】
更生管は既設管と同様に定期点検を行っている。特許文献1,2に開示された既設管の点検方法では、下水に浮かぶ浮体にビデオカメラを設置し、プロペラの推進力により又は下水の流れを利用して浮体を移動させ、ビデオカメラで既設管の内壁面を撮影する。
特許文献3では、浮体または水陸両用の走行車とドローンを組み合わせ、ドローンに搭載したビデオカメラで既設管の内壁面を撮影する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-218907号公報
【特許文献2】特許6937800号公報
【特許文献3】特開2021-11266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記点検方法において浮体を用いる場合には、水流の影響によりビデオカメラの姿勢が安定せず、移動速度を不定であるため、円滑に撮影できない。管底部を走行する場合にも、管底部に段差がある場合や水流が早い場合には走行が安定せず、円滑に撮影できない。ドローンを用いる場合には操縦が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、既設管の内側をライニングする合成樹脂製の更生管の内面を検査する方法において、予め、前記更生管の上部の外面に沿い管軸方向に連続的に延びる磁性材からなる軌条を設置しておき、観察機器を搭載したボデイと、前記ボデイに設けられたマグネット手段とを備えた走行車を用意し、前記軌条と前記マグネット手段との間に働く磁力により、前記走行車を支持するとともに前記軌条に沿って走行させながら、前記観察機器により前記更生管の内面を観察することを特徴とする。
【0007】
上記方法によれば、走行車は更生管の上部において軌条によって定められた経路を走行するので、簡単な操作で、更生管の下部の状況に影響されずに安定して観察機器を移動させることができる。また、軌条が更生管内に露出しないので、更生管は本来の役割を支障なく担うことができる。
【0008】
好ましくは、前記マグネット手段は、前記走行車の前記ボデイに回転可能に支持され磁界を発生させる少なくとも1つのマグネット車輪を含み、前記マグネット車輪が前記更生管の内面に転動可能に接する。
この方法によれば、マグネット車輪が転動することにより、走行車を円滑に走行させることができる。
【0009】
好ましくは、前記軌条が前記更生管の管頂部に配置されている。この方法によれば、走行車を安定した吊り下げ状態で支持することができる。
【0010】
具体的適用例として、前記既設管が下水道の既設管である場合、走行車、観察機器が下水の上方にあるので、水位、水流の影響を受けずに安定して更生管内を観察することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な操作で観察機器を搭載した走行車を安定して走行させることができ、更生管の内面を円滑に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る更生管内面の検査方法を示す概略縦断面図である。
図2図1のII-II矢視横断面図である
図3図1の方法で用いられる走行車に装備されたマグネット車輪の断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る方法を示す要部概略横断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る方法を示す要部概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態を図1図3を参照しながら説明する。図1に示す下水道の既設管1は、2つのマンホール間を延びており、例えばコンクリートにより構成されている。老朽化した既設管1は、その内周に更生管2をライニングすることにより更生される。
【0014】
<更生構造について>
更生管2は、例えば塩化ビニル樹脂等の合成樹脂製の帯状プロファイルを螺旋状に巻き、隣接する巻き部分の縁どうしを嵌合することにより構成されるが、他の製管工法で合成樹脂製の更生管2を製管してもよい。更生管2は磁性材料を含まない。
【0015】
更生管2の管頂部には、管軸方向に連続的に延びる軌条3が予め設置される。本明細書において管頂部は、厳密な管頂位置(更生管の中心軸線を通る垂直線が更生管と交わる位置)のみならず、この管頂位置から左右に約10°の狭い角度範囲内の部位を指す。本実施形態では軌条3は上記管頂位置に配置されている。
【0016】
軌条3は、例えば鉄製の棒材または帯材(磁性材)からなり、更生管2の管頂部の外面に接するようにして配置される。好ましくは、軌条3は更生管2の略全長(すなわち既設管1の略全長)に相当する長さを有している。
既設管1と更生管2の間の隙間4には、モルタル等からなる裏込め材が充填されている。
【0017】
<走行車>
更生管2の定期点検等のために、更生管2内において管頂部に沿って自走式の走行車5が走行可能となっている。走行車5は、バッテリーやモータを内蔵したボデイ6と、ボデイ6の上面に回転可能に支持された複数例えば6つの車輪と、を備えている。ボデイ6には、ビデオカメラ7(観察機器)が搭載されている。
【0018】
6つの車輪はボデイ6の幅方向中央において、管軸方向に一列に整列されている。6つの車輪のうち中央の2つが駆動輪10であり、前後2つずつ合計4つがマグネット車輪20(マグネット手段)である。駆動輪10は、更生管2の管頂部内面に接し、ボデイ6に内蔵されたモータにより回転駆動することにより、走行車5に推進力を付与する。
【0019】
マグネット車輪20は図3に示すように、非磁性材料例えば合成樹脂や非磁性金属等からなる車輪本体21と、この車輪本体21に埋め込まれた複数例えば4つの磁石22とを有している。磁石22は例えば円柱形状をなすネオジム磁石であり、周方向に等間隔に配置され、一方の磁極が車輪本体21の径方向外側に位置して露出しており、他方の磁極が径方向内側に位置している。
【0020】
<更生管内面の検査方法>
更生管2の一方の管端(例えば上流側)において、走行車5を更生管2の管頂部内面にセットする。6つの車輪は軌条3の真下に軌条3に沿って配置される。走行車5は、軌条3とマグネット車輪20との間の磁力により吊り下がり状態で支持される。この吊り下がり状態で走行車5の駆動輪10を回転駆動することにより、走行車5が管軸方向に更生管2の他方の管端(下流側)に向かって走行する。この際、マグネット車輪20が磁力で軌条3に引き付けられるため、走行車5は更生管2の管頂部から外れず、軌条3に沿って安定して走行することができる。マグネット車輪20は更生管2の内面に接して転動するため、円滑な走行を助ける。
【0021】
走行車5の走行軌道が定まっているので、走行車5は無線または有線による比較的簡単な遠隔操作で走行させることができる。この走行中にビデオカメラ7で更生管2の内壁面の状況を撮影する。この映像は操作者のディスプレイに送られ、更生管2の内壁面の状態や取付管口の閉塞等の有無等について点検を行う。
【0022】
走行車5が更生管2の管頂部で吊り下げ支持されているので、更生管2の管底部の凹凸や水流、水位に影響されずに安定して走行し、ビデオカメラ7で安定した映像を取得することができる。
【0023】
本実施形態では、例えば帯状プロファイルを螺旋状に巻き、更生管2を既設管1との間に隙間が形成されるように製管しており、軌条3を配置しても更生管2の内面に凸部が形成されず、内面の平滑性を維持できる。
【0024】
駆動輪10とマグネット車輪20の配置と数は必要に応じて変更可能である。例えば、1個の駆動輪10とその管軸方向両側に1個ずつ配置されたマグネット車輪20で構成してもよい。また、駆動輪10とマグネット車輪20を交互に複数ずつ配置してもよい。磁界を発生させない従動輪を加えてもよい、
【0025】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。これら実施形態において第1実施形態に対応する構成部には図中同番号を付してその詳細な説明を省略する。
<第2実施形態>
図4に示す第2実施形態では、更生管2の管頂部の外面に2本の軌条3が互いに平行をなして設置されている。より具体的には、2本の軌条3は、更生管2の管頂位置から周方向に同角度離れて配置されている。これに対応して走行車5の車輪は左右に整列して分かれている。例えば3つずつ分かれている。管軸方向の中央に駆動輪(この図には示されていない)が配置され、その管軸方向両側にマグネット車輪20が配置されている。この実施形態において、2本の軌条3の代わりに幅広の1本の軌条を用いてもよい。また、駆動輪10とマグネット車輪20の配置と数は必要に応じて変更してもよい。
【0026】
<第3実施形態>
図5に示す第3実施形態では、更生管2の管頂位置の外面に1本の軌条3が設けられ、ボデイ5の幅方向中央にはこの軌条3に対向して1つ又は複数のマグネット車輪20が管軸方向に一列に整列されている。走行車はさらに、マグネット車輪20の左右にそれぞれ複数例えば2つの車輪を有している。これら左右の複数の車輪は、それぞれ少なくとも1つ駆動輪10を含んでいる。
【0027】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
第1~第3実施形態では、軌条が管頂部に配置されているが、更生管の上部において管頂部から離れた位置に配置してもよい。ただし、管頂位置から45°未満に配置するのが好ましい。
更生管を、反転形成工法等を用いて加熱拡径することにより、既設管の内壁面に密着するようにしてライニングしてもよい。この場合には、軌条が予め既設管の内面に設置される。この更生管のライニング方法では、更生管の管頂部(上部)の内面に軌条に対応して凸部が形成されるので、この凸部の高さを抑えるために、軌条を帯板にするのが好ましい。
【0028】
マグネット車輪の数は、支持すべき走行車の重量に応じて適宜選択する。走行車の車輪の数、駆動輪の数も適宜選択することができる。マグネット車輪を駆動輪としてもよい。マグネット手段は走行車のボデイに回転可能に支持されたマグネット車輪の代わりに、ボデイに固定された磁石であってもよい。
走行車は、自走式でなくワイヤ牽引により走行させてもよい。
【0029】
本発明方法は、下水道の他に、上水道、電気ケーブル配線用の既設管やトンネルをライニングする更生管の内面検査にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、地中に埋設された下水管等の既設管にライニングされた更生管の内面検査に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 既設管
2 更生管
3 軌条
5 走行車
6 ボデイ
7 ビデオカメラ(観察機器)
10 駆動輪
20 マグネット車輪(マグネット手段)
21 車輪本体
22 磁石
図1
図2
図3
図4
図5