(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033613
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ドリップバッグ
(51)【国際特許分類】
A47J 31/06 20060101AFI20240306BHJP
A47J 31/02 20060101ALI20240306BHJP
B65D 85/804 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A47J31/06 160
A47J31/02
B65D85/804 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137286
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】396015057
【氏名又は名称】大紀商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】速水 亮佑
【テーマコード(参考)】
4B104
【Fターム(参考)】
4B104AA07
4B104BA45
4B104BA46
4B104BA77
4B104EA20
(57)【要約】
【課題】袋本体の表裏の掛止部材を互いに反対方向に引っ張ることにより袋本体を開封するドリップバッグにおいて、開封に要する力を低減させる。
【解決手段】ドリップバッグ1Aが、袋本体11、袋本体11の対向する2面の外表面に設けられた掛止部材20、及び袋本体に充填されている抽出材料Mからなる。袋本体11の上辺11aに沿って易開裂線12がある。前記2面の掛止部材20は、夫々、本体幅方向の中央部の上端で舌片状に突出した上端中央部26、上端中央部26よりも袋本体底辺11c側で上端中央部26の幅の中心線を挟んで袋本体11から引き起こし可能な一対の掛止部21、上端中央部26の左右に形成された一対の切込部25、及び切込部25の袋本体側辺側に隣接した上部補強部23を有する。上部補強部23の貼着域R2と上端中央部26との間の非貼着域Sの幅w2が上端中央部の幅w1の2倍以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水濾過性シートから形成された袋本体、袋本体の対向する2面の外表面に設けられた薄板状材料からなる掛止部材、及び袋本体に充填されている抽出材料からなるドリップバッグであって、
袋本体は、その上辺に沿って易開裂線を有し、
前記2面の掛止部材は、夫々、
袋本体幅方向の中央部の上端で舌片状に突出し、袋本体との貼着域を有する上端中央部、
上端中央部よりも袋本体底辺側で上端中央部の幅の中心線を挟んで袋本体から引き起こし可能に形成された一対の掛止部、
掛止部よりも袋本体上辺側で上端中央部の左右に形成された一対の切込部、及び
掛止部よりも袋本体上辺側で各切込部の袋本体側辺側に隣接し、袋本体との貼着域を有する上部補強部を有し、
上部補強部の貼着域と上端中央部の間に袋本体との貼着域が存在しない非貼着域があり、該非貼着域の幅が上端中央部の幅の2倍以上であるドリップバッグ。
【請求項2】
上端中央部の基部に袋本体幅方向の折れ線が形成されている請求項1記載のドリップバッグ。
【請求項3】
上部補強部において、袋本体との貼着域が断続的に形成されており、切込部に近接した貼着域が袋本体側辺に近接した貼着域よりも上下方向で掛止部寄りに形成されている請求項1又は2記載のドリップバッグ。
【請求項4】
一対の掛止部が袋本体の左右の各側辺側から引き起こし可能となるように形成され、引き起こしの軸となる折れ線が掛止部の上端から下端まで形成されている請求項1又は2記載のドリップバッグ。
【請求項5】
上端中央部の貼着域が一対の掛止部の間を袋本体底辺方向へ延設されている請求項4記載のドリップバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ等の容器に掛止することにより、容易にドリップ式でコーヒー、紅茶、緑茶、漢方薬等の抽出液を得られるようにするドリップバッグに関する。
【0002】
一杯分のコーヒーの抽出を手軽に行えるようにすることを目的として、コーヒー粉を充填した袋本体と、その袋本体をカップに掛けられるようにする掛止部材とを備えた使い捨てのドリップバッグが種々の製品形態で市場に出回っている。
【0003】
例えば、引き起こし可能な掛止部を有する掛止部材を袋本体の対向する2面の外表面(以下、袋本体の表裏ともいう)に設け、袋本体の表裏の掛止部を互いに反対方向に引っ張ることによって袋本体を開口できるようにするため、袋本体の上辺に沿って易開裂線を設け、掛止部材には該掛止部材の幅方向中央部の易開裂線に隣接する部分から下方に伸びた上部中央貼着域を設けると共に、袋本体から引き起こし可能な掛止部を上部中央貼着域に連続させて設け、上部中央貼着域の左右に袋本体と貼着した上部帯状部を設けることが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、袋本体の表裏の掛止部材を互いに反対方向に引っ張ることにより袋本体を開封するにあたり、開封に必要とされる力を著しく低減させ、開封時の内容物の飛び散りをなくすドリップバッグとして、掛止部材の幅方向の中央部に掛止部材の上端から下方へ伸びた折れ線を設け、かつ掛止部材の引き起こしの固定端を掛止部材の幅方向の中央部に設けることが提案されている(特許文献2)。このドリップバッグによれば開封が著しく容易となるが、掛止部材のデザイン上の制約が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-187631号公報
【特許文献2】特開2021-69479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術に対し、本発明は、ドリップバッグの袋本体の表裏の掛止部材を互いに反対方向に引っ張ることにより袋本体を開封するときの開封に要する力を著しく低減させ、開封時の内容物の飛び散り無くし、かつ、袋本体の開封の容易さを享受するための掛止部材におけるデザイン上の制約を低減させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、袋本体の上辺に沿って易開裂線を設け、袋本体の表裏の掛止部材に袋本体から引き起こし可能な掛止部を設け、袋本体の表裏の掛止部を互いに反対方向に引っ張ることにより袋本体を開封するときの開封に要する力を低減させるには、掛止部材の幅方向中央部の上端に袋本体と貼着した舌片状の上端中央部を設け、その左右に切込部を形成し、切込部を含めて上端中央部の左右に袋本体との非貼着域を所定幅で設けることが有効であることを想到し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、通水濾過性シートから形成された袋本体、袋本体の対向する2面の外表面に設けられた薄板状材料からなる掛止部材、及び袋本体に充填されている抽出材料からなるドリップバッグであって、
袋本体は、その上辺に沿って易開裂線を有し、
前記2面の掛止部材は、夫々、
本体幅方向の中央部の上端で舌片状に突出し、袋本体との貼着域を有する上端中央部、
上端中央部よりも袋本体底辺側で上端中央部の幅の中心線を挟んで袋本体から引き起こし可能に形成された一対の掛止部、
掛止部よりも袋本体上辺側で上端中央部の左右に隣接して形成された一対の切込部、及び
掛止部よりも袋本体上辺側で各切込部の袋本体側辺側に隣接し、袋本体との貼着域を有する上部補強部を有し、
上部補強部の貼着域と上端中央部の間に袋本体との貼着域が存在しない非貼着域があり、該非貼着域の幅が上端中央部の幅の2.0倍以上であるドリップバッグを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、袋本体はその上辺に沿って易開裂線を有し、掛止部材はその幅方向の中央部の上端に袋本体と貼着した舌片状の上端中央部を有し、上端中央部の左右には切込部があり、さらに、上端中央部の左右には、切込部を含めて袋本体との非貼着域が所定幅で形成されているので、袋本体の表裏の掛止部を互いに反対方向に引っ張ると、掛止部材は上端中央部の上端から基部に向かう方向が引張方向を向くように容易に屈曲し、引張力が袋本体の表裏の上端中央部の貼着域で挟まれた部分に集中する。したがって、この部分にある易開裂線が容易に開裂し、次いでその開裂が易開裂線の全体に広がり、袋本体が容易に開口する。
【0010】
この上端中央部とその左右の非貼着域による開裂の作用は、本体の表裏で掛止部を互いに反対方向に引っ張って袋本体を開口させる種々の形態のドリップバッグに適用することができ、また、ドリップバッグの製造に使用する充填包装機や超音波溶着溶断装置も既存のものを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例のドリップバッグ1Aの平面図である。
【
図2】
図2は、実施例のドリップバッグ1Aの袋本体と掛止部材の展開図である。
【
図3】
図3は、実施例のドリップバッグ1Aであって掛止部を引き起こし途中の状態の斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、実施例のドリップバッグ1Aであって、袋本体の表裏の掛止部を互いに反対方向に引っ張っている状態の上面図である。
【
図4B】
図4Bは、実施例のドリップバッグ1Aであって、袋本体の表裏の掛止部を互いに反対方向に引っ張っている状態の断面図である。
【
図4C】
図4Cは、実施例のドリップバッグ1Cであって、袋本体の表裏の掛止部を互いに反対方向に引っ張っている状態の断面図である。
【
図5】
図5は、実施例のドリップバッグ1Aであって、袋本体の表裏の掛止部を互いに反対方向に引っ張ることにより、袋本体の表裏の上端中央部の貼着域で挟まれた易開裂線が開裂した状態の上面図である。
【
図6】
図6は、比較例のドリップバッグ1xであって、袋本体の表裏の掛止部を互いに反対方向に引っ張っている状態の上面図である。
【
図7】
図7は、易開裂線で開口した実施例のドリップバッグ1Aをカップに掛止させた状態の斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、実施例のドリップバッグ1Aの製造に使用できるドリップバッグ製造用シート15Aの説明図である。
【
図8B】
図8Bは、実施例のドリップバッグ1Aの製造に使用できるドリップバッグ製造用シート15Bの説明図である。
【
図9】
図9は、実施例のドリップバッグ1A’の平面図である。
【
図10】
図10は、実施例のドリップバッグ1Cの製造に使用できるドリップバッグ製造用シート15Cの説明図である。
【
図11】
図11は、実施例のドリップバッグ1Bの平面図である。
【
図12】
図12は、比較例のドリップバッグ1vの平面図である。
【
図13】
図13は、比較例のドリップバッグ1wの平面図である。
【
図14】
図14は、比較例のドリップバッグ1xの平面図である。
【
図15】
図15は、比較例のドリップバッグ1yの平面図である。
【
図17】
図17は、開封強度試験データから開封強度と開封に要した引張エネルギーを求める方法の説明図である。
【
図18】
図18は、実施例のドリップバッグ1Aの開封直前の易開裂線近傍への引張力のかかり方を示す上面写真である。
【
図19】
図19は、実施例のドリップバッグ1Bの開封直前の易開裂線近傍への引張力のかかり方を示す上面写真である。
【
図20】
図20は、比較例のドリップバッグ1yの開封直前の易開裂線近傍への引張力のかかり方を示す上面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0013】
(ドリップバッグの全体構成)
図1は、本発明の一実施例のドリップバッグ1Aの未開封状態の平面図であり、
図2はこのドリップバッグ1Aの袋本体11と掛止部材20の展開図であり、
図3はこのドリップバッグ1Aの掛止部21を引き起こし始めた状態の斜視図である。図中、ドットのハッチングを付した部分は袋本体11の通水濾過性シートを表す。また、
図1及び
図2において、細かい斜めハッチングを付した部分は袋本体と掛止部材との貼着領域を表し、粗い斜めハッチングを付した部分は袋本体11の表面11xと背面11yとの貼着領域を表している。以降の図の細かい斜めハッチングと粗い斜めハッチングも同様の意味を有する。なお、貼着領域は、薄板状材料の不透明性により、通常は掛止部材側からは視認することができない。
【0014】
また、
図7は、易開裂線12で開口したドリップバッグ1Aをカップ100に掛止した状態の斜視図である。
【0015】
このドリップバッグ1Aは、通水濾過性シート10で形成された袋本体11、ドリップバッグ1Aをカップ100に掛止できるようにするために袋本体11の対向する2面の外表面(表面11x、背面11y)に設けられた掛止部材20、及び袋本体11に充填されている抽出材料M(
図4B)を有する。掛止部材20は薄板状材料で形成されている。また、袋本体11の表面11x上の掛止部材と背面11y上の掛止部材20は、袋本体11の一方の側辺11b
1上で連続しており、該側辺11b
1に対して掛止部材20は対称に形成されている。
【0016】
(袋本体)
袋本体11は通水濾過性シートから形成される。
袋本体11内には、コーヒー粉、茶葉、又は漢方薬等の抽出材料が充填されている。
【0017】
本実施例のドリップバッグ1Aの袋本体11は、平面視が矩形の3方シール袋であり、一方の側辺11b1が通水濾過性シート10の折山となり、もう一方の側辺11b2と上辺11aと底辺11cとが表面11xと背面11yのシール辺になっている。本発明においては袋本体11の上辺11aが通水濾過性シートの折山になっていてもよい。シール辺におけるシール幅は適宜設定することができ、例えば超音波によるシールであれば、0.3~0.6mmとすることができる。
【0018】
袋本体11の平面寸法はドリップバッグを掛止するカップ又は容器の大きさに応じて適宜設定することができる。例えば、市販のコーヒーカップで使用できる大きさにすればよい。袋本体11の底部や側部には、必要に応じてマチを設けても良い。
【0019】
本発明において袋本体11は、その上辺11aに沿って易開裂線12を有する。易開裂線12の態様としては、例えば、袋本体11の上辺11aで袋本体11の表面11xと背面11yがシールされている場合、そのシールを容易に剥離可能な弱シールとしたものを挙げることができ、また、袋本体11の表面11xと背面11yの少なくとも一方の上辺11a近傍で該上辺11aに沿って形成したミシン目等を易開裂線としてもよい。袋本体の上辺が通水濾過性シートの折山である場合、その折り山に形成したミシン目等を易開裂線としてもよい。
【0020】
本実施例のドリップバッグ1Aでは、袋本体11の上辺11aに沿った易開裂線12が袋本体11の一方の表面11xのみに形成されている。袋本体11の表裏双方の面に易開裂線を形成した場合に対し、一方の表面のみに易開裂線12を形成することにより、袋本体11の表裏の掛止部21を互いに反対方向に引っ張ったときの引張力を一方の表面の易開裂線12に集中させることができるので、袋本体11を開口させるために要する引張強度を低下させることができるので好ましい。
【0021】
また、本実施例のドリップバッグ1Aにおいて易開裂線12としてはミシン目を形成することが好ましく、特に開封を容易にする点からマイクロミシン目を設けることが好ましい。
【0022】
袋本体11の上辺11aと易開裂線12との距離d1は、掛止部材20の上辺と易開裂線12との距離d2より小さいことが好ましく、距離d1と距離d2の合計は4~8mmが好ましい。距離d2は1.5~5.0mmが好ましい。距離d2が小さすぎると、掛止部材20の上端部を袋本体11に固定する貼着領域と易開裂線12とが重なって易開裂線12の機能が損なわれる虞があり、反対に大きすぎると、易開裂線12の開裂に要する引張力が大きくなるので好ましくない。なお、掛止部材20と袋本体11との貼着領域が易開裂線12と重ならない限り、易開裂線12と掛止部材20とは重なっても良い。
【0023】
袋本体11を形成する通水濾過性シート10としては、例えば所定量のコーヒー粉、茶葉、漢方薬等の抽出材料を充填し、注湯した場合に抽出材料の浸出が可能であるものを種々使用することができる。一般に、浸出用シートとしては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン等の合成繊維、レーヨン等の半合成繊維、コウゾ、ミツマタ等の天然繊維の単独又は複合繊維からなる織布あるいは不織布、マニラ麻、木材パルプ、ポリプロピレン繊維等からなる混抄紙等、ティーバッグ原紙等の紙類が知られており、本発明においてもこれらを使用することができるが、ドリップバッグの使用後の廃棄性の点から、通水濾過性シート材料には生分解性繊維を含有させることが好ましい。生分解性繊維としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等をあげることができる。また、ドリップ時にコーヒー粉に適度な蒸らし効果も付与できるようにするため、これらの繊維材料から通水濾過性シートを製造するに際しては、繊維層の空隙率を調整することによりコーヒー粉に直接接することとなる層を「疎」とし、直接には接しない層を「密」とする疎密の複層構造とし、かつコーヒー粉に直接接することとなる層では疎水性繊維の含有率を高め、コーヒー粉に直接接しない層では疎水性繊維の含有率を下げることが好ましい(特許第3674486号)。
【0024】
(掛止部材の全体構成)
掛止部材20は、板紙、プラスチックシート等の薄板状材料で形成される。薄板状材料としても、ドリップバッグ1Aの使用後の廃棄性の点から、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等の生分解性材料を使用することが好ましい。
【0025】
掛止部材20は、袋本体11の表裏の夫々において袋本体幅方向の中央部で易開裂線12近傍に突出した舌片状の上端中央部26を有する。上端中央部26は、該上端中央部26と袋本体11とが貼着した貼着域(以下、上端中央貼着域ともいう)R1を有する。
【0026】
また、掛止部材20は、上端中央部26よりも袋本体底辺11c側で袋本体11の左右の各側辺側から引き起こし可能に形成された一対の掛止部21を有する。
【0027】
掛止部21よりも袋本体上辺11a側の領域において、上端中央部26の左右に隣接した部分は掛止部材20の上辺から袋本体底辺11c方向へ切り込まれた一対の切込部25となっている。また、各切込部25の袋本体側辺11b1、11b2側にあって、該切込部25に隣接した部分は、掛止部材20の上端部をなす上部補強部23となっている。上部補強部23は袋本体11との貼着域R2、R2a、R2bを有する。
【0028】
切込部25には、掛止部材20が存在しないので袋本体11との貼着域も存在しないが、この切込部25を含めて、上部補強部23の上端中央部寄りの貼着部R2aと上端中央部26との間には掛止部材と袋本体との貼着域が存在しない非貼着域Sがある。この非貼着域Sの幅w2は上端中央部26の幅w1の2.0倍以上である。
【0029】
本発明において袋本体11の表裏の掛止部材20は連続していてもよく、独立していてもよいが、本実施例のドリップバッグ1Aでは
図2の展開図に示すように、袋本体11の表裏の掛止部材20が、一枚の矩形の薄板状材料の打ち抜きにより形成されており、表面11x上の掛止部材と背面11y上の掛止部材とは連続している。
【0030】
(上端中央部)
上端中央部26は袋本体幅方向の中央部で易開裂線12近傍に突出した舌片状部分である。上端中央部26は、袋本体11と掛止部材20とが貼着している上端中央貼着域R1を有する。上端中央貼着域R1は袋本体11の幅の中心線Loと重なり、上端中央部26の上端又はその近傍にまで形成されている。易開裂線12が袋本体の表面11x又は背面11yのいずれか一方又は双方に形成されたミシン目である場合も、易開裂線12が袋本体の上辺11aに形成された弱シールである場合も、易開裂線12が袋本体11の上辺11aをなす折り山に形成されたミシン目である場合も、上端中央貼着域R1は易開裂線12よりも袋本体底辺11cよりに設けることが好ましい。
【0031】
上端中央貼着域R1の幅w3は、袋本体の開口時に袋本体の表裏の掛止部21を互いに反対方向に引っ張ったときに、上部中央貼着域R1で掛止部材20と袋本体11とが剥離することを防止するため、2~5mmとすることが好ましい。また、上端中央部26の幅w1は上端中央貼着域R1よりも若干大きくすることが好ましく、例えば3~10mmとする。
【0032】
一方、上端中央部の幅w1は大き過ぎると、袋本体11の開封時に袋本体11の表裏の掛止部21を互いに反対方向に引っ張った場合の引張力を、袋本体11の表裏の上端中央部26の貼着域で挟まれた部分の易開裂線12(以下、易開裂線12の開裂部ともいう)に集中させ難くなり、反対に狭すぎても引張力を易開裂線12の開裂部に伝え難くなるため、上端中央部26の幅w1は、袋本体11の幅の1/30~1/10が好ましい。
【0033】
ここで、上端中央部26の幅w1とは、掛止部21よりも袋本体の上辺11a側に位置する上端中央部26の最大幅をいう。上端中央部26の形状に特に限定はなく、短冊状でもよく、台形、紡錘形等でもよい。
【0034】
上端中央貼着域R1は左右一対の掛止部21の間を袋本体底辺方向へ延設することができる。この延設部分R4と上端中央貼着域R1とを合わせた貼着域の袋本体上下方向の長さは、少なくとも掛止部21の引き起こしの軸を袋本体11に固定できる長さとすることが好ましい。なお、左右一対の掛止部21の間の貼着域と上端中央貼着域R1とは必ずしも連続していなくてもよいが、袋本体11の開封時に袋本体11の表裏の掛止部21を互いに反対方向に引っ張った場合の引張力を易開裂線12の開裂部に伝え易くする点から連続していることが好ましい。
【0035】
一方、延設部分R4を掛止部材20の下端まで設けると、袋本体11の開封後に掛止部21をカップに掛けるために掛止部21を袋本体11から引き上げるときに、引き上げ方向のブレにより延設部分R4で袋本体が破損する虞がある。そのため、延設部分R4の下端の位置、又は左右一対の掛止部の間の貼着域の下端の位置は、掛止部21の袋本体上下方向の中央部とすることが好ましく、掛止部21の上端から掛止部の袋本体上下方向長さの1/2よりも袋本体上辺寄りとすることが好ましい。
【0036】
(上端中央部の基部の折れ線)
上端中央部26の基部に袋本体幅方向の折れ線L1を形成することが好ましい。この折れ線L1が形成されていると、袋本体11の開封時に袋本体11の表裏の掛止部21を互いに反対方向に引っ張ったときに、
図4A、
図4Bに示すように、袋本体11の表裏の上端中央部26が、その上端から基部に向かう方向が略引張方向を向くように折れ線L1で容易に屈曲し、引張力が易開裂線12の開裂部に伝わりやすくなる。そのため、開封時の引張力が小さくなり、開封に要する引張エネルギーも小さくなり、開封時の内容物の飛散も抑えることができる。
折れ線L1としては、ミシン目、切れ込み、ハーフカットなどを設けることができる。
【0037】
(切込部)
本発明において、掛止部材20は、掛止部21よりも袋本体上辺11a側において、上端中央部26の左右に隣接した切込部25を有する。切込部25では掛止部材20が存在しないので、上端中央部26の左右が切込部25で挟まれていることにより、掛止部材20は切込部25で撓みやすくなる。よって、袋本体11の開口時に袋本体11の表裏の掛止部21を互いに反対方向に引っ張ったときに、掛止部材20の上端部が上端中央部26の左右で屈曲し、これにより引張力が上端中央部26に集中し、袋本体11の表裏の上端中央貼着域R1で挟まれた部分の易開裂線12が開裂しやすくなる。後述する実施例の開封強度試験で示すように、切込部25の形成は開裂を容易にするために顕著な効果をもたらす。
【0038】
切込部25の幅は広すぎると、易開裂線12の開封後にドリップバッグをカップに掛けたときに、切込部25の背面の袋本体のシートが袋本体の開口部の内側に倒れ込みやすくなる。反対に切込部25が狭い場合には特に問題なく上述の効果を得られる。そのため、切込部25の幅は袋本体11の幅の1/5以下が好ましく、1/10以下がより好ましい。切込部25は切込線でもよい。
【0039】
(上部補強部)
掛止部材20は、掛止部21よりも袋本体上辺11a側に、各切込部25の袋本体側辺11b1 、11b2 側に隣接した上部補強部23を有する。上部補強部23は、袋本体11の開口形状を安定させるために設けられており、上部補強部23内には掛止部材と袋本体との貼着域(以下、上部補強部貼着域ともいう)R2が形成されている。
【0040】
本実施例では上部補強部23は帯状に形成されており、上部補強部23内の切込部25寄りの部分は上部補強部貼着域R2が存在しない非貼着域23aとなっている。非貼着域23aが形成されていないと、袋本体11の開口時に袋本体11の表裏の掛止部21を互いに反対方向に引っ張ったときに、
図6に示すドリップバッグ1xのように、表裏の掛止部材20a、20bは袋本体幅方向の中央部で互いに離れにくいので引張方向に撓みにくい。そのため表裏の掛止部材20a、20bは袋本体幅方向の中央部で互いに平行な状態を維持しつつ引っ張られることとなる。したがって、易開裂線12の開裂部12pに引張力が集中せず、開裂に要する引張力が増大する。これに対し、切込部25寄りの上部補強部23に非貼着域23aが形成されていると、非貼着域23aで掛止部材20と袋本体11とが離れるので、
図4A、
図4Bに示すように表裏の掛止部材20a、20bは袋本体幅方向中央部で引張方向に撓みやすくなる。したがって、易開裂線12の開裂部12pに引張力が集中し、開裂に要する引張力が低減する。よって、上述の切込部25に加えて、上部補強部23の切込部25寄りに非貼着域23aが存在し、非貼着域Sが形成されることにより、易開裂線12の開裂部12pが開裂しやすくなる。
【0041】
(非貼着域S)
易開裂線12の開裂をより容易にする点から、上部補強部23の非貼着域23aと切込部25を合わせた非貼着域Sの幅w2は、上端中央部26の幅w1の2倍以上、好ましくは2倍以上10倍以下である。また、非貼着域Sの幅w2は上端中央貼着域の幅w3の好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上20倍以下である(
図1)。
【0042】
なお、上端中央部26の貼着域の左右に隣接する同様の非貼着域S’を考えた場合、非貼着域S’の幅w2’は上端中央貼着域の幅w3の好ましくは4倍以上20倍以下である。上端中央部の幅w1と上端中央貼着域の幅w3の差は、非貼着域の幅に対して小さいので、非貼着域S’の幅w2’と上端中央貼着域の幅w3の比(w2’/w3)は、非貼着域Sの幅w2と上端中央貼着域の幅w3の比(w2/w3)と略同様の範囲となる。
【0043】
上部補強部23の非貼着域23aで説明した通り、非貼着域Sがあることにより、袋本体11の開口時に袋本体11の表裏の掛止部21を互いに反対方向に引っ張ると、掛止部材20の上端部が上端中央部26を中心にして屈曲し、易開裂線12の開裂部12pに引張力が集中し、開裂部12pを開裂させることが容易となる。
【0044】
なお、個々の切込部25の幅が単独で上端中央部26の幅w1の2.0倍以上であるときは、上部補強部23の切込部25寄りの部分に非貼着域は形成されていなくてもよい。
【0045】
ところで、実施例のドリップバッグ1Aの上部補強部23には、該上部補強部23が袋本体11と貼着した島状の上部補強部貼着域R2が断続的に複数個形成されている。この場合、切込部25に近接した貼着域R2aを、袋本体側辺11b1、11b2に近接した貼着域R2bよりも上下方向で掛止部21寄りに形成することが好ましい。上部補強部23に複数個の上部補強部貼着域R2を形成することにより、袋本体11の開口部壁を上部補強部23でしっかりと支持し、袋本体11の開口形状を安定化させることができ、かつ複数個の上部補強部貼着域R2のうち切込部25に近いものを掛止部21寄りとすること、即ち上部補強部23の上辺との距離を大きくすることにより、袋本体11の表裏の掛止部21を反対方向に引っ張ったときに切込部25の近傍では袋本体11が掛止部材20から離れることができるので、表裏の掛止部材20は袋本体幅方向中央部で引張方向に撓みやすくなり、引張力が易開裂線12の開裂部12pに集中しやすくなり、開裂に要する引張強度の増大を抑制することができる。
【0046】
掛止部材20は、袋本体11の側辺に沿った部分に側部貼着域R3を有する。この側部貼着域R3と上述の上部補強部貼着域R2は、掛止部材20の角部で重なっても良い。
【0047】
(掛止部)
本発明のドリップバッグにおいて掛止部21は、袋本体11の表裏の掛止部材20のそれぞれにおいて、上端中央部26よりも袋本体底辺11c側で袋本体11から引き起こし可能に、上端中央部26の幅の中心線を挟んで左右に一対形成される。実施例のドリップバッグ1Aでは、上端中央部26の幅の中心線は袋本体11の幅の中心線Lo でもあるので、掛止部21は袋本体の幅の中心線Lo を挟んで左右に一対形成される。
【0048】
本実施例のドリップバッグ1Aでは、掛止部21は、上部補強部23よりも袋本体底辺11c側で、上端中央貼着域R1の掛止部材中央部への延設部分R4を挟むように、左右一対形成されている。各掛止部21は、上端中央貼着域R1の延設部分R4に沿って掛止部21の上端から下端に伸びた折れ線L2を有し、折れ線L2を引き起こしの軸22としている。また、各掛止部21の下辺には、
図7に示したように、掛止部21をカップ100の開口部壁に安定に載置させるための凹部24が形成されている。そして、凹部24で囲まれた部分には、掛止部材と袋本体とが貼着した貼着域R5を有する。
【0049】
なお、本発明において掛止部21の形状はこれに限られない。例えば、特許文献1に記載の掛止部のように、上端中央貼着域R1の左右の掛止部が、掛止部の底辺側で連続した形状としてもよい。ただし、袋本体11の表裏の掛止部21を互いに反対方向に引っ張り、その引っ張り力で袋本体11の表裏の上端中央貼着域R1で挟まれた易開裂線を開裂させる場合に、掛止部21を引っ張りや易くする点からは、袋本体11の幅の中心線Lo を挟む左右一対の掛止部21を互いに重ね合わせて引っ張れるように、掛止部21の引き起こしの軸22となる折れ線L2を、掛止部21の上端から下端まで形成することが好ましい。
【0050】
また、掛止部21の中心線Lo 寄りの部分を、上端中央部26の左右の上端角部に向かって突出させ、掛止部21の引き起こしの軸となる折れ線L2の上端が上端中央部26の左右の上端角部に位置するようにしても良い。この場合、切込部25は、掛止部21の上端中央部26に沿った突出部分に隣接することとなる。
【0051】
(使用方法)
このドリップバッグ1Aの使用方法としては、まず、袋本体11の表面11x側と背面11y側の双方において、上端中央貼着域R1の延設部分R4の両側の掛止部21を袋本体11から引き起こし(
図3)、それらを摘まみ、袋本体11の表裏で互いに反対方向に引っ張る(
図4A)。
【0052】
上端中央部26の左右両側には切込部25があるので、袋本体11の表裏の掛止部21を互いに反対方向に引っ張ることにより、掛止部材20の上端部は上端中央部26が引張方向に突出するように撓みやすく、引っ張り力が袋本体11の表裏の上端中央貼着域R1で挟まれた部分の易開裂線12に集中し、易開裂線12が開裂する。
【0053】
この引っ張り力の集中は、掛止部材20と袋本体11とが貼着されていない非貼着域Sの幅w2が上端中央部26の幅w1の2倍以上あると、非貼着域Sにある掛止部材が袋本体11から離れることができるので掛止部材20の上端部が引張方向により撓みやすくなることにより顕著に生じる。また、舌片状の上端中央部26の基部に折れ線L1があることにより、
図4Bに示すように、上端中央部26の上端から基部に向かう方向が略引張方向を向くように上端中央部26が折れ線L1で屈曲し、掛止部21を互いに反対方向に引っ張る力を上端中央部26の上端から易開裂線12に効果的に作用させられることによっても顕著に生じる。
【0054】
このことは、
図4Aにおいて、袋本体11の上辺11a近傍の通水濾過性シートの折り癖が、袋本体11の表裏の上端中央貼着域R1で挟まれた部分においてのみ伸び、この部分の通水濾過性シートが強く引っ張られることにより筋がたっていることからわかる。
【0055】
これに対し、上端中央部26の基部に折れ線L1が形成されていないと、上端中央部26の上端から基部に向かう方向が略引張方向を向くように上端中央部26が屈曲しないため、易開裂線12に及ぶ引っ張り力が、
図4Cに示すドリップバッグ1Cのように折れ線L1がある場合に比して小さくなる。
【0056】
さらに、上端中央貼着域R1の左右両側の非貼着域Sの幅w2が不十分な比較例のドリップバッグ1x(
図14)では、袋本体11の表裏の掛止部21を互いに反対方向に引っ張ったときに、
図6に示すように、袋本体11の表裏の掛止部材20の幅方向中央部が互いに離れにくいために引張方向に撓みにくく、表裏の掛止部材20は互いに平行な状態を維持しつつそれらの間隔を広げようとするので、袋本体11の表裏の上端中央貼着域R1で挟まれた部分の易開裂線12に引張力が集中せず、易開裂線12の開裂に要する引張力が増大する。
【0057】
実施例のドリップバッグ1Aにおいて、袋本体11の表裏の掛止部21をさらに反対方向に引っ張ると、易開裂線12が表裏の上端中央部26で挟まれた部分で速やかに開裂し(
図5)、その開裂が易開裂線12全体に広がり、袋本体11が容易に広く開口する。
【0058】
この開口状態において袋本体11は四角柱状となる。次に、
図7に示すように、掛止部21の凹部24をカップ100の開口部壁に合わせてドリップバッグ1Aをカップ100上に載置する。そして、袋本体11の開口部に注湯することによりカップ100内に抽出液を得る。
【0059】
(製造方法)
本実施例のドリップバッグ1Aを、充填包装機を用いて製造するためには、
図8Aに示すドリップバッグ製造用シート15Aのロールを用意することが好ましい。
【0060】
ドリップバッグ製造用シート15Aは、通水濾過性シート10にドリップバッグ1個分の掛止部材20を所定間隔で連続的に配置したものである。図中、二点鎖線で区切った間がドリップバッグ1Aの1個分の領域となる。
【0061】
ドリップバッグ製造用シート15Aを充填包装機にかけ、常法によりドリップバッグ製造用シート15Aの両側辺を合わせてシール(縦シール)することによりドリップバッグ製造用シート15Aを筒状とし、これに対して抽出物の充填と水平方向のシール(横シール)とを交互に行うことにより容易にドリップバッグ1Aを製造することができる。
【0062】
図8Aに示したドリップバッグ製造用シート15Aでは易開裂線12をドリップバッグ製造用シート15Aの一方の側辺寄りのみに形成しているが、
図8Bに示すドリップバッグ製造用シート15Bのように易開裂線12を一方の側辺寄りと他方の側辺寄りの交互に形成してもよい。これにより、ロールからドリップバッグ製造用シートを引き出していく際に該シートの一方の側辺がわが伸びてしまい、ドリップバッグ製造用シートを充填包装機にかけてドリップバッグを連続的に製造していく際にドリップバッグ製造用シートがよれたり、破損したりするというリスクを解消することができるので好ましい。
【0063】
(変形態様)
本発明のドリップバッグ1Aは、種々の変形態様をとることができる。
例えば、
図10に示したドリップバッグ製造用シート15Cを用いて、袋本体の表裏の一方が
図9に示す平面図となるドリップバッグ1A’を得ることができる。このドリップバッグ1A’のもう一方の表面は、
図9に示した平面図に対して易開裂線12が形成されていない以外は同一である。
【0064】
このドリップバッグ1A’では袋本体11の上辺11aが通水濾過性シート10の折れ山になっている。ドリップバッグ1A’の掛止部材20は、
図1に示したドリップバッグ1Aと同様に掛止部材20に上端中央部26、上端中央貼着域R1、切込部25、上部補強部23、及び掛止部21を有する。また、袋本体11の表面11x側の掛止部材20と背面11y側の掛止部材20とが連続していない。このように本発明は、袋本体の上辺11aがシール辺であることに限定されない。
【0065】
図11に示す平面図のドリップバッグ1Bは、
図1に示したドリップバッグ1Aにおいて、上部補強部貼着域R2を省略したものである。したがって、このドリップバッグ1Bでは上端中央貼着域R1と側部貼着域R3との間には、掛止部材20と袋本体11との貼着域が無く、袋本体幅方向において上部補強部23は側部貼着域R3のみによって袋本体に固定されている。
ドリップバッグ1Bは、袋本体11の表裏の掛止部21を互いに反対方向に引っ張ることにより、
図1に示したドリップバッグ1Aと同等以下の引張強度で容易に袋本体11を開口することができ、開口に要する引張エネルギーもドリップバッグ1Aと同等以下にすることができる。
【実施例0066】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0067】
実施例1
図1に示した平面図及び
図2に示した展開図を有するドリップバッグ1Aを製造した。この場合、通水濾過性シートとして湿式不織布にメルトブロー不織布を積層したものを使用し、易開裂線12としてミシン目を形成した。
【0068】
平面視における袋本体と掛止部材の各寸法は次の通りとした。
袋本体:幅89mm、上下方向の長さ78mm
掛止部材:幅85mm、上下方向の長さ51mm
上端中央部26の幅w1:6mm
上端中央貼着域R1の幅w3:3.5mm
切込部25の幅:3mm
切込部25の深さ:6mm
上端中央部に隣接する非貼着域Sの幅w2:14mm
上端中央貼着域に隣接する非貼着域S’の幅w2’:15.3mm
上端中央部と側部貼着域の間の距離:34mm(右側)、40mm(左側)
【0069】
実施例2
実施例1のドリップバッグ1Aにおいて、上部補強部貼着域R2を省略することにより、
図11に示したドリップバッグ1Bを製造した。
【0070】
比較例1
実施例1のドリップバッグ1Aにおいて、上部補強部貼着域R2と、切込部25と、舌片状の上端中央部26の基部の折れ線L1を省略することにより、
図12に示したドリップバッグ1vを製造した。
【0071】
比較例2
実施例1のドリップバッグ1Aにおいて、切込部25と、舌片状の上端中央部26の基部の折れ線L1とを省略することにより、
図13に示したドリップバッグ1wを製造した。
【0072】
比較例3
実施例1のドリップバッグ1Aにおいて、掛止部21上に3つの上部補強部貼着域R2を断続的に設け、それらのうち切込部25に最も近いものと上端中央部26との距離w2を3mmとして
図14に示す比較例のドリップバッグ1xを製造した。
この場合、上端中央貼着域R1の幅w3は3.5mm、上端中央部の幅w1は6mmとした。また、3つの上部補強部貼着域R2と袋本体の上辺11aとの距離を同じにした。
【0073】
比較例4
比較例3のドリップバッグ1xにおいて、切込部25を省略し、
図15に示す比較例のドリップバッグ1yを製造した。この場合、掛止部21上に断続的に設けた3つの上部補強部貼着域R2のうち上端中央貼着域R1に最も近いものと上端中央貼着域R1との距離w2’は4.3mmとし、上端中央貼着域R1の幅w3は3.5mmとした。また、3つの上部補強部貼着域R2と袋本体の上辺11aとの距離を同じにした。
【0074】
開封強度試験
電動計測スタンド(イマダ社製MX2-500N-FA-L)とデジタルフォースゲージ(イマダ社製ZTA-50N)を組み合わせた引張試験機を使用し、
図16に示したように、ドリップバッグの表面側の掛止部21と背面側の掛止部21をそれぞれ引張試験機のクランプ30で摘まみ、互いに反対方向に引っ張る。この場合の引張速度を100mm/minに固定し、引張応力を計測し、最初にミシン目が開裂するときの引張力(開封強度)を求め(n=3~5)、また、開裂までに要した引張エネルギーとして、引張開始から開裂までの伸び量(mm)と引張強度(N)のカーブの面積(S-S曲線面積)を計測した。
【0075】
この場合の引張距離と引張応力との一般的な関係を
図17に示す。引張の開始当初は伸び量(引張距離)が大きくなるにしたがって引張応力が高くなるが、ミシン目が開裂すると引張応力が非連続的に低下するので、開封強度を求めることができる。また、
図17でハッチングを付した部分の面積が開封に要した引張エネルギーとなる。開封強度が小さいと開封時の内容物の飛び散りも起こりにくくなる。
【0076】
上述の開封強度試験で求めた、実施例ごと又は比較例ごとの開封強度の平均値を開封強度とした。各ドリップバッグの開封強度及び引張エネルギーを表1A及び表1Bに示す。
また、実施例1のドリップバッグ1A,実施例2のドリップバッグ1B、比較例4のドリップバッグ1yのそれぞれについて、袋本体11の表裏の掛止部21を互いに反対方向に引っ張ったときの、開封直前の易開裂線12への引張力のかかり方がわかる上面写真を
図18、
図19、
図20に示す。
【0077】
【0078】
【0079】
表1A及び表1Bの実施例1と比較例2の対比、実施例2と比較例1の対比、比較例3と比較例4の対比から、開封に要する引張エネルギーは、非貼着域の幅w2’と上端中央貼着域の幅w3の比が同一でも、掛止部の上端中央部に切込部と上端中央部を設けることにより大きく低減することがわかる。
【0080】
また、実施例1と比較例3の対比から、掛止部の上端中央部に切込部と上端中央部を有するもの同士のなかでは、非貼着域の幅w2と上端中央部の幅w1の比(w2/w1)、非貼着域の幅w2と上端中央貼着域の幅w3の比(w2/w3)、非貼着域の幅w2’と上端中央貼着域の幅w3の比(w2’/w3)を大きくすることにより開封に要する引張エネルギーが低減することがわかる。このことは、
図18(実施例1)、
図19(実施例2)、及び
図20(比較例4)の対比により、実施例のように上端中央部と切込部が形成され、非貼着域Sも十分に大きい幅で形成されていると、袋本体11の表裏の掛止部21を互いに反対方向に引っ張った場合に掛止部材が撓み易くなり、それにより袋本体11の表裏の上端中央貼着域R1で挟まれた部分の易開裂線が強く引っ張られ、その部分の通水濾過性シートに筋が観察されることがわかる。
【0081】
さらに、本発明の実施例1、2は、小さい引張強度で易開裂線が開裂することから、開封時に内容物の飛び散りが起こりにくいことがわかる。